(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のカーボンナノチューブ糸に前記液体を供給する工程において、前記樹脂フィルム上に位置する前記複数のカーボンナノチューブ糸に、前記液体をスプレーすることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
前記複数のカーボンナノチューブ糸に前記液体を供給する工程において、前記樹脂フィルム上に位置しない前記複数のカーボンナノチューブ糸に、前記液体がスプレーされることを規制するように、規制部材を配置することを特徴とする、請求項2に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
前記複数のカーボンナノチューブ糸に前記液体を供給する工程において、前記軸部における中心角が5°以上150°以下の範囲に対して、前記液体がスプレーされるように、前記規制部材を配置することを特徴とする、請求項3に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
前記液体には、微粒子が分散されているか、樹脂材料が溶解されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
前記カーボンナノチューブ糸が、前記複数のカーボンナノチューブが前記カーボンナノチューブ糸の延びる方向に連続的に繋がるカーボンナノチューブ単糸であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
前記複数のカーボンナノチューブ糸を加工する工程において、前記液体がスプレーされた前記複数のカーボンナノチューブ単糸を、前記ローラから引き出した後、撚り合わせて撚糸とすることを特徴とする、請求項6に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
1.第1実施形態
本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法は、例えば、
図2に示すように、ローラ2を準備する工程と、カーボンナノチューブ糸の一例としてのカーボンナノチューブ単糸1を複数準備する工程と、複数のカーボンナノチューブ単糸1をローラ2の周面に引き回す工程と、ローラ2上の複数のカーボンナノチューブ単糸1に液体をスプレーする工程と、複数のカーボンナノチューブ単糸1を加工する工程とを含んでいる。
【0038】
このような製造方法では、まず、ローラ2を準備する。
【0039】
ローラ2は、
図2および
図3Aに示すように、軸部の一例としてのローラ本体15と、樹脂フィルム16とを備えている。
【0040】
ローラ本体15は、金属からなり、所定方向に延びる円柱形状を有している。なお、以下の説明において、ローラ本体15の延びる所定方向を、軸線方向の一例としての左右方向とし、左右方向と直交する方向を前後方向とする。具体的には、各図に示す方向矢印を基準とする。
【0041】
ローラ本体15のサイズは、特に制限されず、ローラ本体15の外径は、例えば、1cm以上20cm以下であり、ローラ本体15の左右方向の寸法は、例えば、1cm以上100cm以下である。そして、ローラ本体15は、その軸線を回転中心として、回転するように構成されている。
【0042】
樹脂フィルム16は、ローラ本体15の周面において、ローラ本体15の全周にわたって配置されている。樹脂フィルム16の厚みは、例えば、1μm以上1000μm以下である。
【0043】
また、樹脂フィルム16は、左右方向において、ローラ本体15の全体に配置されていてもよく、ローラ本体15の一部にのみに配置されていてもよい。樹脂フィルム16が左右方向においてローラ本体15の一部にのみに配置される場合、樹脂フィルム16は、後述する規制板19の開口19Aと対向する位置、好ましくは、ローラ本体15の左右方向略中央に配置される。この場合、樹脂フィルム16の左右方向の寸法は、ローラ本体15の左右方向の寸法100%に対して、例えば、20%以上80%以下である。
【0044】
樹脂フィルム16は、樹脂からフィルム形状に形成されており、樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂などが挙げられる。
【0045】
熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂(例えば、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー、ポリビニリデンフルオライドなど)などが挙げられる。
【0046】
熱硬化樹脂として、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0047】
このような樹脂のなかでは、好ましくは、熱可塑性樹脂、さらに好ましくは、フッ素樹脂、とりわけ好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0048】
また、ローラ2とは別に、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ単糸1を準備する。
【0049】
複数のカーボンナノチューブ単糸1を準備するには、例えば、
図1A〜
図1Dに示すように、化学気相成長法(CVD法)により、基板9上に垂直に配向される複数のカーボンナノチューブ3を成長させた後、複数のカーボンナノチューブ3から、複数のカーボンナノチューブ単糸1を引き出す。
【0050】
より詳しくは、
図1Aに示すように、まず、基板9を準備する。基板9は、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0051】
基板9として、具体的には、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜11が積層されるステンレス基板12などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜11が積層されるステンレス基板12が挙げられる。なお、
図1A〜
図1Dおよび
図2では、基板9が、二酸化ケイ素膜11が積層されるステンレス基板12である場合を示す。
【0052】
そして、
