特許第6462595号(P6462595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462595フォトマシナブル層を含むフュージョンドローガラス積層構造体の機械加工
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462595
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】フォトマシナブル層を含むフュージョンドローガラス積層構造体の機械加工
(51)【国際特許分類】
   C03C 23/00 20060101AFI20190121BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20190121BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C03C23/00 D
   C03C15/00 D
   C03B17/06
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-560262(P2015-560262)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公表番号】特表2016-519637(P2016-519637A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】US2014018496
(87)【国際公開番号】WO2014134098
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/770,454
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/798,479
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ボーク,ヘザー デブラ
(72)【発明者】
【氏名】クック,グレン ベネット
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ヴィクトリア アン
(72)【発明者】
【氏名】ウェラー,マーク オーウェン
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−063149(JP,A)
【文献】 特開昭55−136137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス構造体を機械加工する方法において、
前記ガラス構造体が、第1のクラッド層と第2のクラッド層との間にコア層を介在させた、フュージョンドロー積層体を含み、
前記コア層が、ゼロ以外であるコア感光性を有するコアガラス組成から形成され、
前記第1のクラッド層が、前記コア感光性とは異なる第1のクラッド感光性を有する、第1のクラッドガラス組成から形成され、
前記第2のクラッド層が、前記コア感光性とは異なる第2のクラッド感光性を有する、第2のクラッドガラス組成から形成され、さらに、
前記コア層と、前記第1のクラッド層と、前記第2のクラッド層とのうちの少なくとも1つが、フォトマシナブル層であり、
前記方法が、
前記フュージョンドロー積層体の少なくとも1つの前記フォトマシナブル層の少なくとも1つの選択された領域を、紫外線放射に既定の露出時間の間露出するステップ、
前記少なくとも1つの選択された領域が前記フォトマシナブル層で結晶化材料の結晶化領域を形成するまで、前記ガラス構造体を加熱するステップ、および、
前記フォトマシナブル層から選択的に前記結晶化領域を除去するステップ、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コア層と、前記第1のクラッド層と、前記第2のクラッド層との夫々が、フォトマシナブル層であり、かつ、
前記第1のクラッド感光性と前記第2のクラッド感光性との両方が、前記コア感光性よりも高いことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のクラッド層の第1の複数の選択領域と前記第2のクラッド層の第2の複数の選択領域とが、前記紫外線放射に露出され、さらに、
前記加熱するステップの際に、前記第1の複数の選択領域が前記第1のクラッド層に前記結晶化領域を形成し、かつ前記第2の複数の選択領域が前記第2のクラッド層に前記結晶化領域を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記露出するステップが、前記第1の複数の選択領域、または前記第2の複数の選択領域、あるいは前記第1の複数の選択領域および前記第2の複数の選択領域の両方、を画成する開口を含む、少なくとも1つのフォトマスクを通じて行われることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス構造体を加熱するステップの後でありかつ前記結晶化領域を除去するステップの前に、前記コア層の第1の部分が前記結晶化領域によって紫外線放射から遮断されかつ前記コア層の第2の部分が該紫外線放射から遮断されないように、前記ガラス構造体を紫外線放射に2度目に露出するステップ、および、
前記コア層の前記遮断されなかった部分が結晶化するまで、前記ガラス構造体を加熱するステップ、
をさらに含み、前記ガラス構造体を紫外線放射に2度目に露出するステップの後でありかつ前記コア層の前記遮断されなかった部分が結晶化するまで前記ガラス構造体を加熱するステップの前に、前記結晶化領域を除去することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1の複数の選択領域および前記第2の複数の選択領域が、鉛直に位置合わせされたものであり、前記第1の複数の選択領域と前記第2の複数の選択領域との間の前記コア層の部分を除去して、前記ガラス構造体を通る貫通孔を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記結晶化領域を除去するステップが、前記第1のクラッド層、または前記第2のクラッド層、あるいは前記第1のクラッド層および前記第2のクラッド層の両方に、孔構造を形成することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記ガラス構造体を加熱するステップと前記結晶化領域を除去するステップとの後に、前記孔構造よりも小さくかつ前記孔構造に位置合わせされた、開口を含む、フォトマスクを通じて、前記ガラス構造体を紫外線放射に2度目に露出するステップ、および、
前記2度目の露出の後に、前記コア層の少なくともコア結晶化領域が結晶化するまで、前記ガラス構造体を加熱するステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1のクラッド感光性および前記第2のクラッド感光性の両方が、前記コア感光性よりも低いことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記第1のクラッド感光性および前記第2のクラッド感光性の両方がゼロであり、さらに前記第1のクラッドガラス組成および前記第2のクラッドガラス組成が、エッチング液内での前記コアガラス組成のコア溶解度の少なくとも1.5倍の、前記エッチング液内でのクラッド溶解度を夫々有している、高速エッチングガラス組成であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が引用されその全体が参照することにより本書に組み込まれる、2013年3月13日に出願された米国特許出願第13/798479号および2013年2月28日に出願された米国仮特許出願第61/770454号の優先権の利益を主張するものである
