特許第6462675号(P6462675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462675分子を設計する方法、システム、及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462675
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】分子を設計する方法、システム、及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/64 20190101AFI20190121BHJP
【FI】
   C40B30/02
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-522767(P2016-522767)
(86)(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公表番号】特表2016-538255(P2016-538255A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014062023
(87)【国際公開番号】WO2015061602
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/894,756
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】プラティーク ジャ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ポーター,ザ サード
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187374(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0059860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C40B 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータデバイスにより、分子シミュレーターを用いてM組のシミュレーションデータを生成することと、
M組のシミュレーションデータの各々に関して、α種とβ種との接触の可能性を決定してMの接触の可能性を与えることと、
Mの接触の可能性の少なくとも1つに基づいてシミュレーション結果を決定することと、
ディスプレイデバイスにシミュレーション結果を示す情報を表示させることとを含む方法であって、
M組のシミュレーションデータの各々が、(i)参照分子の分子と、(ii)Mの試験分子の1つの分子との溶媒中のシミュレーションされた位置を示すシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルを含み、
(a)Mが正の整数であり、(b)参照分子が活性薬剤成分であり、(c)Mの試験分子が各々ポリマー又はオリゴマー添加剤であり、
接触は、β種の粒子が、α種の粒子からのラジアル距離の範囲内にあるときに生じ、
α種とβ種の各々が、参照分子、溶媒、又はMの試験分子の1つ、の1つである、方法。
【請求項2】
さらに、参照分子、Mの試験分子、又は溶媒の少なくとも1つを示す情報を含むユーザーインターフェースを介して、コンピュータデバイスにより1つ又はそれより多くの入力を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Mの試験分子を受信するために、コンピュータデバイスが、ユーザーインターフェースを介して:
ポリマー又はオリゴマーの選択と、
1つ又はそれより多くの置換基の選択と、
1つ又はそれより多くの置換基の各々がポリマー又はオリゴマーに結合している位置の選択と、
を受信するように構成された、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー又はオリゴマーが、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、セルロース、又はシクロデキストリンの1つである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つ又はそれより多くの置換基が、
1つ又はそれより多くのモノマーアルキル、アシル、又はカチオン性基;又は
別のポリマー若しくはオリゴマーにグラフトすることができる1つ若しくはそれより多くのポリマー若しくはオリゴマー基、
を含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、M組のシミュレーションデータを生成するより前に、分子シミュレーターを用いてM組の熱力学的平衡条件を決定することを含む方法であって、
M組の熱力学的平衡条件の各々が、参照分子と、Mの試験分子の1つとを含む溶媒系に関して1つ又はそれより多くの熱力学的平衡条件を含み、
分子シミュレーターが、M組の熱力学的平衡条件の1組を用いてM組のシミュレーションデータの各々を生成し、
M組の熱力学的平衡条件の各々を決定するために分子シミュレーターにより用いられる分子の数が、M組のシミュレーションデータの各々を生成するために分子シミュレーターにより用いられる分子の数より少ない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
α種の粒子が、α種の原子、分子、又は化学的部分の1つであり、
β種の粒子が、β種の原子、分子、又は化学的部分の1つである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
Mの接触の可能性を決定することが、Mの平均動径分布関数を決定することを含み、
Mの平均動径分布関数の各々を決定することが、
M組のシミュレーションデータの1組に含まれるシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルの各々に関して動径分布関数を決定して、1つ又はそれより多くの動径分布関数を与えることと、
1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々を規格化して、1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を与えることと、
1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を平均化して平均動径分布関数を与えることと、
Mの平均動径分布関数の各々の最大値を決定してMの最大値を与えることとを含み、
1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々が、α種の粒子からのラジアル距離の範囲内にあるβ種の粒子の数に基づいており、
Mの最大値の各々が、Mの試験分子の1つと関連付けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ユーザーインターフェース要素と、ディスプレイデバイスと、プロセッサと、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を実施するように、プロセッサにより実行可能な命令を含む非一時的なデータストレージとを含む、コンピュータデバイス。
【請求項10】
ユーザーインターフェースを含むコンピュータデバイスと、
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法のステップを実施するように構成されたサーバーとを含むシステムであって、
コンピュータデバイスが、
ユーザーインターフェースの入力要素を介して1つ又はそれより多くの入力を受信し、
シミュレーション結果を示す情報をユーザーインターフェースの出力要素に表示するように構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
優先権は、参照によりその内容が本開示に組み入れられる、2013年10月23日に出願された米国仮出願第61/894756号に関して主張される。
【0002】
分野
本発明は、医薬品添加剤等の分子の設計に関し、より具体的には、所定の溶液中で参照分子の特性を向上させる分子の設計に用いるのに好適な方法、システム、及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
医薬品化合物のデリバリーにおいて、ポリマー及びオリゴマーは添加剤として一般的に用いられる。ポリマー及びオリゴマーを用いる1つの理由は、それらが多官能性であり(すなわち、多くの置換位置を有する)、かつ添加剤として用いられる低分子量化合物と比較して、薬剤分子との相互作用をより容易にする協働的な挙動を示す(すなわち、置換基間の相互作用)ことである。低溶解性活性医薬成分(API)に関して、添加剤ポリマー及びオリゴマーは、非共有結合又は分子相互作用(例えば、会合、双極子相互作用、水素結合、分散力、親水性相互作用等)によるAPIの凝集及び結晶化を防止することができるため、APIの生物学的利用能を向上させる。ポリマー及びオリゴマーのある程度の設計の柔軟性があれば、ポリマー又はオリゴマー添加剤は、特定の用途に関する薬剤放出性を向上させるために、特定のAPI用に設計することができる。
【発明の概要】
【0004】
