(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、本発明のフロントフォークFは、車体側チューブ2と車軸側チューブ3とを摺動自在に嵌合したフォーク本体1と、フォーク本体1内に収容されるとともに車体側チューブ2と車軸側チューブ3との間に介装される懸架ばねSと、車体側チューブ2の端部を閉塞するキャップ4と、キャップ4に回転可能に装着されるばねアジャスタAと、ばねアジャスタAの回転によってキャップ4に対して軸方向へ変位してこの変位を懸架ばねSへ伝達するプレートPと、プレートPの外周側に配置される筒部材としてのケース部14aを有するアダプタ14とを備えて構成されている。
【0019】
また、このフロントフォークFでは、ばねアジャスタAとは別にキャップ4に非同軸に装着される第一アジャスタ5および第二アジャスタ6と、車体側チューブ2内に収容されるとともに車体側チューブ2の中心に配置される第一調整ロッド7と、車体側チューブ2内に収容されるとともに第一調整ロッド7の外周に配置される筒状の第二調整ロッド8とをさらに備えている。
【0020】
以下、各部について説明する。フォーク本体1は、車体側チューブ2内に車体側チューブ2より小径な車軸側チューブ3を符示しない軸受を介して摺動自在に挿入して構成され、伸縮自在とされている。なお、車体側チューブ2を車軸側チューブ3より小径に設定して、車軸側チューブ3内に車体側チューブ2を挿入するようにしてもよい。
【0021】
そして、フォーク本体1内にはダンパカートリッジDが収容されており、このダンパカートトリッジDは、フォーク本体1の伸縮に伴って伸縮して減衰力を発揮する。ダンパカートリッジDは、車軸側チューブ3の下端開口部を閉塞する図外のボトムキャップに固定されたシリンダ9と、シリンダ9内に摺動自在に挿入されてシリンダ9内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2に仕切るピストン10と、ピストン10に連結されてシリンダ9内に摺動自在に挿入されると共に車体側チューブ2の上端開口部を閉塞するキャップ4に連結されるピストンロッド11とを備えている。また、ダンパカートリッジDとフォーク本体1との間に形成される環状隙間を液体と気体が充填されるリザーバRと利用し、このリザーバRとシリンダ9に設けた図示しない孔を通じて圧側室R2に連通してある。よって、伸縮時にシリンダ9内に出入りするピストンロッド11の体積分に見合った液体がシリンダ9内とリザーバRとでやり取りされて体積補償できるようになっている。なお、液体には、作動油の使用が可能なほか、減衰力を発揮可能な液体であれば使用可能である。
【0022】
また、ピストン10は、環状であって、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート10aおよび圧側ポート10bを備えている。そして、ピストン10の
図1中下端には、伸側ポート10aを開閉する環状の伸側リーフバルブ12が積層され、ピストン10の
図1中上端には、圧側ポート10bを開閉する環状の圧側リーフバルブ13が積層されている。これらピストン10、伸側リーフバルブ12および圧側リーフバルブ13は、ともに、ピストンロッド11の
図1中下端に連結されるピストン連結部材15の外周に装着されている。伸側リーフバルブ12および圧側リーフバルブ13は、内周側がピストンロッド11に固定されており、ともに外周側は撓んでピストン10から離間して、それぞれ対応する伸側ポート10aと圧側ポート10bを開放できるようになっている。
【0023】
ピストンロッド11は、筒状とされており、
図1中上端が、キャップ4に螺着されるアダプタ14を介してキャップ4に連結されている。ピストンロッド11の
図1中下端には、ピストン10をピストンロッド11に連結するピストン連結部材15が装着されている。
【0024】
ピストン連結部材15は、
図2に示すように、筒状であって、ピストンロッド11の先端外周に螺着される筒状のソケット部15aと、ソケット部15aから
図2中下方へ伸びる筒状のピストン装着軸15bと、ソケット部15aの伸側室R1に臨む側方から開口して内部に通じる横孔15cと、横孔15aよりも圧側室R2側の内径を小径にして設けた環状弁座15dと、ソケット部15aの横孔15cよりもキャップ4側である
図2中上方に軸方向に沿って設けられて内外を連通する長孔15eとを備えている。
【0025】