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、フュージョンドローガラス積層構造体に関し、より具体的には、少なくとも1つのフォトマシナブル(photomachinable)層を含むフュージョンドローガラス積層構造体を機械加工する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フュージョンドローコア・クラッドガラス積層体は、エレクトロニクス産業および光学産業において多くの用途がある。こういった積層体に孔および貫通孔などの構造を形成することは、特にレーザドリルなどの技術を用いると、難題にまた不正確になることがある。従って、限定するものではないが孔および貫通孔などの、単純な構造および複雑な構造を生成することを受け入れることができる性質を備えたフュージョンドローコア・クラッドガラス積層体と、さらにフュージョンドローコア・クラッドガラス積層体にこういった構造を機械加工する方法が継続して必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
種々の実施形態により、ガラス構造体を機械加工する方法が開示される。種々の実施形態による方法は、限定するものではないが第1のクラッド層と第2のクラッド層との間にコア層を介在させて備えたフュージョンドロー積層体を含む、ガラス構造体で行うことができる。フュージョンドロー積層体において、コア層は、コア感光性を有するコアガラス組成から形成されたものでもよく、第1のクラッド層は、コア感光性とは異なる第1のクラッド感光性を有する、第1のクラッドガラス組成から形成されたものでもよく、さらに第2のクラッド層は、コア感光性とは異なる第2のクラッド感光性を有する、第2のクラッドガラス組成から形成されたものでもよい。コア層と、第1のクラッド層と、第2のクラッド層とのうちの少なくとも1つは、フォトマシナブル層である。この方法は、フュージョンドロー積層体の少なくとも1つのフォトマシナブル層の少なくとも1つの選択された領域を紫外線放射に既定の露出時間の間露出するステップ、この少なくとも1つの選択された領域がフォトマシナブル層で結晶化材料の結晶化領域を形成するまで、ガラス構造体を加熱するステップ、および、フォトマシナブル層から選択的に結晶化領域を除去するステップ、を含んでもよい。
【0005】
本書で説明される実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明の中に明記され、ある程度は、その説明から当業者には容易に明らかになるであろうし、あるいは以下の詳細な説明、請求項、並びに添付の図面を含め、本書において説明された実施形態を実施することにより認識されるであろう。
【0006】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、種々の実施形態を説明したものであり、請求される主題の本質および特徴を理解するための概要または構成を提供するよう意図されていることを理解されたい。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれかつその一部を構成する。図面は本書で説明される種々の実施形態を示し、そしてその説明とともに、請求される主題の原理および動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本書において図示および説明される1以上の実施形態によるガラス構造体の断面の概略図
図2図1のガラス構造体を作製するためのフュージョンドロープロセスを描いた概略図
図3A図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図3B図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図3C図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図3D図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図4A図3Dのガラス構造体で行われるさらなる機械加工ステップの一実施の形態を描いた概略図
図4B図3Dのガラス構造体で行われるさらなる機械加工ステップの一実施の形態を描いた概略図
図5A図3Dのガラス構造体で行われるさらなる機械加工ステップの実施形態を描いた概略図であって、一実施の形態を図5Aおよび5Bの組合せで示し、別の実施形態を図5A、5C、および5Dの組合せで示した図
図5B図3Dのガラス構造体で行われるさらなる機械加工ステップの実施形態を描いた概略図であって、一実施の形態を図5Aおよび5Bの組合せで示し、別の実施形態を図5A、5C、および5Dの組合せで示した図
図5C図3Dのガラス構造体で行われるさらなる機械加工ステップの実施形態を描いた概略図であって、一実施の形態を図5Aおよび5Bの組合せで示し、別の実施形態を図5A、5C、および5Dの組合せで示した図
図5D図3Dのガラス構造体で行われるさらなる機械加工ステップの実施形態を描いた概略図であって、一実施の形態を図5Aおよび5Bの組合せで示し、別の実施形態を図5A、5C、および5Dの組合せで示した図
図6A図4Aのガラス構造体で行われるイオン交換プロセスの一実施の形態を描いた概略図
図6B図4Aのガラス構造体で行われるイオン交換プロセスの一実施の形態を描いた概略図
図6C図4Aのガラス構造体で行われるイオン交換プロセスの一実施の形態を描いた概略図
図6D図4Aのガラス構造体で行われるイオン交換プロセスの一実施の形態を描いた概略図
図6E図4Aのガラス構造体で行われるイオン交換プロセスの一実施の形態を描いた概略図
図7A】コア層がクラッド層よりも高い感光性を有している図1のガラス構造体を、機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図7B】コア層がクラッド層よりも高い感光性を有している図1のガラス構造体を、機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図7C】コア層がクラッド層よりも高い感光性を有している図1のガラス構造体を、機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図7D】コア層がクラッド層よりも高い感光性を有している図1のガラス構造体を、機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図7E】コア層がクラッド層よりも高い感光性を有している図1のガラス構造体を、機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図8A図1のガラス構造体を機械加工して、貫通孔を含む複雑な構造を形成する方法の一実施の形態を描いた概略図
図8B図1のガラス構造体を機械加工して、貫通孔を含む複雑な構造を形成する方法の一実施の形態を描いた概略図
