特許第6462711号(P6462711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462711
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】研磨ブラシ
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/14 20060101AFI20190121BHJP
   B24D 13/10 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B24D13/14 A
   B24D13/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-556068(P2016-556068)
(86)(22)【出願日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2014078531
(87)【国際公開番号】WO2016067346
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】391062595
【氏名又は名称】大明化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597022425
【氏名又は名称】株式会社ジーベックテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 俊
(72)【発明者】
【氏名】住吉 慶彦
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−002426(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2004/009293(WO,A1)
【文献】 特開2005−199371(JP,A)
【文献】 実開平03−062768(JP,U)
【文献】 特開2006−116687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 13/14
B24D 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の線状砥材と当該複数本の線状砥材を保持する砥材ホルダとを有する研磨ブラシにおいて、
前記砥材ホルダには、溝が形成されており、
前記複数本の線状砥材は、小分けされて複数の砥材束とされ、各砥材束が互いに離間する状態で、前記複数の砥材束の一方端部分が同一の前記溝に挿入されて当該溝内に充填された接着剤によって前記砥材ホルダに固定され
各線状砥材は、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、固化させたものであることを特徴とする研磨ブラシ。
【請求項2】
請求項1において、
前記溝は、回転中心軸を中心に形成された環状溝であり、
前記複数の砥材束は、等角度間隔で前記環状溝に挿入されていることを特徴とする研磨ブラシ。
【請求項3】
請求項1において、
各砥材束は、前記溝に挿入された当該砥材束の端部分における各線状砥材の長さ方向と直交する方向の断面形状が円形であることを特徴とする研磨ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の線状砥材を保持する砥材ホルダを有する研磨ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる研磨ブラシは特許文献1に記載されている。同文献では、複数本の線状砥材は小分けされて複数の砥材束とされ、各砥材束が互いに離間する状態で砥材ホルダに保持されている。各砥材束は円形の断面形状を備え、砥材ホルダは各砥材束をそれぞれ保持する複数の保持穴を備える。各保持穴は円形であり、互いに離間して設けられている。各砥材束は、その基端部分が各保持穴に挿入されて保持穴内に充填された接着剤によって砥材ホルダに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/009239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