低溶解性APIを含む医薬品の開発における1つの目標は、水性環境中のAPIの溶解度を向上させる添加剤を特定することである場合がある。「API」は、従来、動物、特にヒトに投与されたときに、有益な予防及び/又は治療特性を有する化合物を指す。「低溶解性API」は、薬剤が、生理学的に適切なpH(例えばpH1〜8)において約0.5mg/mL以下の水溶性を有することを意味する。本発明は、薬剤の水溶性が減少するときに、より大きな有用性を見出す。したがって、本発明の方法は、水溶性が0.1mg/mL未満、又は0.05mg/mL未満、又は0.02mg/mL未満、又は0.01mg/mL未満である低溶解性APIに関して好ましい。この水溶性(mg/mL)は、胃と腸のバッファーを模したUSPを含む任意の生理学的に適切な水溶液(例えばそのpH値は1〜8である)中で観察される最小値である。活性成分は、本発明の恩恵を受けるために、低溶解性活性成分である必要はないが、低溶解性活性成分は、本発明での使用に関して好ましい分類を象徴する。所望の使用環境において相当の水溶性を呈する活性成分の水溶性は、最大1〜2mg/mL、又は20〜40mg/mLであってよい。有用な低溶解性APIは、国際特許出願公開第2005/115330号の第17頁〜22頁に列記される。
【0005】
医薬品を開発する際、研究化学者(及び/又は他の科学者)は、APIと共に用いられる好適な1種又は複数種の添加剤を特定する実験を実施する場合がある。例えば、研究化学者は、溶解度を向上させること、APIの凝集又は結晶化を最小限にすること、及び/又は生体利用能に影響するAPIの任意の他の特性を向上させることにより、APIの生体利用能を向上させる1種又はそれより多くの添加剤を特定することを試みる場合がある。
【0006】
ポリマー及びオリゴマーは、それらを、医薬品中で添加剤として用いるのに好適であるようにする場合のある、多くの潜在的な利益を提供する。ポリマー又はオリゴマーは、優先的にAPIと相互作用することにより、APIの凝集及び結晶化を防止する場合がある。疎水性ポリマー又はオリゴマーは、低溶解性APIの溶解度を十分に向上させる場合があるため、疎水性ポリマー及びオリゴマーは、特に魅力的な添加剤候補になる場合がある。多くの潜在的な置換位置、分子量及び鎖組成のため、研究化学者は、具体的に所定のAPIに関してポリマー又はオリゴマー添加剤を設計することができる場合がある。
【0007】
しかし、多くの利用可能な骨格及び置換位置のために、多くの潜在的なポリマー及びオリゴマー添加剤が、所定のAPIに関して存在する場合がある。したがって、研究化学者は、多くのポリマー及びオリゴマー添加剤を用いて実験する場合があり、その多くは、統計的にいうと、APIの生体利用能を十分に向上させない。その結果として、実行可能な医薬品を製造するAPIと共に用いることのできるポリマー及びオリゴマー添加剤を特定することなく、多くの時間と材料が消費される場合がある。
【0008】
本開示の方法、システム、及びデバイスは、参照分子と多くの試験分子との分子相互作用をシミュレーションすることによって、所定のAPIと共に用いるのに好適な添加剤を特定するのに必要な実験的試験の量を低減させる場合がある。例は、コンピュータデバイスにより、分子シミュレーターを用いてM組のシミュレーションデータ(Mは正の整数である)を生成することを含んでよい。M組のシミュレーションデータの各々は、溶媒中の参照分子の分子と、試験分子の分子のシミュレーションされた位置を示すシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルを含んでよい。例の方法は、M組のシミュレーションデータの各々に関して、アルファ(α)種とベータ(β)種との接触の可能性を決定してMの接触の可能性を与えることも含んでよい。接触は、β種の粒子が、α種の粒子からのラジアル距離の範囲内にあるときに生じてよい。この例において、α種及びβ種の各々は、参照分子、試験分子、又は溶媒の1つであってよい。例の方法は、さらに、Mの接触の可能性の少なくとも1つに基づいてシミュレーション結果を決定することと、ディスプレイデバイスにシミュレーション結果を表示させることを含んでよい。
【0009】
この側面において、例の方法は、研究化学者が、参照分子とMの試験分子との溶媒中での分子相互作用をシミュレーションすることを可能にする場合がある。これは、同様に、参照分子の特性に最大の改善を与える特定の分子構造に注目する研究化学者を助ける場合がある。例えば、医薬用途において、研究化学者は、ポリマー及びオリゴマーの構造、又は場合によっては水溶液中でのAPIの溶解度を向上させる特定のポリマー及びオリゴマーを特定することができる場合がある。例の方法は、他の生物学的活性成分(例えばビタミン及び薬草又はミネラルサプリメント)、及び非生物学的活性成分(例えば、肥料、除草剤、又は殺虫剤)に関する添加剤の系としての試験に有用である場合もある。
【0010】
したがって、例の方法の1つの実施態様において、参照分子はAPIであってよく、Mの試験分子は、Mのポリマー又はオリゴマー添加剤であってよく、溶媒は、水又は有機溶媒であってよい。
【0011】
例の方法の別の実施態様において、コンピュータデバイスは、参照分子、Mの試験分子、又は溶媒の1つを示す情報を含む1つ又は複数の入力を受信してよい。コンピュータデバイスは、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等のユーザーインターフェースを介して1つ又はそれより多くの入力を受信してよい。例えば、Mの試験添加剤の各々を受信するために、ポリマー及びオリゴマーを選択するためのフィールドと、1つ又はそれより多くの置換基を選択するためのフィールドと、1つ又はそれより多くの置換基の各々が、ポリマー及びオリゴマーと結合する(又はグラフトする)位置を選択するためのフィールドとを表示するように、GUIを構成してよい。ポリマー、オリゴマー、及び置換基の制限されない例は、さらに以下に列記される。
【0012】
さらに別の例の実施態様において、例の方法は、M組のシミュレーションデータを生成するより前に、分子シミュレーターを用いてM組の熱力学的平衡条件を与えることを含んでよい。M組の熱力学的平衡条件の各々は、参照分子と、Mの試験分子の1つと、溶媒とを含む系に関して1つ又はそれより多くの熱力学的平衡条件を含んでよい。分子シミュレーターは、M組の熱力学的平衡条件の1組を用いてM組のシミュレーションデータの各々を生成してもよい。さらに、M組の熱力学的平衡条件の各々を決定するために分子シミュレーターにより用いられる分子の数は、M組のシミュレーションデータの各々を生成するために分子シミュレーターにより用いられる分子の数より少なくてよい。
【0013】
Mの接触の可能性を決定するステップは、異なる形態をとってよい。1つの実施態様において、α種の粒子は、α種の原子、分子、又は化学的部分の1つであってよい。追加的に、β種の粒子は、β種の原子、分子、又は化学的部分の1つであってよい。
【0014】
別の実施態様において、Mの接触の可能性を決定することは、Mの平均動径分布関数を決定することを含む。Mの平均動径分布関数の各々を決定することは、1つ又はそれより多くの動径分布関数を与えるM組のシミュレーションデータの1つに含まれるシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルの各々に関する動径分布関数を決定することを含んでよい。1つ又はそれより多くの動径分布の各々は、α種の粒子からのラジアル距離の範囲内にあるβ種の粒子の数に基づいてよい。方法は、1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々を規格化して1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を与えることと、1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を平均化して平均動径分布関数を与えることを含んでもよい。
【0015】
さらなる実施態様において、方法は、Mの平均動径分布関数の各々の最大値を決定してMの最大値を与えることを含んでよい。Mの最大値の各々は、Mの試験分子の1つに対応してよい。この側面において、シミュレーション結果は、(i)Mの試験分子に含まれる1つ又はそれより多くの試験分子と、(ii)1つ又はそれより多くの試験分子の各々に関連付けられる最大値とを示す情報を含んでよい。追加的に又は代替的に、例の方法は、1つ又はそれより多くの試験分子の各々に関連付けられる最大値の順に、Mの試験分子に含まれる1つ又はそれより多くの試験分子を並べた表を生成することを含んでよい。シミュレーション結果は、表を示す情報を含んでよい。
【0016】
さらなる実施態様において、例の方法は、各試験分子に関連付けられる最大値に基づいて、Mの試験分子から好ましい試験分子を特定することを含んでよい。シミュレーション結果は、Mの好ましい分子を示す情報を含んでよい。例えば、α種とβ種が参照分子である場合、好ましい試験分子は最小の最大値に対応する、Mの試験分子に含まれる試験分子であってよい。代替的に、α種又はβ種の少なくとも1つが、溶媒の1つ又はMの試験分子の1つである場合、好ましい試験分子は、最大の最大値に対応する、Mの試験分子に含まれる試験分子であってよい。
【0017】
追加的に、例の方法を実施するように構成されたコンピュータデバイス及びシステムが、本開示で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、例の実施態様による分散コンピューティングアーキテクチャの簡易化した略図である。
図2図2は、例の実施態様によるコンピュータデバイスのブロック図である。
図3図3は、例の実施態様によるサーバーデバイスのブロック図である。
図4図4〜7は、例の実施態様による方法のフロー図である。
図5図4〜7は、例の実施態様による方法のフロー図である。
図6図4〜7は、例の実施態様による方法のフロー図である。
図7図4〜7は、例の実施態様による方法のフロー図である。