図8C図1のガラス構造体を機械加工して、貫通孔を含む複雑な構造を形成する方法の一実施の形態を描いた概略図
図8D図1のガラス構造体を機械加工して、貫通孔を含む複雑な構造を形成する方法の一実施の形態を描いた概略図
図8E図1のガラス構造体を機械加工して、貫通孔を含む複雑な構造を形成する方法の一実施の形態を描いた概略図
図8F図1のガラス構造体を機械加工して、貫通孔を含む複雑な構造を形成する方法の一実施の形態を描いた概略図
図9A図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態において行われる、粗面化処理ステップを描いた概略図
図9B図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態において行われる、粗面化処理ステップを描いた概略図
図10A】ガラス構造体を、触覚インターフェースで使用し得る構成要素に機械加工する、図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図10B】ガラス構造体を、触覚インターフェースで使用し得る構成要素に機械加工する、図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図10C】ガラス構造体を、触覚インターフェースで使用し得る構成要素に機械加工する、図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図10D】ガラス構造体を、触覚インターフェースで使用し得る構成要素に機械加工する、図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
図10E】ガラス構造体を、触覚インターフェースで使用し得る構成要素に機械加工する、図1のガラス構造体を機械加工する方法の一実施の形態を描いた概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、ガラス構造体を機械加工する方法の実施形態を詳細に参照する。まず図1および2を参照してガラス構造体自体を説明し、図3A〜10Eを参照してガラス構造体を機械加工する種々の方法を以下で説明する。
【0009】
本書では、「液相粘度」という用語はガラス組成のその液相温度でのせん断粘度を称する。
【0010】
本書では、「液相温度」という用語はガラス組成に失透が起こる最高温度を称する。
【0011】
本書では、「CTE」という用語はガラス組成の熱膨張係数を約20℃から約300℃までの温度範囲に亘って平均化したものを称する。
【0012】
「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成内に特定の酸化物成分がないことを説明するために使用されるとき、その成分がガラス組成内に混入物質として1モル%未満の微量存在することを意味する。
【0013】
ガラス構造体の成分として本書で説明されるガラス組成に関し、ガラス組成の構成成分(例えば、SiO2、Al23、およびNa2Oなど)の濃度は、特に指示がない限り酸化物基準で、モルパーセント(モル%)で与えられる。本書で開示されるガラス組成は、このガラス組成をフュージョンドロープロセスでの使用に適したものとする、特にフュージョン積層プロセスにおいてガラスクラッド組成またはガラスコア組成として使用するのに適したものにする、液相粘度を有する。本書では、特に断りがない限り「ガラス」および「ガラス組成」という用語は、一般に理解されているように、ガラス材料およびガラスセラミック材料の両方の類の材料を包含する。同様に、「ガラス構造体」という用語は、ガラス、ガラスセラミック、または両方を含有する構造体を包含すると理解されたい。
【0014】
ここで、ガラス構造体を機械加工する方法において使用されるガラス構造体の例を説明し、ガラス構造体を機械加工する方法の実施形態を以下で説明する。図1を参照すると、本書で説明されるものを含むがこれに限定されないフュージョンドロープロセスで使用するのに適した、ガラス組成を使用して、図1に断面が概略的に描かれているガラス構造体100などの物品を形成することができる。ガラス構造体100は概して、コアガラス組成から形成されたコア層102を含む。コア層102は、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bなどの、クラッド層の対の間に介在され得る。第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bは、第1のクラッドガラス組成および第2のクラッドガラス組成から夫々形成されたものでもよい。いくつかの実施形態において、第1のクラッドガラス組成および第2のクラッドガラス組成は同じ材料でもよい。他の実施形態において、第1のクラッドガラス組成および第2のクラッドガラス組成は異なった材料でもよい。
【0015】
図1は、第1の表面103aと、第1の表面103aの反対側の第2の表面103bとを有する、コア層102を示している。第1のクラッド層104aはコア層102の第1の表面103aに直接融合され、第2のクラッド層104bはコア層102の第2の表面103bに直接融合される。ガラスクラッド層104a、104bは、接着剤、ポリマー層、またはコーティング層などの何らかの追加の材料をコア層102とクラッド層104a、104bとの間に配置することなく、コア層102に融合される。従って、コア層102の第1の表面103aは第1のクラッド層104aに直接隣接し、またコア層102の第2の表面103bは第2のクラッド層104bに直接隣接する。いくつかの実施形態において、コア層102およびガラスクラッド層104a、104bはフュージョン積層プロセスによって形成される。拡散層(図示なし)をコア層102とクラッド層104aとの間、またはコア層102とクラッド層104bとの間、あるいは両方との間に形成してもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、本書で説明されるガラス構造体100のクラッド層104a、104bは、平均クラッド熱膨張係数CTEcladを有する第1のガラス組成から形成してもよく、またコア層102は、平均熱膨張係数CTEcoreを有する第2の異なるガラス組成から形成してもよい。いくつかの実施形態において、クラッド層104a、104bのガラス組成は少なくとも20キロポアズの液相粘度を有し得る。いくつかの実施形態において、コア層102およびクラッド層104a、104bのガラス組成は250キロポアズ未満の液相粘度を有し得る。
【0017】
特に、本書におけるいくつかの実施形態によるガラス構造体100は、参照することにより本書に組み込まれる米国特許第4,214,886号明細書に記載されているプロセスなどの、フュージョン積層プロセスによって形成され得る。例およびさらなる実例として図2を参照すると、積層ガラス物品を形成するための積層フュージョンドロー装置200は、下方アイソパイプ204の上に位置付けられた、上方アイソパイプ202を含み得る。上方アイソパイプ202はトラフ210を含み得、このトラフ210内に溶融クラッド組成206が溶解装置(図示なし)から供給され得る。同様に、下方アイソパイプ204はトラフ212を含み得、このトラフ212内に溶融ガラスコア組成208が溶解装置(図示なし)から供給され得る。本書で説明される実施形態において溶融ガラスコア組成208は、下方アイソパイプ204上で流れるよう、適切に高い液相粘度を有する。
