(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462453
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】濾布を用いた排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/68 20060101AFI20190121BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20190121BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20190121BHJP
B01D 46/04 20060101ALI20190121BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
B01D53/68 100
B01D53/50 100
B01D53/82
B01D46/04 104
F27D17/00 104A
F27D17/00 105A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-69304(P2015-69304)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187785(P2016-187785A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】和田 容平
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】文野 佳門
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−028294(JP,A)
【文献】
特開2007−090222(JP,A)
【文献】
特開平11−244634(JP,A)
【文献】
特開平07−016413(JP,A)
【文献】
特開2010−014162(JP,A)
【文献】
特開2008−296128(JP,A)
【文献】
特開2010−142717(JP,A)
【文献】
特開2003−245514(JP,A)
【文献】
特開2001−300232(JP,A)
【文献】
特開2009−154140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01D 46/00−46/54
F27D 17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中に存在する反応性物質を中和剤により中和処理する排ガス処理装置において、
排ガスが導入される処理室に配設された筒状の濾布と、
インジェクタパイプに設けられたノズルと、
該濾布の表面に中和剤を付着させるために中和剤を供給する中和剤導入部と、
前記処理室に排ガスを導入する排ガス導入部と、
前記排ガスが導入され、濾布の表面に中和反応物質が捕捉された後、前記ノズルから前記筒状の濾布の開口部に、圧縮空気を直接パルス的に供給することにより、前記中和反応物質を払い落とすようにした空気供給部と
を備え、
前記インジェクタパイプからノズルに繋がる部分の圧縮空気流路の内周面にアール又は面取りを付与することにより、該圧縮空気流路の断面積が、ノズルの先端側に向けて漸次減少する形状に形成されてなることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
排ガス中に存在する反応性物質を中和剤により中和処理する排ガス処理装置において、
排ガスが導入される処理室に配設された筒状の濾布と、
インジェクタパイプに設けられたノズルと、
該濾布の表面に中和剤を付着させるために中和剤を供給する中和剤導入部と、
前記処理室に排ガスを導入する排ガス導入部と、
前記排ガスが導入され、濾布の表面に中和反応物質が捕捉された後、前記ノズルから前記筒状の濾布の開口部に、圧縮空気を直接パルス的に供給することにより、前記中和反応物質を払い落とすようにした空気供給部と
を備え、
前記インジェクタパイプからノズルに繋がる圧縮空気流路の断面積が、ノズルの先端側に向けて漸次減少する形状に形成されてなるとともに、前記インジェクタパイプに設けた複数のノズルの圧縮空気流路の断面積を、インジェクタパイプの基端側のノズルより先端側のノズルを順次小さく形成するようにしてなることを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業機器から排出される排ガス中に存在する反応性物質を中和剤により中和処理する濾布を用いた排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業機器から排出される排ガス、特に、燃焼を伴う装置から排出される排ガス中には、煤塵(ダスト)のほか、HCl、SOx等の気体状、その他の反応性物質が存在する。