図8図8A〜8Bは、例の実施態様による平均動径分布関数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明は、添付の図面に関して開示されたシステム、方法、及びデバイスの種々の特徴、機能、及び特性を記載する。図面において、文脈の別段の示唆がない限り、同様の記号は、典型的には同様の要素を特定する。本開示に記載された例示的な実施態様は、制限することを意味しない。本開示の側面は、本開示で概して記載され、図面に描かれるように、種々の構成において配列し、置換し、組み合わせ、分離し、設計することができ、そのすべてが本開示で企図されることが容易に解されるであろう。
【0020】
図1は、本開示で記載される種々の実施態様を用いることができる、分散コンピュータアーキテクチャの簡略化したブロック図である。コンピュータシステム100は、ネットワーク104を介して他のコンピュータデバイスと通信してよいコンピュータ端子102を含む。したがって、1つのコンピュータ端子だけが図1に示されるが、通信システム100は、ネットワーク104に接続された複数の追加のコンピュータ端子を含んでよい。
【0021】
コンピュータ端子102は、有線及び/又は無線接続の使用によりネットワーク104に接続してよい。1つの例において、ネットワーク104は、専用イントラネットであってよい。別の例において、ネットワーク104は、インターネット等のパブリックネットワークであってよい。他の例も可能であってよい。
【0022】
ネットワーク104を、インターネットプロトコル(IP)ネットワークとして構成してよい。したがって、コンピュータ端子102は、パケット交換機技術によりネットワーク104に接続された他のデバイスと通信してよい。代替的に又は追加的に、ネットワーク104は回路交換技術を組み入れてよく、この場合において、コンピュータ端子102は、回路交換及び/又はパケット交換を介して通信してよい。
【0023】
通信システム100は、ネットワーク104を介して他のコンピュータデバイスと通信してもよいサーバーデバイス106も含む。別の例において、コンピュータシステム100は、サーバーデバイス106に加えて1つ又はそれより多くのサーバーデバイスを含んでよい。例えば、コンピュータシステム100は、プロセシングリソースを共有するように構成されたサーバーバンク又はサーバークラスターとして配置された複数のサーバーデバイスを含んでよい。
【0024】
アプリケーションに応じて、サーバーデバイス106は、他のコンピュータデバイスと通信して、ネットワークベース又はクラウドベースのコンピュータの使用を容易にしてよい。例えば、サーバーデバイス106は、コンピュータ端子102の使用者により要求されたタスクを実行するために、1つ若しくはそれより多くのネットワークプロトコル及び/又はアプリケーションレベルプロトコルにしたがってコンピュータ端子102と通信してよい。
【0025】
コンピュータ端子102及びサーバーデバイス106は、ネットワーク104を介してサーバーデータストレージ108にアクセスしてもよい。図1に示されるように、サーバーデバイス106をサーバーデータストレージ108に直接的に接続してもよい。さらに、コンピュータシステム100は、サーバーデバイス106及び/又はコンピュータ端子102に直接的に及び/又は間接的に接続された追加のサーバーデータストレージ、並びに図1に示されていないコンピュータシステム100に含まれる他のサーバーデバイス及び/又はコンピュータデバイスを含んでもよい。サーバーデータストレージ108は、コンピュータ端子102及び/又はサーバーデバイス106により実行されるアプリケーションの動作を容易にするために用いられるアプリケーションデータを保存してよい。
【0026】
図2は、例の実施態様によるコンピュータ端子200のブロック図である。コンピュータ端子200は、図1に示されるコンピュータ端子102の1つの例である。コンピュータ端子200は、例えばデスクトップ、ラップトップ、ノートブック、又はタブレットコンピュータ等のパーソナルコンピュータデバイスであってよい。
【0027】
コンピュータ端子200は、ユーザーインターフェース202と、データストレージ204と、プロセッサ206と、コミュニケーションインターフェース208とを含み、その全ては、システムバス、ネットワーク、又は他の通信手段210により通信可能に接続されてよい。
【0028】
ユーザーインターフェース202は、使用者のコンピュータ端子200とのやりとりが可能となるように機能してよい。ユーザーインターフェース202は、入力デバイス212と、ディスプレイデバイス214とを含んでよい。入力デバイス212は、キーボード、キーパッド、コンピュータマウス、及び/又はトラックボール等の使用者からの入力を受信するのに好適な1つ又はそれより多くの要素を含んでよい。使用者は、入力デバイス212とやりとりをして入力を行ってよい。追加的に又は代替的に、入力デバイス212は、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート等のデータポートを含んでよい。本例において、入力デバイス212は、入力、又はUSBポートに挿入されたポータブルUSBストレージデバイスからの他の情報を受信してよい。入力デバイス212は、入力を受信し、次いでプロセッサ206等のコンピュータ端子200の別の要素に送信されてよい入力信号を生成してよい。
【0029】
ディスプレイデバイス214は、ブラウン管ディスプレイ、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、デジタルライトプロセシング技術を用いたディスプレイ、プリンター、及び/又は現在知られており、若しくは後に開発される、情報を視覚的に表示するのに好適な任意の他のデバイス等の視覚的出力を生成するのに好適な1つ又はそれより多くの要素を含んでよい。ディスプレイデバイス214は、プロセッサ206等のコンピュータ端子200の要素からの出力信号を受信してよい。次いで、ディスプレイデバイス214は、使用者に表示される視覚的出力を生成してよく、それによって出力信号に含まれる情報の視覚的表示を使用者に示す。
【0030】
1つの例において、入力デバイス212及びディスプレイデバイス214は、タッチセンサー式又は感圧式ディスプレイスクリーン等の単一のデバイスに組み合わされてよい。他の例も可能であってよい。
【0031】
データストレージ204は、プロセッサ206等のコンピュータ端子200の要素により実行可能なプログラム命令216を保存するように構成される、現在知られており、又は後に開発される、非一時的で有形のコンピュータ読み込み可能なメディアの任意の型を含んでよい。データストレージ204は、コンピュータ端子200に関連付けられる他のプログラムデータ218を保存してもよい。例の方法により、プログラム命令216は、コンピュータ端子200にインストールされたオペレーティングシステム及び1つ又はそれより多くのアプリケーションプログラムを含んでよい。プログラムデータ218は、オペレーティングシステムとアプリケーションプログラムに各々関連付けられるプログラムコードを実行するために、コンピュータ端子200の要素によりアクセス可能なオペレーティングシステムデータとアプリケーションデータを含んでよい。
【0032】
プロセッサ206は、1つ若しくはそれより多くの汎用プロセッサ(例えば、1つ又はそれより多くのマイクロプロセッサ)、及び/又は1つ若しくはそれより多くの専用プロセッサ(例えば、1つ又はそれより多くのデジタル信号プロセッサ、グラフィックスプロセシングユニット、浮動小数点ユニット、ネットワークプロセッサ、及び/又は特定用途向け集積回路)を含んでよい。
【0033】
プロセッサ206は、入力デバイス212からの入力信号(input signal)を受信し、処理してよい。プロセッサ206は、コミュニケーションインターフェース208からの入力信号(incoming signal)を受信し、処理してもよい。入力信号及び/又は入力信号を処理することによって、プロセッサ206は、データストレージ204にアクセスすることによりプログラム命令216を実行してよい。プログラム命令216を実行することによって、プロセッサ206はデータを読み込み、及び/又はプログラムデータ218にデータを書き込み、ディスプレイデバイス214への出力信号(output signal)を生成し、送信し、及び/又はコミュニケーションインターフェース208への出力信号(outgoing signal)を生成し、送信してよい。
【0034】
コミュニケーションインターフェース208は、コンピュータ端子200が、図1に示されるネットワーク104等の1つ又はそれより多くのネットワークを介して他のコンピュータデバイスと通信することを可能にしてよい。例えば、コミュニケーションインターフェース208は、コンピュータ端子200がサーバーデバイス106と通信し、及び/又はサーバーデータストレージ108にアクセスすることを可能にしてよい。したがって、コミュニケーションインターフェース208は、回路交換及び/又はパケット交換ネットワークを介した通信に好適な要素を含んでよい。コミュニケーションインターフェース208は、有線及び/又は無線接続を介して1つ又はそれより多くのネットワークにコンピュータ端子200を接続するのに好適な要素を含んでもよい。
【0035】
コミュニケーションインターフェース208は、1つ又はそれより多くのネットワークを介して、別のデバイスからの入力信号を受信してよい。コミュニケーションインターフェース208は、次いでプロセッサ206への入力信号を送信してよい。コミュニケーションインターフェース208は、プロセッサ206からの出力信号を受信し、1つ又はそれより多くのネットワークを介して、1つ又はそれより多くの追加のデバイスに出力信号を送信してもよい。
【0036】
