(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スカートによって研磨ブラシおよび線状砥材の外周側を被うと、研磨ブラシの外周側からエアーや切削液を供給しても、これらがワークにおける被研磨部分に届き難い。従って、スカートを備える研磨ブラシでは、砥材ホルダの中心に回転中心軸線方向に貫通する貫通孔を設けておき、研磨動作時には、この貫通孔を利用してエアーや切削液を被研磨部分に供給することが行われている。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、研磨動作時の遠心力によって線状砥材が広がることを防止しながら、ワークにおける被研磨部分に外周側から切削液やエアーを供給できる研磨ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、砥材ホルダと、前記砥材ホルダから回転中心軸線方向に突出する複数本の線状砥材と、前記回転中心軸線方向における前記複数本の線状砥材の先端と前記砥材ホルダとの間であって当該複数本の線状砥材の先端および当該砥材ホルダから離間する位置で当該複数本の線状砥材を外周側から囲む環状部、および、前記環状部の内周側で前記回転中心軸線方向に延びる軸部を備える砥材変位規制部材と、を有し、
前記砥材変位規制部材は、前記軸部と前記環状部とを接続する接続部を備え、前記砥材ホルダは、前記回転中心軸線方向に貫通する軸孔と、前記軸孔の外周側で前記回転中心軸線方向に貫通するホルダ側開口部と、を備えるとともに当該軸孔を貫通した前記軸部に着脱可能に固定されており、前記接続部は、前記軸部と前記環状部における周方向の一部分とを接続し、前記複数本の線状砥材は、小分けされて複数の砥材束に束ねられており、前記複数の砥材束は、互いに離間して環状に配列された状態で、
前記ホルダ側開口部の外周側において前記環状部と前記軸部との間に配置されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、砥材変位規制部材が複数本の線状砥材を外周側から囲む環状部を備えるので研磨動作時の遠心力によって線状砥材が外周側に広がることを防止できる。また、環状部が回転中心軸線方向で砥材ホルダから離間しているので、回転中心軸線方向における環状部と砥材ホルダの間から線状砥材が外側に部分的に露出する。従って、この線状砥材の露出部分に向かって外周側からエアーや切削液を供給すれば、線状砥材における研磨ホルダの側の全体が覆われている場合と比較して、これらエアーや切削液をワークにおける被研磨部分に到達させやすい。
また、複数本の線状砥材は、小分けされて複数の砥材束に束ねられており、前記複数の砥材束は、互いに離間して環状に配列されている。このようにすれば、隣り合う砥材束と砥材束の間の隙間を介して、複数の砥材束の内周側にエアーや切削液を供給できる。
【0008】
本発明
によれば、前記砥材変位規制部材は、前記軸部と前記環状部とを接続する接続部を備え、前記砥材ホルダは、前記回転中心軸線方向に貫通する軸孔
と、前記軸孔の外周側で前記回転中心軸線方向に貫通するホルダ側開口部と、を備えるとともに当該軸孔を貫通した前記軸部に着脱可能に固定されて
いるので、砥材ホルダを固定する軸部の位置を回転中心軸線方向で変更することにより、線状砥材が環状部から回転中心軸線方向に突出する突出量を調整できる。さらに、
接続部は軸部から環状部の周方向の一部分に架け渡されているので、
接続部によって複数本の線状砥材における砥材ホルダ側の部分が全周に渡って覆われてしまうことがない。
【0009】
本発明において、前記環状部および前記接続部は一体に形成されており、前記接続部は前記軸部に着脱可能に取りつけられているものとすることができる。このようにすれば、遠心力によって外周側に広がる線状砥材の先端部分が環状部に接触して環状部が磨耗した場合に、接続部とともに環状部を新たなものに取り替えることができる。
【0010】