砥材束を、その断面形状と対応する形状の保持穴に保持する研磨ブラシでは、製造時に砥材束の径寸法が保持穴の内径寸法よりも大きかったり、砥材束の形状が保持穴の形状と違ったりすると、砥材束を保持穴に挿入することができなくなる。従って、研磨ブラシの製造時には、線状砥材を束ねた砥材束の径寸法や形状を、砥材ホルダに設けられた保持穴の内径寸法や形状に対応する所定の範囲以内に厳密に管理しなければならないという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、複数本の線状砥材を容易に砥材ホルダに保持できる研磨ブラシを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数本の線状砥材と当該複数本の線状砥材を保持する砥材ホルダとを有する研磨ブラシにおいて、前記砥材ホルダには、溝が形成されており、前記複数本の線状砥材は、小分けされて複数の砥材束とされ、各砥材束が互いに離間する状態で、前記複数の砥材束の一方端部分が同一の前記溝に挿入されて当該溝内に
充填された接着剤によって前記砥材ホルダに固定され、各線状砥材は、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、固化させたものであることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、複数本の線状砥材は溝に挿入されて接着剤により固定されるので、複数本の線状砥材を砥材ホルダに保持させる際の形状を厳密に管理することなく、これらを砥材ホルダに保持できる。
【0008】
また、本発明によれば、前記複数本の線状砥材は、小分けされて複数の砥材束とされ、各砥材束が互いに離間する状態で前記砥材ホルダに固定されている。従って、砥材束の径寸法や形状が溝の幅よりも大きい場合でも、砥材束を溝に沿って変形させることにより、砥材束の基端部分を溝に挿入できる。よって、砥材束の径寸法や形状にばらつきがある場合でも砥材束を砥材ホルダに保持できる。また、このようにすれば、砥材ホルダに保持された砥材束が互いに離間するので、研削加工時に切り粉が効率よく排出される。さらに、砥材ホルダに保持された砥材束が互いに離間しているので、放熱効果が高い。さらに、溝に線状砥材を隙間無く保持した場合と比較して、少ない砥材量で研磨ブラシを構成できる。また、本発明によれば、各線状砥材は、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、固化させたものである。従って、無機長繊維を用いた線状砥材は高硬度なので、少ない砥材量でも研磨ブラシの研削・研磨能力が向上する。
【0009】
本発明において、前記溝は、回転中心軸を中心に形成された環状溝であり、前記複数の砥材束は、等角度間隔で前記環状溝に挿入されているものとすることができる。このようにすれば、カップ型の研磨ブラシやホイールブラシを容易に製造できる。
【0010】
本発明において、各砥材束は、前記溝に挿入された当該砥材束の端部分における各線状砥材の長さ方向と直交する方向の断面形状が円形であるものとすることができる。このようにすれば、砥材束の径寸法を厳密に管理することなく、砥材束を砥材ホルダに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の研磨ブラシの斜視図である。
図2】研磨ブラシの分解斜視図である。
図3】研磨ブラシおよび研磨ブラシ本体の説明図である。
図4】実施例2の研磨ブラシの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した研磨ブラシを説明する。以下の説明では、便宜上、図1の上下に対応させて、研磨ブラシの回転中心軸線方向を研磨ブラシの上下方向とする。
【0014】
(実施例1)
図1は本発明を適用した研磨ブラシの説明図である。図2図1に示す研磨ブラシをブラシケースと研磨ブラシ本体に分解した状態を示す分解斜視図である。図3(a)は研磨ブラシをねじによる固定部分で切断したときの横断面図であり、図3(b)は研磨ブラシの底面図であり、図3(c)は研磨ブラシ本体の縦断面図である。
【0015】
図1に示すように、本例の研磨ブラシ1は、工作機械(研削機)のヘッドに連結されるシャンク5を備えたカップ状のブラシケース6と、このブラシケース6内に上側部分が挿入された研磨ブラシ本体7と、研磨ブラシ本体7をブラシケース6内の所定位置に固定するためのねじ8、9を備える。
【0016】
ブラシケース6は、金属製であり、円筒状の周壁11と、周壁11の上端開口を封鎖する円形の上板12を備える。シャンク5は上板12の中央部分から上方に延びている。上板12の下面の中央部分からは丸棒状の支軸13が下方に延びている。支軸13、シャンク5および周壁11は同軸である。ブラシケース6の周壁11には、回転中心軸線Lと平行に溝状に延びた案内孔14、15が設けられている。案内孔14、15は、回転中心軸線Lを挟む点対称位置に形成されている。本例では、ブラシケース6の周壁11はアルミニウム製であり、支軸13はステンレス製である。
