(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物から選択される少なくとも一種を有する請求項1又は2に記載のポリイミド共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明に係るポリイミド共重合体とこれを用いた成形体は、酸二無水物成分と特定のジアミンおよび/またはジイソシアネート成分を共重合してなる。
以下、本発明に係るポリイミド共重合体と成形体の実施形態について説明する。
【0015】
(ポリイミド共重合体)
本発明のポリイミド共重合体は、(A)酸二無水物成分、(B)一般式(1)〜(3)の構造を有するジアミンおよび/またはジイソシアネート成分および(C)エーテル基、カルボキシ基から選択される少なくとも一種以上を有するジアミンおよび/またはジイソシアネート成分を共重合してなるものである。なお、(B)成分の構造については後述する。
【0016】
(A)成分の酸二無水物は、ポリイミドの製造に用いられるものであれば特に限定されず、公知の酸二無水物を用いることができる。例えば、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3 ’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3 ’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物等が挙げられる。なお、これらの化合物は一種類だけ使用してもよく、また二種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、接着性の観点から3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物が好ましい。更に3,3 ’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物は、はんだ耐熱性および接着性の両方の観点から特に好ましい。
【0017】
本発明のポリイミド共重合体は、(B)成分として、一般式(1)〜(3)
(式中、Xはアミノ基またはイソシアネート基、R
1〜R
8は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R
1〜R
4のうち少なくとも一つは水素原子ではなく、R
5〜R
8のうち少なくとも一つは水素原子ではない)で表されるジアミンおよび/またはジイソシアネートの一種以上を用いる。(B)成分を用いることにより、有機溶媒への溶解性が向上し、ガラス転移温度の上昇に伴い、はんだ耐熱性を向上させることができる。これらの中でも、入手が容易で安価であり、かつ、本発明の効果を良好に得ることができる点から、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)が好ましい。DETDAは、上記一般式(1)、(2)中のR
1〜R
4のうち2個がエチル基であり、残り2個がメチル基と水素原子である。また、上記一般式(3)中のR
5〜R
8が、メチル基またはエチル基である化合物が好ましい。
【0018】
本発明のポリイミド共重合体は、(C)成分として、エーテル基、カルボキシ基から選択される一種以上を有するジアミンおよび/またはジイソシアネートを用いる。(C)成分を用いることにより、得られるポリイミド共重合体の接着性を向上させることができる。(C)成分は一種類だけ使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0019】
エーテル基を有するものとしては、下記一般式(4)〜(6)などが挙げられる。
(式中、Xはアミノ基またはイソシアネート基、R
11〜R
14は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、またはトリフルオロメチル基、Yは、
R
21およびR
22はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、またはトリフルオロメチル基である)で表される群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】
カルボキシ基を有するものとしては、下記一般式(7)〜(12)などが挙げられる。
(式中、Xはアミノ基またはイソシアネート基、R
31〜R
34は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、またはトリフルオロメチル基、YおよびZは、
R
41およびR
42はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、またはトリフルオロメチル基であり、R
31〜R
34および/またはR
41、R
42に少なくとも一つカルボキシ基を有していなければならない。)で表される群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0021】
本発明のポリイミド共重合体においては、ジアミンおよび/またはジイソシアネートである(B)成分と(C)成分のモル比は1:2〜2:1の範囲であることが好ましい。
(B)成分の含有量を増やすと、ガラス転移温度の上昇に伴い、はんだ耐熱性は向上するが、接着性に寄与する(C)成分の含有量の低下により接着強度が低下する。また、(C)成分の含有量を増やすと、接着性は向上するが、(B)成分の含有量の低下によりはんだ耐熱性が低下する。モル比を上記の範囲とすることにより、はんだ耐熱性と接着性の両立が可能となる。
【0022】