本発明において、前記接続部は、前記環状部から連続して延びる環状部側接続部分と、前記環状部側接続部分と前記軸部とを接続する軸部側接続部分とを備え、前記環状部側接続部分と前記軸部側接続部分とは着脱可能に接続されているものとすることができる。このようにすれば、遠心力によって外周側に広がる線状砥材の先端部分が環状部に接触して環状部が磨耗した場合などに、環状部側連結部分および環状部を新たなものに取り替えることができる。
【0011】
本発明において、前記砥材ホルダは、前記軸孔を備える第1環状部と、前記第1環状部よりも大きな内径寸法を備え当該第1環状部の外周側に離間して配置された第2環状部と、前記第1環状部の周方向の一部分と前記第2環状部の周方向の一部分とを接続する
複数のホルダ側接続部と、を備え、
前記ホルダ側開口部は、周方向で隣り合う2つのホルダ側接続部、前記第1環状部、および、前記第2環状部の間に設けられ、前記複数本の線状砥材は、前記第2環状部に保持されて、前記回転中心軸線回りを環状に配置されており、前記回転中心軸線方向から見た場合に、前記ホルダ側接続部と前記砥材変位規制部材の前記接続部とは重なっていることが望ましい。このようにすれば、第1環状部と第2環状部の間であってホルダ側連結部から外れている部分に形成される砥材ホルダの開口部を介して、第2環状部に保持された複数本の線状砥材の内周側に回転中心軸線方向からエアーや切削液を供給できる。
【0013】
本発明において、前記環状部の内周面における前記複数本の線状砥材の先端の側の端部分を被う金属製の被覆部材を有し、前記砥材変位規制部材は、少なくとも前記環状部が樹脂製であることが望ましい。環状部を樹脂製とすれば、環状部を金属製とした場合と比較して研磨ブラシの重量を削減できる。従って、研磨ブラシが取り付けられる工作機械の動力負荷を低減させることができる。また、環状部を樹脂製とすれば、環状部を金属製とした場合と比較して、砥材変位規制部材の製造コストを抑制できる。しかし、環状部を樹脂製とすると、遠心力によって外周側に広がる線状砥材の先端部分が環状部に接触したときに環状部を磨耗させる可能性がある。これに対して、被覆部材により環状部の内周面を被えば環状部の磨耗を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明では、便宜上、図の上下を研磨ブラシの上下とする。
【0016】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係る研磨ブラシの斜視図である。
図2は
図1の研磨ブラシの分解斜視図である。
図3(a)は砥材ホルダを上方から見た場合の斜視図であり、
図3(b)は砥材ホルダを下方から見た場合の斜視図である。
図1に示すように、本例の研磨ブラシ1は、環状に配列された複数の砥材束11を備えるブラシ状砥石12と、砥材束11の外周側への変位を規制する砥材変位規制部材13を備える。ブラシ状砥石12は止めねじ14によって砥材変位規制部材13に着脱可能に取り付けられている。
【0017】
(ブラシ状砥石)
図1および
図2に示すように、ブラシ状砥石12は各砥材束11の基端部分(上端部分)を保持する砥材ホルダ15を備える。各砥材束11は砥材ホルダ15から回転中心軸線L方向を下方に突出している。砥材ホルダ15は樹脂製または金属製である。本例では砥材ホルダ15はABS樹脂からなる。
図3に示すように、砥材ホルダ15は、中心にホルダ側軸孔16を備える第1環状部17と、第1環状部17の外周側で第1環状部17と同軸に配置された第2環状部18と、第1環状部17の周方向の一部分と第2環状部18の周方向の一部分を接続するホルダ側接続部19を備える。
図3(b)に示すように、第2環状部18の下面には、各砥材束11を保持するための複数の保持孔20が等角度間隔で環状に形成されている。
【0018】
ホルダ側接続部19は放射状に延びる3本のホルダ側腕部分21を備える。3本のホルダ側腕部分21は、等角度間隔で半径方向に延びており、第1環状部17と第2環状部18を周方向の三箇所で接続する。従って、砥材ホルダ15は、第1環状部17と第2環状部18の間であって隣り合う2本のホルダ側腕部分21の間にホルダ側開口部25を備える。各ホルダ側腕部分21には、外周側の端面から半径方向に延びて第1環状部17のホルダ側軸孔16まで貫通するホルダ側貫通孔22が形成されている。ホルダ側貫通孔22の内周面は、少なくともホルダ側軸孔16に近い部分に雌ねじが形成されたねじ部を備える。