図1Aに示すように、基板9上、好ましくは、二酸化ケイ素膜11上に触媒層13を形成する。基板9上に触媒層13を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、基板9(好ましくは、二酸化ケイ素膜11)上に成膜する。
【0053】
金属触媒としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。このような金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。成膜方法としては、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
【0054】
これによって、基板9上に触媒層13が配置される。なお、基板9が、二酸化ケイ素膜11が積層されるステンレス基板12である場合、二酸化ケイ素膜11および触媒層13は、例えば、特開2014−94856号公報に記載されるように、二酸化ケイ素前駆体溶液と金属触媒前駆体溶液とが混合される混合溶液を、ステンレス基板12に塗布した後、その混合液を相分離させ、次いで、乾燥することにより、同時に形成することもできる。
【0055】
次いで、触媒層13が配置される基板9を、
図1Bに示すように、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層13が、凝集して、複数の粒状体13Aとなる。
【0056】
そして、加熱された基板9に、
図1Cに示すように、原料ガスを供給する。原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1〜4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。
【0057】
また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0058】
原料ガスが水素ガスや不活性ガスを含む場合、原料ガスにおける炭化水素ガスの濃度は、例えば、1体積%以上、好ましくは、30体積%以上、例えば、90体積%以下、好ましくは、50体積%以下である。原料ガスの供給時間としては、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0059】
これによって、複数の粒状体13Aのそれぞれを起点として、複数のカーボンナノチューブ3が成長する。なお、
図1Cでは、便宜上、1つの粒状体13Aから、1つのカーボンナノチューブ3が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体13Aから、複数のカーボンナノチューブ3が成長してもよい。
【0060】
このような複数のカーボンナノチューブ3のそれぞれは、基板9上において、互いに略平行となるように、基板9の厚み方向に延びている。つまり、複数のカーボンナノチューブ3は、基板9に対して直交するように配向(垂直に配向)されている。
【0061】
複数のカーボンナノチューブ3のそれぞれは、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。これらカーボンナノチューブ3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
カーボンナノチューブ3の平均外径は、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下、さらに好ましくは、20nm以下である。
【0063】
カーボンナノチューブ3の平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上、好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、さらに好ましくは、400μm以下である。なお、カーボンナノチューブ3の層数、平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析や、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
【0064】
これによって、複数のカーボンナノチューブ3を備えるカーボンナノチューブ集合体10が、基板9上に形成される。
【0065】
カーボンナノチューブ集合体10は、
図2に示すように、基板9の厚み方向(上下方向)と直交する面方向(前後方向および左右方向)に延びる略シート形状を有している。カーボンナノチューブ集合体10は、複数のカーボンナノチューブ3が前後方向に直線的に並ぶ列10Aを、左右方向に複数備えている。
【0066】
カーボンナノチューブ集合体10において、複数のカーボンナノチューブ3の嵩密度は、例えば、10mg/cm
3以上、好ましくは、20mg/cm
3以上、例えば、60mg/cm
3以下、好ましくは、50mg/cm
3以下である。なお、カーボンナノチューブ3の嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm
2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
【0067】
次いで、
図1Dに示すように、カーボンナノチューブ集合体10から、複数のカーボンナノチューブ単糸1を引き出す。
【0068】
カーボンナノチューブ集合体10から複数のカーボンナノチューブ単糸1を引き出すには、例えば、カーボンナノチューブ集合体10のうち、各列10Aの縦方向端部に位置するカーボンナノチューブ3を、図示しない引出具により一括して保持し、基板9の厚み方向と交差する方向、好ましくは、前後方向に引っ張る。
【0069】
すると、引っ張られたカーボンナノチューブ3は、対応する粒状体13Aから引き抜かれる。このとき、引き抜かれるカーボンナノチューブ3に隣接するカーボンナノチューブ3は、引き抜かれるカーボンナノチューブ3との摩擦力およびファンデルワ―ルス力などにより、そのカーボンナノチューブ3の一端(下端)が、引き抜かれるカーボンナノチューブ3の一端(下端)に付着され、対応する粒状体13Aから引き抜かれる。
【0070】
このとき、一端(下端)にカーボンナノチューブ3が付着されたカーボンナノチューブ3は、その一端(下端)が引出方向の下流に引っ張られることにより、カーボンナノチューブ3の他端(上端)が引出方向の上流に向かうように傾倒し、隣接するカーボンナノチューブ3の他端(上端)に付着する。
【0071】
