特許第6462503号(P6462503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462503
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】エンジンスタータシステム
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/04 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
   F02N11/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-122170(P2015-122170)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-8741(P2017-8741A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】仙波 大助
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 典之
(72)【発明者】
【氏名】野口 建
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅通
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−189675(JP,A)
【文献】 特開2004−308645(JP,A)
【文献】 特開2012−241562(JP,A)
【文献】 実開昭58−176569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SRモータによりエンジンの始動を行うエンジンスタータシステムであって、
前記SRモータは、複数のポールと該ポールのそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータと同軸に配置されたロータと、を有し、
前記ロータは、前記エンジンのクランクシャフトに連結され、前記クランクシャフトと同期して回転し、
前記ロータと前記クランクシャフトは、前記エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、所定の前記ポールが前記ロータの所定の位置と対向するように連結され
前記コイルは、位相を異にする電流が通電供給される複数相の相コイルからなり、
前記エンジンを停止させる際、1相の前記相コイルのみに通電することにより、前記ロータの所定の位置を前記所定のポールと対向させて停止させ、前記ピストンを上死点又は上死点を若干越えた位置にて停止させることを特徴とするエンジンスタータシステム。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンスタータシステムにおいて、
前記エンジン始動時は、前記エンジン停止の際に通電した前記コイルとは異なる前記コイルに通電することを特徴とするエンジンスタータシステム。
【請求項3】
請求項記載のエンジンスタータシステムにおいて、
前記ポールは前記ステータの径方向内側に向かって突設されるとともに、
前記ロータは、前記ステータの内側に配置され、径方向外側に向かって突設された複数の突極を有し、
前記エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、所定の前記突極が所定の前記ポールと対向することを特徴とするエンジンスタータシステム。
【請求項4】
請求項1記載のエンジンスタータシステムにおいて、
前記エンジン始動時は、前記エンジン停止の際に通電した前記相コイルに隣接する他相の相コイルに通電することを特徴とするエンジンスタータシステム。
【請求項5】

SRモータによりエンジンの始動を行うエンジンスタータシステムであって、
前記SRモータは、複数のポールと該ポールのそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータと同軸に配置されたロータと、を有し、
前記ロータは、前記エンジンのクランクシャフトに連結され、前記クランクシャフトと同期して回転し、
前記ロータと前記クランクシャフトは、前記エンジンの最大乗越しトルク位置において前記SRモータの出力トルクが最大となるように連結され、
前記コイルは、位相を異にする電流が通電供給される複数相の相コイルからなり、
前記エンジンを停止させる際、1相の前記相コイルのみに通電することにより、前記エンジンの最大乗越しトルク位置に対応する位置に前記ロータを停止させることを特徴とするエンジンスタータシステム。
【請求項6】
請求項5記載のエンジンスタータシステムにおいて、
前記エンジン始動時は、前記エンジン停止の際に通電した前記コイルとは異なる前記コイルに通電することを特徴とするエンジンスタータシステム。
【請求項7】
請求項5記載のエンジンスタータシステムにおいて、