【0019】
砥材束11は複数本の線状砥材27を束ねたものである。各線状砥材27は、無機長繊維の集合糸にシリコン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性のバインダー樹脂、或いは、ナイロン等の熱可塑性樹脂を含浸、硬化させたものである。本例では、無機長繊維はアルミナ長繊維である。集合糸は、繊維径が8〜50μmのアルミナ長繊維を250〜3000本集合させたものである。集合糸の径は0.1mm〜2mmである。なお、集合糸には撚りが加えられている場合もある。
【0020】
各砥材束11は、その基端部分が砥材ホルダ15の各保持孔20に挿入されて接着剤により固定される。これにより複数の砥材束11は砥材ホルダ15に環状に保持された状態となる。
【0021】
(砥材変位規制部材)
図1に示すように、砥材変位規制部材13は、工作機械のヘッド(駆動装置)に連結されるシャンク部分31を備える軸部32と、砥材束11の回転中心軸線L方向の一部分を外周側から囲む環状部33と、軸部32と環状部33を接続する接続部34を備える。
【0022】
軸部32は樹脂製または金属製である。本例では、軸部32は金属製である。なお、軸部32を樹脂製とする場合には、軸部32をFRP樹脂製などとしてその強度を確保する。
図2に示すように、軸部32は円柱形状であり、その上側部分がシャンク部分31となっている。軸部32の下側部分には、その外周面の周方向の一部分を回転中心軸線Lと平行に切り欠くことにより平坦面35が形成されている。平坦面35は等角度間隔で3箇所に設けられている。
【0023】
環状部33および接続部34は樹脂製である。本例では環状部33および接続部34はASB樹脂である。接続部34は、軸孔36を備える環状部分37と、環状部分37の外周面から半径方向の外側に放射状に延びる3本の腕部分38と、各腕部分38の外周側の端部分から回転中心軸線L方向を下方に延びる湾曲板部分39を備える。接続部34における環状部分37と3本の腕部分38は一体に形成されており、湾曲板部分39は別体である。湾曲板部分39は環状部33と一体に形成されている。
【0024】
各腕部分38の上面の周方向の中央部分には半径方向に延びる溝40が設けられている。溝40は各腕部分38の外周側の端から環状部分37の外周面まで達している。この結果、環状部分37の外周面の一部分が溝40を介して外周側に露出している。環状部分37の外周面において溝40を介して外周側に露出している部分には、環状部分37を半径方向に貫通するネジ孔41が形成されている。また、各腕部分38の外周側の端面には半径方向に窪むネジ孔42が形成されている。
【0025】
図4に示すように、湾曲板部分39は環状部33の周方向の一部分から上方に向かって一定幅で延びている。湾曲板部分39は環状部33に沿って周方向に湾曲している。各湾曲板部分39の上端部分には貫通孔43が形成されている。湾曲板部分39はこの貫通孔43を貫通して各腕部分38のネジ孔42にねじ込まれる有頭のネジ44(
図1参照)により各腕部分38に着脱可能に連結される。湾曲板部分39における貫通孔43の下側には、回転中心軸線L方向に沿って溝状に形成された案内孔45が設けられている。案内孔45は、その下端部分が環状部33における回転中心軸線L方向の途中位置まで達している。
【0026】
ここで、
図2に示すように、環状部33において湾曲板部分39が上方に連続していない部分の高さ寸法h1は一定である。この高さ寸法h1は、砥材ホルダ15から下方に突出する未使用の砥材束11の突出寸法の1/2以下である。
【0027】
砥材変位規制部材13には金属製の被覆部材47が取り付けられている。
図4に示すように、被覆部材47は、環状であり、環状部33の内周面における線状砥材27の先端の側の端部分を内周側から被う。本例では、被覆部材47は金属製の粘着テープである。被覆部材47は金属製のリングとしてもよい。
【0028】
砥材変位規制部材13を組み立てる際には、接続部34の腕部分38と湾曲板部分39を有頭のネジ44により連結して環状部33と接続部34を一体とする。また、接続部34の環状部分37に設けられた軸孔36に軸部32を貫通させ、環状部分37のネジ孔41にねじ込んだ有頭のねじ48(