本発明のポリイミド共重合体の質量平均分子量は、20,000〜200,000が好ましく、35,000〜150,000がより好ましい。ポリイミド共重合体の質量平均分子量が上記範囲内であれば、良好な取り扱い性が得られる。また、本発明のポリイミド共重合体を有機溶媒に溶解させる場合、有機溶媒中のポリイミド共重合体の濃度は特に限定されないが、例えば、5〜35質量%程度とすることが好ましい。ポリイミド共重合体の濃度が5質量%未満の濃度でも使用可能であるが、濃度が希薄であると、塗布等の作業効率が低下する可能性がある。一方、35質量%を超えると、ポリイミド共重合体の流動性が低下して、塗布等の作業性が低下する可能性がある。
【0023】
本発明のポリイミド共重合体は、更に(D)成分として前記(B)および(C)成分に該当しないジアミンおよび/またはジイソシアネートを共重合させたものであってもよい。(D)成分を適宜選択することで、ポリイミド共重合体に種々の機能性を付与することができる。
(D)成分は、特に限定されず、ポリイミドの製造に用いられる公知のものが用いられる。具体的には、下記一般式(13)〜(22)で表される化合物などが挙げられる。
(式中、Xはアミノ基またはイソシアネート基、R
51〜R
54は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、またはトリフルオロメチル基、YおよびZは、
R
61〜R
64は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、R
71およびR
72はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、またはトリフルオロメチル基である)で表される群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
なお、(D)成分の配合割合は、ジアミンおよび/またはジイソシアネート成分中10〜20モル%程度であることが好ましい。 これらの(D)成分は一種類だけ使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0024】
本発明に係るポリイミド共重合体は、下記一般式(101)で表される構造単位と下記一般式(102)で表される構造単位を有する。
上記式中、W, Qは、 酸二無水物から派生する四価の有機基である。また、WおよびQは同一であっても異なっていてもよい。
上記式(101)中Bは、下記一般式(1)〜(3)で表されるジアミンおよび/またはジイソシアネート化合物から派生する二価の有機基である。
上記式(102)中Cは、エーテル基、カルボキシ基から選択される少なくとも1種以上を有するジアミンおよび/またはジイソシアネート化合物から派生する二価の有機基である。
【0025】
一般式(101)で表される構造単位は、ガラス転移温度の上昇に寄与する。一方、一般式(102)で表される構造単位は、熱流動性の増加に寄与し、接着性の向上に有効である。本発明のポリイミド共重合体では、1分子中に、一般式(101)で表される構造単位と、一般式(102)で表される構造単位を有するため、優れたはんだ耐熱性と接着性が実現される。
【0026】
本発明のポリイミド共重合体の構造は、例えば、下記一般式(201)で表される。
ここで、m、n、qは1以上の整数であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0027】
さらに、本発明のポリイミド共重合体は、下記一般式(103)で表される構造単位を有していてもよい。
上記式中、Tは、酸二無水物から派生する四価の有機基である。Tは、WおよびQと同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(103)中、Dは、式(101)中のBおよび式(102)中のCのいずれとも異なるジアミンおよび/またはジイソシアネート化合物から派生する二価の有機基である。
このようなポリイミド共重合体の構造は、例えば、下記一般式(202)で表される。
ここで、m、n、p、qは1以上の整数であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
一般式(103)で表される構造単位の特性により、得られるポリイミド共重合体のガラス転移温度や吸水率、線膨脹係数等の調整が可能となる。
【0028】
本発明のポリイミド共重合体のガラス転移温度の下限は、195℃であることが好ましく、220℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度の上限は、300℃であることが好ましく、250℃であることが特に好ましい。
ガラス転移温度の下限を上記値とすることにより、鉛フリーはんだの実用温度に耐えうるさらに優れた耐熱性が得られ、ガラス転移温度の上限を上記値とすることにより剥離耐性に優れた接着強度が得られる。
【0029】
本発明のポリイミド共重合体の接着強度の下限は、0.5kgf/cmであることが好ましく、1.0kgf/cmであることが特に好ましい。
接着強度が上記値より低くなると、製造工程内または実用時に各種基材との層間剥離が生じる可能性がある。
【0030】
本発明のポリイミド共重合体のガラス転移温度、接着強度は、(A)成分の種類とその配合量、(B)成分の種類とその配合量、(C)成分の種類とその配合量、および所望により添加される(D)成分の種類とその配合量などによって調整することができる。
【0031】
本発明のポリイミド共重合体は、有機溶媒に溶解させることができる。この有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ガンマ−ブチロラクトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキルカルビトールアセテート、安息香酸エステル等を用いることができる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
次に、本発明のポリイミド共重合体の製造方法について説明する。本発明のポリイミド共重合体を得るためには、熱的に脱水閉環する熱イミド化法、脱水剤を用いる化学イミド化法のいずれの方法を用いてもよい。以下に、熱イミド化法、化学イミド化法の順に詳細に説明する。