前記エンジン始動時は、前記SRモータの出力トルクが最大となるよう、前記エンジン停止の際に通電した相とは異なる相の前記相コイルに通電することを特徴とするエンジンスタータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを用いたエンジンスタータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの始動には電動モータを用いたエンジンスタータが使用されている。例えば、特許文献1には、SRモータ(Switched Reluctance Motor)を用いたエンジンのスタータ・ジェネレータが記載されている。近年、エンジン始動用のモータとして、構造が簡単で堅牢なSRモータが着目されており、特に、SRモータは、ロータに永久磁石を使用しないことから、レアアース価格の高騰を背景にその利用が拡大している。特許文献1のスタータ・ジェネレータでは、クラッチや減速機などを介して、モータの回転軸がエンジンのクランク軸に連結されており、エンジン停止時はスタータ(動力機)として、エンジン始動後はジェネレータ(発電機)として機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−28851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、エンジンには回転フリクションがあり、回転フリクションにはさらに周期的な変動(リップル)がある。このため、エンジン始動時においても、シリンダ内におけるピストン位置により、クランク軸を回転させるトルク(クランキングトルク)に差異が生じる。これに対し、従来のマグネットロータを用いたスタータモータでは、エンジンフリクショントルクのリップルに対し、モータの出力余力にて対応している。
【0005】
しかしながら、駆動源である電動モータにもトルクリップルがあり、特にSRモータは、マグネットモータに比してトルクリップルが大きい傾向がある。前述のように、従来のエンジンスタータでは、エンジン側のトルクリップルには出力余力にて対応しており、モータ自身のトルクリップルは余り考慮されていない。このため、モータとエンジンのトルクリップルが相反すると、モータトルクがクランキングトルクを下回り、エンジンを始動できないおそれがある。すなわち、図4のP部のように、エンジンフリクショントルクのリップルの山がモータトルクのリップルの谷に当たると、出力余力頼りでは、モータトルクが、エンジン始動時における1回目の圧縮工程(4サイクルエンジンにおいては、圧縮工程、2サイクルエンジンにおいては、吸入・圧縮工程)の上死点を乗り越す時の乗越しトルク(最大乗越しトルク)を超えられず、作動不良が生じてしまう可能性がある。この場合、モータトルクの谷がエンジンフリクショントルクの山を上回る設定とすればこのような心配はないが、トルクを増大させるためには、どうしてもモータが大型化してしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、最小限の出力のモータで確実にエンジンを始動可能なエンジンスタータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジンスタータシステムは、SRモータによりエンジンの始動を行うエンジンスタータシステムであって、前記SRモータは、複数のポールと該ポールのそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータと同軸に配置されたロータと、を有し、前記ロータは、前記エンジンのクランクシャフトに連結され、前記クランクシャフトと同期して回転し、前記ロータと前記クランクシャフトは、前記エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、所定の前記ポールが前記ロータの所定の位置と対向するように連結され、前記コイルは、位相を異にする電流が通電供給される複数相の相コイルからなり、前記エンジンを停止させる際、1相の前記相コイルのみに通電することにより、前記ロータの所定の位置を前記所定のポールと対向させて停止させ、前記ピストンを上死点又は上死点を若干越えた位置にて停止させることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、所定の前記ポールが前記ロータの所定位置と対向するようにピストンとロータの位置関係が機械的に設定される。エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、エンジン始動時におけるフリクショントルクは最大となる。従って、最大フリクショントルクを最大出力にて乗り越えることができ、最小限の出力のモータでエンジンを始動できる。
【0009】
前記エンジンスタータシステムにおいて、前記エンジン始動時は、前記エンジン停止の際に通電した前記コイルとは異なる前記コイルに通電して前記SRモータを駆動しても良い。
【0010】