図3は、例の実施態様に係るサーバー300のブロック図である。サーバー300は、図1に示されるサーバーデバイス106の1つの例である。サーバー300は、データストレージ302と、プロセッサ304と、コミュニケーションインターフェース306とを含んでよく、その全ては、システムバス、ネットワーク、又は他の接続手段308により通信可能に接続されてよい。
【0037】
データストレージ302、プロセッサ304、及びコミュニケーションインターフェース306は、図2に関して記載されたデータストレージ204、プロセッサ206、及びコミュニケーションインターフェース208と各々同一又は実質的に同一であってよい。同様に、データストレージ302は、図2に関して記載されたプログラム命令216及びプログラムデータ218と各々同一又は実質的に同一であるプログラム命令310とプログラムデータ312とを含んでよい。
【0038】
図4は、方法400のブロック図である。図1〜3に示されたコンピュータデバイスの1つ又はそれより多く等のコンピュータデバイスは、方法400を用いて、参照分子と、1つ又はそれより多くの試験分子との溶媒系中での分子相互作用のシミュレーションに基づくシミュレーション結果を決定してよい。
【0039】
ブロック402において、方法400は、参照分子、Mの試験分子、溶媒、及び/又は接触の可能性の型を示す情報を含む、1つ又はそれより多くの入力を受信することを含む。1つの例において、コンピュータデバイスは、ディスプレイデバイスにグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を表示させてよい。GUIは、参照分子、Mの試験分子、溶媒、及び/又は接触の可能性の型を選択するためのフィールドを含んでよい。別の例において、コンピュータデバイスは、例えば、コマンドライン命令等の異なるユーザーインターフェースを介して、1つ又はそれより多くの入力を受信してよい。さらに別の例において、コンピュータデバイスは、現在知られており、又は後に開発される任意のハードウェア要素、及び/又はソフトウェアインターフェースを介して、1つ又はそれより多くの入力を受信してよい。したがって、方法400と他の方法は、GUIを介して1つ又はそれより多くの入力を受信することに関して記載されるが、他の例も可能であることが理解される。
【0040】
使用者は、GUI上に含まれる参照分子フィールドから参照分子を選択してよい。1つの例において、参照分子フィールドは、使用者が参照分子の化学式を入力するテキストボックスを含んでよい。別の例において、参照分子フィールドは、1つ又はそれより多くの既定の参照分子のドロップダウンメニュー(又は類似の提示)を含んでよい。1つ又はそれより多くの既定の参照分子の識別情報を、例えば、コンピュータデバイスの内部データストレージ、又はコンピュータデバイスが接続されるサーバーデータストレージ又はポータブルストレージデバイス等の外部のソースに保存してよい。
【0041】
使用者は、GUIとやり取りをしてMの試験分子を設計してよい。Mの試験分子の各々に関して、使用者は、場合によっては、多くの可能性のあるポリマー及びオリゴマーを列記するドロップダウンメニューからポリマー又はオリゴマーを選択してよい。GUIは、使用者がポリマー又はオリゴマー上の1つ又はそれより多くの位置において、ポリマー又はオリゴマーに結合する(又はグラフトする)1つ又はそれより多くの置換基を選択することも可能にしてよい。このように、GUIは、使用者が、シミュレーションされた環境での試験分子の参照分子との各々の相互作用に基づいて、比較評価可能な複数の試験分子を設計することを可能にしてよい。代替的に、ポリマー及び/オリゴマーフィールド、及び/又は1つ若しくはそれより多くの置換基フィールドは、使用者が、Mの試験分子の1つに関する化学式を入力することのできるテキストフィールドを含んでよい。
【0042】
可能性があるポリマーとしては、以下に限定されないが、ポリサッカライド、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アスパラギン酸)又はポリ(グルタミン酸)等のポリ(アミノ酸);ポリ乳酸又は係るポリマー酸の塩;又はエチレンオキシドホモポリマー及びエチレンオキシドコポリマー等のポリアルキレンオキシドからなる群より選択される合成ポリマー、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合形態で含む、ホモポリマー及びコポリマー(ブロックコポリマーを含む)等のポリエチレングリコール;アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩等の不飽和酸又はこれらの塩;アクリルアミド等の不飽和アミド;ビニルエステル;ビニルアルコール;ビニルアセテート等のアセテート;エチレンイミン等のアルキレンイミン;オキシエチレンアルキルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、エチレンスルホン酸、ビニルアミン、ビニルピリジン、又はエチレン性不飽和サルフェート又はスルホネートを挙げてよい。例示的なポリサッカライドは、マンノース繰り返し単位を含むポリサッカライド親水コロイドを含む澱粉天然ゴム、カラギーナン、アラビアガム、キサンタンゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ガティガム、カラギーナン、デキストラン、アルギネート、寒天、ジェランガム、そのようなペクチン、澱粉、澱粉誘導体、特にグアー誘導体、セルロースである。本発明の目的に関して、ポリマーは、典型的には少なくとも50の繰り返し単位、より典型的には少なくとも100の繰り返し単位を含む。
【0043】
可能性のあるオリゴマーとしては、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール及びシクロデキストランを挙げてよい。本発明の目的に関して、ポリマーは、典型的には4〜50未満、より典型的には6〜20の繰り返し単位を含む。
【0044】
可能性のある置換基の1種としては、以下に限定されないが、C1‐3アルキル基(メチル、エチル又はプロピル等)等のアルキル基;ヒドロキシ‐C2‐4‐アルキル基(ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシブチル等)等のヒドロキシアルキル基;6又はそれより多くの炭素数を有する、長鎖の分岐及び非分岐のアルキル基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基;アセテート、プロピオネート、ブチレート、スクシネート、フタレート、マレアート、トリメリテート又はラクテート基等のアシル基;カルボキシ‐C1‐C3‐アルキル(カルボキシメチル等)、スクシネート、フタレート、マレアート又はトリメリテート等のカチオン性基、を含むモノマー基が挙げられる。
【0045】
他の可能性がある置換基としては、ポリエチレンオキシド又はポリビニルアセテート等の別のポリマー又はオリゴマーにグラフトすることができるオリゴマー基及びポリマー基が挙げられる。別の例として、分子量が20000ダルトン未満のエチレンオキシドのオリゴマー及びポリマーを概して指すポリエチレングリコール(「PEG」)が、置換基の別の分類であってよい。GUIは、使用者が、ペグ化により別のポリマー又はオリゴマーに、1つ又はそれより多くのPEGを共有結合的にグラフトすることを可能にしてよい。さらに、1つ又はそれより多くのPEGは、1つ又はそれより多くのPEGを結合して(又はグラフトして)添加剤を形成してよい位置に、影響を与えてよい異なる幾何を有してよい。例えば、分岐PEG又は星型PEGは、中心コア基又は分子から生じる1つ又はそれより多くのPEG鎖を有してよく、及び/又はくし型PEGは、別のポリマー又はオリゴマーにグラフトすることができる複数のPEG鎖を有してよい。ポリマー又はオリゴマー置換基の他の例も可能である。
【0046】
置換基は、ポリマー又はオリゴマー中のアルキル水素、ヒドロキシ水素、又はアミン水素等の水素原子と置き換わる。結合に利用可能な置換基及び利用可能な位置は、選択されるポリマー又はオリゴマーに依存してよい。例えば、ポリマーがポリビニルピロリドンである場合、GUIは、使用者が複数の置換基の1つを選択して、ポリマー鎖又はピロリドン環上のアルキル水素を置き換えることを可能にしてよい。別の可能性は、ポリビニルピロリドンアルキル水素をグラフト化ポリビニルアセテートと置き換えることであってよい。
【0047】
別の例として、ポリマー又はオリゴマーがセルロース又はシクロデキストリンである場合、多くの置換基は、D‐グルコピラノース単位の2、3及び6位におけるエーテル又はエステル結合によりポリマー又はオリゴマーと結合してよい。したがって、複数の可能な繰り返し単位Nが存在してよく、可能な繰り返し単位の数は、固有の水素でない置換基の数nに依存する。例えば、以下の式は、n個の固有の置換基を含むセルロースポリマーを含む溶解度向上添加剤に関して生じることのできる固有の繰り返し単位の数を規定する:N=(2)3n=8n
【0048】
結合に利用可能な置換基及び利用可能な位置は、選択されたポリマー又はオリゴマーに依存してよい。ポリエチレンオキシドは、使用者がビニルポリマーに結合させることができる場合がある置換基の1つの例の分類である。追加的に又は代替的に、ポリエチレンオキシドを含む適切な側鎖をポリマーにグラフトしてよい。
【0049】
使用者は、参照分子及びMの試験分子の分子の数を選択してもよい。1つの例において、使用者は、参照分子及びMの試験分子の各々に関して分子の特定の数を選択してよい。別の例において、使用者は、Mの試験分子の各々に関して、参照分子の分子と試験分子の分子との比を選択してよい。さらに別の例において、使用者は、溶媒系中の参照分子とMの試験分子の各々との濃度を、場合によっては質量パーセントで選択してよい。参照分子及びMの試験分子の各々の分子の数を選択する他の例も可能であってよい。