次いで、他端(上端)にカーボンナノチューブ3が付着されたカーボンナノチューブ3は、その他端(上端)が引出方向の下流に引っ張られることにより、その一端(下端)が対応する粒状体13Aから引き抜かれ、隣接するカーボンナノチューブ3の一端(下端)に付着する。
【0072】
これによって、複数のカーボンナノチューブ3が、順次連続して、カーボンナノチューブ集合体10から引き出され、複数のカーボンナノチューブ3が連続的に繋がるカーボンナノチューブ単糸1を形成する。
【0073】
より詳しくは、カーボンナノチューブ単糸1において、連続するカーボンナノチューブ3は、それらカーボンナノチューブ3の一端(下端)同士または他端(上端)同士が付着されている。
【0074】
カーボンナノチューブ単糸1の引き出し速度としては、例えば、0.1m/分以上、好ましくは、5m/分以上、例えば、100m/分以下、好ましくは、10mm/s以下である。
【0075】
以上によって、カーボンナノチューブ集合体10から、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、同時に一括して引き出される。
【0076】
複数のカーボンナノチューブ単糸1のそれぞれは、撚り合わされていない無撚糸であって、糸形状(線形状)を有している。つまり、カーボンナノチューブ単糸1の撚り角度は、略0°である。
【0077】
そして、カーボンナノチューブ単糸1において、複数のカーボンナノチューブ3のそれぞれは、それらの延びる方向に直線状に連続的に繋がっている。つまり、複数のカーボンナノチューブ3は、カーボンナノチューブ単糸1の延びる方向に沿うように配向されている。なお、
図1Dでは、便宜上、カーボンナノチューブ3が1本ずつ連続的に繋がり、カーボンナノチューブ単糸1を形成するように記載されているが、実際には、複数のカーボンナノチューブ3からなる束が連続的に繋がり、カーボンナノチューブ単糸1を形成している。
【0078】
カーボンナノチューブ単糸1の外径は、例えば、5nm以上、好ましくは、8nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、80nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。
【0079】
また、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、各列10Aのカーボンナノチューブ3が平行に引き出されるため(
図2の拡大図参照)、カーボンナノチューブ単糸1の延びる方向と交差する方向に並列配置されている。なお、第1実施形態では、カーボンナノチューブ単糸1は、前後方向に沿って延びており、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、
図3Bに示すように、左右方向に並列配置されている。このように並列配置される複数のカーボンナノチューブ単糸1は、略シート形状を有しており、カーボンナノチューブシート6として構成される。
【0080】
複数のカーボンナノチューブ単糸1の全体(カーボンナノチューブシート6)の左右方向寸法は、例えば、1mm以上、好ましくは、3mm以上、例えば、500mm以下、好ましくは、300mm以下である。
【0081】
次いで、複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)を、
図3Aに示すように、樹脂フィルム16上に位置するように、ローラ本体15の周方向に引き回す。
【0082】
このとき、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、ローラ本体15における中心角が、例えば、5°〜150°の範囲、好ましくは、10°〜150°の範囲の樹脂フィルム16上に配置される。
【0083】
次いで、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)に、揮発性の液体を供給する。
【0084】
揮発性の液体として、例えば、水、有機溶媒などが挙げられ、好ましくは、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、例えば、低級(C1〜3)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(例えば、アセトンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸エチルなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなど)、極性非プロトン類(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。
【0085】
このような揮発性の液体のなかでは、好ましくは、低級アルコール類、さらに好ましくは、エタノールが挙げられる。このような揮発性の液体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0086】
また、揮発性の液体には、好ましくは、微粒子を分散でき、また、樹脂材料を溶解することもできる。
【0087】
微粒子は、その平均一次粒子径が、例えば、0.001μm以上、好ましくは、0.01μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下の粒子である。微粒子は、特に制限されず、例えば、有機微粒子、無機微粒子などが挙げられる。
【0088】
有機微粒子として、例えば、シリコーン微粒子、アクリル微粒子などが挙げられる。
【0089】
無機微粒子として、例えば、炭素微粒子、金属微粒子(例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、白金、金、ロジウム、パラジウム、および、それらを含む合金など)などが挙げられる。
【0090】
このような微粒子のなかでは、好ましくは、無機微粒子が挙げられ、さらに好ましくは、炭素微粒子が挙げられる。このような微粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0091】
樹脂材料は、特に制限されず、例えば、上記した樹脂が挙げられる。また、樹脂材料として、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性高分子を用いることもできる。