環状弁座15dは、内径が小さくなる部分を設けて段部を形成し、この段部で形成されているが、ピストン連結部材15内に筒状或いは環状の部材を装着して、この部材で環状弁座を設けるようにしてもよい。
【0026】
また、ピストン連結部材15の下端は、圧側室R2に臨んでおり、横孔15cが伸側室R1に臨んでいて、横孔15cと、ピストン連結部材15の内部であってこの横孔15cよりも圧側室R2側にて伸側ポート10aおよび圧側ポート10bを迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通するバイパス路Bを形成している。
【0027】
ピストン連結部材15内には、
図2に示すように、軸方向移動可能であって前記の環状弁座15dに離着座するニードル弁16が収容されている。このニードル弁16は、ピストン連結部材15の内周に摺動自在に挿入される基部16aと、基部16aより小径で基部16aから延びる軸部16bと、軸部16bの先端に設けられて環状弁座15dに離着座可能な円錐状の弁体16cとを備えている。そして、基部16aとピストン連結部材15内に環状弁座15dを形成する段部との間には、コイルばね17が介装されていて、ニードル弁16は、環状弁座15dから離間する方向へ附勢されている。
【0028】
また、ピストン連結部材15のソケット部15aの内方には、環状の調整板18が軸方向移動可能に挿入されており、この調整板18には、長孔15eに挿通されて外方へと延びる腕18aが設けられている。ケソット部15aの外周には、環状のばね受21が軸方向移動材に設けられており、このばね受21は腕18aに当接されている。
【0029】
さらに、ピストン連結部材15のソケット部15aの外周には、環状のスライダ19が摺動自在に装着されている。スライダ19の
図2中下端は、拡径されており、圧側リーフバルブ13の外周の反ピストン側面に当接している。
【0030】
そして、ソケット部15aの外周であって、スライダ19とばね受21との間には調整ばねとしてのコイルばね20が圧縮状態で介装されており、圧側リーフバルブ13は、コイルばね20の附勢力によってピストン10へ向けて押し付けられている。
【0031】
他方、ピストンロッド11内には、筒状の第二調整ロッド8が軸方向移動自在に挿入されており、この第二調整ロッド8は、ピストン連結部材15のソケット部15a内に挿入されて、
図2に示すように、調整板18を押せるようになっている。また、第二調整ロッド8の内方には、第一調整ロッド7が軸方向移動自在に挿入されており、第一調整ロッド7の下端は、
図2に示すように、調整板18の内方を通ってニードル弁16の
図2中上端に接している。なお、第一調整ロッド7は、
図1に示すように、第二調整ロッド8よりも軸方向長さが長く設定されていて、両端が第二調整ロッド8の両端から外方へ突出している。また、第一調整ロッド7および第二調整ロッド8の
図1中上端は、ピストンロッド11の上端から外方へ突出されている。第一調整ロッド7と第二調整ロッド8は、ともにピストンロッド11内で独立して軸方向移動可能である。
【0032】
よって、第一調整ロッド7をコイルばね17のばね力に抗して
図2中押し下げると、ニードル弁16の弁体16cが環状弁座15dへ近づく。反対に、第一調整ロッド7を
図2中上方へ移動させると、ニードル弁16がコイルばね17によって押し上げられて、弁体16cが環状弁座15dから離間する。このように、第一調整ロッド7を
図2中上下動させると、ニードル弁16が環状弁座15dに対して遠近するので、ニードル弁16と環状弁座15dの間に形成される流路面積(弁開度)を調節できる。なお、バイパス路Bに設けるのは、ニードル弁16に限定されるものではなく、バイパス路B内で第一調整ロッド7によって変位して流路面積或いは開弁圧を可変にする可変減衰バルブを使用できる。
【0033】
また、第二調整ロッド8を
図2中押し下げると、ばね受21が調整板18に押されて
図2中下方へ移動してコイルばね20が圧縮され、コイルばね20が圧側リーフバルブ13をピストン10へ向けて押す附勢力が大きくなる。反対に、第二調整ロッド8を
図2中上方へ移動させると、コイルばね20がばね受21および調整板18を押し上げて伸長するので、コイルばね20の圧側リーフバルブ13を附勢する力が弱まる。このように、第二調整ロッド8を
図2中上下動させると、コイルばね20の圧縮度合が変化し前記附勢力が変化するので、圧側リーフバルブ13の開弁圧を調節できる。