【0033】
<熱イミド化法>
本発明のポリイミド共重合体の製造方法は、(A)酸二無水物、(B)上記記載の一般式(1)〜(3)で表されるジアミンおよび/またはジイソシアネート、(C)エーテル基、カルボキシ基から選択される少なくとも一種以上を有するジアミンおよび/またはジイソシアネートを共重合させてポリイミド共重合体を製造する工程を有する。この際、(D)成分として(B)成分と(C)成分に該当しないジアミンおよび/またはジイソシアネートと、を共重合させてもよい。(A)成分と(B)成分、(C)成分および所望により用いられる(D)成分とを、好適には、有機溶媒中、触媒の存在下、150〜200℃で重合させる。
【0034】
本発明に係る共重合体の製造方法では、重合方法は特に限定されず、公知のいずれの方法を用いることもできる。例えば、上記酸二無水物と上記ジアミンを一度に全量有機溶媒中に入れ重合する方法であってもよい。また先に上記酸二無水物全量を有機溶媒中に入れ、その後、酸二無水物を溶解または懸濁させた有機溶媒中に、ジアミンを加えて重合する方法や、先に上記ジアミン全量を有機溶媒中に入れて溶解させ、その後、ジアミンを溶解させた有機溶媒中に、酸二無水物を加えて重合する方法であってもよい。
【0035】
本発明に係るポリイミド共重合体の製造に用いる有機溶媒は、特に限定されない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等、ガンマ−ブチロラクトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキルカルビトールアセテート、安息香酸エステルを好適に用いることができる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
本発明に係るポリイミド共重合体の製造工程において、重合温度は、150〜200℃であることが好ましい。重合温度が150℃未満であると、イミド化が進行しないか完了しない場合がある。一方、200℃を超えると、溶媒や未反応原材料の酸化や溶媒の揮発により、樹脂濃度が上昇する。重合温度は、160〜195℃であるのがより好ましい。
【0037】
本発明に係るポリイミド共重合体の製造に用いる触媒は、特に限定されず、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、通常、ピリジンを用いることができる。これ以外にも、例えば、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられる。特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール等の低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジン等の置換ピリジン、p−トルエンスルホン酸等を好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量であることが好ましく、特に0.02〜1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドの物性、特に伸びや破断抵抗が向上することがある。
【0038】
また、本発明に係る共重合体の製造工程においては、イミド化反応により生成する水を効率よく除去するために、有機溶媒に共沸溶媒を加えることができる。共沸溶媒としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等を用いることができる。共沸溶媒を使用する場合、その添加量は、全有機溶媒量中の1〜30質量%程度が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0039】
<化学イミド化法>
本発明のポリイミド共重合体を化学イミド化法により製造する場合、上記(A)成分と上記(B)成分、(C)成分および所望により用いられる(D)成分とを共重合させる。この共重合体製造工程において、無水酢酸等の脱水剤と、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等の触媒とを、ポリアミド酸溶液に添加した後、熱イミド化法と同様の操作を行う。これにより、本発明のポリイミド共重合体を得ることができる。本発明のポリイミド共重合体を化学イミド化法により製造する場合、好ましい重合温度は、常温から150℃程度で、好ましい重合時間は、1〜200時間である。
【0040】
本発明のポリイミド共重合体の製造に用いられる脱水剤としては、有機酸無水物、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、脂環式酸無水物、複素環式酸無水物、またはそれらの二種以上の混合物が挙げられる。有機酸無水物の具体例としては、例えば、無水酢酸等が挙げられる。
【0041】
化学イミド化法による本発明のポリイミド共重合体の製造において、イミド化触媒、有機溶媒は、熱イミド化法と同様のものを用いることができる。
【0042】
(成形体)
本発明の成形体は、本発明の共重合体を含むものをいう。例えば、基材とその少なくとも一方の面に樹脂層を設けたものおよび基材から分離して樹脂層のみからなるもの等が挙げられる。なお、樹脂層とは本発明のポリイミド共重合体を有機溶媒に溶解させ基材表面に塗布し乾燥させたものをいう。
【0043】
本発明のポリイミド共重合体を用いて成形体を製造する場合、その製造方法は、特に限定されず、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、キャスト法等の既知の方法を用いることができる。例えば、基材の表面に、本発明のポリイミド共重合体を塗布した後、乾燥して溶媒を留去して、皮膜、フィルム状またシート状に成形する方法等が挙げられる。
【0044】