【0050】
使用者は、溶媒フィールドから溶媒を選択してよい。1つの例において、溶媒フィールドは、使用者が参照分子の化学式を入力するテキストボックスを含んでよい。別の例において、溶媒フィールドは、1つ又はそれより多くの既定の溶媒のドロップダウンメニュー、又は類似の提示を含んでよい。1つ又はそれより多くの既定の溶媒は、1つ又はそれより多くの既定の参照分子と同一の又は実質的に同一の方法で保存してよい。代替的に、使用者は、溶媒を選択しなくてよい。この例において、水等の初期設定の溶媒が、1つ又はそれより多くの入力に含まれてよい。
【0051】
使用者は、広範な有機及び水性溶媒から溶媒を選択してよい。典型的な溶媒は、水であり、また、酸素、窒素、又は塩素等のハロゲン等の1つ又はそれより多くのヘテロ原子を有する極性有機溶媒である。典型的な有機溶媒は、アルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はグリセロール等の多官能性アルコール;又はメタノール、エタノール、イソプロパノール又はn‐プロパノール等の単官能性アルコール;テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等のケトン;エチルアセテート等のアセテート;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;又はアセトニトリル等のニトリルである。典型的に、有機溶媒の炭素数は1〜6、より典型的には1〜4である。
【0052】
使用者は、接触の可能性フィールドから接触の可能性の型を選択してよい。1つの例において、使用者は、以下の接触の可能性の型の1つから選択する:参照分子‐参照分子、参照分子‐試験分子、参照分子‐溶媒、及び/又は試験分子‐溶媒。追加的に、使用者は、1つより多くの接触の可能性の型を選択してよい。使用者が接触の可能性の型を選択しない場合、場合によっては参照分子‐試験分子型等の接触の可能性の初期設定の型が、1つ又はそれより多くの入力に含まれてよい。
【0053】
さらなる実施態様において、使用者は、GUIを介して追加的なフィールドを選択してよい。使用者は、1つ又はそれより多くの接触の可能性を決定するのに用いられるビン幅(δr)を選択してよい。使用者は、δrが、接触の可能性の十分に滑らかな分布を得るのに十分な大きさである一方、分子の対(例えば、β種の粒子と対になったα種の粒子)の空間的変動を構成するのに十分小さいように、δrを選択してよい。1つの例において、使用者は、Mの試験分子の各々に関してδrを選択してよい。別の例において、使用者は、Mの試験分子の1つより多くに関して用いられる1つのδrを選択してよい。代替的に、コンピュータデバイスは、場合によっては参照分子及び/又はMの試験分子に基づいて、Mの試験分子の1つ又はそれより多くに関してδrを選択するように構成されてよい。
【0054】
代替的に又は追加的に、使用者は参照分子、Mの試験分子、溶媒、及び/又は接触の可能性の型の1つを示す情報を、ポータブルユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブ等のポータブルメモリデバイスに保存してよい。使用者は、コンピュータデバイスのユーザーインターフェースに含まれるUSBポートにUSBドライブを挿入してよく、コンピュータデバイスは、USBドライブから1つ又はそれより多くの入力を受信してよい。代替的に又は追加的に、プロセッサは、場合によってはコンピュータネットワーク104等の有線又は無線接続を介して、コンピュータデバイスと接続されたリモートコンピュータデバイスから1つ又はそれより多くの入力を受信してよい。
【0055】
ブロック404において、方法400は、M組のシミュレーションデータを生成する分子シミュレーターを用いることを含む。分子シミュレーターは、任意のアルゴリズム、方法、プロセス、又はシステムの分子力場をシミュレーションする現在知られている技術、又は後に開発される技術を用いてよい。1つの例において、分子シミュレーターは、システムをシミュレーションする分子ダイナミクスモデルを用いてよい。別の例において、分子シミュレーターは、システムをシミュレーションするMetropolis Monte Carloモデルを用いてよい。他の例も可能であってよい。
【0056】
分子シミュレーターは、参照分子とMの試験分子の各々との溶媒系での分子相互作用のシミュレーションに関して1組のシミュレーションデータを生成して、M組のシミュレーションデータを与えてよい。M組のシミュレーションデータの各々を決定する方法の例は、図5に関して記載される。
【0057】
ブロック406において、方法400は、M組のシミュレーションデータの各々に関して、α種とβ種結果との接触の可能性の結果を決定してMの接触の可能性を与えることを含む。α種とβ種の各々の識別情報は、接触の可能性の型に依存してよい。1つの例として、以下の表は、接触の可能性の型に基づいてα種とβ種を規定してよい。
【0058】
【表1】
【0059】
接触の可能性の他の型も可能であってよい。
1つの例において、GUIを介して使用者から受信される選択された接触の可能性の型に基づいて、コンピュータデバイスは接触の可能性を決定する。代替的に、コンピュータデバイスは、接触の可能性の型の1つ又はそれより多く、又は場合によっては全てに関して、Mの接触の可能性を決定してよい。M組のシミュレーションデータの各々に関して接触の可能性を決定する方法の例は、図6に関して記載される。
【0060】
ブロック408において、方法400は、Mの接触の可能性の少なくとも1つに基づいて、シミュレーション結果を決定することを含む。1つの例において、シミュレーション結果は、Mの接触の可能性を示す情報を含んでよい。別の例において、シミュレーション結果は、Mの接触の可能性の1つ又はそれより多くの各々のフーリエ変換であってよい。この例において、コンピュータは、各接触の可能性のフーリエ変換を決定し、シミュレーションされた結果中に各フーリエ変換を含んでよい。
【0061】
別の例において、シミュレーション結果は、Mの試験分子の各々に関連付けられる接触の可能性に基づいて、Mの試験分子、場合によってはMの溶質の表又はリスト等を比較するのに使用できる情報を含んでよい。別の実施態様において、シミュレーション結果は、表及び/又はMの接触の可能性に基づいて、Mの試験分子から選択される好ましい試験分子の識別情報である。他の例も可能であってよい。シミュレーション結果を決定する方法の例は、図7に関して記載される。
【0062】
ブロック410において、方法400は、ディスプレイデバイスに結果を示す情報を表示させることを含む。1つの例において、コンピュータデバイスは、ディスプレイデバイスに、GUI上でシミュレーション結果を示す情報を表示させてよい。結果を示す情報は、表、グラフ、テキスト、及び/又はシミュレーション結果の任意の他の好適な提示の1つ又はそれより多くを含んでよい。
【0063】
使用者は、GUIとやり取りをして、シミュレーション結果を示す情報の所望の表示を選択してもよい。例えば、使用者は、GUIとやり取りをして、Mの試験分子及び接触の可能性及び/又は好ましい試験分子の表を選択してよい。コンピュータデバイスは、場合によってはGUIとやり取りをする使用者から受信した追加の入力に応答して、1組又はそれより多くのシミュレーションデータを示す情報を表示するように構成されてもよい。
【0064】
図4において、方法400のブロックは、連続して実施されるように記載される。1つの例において、コンピュータデバイスは、方法400のブロックの1つ又はそれより多くのステップを同時に実施してよい。例えば、コンピュータデバイスは、ブロック404〜408の2つ又はそれより多くの部分を同時に実施してよい。他の例も可能であってよい。
【0065】
図5は、方法500のフロー図である。コンピュータデバイスは、方法500の1つ又はそれより多くのブロックのステップを実施して、分子シミュレーターにより1組のシミュレーションデータを生成してよい。方法500は、方法400のブロック404のステップを実施する際に、コンピュータデバイスが用いてよい方法の1つの例である。すなわち、コンピュータデバイスは、方法500を実施して、Mの分子の各々に関して1組のシミュレーションデータを決定してよい。
【0066】
方法500に関して記載されたシミュレーションを実施する際、コンピュータデバイスは、1つ又はそれより多くのシミュレーションエンジンを用いてよい。シミュレーションエンジンは、参照分子と試験分子との分子相互作用をシミュレーションするのに好適である、現在知られており、又は後に開発される任意のシミュレーションエンジンであってよい。
【0067】
上記で説明したように、参照分子は、ポリマー又はオリゴマーであってよい。本開示で記載されるシミュレーションを実施する際、コンピュータデバイスは、試験分子のフラグメントを用いてよく、各フラグメントは、試験分子の約4〜5のモノマー単位を含む。別の例において、コンピュータデバイスは、試験分子のより長い、又はより短いフラグメントを用いてよい。例えば、試験分子の長さは、参照分子の長さの倍数であってよい。1つの例として、試験分子の長さは、参照分子の長さの4〜5倍であってよい。他の倍数の例も可能である。
【0068】
ブロック502において、方法500は、初期のシミュレーションを実施して、参照分子と試験分子の熱力学的平衡条件を決定することを含む。1つの例において、熱力学的平衡条件は、例えば、溶液体積中の参照分子及び/又は試験分子の平衡温度、平衡時間、平衡圧力、及び/又は平衡密度を含んでよい。別の例において、熱力学的平衡条件は、他の、及び/又は追加の条件を含んでよい。
【0069】