図1参照)により接続部34を軸部32に固定する。ここで、砥材変位規制部材13が組み立てられると、砥材変位規制部材13は、環状部33において接続部34(湾曲板部分39)が接続されていない円弧部分33a、周方向で隣り合う2つの湾曲板部分39、当該2つの湾曲板部分39からそれぞれ内周側に延びる腕部分38、および、環状部分37によって規定される大型の開口部50を3つ備える。
【0029】
研磨ブラシ1を組み立てる際には、砥材変位規制部材13にブラシ状砥石12を取りつける。すなわち、
図2に示すように、砥材変位規制部材13とブラシ状砥石12を同軸に配置して、砥材変位規制部材13の軸部32をブラシ状砥石12のホルダ側軸孔16に挿入する。これにより、環状部33の内周側に砥材ホルダ15および砥材束11が配置される。
【0030】
また、回転中心軸線L方向におけるブラシ状砥石12の位置を調整しながら、案内孔45を介して砥材ホルダ15のホルダ側貫通孔22に止めネジ14を挿入して、この止めネジ14により砥材ホルダ15を砥材変位規制部材13の軸部32に固定する。
図1に示すように、砥材変位規制部材13にブラシ状砥石12が取り付けられた状態では、環状部33は回転中心軸線L方向における砥材束11の先端(各線状砥材27の先端)と砥材ホルダ15の間であって砥材束11の先端(各線状砥材27の先端)および砥材ホルダ15から離間する位置で砥材束11(各線状砥材27)を外周側から囲む。
【0031】
ここで、案内孔45を介して砥材ホルダ15のホルダ側貫通孔22に止めネジ14を挿入することにより、砥材変位規制部材13に対して砥材ホルダ15が周方向で位置決めされる。これにより、軸部32に設けられた平坦面35と砥材ホルダ15のホルダ側貫通孔22が半径方向から見た場合に重なる位置に配置される。従って、ホルダ側貫通孔22にねじ込まれた止めネジ14の先端は軸部32の各平坦面35に当接する。
【0032】
また、砥材変位規制部材13に対して砥材ホルダ15が周方向で位置決めされると、回転中心軸線L方向から見た場合に、砥材ホルダ15の3本のホルダ側腕部分21と砥材変位規制部材13の3本の腕部分38が重なる。従って、
図1に示すように、研磨ブラシ1には、砥材変位規制部材13の開口部50および砥材ホルダ15のホルダ側開口部25を介して、回転中心軸線L方向から環状に配列された砥材束11の内側の内側空間55に連続する空間が形成される。また、環状部33が回転中心軸線L方向で砥材ホルダ15から離間しているので、砥材ホルダ15に保持された各砥材束11は砥材ホルダ15に近い側の部分が外周側に露出しており、研磨ブラシ1には砥材変位規制部材13の開口部50および隣り合う砥材束11の間を介して内側空間55に連続する空間が形成される。
【0033】
(加工動作)
研磨ブラシ1を用いてワークに対してバリ取りや表面に対する研削・研磨加工を行う際には、シャンク部分31を工作機械のヘッドに連結して回転中心軸線L回りに回転させて砥材束11(線状砥材27)の先端部(外周側の端部)をワークの表面に押し当てる。
【0034】
ここで、研磨ブラシ1が回転すると砥材束11の各線状砥材27は外周側に広がろうとするが、線状砥材27の先端部分は環状部33に当接してその外周側への変位が規制される。従って、砥材束11の各線状砥材27をワークの被研磨位置に正確に押し付けることができる。また、ワークに対する線状砥材27の接触位置を安定させることができる。
【0035】
加工動作中は、研磨ブラシ1の上方或いは外周側から切削液やエアーを供給して、ワークにおける被研磨部分を冷却する。また、供給した切削液やエアーによって切削屑を除去する。
【0036】
ここで、研磨ブラシ1の各砥材束11は砥材ホルダ15に近い側の部分が外周側に露出している。また、研磨ブラシ1では、砥材変位規制部材13の開口部50から砥材ホルダ15のホルダ側開口部25を介して砥材束11で囲まれた内側空間55に連続する空間が形成されているとともに、砥材変位規制部材13の開口部50および隣り合う砥材束11の間を介して砥材束11で囲まれた内側空間55に連続する空間が形成されている。従って、研磨ブラシ1の上方や外周側から切削液やエアーを供給すれば、切削液やエアーをワークにおける被研磨部分に到達させることができる。よって、ワークにおける被研磨部分の冷却が可能であるとともに、切削屑の除去が可能である。