【0018】
溶融ガラスコア組成208は、トラフ212を満たすとトラフ212から溢れ出て、下方アイソパイプ204の外側成形表面216、218上を流れる。下方アイソパイプ204の外側成形表面216、218は底部220で合流する。従って、外側成形表面216、218上を流れる溶融コア組成208は下方アイソパイプ204の底部220で再結合し、それにより積層ガラス構造体のコア層102を形成する。
【0019】
同時に、溶融組成206は上方アイソパイプ202に形成されたトラフ210から溢れ出て、上方アイソパイプ202の外側成形表面222、224上を流れる。溶融組成206の、上方アイソパイプ202上を流れるための液相粘度要件はより低く、また溶融組成206のCTEは、ガラスとして存在するとき、ガラスコア組成208と等しいか、あるいはガラスコア組成208未満のいずれかとなる。溶融クラッド組成206が下方アイソパイプ204の周囲を流れ、下方アイソパイプの外側成形表面216、218上を流れている溶融コア組成208に接触して溶融コア組成に融合し、さらにコア層102の周囲でクラッド層104a、104bを形成するように、溶融クラッド組成206は上方アイソパイプ202によって外向きに逸らされる。
【0020】
このように形成された積層シートでは、クラッドの厚さもコアの厚さより著しく薄くなり、その結果クラッドは圧縮された状態になり、コアは引っ張られた状態になる。しかしCTEの差が小さいためコアの引張応力の大きさは非常に小さく(例えば、およそ10MPa以下)、これによりコアの張力の程度が低いことに起因して、延伸部から比較的容易に切り離される積層シートの製造が可能になる。こうして、フュージョンドロー装置から延伸される積層構造体から、シートを切断することができる。シートが切断された後、ガラス構造体100を機械加工する方法に関連付けて以下で説明するように、切断された製品に次いで適切なUV光処理を施してもよい。
【0021】
実例となる実施形態として、図1および2を参照して本書で説明され米国特許第4,214,886号明細書に記載されている、フュージョン積層によってガラス構造体を形成するプロセスを、ガラスクラッド層104a、104bが同じガラス組成を有しているガラス構造体100を準備するために使用することができる。他の実施形態において、ガラス構造体100のガラスクラッド層104a、104bを、異なるガラス組成から形成してもよい。異なる組成のガラスクラッド層を有するガラス構造体を形成するのに適した非限定的な例示的なプロセスは、その全体が参照することにより本書に組み込まれる、同一出願人による米国特許第7,514,149号明細書に記載されている。
【0022】
本書で開示される積層ガラス物品およびガラス構造体は、限定するものではないが、携帯電話、パーソナル音楽プレーヤ、タブレットコンピュータ、LCDおよびLEDディスプレイ、および現金自動預け払い機などを含む、様々な消費者向け電子機器に採用され得る。いくつかの実施形態において、積層ガラス物品は、1以上の加熱処理後にクラッド層が不透明、透明、または半透明になるようなガラス組成から得られるクラッドなど、不透明、透明、または半透明な1以上の層を含み得る。いくつかの実施形態において、ガラス構造体は板ガラス構造でもよい。
【0023】
コア層102とクラッド層104a、104bとを備えたフュージョンドロー積層体を含有するガラス構造体100の非限定的な例示的形態を説明したが、このガラス構造体100を機械加工する方法をここで説明する。図1を参照すると、ガラス構造体100を機械加工する例示的な方法において、ガラス構造体100は、第1のクラッド層104aと第2のクラッド層104bとの間にコア層102を介在させた、フュージョンドロー積層体を含み得る。コア層102は、コア感光性を有するコアガラス組成から形成され得る。第1のクラッド層104aは、コア感光性とは異なる第1のクラッド感光性を有する第1のクラッドガラス組成から形成され得る。第2のクラッド層は、同じくコア感光性とは異なる第2のクラッド感光性を有する第2のクラッドガラス組成から形成され得る。いくつかの実施形態において、第1のクラッドガラス組成および第2のクラッドガラス組成は同一でもよい。他の実施形態において、第1のクラッドガラス組成および第2のクラッドガラス組成は異なっていてもよい。こういった実施形態において、第1のクラッド感光性および第2のクラッド感光性は、同じでもよいし、あるいは異なっていてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、コアガラス組成、第1のクラッドガラス組成、および第2のクラッドガラス組成のいずれかまたは全ては、感光性ガラス組成でもよい。感光性ガラス組成は、この感光性ガラス組成が例えばUV放射などの放射に露出されたときに結晶化度特性が変化する、ガラスまたはガラスセラミック材料の類を構成する。いくつかの感光性ガラス組成において、結晶化度の変化は放射への露出から直接生じ得る。他の感光性ガラス組成において、放射への露出は、核中心の形成などの検知できない物理的変化をガラス組成に引き起こし得る。こういった感光性ガラス組成では、一旦核中心が形成されると、ガラス組成に熱処理を適用することによって結晶化度の変化を完了させることができる。
【0025】
特定のガラスの感光性は、感光性ガラスの実際の組成に関して変化する。全てのガラス組成が感光性であるわけではなく、従って真の非感光性ガラスを、本書ではゼロの感光性を有すると説明するものとする。同様に、感光性を示すガラス組成を、ゼロ以外の感光性を有すると定義するものとする。他に特に述べられていなければ、本書において「コア感光性」、「第1のクラッド感光性」、または「第2のクラッド感光性」を有すると言われるガラス組成は、必ずしも感光性を示すものではなく、ゼロの感光性を有するものでもよい(すなわち非感光性でもよい)し、あるいはゼロ以外の感光性を有する(すなわち感光性を示し得る)ものでもよい。
【0026】
ゼロ以外の感光性を有する2つのガラス組成の相対的な感光性は客観的に判定することができる。例えば、等しい厚さを有する各組成のシートを、UV放射などの放射に様々な時間の間露出し、次いで熱処理し、この熱処理後に各シートの全厚さを通じて二次結晶相を生じさせることができる最小放射露出時間を判定してもよい。本書で説明される実施形態に適用可能であるが、第2の感光性ガラス組成よりも最小放射露出時間が短い第1の感光性ガラス組成を、第2の感光性ガラス組成よりも高い感光性を有すると考えるものとし、逆に、第2の感光性ガラス組成よりも最小放射露出時間が長い第1の感光性ガラス組成を、第2の感光性ガラス組成よりも低い感光性を有すると考えるものとする。
【0027】
本書で使用するのに適した感光性ガラス組成および/またはフォトマシナブルガラス組成は、非限定的な例として、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス、亜鉛ホウケイ酸ガラス、およびソーダ石灰ガラスを含み得る。感光性ガラス組成および/またはフォトマシナブルガラス組成は、酸化マグネシウム、イットリア、べリリア、アルミナ、またはジルコニアで強化したガラスなどの、ガラスセラミックをさらに含み得る。本書における実施形態で使用するのに適した実例となる感光性ガラス組成は、全て参照することにより本書に組み込まれる、米国特許第7,241,559号明細書、同第7,262,144号明細書、および同第7,829,489号明細書に記載されているものを含む。いくつかの実施形態において、コーニング社から入手可能なFOTOFORM(登録商標)は、適切な感光性ガラス組成になり得る。FOTOFORMガラスの組成は、79.3質量%のSiO2、1.6質量%のNa2O、3.3質量%のK2O、0.9質量%のKNO3、4.2質量%のAl23、1.0質量%のZnO、0.0012質量%のAu、0.115質量%のAg、0.015質量%のCeO2、0.4質量%のSb23、および9.4質量%のLi2Oである。本書で説明されるいくつかの実施形態において使用するのに適した、他の非限定的な例示的感光性ガラスを以下の表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