【0092】
なお、揮発性の液体に、微粒子を分散するとともに、樹脂材料を溶解することもできる。
【0093】
複数のカーボンナノチューブ単糸1に対する、揮発性の液体の供給方法としては、特に制限されず、例えば、複数のカーボンナノチューブ単糸1に、揮発性の液体をスプレーする方法(
図2および
図3A参照)や、複数のカーボンナノチューブ単糸1を揮発性の液体に浸漬させる方法(
図6参照)などが挙げられる。
【0094】
このような供給方法のなかでは、好ましくは、複数のカーボンナノチューブ単糸1に揮発性の液体をスプレーする方法が挙げられる。
【0095】
また、複数のカーボンナノチューブ単糸1に揮発性の液体をスプレーする場合、好ましくは、樹脂フィルム16上に位置しない複数のカーボンナノチューブ単糸1に、揮発性の液体がスプレーされることを規制するように、規制部材の一例としての規制板19を配置する。
【0096】
規制板19は、
図2に示すように、正面視略矩形の板形状を有している。規制板19は、その略中央部分において、開口19Aを有している。開口19Aは、正面視略矩形形状を有しており、規制板19を前後方向に貫通している。
【0097】
そして、揮発性の液体は、
図3Aに示すように、規制板19の開口19Aを介して、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)にスプレーされる。
【0098】
このとき、規制板19は、開口19Aにより、所定の範囲に対して液体がスプレーされることを許容する一方、それ以外の範囲に、液体がスプレーされることを規制する。
【0099】
規制板19がスプレーを許容する範囲としては、ローラ本体15における中心角θが、例えば、1°以上、好ましくは、5°以上、例えば、180°以下、好ましくは、150°以下の範囲である。なお、揮発性の液体は、複数のカーボンナノチューブ単糸1の左右方向全体にスプレーされる。
【0100】
これにより、規制板19は、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1に液体がスプレーされることを許容する一方、規制板19は、樹脂フィルム16上に位置しない複数のカーボンナノチューブ単糸1、揮発性の液体がスプレーされることを規制する。
【0101】
また、複数のカーボンナノチューブ単糸1に揮発性の液体を供給する工程では、好ましくは、ローラ2を左側面視時計回り方向に連続的に回転駆動させる。
【0102】
これにより、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、樹脂フィルム16との摩擦により、ローラ2の周方向に移動される。そのため、複数のカーボンナノチューブ単糸1に連続して、揮発性の液体を供給(好ましくは、スプレー)することができる。これによって、複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)に、揮発性の液体が均一に付着する。
【0103】
さらに、揮発性の液体に粒子が分散されている場合、複数のカーボンナノチューブ単糸1には、微粒子が均一に付着し、揮発性の液体に樹脂材料が溶解されている場合、複数のカーボンナノチューブ単糸1には、樹脂材料が均一に付着する。なお、
図3A、
図3Cおよび
図4では、カーボンナノチューブ3に微粒子35が付着する態様を示している。
【0104】
その後、揮発性の液体が気化することにより、各カーボンナノチューブ単糸1において、複数のカーボンナノチューブ3が互いに凝集し、各カーボンナノチューブ単糸1の密度が向上する。
【0105】
このような複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)は、カーボンナノチューブ集合体の一例としての各種産業製品、例えば、カーボンナノチューブ撚糸4、カーボンナノチューブ積層シート5(
図4B参照)などに加工される。
【0106】
なお、第1実施形態では、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、カーボンナノチューブ撚糸4に加工される態様について詳述する。
【0107】
複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)を、カーボンナノチューブ撚糸4に加工するには、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ単糸1をローラ2から引き出す。
【0108】
このとき、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、ローラ2の樹脂フィルム16から分離して引き出される。
【0109】
そして、複数のカーボンナノチューブ単糸1を、束ねた後、回転させて撚り合わせる。これによって、カーボンナノチューブ撚糸4が製造される。
【0110】
カーボンナノチューブ撚糸4の外径は、例えば、5μm以上、好ましくは、40μm以上、例えば、80μm以下、好ましくは、60μm以下、さらに好ましくは、30μm以下である。
【0111】
また、カーボンナノチューブ撚糸4の嵩密度は、例えば、0.6g/cm
3以上、好ましくは、0.6g/cm
3を超過し、さらに好ましくは、0.8g/cm
3以上、例えば、2.0g/cm
3以下である。
【0112】
また、カーボンナノチューブ撚糸4の電気伝導率は、カーボンナノチューブ撚糸4の延びる方向において、例えば、50S/m以上、好ましくは、100S/m以上、例えば、5000S/m以下、好ましくは、1000S/m以下である。なお、電気伝導率は、公知の電気伝導率測定装置(例えば、横河電機社製)により測定される。
【0113】
このカーボンナノチューブ撚糸4の製造方法は、例えば、
図2に示すように、紡績装置20により連続的に実施される。紡績装置20は、供給部21と、スプレー部22と、紡績部23とを備えている。
【0114】
供給部21は、紡績装置20の後側部分に配置されており、複数のカーボンナノチューブ単糸1をスプレー部22に供給するように構成されている。供給部21は、カーボンナノチューブ支持体8と、図示しない引出具とを備えている。
【0115】
カーボンナノチューブ支持体8は、上記の基板9と、上記のカーボンナノチューブ集合体10とを備えている。
【0116】
