(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を2.36〜7.23質量部、(C)普通細骨材を68〜92質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する弾性タイル下地調整材。
施行厚5mm以上の厚塗りに適した弾性タイル下地調整材であって、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を3.02〜7.23質量部、(C)普通細骨材を68〜91質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する弾性タイル下地調整材。
施工厚さ5mm未満の薄塗りに適した弾性タイル下地調整材であって、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を2.36〜6.33質量部、(C)普通細骨材を71〜92質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する弾性タイル下地調整材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この方法では、東日本大震災以降多発する地震による大きな変形には追従できないおそれがある。
【0005】
また、昨今の施工対象の多様化から、広範囲な面に効率良く施工できる下地材が求められている。弾性タイル下地調整材に軽量化や変形追従性を得る上で必要な軽量骨材に、パーライトやガラスビーズ等の無機系の中空粒子を使用すると、特に吹付け施工などを行う場合、ポンプ圧送時に圧送ホース内圧によりモルタル中の水分がパーライト、ガラスビーズの空隙に取られ閉塞を起こす。その結果、吹付け施工ができなくなるといった支障をきたすため施工上の制約があった。また、軽量骨材にエチレン酢酸ビニルと炭酸カルシウムの複合発泡体を使用するだけでは使用材料間の比重差から圧送ホース内で材料分離を起こし、閉塞するおそれがあるうえ吹付け時に結合材と骨材が分離する可能性が高く施工に支障をきたすおそれがあった。
【0006】
したがって、本発明の課題は、躯体コンクリートの変形に対する優れた追従性、躯体コンクリートおよびタイル張付けモルタルとの長期付着耐久性、およびコテ作業性等の左官施工性に優れるだけに留まらず、吹付け施工にも十分適した弾性タイル下地調整材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、前記課題を解決できる弾性タイル下地調整材について種々検討した結果、セメント系の弾性タイル下地調整材を構成する材料に、普通骨材と軽量骨材からなる細骨材中の軽量骨材に特定の発泡率で発泡させた有機系樹脂を使用し、普通細骨材と発泡樹脂細骨材の配合量、ポリマーの配合量、一般に耐アルカリ性を呈する高分子繊維の繊維長と混和量等を調整することにより、地震による大きな変形にも追従し長期間安定的に高い付着強度を発現するとともに良好な施工性も得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[7]を提供するものである。
【0009】
[1](A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を2.36〜7.23質量部、(C)普通細骨材を68〜92質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する弾性タイル下地調整材。
[2]施工厚さ5mm以上の厚塗りに適した弾性タイル下地調整材であって、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を3.02〜7.23質量部、(C)普通細骨材を68〜91質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する弾性タイル下地調整材。
[3]施工厚さ5mm未満の薄塗りに適した弾性タイル下地調整材であって、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を2.36〜6.33質量部、(C)普通細骨材を71〜92質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する弾性タイル下地調整材。
[4]発泡樹脂細骨材がエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタンである前記[1]〜[3]のいずれかの弾性タイル下地調整材。
[5]発泡樹脂細骨材がエチレン−酢酸ビニル共重合体またはポリプロピレンである前記[1]〜[3]のいずれかの弾性タイル下地調整材。
[6]さらに(G)シラン系撥水剤を0.22〜0.36質量部含有する前記[1]〜[5]のいずれかの弾性タイル下地調整材。