【0034】
このように構成されたフロントフォークFは、フォーク本体1が伸長する場合、ダンパカートリッジDも伸長して、伸側室R1がピストン10によって圧縮される。そして、フォーク本体1の伸長速度が低速であって、伸側室R1の圧力が伸側リーフバルブ12を開弁させるまで至らない場合、ニードル弁16が開弁している状態では、伸側室R1内の液体がバイパス路Bを通じて圧側室R2へ移動する。この液体の流れに対してニードル弁16が抵抗を与えるために、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じて、フロントフォークFは伸長作動を抑制する減衰力を発揮する。また、フォーク本体1の伸長速度が高速となり、伸側室R1の圧力が伸側リーフバルブ12を開弁させるようになると、ニードル弁16が開弁している状態では、伸側室R1内の液体がバイパス路Bだけでなく伸側ポート10aをも通じて圧側室R2へ移動する。この液体の流れに対してニードル弁16と伸側リーフバルブ12が抵抗を与えるために、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じて、フロントフォークFは伸長作動を抑制する減衰力を発揮する。
【0035】
ここで、第一調整ロッド7を軸方向へ移動させてニードル弁16の弁開度を変更できるので、フロントフォークFの伸側の減衰力の特性(伸縮速度に対する減衰力の特性)を調整できる。
【0036】
また、フォーク本体1が収縮する場合、ダンパカートリッジDも収縮して、圧側室R2がピストン10によって圧縮される。そして、フォーク本体1の収縮速度が低速であって、圧側室R2の圧力が圧側リーフバルブ13の開弁圧に至らない場合、ニードル弁16が開弁している状態では、圧側室R2内の液体がバイパス路Bを通じて伸側室R1へ移動する。この液体の流れに対してニードル弁16が抵抗を与えるために、圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じて、フロントフォークFは収縮作動を抑制する減衰力を発揮する。また、フォーク本体1の収縮速度が高速となり、圧側室R2の圧力が圧側リーフバルブ13の開弁圧に達するようになると、ニードル弁16が開弁している状態では、圧側室R2内の液体がバイパス路Bだけでなく圧側ポート10bをも通じて伸側室R1へ移動する。この液体の流れに対してニードル弁16と圧側リーフバルブ13が抵抗を与えるために、圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じて、フロントフォークFは収縮作動を抑制する減衰力を発揮する。
【0037】
ここで、第二調整ロッド8を軸方向へ移動させてコイルばね20の圧縮量を変更して圧側リーフバルブ13の開弁圧変更できるので、フロントフォークFの圧側の減衰力の特性(伸縮速度に対する減衰力の特性)を調整できる。
【0038】
このように、第一調整ロッド7によるニードル弁16の変位調整では、フロントフォークFの伸側の減衰力を調整でき、第二調整ロッド7のコイルばね20の圧縮量調整ではフロントフォークFの圧側の減衰力を調整できる。
【0039】
つづいて、キャップ4に装着されるばねアジャスタAについて詳しく説明する。キャップ4には、
図3および
図4に示すように、ばねアジャスタAのほかに第一アジャスタ5および第二アジャスタ6が装着されている。
【0040】
キャップ4は、
図3から
図5に示すように、円盤状の蓋部41と蓋部41の
図3中下端に設けられて筒状であって車体側チューブ2の端部内周に螺着される螺子筒部42とを有するキャップ本体40と、蓋部41を軸方向に貫く第一孔43、第二孔44および第三孔45と、第二孔44に装着される第一アジャスタケース46と、第三孔45に装着される第二アジャスタケース47とを備えている。また、螺子筒部42の内周には、アダプタ14が螺着されており、キャップ4にピストンロッド11が連結される。
【0041】
図3に示すように、第一孔43は、キャップ4の軸方向視でキャップ4の中心Oから偏心した位置に設けられており、第二孔44は、キャップ4の中心に掛かる位置に設けられており、第三孔45は、第一孔43および第二孔44から離間して中心Oから偏心した位置に設けられている。第一孔43、第二孔44および第三孔45は、ともに、蓋部41に対して
図4、5中下方側が大径で上方側が小径に設定されている。
【0042】