【0037】
なお、加工動作に伴って線状砥材27が磨耗して砥材変位規制部材13の環状部33の開口端33bからの線状砥材27の突出寸法が短くなった場合には、ブラシ状砥石12の軸部32に対する固定位置を回転中心軸線L方向に調整することにより、開口端33bからの線状砥材27の突出寸法を調整する。このような調整作業を行う場合には、止めねじ14を緩めてから、環状部33の内側においてブラシ状砥石12を回転中心軸線L方向に移動させて、再び止めねじ14を締める。ここで、ブラシ状砥石12を回転中心軸線L方向に移動させる際には、緩めた止めねじ14の外周側部分が案内孔45内を当該案内孔45に添って移動するので、ブラシ状砥石12は、周方向で位置決めされた状態で回転中心軸線L方向に移動する。
【0038】
本例では、砥材変位規制部材13の環状部33および接続部34を樹脂製としているので、これらを金属製とした場合と比較して、研磨ブラシ1の重量を削減できる。また、砥材変位規制部材13は周方向に3つの開口部50を備えているので、研磨ブラシ1の重量を削減できる。従って、研磨ブラシ1が取り付けられる工作機械の動力負荷を低減させることができる。また、砥材変位規制部材13は周方向に3つの開口部50を備えているので、これら開口部50を備えていない場合と比較して、砥材変位規制部材13の製造に用いる樹脂の量を削減できる。よって、砥材変位規制部材13の製造コストを抑制できる。
【0039】
ここで、砥材変位規制部材13の環状部33を樹脂製とすると、遠心力によって外周側に広がる線状砥材27の先端部分が環状部33に接触したときに環状部33を磨耗させる。これに対して、本例では、金属製の被覆部材47により環状部33の内周面を被っているので環状部33の磨耗を防止できる。また、本例では、環状部33が接続部34の湾曲板部分39とともに研磨ブラシ1から分離できるので、被覆部材47や環状部33が磨耗した場合などには、環状部33および湾曲板部分39を新たなものに取り替えることができる。
【0040】
(砥材変位規制部材の変形例)
図5は変形例の砥材変位規制部材13Aの斜視図である。変形例の砥材変位規制部材13Aは実施例1の研磨ブラシ1の砥材変位規制部材13と同様に用いることができる。なお、変形例の砥材変位規制部材13Aは実施例1の研磨ブラシ1の砥材変位規制部材13と対応する構成を備えているので、対応する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0041】
本例では、接続部34は、環状部分37、腕部分38、および湾曲板部分39が一体に形成されている。環状部33は、湾曲板部分39の下端部分に着脱可能に接続されている。より具体的には、各湾曲板部分39の下端縁には、周方向で離間する2箇所に外周側に突出する突部61が設けられている。各突部61には回転中心軸線L方向に貫通するネジ孔62が形成されている。一方、環状部33は、一定の高さ寸法h2を備えており、各湾曲板部分39の各突部61に対応する位置に外周側に突出する突部63を備える。突部63には回転中心軸線Lに貫通する貫通孔64が設けられている。環状部33は、下方から貫通孔64を貫通して接続部34の突部61のネジ孔62にねじ込まれた有頭のねじ(不図示)によって接続部34に着脱可能に固定される。
【0042】
砥材変位規制部材13Aが組み立てられると、砥材変位規制部材13Aは、環状部33において接続部34(湾曲板部分39)が接続されていない円弧部分33a、周方向で隣り合う2つの湾曲板部分39、当該2つの湾曲板部分39からそれぞれ内周側に延びる腕部分38、および、環状部分37によって規定される大型の開口部50を3つ備える。
【0043】
ここで、環状部33の高さ寸法h2は、砥材ホルダ15から下方に突出する未使用の砥材束11の突出寸法の1/4以下である。環状部33の内周面には、内周面の全体を被う金属製の被覆部材47が取り付けられている。