いくつかの実施形態によれば、ガラス構造体のフュージョンドロー積層体において、コア層102と、第1のクラッド層104aと、第2のクラッド層104bとのうちの少なくとも1つは、フォトマシナブル層である。この関連で、コア層102と、第1のクラッド層104aと、第2のクラッド層104bとのうちの少なくとも1つのフォトマシナブル層のガラス組成は、フォトマシナブルガラス組成である。本書では、「フォトマシナブルガラス組成」という用語は、このガラス組成を放射(例えばUV放射など)と随意的には熱処理に露出した後にこのガラス組成が二次結晶相を形成するような、ゼロ以外の感光性を有するガラス組成を称する。
【0030】
さらにフォトマシナブルガラス組成では、放射への露出および随意的な熱処理の後に生じる二次結晶相を、選択的エッチングなどの物理的または化学的手順によって選択的に除去することができる。説明のために、二次結晶相の選択的除去は、放射に露出されていないガラス組成の部分に対する、この二次結晶相のフッ化水素酸などのエッチング液媒体内での溶解度の差によって可能になり得る。溶解度の差はエッチング速度の差となり得、それにより二次結晶相は、放射に露出されていない材料の部分よりも、少なくとも1.5倍速く、少なくとも2倍速く、少なくとも5倍速く、少なくとも10倍速く、少なくとも20倍速く、またはさらには少なくとも100倍も速く、エッチングすることができる。このエッチング速度および/または溶解度の差別化の特徴は、全ての感光性ガラス組成に存在する可能性もあるし、あるいは存在しない可能性もある。従って、これらの用語が本書で使用されるとき、全てのフォトマシナブルガラス組成はゼロ以外の感光性を有する感光性ガラス組成であるが、感光性ガラス組成は必ずしもフォトマシナブルではない。さらにいくつかの実施形態において、コア層102と、第1のクラッド層104aと、第2のクラッド層104bとのうちの1以上は、感光性でもフォトマシナブルでもないものでもよいが、このような実施形態では、コア層102と、第1のクラッド層104aと、第2のクラッド層104bとのうちの少なくとも1つは、感光性かつフォトマシナブルである。
【0031】
上述したものなどの、ガラス構造体100を機械加工する方法の種々の実施形態によれば、機械加工は、フュージョンドロー積層体の少なくとも1つのフォトマシナブル層の少なくとも1つの選択された領域を紫外線放射に既定の露出時間の間露出するステップを含み得る。この機械加工はさらに、少なくとも1つ選択された領域がフォトマシナブル層で結晶化材料の結晶化領域を形成するまで、ガラス構造体を加熱するステップを含み得る。この機械加工はさらに、フォトマシナブル層から選択的に結晶化領域を除去するステップを含み得る。ここで、ガラス構造体100を機械加工する方法の上記要素を概して説明し、この方法の要素の具体的な実例となる実施形態を以下で詳細に説明する。
【0032】
実例となる実施形態では、フュージョンドロー積層体の少なくとも1つのフォトマシナブル層の少なくとも1つの選択された領域が、紫外線放射に既定の露出時間の間露出される。いくつかの実施形態において、この少なくとも1つの選択された領域は、1つの連続した領域または複数の連続していない領域を含み得る。他の実施形態において、この少なくとも1つの選択された領域は、フォトマシナブル層全体を含み得る。実例となる実施形態において、少なくとも1つの選択された領域は、第1のクラッド層104aの一部分、第2のクラッド層104bの一部分、第1のクラッド層104a全体、第2のクラッド層104b全体、またはこれらの組合せを含み得る。ある層の全体がUV放射に露出される場合には、以下で説明する熱処理と続く選択的除去との後に、完全に露出されたこの1つの層または複数の層はガラス構造体100から完全に除去され得、犠牲層として機能し得ると理解されたい。
【0033】
UV露出の際、いくつかの実施形態によれば、紫外線放射120は約100nmから約400nmまで、例えば約290nmから約330nmまでの波長を有し得る。既定の露出時間は、約3分から約2時間など、5秒から数時間に及び得る。いくつかの実施形態では紫外線放射の強度を、続く熱処理中に二次相の形成を可能にする物理的プロセスの動力学に影響を与えるよう変化させてもよい。紫外線放射によって所与のガラス構造体で二次相の形成が可能となる深さは、UV放射の波長、露出時間の長さ、および露出強度次第になり得る。
【0034】
実例となる実施形態において、ガラス構造体の加熱は紫外線放射への露出後に行われ得る。加熱は少なくとも、少なくとも1つの選択された領域がフォトマシナブル層で結晶化材料の結晶化領域を形成するまで継続し得る。いくつかの実施形態において、加熱は、フォトマシナブル層の組成次第で約300℃から約900℃までの温度で行われ得る。例えばいくつかのフォトマシナブル組成は、約300℃から約500℃まで、または約500℃から約650℃までの温度で加熱処理され得る。
【0035】
実例となる実施形態において、フォトマシナブル層から選択的に結晶化領域を除去するステップは、露出されていないフォトマシナブル材料に比べて差異を示す、二次結晶相の溶解度またはエッチング速度の、一方または両方をうまく利用するものを含む。結晶化領域の除去は、例えばフッ化水素酸などの適切なエッチング液での、例えば浸漬、超音波エッチング、またはスプレーなどのエッチング技術を含み得る。エッチング液に関しては、二次結晶相の溶解度またはエッチング速度の、露出されていないフォトマシナブル材料からの差異が、例えば5倍大きく、10倍大きく、20倍大きく、またはさらには100倍も大きくなるような、任意のエッチング液を使用し得ることを理解されたい。上述したように、第1のクラッド層104a、第2のクラッド層104b、またはその両方などの層の全体がUV放射に露出される場合、選択的除去プロセスはその層全体を除去するものでもよく、それによりこの層は犠牲層として機能する。
【0036】
ガラス構造体を機械加工するための、上述の一般的な露出、加熱、および除去作用を含む方法の具体的な実例となる実施形態を、ここで図3A〜10Eを参照して説明する。
【0037】
まず図3Aおよび3Cを参照すると、ガラス構造体100は、第1のクラッド層104aと第2のクラッド層104bとの間にコア層102を介在させて含み得る。コア層は、第1のクラッド層104aの第1のクラッド感光性と第2のクラッド層104bの第2のクラッド感光性よりも低いコア感光性を有し得る。第1のクラッド感光性および第2のクラッド感光性は、同じでもよいし、あるいは異なっていてもよい。図3Aおよび3Bの実施形態において、少なくとも第1のクラッド層104aはフォトマシナブルである。図3Cおよび3Dの実施形態において、少なくとも第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bはフォトマシナブルである。各実施形態のコア層102は、感光性がゼロのものでも、あるいはゼロ以外の感光性を有するものでもよく、またフォトマシナブルでもよいし、フォトマシナブルでなくてもよい。