そして、第二孔44の大径部位44aには、
図5に示すように、筒状の第一アジャスタケース46が圧入により装着されており、第三孔45の大径部位45aには、筒状の第二アジャスタケース47が圧入により装着されている。
【0043】
第一アジャスタケース46は、筒状であって、
図5中下方内周の断面形状が多角形型とされた多角形内周部46aが設けられており、
図5中上方内周には、螺子溝46bが設けられている。第二アジャスタケース47も同様に、筒状であって、
図5中下方内周の断面形状が多角形型とされた多角形内周部47aが設けられており、
図5中上方内周には、螺子溝47bが設けられている。
【0044】
ばねアジャスタAは、円柱状のばねアジャスタ本体31と、ばねアジャスタ本体31の中間に設けたフランジ32と、ばねアジャスタ本体31の
図4中上端の外周に装着され外形が六角形状の調整環33と、ばねアジャスタ本体31の外周に装着されて調整環33のばねアジャスタ本体31からの抜けを阻止するリング34と、ばねアジャスタ本体31のフランジ32よりも
図4中下方の外周に設けた螺子部35とを備えている。そして、ばねアジャスタAは、第一孔43内にキャップ4の
図4中下方から挿入される。また、調整環33の内周の形状は、円形以外の形状とされており、ばねアジャスタ本体31の調整環33の装着部位の外形も調整環33の内周に符合する形状とされている。よって、調整環33内にばねアジャスタ本体31に挿入すると、調整環33はばねアジャスタ本体31に対して軸周りで回転不能となる。続いて、キャップ4の上方へ突出するばねアジャスタ本体31の外周に装着される調整環33をリング34で抜けを阻止すると、調整環33とフランジ32がキャップ4を
図4中上下から挟み、ばねアジャスタAがキャップ4に対して軸周りに回転可能に装着される。
【0045】
第一アジャスタ5は、円柱状の本体51と、本体51の
図5中下端に設けられて第一調整ロッド7の
図5中上端面であるキャップ側端面に当接する円盤状の当接部52と、側方から開口する袋孔53と、本体51の外周に設けられて第一アジャスタケース46の螺子溝46bに螺合する螺子部54とを備えている。
【0046】
そして、キャップ4に圧入された第一アジャスタケース46内に第一アジャスタ5を挿入し、螺子部54を螺子溝46bに螺合して、キャップ4に第一アジャスタ5が装着される。そして、本体51の
図5中上端には、マイナスドライバの先端の差込を許容する溝51aが設けられており、前記ドライバを用いて第一アジャスタ5をキャップ4に対して回転操作できるようになっている。
【0047】
また、袋孔53内には、コイルばね55と、コイルばね55によって袋孔53から突出するように附勢されるボール56が収容されている。第一アジャスタ5を第一アジャスタケース46内に挿入して螺子部54を螺子溝46bに螺合すると、袋孔53が第一アジャスタケース46の多角形内周部46aに対向するようになっている。よって、ボール56は、コイルばね55によって、常に、多角形内周部46aに向けて押し付けられている。そして、ボール56が多角形内周部46aの角に正対すると、コイルばね55が最も伸長した状態となる。この状態から第一アジャスタ5を第一アジャスタケース46に対して回転させると、コイルばね55が圧縮されて第一アジャスタ5の回転を妨げる抵抗力を発揮し、ボール56が多角形内周部46aの内周の角に正対する位置へ留めようとする。よって、第一アジャスタ5は、第一アジャスタケース46に対して周方向で多角形内周部46aの角に一致する箇所で位置決めされるようになっており、多角形内周部に設けた角の数で位置決めされる。たとえば、多角形内周部46aの断面形状が六角形であれば第一アジャスタ5は、六箇所で位置決められる。このように、コイルばね55、ボール56および第一アジャスタケース46によって、第一アジャスタ5の周方向で位置決める第一ディテント機構DH1が構成される。ディテント機構については、一例であるので、本例以外の他の構造で構成されてもよい。
【0048】
第二アジャスタ6は、円柱状の本体61と、本体61の
図5中下端に設けたれて第二調整ロッド8の
図5中上端面であるキャップ側端面に当接する円盤状の当接部62と、側方から開口する袋孔63と、本体61の外周に設けられて第二アジャスタケース47の螺子溝47bに螺合する螺子部64とを備えている。
【0049】
そして、キャップ4に圧入された第二アジャスタケース47内に第二アジャスタ6を挿入し、螺子部64を螺子溝47bに螺合して、キャップ4に第二アジャスタ6が装着される。そして、本体61の