[7]消泡剤を含有しないことを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかの弾性タイル下地調整材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の弾性タイル下地調整材を用いれば、優れた変形追従性が得られ、長期間安定的に躯体コンクリートおよびタイル張付けモルタルと高い付着強さが得られる。さらに、発泡樹脂骨材の発泡率と混和量、普通細骨材量、ポリマー量、高分子繊維の繊維長と混和量を最適に調整することでコテ塗り施工もポンプ圧送による吹付け施工も可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の弾性タイル下地調整材は、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、(A2)膨張材が4.5〜5.2質量部、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材を2.36〜7.23質量部、(C)普通細骨材を68〜92質量部、(D)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂を固形分換算で6.05〜7.40質量部、(E)繊維長10mm以下の高分子繊維を0.05〜0.25質量部含有する。
【0013】
本発明において、弾性タイル下地調整材とは、タイル張りを施す躯体コンクリートを必要に応じて表面処理した後、タイル張りの前に塗布される調整材である。また、厚塗りとは、施工厚さ5mm以上の場合であり、一般に躯体コンクリートに不陸がある場合に施される。薄塗りとは、施工厚さ5mm未満の場合であり、一般に躯体コンクリートに不陸がない場合に施工される。
【0014】
本発明の弾性タイル下地調整材には、硬化成分として(A1)ポルトランドセメントを含有する。本発明のポルトランドセメントとしては、市販のポルトランドセメントが使用可能である。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどが使用できる。その他、高炉セメント、シリカセメント等の各種混合セメント、白色セメント、アルミナセメント等の特殊セメントも使用可能である。
【0015】
本発明の弾性タイル下地調整材に使用できる(A2)膨張材としては、モルタルやコンクリートに使用可能なものであれば特に限定されず、水和膨張性の膨張材として生石灰を有効成分とするものやカルシウムサルフォアルミネートを有効成分とするものを挙げることができる。膨張材を配合使用することで、主に乾燥収縮が抑制され、施工箇所の形状寸法安定性が図れるとともに収縮亀裂の発生を防ぐことができる。例えば、太平洋マテリアル(株)製の商品名「太平洋エクスパン(構造用)」や商品名「太平洋ジプカル」等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
(A2)膨張材の使用量は、施工厚さによらず(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し4.5〜5.2質量部が必要であり、4.5〜5.1質量部が好ましく、4.5〜5.0質量部がより好ましい。4.5質量部未満では、収縮低減効果が十分に得られず、ひび割れの発生するおそれがある。5.2質量部を超えると過膨張のおそれがあるとともに遅れ膨張の発生するおそれがあり適当ではない。
【0017】
本発明に用いる細骨材は、(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材、および(C)普通細骨材の2種を含む。本発明では、普通細骨材に加えて、(B)9〜14倍という特定の範囲の発泡率を有する発泡樹脂細骨材を使用する点に特徴がある。
【0018】
本発明に用いられる(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材としては、発泡率を9〜14倍にせしめて発泡させた有機系樹脂からなる中空状の粒であれば特に限定されないが、発泡によって閉口気孔率40〜90%の有機材質の軽量細骨材が特に断熱性及び防変性を付与するうえで好ましい。尚、本発明において、発泡率とは、発泡前の粒とそれが発泡した後の粒との嵩体積の増加倍率を表す。発泡率9倍未満のものでは曲げ強さ、圧縮強さ、引張強さ、ヤング率が低下するため、タイル張り材との付着力が低下する。その結果、長期付着耐久性も低下するため好ましくない。また、発泡率14倍を超えるものでは厚付け性が低下するため、発泡樹脂細骨材を使用した意味を失うため好ましくない。発泡樹脂細骨材の樹脂としては、所望の変形追従性が得やすいことから、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等を挙げることができるが、広範囲の用途に適することからエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンがより好ましい。
【0019】