基材は、最終製品の用途に応じて任意のものを用いればよい。例えば、布等の繊維製品、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、もしくはポリスルホン等の合成樹脂、銅やアルミ等の金属、セラミック、紙類、等の材質を挙げることができる。なお、基材は透明であっても、これを構成する材質に各種顔料や染料を配合して着色したものであってもよく、更にはその表面がマット状に加工されていてもよい。基材の厚みも特に限定されないが、0.001〜10mm程度が好ましい。
【0045】
塗布した本発明のポリイミド共重合体の乾燥には、通常の加熱乾燥炉を用いることができる。乾燥炉中の雰囲気としては、大気、不活性ガス(窒素、アルゴン)等が挙げられる。乾燥温度は、本発明のポリイミド共重合体を溶解させた溶媒の沸点により適宜選択できるが、通常は80〜400℃、好適には100〜350℃、特に好適には120〜250℃とすればよい。乾燥時間は、厚み、濃度、溶媒の種類により適宜選択すればよく、1秒〜360分程度とするのが好ましい。
【0046】
乾燥後は、本発明のポリイミド共重合体を樹脂層として有する製品が得られる。また、樹脂層を基材から分離することによりフィルムとして得ることもできる。
【0047】
本発明のポリイミド共重合体を用いて成形体を製造する場合、シリカ、アルミナ、マイカ等の充填材や、炭素粉、顔料、染料、重合禁止剤、増粘剤、チキソトロピー剤、沈殿防止剤、酸化防止剤、分散剤、pH調整剤、界面活性剤、各種有機溶媒、各種樹脂等を添加することができる。
【0048】
本発明のポリイミド共重合体は、はんだ耐熱性、接着性に優れているため、はんだ耐熱性を必要とするコーティング剤、接着剤等に有用である。また、本発明の成形体は、樹脂付銅箔(RCC)、樹脂付フィルムとして銅張り積層板(CCL)などの部材に有用であり、離型性の基材を使用した場合には、単独膜とすることができ、層間絶縁膜やボンディングフィルム等として有用である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明のポリイミド共重合体およびその成形体について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明のポリイミド共重合体およびその成形体はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
ステンレススチール製錨型撹拌機、窒素導入管、ディーン・スターク装置を取り付けた500mLのセパラブル4つ口フラスコに4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)37.23g(0.12モル)、DETDA7.13g(0.04モル)、3,3’−(m−フェニレンジオキシ)ジアニリン(APB−N)23.76g(0.08モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)148.85g、ピリジン1.90g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間反応を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。
反応に用いた(A)成分、(B)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
【0051】
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP42.53gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(23)のとおりである。ここで、下記構造式のポリイミド共重合体1分子中には、下記Xで表される2価の有機基が2種とも含まれている。すなわち、得られたポリイミド共重合体は、後述する比較例1に示される一般式(30)で表される構成単位と比較例2に示される一般式(31)で表される構成単位とを含む。
【0052】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0053】
(実施例2)
実施例1と同様の装置に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)35.31g(0.12モル)、DETDA10.70g(0.06モル)、NMP81.42g、ピリジン2.85g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて2時間加熱撹拌を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。
【0054】
次に、BPDA17.65g(0.06モル)、APB−N35.62g(0.12モル)、NMP135.10gを加え、180℃にて加熱撹拌しながら5時間30分反応を行った。反応中に生成する水はトルエン、ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応に用いた(A)成分、(B)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP61.86gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(24)のとおりである。
【0055】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0056】
(実施例3)