図5中上端には、マイナスドライバの先端の差込を許容する溝61aが設けられており、前記ドライバを用いて第二アジャスタ6をキャップ4に対して回転操作できるようになっている。
【0050】
また、袋孔63内には、コイルばね65と、コイルばね65によって袋孔63から突出するように附勢されるボール66が収容されている。第二アジャスタ6を第二アジャスタケース47内に挿入して螺子部64を螺子溝47bに螺合すると、袋孔63が第二アジャスタケース47の多角形内周部47aに対向するようになっている。よって、ボール66は、コイルばね65によって、常に、多角形内周部47aに向けて押し付けられている。そして、ボール66が多角形内周部47aの角に正対すると、コイルばね65が最も伸長した状態となる。この状態から第二アジャスタ6を第二アジャスタケース47に対して回転させると、コイルばね65が圧縮されて第二アジャスタ6の回転を妨げる抵抗力を発揮し、ボール66が多角形内周部47aの内周の角に正対する位置へ留めようとする。よって、第二アジャスタ6は、第二アジャスタケース47に対して周方向で多角形内周部47aの角に一致する箇所で位置決めされるようになっており、多角形内周部に設けた角の数で位置決めされる。たとえば、多角形内周部47aの断面形状が六角形であれば第二アジャスタ6は、六箇所で位置決められる。このように、コイルばね65、ボール66および第二アジャスタケース47によって、第二アジャスタ6の周方向で位置決める第二ディテント機構DH2が構成される。ディテント機構については、一例であるので、本例以外の他の構造で構成されてもよい。
【0051】
このように構成された第一アジャスタ5を回転操作すると、第一アジャスタ5がキャップ4の一部を構成する第一アジャスタケース45に螺着されていてキャップ4に対して軸方向に移動でき、当接部52に当接している第一調整ロッド7を軸方向へ移動できる。よって、第一アジャスタ5のキャップ4に対する回転操作によって、ニードル弁16の弁開度を変更でき、フロントフォークFの伸側の減衰力の特性(伸縮速度に対する減衰力の特性)を調整できる。
【0052】
他方、第二アジャスタ5を回転操作すると、第二アジャスタ6がキャップ4の一部を構成する第二アジャスタケース47に螺着されていてキャップ4に対して軸方向に移動でき、当接部62に当接している第二調整ロッド8を軸方向へ移動できる。よって、第二アジャスタ6のキャップ4に対する回転操作によって、コイルばね20の圧縮量を変更して圧側リーフバルブ13の開弁圧変更でき、フロントフォークFの圧側の減衰力の特性(伸縮速度に対する減衰力の特性)を調整できる。
【0053】
そして、第一アジャスタ5の当接部52と第二アジャスタ6の当接部62は、
図3から
図5に示すように、互いに、軸方向にずらして配置されており、第一アジャスタ5の当接部52が第二アジャスタ6の第二アジャスタケース47に干渉しないように配置されている。また、ばねアジャスタA、第一アジャスタ5の本体51および第二アジャスタ6の本体61は、互いに接触しないようにキャップ4に配置されている。つまり、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6は、互いに全く干渉しないようになっている。さらに、ばねアジャスタAは、第一アジャスタ5の当接部52と第二アジャスタ6の当接部62と車体側チューブ2の軸方向視で互いに重ならないようにキャップ4に装着され配置され、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6に干渉しない。したがって、ばねアジャスタAは、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6のキャップ4に対する軸方向(
図5中上下方向)の移動を妨げず、また、キャップ4に対して第一アジャスタ5および第二アジャスタ6の干渉されずに軸周りに回転できる。
【0054】