スプレー部22は、供給部21に対して前側に間隔を空けて配置されている。スプレー部22は、上記のローラ2と、上記の規制板19と、噴霧器24とを備えている。
【0117】
ローラ2は、カーボンナノチューブ支持体8に対して前側に間隔を空けて配置されている。
【0118】
規制板19は、ローラ2に対して前側に間隔を空けて配置されている。規制板19とローラ2との間の間隔は、例えば、0.1mm以上、好ましくは、1mm以上、例えば、50mm以下、好ましくは、20mm以下である。
【0119】
また、規制板19の開口19Aは、樹脂フィルム16のうち、ローラ本体15の中心角が5°以上150°以下の範囲と、前後方向に向き合っている。
【0120】
噴霧器24は、公知の噴霧器であって、規制板19に対して前側に間隔を空けて配置されている。規制板19と噴霧器24との間の間隔は、例えば、10mm以上、好ましくは、30mm以上、例えば、500mm以下、好ましくは、300mm以下である。
【0121】
噴霧器24は、ノズル24Aを備えており、上記の揮発性の液体を後側に向かってスプレーするように構成されている。そして、噴霧器24のノズル24Aは、規制板19の開口19Aを介して、ローラ本体15の中心角が5°以上150°以下の範囲と、前後方向に向かい合っている。
【0122】
紡績部23は、ローラ2に対して後側に間隔を空けて配置されており、収束部26と、回収部25とを備えている。
【0123】
収束部26は、支持板27と、1対の軸28とを備えている。
【0124】
支持板27は、左右方向に延びる平面視略矩形形状の板形状を有している。1対の軸28は、支持板27の上面において、左右方向に互いに僅かな間隔を隔てて配置されている。1対の軸28のそれぞれは、上下方向に延びる略円柱形状を有しており、支持板27に、軸芯周りに相対回転可能に支持されている。
【0125】
回収部25は、収束部26に対して後側に間隔を空けて配置されている。回収部25は、回転部30と、巻取軸29と、回転軸31とを備えている。
【0126】
回転部30は、前側に向かって開放される略コ字状を有している。巻取軸29は、回転部30の左右両側壁の間に配置されている。巻取軸29は、左右方向に延びる略円柱形状を有し、回転部30の左右両側壁に回転可能に支持されている。
【0127】
回転軸31は、回転部30に対して後側に配置されている。回転軸31は、前後方向に延びる略円柱形状を有しており、その前端部が、回転部30の後壁の左右方向中央に固定されている。これによって、回転部30は、回転軸31、つまり、前後方向に沿う軸線を回転中心として回転可能である。
【0128】
このような紡績装置20では、カーボンナノチューブ集合体10から、図示しない引出具により、各列10Aのカーボンナノチューブ3を同時かつ平行に、前側に向かって引き出す。これにより、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、左右方向に並列配置される略シート形状のカーボンナノチューブシート6として、カーボンナノチューブ集合体10から引き出される。
【0129】
次いで、複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)を、樹脂フィルム16上に位置するように、ローラ本体15の周方向に、ローラ2の上端部から下端部に向かって略半周引き回す。その後、複数のカーボンナノチューブ単糸1を、ローラ2から後側に引き出し、1対の軸28の間を通過させる。
【0130】
これによって、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、線形状(糸形状)に束ねられる。そして、束ねられた複数のカーボンナノチューブ単糸1の後端部を、回収部25の巻取軸29に固定する。
【0131】
次いで、ローラ2、巻取軸29および回転軸31に駆動力を入力して、ローラ2を左側面視時計回り方向に回転させるとともに、巻取軸29を左側面視反時計回り方向に回転させ、回転部30を正面視反時計回り方向に回転させる。
【0132】
すると、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、
図3Aに示すように、樹脂フィルム16との摩擦により、ローラ2の回転に伴って、ローラ本体15の周方向に移動する。また、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、カーボンナノチューブ集合体10から連続的に引き出される。
【0133】
ローラ2の回転による、複数のカーボンナノチューブ単糸1の移動速度は、例えば、0.1m/min以上、好ましくは、5m/min以上、例えば、100m/min以下、好ましくは、10m/min以下である。
【0134】
そして、噴霧器24は、ローラ本体15の周方向に移動する複数のカーボンナノチューブ単糸1に、規制板19の開口19Aを介して、上記揮発性の液体をスプレーする。これによって、複数のカーボンナノチューブ単糸1に、揮発性の液体が付着する。
【0135】
このとき、規制板19は、複数のカーボンナノチューブ単糸1の移動方向において、ローラ2よりも上流側および下流側に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1(より具体的には、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1の移動方向上流端部Xよりも上流側、および、移動方向下流端部Yよりも下流側)に、液体が付着することを規制する。
【0136】
その後、液体が付着した複数のカーボンナノチューブ単糸1は、ローラ2の回転および巻取軸29の回転により、ローラ2の樹脂フィルム16から分離するように、ローラ2から後側に送り出される。
【0137】
そして、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、
図2に示すように、1対の軸28を通過して収束部26に束ねられた後、回転軸31の回転により、前側から見て時計回り方向に回転し撚り合わされながら、巻取軸29の回転により、後側に向かって移動し、巻取軸29に巻き取られる。
【0138】
このとき、回転部30の回転速度(周速度)は、例えば、1000rpm以上、好ましくは、2000rpm以上、例えば、5000rpm以下、好ましくは、4000rpm以下である。
【0139】
以上によって、カーボンナノチューブ撚糸4が、紡績装置20により製造される。