また、前記ステータの径方向内側に向かって前記ポールを突設するとともに、前記ロータに、径方向外側に向かって複数の突極を突設し、前記エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、所定の前記突極が所定の前記ポールと対向するようにしても良い。さらに、前記エンジン始動時は、前記エンジン停止の際に通電した前記相コイルに隣接する他相の相コイルに通電して前記SRモータを駆動しても良い。
【0011】
一方、本発明の他のエンジンスタータシステムは、SRモータによりエンジンの始動を行うエンジンスタータシステムであって、前記SRモータは、複数のポールと該ポールのそれぞれに巻装されたコイルとを備えたステータと、該ステータと同軸に配置されたロータと、を有し、前記ロータは、前記エンジンのクランクシャフトに連結され、前記クランクシャフトと同期して回転し、前記ロータと前記クランクシャフトは、前記エンジンの最大乗越しトルク位置において前記SRモータの出力トルクが最大となるように連結され、前記コイルは、位相を異にする電流が通電供給される複数相の相コイルからなり、前記エンジンを停止させる際、1相の前記相コイルのみに通電することにより、前記エンジンの最大乗越しトルク位置に対応する位置に前記ロータを停止させることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、エンジン始動時におけるフリクショントルクが最大となるときモータの出力も最大となるよう、ピストンとロータの位置関係が機械的に設定される。従って、最大フリクショントルクを最大出力にて乗り越えることができ、最小限の出力のモータでエンジンを始動できる。
【0013】
前記エンジンスタータシステムにおいて、前記エンジン始動時は、前記エンジン停止の際に通電した前記コイルとは異なる前記コイルに通電して前記SRモータを駆動しても良い。
【0014】
また、前記エンジン始動時は、前記SRモータの出力トルクが最大となるよう、前記エンジン停止の際に通電した相とは異なる相の前記相コイルに通電して前記SRモータを駆動しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンスタータシステムによれば、エンジンのピストンが上死点又は上死点を若干越えた位置にあるとき、所定のポールがロータの所定位置と対向するように対向するようにピストンとロータの位置関係を設定するので、エンジン始動時のフリクショントルクが最大となる上死点位置をモータの最大出力にて乗り越えることが可能となる。従って、最小限の出力のモータでエンジンを始動でき、エンジンスタータの小型化やシステムの信頼性向上を図ることが可能となる。
【0016】
本発明の他のエンジンスタータシステムによれば、エンジン始動時の最大乗越しトルク位置において、電動モータの出力トルクが最大となるようにピストンとロータの位置関係を設定するので、エンジン始動時の最大乗越しトルクをモータの最大出力にて乗り越えることが可能となる。従って、最小限の出力のモータでエンジンを始動でき、エンジンスタータの小型化やシステムの信頼性向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるエンジンスタータシステムの構成を示す説明図である。
図2図1のエンジンスタータシステムにおけるロータとピストンの位置関係を示す説明図である。
図3図3は、当該エンジンスタータシステムの制御手順を示すフローチャートであり、(a)は停止時、(b)は再始動時を示している。
図4】モータのトルクリップルとエンジンフリクショントルクのリップルの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態であるエンジンスタータシステムの構成を示す説明図である。図1のエンジンスタータシステムは、ブラシレスモータの一種であるSRモータを用いたスタータ1と、スタータ1によって始動されるエンジン2とから構成されている。なお、本実施形態では、システム構成を分かり易く示すため、エンジンは単気筒構造とし、図1も、シリンダブロックやモータケース等の周辺部材の図示を省いた形となっている。
【0019】
スタータ1はインナーロータ型の電動モータであり、図示しないモータケース内に固定されたステータ11と、ステータ11内に回転自在に配置されたロータ21とを備えている。ステータ11は、薄板の電磁鋼板を多数積層して形成されており、リング状のヨーク12と、ヨーク12から径方向内側(中心方向)に向かって放射状に突設されたポール13とを有している。隣接するポール13の間はスロット14となっており、ここでは、ポール13とスロット14は同じ大きさ(同中心角)に形成されている。ポール13は周方向に沿って6個等分に設けられている。
【0020】
ポール13の外周にはコイル15が巻装されている。コイル15には、エンジンコントローラの制御の下、バッテリから電流が供給される。コイル15は、位相を異にする電流が通電供給される複数相の相コイル(ここでは、U相コイル15U,V相コイル15V,W相コイル15Wの3組)からなり、対向する一対が同相となっている。そして、三対のコイル15に順次通電することより、スタータ1内には3相(U相,V相,W相)の回転磁界が形成される。
【0021】