アダプタ14は、有底筒状であってキャップ4の螺子筒部42の内周に螺着されるケース部14aと、ケース部14aの底を貫通するD形の一対の切欠孔14bと、ケース部14aの底に設けた筒状のロッド締結部14cとを備えて構成されている。一対の切欠孔14bは、直線部分を互いに向い合せにして設けられており、ケース部14aの底は、軸方向視で角丸長方形とされている。また、ケース部14a内には、ばねアジャスタA、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6が収容される。さらに、ロッド締結部14c内周には、螺子溝が設けられており、ロッド締結部14c内は、ケース部14aの底を貫く孔14dによってケース部14a内に通じている。よって、ピストンロッド11をロッド締結部14cに挿入し螺着すると、孔14dを通して第一調整ロッド7および第二調整ロッド8の先端がケース部14a内に突出できるようになっている。
【0055】
プレートPは、この場合、円盤状であって、
図6に示すように、軸方向視で中心から偏心した位置であってばねアジャスタAの螺子部35に符合する位置に設けた螺子孔36と、第一アジャスタケース46および第二アジャスタケース47の挿通を許容する切欠37とを備えている。なお、
図6では、図が複雑とならないように、車体側チューブ2、筒部材であるケース部14a、キャップ4における螺子筒部42の断面のハッチングと、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6の記載を省略している。
【0056】
また、プレートPは、外周を筒部材であるアダプタ14のケース部14aの内周に摺接させている。よって、ばねアジャスタAを回転させると、プレートPは、ばねアジャスタAの取付中心である螺子孔36の中心Gを軸にして回転しようとする。しかしながら、プレートPの回転中心がキャップ4に同心に装着されるアダプタ14の中心から偏心しているため、プレートPは、筒部材であるケース部14aによって回り止めされる。よって、ばねアジャスタAを回転操作すると、プレートPは、送り螺子の要領でケース部14a内で軸方向へ移動する。このように、プレートPは、回り止めされるので、第一アジャスタケース46に装着される第一アジャスタ5および第二アジャスタケース47に装着される第二アジャスタ6に干渉しない。したがって、プレートPは、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6のキャップ4に対する軸方向(
図5中上下方向)の移動を妨げず、また、キャップ4に対して軸方向へ移動できる。
【0057】
なお、プレートPをケース部14aの内周で回り止めするには、
図6に示すように、プレートPは、プレートPにおけるばねアジャスタAの取付中心を通るケース部14aの内周の法線Nを周方向で挟む二箇所でケース部14aに接していればよい。つまり、法線Nを中心にして、この法線Nの周方向の両側でプレートPはケース部14aに接していればよい。よって、プレートPの形状は、円盤状に限定されるものではなく、前記法線Nを挟む二箇所で点接触するような形状であってもよい。本実施の形態のプレートPは、外周に筒部材であるケース部14aの内周に摺接する円弧面を備えているので、ケース部14aによって回り止めされて軸方向へ移動する際に、ケース部14aの内周を齧らないので、円滑に移動できる。また、プレートPは、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6に干渉しないようになっていればよいので、円盤を外周から切欠いた形状、つまり扇状として、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6を回避できるようにしてもよい。プレートPが扇状である場合、円弧面を筒部材であるケース部14aの内周に摺接して回り止めを形成すればよく、この場合も、プレートPは円滑に軸方向へ移動できる。
【0058】
さらに、ケース部14a内には、ばね受部材70が収容されている。ばね受部材70は、プレートPに当接する環状部71と、環状部71から
図3中下方へ延びてアダプタ14の一対の切欠孔14bのそれぞれからアダプタ14の外方へ突出する二つのばね支持部72とを備えている。このばね受部材70のばね支持部72の下方には、筒状の懸架ばね受73が設けられている。また、
図1に示すように、懸架ばね受73とダンパカートリッジDのシリンダ9との間には懸架ばねSが介装されている。つまり、懸架ばねSは、車体側チューブ2と車軸側チューブ3との間に介装されており、フロントフォークFを常に伸長方向へ附勢している。よって、このフロントフォークFを鞍乗車両の前輪と車体との間に介装すると、車体を懸架ばねSで弾性支持を支持できる。なお、ばね支持部72で直接懸架ばねSの