これらの物質は、人体に有害な物質であるため、排ガス中からこれらを除去することが要求され、多くの排ガス処理装置が実用化されている。
【0003】
その1つに、筒状の濾布を配設した処理室に排ガスを導入し、反応性物質を中和剤により中和処理した中和反応物質を、煤塵等と共に濾布の表面に捕捉するようにした排ガス処理装置が提案され、実用化されている。
【0004】
ところで、上記濾布を用いた排ガス処理装置において、濾布の表面に捕捉された中和反応物質は、煤塵等と共に濾布の表面に堆積していき、この堆積物が濾布の通気抵抗を増大させ、排ガス処理装置の処理能力を低下させることになるため、所定時間毎や通気抵抗が上昇したときに、濾布の表面に捕捉された堆積物を払い落とす必要がある。
【0005】
一方、濾布の表面に捕捉された堆積物を払い落とすための払い落とし機構として、集塵機の技術分野では、
図5に示すように、濾布1の開口部にベンチュリ管11Aを配設し、0.2〜0.6MPaの圧縮空気をインジェクタパイプ2に設けたフラット穴からなるノズル3から、ベンチュリ管11Aを介して、濾布1の内部に供給する方式のものが汎用されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
【0006】
そして、インジェクタパイプ2に圧縮空気を供給する空気供給部4には、コンプレッサ(図示省略)から供給された圧縮空気を貯留するヘッダタンク41と、ヘッダタンク41に接続したフルボディ型のパルス弁42とを備え、ヘッダタンク41に貯留された圧縮空気を、パルス弁42を介して、パルス弁42に接続されたインジェクタパイプ2に供給するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−299732号公報
【特許文献2】特開平11−244634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の汎用の払い落とし機構には、以下の問題点があった。
・圧縮空気をインジェクタパイプ2に設けたフラット穴からなるノズル3から、ベンチュリ管11Aを介して、濾布1の内部に供給する方式の場合、圧縮空気は流路が狭くなったベンチュリ管11Aを通過する際に圧力損失を生じ、圧縮空気による濾布内の圧力上昇速度を低下させるため、0.2〜0.6MPaという高圧の圧縮空気を必要とする。
・インジェクタパイプ2に設けたフラット穴からなるノズル3から噴出された圧縮空気は、一旦急激に拡散し、ベンチュリ管11Aを通過する際に整流され、層流状態となるが、損失を生じやすいため、堆積物を均等に払い落とせない不具合が発生しやすい。
・入手し易く、組み付けが容易なフルボディ型のパルス弁42は、内部圧損が大きく、応答速度が遅いため、堆積物を均等に払い落とせない不具合が発生しやすい。
【0009】
本発明は、上記従来の汎用の払い落とし機構の有する問題点を解消し、比較的低圧の圧縮空気を使用して、堆積物を均等に払い落とすことができるようにした濾布を用いた排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の濾布を用いた排ガス処理装置は、排ガス中に存在する反応性物質を中和剤により中和処理する濾布を用いた排ガス処理装置において、排ガスが導入される処理室に配設された筒状の濾布と、該濾布の表面に中和剤を付着させるために中和剤を供給する中和剤導入部と、前記筒状の濾布の開口部に圧縮空気をインジェクタパイプに設けたノズルから、直接、パルス的に供給することにより濾布の表面に捕捉された中和反応物質を含む堆積物を払い落とすようにした空気供給部とを備えたことを特徴とする。
ここで、「圧縮空気をノズルから直接供給する」とは、上記汎用の払い落とし機構において濾布の開口部に配設しているベンチュリ管を用いず、開放状態の濾布の開口部に物体を介在させることなく、ノズルから圧縮空気を供給することを意味する。
【0011】
この場合において、前記インジェクタパイプからノズルに繋がる圧縮空気流路の断面積が、インジェクタパイプ側からノズルの先端側に向けて漸次減少する形状に形成するようにすることができる。
【0012】
また、前記インジェクタパイプに設けた複数のノズルが、開口穴の周囲が立ち上がった形状に形成するようにすることができる。
【0013】
また、前記インジェクタパイプに設けた複数のノズルの圧縮空気流路の断面積を、インジェクタパイプの基端側のノズルより先端側のノズルを順次小さく形成するようにすることができる。
【0014】
また、前記空気供給部が、圧縮空気を貯留するヘッダタンクと、該ヘッダタンク内に装着されたインサート型のパルス弁とを備え、ヘッダタンクに貯留された圧縮空気をパルス弁に接続されたインジェクタパイプに供給するようにすることができる。