また、(B)発泡樹脂細骨材の粒径は、細骨材として使用したモルタルの施工性及び強度の点から0.09〜3.0mmが好ましい。したがって、施工厚さは、20mmを超えない方が良い。さらに、本発明に用いられる(B)発泡率9〜14倍である発泡樹脂細骨材は、粒径が0.09〜3.0mmの範囲で、嵩比重は0.07〜0.12がより好ましい。嵩比重が小さすぎると単位容積質量が低下し、良好なフレッシュ性状と良好な硬化性状が得られず、施工性も低下する。嵩比重が大きすぎると単位容積質量が大きくなり過ぎ、強度発現性も大きくなる。そのため、変形追従性が低下する。また、施工性は低下してダレやすくなる。
【0020】
(B)発泡樹脂細骨材の使用量は、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し2.36〜7.23質量部必要である。2.36質量部未満では、静弾性係数が大きくなり変形追従性が低下する。7.23質量部を超えると曲げ強さと躯体コンクリートおよびタイル張り材等との付着強さが低下する。
【0021】
(B)発泡樹脂細骨材の配合量は施工厚さ5mm以上厚塗りする場合、(A1)ポルトランドセメントに対し3.02〜7.23質量部が好ましく、より好ましくは4.00〜7.14質量部であり、さらに好ましくは、4.34〜6.00質量部である。
(B)発泡樹脂細骨材の配合量は施工厚さ5mm未満の薄塗りをする場合、(A1)ポルトランドセメントに対し2.36〜6.33質量部が好ましく、より好ましくは2.36〜5.78質量部であり、さらに好ましくは、3.28〜5.50質量部である。
【0022】
軽量骨材としては、発泡質無機系粒のパーライト、ガラスビーズ等の使用は、タイル下地調整材用としてポンプ圧送し、吹付け施工することは施工的に適さない。特に、ポンプ圧送管や吹付装置の吹出口が閉塞するおそれがある。
【0023】
(C)普通細骨材としては、石灰砂、珪砂、寒水石、川砂、陸砂、砕砂等が挙げられる。(C)普通細骨材の粒径は1.2〜0.045mmが好ましい。粗粒率は、1.4〜1.9が好ましい。(C)普通細骨材の配合量は、施工厚さによらず、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し68〜92質量部必要である。68質量部未満では、強度が低下し混和した効果がない。92質量部を超えると本発明の弾性タイル下地調整材の静弾性係数が大きくなり、変形追従性が低下する。
施工厚さ5mm以上厚塗りする場合は、(A1)セメント100質量部に対し68〜91質量部が好ましく、75〜86質量部がより好ましく、75〜83質量部がさらに好ましい。
施工厚さ5mm未満の薄塗りをする場合、(C)普通細骨材は、(A1)セメント100質量部に対し71〜92質量部が好ましく、75〜86質量部がより好ましく、75〜83質量部がさらに好ましい。
【0024】
本発明に用いられる(D)ポリマーとしては、再乳化形粉末樹脂及び/又はポリマーディスパージョンが使用可能である。再乳化形粉末樹脂としては、JIS A 6203に規定されたものを使用でき、ポリマーディスパージョンとしては、同じくJIS A 6203に規定されたものを使用することができる。すなわち、前記再乳化形粉末樹脂としては、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどを主成分とする粉末状の樹脂を使用することができる。また、再乳化形粉末樹脂の製造方法は限定されることなく、粉末化方法やブロッキング防止法などのいずれの製法によって製造してもよい。また、前記ポリマーディスパージョンとしては、エチレン酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、又はスチレンブタジエンなどを主成分とする樹脂を使用することができる。また、これらのポリマーを2種以上併用することも可能である。
【0025】
(D)ポリマーディスパージョンおよび再乳化粉末樹脂の配合量は、施工厚さによらず(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し固形分換算で6.05〜7.40質量部が必要であり、好ましくは6.10〜7.20質量部であり、より好ましくは、6.20〜6.67質量部である。6.05質量部未満では、破断時の変位量が低下するため良好な変形追従性が得られない。7.40質量部を超えると粘性が高くなり施工性が低下する。
【0026】
本発明に使用できる(E)高分子繊維としては短繊維と収束型があるがどちらも使用可能である。有機繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等が使用可能であり、2種類以上併用することも可能である。
【0027】
変形追従性に加え、ダレ防止等のコテ作業性を同時に向上させるためには、繊維長が10mm以下の高分子繊維の使用が有効である。繊維長が10mmを超えると曲げ強さの向上はできるが、モルタルとの付着性が大きくなり破断時の変形量が小さくなるとともに破断時のひずみが小さくなって変形追従性の向上には寄与しないので好ましくない。
【0028】