図1中上端を支持してもよい。また、アダプタ14のケース部14aの底に設ける切欠孔14bの形状および設置数はケース部14aの底の強度不足を招かない範囲で任意に決定でき、ばね支持部72の設置数は切欠孔14bの設置数以下であれば任意に決定できる。ばね支持部72は、懸架ばね受73或いは懸架ばねSに当接するので、ばね支持部72が懸架ばね受73或いは懸架ばねSを支持するうえでは、ばね支持部72の設置数は二つ以上とされるとよい。
【0059】
そして、ばねアジャスタAを回転操作すると、プレートPが筒部材としてのケース部14aによって回り止めされて、アダプタ14内で軸方向である
図4中上下方向へ移動できる。プレートPを
図4中下方へ移動させるとばね受部材70および懸架ばね受73も
図4中下方へ移動する。反対に、プレートPを
図4中上方へ移動させると懸架ばねSが懸架ばね受73およびばね受部材70を押し上げるので、懸架ばね受73が上方へ移動する。このように、ばねアジャスタAでプレートPを
図4中上下動させると、懸架ばね受73が懸架ばねSの
図1中上端を支持する支持位置が変化するので、フロントフォークFを鞍乗車両に適用すると鞍乗車両の車高を調整できる。
【0060】
前述のように、本発明のフロントフォークFでは、ばねアジャスタAがキャップ4に対して軸方向視で中心Oから偏心した位置に回転可能に装着されるとともにフォーク本体1内に突出する外周に螺子部35を有し、ばねアジャスタAの螺子部35に螺着されて懸架ばねSの支持位置を変更するプレートPがケース部(筒部材)14aに対してばねアジャスタAの取付中心を通るケース部14aの法線を周方向両側の二箇所で接するようになっている。よって、ばねアジャスタAをキャップ4に対して中心Oから偏心した位置に設けても、ばねアジャスタAに螺着されるプレートPをケース部14aで回り止めできる。このように構成すると、キャップ4に第一アジャスタ5および第二アジャスタ6を設けても、プレートPを小型にできるため、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6に干渉しないように配置できる。
【0061】
よって、本発明のフロントフォークFによれば、ばねアジャスタAを備えつつも複数のアジャスタ5,6の設置が可能となる。なお、ばねアジャスタA以外のアジャスタの設置数は前記したところに限定されるものではない。また、筒部材をアダプタ14のケース部14aとしているが、キャップ4の螺子筒部42の一部または全部を筒部材として機能させるようにしてもよい。
【0062】
そして、プレートPが筒部材であるケース部14aの内周に接する円弧面を備えると、ばねアジャスタAの回転操作によるトルクでプレートPがケース部14aの内周に強く押しつけられても、プレートPはケース部14aの内周を傷めず円滑に軸方向へ移動できる。なお、前記円弧面は、円弧面が形成される範囲内に前記法線との交点が存在するようにプレートPに設ければよい。
【0063】
前述のように、本発明のフロントフォークFでは、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6がキャップ4に対して軸方向に移動可能に装着されるとともに、プレートPが第一アジャスタ5および第二アジャスタ6の挿通を許容する切欠37を備えている。そのため、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6のそれぞれがキャップ4に軸方向移動しても、プレートPによって干渉されず独立して対応する第一調整ロッド7および第二調整ロッド8を移動できる。また、本発明のフロントフォークFによれば、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6がキャップ4に対して軸方向に移動可能に装着されている。よって、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6によって回り止めされて軸方向へ移動して第一調整ロッド7および第二調整ロッド8を移動させる部品が不要であり、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6の構造が非常に簡単となる。
【0064】