【0044】
本例の砥材変位規制部材13Aを備える研磨ブラシ1においても、実施例1の研磨ブラシ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
なお、本例では環状部33を金属製として被覆部材47を省略してもよい。すなわち、本例では、環状部33が比較的小さな部材であり、環状部33のみが接続部34に対して着脱可能とされている。従って、環状部33を金属製とした場合でも研磨ブラシ1の重量の増加を抑制でき、かつ、環状部33を交換する際のコストも抑制できる。
【0046】
ここで、上記の砥材変位規制部材13および砥材変位規制部材13Aは回転中心線方向に延びる案内孔45を備えているが、案内孔45を省略することもできる。この場合には、砥材変位規制部材13Aの開口部50を介してホルダ側貫通孔22に止めネジ14をねじ込んでブラシ状砥石12を砥材変位規制部材13Aの軸部32に固定すればよい。
【0047】
(実施例2)
図6は本発明の実施例2の研磨ブラシ2の斜視図である。
図7は
図6の研磨ブラシ2の分解斜視図である。
図6に示すように、本形態の研磨ブラシ2は、環状に配列された複数の砥材束11を備えるブラシ状砥石12と、砥材束11の外周側への変位を規制する砥材変位規制部材13Bを備える。ブラシ状砥石12は止めねじ14によって砥材変位規制部材13Bに着脱可能に取り付けられている。実施例2の研磨ブラシ2のブラシ状砥石12は実施例1の研磨ブラシ2のブラシ状砥石12と同一のものである。また、実施例2の研磨ブラシ2は実施例1の研磨ブラシ1と対応する構成を備えるので、対応する部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
(砥材変位規制部材)
図6に示すように、砥材変位規制部材13Bは、工作機械のヘッド(駆動装置)に連結されるシャンク部分31を備える軸部32と、砥材束11の回転中心軸線L方向の一部分を外周側から囲む環状部33と、軸部32と環状部33を接続する接続部34を備える。
【0049】
軸部32は、円柱形状であり、その上側部分がシャンク部分31となっている。
図7に示すように、軸部32の下側部分には、平坦面35が形成されている。平坦面35は等角度間隔で3箇所に設けられている。
【0050】
環状部33および接続部34は樹脂製である。本例では環状部33および接続部34は一体に形成されている。接続部34は、軸孔36を備える環状部分37と、環状部分37の外周面から半径方向の外側に放射状に延びる3本の腕部分38を備える。三本の腕部分38の外周側の端は環状部33の内周面に連続しており、これにより腕部分38は環状部分37の周方向の一部分と環状部33の周方向の一部分を接続している。腕部分38の周方向における厚さ寸法は、砥材ホルダ15に環状に保持されている複数の砥材束11の間隔よりも短い。環状部分37の外周面であって隣り合う2本の腕部分38の間の部分には環状部分37を半径方向に貫通するネジ孔41が形成されている。
【0051】
ここで、
図7に示すように、環状部33と接続部34は同一の高さ寸法h3を備えている。すなわち、接続部34の環状部分37および腕部分38の高さ寸法h3は環状部33の高さ寸法h3と同一である。環状部33の高さ寸法h3は、砥材ホルダ15から下方に突出する未使用の砥材束11の突出寸法の1/4以下である。環状部33の内周面には、内周面の全体を被う金属製の被覆部材47が取り付けられている。
【0052】
砥材変位規制部材13Bを組み立てる際には、接続部34の環状部分37に設けられた軸孔36に軸部32を貫通させ、環状部分37のネジ孔41にねじ込んだ有頭のねじ48(
図6参照)により接続部34および環状部33を軸部32に固定する。接続部34および環状部33は、環状部33の下端と軸部32の下端が一致する位置に固定される。
【0053】
研磨ブラシ2を組み立てる際には、砥材変位規制部材13Bにブラシ状砥石12を取りつける。すなわち、