【0017】
図2に示すように、研磨ブラシ本体7は、複数本の線状砥材21を束ねた砥材束22と、複数の砥材束22を保持する環状の砥材ホルダ23を備える。砥材ホルダ23は金属製である。砥材ホルダ23の中心孔24は支軸13が貫通する軸孔となっている。砥材ホルダ23には、回転中心軸線Lを挟む点対称位置に一対のねじ孔25、26が形成されている。図3(a)に示すように、ねじ孔25、26は、砥材ホルダ23を半径方向に貫通している。
【0018】
砥材ホルダ23は、図3(b)、図3(c)に示すように、その下端面である砥材保持面27に回転中心軸線Lを中心として形成された環状の砥材保持溝(溝)28を備える。複数の砥材束22は、互いに離間する状態でそれぞれの基端部分22aが砥材保持溝28に挿入されており、砥材保持溝28内に充填された接着剤29によって砥材ホルダ23に固定されている。接着剤29は、シリコン樹脂系、エポキシ樹脂系などのものである。図3(b)に示すように、本例では、各砥材束22は円形に束ねられている。すなわち、各砥材束22は、砥材保持溝28に挿入される砥材束22の端部分における各線状砥材21の長さ方向と直交する方向の断面形状が円形である。また、複数の砥材束22は等角度間隔で砥材保持溝28に挿入されて固定されている。砥材束22が砥材ホルダ23に固定された状態では、砥材束22は砥材ホルダ23の砥材保持面27から下方に突出する。
【0019】
各線状砥材21は、無機長繊維としてのアルミナ長繊維の集合糸に、シリコン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性のバインダー樹脂を含浸、硬化させたものである。バインダー樹脂としてはナイロン等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。本例では、集合糸は、繊維径が8〜50μmのアルミナ長繊維を250〜3000本集合させたものである。集合糸の径は0.1mm〜2mmである。なお、集合糸には撚りが加えられている場合もある。
【0020】
ここで、砥材束22は、その基端部分22aが砥材保持溝28に挿入される際には、小分けされた複数本の線状砥材21が単に寄せ集められて束ねられているだけである。小分けされて束ねられた複数本の線状砥材21は、砥材保持溝28内の接着剤29により砥材ホルダ23に固定される際に、接着剤29によって砥材束22として結束された状態となる。
【0021】
ブラシケース6と研磨ブラシ本体7により研磨ブラシ1を構成する際には、まず、砥材ホルダ23の中心孔24(軸孔)に支軸13を貫通させて、ブラシケース6の内側に研磨ブラシ本体7の上部(砥材ホルダ23の側)を挿入する。次に、ブラシケース6の外周側から各案内孔14、15にねじ8、9を通して、砥材ホルダ23のねじ孔25、26にねじ8、9をそれぞれ止める。この際、ねじ8、9の軸部の先端部が支軸13の外周面に突き当たるまでねじ8、9を締め込む。これにより砥材ホルダ23は、ねじ8、9を介して、ブラシケース6の支軸13に固定される。なお、支軸13の外周面のうち、ねじ8、9の先端部が当たる領域周辺は平坦面となっている。
【0022】
(加工動作)
研磨ブラシ1を用いてワークに対してバリ取りや表面に対する研削・研磨加工を行う際には、シャンク5を工作機械のヘッドに連結して回転中心軸線L回りに回転させ、砥材束22の自由端(下端)をワークの表面に押し当てる。ここで、加工動作によって砥材束22を構成する線状砥材21が磨耗して、ブラシケース6の下端縁6aからの突出寸法が短くなった場合には、各案内孔14、15を介して砥材ホルダ23に止められたねじ8、9を緩める。その後、ブラシケース6の内側において研磨ブラシ本体7を回転中心軸線Lの方向に移動させ、しかる後にねじ8、9を締める。これにより、ブラシケース6の内側における研磨ブラシ本体7の回転中心軸線Lの方向における位置を調整して、ブラシケース6からの線状砥材21の自由端の突出寸法を調整する。
【0023】
(作用効果)
本例によれば、砥材束22は、その断面形状に対応する保持穴に挿入されるのではなく、砥材ホルダ23に設けられた砥材保持溝28に挿入されて、この砥材保持溝28内に充填された接着剤29によって固定される。従って、砥材束22の径寸法などが砥材保持溝28の幅よりも大きい場合でも、砥材束22を砥材保持溝28に沿って変形させることにより、砥材束22の基端部分22aを砥材保持溝28に挿入できる。よって、線状砥材21を束ねた砥材束22の径寸法にばらつきがある場合でも砥材束22を砥材ホルダ23に保持できる。