【0038】
図3Aの実施形態において、第1のクラッド層104aは、UV放射120に露出される第1のクラッド層104aの選択された領域を画成する開口115を含む、フォトマスク110を通じて、UV放射120に露出される。ガラス構造体100の熱処理によって、フォトマスク110の開口115に対応する位置に結晶化領域130が生じた、図3Bのガラス構造体100を生じさせることができる。コア層の感光性は第1のクラッド感光性よりも低いため、図3Aに描かれているUV放射120への露出、または図3Bのガラス構造体100を形成するために使用される熱処理パラメータ、のうちの少なくとも1つは、コア層102での結晶化領域の形成を可能にするには不十分である。UV放射120は、コア層102内に入るまたはコア層102を通過することができ、さらに第2のクラッド層104b内に入るまたは第2のクラッド層104bを通過することができることを理解されたい。従って、いくつかの実施形態において第1のクラッド感光性および第2のクラッド感光性がコア感光性よりも著しく高い場合、図3Aに示されているようなガラス構造体100の片側からの単一のUV露出と、続く熱処理とによって、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bの両方に結晶化領域130a、130bを含む、図3Dのガラス構造体100をもたらすことができる。
【0039】
図3Cの実施形態において、第1のクラッド層104aは、UV放射120aに露出される第1のクラッド層104aの選択された領域を画成する開口115aを含む、第1のフォトマスク110aを通じて、UV放射120aに露出される。同様に第2のクラッド層104bは、UV放射120bに露出される第2のクラッド層104bの選択された領域を画成する開口115bを含む、第2のフォトマスク110bを通じて、UV放射120bに露出される。第1のフォトマスク110aおよび第2のフォトマスク110bの開口115a、115bは、いくつかの実施形態では鉛直に位置合わせされ得るが、鉛直に位置合わせさせなくてもよい。UV放射120a、120bは、コア層102内に入ることができ、またはさらにはコア層102を通過することもできることを理解されたい。ガラス構造体100の熱処理によって、第1のフォトマスク110aおよび第2のフォトマスク110bの開口115a、115bに対応する位置に結晶化領域130a、130bが生じた、図3Dのガラス構造体100を生じさせることができる。コア層の感光性は第1のクラッド感光性よりも低いため、図3Cに描かれているUV放射120a、120bへの露出、または図3Dのガラス構造体100を形成するために使用される熱処理パラメータ、のうちの少なくとも1つは、コア層102での結晶化領域の形成を可能にするには不十分である。
【0040】
図3Dのガラス構造体100は、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bから結晶化領域130a、130bを、例えばエッチングなどの適切な技術によって選択的に除去することによって、さらに処理され得る。このような除去の後に得られる構造を図4Aに示し、ここでは第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bに、孔構造140a、140bが残されている。いくつかの実施形態において、孔構造140a、140bは実質的に円形の形状である。理論に拘束されることを意図したものではないが、フォトマシナブルガラス組成の結晶領域の選択的除去は、従来の選択的除去またはエッチング技術からは得ることができない精度で、実質的に円形の孔構造140a、140bの形成を助けることができると考えられる。
【0041】
図4Bを参照すると、孔構造140a、140bをガラス構造体100において鉛直に位置合わせさせた場合、物理的または化学エッチング技術を使用して孔構造140a、140b間のコア層102の部分を除去することができ、それにより例えばビアホールとして機能し得る、貫通孔150a、150bを形成することができる。従っていくつかの実施形態において、ガラス構造体100を機械加工する方法は、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bの孔構造140a、140bを通じてコア層102をエッチングして、ガラス構造体100に貫通孔150a、150bを形成するステップを含み得る。
【0042】
ガラス構造体を機械加工する方法のいくつかの実施形態では、図3Dおよび5Aに描かれているような結晶化領域130a、130bを有するガラス構造体100を、UV放射120a、120bなどの放射に再び露出してもよい。既に結晶化領域130a、130bを有するガラス構造体100をさらに放射に露出すると、結晶化領域130a、130bによって、結晶化領域130a、130bの下の、あるいは結晶化領域130a、130bに直接隣接する、コア層102部分を、放射へのいかなる露出からも遮断することができる。いくつかの実施形態において、UV放射へのこの追加の露出は、コア層102と、第1のクラッド層104aと、第2のクラッド層104bとを熱処理後に結晶化することができる強度、波長、および継続時間など、適切なパラメータで行われる。例えば図5Bのガラス構造体100は、放射に露出した後の図5Aのガラス構造体の熱処理後に生じ得る、構造体の一実施の形態を示している。図5Bのガラス構造体100において第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bは、全ての方向において完全に結晶化された。コア層102は、コア結晶化領域135およびコア非結晶化領域155a、155bを含有する。コア非結晶化領域155a、155bは、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bの結晶化領域130a、130bによって、UV放射の露出から影になったコア層102の部分を表し得る。
【0043】
他の実施形態では、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bの結晶化領域130a、130bを、図示のUV露出後に、いかなる熱処理よりも前に、図5Aのガラス構造体100から除去して、図5Cのガラス構造体100を生じさせることができる。こういった実施形態では、UV露出とこれに熱処理が続いた場合にのみ結晶化が生じて、UV露出単独では生じないように、第1のクラッド層104a、第2のクラッド層104b、またはこの両方の組成は選択され得る。このようにして形成された図5Cのガラス構造体100は、孔構造140a、140bを含有し得る。その後、図5Aに示されているように全ての層が既にUV放射120に露出された、図5Cのガラス構造体100に熱処理を施すと、図5Dのガラス構造体100を生じさせることができる。図5Bのガラス構造体100に類似して、図5Dのガラス構造体100では第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bの全てが結晶化され、またコア層102はコア結晶化領域135およびコア非結晶化領域155a、155bの両方を含む。しかしながら図5Bのガラス構造体とは異なり、図5Dのガラス構造体100には第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bに孔構造140a、140bが存在する。