【0015】
また、前記圧縮空気の圧力を、0.1〜0.2MPaに設定するようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の濾布を用いた排ガス処理装置によれば、筒状の濾布の開口部に圧縮空気をインジェクタパイプに設けたノズルから、直接、パルス的に供給することにより濾布の表面に捕捉された中和反応物質を含む堆積物を払い落とすようにした空気供給部を備えることにより、ノズルからパルス的に供給した圧縮空気を、開放状態の濾布の開口部から濾布内に圧力損失を生じることなく導入することができ、濾布内の圧力上昇速度が濾布の先端部まで維持されるため、例えば、0.1〜0.2MPaという比較的低圧の圧縮空気によって、濾布の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0017】
また、インジェクタパイプからノズルに繋がる圧縮空気流路の断面積が、インジェクタパイプ側からノズルの先端側に向けて漸次減少する形状に形成するようにすることにより、圧縮空気が、ノズルから整流されて噴出するため直進性が高く、濾布内の圧力上昇速度が濾布の先端部まで維持されるため、濾布の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0018】
また、インジェクタパイプに設けたノズルが、開口穴の周囲が立ち上がった形状に形成するようにすることにより、損失が小さく、機能的に優れたノズルとすることができる。
【0019】
また、インジェクタパイプに設けたノズルの圧縮空気流路の断面積を、インジェクタパイプに設けたノズルの圧縮空気流路の断面積を、インジェクタパイプの基端側のノズルより先端側のノズルを順次小さく形成するようにすることにより、複数のノズルの各々から噴出される圧縮空気量のばらつきを低減することができ、これによって、各ノズルに対応する濾布の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0020】
また、空気供給部が、圧縮空気を貯留するヘッダタンクと、該ヘッダタンク内に装着されたインサート型のパルス弁とを備え、ヘッダタンクに貯留された圧縮空気をパルス弁に接続されたインジェクタパイプに供給するようにすることにより、パルス弁の内部圧損を低減して、応答速度を高めることができ、これによって、濾布の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の濾布を用いた排ガス処理装置の一実施例の説明図で、(a)は全体図、(b)はインジェクタパイプの断面図である。
【
図2】同濾布を用いた排ガス処理装置の空気供給部の説明図で、(a)はパルス弁が閉弁した状態を示す断面図、(b)はパルス弁が開弁した状態を示す断面図である。
【
図3】インジェクタパイプからノズルに繋がる圧縮空気流路の説明図である。
【
図4】濾布の表面に捕捉され、堆積した堆積物を払い落とすメカニズムの説明図で、(a)は従来の濾布を用いた排ガス処理装置の場合、(b)は本発明の濾布を用いた排ガス処理装置の場合を示す。
【
図5】従来の濾布を用いた排ガス処理装置の説明図で、(a)は全体図、(b)はインジェクタパイプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の濾布を用いた排ガス処理装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜
図2に、本発明の濾布を用いた排ガス処理装置の一実施例を示す。
この濾布を用いた排ガス処理装置は、排ガス中に存在するHCl、SOx等の気体状、その他の反応性物質を中和剤により中和処理するためもので、排ガスが導入される処理室5に配設(例えば、マトリックス状に配設)された筒状の濾布1と、この濾布1の表面に中和剤を付着させるために中和剤を供給する中和剤導入部(図示省略)と、筒状の濾布1の開口部11に、例えば、0.1〜0.2MPaに設定した比較的低圧の圧縮空気を、インジェクタパイプ2に設けたノズル3から、直接、すなわち、従来の汎用の払い落とし機構において濾布1の開口部11に配設しているベンチュリ管11Aを用いず、開放状態の濾布1の開口部11に物体を介在させることなく、パルス的に供給することにより濾布1の表面に捕捉された中和反応物質を含む堆積物を払い落とすようにした空気供給部4とを備えるようにしている。
【0024】
この場合において、インジェクタパイプ2からノズル3に繋がる圧縮空気流路31は、その断面積が、
図3(a)に示すように、均一なものとすることもできるが、
図3(b)に示すように、アールRを付与したり、
図3(c)に示すように、面取りCを付与することにより、インジェクタパイプ2側からノズル3の先端側に向けて漸次減少する形状に形成するようにすることが好ましい。