図7に示すように、砥材変位規制部材13Bとブラシ状砥石12を同軸に配置して、砥材変位規制部材13Bの軸部32をブラシ状砥石12のホルダ側軸孔16に挿入する。また、砥材変位規制部材13Bの接続部34の腕部分38をブラシホルダに等角度間隔で保持されている砥材束11の間に挿入する。これにより、環状部33の内周側に砥材ホルダ15および砥材束11が配置される。
【0054】
また、回転中心軸線L方向におけるブラシ状砥石12の位置を調整しながら、砥材ホルダ15のホルダ側貫通孔22に止めネジ14を挿入して、この止めネジ14により砥材ホルダ15を砥材変位規制部材13Bの軸部32に固定する。ここで、砥材変位規制部材13Bにブラシ状砥石12が取り付けられた状態では、
図6に示すように、環状部33は回転中心軸線L方向における砥材束11の先端(各線状砥材27の先端)と砥材ホルダ15の間であって砥材束11の先端(各線状砥材27の先端)および砥材ホルダ15から離間する位置で砥材束11(各線状砥材27)を外周側から囲む。
【0055】
(加工動作)
研磨ブラシ2を用いてワークに対してバリ取りや表面に対する研削・研磨加工を行う際には、シャンク部分31を工作機械のヘッドに連結して回転中心軸線L回りに回転させ、砥材束11(線状砥材27)の先端部(外周側の端部)をワークの表面に押し当てる。
【0056】
ここで、研磨ブラシ2が回転すると砥材束11の各線状砥材27は外周側に広がろうとするが、線状砥材27の先端部分は環状部33に当接してその外周側への変位が規制される。従って、砥材束11の各線状砥材27をワークの被研磨位置に正確に押し付けることができる。また、ワークに対する線状砥材27の接触位置を安定させることができる。
【0057】
加工動作中は、研磨ブラシ2の上方或いは外周側から切削液やエアーを供給して、ワークにおける被研磨部分を冷却する。また、供給した切削液やエアーによって切削屑を除去する。
【0058】
ここで、研磨ブラシ2の各砥材束11は、回転中心軸線L方向における砥材束11の先端(各線状砥材27の先端)と砥材ホルダ15の間であって砥材束11の先端(各線状砥材27の先端)および砥材ホルダ15から離間する位置が環状部33によって囲まれているだけである。また、砥材ホルダ15は第1環状部17と第2環状部18の間に複数の砥材束11で囲まれた内側空間55に連通するホルダ側開口部25を備えている。従って、研磨ブラシ2の上方や外周側から切削液やエアーを供給すれば、切削液やエアーをワークにおける被研磨部分に到達させることができる。よって、ワークにおける被研磨部分の冷却が可能であるとともに、切削屑の除去が可能である。
【0059】
砥材変位規制部材13Bを備える本例の研磨ブラシ2においても、実施例1の研磨ブラシ2と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
なお、本例では環状部33および接続部34を金属製としてもよい。すなわち、本例では、一体に形成されている環状部33および接続部34が環状部33が比較的小さな部材なので、環状部33および接続部34を金属製とした場合でも研磨ブラシ2の重量の増加を抑制でき、かつ、環状部33を交換する際のコストも抑制できる。
【0061】
(その他の実施の形態)
上記の例では、線状砥材27は無機長繊維の集合糸を備えるものであるが、線状砥材27として、ナイロン、砥粒入りナイロン、砥粒入りゴム、ステンレス鋼、真鍮からなるものを用いることもできる。
【0062】
また、被覆部材47を省略することもできる。ここで、被覆部材47を省略する場合には、環状部33における下端部分(線状砥材27の先端の側の部分)を、他の部分と比較して耐摩耗性が高く摩擦係数の低い樹脂から形成することもできる。
【0063】
さらに、上記の例では、複数本の線状砥材27は、小分けされて複数の砥材束11に束ねられており、複数の砥材束11は互いに離間して環状に配列されているが、複数本の線状砥材27を束とすることなく、砥材ホルダ15に環状に保持してもよい。このようにしても、研磨ブラシ2では、複数本の線状砥材27は、少なくとも砥材ホルダ15に近い部分が外に露出しているので、研磨ブラシ2の上方や外周側から切削液やエアーを供給すれば、切削液やエアーをワークにおける被研磨部分に到達させることができる。よって、ワークにおける被研磨部分の冷却が可能であるとともに、切削屑の除去が可能である。