コンピュータデバイスは、参照分子と試験分子の熱力学的平衡条件を決定する分子シミュレーターを用いてよい。1つの例において、分子シミュレーターは、初期のシミュレーションを実施する際に、場合によっては参照分子の分子及び試験分子の分子の総数の1〜5パーセント程度の、参照分子と試験分子の少数の分子のエネルギーを評価してよい。参照分子と試験分子の量の他の例も可能であってよい。
【0070】
ブロック504において、方法500は、熱力学的平衡条件において、参照分子と試験分子の生成物シミュレーションを実施することを含む。概して、参照分子と試験分子の生成物シミュレーションは、参照分子と試験分子のより多くの数の分子の間の分子相互作用を評価することを含んでよい。この方法において、分子シミュレーターは、参照分子と試験分子との分子相互作用を評価するのに用いることができるほど十分に多いデータを生成してよい。
【0071】
ブロック506において、方法500は、1回又はそれより多くのシミュレーション回数においてシミュレーションデータのサンプルを生成して、シミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルを含む1組のシミュレーションデータを与えることを含む。シミュレーションデータの各サンプルは、シミュレーション時間の各々における参照分子と試験分子の各々の複数の分子の位置を示す情報を含んでよい(すなわち、シミュレーションされた溶液中の分子の3次元の位置及び配向)。
【0072】
1つの例において、一定の時間間隔が1回又はそれより多くのシミュレーション回数の各々を分離してよい。生成物シミュレーションの間のデータの別の例において、各連続するシミュレーション時間の間の時間はランダムである。例えば、コンピュータデバイスは、ランダムに、生成物シミュレーションの間にシミュレーションデータの500個のサンプルを取得してよい。他の例も可能である。
【0073】
図6は、方法600のフロー図である。コンピュータデバイスは、方法600のブロックの1つ又はそれより多くのステップを実施して、1組のシミュレーションデータに基づいて、2つの分子の種の間の接触の可能性を決定してよい。方法600は、方法400のブロック406のステップを実施する際に、コンピュータデバイスが実施してよい方法の1つの例である。すなわち、Mの接触の可能性を与えるために、コンピュータデバイスは、方法400のステップを実施して、M組のシミュレーションデータの各々に関して接触の可能性を決定してよい。
【0074】
ブロック602において、方法600は、シミュレーションデータの組に含まれるシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルの各々に関して複数の動径分布関数を決定して、1つ又はそれより多くの動径分布関数を与えることを含む。gαβ(r)と表されてよい動径分布関数を決定するために、コンピュータデバイスは、α種の各粒子からのラジアル距離(r)の範囲内のβ種の粒子の数を決定してよい。α種とβ種の各々に関して、粒子は、各々の種の原子、分子、又は化学的部分であってよい。ラジアル距離の範囲は、δrに依存してよい。1つの例において、ラジアル距離の範囲は、r−δr/2〜r+δr/2であってよい。他の例も可能であってよい。コンピュータデバイスは、シミュレーションデータの組に含まれるシミュレーションデータの各サンプルに関して、動径分布関数を決定してよい。
【0075】
ブロック604において、方法600は、1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々に関して、規格化された動径分布関数を決定して、1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を与えることを含む。コンピュータデバイスは、現在知られており、又は後に開発される任意の好適な方法、アルゴリズム、プロセス、又は手順により、1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々を規格化してよい。1つの例において、コンピュータデバイスは、以下の式を用いて各動径分布関数を規格化してよい。
【0076】
【数1】
【0077】
式中、Xαはα種の原子(又は分子)の数であり、ρβは、β種の分子の平均密度であり、Vδrは、ラジアル距離r−δr/2〜r+δr/2の球面シェルの体積である。
【0078】
ブロック606において、方法600は、規格化された動径分布関数を平均化して平均動径分布関数を与えることを含む。シミュレーションデータの組に関する平均動径分布関数は、シミュレーションデータの組を生成するのに用いられる試験分子の接触の可能性であってよい。1つの例において、コンピュータデバイスは、複数の規格化された動径分布関数に含まれる各規格化された動径分布関数を用いて平均動径分布関数を与えてよい。別の例において、コンピュータデバイスは、1つ又はそれより多くの動径分布関数のサブセットを用いて平均動径分布関数を与えてよい。
【0079】
図7は、方法700のフロー図である。コンピュータデバイスは、方法700の1つ又はそれより多くのブロックのステップを実施してシミュレーション結果を決定してよい。方法の1つの例において、コンピュータデバイスは方法700を方法400のブロック408のステップを実施する際に実施してよい。すなわち、コンピュータデバイスは、方法700のステップを実施して、Mの接触の可能性の少なくとも1つに基づいて、シミュレーション結果を決定してよい。
【0080】
ブロック702において、方法700は、Mの平均の接触の可能性の各々の最大値を決定してMの最大値を与えることを含む。接触の可能性を平均動径分布関数として規定する例において、接触の可能性の最大値は、平均動径分布関数の最大ピークの値である。別の例において、別の動径分布関数により接触の可能性を規定してよい。この例において、動径分布関数の最大ピーク値は、接触の可能性の最大値であってよい。他の例も可能であってよい。
【0081】
ブロック704において、方法700は、Mの最大値に基づいてMの試験分子を並べる表を生成することを含む。各最大値は、Mの試験分子の1つに対応する(例えば、試験分子を用いてシミュレーションデータの組を生成し、その組から接触の可能性を決定した)。コンピュータデバイスは、1つ又はそれより多くの試験分子に対応する最大値の順に、1つ又はそれより多くの試験分子を並べることにより、表を生成してよい。1つ又はそれより多くの試験分子を昇順で並べるか降順で並べるかは、Mの接触の可能性の決定に用いられる接触の可能性の型に依存してよい。
【0082】
1つの例において、コンピュータデバイスは、接触の可能性の参照分子‐参照分子の型を用いてよい。この例において、コンピュータデバイスは、Mの試験分子の1つ又はそれより多くを昇順で並べることにより、表を生成してよい(例えば、コンピュータデバイスは、最小の最大値から最大の最大値へ1つ又はそれより多くのMの試験分子を並べてよい)。
【0083】
薬学的応用の文脈において、研究化学者は、接触の可能性の参照分子‐参照分子の型を用いて、溶媒系(例えば水性環境)でのAPI(すなわち参照分子)の凝集の防止に対する添加剤(すなわち試験分子)の効果を評価してよい。添加剤が、他の接触の可能性の最大値と比較して、より低い接触の可能性の最大値をもたらす場合、研究化学者は、その添加剤が他の添加剤より、APIの凝集の防止に対してより効果的であることを決定してよい。それらの対応する最大値の順に、1つ又はそれより多くの添加剤を昇順で並べることにより、使用者は、APIの凝集の防止に対してより効果的である1種又は複数種の添加剤を迅速に特定することができる場合がある。
【0084】
別の例において、コンピュータデバイスは、接触の可能性の参照分子‐試験分子、接触の可能性の参照分子‐溶媒、又は接触の可能性の溶質‐溶媒等のMの接触の可能性を生成する際、異なる接触の可能性の型を用いてよい。この例において、コンピュータデバイスは、Mの試験分子の1つ又はそれより多くを降順で並べてよい(例えば、コンピュータデバイスは、1つ又はそれより多くの試験分子を最大の最大値から最小の最大値へ並べてよい)。
【0085】
薬学的応用の文脈において、研究化学者は、接触の可能性の参照分子‐試験分子の型を用いて、水性環境中のAPIの溶解度を向上させる添加剤の効果を評価してよい。接触の他の可能性の最大値と比較して、添加剤がより大きい最大値をもたらす場合、研究化学者は、添加剤が、他の添加剤よりAPIの溶解度を向上させることに対してより効果的であることを決定してよい。その対応する最大値の順に、降順で1つ又はそれより多くの添加剤を並べることにより、使用者はAPIの溶解度の向上に対してより効果的である1種又は複数種の添加剤を迅速に特定することができる場合がある。
【0086】
同様に、研究化学者は、接触の可能性の参照分子‐溶媒又は試験分子‐溶媒の型を用いて、溶媒中、例えば水性環境でのAPIの溶解度に対する添加剤の効果を評価してよい。上記の例と同様に、接触の可能性のより大きい最大値は、添加剤が、APIの溶解度の向上に対して、他の添加剤よりも効果的であることを研究化学者に知らせてよい。その対応する最大値の順に、降順で1つ又はそれより多くの添加剤を並べることにより、使用者はAPIの溶解度の向上に対してより効果的である1種又は複数種の添加剤を迅速に特定することができる場合がある。追加的に、研究化学者は、連続的なシミュレーションの最大値を比較することにより、シミュレーション条件を評価できる場合がある。同一の添加剤に関する2つの最大値が統計誤差の範囲内でない場合、研究化学者、又は場合によってはコンピュータデバイスは、シミュレーションが熱力学的平衡条件で実施されていないことを決定してよい。それに応じて、研究化学者(又はコンピュータデバイス)は、1つ又はそれより多くのシミュレーションパラメータ(例えば、δr、平衡シミュレーションの時間又は生成シミュレーションの時間、サンプルサイズ又は生成シミュレーションの間のサンプリング頻度)を調整してよい。