これにより、圧縮空気が、ノズル3から整流されて噴出するため直進性が高く、濾布1内の圧力上昇速度が濾布1の先端部まで維持されるため、濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0025】
特に、インジェクタパイプ2に設けるノズル3を、インジェクタパイプ2からノズル3に繋がる圧縮空気流路31の断面積が、
図3(b)に示すようにインジェクタパイプ2側からノズル3の先端側に向けて漸次減少する形状に形成するようにするために、本実施例においては、
図1(b)に示すように、開口穴の周囲が立ち上がった形状に形成するようにしている。
これにより、損失が小さく、機能的に優れた、より具体的には、圧縮空気を整流された状態で噴出させることができるノズル3とすることができる。
【0026】
また、濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすようにするために、圧縮空気が整流された状態で噴出されるノズル3を使用する場合、ノズル3と濾布1の開口部11との距離Hは、濾布1の開口部11の直径Dの0.5〜2.5倍程度、好ましくは、1.0〜2.0倍程度に設定することが好ましい。
なお、距離Hが、濾布1の開口部11の直径Dの0.5より小さいと、濾布1の上部の堆積物が払い落とされずに残留しやすい傾向が生じやすく、一方、2.5倍より大きいと、濾布1の下部の堆積物が払い落とされずに残留しやすい傾向が生じやすい。
【0027】
また、インジェクタパイプ2に複数のノズル3を直列に設けるようにする場合、インジェクタパイプ2からノズル3に繋がる圧縮空気流路31の断面積を、インジェクタパイプ2の基端側のノズル3より先端側のノズル3を順次小さく形成するようにする。
これにより、インジェクタパイプ2に直列に設けるようにした複数のノズル3の各々から噴出される圧縮空気量のばらつき(先端部を閉鎖したインジェクタパイプ2に圧縮空気がパルス的に供給されると、インジェクタパイプ2の内圧(静圧)が先端側から基端側に向けて上昇するため、ノズル3の各々から噴出される圧縮空気量にばらつきが生じる。)を低減することができ、これによって、各ノズル3に対応する濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0028】
また、空気供給部4は、コンプレッサ(図示省略)から供給された圧縮空気を貯留するヘッダタンク41と、このヘッダタンク41内に装着されたインサート型のパルス弁42とを備え、ヘッダタンク41に貯留された圧縮空気をパルス弁42に接続されたインジェクタパイプ2に供給するようにされている。
これにより、パルス弁の内部圧損を低減して、応答速度を高めることができ、濾布の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0029】
ここで、パルス弁42には、
図2に示す、ダイヤフラム弁を用いるようにしている。
このダイヤフラム弁は、ヘッダタンク41の筐体に、開口部41bを形成し、この開口部41bを閉鎖するように筐体の外表面にダイヤフラム43を取り付け、このダイヤフラム43に弁体44を配設する。一方、インジェクタパイプ2を、インジェクタパイプ2の基端に形成した弁座2aがヘッダタンク41の筐体内41cに開口するように配設する。これにより、ダイヤフラム43に配設した弁体44の弁座当接面44aと弁座2aとが対向して配置されるようにする。そして、ダイヤフラム43を介して弁体44を変位させることによって、弁体44の弁座当接面44aと弁座2aとが当接する閉弁状態(
図2(a))と、弁体44の弁座当接面44aと弁座2aとの間に間隙流路44bが形成される開弁状態(
図2(b))とに切り替えるようにして、ヘッダタンク41とインジェクタパイプ2とを間隙流路44bによって断続的に連通させ、濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物をインジェクタパイプ2に設けるようにしたノズル3から噴出される圧力気体によって払い落とすようにする。
【0030】
パルス弁42を構成するダイヤフラム弁は、弁体44が開弁状態のとき、弁体44の弁座当接面44aが、開口部41bを形成したヘッダタンク41の筐体の内表面41aと同一面内又はそれよりも弁座2a側に位置するようにしている。
弁体44は、ダイヤフラム43の変位によって移動するもので、閉弁状態から開弁状態までの弁体44の移動距離はパルス弁42のサイズによって概ね一定したものとなる。
したがって、弁体44が開弁状態のとき、弁体44の弁座当接面44aが、開口部41bを形成したヘッダタンク41の筐体の内表面41aと同一面内又はそれよりも弁座2a側に位置するようにするための手段としては、特に限定されるものではないが、弁体44の高さ方向の寸法(移動方向の寸法)を大きく形成するようにすることが好適である。