【0140】
3.作用効果
このような第1実施形態では、
図3Aに示すように、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1に、揮発性の液体を供給する。そのため、樹脂フィルム16とカーボンナノチューブ単糸1との摩擦により、カーボンナノチューブ単糸1が左右方向に移動することを抑制できる。その結果、並列配置される複数のカーボンナノチューブ単糸1の配向が乱れることを抑制できる。
【0141】
その後、揮発性の液体が気化することにより、各カーボンナノチューブ単糸1において、複数のカーボンナノチューブ3が互いに凝集し、各カーボンナノチューブ単糸1の密度が向上する。
【0142】
そのため、複数のカーボンナノチューブ単糸1の配向を確保することができながら、複数のカーボンナノチューブ単糸1を一括して高密度化できる。
【0143】
また、樹脂フィルム16がローラ2に備えられているので、高密度化された複数のカーボンナノチューブ単糸1は、樹脂フィルム16から分離して得られる。その結果、複数のカーボンナノチューブ単糸1を円滑に加工でき、カーボンナノチューブ撚糸4の生産効率の向上を図ることができる。
【0144】
また、
図3Aに示すように、樹脂フィルム16上の複数のカーボンナノチューブ単糸1に液体をスプレーする。そのため、複数のカーボンナノチューブ単糸1に浸漬により液体を供給する場合と比較して、複数のカーボンナノチューブ単糸1に供給される液体量を容易に調整できる。その結果、複数のカーボンナノチューブ単糸1を一括して高密度化できながら、複数のカーボンナノチューブ単糸1の配向を確実に確保することができる。
【0145】
また、
図2および
図3Aに示すように、規制板19が、樹脂フィルム16上に位置しない複数のカーボンナノチューブ単糸1に、液体がスプレーされることを規制する。そのため、複数のカーボンナノチューブ単糸1の配向が乱れることを確実に抑制できる。
【0146】
また、規制板19は、
図3Aに示すように、ローラ本体15における中心角θが5°以上150°以下の範囲に対して、液体がスプレーされることを許容する一方、それ以外の範囲に、液体がスプレーされることを規制する。そのため、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1に、揮発性の液体を均一にスプレーすることができ、付着する液体量の均一化を図ることができる。その結果、複数のカーボンナノチューブ単糸1の密度の均一化を図ることができる。
【0147】
また、
図3Aおよび
図3Cに示すように、液体に微粒子35が分散されているので、複数のカーボンナノチューブ単糸1に微粒子35を付着させることができる。その結果、複数のカーボンナノチューブ単糸1から加工されるカーボンナノチューブ撚糸4に、微粒子35を均一に担持させることができる。これによって、比表面積の向上を図ることができるとともに、微粒子35の特性(例えば、導電性の向上など)を確実に付与することができる。
【0148】
また、複数のカーボンナノチューブ3は、
図1Dに示すように、カーボンナノチューブ単糸1において、カーボンナノチューブ3糸の延びる方向に連続的に繋がっている。そのため、複数のカーボンナノチューブ3は、カーボンナノチューブ単糸1の延びる方向に沿うように配向される。
【0149】
その結果、カーボンナノチューブ単糸1において、カーボンナノチューブ3の配向性を確実に確保することができ、ひいては、カーボンナノチューブ撚糸4において、カーボンナノチューブ3の配向性を確実に確保することができる。
【0150】
また、
図2および
図3Aに示すように、複数のカーボンナノチューブ単糸1を、ローラ2から引き出し、撚り合わせるという簡易な方法により、複数のカーボンナノチューブ単糸1を円滑に加工でき、カーボンナノチューブ撚糸4を製造できる。そのため、カーボンナノチューブ撚糸4の生産性の向上を図ることができる。
【0151】
4.第2実施形態
次に、
図4Aおよび
図4Bを参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0152】
第1実施形態では、複数のカーボンナノチューブ単糸1がカーボンナノチューブ撚糸4に加工されるが、第2実施形態では、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、
図4Bに示すように、カーボンナノチューブ集合体の一例としてのカーボンナノチューブ積層シート5に加工される。
【0153】
複数のカーボンナノチューブ単糸1を、カーボンナノチューブ積層シート5に加工するには、複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)を、ローラ2の周面に複数周巻き付ける。
【0154】
より具体的には、カーボンナノチューブ集合体10から引き出した複数のカーボンナノチューブ単糸1の前端部を、ローラ2の樹脂フィルム16に固定する。そして、ローラ2を回転させるとともに、複数のカーボンナノチューブ単糸1に、第1実施形態と同様に、液体を供給する。
【0155】
すると、複数のカーボンナノチューブ単糸1が、揮発性の液体がスプレーされた後、ローラ2の周面に順次巻き付けられる。そのため、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、表面に露出するように、すでにローラ2に巻き付けられた複数のカーボンナノチューブ単糸1上に配置され、揮発性の液体がスプレーされる。このとき、表面に露出する外側の複数のカーボンナノチューブ単糸1は、内側の複数のカーボンナノチューブ単糸1との摩擦により、左右方向に移動することが抑制される。
【0156】
これによって、ローラ2の周面に、液体が供給された複数のカーボンナノチューブ単糸1が、複数周巻き付けられる。換言すれば、ローラ2の周面に、液体が供給されたカーボンナノチューブシート6が、ローラ2の径方向に複数積層される。
【0157】
その後、揮発性の液体が気化することにより、各カーボンナノチューブ単糸1の密度が向上するとともに、巻き付けられる複数のカーボンナノチューブ単糸1(積層されるカーボンナノチューブシート6)が、ローラ本体15の径方向に互いに凝集する。
【0158】
次いで、ローラ2に巻き付けられた複数のカーボンナノチューブ単糸1を、切断刃(例えば、剃刀、カッター刃など)により、左右方向に切断し、ローラ2から離脱させる。