【0087】
ブロック706において、方法700は、Mの最大値に基づいて、Mの試験分子から好ましい試験分子を選択することを含む。好ましい試験分子は、Mの接触の可能性の生成に用いられる接触の可能性の型に依存してよい。例えば、α種及びβ種の両方が参照分子である場合、コンピュータデバイスは最小の最大値に対応する試験分子を好ましい試験分子として選択してよい。別の例において、α種及びβ種の少なくとも1つが、試験分子の1つ又は溶媒であるときのように、コンピュータデバイスは、最も大きい最大値に対応する溶質を好ましい試験分子として選択してよい。さらに他の例において、他の基準を用いて好ましい試験分子を選択してよい。
【0088】
記載された方法を実施するように構成されたコンピュータデバイスの動作を示すために、以下の例を検討する。これらの例は、薬学的応用に関して記載されるが、コンピュータデバイスは、他の応用において記載される方法を実施してよいことが理解される。
【0089】
ブロック402のステップを実施することにおいて、コンピュータデバイスは、APIと3種の試験添加剤(添加剤A、添加剤B、及び添加剤C)を示す入力を受信してよい。コンピュータデバイスは、溶媒が水であることを示す入力を(場合によっては初期設定により)受信してもよい。コンピュータデバイスは、接触の可能性の型を特定する入力を受信してもよい。
【0090】
ブロック404と方法500のステップを実施することにおいて、コンピュータデバイスは、3組のシミュレーションデータを生成してよく、その各々は、APIと添加剤の1つとの間の水性環境での分子相互作用のシミュレーションから生成される。シミュレーションデータの各組は、シミュレーションデータの組が生成された添加剤に対応してよい。すなわち、第一のシミュレーションデータの組は添加剤Aに対応してよく、第二のシミュレーションデータの組は添加剤Bに対応してよく、第三のシミュレーションデータの組は添加剤Cに対応してよい。
【0091】
ブロック406及び方法600のステップを実施することにおいて、コンピュータデバイスは、3つの接触の可能性の決定を実施してよい。コンピュータデバイスは、3組のシミュレーションデータの1つから決定された平均動径分布関数として、各接触の可能性を決定してよい。
【0092】
ブロック408及び/又は方法700のステップを実行することにおいて、コンピュータデバイスは、3つの接触の可能性に基づいてシミュレーション結果を決定してよい。コンピュータデバイスは、平均動径分布関数の最大ピークに基づいて、各接触の可能性の最大値を決定してよい。説明の目的のために、MVAは、添加剤Aに対応する接触の可能性の最大値であってよく、MVBは、添加剤Bに対応する接触の可能性の最大値であってよく、MVCは、添加剤Cに対応する接触の可能性の最大値であってよい。追加的に、MVAはMVBより大きくてよく、MVBはMVCより大きくてよい。
【0093】
コンピュータデバイスは、対応する最大値の順に、3種の添加剤を並べる表を生成してよい。ブロック704に関して記載されるように、コンピュータデバイスが表をどのように生成するかは、選択される接触の可能性の型に依存してよい。接触の可能性の型が、参照分子‐参照分子(例えば、API‐API)型である例において、コンピュータデバイスは、その各々の最大値の順に、昇順で3種の添加剤を並べてよい。すなわちコンピュータデバイスは、添加剤Cが第一列、添加剤Bが第二列、添加剤Aが第三列にあるように、表を生成してよい。追加的に、コンピュータデバイスは、添加剤Cを好ましい試験分子として特定してよい。
【0094】
接触の可能性の型が参照分子‐参照分子型の型でない例において、コンピュータデバイスは、その各々の最大値の順に、降順で3種の添加剤を並べてよい。すなわち、コンピュータデバイスは、添加剤Aが第一列、添加剤Bが第二列、添加剤Cが第三列にあるように表を生成してよい。追加的に、コンピュータデバイスは、好ましい試験分子として添加剤Aを特定してよい。
【0095】
追加的な例として、参照分子が低溶解性APIである以下の薬学的応用を検討する。この例において、使用者は、GUIとやり取りをして、API(すなわち、参照分子)としてフェニトイン(IUPAC名:5,5‐ジフェニルイミダゾリジン‐2,4‐ジオン)を選択してよい。使用者は、GUIとやり取りをして2種の添加剤(すなわち、試験分子)を選択してもよい。第一の添加剤は、モル当たりの置換度が2.0メチル、0.2ヒドロキシプロピル、及び0.8アセテートであるセルロース誘導体ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートである。第二の添加剤は、モル当たりの置換度が2.0メチル、0.2ヒドロキシプロピル、及び0.8スクシネートであるヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートである。使用者は、GUIとやり取りをして、溶媒として水を選択し、また、API‐添加剤水分散液中の参照分子と、試験分子の各々の質量パーセント濃度を、各々10%及び3.3%と各々選択してもよい。
【0096】
コンピュータデバイスは、次いで方法400、500、600、及び700のステップを実施して、フェニトインと2種の添加剤との分子相互作用をシミュレーションしてよい。図8Aと8Bは、コンピュータデバイスが、方法600のステップ606において生成してよい平均動径分布関数の例のグラフである。より具体的には、図8Aは、APIと添加剤の各々との間のAPI‐添加剤平均動径分布関数のグラフ800aである。第一の曲線801aは、APIと第一の添加剤のシミュレーションに関する第一のAPI‐添加剤平均動径分布関数を表し、第二の曲線802aは、APIと第二の添加剤のシミュレーションに関する第二のAPI‐添加剤平均動径分布関数を表す。
【0097】
グラフ800aにより示されるように、コンピュータデバイスは、各API‐添加剤平均動径分布関数(g(r))の最大値が、約0.5nmのラジアル距離(r)において生じることを決定してよい。この例において、コンピュータデバイスは、ブロック702のステップを実施して、第一のAPI‐添加剤平均動径分布関数の最大値が約0.9であり、第二のAPI‐添加剤平均動径分布関数の最大値が約0.6であることを決定してよい。したがって、コンピュータデバイスは、第一のAPI‐添加剤平均動径分布関数の最大値が、第二のAPI‐添加剤平均動径分布関数の最大値より大きいことを決定してよい。
【0098】
ブロック704において、コンピュータデバイスは、平均動径分布関数の最大値を降順で並べる表を生成してよい。すなわち、コンピュータデバイスは、第一の添加剤が第一列に、第二の添加剤が第二の列にあるように、表を生成してよい。追加的に、コンピュータデバイスは、ブロック706において、好ましい試験分子として第一の添加剤を特定してよく、コンピュータデバイスは、ブロック410において、表、グラフ800a、及び/又は好ましい試験分子の識別情報を表示してよい。
【0099】
追加的な例として、図8Bは、各シミュレーションに関するAPI‐API(すなわち、参照分子‐参照分子)平均動径分布関数のグラフ800bである。第一の曲線801bは、APIと第一の添加剤のシミュレーションに関する第一のAPI‐API平均動径分布関数を表し、第二の曲線802bは、APIと第二の添加剤のシミュレーションに関する第二のAPI‐API平均動径分布関数を表す。
【0100】
グラフ800bにより示されるように、コンピュータデバイスは、第一のAPI‐API平均動径分布関数の最大値が、約0.9nmにおいて生じることを決定してよい。コンピュータデバイスは、第二のAPI‐API平均動径分布関数(g(r))の最大値が、約0.4nmのラジアル距離(r)において生じることを決定してもよい。この例において、コンピュータデバイスは、ブロック702のステップを実施して、第一のAPI‐API平均動径分布関数の最大値が約0.9であり、第二のAPI‐API平均動径分布関数の最大値が約0.65であることを決定してよい。したがって、コンピュータデバイスは、第一のAPI‐API平均動径分布関数の最大値が、第二のAPI‐API平均動径分布関数の最大値より小さいことを決定してよい。
【0101】
ブロック704において、コンピュータデバイスは、平均動径分布関数の最大値を昇順で並べる表を生成してよい。上記の例のように、コンピュータデバイスは、第一の添加剤が第一列に、第二の添加剤が第二列にあるように、表を生成してよい。追加的に、コンピュータデバイスは、ブロック706において、好ましい試験分子として第一の添加剤を特定してよく、コンピュータデバイスは、ブロック410において、表、グラフ800b、及び/又は好ましい試験分子の識別情報を表示してよい。
【0102】
上記の例において、コンピュータデバイスは、Mの接触の可能性の1つ又はそれより多く、Mの最大値の1つ又はそれより多く、表、及び/又は好ましい試験分子を示す情報を含んでよい。コンピュータデバイスは、方法400のブロック410のステップを実施する際、表、及び/又は好ましい試験分子等のシミュレーション結果を示す情報をディスプレイデバイスに表示させてよい。
【0103】
上記の方法及び例が、方法を実施する単一のコンピュータデバイスに関して記載される一方、各方法のステップを、1つ又はそれより多くのコンピュータデバイスにより実施してよい。例えば、方法の1つ又はそれより多くは、図1に関して記載される分散コンピューティングシステム100等の分散コンピューティングシステムにより実施してよい。例えば、コンピュータ端子102は、1つ又はそれより多くの入力信号を受信するように構成されるGUIを表示してよい。コンピュータ端子は、次いで1つ又はそれより多くの入力信号を、ネットワーク104を介してサーバーデバイス106に送信してよい。サーバーデバイス106は、方法400のステップが完了すると、例えば、ネットワーク104を介してコンピュータ端子102に信号を送信してよく、それは、コンピュータ端子102の要素にシミュレーション結果を示す情報を表示させる。