実施例1と同様の装置にBPDA35.31g(0.12モル)、DETDA7.13g(0.04モル)、APB−N23.75g(0.08モル)、NMP144.34g、ピリジン1.90g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間反応を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。反応に用いた(A)成分、(B)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP41.24gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(25)のとおりである。ここで、下記構造式のポリイミド共重合体1分子中には、下記Xで表される2価の有機基が2種とも含まれている。すなわち、得られたポリイミド共重合体は、後述する比較例3に示される一般式(32)で表される構成単位と比較例4に示される一般式(33)で表される構成単位とを含む。
【0057】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0058】
(実施例4)
実施例1と同様の装置にBPDA44.13g(0.15モル)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(M-DEA)31.05g(0.1モル)、APB
−N15.12g(0.05モル)、NMP157.65g、ピリジン2.37g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間反応を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。反応に用いた(A)成分、(B)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表2に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP97.02gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(26)のとおりである。ここで、下記構造式のポリイミド共重合体1分子中には、下記Xで表される2価の有機基が2種とも含まれている。
【0059】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0060】
(実施例5)
実施例1と同様の装置にBPDA22.07g(0.075モル)、DETDA4.4
6g(0.025モル)、APB−N11.18g(0.038モル)、4−アミノ−N
−(3−アミノフェニル)ベンズアミド(3,4’−DABAN)2.84g(0.013モル)、NMP88.32g、ピリジン1.18g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間反応を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。反応に用いた(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の組成比(質量部)を表2に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP126.15gを添加することにより、15質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(27)のとおりである。ポリイミド共重合体は、下記Xで表される2価の有機基を3種とも含む分子を有する。
【0061】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0062】
(実施例6)
実施例1と同様の装置にピロメリット酸二無水物(PMDA)26.17g(0.12モル)、DETDA7.13g(0.04モル)、APB−N23.70g(0.08モル)、NMP122.91g、ピリジン1.90g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間反応を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。反応に用いた(A)成分、(B)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表2に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP35.12gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(28)のとおりである。ここで、下記構造式のポリイミド共重合体1分子中には、下記Xで表される2価の有機基が2種とも含まれている。すなわち、得られたポリイミド共重合体は、後述する比較例5に示される一般式(34)で表される構成単位と比較例6に示される一般式(35)で表される構成単位とを含む。
【0063】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0064】
(実施例7)
実施例1と同様の装置に4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(BisDA)62.46g(0.12モル)、DETDA10.70g(0.06モル)、3,5−ジアミノ安息香酸(3,5−DABA)9.59g(0.06モル)、NMP182.98g、ピリジン1.90g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間反応を行った。反応によって生成した水は、トルエンとの共沸によって反応系外へ留去した。反応に用いた(A)成分、(B)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表2に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP52.28gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(29)のとおりである。ここで、下記構造式のポリイミド共重合体1分子中には、下記Xで表される2価の有機基が2種とも含まれている。
