【0025】
(2)構成
(2−1)低剛性フランジに対し、金属ガスケットのボルト穴へ徐変された幅広シールビード(シールビード立ち上がり部)をボルト穴径dに落とし込み、ボルト間中央部のシールビード圧縮量を増加することが可能となる金属ガスケット。
(2−2)ボルト穴dへ落とし込む幅広シールビードの幅W
1は、必然的にボルト穴径d以下であり、そのシールビード形状を特徴とする金属ガスケット。
(2−3)幅広シールビードの幅W
1がボルト座面直径D以下(D>d≧W
1)となることで、ボルト座面高さのフランジ剛性アップの付与を得て、ボルト直下部のシールビード完全圧縮(平面接触)によるシール性成立をねらう。
(2−4)シールビード幅広とすることで、ボルト直下部の軸力損失低減をねらう(軸力損失低減分でボルト間中央部のビード圧縮量増加をねらう・・・設計思想は徐変シールビードと同じ。d≧W
1>W
2)。
(2−5)金属板としては例えば、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板とする。ゴム状弾性体としては例えば、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴムシート(発泡ゴム含む)とする。
(2−6)ハーフビード、フルビード、いずれも金属ガスケットのボルト穴へ徐変された幅広シールビード(シールビード立ち上がり部)を金属ガスケットのボルト穴径dに落とす形状(d≧W
1>W
2)。
(2−7)シールビード接触ラインをボルト直下に平面接触する部分に繋げることで、シールラインを途切れないようにする。
【実施例】
【0027】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0028】
図1および
図2は、本発明の実施例に係る金属ガスケット1を示している。当該実施例に係る金属ガスケット1は、自動車等車両におけるエンジンもしくは補機類またはEV(電気自動車)もしくはHEV(ハイブリッド電気自動車)用のインバータ等のフランジ部に装着される平板状の金属ガスケットであって、所定の平面レイアウト(図では平面長方形状)を備え、その平面上に、ボア穴10および複数(図では4箇所)のボルト穴11が設けられるとともに、内圧および外側からの水等(外部異物)をシールすべくシールビード21が設けられている。
【0029】
図1に示すように、金属ガスケット1の平板上に複数のボルト穴11が設けられ、互いに隣り合うボルト穴11間にシールビード21が設けられている。図ではボルト穴11が4箇所設けられ、互いに隣り合うボルト穴11四組間にシールビード21が各1本都合4本設けられているが、各組において構成は重複するので、以下1組のみについて説明する。
【0030】
図1において、符号11Aおよび11Bにて示す互いに隣り合うボルト穴間にシールビード21が設けられている。シールビード21は、その長手方向一方の端部21aで一方のボルト穴11Aに連続するとともに他方の端部21bで他方のボルト穴11Bに連続するように設けられている。またシールビード21は、ボルト穴間中央部21cでそのビード幅が最も狭く、ボルト穴間中央部22cから各ボルト穴11A,11Bへかけてそのビード幅が徐々に拡大する徐変形状のビードとして設けられている。また、シールビード21は
図2に示すように、高さ違いの平面部22,23の間に断面直線状の傾斜面部24を備えたハーフビードとして設けられている。尚、シールビード21の高さ寸法は全周に亙って一定とされている。
【0031】
図3は、上記構成の金属ガスケット1を筐体フランジ部(低剛性フランジ)31およびカバー33(低剛性カバー)間に装着し、締結ボルト41で締め付ける直前の状態を模式的に示している。
【0032】
締結ボルト41は、頭部42およびネジ部43を一体に備えている。ネジ部43を、カバー33に設けたボルト差し込み穴34および金属ガスケット1に設けたボルト穴11に差し込んで、筐体フランジ部31に設けたネジ部32に螺合し、強く締め付ける。
【0033】
ここで、各部の寸法は、
図3および