本発明に使用できる(E)高分子繊維の配合量は、(A)セメント100質量部に対し0.05〜0.25質量部が必要であり、0.10〜0.17質量部がより好ましい。0.05質量部未満では混和した効果がなく、0.25質量部を超えるとコテ作業性が低下するとともに、単位体積当たりの繊維量が過剰なため付着強さが低下する。
【0029】
本発明の弾性タイル下地調整材には、施工後の弾性タイル下地調整材の乾燥を防止し、良好な施工性を得るため、(F)保水剤を配合することができる。(F)保水剤としてはセルロース誘導体が好ましい。セルロース誘導体としては、水に溶解するものであればいずれのものでも良く、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等の水溶性セルロース誘導体が挙げられる。これらの中でもメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。
【0030】
(F)保水剤の配合量は、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し0.11〜0.27質量部が好ましい。保水剤をこの範囲で配合することにより、施工後の弾性タイル下地調整材の乾燥が防止でき、また、適正な施工性が得られる。
【0031】
施工厚さ5mm以上の厚塗りをする場合、(F)保水剤の配合量は、(A1)セメント100質量部に対し0.11〜0.21質量部が好ましく、0.11〜0.20質量部がより好ましく、0.15〜0.20質量部がさらに好ましい。
施工厚さ5mm未満の薄塗りをする場合、(F)保水剤の配合量は、(A1)セメント100質量部に対し0.23〜0.27質量部が好ましく、0.24〜0.27質量部がより好ましい。
【0032】
本発明の弾性タイル下地調整材には、施工面に撥水性を付与する目的で(G)撥水剤を使用してもよい。本発明に使用できる(G)撥水剤は、セメントモルタルに混和し高アルカリ条件下で反応性のシラノールとなるシラン化合物が好ましい。例えば、有機シラン、ポリシラン等である。具体例としては、アクゾノーベル(株)製の商品名「シール80」等であるが、記載例に限定されるものではない。反応性シラノールは、シラノール基間の架橋や無機化合物との反応により表面が疎水性に変性される。そのため、シラン系撥水剤は練混ぜ性状が良く、本発明の弾性タイル下地調整材は硬化後適切な撥水性を発揮する。
【0033】
(G)撥水剤の配合量は、撥水性の付与及び経済性の点から、(A1)ポルトランドセメント100質量部に対し、0.22〜0.36質量部が好ましい。
【0034】
本発明の弾性タイル下地調整材に消泡剤を混和することは好ましくない。消泡剤は、シリコーン系と脂肪酸系があり、消泡効果と付随して得られる撥水効果がある。消泡剤を混和すると硬化後表層部が必要以上な撥水性を呈するため、塗り重ねた場合1層目と2層目の付着力が低下する。したがって、消泡剤を混和することは好ましくないが、撥水剤と併用するとさらに塗り重ね界面及び表層部の撥水性が高まるため付着力が低下するので好ましくない。
【0035】
本発明の弾性タイル下地調整材の練混ぜ水量は、水セメント比で51〜63%が好ましく、施工厚さ5mm以上厚塗りする場合、水セメント比で52〜63%が好ましく、施工厚さ5mm未満の薄塗りを行う場合には、水セメント比で51〜63%が好ましい。より詳細には、本発明の弾性タイル下地調整材を施工厚さ5mm以上金ゴテで塗り付ける場合、水セメント比は、練り混ぜ性、施工性等の点で51〜63%が好ましい。本発明の弾性タイル下地調整材を吹付け施工で厚さ5mm以上塗り付ける場合、水セメント比は、練り混ぜ性、ポンプ圧送性の点から、52〜63%が好ましい。本発明の弾性タイル下地調整材を施工厚さ5mm未満に金ゴテで塗り付ける場合、水セメント比は、練り混ぜ性、施工性の点から51〜63%が好ましい。本発明の弾性タイル下地調整材を吹付け施工で厚さ5mm未満に塗り付ける場合、水セメント比は、練り混ぜ性、圧送性の点から51〜63%が好ましい。
【0036】
本発明の弾性タイル下地調整材の性能を効率良く発揮させるコンシステンシーは、フロー値170〜190mmであることが好ましい。フロー値がこの範囲であると、コテ作業性及び吹付け性状が良好であり、躯体コンクリートとの付着性が良好であり、ダレが生じず、厚付けも薄付けも可能であり、施工効率が良好である。また、良好な施工作業性を確保する上で、セメント系下地調整剤のフレッシュ状態での単位容積質量を1.3〜1.65に調整するのが好ましい。単位容積質量が小さすぎる下地調整材は、タイル下地の調整に使用した場合、付着強さが十分に得られない可能性があり、塗料下地の調整に使用した場合には軽量骨材量が多く平滑な仕上がり面が得られず、ピンホールが発生する可能性がある。したがって、塗装下地の調整に使用するためには、表面を平滑にするしごき材が必要になり施工効率の低下と製造コストの増加を引き起こす。また、単位容積質量が大きすぎる下地調整材は、厚塗りが難しくヤング率が高くなる。そのため、高い変形追従性が得られないおそれがある。
【0037】