【0065】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0066】
(比較例1)
実施例1と同様の装置にODPA40.33g(0.13モル)、APB−N38.44g(0.13モル)、NMP137.58g、ピリジン2.06g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間加熱撹拌を行った。反応中に生成する水はトルエン,ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応に用いた(A)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP84.66gを添加することにより、25%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(30)のとおりである。
【0067】
【0068】
(比較例2)
実施例1と同様の装置にODPA55.84g(0.18モル)、DETDA32.33g(0.18モル)、NMP151.70g、ピリジン2.85g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間加熱撹拌を行った。反応中に生成する水はトルエン,ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応に用いた(A)成分および(B)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP93.35gを添加することにより、25%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(31)のとおりである。
【0069】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0070】
(比較例3)
実施例1と同様の装置にBPDA44.13g(0.15モル)、APB−N44.34g(0.15モル)、NMP154.26g、ピリジン2.37g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間加熱撹拌を行った。反応中に生成する水はトルエン,ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応に用いた(A)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP94.93gを添加することにより、25%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(32)のとおりである。
【0071】
【0072】
(比較例4)
実施例1と同様の装置にBPDA52.96g(0.18モル)、DETDA32.32g(0.18モル)、NMP146.33g、ピリジン2.85g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間加熱撹拌を行った。反応中に生成する水はトルエン,ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応に用いた(A)成分および(B)成分の組成比(質量部)を表1に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP90.05gを添加することにより、25%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(33)のとおりである。
【0073】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0074】
(比較例5)
実施例1と同様の装置にPMDA32.72g(0.15モル)、APB−N44.27g(0.15モル)、NMP132.94g、ピリジン2.37g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃まで昇温して反応を開始したが、反応開始1時間30分後に樹脂成分が析出した。反応に用いた(A)成分および(C)成分の組成比(質量部)を表2に示す。得られた樹脂成分の構造は、下記の式(34)のとおりである。
【0075】
【0076】
(比較例6)
実施例1と同様の装置にPMDA52.35g(0.24モル)、DETDA43.04g(0.24モル)、NMP161.09g、ピリジン3.80g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換したのち、窒素気流下180℃にて6時間加熱撹拌を行った。反応中に生成する水はトルエン,ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応に用いた(A)成分および(B)成分の組成比(質量部)を表2に示す。
反応終了後、120℃まで冷却したところでNMP99.13gを添加することにより、25%濃度のポリイミド共重合体溶液を得た。得られたポリイミド共重合体の構造は、下記の式(35)のとおりである。
【0077】
(式中Rは、メチル基またはエチル基である)
【0078】
実施例および比較例のポリイミド共重合体の溶剤溶解性、ガラス転移温度の評価を行った。また、成形体については、RCCとボンディングフィルムの二種類の形態で評価用サンプルを作製し、真空プレスによる成形を行ったのち、接着強度、はんだ耐熱性の評価を行った。
【0079】
(RCCの作製)
実施例および比較例で得られたポリイミド共重合体溶液を、スピンコート法を用いて、厚みが18μm、表面粗さ(Rz)が2.0μmの電解銅箔上に、乾燥膜厚が10μmとなるように塗布した。その後、ステンレス製の枠に固定して120℃で5分間仮乾燥を行った。仮乾燥したのち180℃で30分間、250℃で1時間、窒素雰囲気下で乾燥を行い、RCCを作製した。