【0159】
これによって、
図4Bに示すように、シート形状を有するカーボンナノチューブ積層シート5が製造される。
【0160】
カーボンナノチューブ積層シート5は、厚み方向に、複数のカーボンナノチューブシート6が積層されている。カーボンナノチューブシート6の積層数は、例えば、5層以上、好ましくは、10層以上、例えば、1000層以下、好ましくは、500層以下である。
【0161】
また、カーボンナノチューブ積層シート5の厚みは、例えば、0.01μm以上、好ましくは、5μm以上、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0162】
このようなカーボンナノチューブ積層シート5は、
図4Aに示すように、積層シート製造装置41により連続的に製造することができる。なお、積層シート製造装置41は、紡績部23を備えない点以外は、紡績装置20と同様である。
【0163】
このような第2実施形態によれば、複数のカーボンナノチューブ単糸1の配向が乱れることを抑制できながら、ローラ2に複数周巻き付けられる複数のカーボンナノチューブ単糸1の密度の向上を図ることができる。
【0164】
その後、ローラ2に複数周巻き付けられる複数のローラ2を軸線方向に切断し、ローラ2から離脱させることにより、カーボンナノチューブ積層シート5を製造できる。
【0165】
つまり、複数のカーボンナノチューブ単糸1をローラ2に複数周巻き付け、切断するという簡易な方法により、複数のカーボンナノチューブ単糸1を円滑に加工でき、カーボンナノチューブ積層シート5を製造できる。そのため、カーボンナノチューブ積層シート5の生産性の向上を図ることができる。
【0166】
このような第2実施形態によっても、上記の第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0167】
また、カーボンナノチューブ積層シート5は、例えば、電極として好適に利用される。そのため、カーボンナノチューブ積層シート5の製造においては、揮発性の溶媒に、触媒活性を有する微粒子(例えば、白金、ロジウム、パラジウムなどの金属微粒子)を分散させて、複数のカーボンナノチューブ単糸1に、触媒活性を有する微粒子を担持させることが好ましい。
【0168】
5.変形例
第1実施形態および第2実施形態では、樹脂フィルム16上の複数のカーボンナノチューブ単糸1に、スプレーにより、揮発性の液体を供給するが、これに限定されず、樹脂フィルム16上の複数のカーボンナノチューブ単糸1に、
図5に示すように、浸漬により、揮発性の液体を供給することもできる。
【0169】
このような場合、紡績装置20は、スプレー部22に代えて、浸漬部42を備えている。
【0170】
浸漬部42は、浸漬槽43と、複数の軸44とを備えている。浸漬槽43は、上側に向かって開放される略ボックス形状を有しており、その内部に、上記の揮発性の液体が貯留されている。そして、ローラ2は、ローラ2の下端部が浸漬槽43の液体に浸かるように、配置されている。
【0171】
複数の軸44は、複数のカーボンナノチューブ単糸1(カーボンナノチューブシート6)が、ローラ2に向かった後、ローラ2から送り出されるように、所定の位置に適宜配置されている。
【0172】
これによって、複数のカーボンナノチューブ単糸1は、ローラ2の樹脂フィルム16上において、浸漬槽43内の揮発性の液体に浸漬される。
【0173】
しかし、複数のカーボンナノチューブ単糸1に浸漬により液体を供給すると、複数のカーボンナノチューブ単糸1に液体が過剰に供給される場合がある。このとき、液体の表面張力などにより、並列配置される複数のカーボンナノチューブ単糸1が移動し、互いに隣り合うカーボンナノチューブ単糸1に付着してしまう場合がある。そのため、第1実施形態および第2実施形態は、この変形例よりも好ましい。
【0174】
また、第1実施形態および第2実施形態では、規制板19は、
図3Aに示すように、ローラ2と噴霧器24との間に配置されるが、規制板19は、樹脂フィルム16上に位置しない複数のカーボンナノチューブ単糸1に、液体がスプレーされることを規制できれば、その配置は特に制限されない。
【0175】
例えば、
図6に示すように、規制板19の開口19Aを、第1実施形態と比較して、大きく形成し、ローラ2が開口19A内に位置するように、規制板19を配置することもできる。
【0176】
この場合、開口19Aの上側周縁部が、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1の移動方向上流端部Xと僅かな間隔を空けて向かい合い、開口19Aの下側周縁部が、樹脂フィルム16上に位置する複数のカーボンナノチューブ単糸1の移動方向下流端部Yと僅かな間隔を空けて向かい合っている。
【0177】
このような変形例によっても、上記の第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0178】
また、第1実施形態および第2実施形態において、揮発性の液体が供給された複数のカーボンナノチューブ単糸1を、乾燥させた後、加工することもできる。
【0179】
この場合、紡績装置20では、
図3Aにおいて仮想線で示すように、乾燥器40を備えている。
【0180】
乾燥器40は、ローラ2と収束部26との間に配置されている。乾燥器40は、公知の乾燥装置であって、内部に、複数のカーボンナノチューブ単糸1が通過するように構成されている。
【0181】
そのため、揮発性の液体が付着する複数のカーボンナノチューブ単糸1は、乾燥器40を通過するときに、例えば、80℃以上120℃以下に加熱されて乾燥される。
【0182】
また、積層シート製造装置41では、図示しないが、複数のカーボンナノチューブ単糸1が巻き付けられたローラ2全体を、加熱して、複数のカーボンナノチューブ単糸1を乾燥する。
【0183】
なお、複数のカーボンナノチューブ単糸1の加熱は、好ましくは、減圧下で実施される。
【0184】
これらによって、揮発性の液体が確実に気化して、各カーボンナノチューブ単糸1において、密度の向上を確実に図ることができる。
【0185】
このような変形例によっても、上記の第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0186】