【0031】
また、図示は省略するが、ヘッダタンク41の開口部41bに沿って、ヘッダタンク41の外表面に座繰り加工を施し、パルス弁42全体をヘッダタンク41の内表面41aに近づけて配設し、弁体44が開弁状態のとき、弁体44の弁座当接面44aが、開口部41bを形成したヘッダタンク41の筐体の内表面41aと同一面内又はそれよりも弁座2a側に位置するようにしても構わない。
【0032】
なお、弁体44が開弁状態のとき、弁体44の弁座当接面44aが、開口部41bを形成したヘッダタンク41の筐体の内表面41aよりも弁座2a側に位置するときは、ヘッダタンク41内の圧縮空気が、インジェクタパイプ2に向かって流れ込むときに、縮流は生じないものの弁体44の外表面に当たり、弁座当接面44aが、開口部41bを形成したヘッダタンク41の筐体の内表面41aと同一面内に位置するときと比べて若干圧縮空気の供給効率が低下するため、弁体44が開弁状態のとき、弁体44の弁座当接面44aが、開口部41bを形成したヘッダタンク41の筐体の内表面41aと同一面内に位置するようにすることが特に好適である。
【0033】
これによって、弁体44が開弁状態のとき、圧縮空気の流れの経路は、ヘッダタンク41の筐体に形成した開口部41b内を通ることがないから、圧縮空気の流れに縮流が生じることがなく、ヘッダタンク41からインジェクタパイプ2内へ圧縮空気が円滑に流れ込み、インジェクタパイプ2に供給される圧縮空気の供給量が低下することがない。
そして、ダイヤフラム弁が開動作をしたときに、瞬時に大容量の圧縮空気がインジェクタパイプ2内に流出し、インジェクタパイプ2に直列に設けるようにした複数のノズル3の各々から圧縮空気を濾布1の開口部11を通して濾布1内に噴出させ、濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物を払い落とすことができる。
【0034】
なお、パルス弁42は、ダイヤフラム43の適所にブリードホール43aを開口し、パルス弁42を閉動作する場合に、ヘッダタンク41内の圧縮空気をブリードホール43aを介して弁室46に導入することにより、素速く弁室46内の圧力がヘッダタンク41の筐体内41cの圧力と等圧になるようにしている。
このブリードホール43aは、できるだけ小さくすることにより、パルス弁42の開動作を速くすることができる。
【0035】
ところで、濾布1の表面に中和剤を付着させるために中和剤を供給する中和剤導入部(図示省略)は、排ガスが処理室5に導入される前工程又は排ガスが処理室5に導入される位置で、排ガスに、例えば、消石灰等の中和剤を添加し、この中和剤を添加した排ガスを処理室5に導入し、濾布1で濾過(除塵処理)することにより、濾布1の表面に中和剤を付着させることができる。
【0036】
この濾布を用いた排ガス処理装置は、筒状の濾布1の開口部11に圧縮空気をインジェクタパイプ2に設けたノズル3から、直接、パルス的に供給することにより濾布1の表面に捕捉された中和反応物質を含む堆積物を払い落とすようにした空気供給部4を備えることにより、ノズル3からパルス的に供給した圧縮空気を、開放状態の濾布1の開口部11から濾布1内に圧力損失を生じることなく導入することができ、濾布1内の圧力上昇速度が濾布1の先端部まで維持されるため、例えば、0.1〜0.2MPaという比較的低圧の圧縮空気によって、濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0037】
濾布1の表面に捕捉され、堆積した堆積物を払い落とすメカニズムを模式的に示すと、従来の濾布を用いた排ガス処理装置の場合、
図4(a)に示すように、パルス的に供給された圧縮空気が、濾布1の上部及び中部で概ね消費されてしまい、下部に堆積した堆積物を払い落とすことができないのに対して、本発明の濾布を用いた排ガス処理装置の場合、
図4(b)に示すように、パルス的に供給された圧縮空気が、濾布1の下部まで到達し、堆積した堆積物を均等に払い落とすことができる。
【0038】
以上、本発明の濾布を用いた排ガス処理装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の濾布を用いた排ガス処理装置は、比較的低圧の圧縮空気を使用して、堆積物を均等に払い落とすことができる特性を有していることから、各種産業機器から排出される排ガス、特に、燃焼を伴う装置から排出される排ガスを中和剤により中和処理する濾布を用いた排ガス処理装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 濾布
11 開口部
2 インジェクタパイプ
3 ノズル
4 空気供給部
41 ヘッダタンク
42 パルス弁
5 処理室