【0044】
ここで図6A〜6Eを参照すると、ガラス構造体を機械加工する方法のさらなる実施形態は、ガラス構造体にイオン交換プロセスを施すステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態においてイオン交換プロセスは、ガラス組成内の例えばナトリウムなどの特定の元素を、例えばカリウムなどの他の元素と置き換えて、ガラス組成の全てまたは一部分を強化するものを含み得る。いくつかの実施形態では、上述したように形成された孔構造140a、140bを有する図6Aのガラス構造体100に、イオン交換プロセスを施してもよい。本書では、「イオン交換」という用語は、ガラス製造技術において当業者に公知のイオン交換プロセスによってガラスを強化することを意味すると理解されたい。こういったイオン交換プロセスとして、限定するものではないが、加熱されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを、ガラス表面に存在しているイオンよりもイオン半径が大きいイオンを含有している加熱された溶液で処理し、こうしてより小さいイオンをより大きいイオンで置き換えるものが挙げられる。例えばカリウムイオンが、ガラス内のナトリウムイオンと置き換わることもあり得る。あるいは、ルビジウムまたはセシウムなどのより大きい原子半径を有する他のアルカリ金属イオンが、ガラス内のより小さいアルカリ金属イオンと置き換わることもあり得る。同様に、限定するものではないが、硫酸塩、およびハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩をイオン交換プロセスで使用してもよい。一実施の形態において、ダウンドローされたガラスは、KNO3を含む溶融塩浴にイオン交換を達成するために既定の時間の間置くことによって化学強化される。一実施の形態において、溶融塩浴の温度は約430℃であり、またこの既定の時間は約8時間である。
【0045】
例えば図6Bの実施形態では、第1のクラッド層104aと、第2のクラッド層104bと、さらには孔構造140a、140b付近のコア層102でも、これらの複数の部分にイオン交換領域160a、160bが生じるまでイオン交換プロセスは継続され得るが、クラッド層104a、104bの全深さを通じてイオン交換を生じさせることはない既定の時間の間のみである。例えば図6Cの実施形態において、イオン交換プロセスは、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bがイオン交換領域160a、160bとなるまで続き得、かつイオン交換領域160a、160bは随意的にはコア層102内へと延在し得る。例えば図6Dの実施形態において、イオン交換プロセスは、第1のクラッド層104aと第2のクラッド層104bとの全ての部分がイオン交換されかつコア層102の全深さを通じて延在するコア層102のいくつかの領域もイオン交換されるよう、イオン交換層160がガラス構造体100全体を通じて連続したものとなるまで続き得る。図6Eを参照すると、いくつかの実施形態においてイオン交換領域160はガラス構造体100全体を通じて連続したものであり、またコア層102がその全深さを通じてイオン交換されている、ガラス構造体100のいくつかの領域では、コア層102のイオン交換された部分に容易に生じ得る破断線170でガラス構造体を分割することができる。イオン交換プロセス、およびこのイオン交換プロセス受け入れることができる適切な例示的なガラス組成は、その全体が参照することにより本書に組み込まれる米国特許第号7,666,511明細書に記載されている。
【0046】
ここで図7A〜7Eを参照すると、ガラス構造体を機械加工する方法のいくつかの実施形態において、コア層102は第1のクラッド層104aの第1のクラッド感光性よりも高いコア感光性を有し得る。こういった実施形態において、コア感光性は第2のクラッド層104bの第2のクラッド感光性よりも高くてもよい。従って、図7Aのガラス構造体100が、開口115aを含む第1のフォトマスク110aおよび開口115bを含む第2のフォトマスク110bなどのフォトマスクを通じて、UV放射120a、120bなどの放射に適切な時間の間、適切な波長と強度で露出されると、ガラス構造体の熱処理によって、例えば図7Bまたは図7Dのガラス構造体が生じ得る。こういった実施形態では、随意的にはUV放射120を集中させて第1のクラッド層104aを通過させ、UV露出の細い柱をコア層102に生じさせてもよい。
【0047】
コア感光性が第1のクラッド層104aの第1のクラッド感光性よりも高い実施形態の例証として、図7Bのガラス構造体100での放射露出は、コア層102を通って端から端まで延在するコア結晶化領域135を形成するよう十分にコア層102を結晶化できるようなものではなかった。いくつかの実施形態ではコア結晶化領域135を、例えばエッチングなどの適切な技術で除去し、除去されたコア部分145を有する図7Cのガラス構造体100を形成することができる。エッチングが使用される場合、いくつかの実施形態では、エッチング液がコア結晶化領域135に到達するためのルートを提供することが必要になり得る。こういった実施形態では、随意的には、クラッド層104a、104bに孔または空所を形成するために、レーザドリルなどのさらなる物理的処理が行われ得る。図7Dのガラス構造体100では、図7Aのガラス構造体100に与えられた放射露出がコア層102を十分に結晶化することができ、コア層102を通って端から端まで延在するコア結晶化領域135が形成された。従って除去されたコア部分145は、第1のクラッド層104aから第2のクラッド層104bまでコア層102の全深さを通って延在する。
【0048】
ここで図8A〜8Fを参照すると、ガラス構造体を機械加工する方法の例示的な実施形態は、複数の放射露出および/または熱処理を組み込んで、複雑な形状および貫通孔を形成することができる。図8A〜8Fの非限定的な実例となる実施形態では、コア感光性は第1のクラッド感光性および第2のクラッド感光性よりも低い。図8Aのガラス構造体100を放射に露出し、次いで熱処理して図8Bのガラス構造体100を形成し、さらにその後結晶化領域130a、130bを除去することによって図8Cのガラス構造体100を準備するものは、既に上で詳細に説明した。いくつかの実施形態によれば、これらの方法は、図8Cのガラス構造体を図8Dに示されているように2度目の放射に、放射がクラッド層104a、104bの孔構造140a、140bを通り過ぎてコア層102のみを通るように露出するものを含み得る。
【0049】