【0080】
(ボンディングフィルムの作製)
実施例および比較例で得られたポリイミド共重合体溶液を、スピンコート法を用いて、厚み125μmのPETフィルム上に、乾燥膜厚が20μmとなるように塗布した。その後、ステンレス製の枠に固定して120℃で5分間仮乾燥を行った。仮乾燥した後、PETフィルムを剥離し、得られたフィルム状のポリイミド共重合体をステンレス製の枠に固定して180℃で30分間、250℃で1時間、窒素雰囲気下で乾燥を行い、ボンディングフィルムを作製した。
【0081】
前記したRCCとボンディングフィルムを用い、真空プレス機により表面粗さ(Rz)が2.0μmの電解銅箔に張り合わせ、積層基板を作製した。プレスは、面圧5MPaに昇圧し、110℃で5分間保持したのち、300℃に昇温し30分間保持して行った。
【0082】
(溶剤溶解性)
実施例および比較例でポリイミド共重合体溶液を作製する際に、ポリイミド共重合体が重合に使用している溶媒に可溶であり溶解性を示すものを○、反応過程でポリイミド共重合体が析出し溶媒に対して不溶性を示すものを×とした。得られた結果を、表1および表2に示す。
【0083】
(ガラス転移温度)
前記したボンディングフィルムを用いて、ガラス転移温度の測定を行った。測定には、DSC6200(セイコーインスツル株式会社製)を用いた。ここで、10℃/minの昇温速度で500℃まで加熱し、ガラス転移温度は中間点ガラス転移温度を適用した。得られた結果を、表1および表2に示す。
【0084】
(接着強度)
前記した積層基板を、10mm幅の試験片に加工し、クリープメータ(株式会社山電社製 RE2−33005B)を用い、180°の接着強度を測定した。測定は引張速度1mm/secで2回行い、最大応力を接着強度とした。結果を、表1および表2に示す。なお、RCCを用いた積層基板およびボンディングフィルムを用いた積層基板とも同じ結果が得られた。
【0085】
(はんだ耐熱性)
前記した積層基板を25mm×25mmの試験片に加工し、各温度(260℃、280℃、300℃、320℃)に設定したはんだ浴に60秒浮かべ、剥がれや膨れの外観異常を下記判定基準により評価した。結果を、表1および表2に示す。なお、RCCを用いた積層基板およびボンディングフィルムを用いた積層基板とも同じ結果が得られた。
○:外観に異常なし
△:直径1mm未満の剥がれ、膨れが発生している
×:直径1mm以上の剥がれ、膨れが発生している
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
(考察)
表1に示すように、(A)成分および(C)成分から得られ、上述の一般式(102)で示される構造単位のみを有する比較例1では、接着強度は良好であるが、ガラス転移温度が低く、十分なはんだ耐熱性を有しないことがわかった。一方、(A)成分および(B)成分から得られ、上述の一般式(101)で示される構造単位のみを有する比較例2では、高いガラス転移温度を有するが、接着強度が低く、はんだ浴の熱による材料の寸法変化に追従できないことがわかった。これに対して、(A)成分、(B)成分および(C)成分から得られ、上述の一般式(101)で示される構造単位および一般式(102)で示される構造単位を有する実施例1では、優れた接着強度とはんだ耐熱性を有することが確認された。
以上の結果から、1分子中に一般式(101)で示される構造単位および一般式(102)で示される構造単位を有する本発明のポリイミド共重合体の効果が確認された。
【0089】
また、表1の比較例3より、(A)成分の種類をBPDAに変えた場合も、(A)成分および(C)成分のみから得られる共重合体では、十分なはんだ耐熱性を有しないことがわかった。一方、表1の比較例4より、(A)成分の種類をBPDAに変えた場合も、(A)成分および(B)成分のみから得られる共重合体では、接着強度が低く、はんだ浴の熱による材料の寸法変化に追従できないことがわかった。これに対して、(A)成分、(B)成分および(C)成分から得られる実施例2および実施例3では、優れた接着強度とはんだ耐熱性を有することが確認された。
なお、実施例2および実施例3では、製法が異なり、得られるポリイミド共重合体の構造に差異がある。すなわち実施例2では、一般式(101)で示される構造単位および一般式(102)で示される構造単位がそれぞれ連続した形で共重合(ブロック共重合)し、実施例3では、一般式(101)で示される構造単位および一般式(102)で示される構造単位がランダムに共重合(ランダム共重合)している。しかしながら、実施例2および実施例3のいずれにおいても、優れた接着強度とはんだ耐熱性を有することが確認された。
【0090】
表2より、実施例3と(C)成分の種類を変えた実施例4でも優れた接着強度とはんだ耐熱性を有することがわかった。また、実施例3の組成に、さらに(D)成分を加えた実施例5でも優れた接着強度とはんだ耐熱性が得られた。
また、表2の比較例5より、(A)成分の種類をPMDAに変えた場合、(A)成分および(C)成分のみから得られる共重合体では、十分な溶剤溶解性が得られないことがわかった。比較例6より、(A)成分の種類をPMDAに変えた場合、(A)成分および(B)成分のみから得られる共重合体は、接着強度が低く、十分なはんだ耐熱性が得られないことがわかった。これに対して、(A)成分、(B)成分および(C)成分から得られる実施例6では、優れた溶剤溶解性、接着強度およびはんだ耐熱性を有することが確認された。
(A)成分として、BisDA、(B)成分として、DETDA、(C)成分として、3,5−DABAを用いた実施例7でも、優れた溶剤溶解性、接着強度およびはんだ耐熱性を有することがわかった。
以上結果から、本発明のポリイミド共重合体は、鉛フリーはんだのプロセスに対応可能なはんだ耐熱性と1.0kgf/cm以上の接着強度を兼ね備えた優れた接着剤となることがわかった。