本発明の弾性タイル下地調整材の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般的にセメントモルタルやセメントペーストと概ね同様な方法で製造することができる。例えば、市販のモルタルミキサーに配合材料を投入し、適宜練り混ぜるだけで容易に得ることができる。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0039】
実施例1〜24及び比較例31〜52
表1記載の材料で表11、表13、表15、表17記載の処方で弾性タイル下地調整材を製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
得られた弾性タイル下地調整材を用いて、フレッシュ性状、硬化性状、コテ作業性、吹付け性状を評価した。これらの評価方法を次に示し、評価結果を表12、表14、表16、表18に示した。
【0042】
<フレッシュ性状の確認>
各試験は20℃の試験室で実施した。
1−1.フロー試験
JISR5201により測定した。
1−2.単位容積質量の測定
500mLステンレス製容器を用い、JISA1171により測定した。
【0043】
<フレッシュ性状の評価基準>
フレッシュ性状は、タイル下地調整材として実現場で施工した際、コテ作業性と吹付け性状が優れている必要がある。各試験項目の評価基準は次の通りとなる。表2に評価基準を示し、総合評価基準を表3に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
<硬化性状の確認>
各試験は20℃の試験室で実施した。
2−1.曲げ強さ試験
JISA1171に従って作製した4×4×16cmの試験体を用い、材齢28日でたわみ量0.5mm/min一定で曲げ強さ試験を実施した。試験はn=3とし、平均値を試験値とした。
【0047】
載荷は
図1に示すように中央集中載荷とした。
【0048】
2−2.圧縮強さ試験
材齢28日で曲げ強さ試験終了後の試験体を用い、たわみ量0.5mm/min一定で圧縮強さ試験を実施した。試験はn=6とし、平均値を試験値とした。
【0049】
2−3.割裂引張強さ試験
JISA1171に従って作製したφ5×10cmの試験体を用い、材齢28日でたわみ量0.5mm/min一定で割裂引張強さ試験を実施した。また、
図2に示す位置にひずみゲージを張り、破断時のひずみを測定した。割裂引張強さ及び破断時の評価基準を表8に示す。
【0050】
2−4.静弾性係数の測定
JISA1171に従って作製した各試料のφ5×10cm試験体を材齢28日でJIS
1149により静弾性係数を測定した。試験はn=3で実施し、平均値を試験値とした。
【0051】
2−5.付着試験
JISA6916CM-2により太平洋マテリアル(株)製商品名太平洋トフコンEの5倍液を150g/m
2塗布した70×70×20mmのモルタル板を用いて各試料を5mm厚さで塗り付けた。標準養生で材齢28日まで養生し、付着強さを測定した。試験はn=3で実施し、平均値を試験値とした。
図3に試験体の縦断面図を示す。
【0052】
<硬化性状の評価基準>
硬化性状の評価基準を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
<硬化性状の総合評価基準>
硬化性状の総合評価基準を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
<コテ作業性の確認>
コテ作業性の評価試験
20℃の試験室で450×900×60mmコンクリート版に4mmおよび8mm厚さで400×450mmの範囲に金ゴテで各試料を塗り付け、コテ作業性の評価を行った。評価基準を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
総合評価
コテ作業性の総合評価基準を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
<吹付け性状の確認>
100Lモルタルミキサーで練り上げた試料を吐出量8〜12L/分のモルタルポンプを用いて20m圧送した。圧送された試料は、コンプレッサーを繋げた吹付けノズルで900×1800×12mmの構造用合板を2枚連結し、1800×1800×12mmの壁体とした。ポンプ圧送性,吹付け性状を確認した。連続吹付けが可能であった時間と吹付け厚さ、ダレの有無を確認した。吹付け厚さは4mmおよび8mmとし、評価基準を表8に示す。
【0061】
【表8】
【0062】
総合評価
吹付け性状の総合評価基準を表9に示す。
【0063】
【表9】
【0064】
<全総合評価>
物性試験結果、コテ作業性の総合評価結果、吹付け性状の総合評価結果を考慮した全総合評価基準を表10に示す。
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
【表12】
【0068】
【表13】
【0069】
【表14】
【0070】
【表15】
【0071】
【表16】
【0072】
【表17】
【0073】
【表18】