また、車体側チューブ2の軸方向視で中心に配置される第一調整ロッド6に当接する第一アジャスタ5がキャップ4の車体側チューブ2の軸方向視で中心に掛かる位置に設けられると、当接部52の径を小さくできる。当接部52を小さくできるので、第二アジャスタ6の当接部62との干渉を避けるうえで、第二アジャスタ6の設置位置の自由度が高く、設計自由度が向上する。なお、第一アジャスタ5および第二アジャスタ6をキャップ4に対して車体側チューブ2の軸方向視で中心を外れた位置、つまり、第一アジャスタ5の本体51および第二アジャスタ6の本体61が軸方向視でキャップ4の中心Oを外れた位置への設置も可能である。
【0065】
第一アジャスタ5と第二アジャスタ6をキャップ4に軸方向移動可能に取り付けるには、螺着以外の構造を採用してもよい。たとえば、第一アジャスタ5と第二アジャスタ6をキャップ4に対して進退できるようにして、ディテント機構を用いて複数個所で位置決め可能にしておくような構造も採用できる。しかし、本実施の形態のフロントフォークFのように、第一アジャスタ5と第二アジャスタ6をキャップ4に螺着し、周方向への回転操作によってキャップ4に対して軸方向へ移動可能とすると、軸方向へ移動させる構造だけでなく移動操作も非常に簡単となる。
【0066】
また、キャップ4とピストンロッド11とを連結するアダプタ14が有底筒状の筒部材(ケース部)14aと、底に設けた切欠孔14bを備え、懸架ばねSとプレートPとの間に、アダプタ14の切欠孔14bからアダプタ14の外方へ突出して懸架ばねSを支持するばね支持部72を有するばね受部材70を設けたので、プレートPの変位で懸架ばねSの支持位置を変更する構造が容易に実現される。
【0067】
さらに、プレートPが円盤状である場合には、ばね受部材70の環状部71の全体に当接できるから、ばね受部材70が傾かずに軸方向へ移動でき、円滑な車高調整を実施できる。
【0068】
また、キャップ4が前記第一アジャスタ5が挿通される第二孔44と前記第二アジャスタ6が挿通される第三孔45とを有するキャップ本体40と、第二孔44に装着される第一アジャスタケース46と、第三孔45に装着される第二アジャスタケース47とを備える場合には、以下の利点がある。第一アジャスタ5が螺着される筒状の第一アジャスタケース46と第二アジャスタ6が螺着される筒状の第二アジャスタケース47をキャップ本体40とは別体としたので、材料費が低く押さえられる。第一アジャスタケース46と第二アジャスタケース47をキャップ本体40と同一母材から一体的に形成する場合、第一アジャスタケース46と第二アジャスタケース47の軸方向長さの確保するために、蓋部41の肉厚を厚くする必要がある。これに対して、第一アジャスタケース46と第二アジャスタケース47をキャップ本体40と別体で形成するので、キャップ本体40の蓋部41を薄くできる。また、筒状の第一アジャスタケース46と第二アジャスタケース47に多角形内周部46a,47aと螺子溝46b,47bを設ける方がよりキャップ本体40に設けるよりも加工が容易であるため、加工コストも低減できる。第一アジャスタ5の本体51と第二アジャスタ6の本体61の外径を同一にし、第一アジャスタケース46と第二アジャスタケース47を同一形状にすると、第一アジャスタケース46と第二アジャスタケース47を共通部品とできるので、製造コストも低減できる。
【0069】
第一アジャスタケース46と第一アジャスタ5との間に第一アジャスタ5を周方向に複数個所に位置決める第一ディテント機構DH1と、第二アジャスタケース47と第二アジャスタ6との間に第二アジャスタ6を周方向に複数個所に位置決める第二ディテント機構DH2を設ける場合には、以下の利点がある。第一アジャスタ5と第二アジャスタ6が周方向の複数個所に位置決めされるので、ユーザーがフロントフォークFの減衰力特性を調整する際に、位置決めされる箇所でユーザー自身がどのような減衰力特性に設定しているかを把握でき、何度調整を繰り返しても同じ減衰力特性を再現できる。
【0070】
また、本実施の形態におけるフロントフォークFでは、前記フォーク本体1内に収容されるダンパカートリッジDを備えている。そして、第一アジャスタ5で第一調整ロッド7を介してダンパカートリッジDの可変減衰バルブ(ニードル弁16)の流路面積を変更可能でき、第二アジャスタ6で第二調整ロッド8を介して圧側リーフバルブ13を附勢するコイルばね20のばね力を変更できる。よって、フロントフォークFの伸側と圧側の減衰力調整を第一アジャスタ5と第二アジャスタ6の操作で容易に実施できる。
【0071】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。