ステータ11と同軸に、その内側にはロータ21が相対回転可能に挿入されている。ロータ21はエンジン2のクランクシャフト31に直結されており、クランクシャフト31と共に回転する。ロータ21は、薄板の電磁鋼板を多数積層して形成されたロータコア22と、ロータコア22の内側に固定されたロータボディ23を有している。ロータボディ23は、クランクシャフト31の端部に形成されたクランクジャーナル24に、取付ボルト25によって固定されている。クランクジャーナル24は、図示しないメインベアリングによってシリンダブロックに回転自在に支持される。ロータコア22の外周には、径方向外側に向かって突極26が突設されている。突極26は、周方向に沿って4個等分に設けられている。ここでは、突極26は、ポール13やスロット14と同大きさ(同中心角)に形成されている。
【0022】
スタータ1では、ロータ21の回転角度を図示しないレゾルバにて検出している。エンジンコントローラは、ロータ21の角度位置に応じて各相コイル15U,15V,15Wを順次励磁する。コイル15が励磁されると、それが巻装されたポール13は順次磁極となり、スタータ1内に回転磁界が形成される。ロータ21の突極26は磁化されたポール13に吸引され、これによりステータ11内にてロータ21が回転する。
【0023】
エンジン2は、クランクシャフト31と接続されたピストン32を有している。ピストン32は、シリンダブロック33に形成されたシリンダボア34内に配置されている。シリンダボア34内におけるピストン32の位置は、図示しないピストン位置センサによって常時検出されている。クランクシャフト31には、クランクアーム35とカウンタウエイト36が設けられている。クランクアーム35間に取り付けられたクランクピン37には、ピストン32とクランクシャフト31を連結するコンロッド38が取り付けられている。エンジン始動時には、スタータ1によってクランクアーム35を回転させることにより、ピストン32を上下動させる。また、それと同時にシリンダボア34内に燃料を噴射し、それを適宜燃焼、爆発させ、エンジン2を始動させる。
【0024】
ここで、当該エンジンスタータシステムでは、スタータ1のトルクが最大となるロータ回転位置が、エンジンフリクショントルクが最大となるクランクシャフト回転位置に合うようにロータ21とクランクシャフト31の位置関係が設定されている。つまり、スタータ1とエンジン2は、それぞれのトルクリップル波形の山の頂上位置が一致するように機械的な設定が施されている。
【0025】
通常、エンジンフリクショントルクが最大となるのは、ピストン32が上死点位置にあるときであり、そこが最大乗越しトルク位置となる。一方、スタータ1の出力トルクが最大となるのは、図2のように、一対の突極26(26a,26c)がポール13(例えば、U相のポール13U)と対向し、他の一対の突極26(26b,26d)が隣接するポール13間にちょうど配置されている状態のときである。このとき、スタータ1のポール13(同じく、W相のポール13W)を励磁すると、突極26b,26dには最も大きな吸引力が作用し、スタータ1は最大トルクにて回転する。
【0026】
そこで、スタータ1は、ピストン32が上死点位置又は上死点位置を若干越えた位置(以下、上死点位置等と略記する)にあるとき、ロータ21が図2のような状態となるよう、ロータ21がクランクシャフト31に取り付けられている。これにより、本発明によるエンジンスタータシステムにおいては、モータの最大トルクにてエンジンを始動でき、出力余力頼りではない、無駄のないエンジン始動動作が可能となる。従って、トルクリップルが大きいSRモータを使用しても、最大乗越しトルクを超えらないような作動不良が生じることがなく、最小限の出力のモータにて確実にエンジンを始動でき、スタータ1の小型化やシステムの信頼性向上を図ることが可能となる。
【0027】
また、このような構成を有するエンジンスタータシステムでは、その構造上の利点を最大限に生かすべく、次のようなモータ制御が行われる。図3は、当該エンジンスタータシステムの制御手順を示すフローチャートであり、(a)は停止時、(b)は再始動時を示している。ここでは、アイドルストップ車におけるエンジン再始動を想定している。図3に示すように、車両停止に伴い、エンジンコントローラよりエンジンの停止指令が出されると(ステップS1)、ピストン32の位置が検出・判定される(ステップS2)。
【0028】
エンジン停止指令を発したエンジンコントローラは、ピストン32が上死点位置近傍まで来たとき、スタータ1のU相コイルのみを通電する(ステップS3)。これにより、スタータ1は、突極26a,26cがU相のポール13Uと対向した状態で停止する。前述のように、スタータ1では、突極26a,26cがポール13Uと対向したとき、ピストン32が上死点位置等となるように設定されている(ステップS4)。従って、ロータ21は、ピストン32が上死点位置等に存在する状態で停止し拘束される(ステップS5)。
【0029】