図8Aのフォトマスク110a、110bの開口115a、115bは、図8Dのフォトマスク112a、112bの開口117a、117bよりも幅広である。図8Dの露出プロセスが行われる場合、フォトマスク112a、112bを通じて可視のクラッド層104a、104bの部分は既に除去されているため、UV放射はもはやクラッド層104a、104bには入らない。それにより、図8Dのガラス構造体100を熱処理すると、図8Eのガラス構造体100を形成することができる。図8Eのガラス構造体では、クラッド層104a、104bは孔構造140a、140bを含有し、かつコア層102は、ガラス構造体100の両側の孔構造140a、140bから延在するコア結晶化領域135a、135bを含有する。いくつかの実施形態では、例えばエッチングなどの適切な技術によってコア結晶化領域135a、135bを除去して、図8Fのガラス構造体100を形成することができる。図8Fのガラス構造体100において、除去されたコア部分145a、145bは、ガラス構造体100の両側のクラッド層104a、104bの孔構造140a、140bを接続させる、貫通孔またはビアホールとなる。
【0050】
ここで図9Aおよび9Bを参照すると、ガラス構造体を機械加工する方法の例示的な実施形態は、ガラス構造体のエッチングまたは粗面化処理などの表面処理をさらに含み得る。図9Aのガラス構造体100を準備するための実例となる道筋は、既に上で説明した。いくつかの実施形態では、図9Aのガラス構造体100をエッチングまたは粗面化して、図9Bのガラス構造体100を生成することができる。図9Bのガラス構造体100において、クラッド層104a、104bは粗面化されたクラッド表面106a、106bを含有する。孔構造140a、140bは、粗面化された孔表面142a、142bを含む。エッチング時間、用いられるエッチング処理、およびエッチング液の本来の性質および濃度次第で、図9Aのガラス構造体100でクラッド層104a、104bにのみ存在していた孔構造140a、140bを、図9Bのガラス構造体100のようにコア層102内の所望の深さまで伸ばすことができる。
【0051】
ここで図10A〜10Eを参照すると、実例となる実施形態において本書で説明される方法は、参照することにより本書に組み込まれる米国特許第8,179,375号明細書に記載されている触覚インターフェースなどの流体部品へと、ガラス構造体100を成形するために使用することができる。ただし図10A〜10Eの実施形態においてクラッド層104a、104bは、必須であるわけではないが感光性またはフォトマシナブルとし得る、高速エッチングガラスから形成され得る。高速エッチングガラスは、上述したようにフォトマシナブルガラス組成とともに、特にフォトマシナブルコア層とともにフュージョンドロー可能な、任意のガラス組成とし得る。いくつかの実施形態において、高速エッチングガラス組成の、フッ化水素酸などのエッチング液内でのエッチング速度または溶解度は、同じ特性のフォトマシナブルコア層よりも少なくとも1.5倍大きい、少なくとも2倍大きい、少なくとも5倍大きい、少なくとも10倍大きい、少なくとも20倍大きい、または少なくとも100倍大きくてもよい。いくつかの実施形態において、適切な高速エッチングガラスとして、その全体が参照することにより本書に組み込まれる米国特許第4,880,453号明細書に記載されているものを挙げることができる。米国特許第4,880,453号明細書の各高速エッチングガラスは、ゼロまたは略ゼロの感光性を有すると考えられる。本書で使用するのに適した他の例示的な高速エッチングガラス組成を表2に記載し、このうちいくつかの組成は感光性および/またはフォトマシナブルでもよく、他は感光性でもフォトマシナブルでもないものでもよい。
【0052】
【表2】
【0053】
図10Aのガラス構造体100は、第1のクラッド層104aと第2のクラッド層104bとの間に介在する、フォトマシナブルガラス組成のコア層102を含む。両クラッド層104a、104bは上述した高速エッチングガラス組成から形成されており、これらは同じ材料または異なる材料から形成され得る。クラッド層104a、104bを覆うように、マスキング層113a、113bを適用してもよい。いくつかの実施形態では、マスキング層113a、113bはフォトマスクでもよく、それにより、クラッド層104a、104bはマスキング層113a、113bで完全に被覆することができ、マスキング層はUV放射などの放射で硬化させることができ、さらにマスキング層113a、113bのいくつかの部分を除去してクラッド層104a、104bのいくつかの部分をエッチングするよう露出させることができる。他の実施形態では、クラッド層104a、104bのエッチングで取り除かないよう意図されている部分の上に、マスキング層113a、113bを選択的に適用してもよい。とにかく、マスキング層113aの開口115内の部分などのマスキング層113a、113bによって覆われていないクラッド層104a、104bの部分を、レーザドリルあるいはウエットエッチングまたはドライエッチングなどの適切な技術で除去してもよい。クラッド層104a、104bのこのいくつかの部分が除去されると、第1のクラッド層104aに孔構造140が存在し、かつ第2のクラッド層104b一部分が除去された後にコア層102が露出されている、図10Bのガラス構造体が生じ得る。図10Cの実施形態では、開口117を有するフォトマスク112を第1のクラッド層104aの上に置いてもよく、さらにコア層102をUV放射120などの放射に開口117を通じて露出してもよい。図10Cのガラス構造体の熱処理により、UV放射120に露出されたコア層102の部分にコア結晶化領域135が形成された、図10Dのガラス構造体100を生成することができる。図10Dのコア層102は、UV放射への露出中にフォトマスク112の下に位置していたコア層102の部分に、コア非結晶化領域155をさらに含む。
【0054】
コア結晶化領域135を、上述した選択的エッチングなどの適切な技術によって図10Dのガラス構造体100から除去して、図10Eのガラス構造体を生じさせることができる。図10Eのガラス構造体は、第1のクラッド層104aの孔構造140、中空チャンバ180、および流体チャネル185を含む。米国特許第8,179,375号明細書に記載されている触覚ユーザインターフェースとして使用される場合、中空チャンバ180を例えば水などの流体で満たして、弾性シートで覆ってもよい。キャビティを、2つの容積設定、すなわち格納容積設定および伸長容積設定を有するように設計してもよい。変位デバイスがキャビティを外向きに拡張させると、ボタン状の形状が形成される。このボタン状の形状で、ユーザは、タッチ操作可能な電子機器に入力を提供するときに、触覚誘導を得ることができる。
【0055】
従って、少なくとも1つのフォトマシナブル層を備えたフュージョンドローコア・クラッド積層体を含むガラス構造体を機械加工する方法を説明した。本書で説明した方法は、例えば光用途および電子的用途において有用になり得る機械加工された積層構造体を製造する、多くの手法で使用することができる。
【0056】
請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、本書において説明された実施形態の種々の改変および変形が作製可能であることは当業者には明らかなはずである。従って、本書において説明した種々の実施形態の改変および変形が添付の請求項およびその同等物の範囲内であるならば、本明細書はこのような改変および変形を含むと意図される。
【符号の説明】
【0057】
100 ガラス構造体
102 コア層
104a 第1のクラッド層
104b 第2のクラッド層
110 フォトマスク
115 開口
120 紫外線放射
130 結晶化領域
135 コア結晶化領域
140a、140b 孔構造
150a、150b 貫通孔
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E