【0104】
図面中のメッセージフロー図、シナリオ、及びフローチャートのいずれか又は全てに関して本開示で議論されるように、各ステップ、ブロック及び/又は通信は、例の実施態様による情報の処理、及び/又は情報の伝送を表してよい。代替的な実施態様は、これらの例の実施態様の範囲内に含まれる。これらの代替的な実施態様において、例えば、ステップ、ブロック、伝送、通信、要求、応答、及び/又はメッセージとして記載される機能は、示された又は議論されたものから、含まれる機能性に応じて、実質的に同時又は逆順を含むアウトオブオーダーで実行されてよい。さらに、より多い又は少ないステップ、ブロック及び/又は機能が、本開示で議論されるメッセージフロー図、シナリオ、及びフローチャートのいずれかと共に用いられてよく、これらのメッセージフロー図、シナリオ、及びフローチャートは、部分的に又は全体的に互いに組み合わされてよい。
【0105】
情報の処理を表すステップ又はブロックは、本開示で記載される方法又は技術の特定の論理機能を実施するように構成することができる回路に対応してよい。代替的に又は追加的に、情報の処理を表すステップ又はブロックは、モジュール、セグメント、又はプログラムコードの部分(関係するデータを含む)に対応してよい。プログラムコードは、方法又は技術において、特定の論理機能又は動作を実施するプロセッサにより実行可能な1つ又はそれより多くの命令を含んでよい。プログラムコード及び/又は関係するデータは、ディスクドライブ、ハードドライブ、又は他のストレージメディアを含むストレージデバイス等のコンピュータ読み込み可能なメディアの任意の型に保存してよい。
【0106】
コンピュータ読み込み可能なメディアは、記録メモリ、プロセッサキャッシュ、及び/又はランダムアクセスメモリ(RAM)等の短い時間の間データを保存するコンピュータ読み込み可能なメディア等の非一時的なコンピュータ読み込み可能なメディアを含んでもよい。コンピュータ読み込み可能なメディアは、より長い時間の間、プログラムコード及び/又はデータを保存する非一時的なコンピュータ読み込み可能なメディア、例えば、セカンダリ又は持続性長期間ストレージ、読み込み専用メモリ(ROM)等、光又は磁気ディスク、及び/又はコンパクトディスク読み込み専用メモリ(CD‐ROM)等を含んでもよい。コンピュータ読み込み可能なメディアは、任意の他の揮発性又は不揮発性ストレージシステムであってもよい。コンピュータ読み込み可能なメディアは、コンピュータ読み込み可能なストレージメディア、例えば、又は有形ストレージデバイスと考えてよい。
【0107】
さらに、1つ又はそれより多くの情報伝送を表すステップ又はブロックは、同一の物理的デバイスにおける、ソフトウェア及び/又はハードウェアモジュール間の情報伝送に対応してよい。しかし、他の情報伝送は、異なる物理的デバイスにおけるソフトウェアモジュール及び/又はハードウェアモジュール間であってよい。
【0108】
本発明が、好ましい実施態様にしたがって上記に記載されている一方、本開示の範囲内で変更することができる。この応用は、したがって本開示で開示される基本原理を用いる本発明の任意の変更、使用又は適合に及ぶことが意図される。さらに、応用は、本発明に関連し、以下の特許請求の範囲の制限内にある分野の周知又は慣行に近い本開示からのそのような発展に及ぶことが意図される。
本開示は以下も包含する。
[1]
コンピュータデバイスにより、分子シミュレーターを用いてM組のシミュレーションデータを生成することと、
M組のシミュレーションデータの各々に関して、α種とβ種との接触の可能性を決定してMの接触の可能性を与えることと、
Mの接触の可能性の少なくとも1つに基づいてシミュレーション結果を決定することと、
ディスプレイデバイスにシミュレーション結果を示す情報を表示させることとを含む方法であって、
M組のシミュレーションデータの各々が、(i)参照分子の分子と、(ii)Mの試験分子の1つの分子との溶媒中のシミュレーションされた位置を示すシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルを含み、
(a)Mが正の整数であり、(b)参照分子が活性薬剤成分であり、(c)Mの試験分子が各々ポリマー又はオリゴマー添加剤であり、
接触は、β種の粒子が、α種の粒子からのラジアル距離の範囲内にあるときに生じ、
α種とβ種の各々が、参照分子、溶媒、又はMの試験分子の1つ、の1つである、方法。
[2]
さらに、参照分子、Mの試験分子、又は溶媒の少なくとも1つを示す情報を含むユーザーインターフェースを介して、コンピュータデバイスにより1つ又はそれより多くの入力を受信することを含む、上記態様1に記載の方法。
[3]
Mの試験分子を受信するために、コンピュータデバイスが、ユーザーインターフェースを介して:
ポリマー又はオリゴマーの選択と、
1つ又はそれより多くの置換基の選択と、
1つ又はそれより多くの置換基の各々がポリマー又はオリゴマーに結合している位置の選択と、
を受信するように構成された、上記態様2に記載の方法。
[4]
ポリマー又はオリゴマーが、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、セルロース、又はシクロデキストリンの1つである、上記態様3に記載の方法。
[5]
1つ又はそれより多くの置換基が、
1つ又はそれより多くのモノマーアルキル、アシル、又はカチオン性基;又は
別のポリマー若しくはオリゴマーにグラフトすることができる1つ若しくはそれより多くのポリマー若しくはオリゴマー基、
を含む、上記態様3又は4に記載の方法。
[6]
さらに、M組のシミュレーションデータを生成するより前に、分子シミュレーターを用いてM組の熱力学的平衡条件を決定することを含む方法であって、
M組の熱力学的平衡条件の各々が、参照分子と、Mの試験分子の1つとを含む溶媒系に関して1つ又はそれより多くの熱力学的平衡条件を含み、
分子シミュレーターが、M組の熱力学的平衡条件の1組を用いてM組のシミュレーションデータの各々を生成し、
M組の熱力学的平衡条件の各々を決定するために分子シミュレーターにより用いられる分子の数が、M組のシミュレーションデータの各々を生成するために分子シミュレーターにより用いられる分子の数より少ない、上記態様1〜5のいずれかに記載の方法。
[7]
α種の粒子が、α種の原子、分子、又は化学的部分の1つであり、
β種の粒子が、β種の原子、分子、又は化学的部分の1つである、上記態様1〜6のいずれかに記載の方法。
[8]
Mの接触の可能性を決定することが、Mの平均動径分布関数を決定することを含み、
Mの平均動径分布関数の各々を決定することが、
M組のシミュレーションデータの1組に含まれるシミュレーションデータの1つ又はそれより多くのサンプルの各々に関して動径分布関数を決定して、1つ又はそれより多くの動径分布関数を与えることと、
1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々を規格化して、1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を与えることと、
1つ又はそれより多くの規格化された動径分布関数を平均化して平均動径分布関数を与えることと、
Mの平均動径分布関数の各々の最大値を決定してMの最大値を与えることとを含み、
1つ又はそれより多くの動径分布関数の各々が、α種の粒子からのラジアル距離の範囲内にあるβ種の粒子の数に基づいており、
Mの最大値の各々が、Mの試験分子の1つと関連付けられている、上記態様1〜7のいずれかに記載の方法。
[9]
シミュレーション結果が、(i)Mの試験分子に含まれる1つ又はそれより多くの試験分子と、(ii)1つ又はそれより多くの試験分子の各々に関連付けられる最大値とを示す情報を含む、上記態様8に記載の方法。
[10]
さらに、Mの試験分子に含まれる1つ又はそれより多くの試験分子を、1つ又はそれより多くの試験分子の各々に関連付けられる最大値の順に並べた表を生成することと、
表を示す情報をディスプレイデバイスに表示させることと、
を含む、上記態様8又は9に記載の方法。
[11]
さらに、各試験分子と関連付けられる最大値に基づいて、Mの試験分子から好ましい試験分子を特定することを含み、シミュレーション結果が、好ましい試験分子を示す情報を含む、上記態様8〜10のいずれかに記載の方法。
[12]
α種及びβ種がAPIであるときに、好ましい試験分子が、最小の最大値と関連付けられる、Mの試験分子に含まれるポリマー添加剤である、上記態様11に記載の方法。
[13]
α種又はβ種の少なくとも1つが溶媒の1つ又はMの試験分子の1つであるときに、好ましい試験分子が、最大の最大値と関連付けられる、Mの試験分子に含まれる試験分子である、上記態様11に記載の方法。
[14]
ユーザーインターフェース要素と、ディスプレイデバイスと、プロセッサと、上記態様1〜13のいずれかに記載の方法を実施するように、プロセッサにより実行可能な命令を含む非一時的なデータストレージとを含む、コンピュータデバイス。
[15]
ユーザーインターフェースを含むコンピュータデバイスと、
上記態様1〜13のいずれかに記載の方法のステップを実施するように構成されたサーバーとを含むシステムであって、
コンピュータデバイスが、
ユーザーインターフェースの入力要素を介して1つ又はそれより多くの入力を受信し、
シミュレーション結果を示す情報をユーザーインターフェースの出力要素に表示するように構成された、システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B