一方、エンジンを再始動させるときは、上死点位置拘束状態(ステップS5→S11)から、U相コイルに隣接(ここでは、ロータ回転方向とは逆側に隣接)する他相であるW相コイルのみを通電する(ステップS12)。これにより、突極26b,26dがW相のポール13Wに吸引され、スタータ1が最大トルクで回転する。すなわち、エンジンフリクショントルク最大位置(上死点)のエンジンをスタータ1の最大トルクにて始動させる。従って、モータ出力を最大限に生かして確実にエンジンを始動させることが可能となる。そして、その後は励磁するコイルを順次変化させ、ロータ21を回転させエンジンを始動させる(ステップS13)。
【0030】
このように、本発明のエンジンスタータシステムにあっては、エンジン始動時におけるフリクショントルクが最大となるときモータの出力も最大となるよう、ピストンとロータの位置関係が機械的に設定される。しかも、エンジン停止の際に、再始動に備え、モータ出力が最大となる位置(フリクショントルクも最大)にロータが停止・保持されるように所定の1相にのみ通電する。すなわち、エンジン停止の際は、次回の始動に最適な位置にロータが来るように、簡単な1相通電によるスタンバイ制御を実施する。これにより、エンジン始動時は、隣接する次相に通電を行うだけでモータを最大トルクにて駆動でき、最大フリクショントルクを最大出力にて乗り越えることが可能となる。従って、出力余力頼りの従来のシステムとは異なり、エンジンに対し最適な出力・体格のモータを使用でき、エンジンスタータの小型化やシステムの信頼性向上を図ることが可能となる。
【0031】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0032】
例えば、前述の実施形態では、単気筒エンジンに本システムを適用した例を示したが、4気筒や6気筒などの多気筒エンジンにも本システムは適用可能である。多気筒エンジンは、単気筒エンジンに比してエンジンフリクショントルクの振れ幅は小さいものの、各気筒のトルクリップルを合成した形でリップルは存在している。従って、各エンジンの特性に合わせ、その合成リップルが最大となるクランクシャフト位置とスタータ1の最大トルク位置とを合わせることにより、前述同様、無駄のない確実なエンジン始動が可能となる。
【0033】
また、前述の実施形態では、U相のポール13Uと対向したとき、ピストン32が上死点位置(エンジンフリクショントルクの最大位置)となるように設定したが、突極26を停止・拘束するポール13の相はU相には限定されず、U相,V相,W相の何れでも良い。その場合も、エンジン始動の際には、隣接する相を励磁してスタータ1を最大トルクにて起動させる(V相停止→U相起動,W相停止→V相起動)。
【0034】
さらに、前述の制御例では、本願発明をアイドルストップ車におけるエンジン停止・再始動に適用した場合について述べたが、アイドルストップ仕様ではない車両のエンジン停止や始動にも本発明は適用可能である。
【0035】
また、前述の実施形態では、スタータ1のポール13の数を6個、突極26の数を4個の例を示したが、ポール13と突極26の数はこれに限定されない。
【0036】
さらに、前述の実施形態では、スタータ1は、ステータの内側にロータを相対回転自在に配置したインナーロータ型の電動モータの例を示したが、ステータの外側にロータを相対回転自在に配置したアウターロータ型の電動モータにも適用可能である。
【0037】
加えて、本発明は、SRモータを用いたエンジンスタータシステムのみならず、ロータの停止位置を制御可能なモータを用いたスタータシステムに広く適用可能である。例えば、ステッピングモータや、ロータ内にスリットを設けてd−q軸を形成しリラクタンストルクのみで駆動するようにしたシンクロナスリラクタンスモータなど、所定の位置にロータを停止・保持可能なモータを用いたスタータシステムにも本発明は適用可能である。
【0038】
一方、前述のスタータ1は、エンジン始動機能のみならず、発電機としての機能を併存させることが可能である。例えば、ロータが回転し突極26とポール13が整列したとき、当該ポール13のコイル15に瞬時通電することにより、慣性で回り続ける突極26によって磁束が切られ、コイル15に誘導電流が生じる。従って、アクセルオフ時に、上述の動作を行うことにより発電作用が生じ、エンジンには制動力(回生ブレーキ)が加わる。この場合、SRモータでは、ロータにマグネットを使用しないため、重量が小さく、レアアース資源の枯渇の影響もない。また、エンジン加速時(コイル無通電時)には発電作用は生じないため、エンジン負荷ともならず、燃費の向上が図られる。さらに、鋼材のみにて装置を構成できるため強度的にも高く、過酷な使用条件にも好適である。
【符号の説明】
【0039】
1 スタータ
2 エンジン
11 ステータ
12 ヨーク
13 ポール
13U U相ポール
13W W相ポール
14 スロット
15 コイル
15U U相コイル
15V V相コイル
15W W相コイル
21 ロータ
22 ロータコア
23 ロータボディ
24 クランクジャーナル
25 取付ボルト
26 突極
26a〜26d 突極
31 クランクシャフト
32 ピストン
33 シリンダブロック
34 シリンダボア
35 クランクアーム
36 カウンタウエイト
37 クランクピン
38 コンロッド
図1
図2
図3
図4