【0024】
また、本例では、砥材ホルダ23に保持された砥材束22が互いに離間しているので、研削加工時に切り粉が効率よく排出される。また、砥材ホルダ23に保持された砥材束22が互いに離間しているので、放熱効果が高い。さらに、砥材保持溝28に線状砥材21を隙間無く保持した場合と比較して、少ない砥材量で研磨ブラシ1を構成できる。
【0025】
さらに、本例では、各線状砥材21は、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、固化させたものであり、高硬度なので、複数の砥材束22を互いに離間する状態で砥材ホルダ23に保持した場合でも研磨ブラシ1の研削・研磨能力が高い。
【0026】
(実施例2)
図4(a)は本発明を適用した実施例2の研磨ブラシの説明図であり、図4(b)は実施例2の研磨ブラシの砥材ホルダの斜視図である。なお、実施例2の研磨ブラシ51は実施例1の研磨ブラシ1と対応する構成を備えるので、対応する部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図4(a)に示すように、研磨ブラシ51は、工作機構のヘッド(駆動装置)に連結されるシャンク5を備えるシャンク部材52、シャンク部材52の下側部分が貫通する環状の砥材ホルダ23、シャンク部材52の下端部分にねじ込まれた止めナット53を備える。砥材ホルダ23の外周側面は砥材保持面27となっており、砥材保持面27からは複数の砥材束22が外周側に放射状に突出している。砥材ホルダ23および砥材束22は研磨ブラシ本体7を構成している。
【0028】
シャンク部材52は上方から下方に向かってシャンク5、鍔部54およびボルト部55を備える。ボルト部55の外周面には止めナット53に螺合する雄ねじが形成されている。シャンク部材52は、鍔部54よりも下側の部分が砥材ホルダ23の中心孔24(図4(b)参照)に挿入され、ボルト部55の下端部分が砥材ホルダ23から下方に突出している。
【0029】
砥材ホルダ23は、その砥材保持面27に回転中心軸線Lを中心として形成された環状の砥材保持溝(溝)28を備える。複数の砥材束22は、互いに離間する状態でそれぞれの基端部分22aが砥材保持溝28に挿入されており、砥材保持溝28内に充填された接着剤29によって砥材ホルダ23に固定されている。本例では、複数の砥材束22は等角度間隔で砥材保持溝28に挿入されて固定されている。各砥材束22は、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、固化させてなる線状砥材21を複数本束ねたものである。各砥材束22は円形に束ねられている。
【0030】
止めナット53は、砥材ホルダ23から下方に突出するボルト部55の下端部分に下方からねじ込まれている。止めナット53は、シャンク部材52の鍔部54と止めナット53によって砥材ホルダ23を挟持する状態となるまでボルト部55にねじ込まれており、これにより砥材ホルダ23がシャンク部材52に固定されている。
【0031】
研磨ブラシ51を用いてワークに対してバリ取りや表面に対する研削・研磨加工を行う際には、シャンク5を工作機械のヘッドに連結して回転中心軸線L回りに回転させ、砥材束22の自由端(外周側の端)をワークの表面に押し当てる。なお、加工動作によって砥材束22を構成する線状砥材21が磨耗した場合には、止めナット53を緩めてシャンク部材52から外し、さらに砥材ホルダ23をシャンク部材52から取り外して、研磨ブラシ本体7だけを新たなものに交換する。
【0032】
本例によれば、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
(その他の実施の形態)
各実施例において、砥材保持溝28は砥材ホルダ23に複数設けることもできる。また、砥材保持溝28は砥材保持面27に直線状に設けることもできる。
【0034】
上記の例では、複数の線状砥材21は円形に束ねられているが、他の形状に束ねられていてもよい。例えば、複数の線状砥材21は、砥材束22として砥材保持溝28に挿入される基端部分22aの断面形状が、楕円形、長方形、或いは、正方形となるように束ねられていてもよい。
【0036】
また、線状砥材21は、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、ガラス繊維などの集合糸に樹脂を含浸、固化させたものを用いることができる。また、砥材束22の断面形状を四角形とすることもできる。
図1
図2
図3
図4