図4に示すように、ボルト穴11に差し込む締結ボルト41の頭部42の座面42aの径をD、ボルト穴11の径をd、シールビード21の最大幅(ボルト穴11周縁部におけるビード幅)をW
1として、
D>d≧W
1・・・・(a)式
の関係を充足するように設定されている。また、シールビード21の最小幅(ボルト穴間中央部21cにおけるビード幅)をW
2として、上記したように
W
1>W
2・・・・・(b)式
の関係を充足するように設定されている。
【0034】
また、上記したようにシールビード21は、傾斜面部24を備えるハーフビードとして設けられており、このハーフビードにおける傾斜面部24とボルト穴11が互いに平面上重なる位置に設けられている。
【0035】
上記構成を備える金属ガスケット1においては、互いに隣り合うボルト穴11A,11B間にシールビード21が設けられ、このシールビード21が長手方向一方の端部21aで一方のボルト穴11Aに連続するとともに他方の端部21bで他方のボルト穴11Bに連続するように設けられている。また、ボルト穴間中央部21cでシールビード幅が最も狭く、ボルト穴間中央部22cからボルト穴11A,11Bへかけてシールビード幅が徐々に拡大する徐変形状のシールビードとして設けられている。このため、このシールビード21は、ボルト穴間中央部21cで最も変形しにくく、ボルト穴間中央部21cからボルト穴11A,11Bへかけて徐々に変形しやすい形状とされている。よって、変形しにくいボルト穴間中央部21cにおいてボルト締め付け時に比較的大きなシール面圧が発生する。したがって、ボルト間距離が長くても必要なシール面圧をシールビード全長に亙って確保することが可能とされている。
【0036】
また、シールビード21の長手方向一方の端部21aが一方のボルト穴11Aに連続するとともに他方の端部21bが他方のボルト穴11Bに連続するように設けられるとともに上記(a)式の関係が成立するように設定されているため、シールビード21はその一端が締結ボルト41の頭部座面42aの直下位置に配置される。この一端のシールビード21はボルト締め付け時に締結ボルト41の頭部座面42aによって直接締め付けられて平坦化され、このように平坦化される部位には大きな反発力が発生し、これに伴って大きなシール面圧が発生する。よって、この平坦化される部位は直下位置以外の部位に形成されるシールビード21の線接触ラインに直接繋げられるため、
図5に斜線部をもって示すように、互いに隣り合うボルト穴11A,11B間において途切れることのないシールラインを形成することが可能とされている。したがって、上記従来技術(
図11、
図12)のようにボルト穴周りにシールビードを設けなくても済むため、シール面の幅狭化の要求に応えることができる。
【0037】
尚、上記実施例では、シールビード21をハーフビードとしたが、シールビード21はこのほか、フルビードであっても良い。
図6に示す例では、シールビード21が曲面部25を備えるフルビードとされ、断面円弧状の曲面部25がボルト穴11A,11Bに対して平面上重ねられている。フルビードは、同一高さの平面部22,23の間に断面円弧状の曲面部25を設けたものである。ハーフビードとフルビードには、
図7に示すような特性についての相違がある。
【0038】
また、シールビード21において、シールビード幅が最も狭い部位およびシールビード幅が最も広い部位はそれぞれ、シールビード長手方向に対して或る程度の長さを備えるものであっても良い。この場合、シールビード21は例えば
図8に示すように、所定の長さL
1を備える幅狭シールビード部26と、所定の長さL
2を備える幅広シールビード部27と、幅狭シールビード部26から幅広シールビード部27へかけてシールビード幅が徐々に拡大する徐変シールビード部28とを備える。このうちの幅広シールビード部27がボルト穴11A,11Bに対して平面上重ねられる。そのうえで、上記(a)式の関係が成立するように設定されることになる。
【0039】
また、金属ガスケット1は、金属板のみよりなるガスケットであっても良いが、上記実施例では
図9に示すように、金属板2の厚み方向両面または片面(図では両面)にゴム状弾性体3を被着(コーティング)したガスケット(ソフトメタルガスケット(商品名))とされている。