また、第1実施形態では、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ単糸1をカーボンナノチューブ撚糸4に加工するが、これに限定されず、複数のカーボンナノチューブ単糸1をカーボンナノチューブ無撚糸(カーボンナノチューブ集合体の一例)に加工することもできる。
【0187】
この場合、例えば、特開2014−169521号公報に記載の方法などにより、複数のカーボンナノチューブ単糸1を穴部を有するダイに通過させる。
【0188】
また、第1実施形態では、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ単糸1を、カーボンナノチューブ集合体10から一括して引き出しているが、カーボンナノチューブ単糸1を、カーボンナノチューブ集合体10から、1本ずつ複数回引き出すこともできる。
【0189】
この場合、1本ずつ引き出された複数のカーボンナノチューブ単糸1を、並列配置させる必要があるので、第1実施形態のほうが好ましい。
【0190】
また、
図3Aに示すように、第1実施形態では、ローラ2が、金属からなるローラ本体15と、樹脂からなる樹脂フィルム16とを備えているが、これに限定されず、ローラ2は、ローラ本体15および樹脂フィルム16が一体として、樹脂から形成されてもよい。
【0191】
これら第1実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0192】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0193】
実施例1
ステンレス製の基板に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
【0194】
次いで、基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板上において、平面視略矩形形状のカーボンナノチューブ集合体が形成された。カーボンナノチューブ集合体において、複数のカーボンナノチューブは、互いに略平行となるように延び、基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。カーボンナノチューブの平均外径は、約12nm、カーボンナノチューブの平均長さは、約200μm、カーボンナノチューブ集合体における、複数のカーボンナノチューブ3の嵩密度は、約40mg/cm
3であった。
【0195】
そして、カーボンナノチューブ集合体において、前端部に配置される複数のカーボンナノチューブを、引出具により、全幅にわたって一括して保持し、前側に引っ張った。これによって、カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ単糸を引き出した。カーボンナノチューブ単糸の引き出し速度は、0.18m/分以下であった。カーボンナノチューブ単糸の平均径は、約60nm〜80nmであった。
【0196】
次いで、
図2に示す紡績装置により、複数のカーボンナノチューブ単糸に、エタノール(揮発性の液体)をスプレーした後、撚り合わせてカーボンナノチューブ撚糸を調製した。
【0197】
なお、紡績装置が有するローラ本体は、外径が5cmであり、樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンフィルムであった。
【0198】
以上により、カーボンナノチューブ撚糸が調製された。
【0199】
実施例2
複数のカーボンナノチューブ単糸に、浸漬によりエタノールを供給した以外は、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ撚糸を調製した。
【0200】
実施例3
実施例1と同様にして、複数のカーボンナノチューブ単糸を準備した。次いで、
図4Aおよび
図4Bに示す積層シート製造装置により、複数のカーボンナノチューブ単糸に、エタノール(揮発性の液体)をスプレーするとともに、複数のカーボンナノチューブ単糸をローラの周面に複数周巻き付けた。
【0201】
なお、積層シート製造装置が有するローラ本体は、外径が5cmであり、樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンフィルムであった。
【0202】
その後、複数のカーボンナノチューブ単糸が巻き付けられたローラを、減圧下で100℃に加熱して、複数のカーボンナノチューブ単糸を乾燥させた。
【0203】
次いで、ローラの周面に複数周巻き付けた複数のカーボンナノチューブ単糸を左右方向に切断して、ローラから離脱させて、カーボンナノチューブ積層シートを調製した。カーボンナノチューブ積層シートの厚みは、10〜20μmであった。
【0204】
実施例4
エタノールに炭素微粒子を分散した以外は、実施例3と同様にして、カーボンナノチューブ積層シートを調製した。炭素微粒子の一次平均粒子径は、0.5μmであり、炭素微粒子の分散濃度は、0.05質量%であった。
評価:
1)スプレーと浸漬との比較
実施例1および2において、エタノールが供給された直後の複数のカーボンナノチューブ単糸を目視により確認した。実施例1では、並列配置される複数のカーボンナノチューブ単糸が互いに付着することなく配向していた。実施例2では、並列配置される複数のカーボンナノチューブ単糸のうち、一部のカーボンナノチューブ単糸が互いに隣り合うカーボンナノチューブ単糸と付着していた。
2)電極性能
実施例3および4のカーボンナノチューブ積層シートを、電気二重層キャパシタの電極として、静電容量および導電抵抗を評価した。
【0205】
なお、電気二重層キャパシタは、2極式セルであって、電解液は、1.6mol/Lのトリエチルメチルアンモニウム-テトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液(TEMA−BF
4/PC)であった。また、静電容量および導電抵抗は、電気化学測定システム(Solartron社製、1280B)により測定した。その結果を表1に示す。
【0206】
【表1】
【0207】
3)電極性能
実施例3のカーボンナノチューブ積層シートの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、
図7Aに示し、実施例4のカーボンナノチューブ積層シートのSEM写真を、
図7Bに示す。
【0208】
図7Bでは、炭素微粒子が偏在し、その周りがカーボンナノチューブで被覆されていることが確認される。