(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
本発明に係る製品の製造装置の実施形態1を、
図1〜
図4を参照して説明する。製品の製造装置として、加工対象物に相当する封止済基板を切削する切削装置を説明する。本出願書類において、「切削」という文言には、加工対象物の厚さ方向の全てを切削すること(フルカット:full cutting)及び加工対象物の厚さ方向の一部分を切削すること(ハーフカット:half cutting)の双方が含まれる。加工対象物をフルカットすることによって加工対象物を切断する。加工対象物をハーフカットすることによって加工対象物に溝を形成する。
本出願書類におけるいずれの図についても、わかりやすくするために適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0014】
(製造装置の構成)
実施形態1に係る製品の製造装置を、
図1を参照しながら説明する。
図1に示されるように、製品の製造装置1は、封止済基板2を個片化することによって、個片化された複数の製品Pを製造する製造装置である。封止済基板2が個片化された製品Pとしては、例えば、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-Scale Integrated circuit )、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の電子デバイスが挙げられる。
【0015】
製品の製造装置1は、それぞれ構成要素として、供給モジュールAと切削モジュールBと払い出しモジュールCとを備える。供給モジュールAは封止済基板を切削モジュールBに供給する。切削モジュールBは封止済基板を切削する。各構成要素(各モジュールA〜C)は、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱できる。
【0016】
供給モジュールAに基板供給機構3が設けられる。
図1は、封止済基板2が収容されたマガジンMZが基板供給機構3に4個並ぶ例を示す。封止済基板2が、基板供給機構3から搬出され、移送機構(図示なし)によって切削モジュールBに移送される。制御部CTLが供給モジュールAに設けられる。制御部CTLは、製造装置1全体における動作及び物理量の検知等に関する制御を行う。制御部CTLは画像処理部IMPと判定部JDGとを含む。画像処理部IMPは、撮像素子(後述)によって得られた画像を処理する。判定部JDGは、画像処理の結果に基づいて様々な判定を行う。
【0017】
1個の切削用のテーブル4が切削モジュールBに設けられる。加工台であるテーブル4の上に加工対象物が置かれて加工される。テーブル4の上には封止済基板2が置かれる。封止済基板2は、吸引路(図示なし)を使用して吸引されることによってテーブル4の上面に一時的に固定される。テーブル4は、移動部材5によってY方向に移動でき、かつ、回転部材6によってθ方向に回転できる。サーボモータ等の駆動源M1とボールねじS1とは、移動部材5をY方向に移動させる第1の移動機構を構成する。
【0018】
切削モジュールBにおいて、1個のスピンドル収容部7を備えた切削機構8が設けられる。スピンドル収容部7はX方向に移動できる。サーボモータ等の駆動源M2とボールねじS2とは、切削機構8をX方向に移動させる第2の移動機構を構成する。第1の移動機構と第2の移動機構とによって、テーブル4とスピンドル収容部7とが相対的に移動できる。
【0019】
スピンドルモータSMがスピンドル収容部7の内部に設けられる。スピンドルモータSMは回転軸9を有する。回転軸9はしばしば「スピンドル」と呼ばれる。円板状の回転砥石10が回転軸9に装着される。スピンドルモータSMが回転砥石10を回転させる。テーブル4と回転砥石10を含むスピンドル収容部7とを相対的に移動させることにより、封止済基板2が切削される。回転砥石10は、Y方向とZ方向とを含む面内において回転することによって封止済基板2を切削する。回転砥石10は、回転軸9に対して着脱されることができ、別の回転砥石に交換されることができる。
【0020】
作業台11が払い出しモジュールCに設けられる。切削済基板12が作業台11の上に載置される。切削済基板12は、封止済基板2を切削して個片化された複数の製品Pを含む集合体である。検査用のカメラ13と良品用のトレイ14とが払い出しモジュールCに設けられる。不良品を収容する別のトレイが払い出しモジュールCに設けられてもよい。切削済基板12を洗浄する洗浄機構と洗浄された切削済基板12を乾燥する乾燥機構とが払い出しモジュールCに設けられてもよい。
【0021】
作業台11と検査用のカメラ13とがX方向及びY方向に相対的に移動することによって、検査用のカメラ13が複数の製品Pを撮影する。得られた画像データに基づいて画像処理部IMPが2値化等の画像処理を行う。画像処理の結果得られたデータに基づいて、判定部JDGが製品Pの良否を判定する。検査された複数の製品Pは良品と不良品とに選別されて、良品はトレイ14に収容される。
【0022】
(切削機構の構成)
図2を参照して、実施形態1に係る製品の製造装置において使用される切削機構を説明する。製造装置1が有する切削機構8は固定板15を備える。固定板15がX軸用のガイドレール(図示なし)に沿ってX方向に移動することによって、切削機構8がX方向に移動する。取付板16が固定板15に設けられる。Z軸用のガイドレール17が固定板15に設けられる。Z軸用の駆動機構18が取付板16に設けられる。駆動機構18として、例えば、サーボモータ、ステッピングモータ等が使用される。ボールねじ19が駆動機構18の回転軸に接続される。ボールねじ19に取り付けられたボールナット(図示なし)に、昇降部材20が取り付けられる。スピンドル収容部7が昇降部材20に固定される。駆動機構18がボールねじ19を回転させることによって、昇降部材20に固定されたスピンドル収容部7がZ軸用のガイドレール17に沿って昇降する。
【0023】
図2においては、回転砥石10の下端が所定の切削位置まで下降して、回転砥石10によって封止済基板2を切削している状態が示される。所定の切削位置とは、回転砥石10の外縁における下端が所定の切り込み深さに位置するまで回転砥石10が下降した状態における、回転砥石10の下端の位置をいう。
【0024】
図2(a)に示されるように、1個の検知機構21が切削機構8に設けられる。検知機構21は、検知対象物である回転砥石10の外周部の状態を検知する。具体的には、検知機構21は回転砥石10の磨耗量と欠け不良との双方を検知する。検知機構21は、スピンドル収容部7において回転砥石10が取り付けられた側(
図2(a)における右側)に設けられる。検知機構21は駆動機構22によって昇降する。駆動機構22はサーボモータ等の駆動源M3とボールねじS3とを含む。駆動機構22は、回転砥石10を交換する際に検知機構21を上昇させて上方に退避させ、回転砥石10を交換した後に検知機構21を下降させるために使用される。駆動機構22として、エアシリンダ等を使用してもよい。駆動機構22として、スピンドル収容部7の昇降に連動するカム機構等を使用してもよい。
【0025】
図2(a)、(b)に示されるように、検知機構21は、回転砥石10の外周から中心に向かう径方向(
図2の−Z方向)に沿って伸びるようにして設けられる。スピンドル収容部7と検知機構21とは、共通する運動系に含まれて共に昇降する。したがって、回転砥石10の磨耗量に応じて回転砥石10の切り込み深さを大きくする場合には、スピンドル収容部7と検知機構21とは共に下降する。
【0026】
(検知機構の構成等)
検知機構21は透過型の光電センサであって、相対向する発光部23と受光部24とを有する。発光部23と受光部24とは同一の光軸(共通する光軸)OPを有することが好ましい。光軸OPは回転砥石10の表面に直交することが好ましい。発光部23から受光部24に向かって、照射光25が照射される。
図2(a)においては、回転砥石10における回転軸9の先端側(
図2(a)では右側)に発光部23が配置され、スピンドル収容部7の側(
図2(a)では左側)に受光部24が配置される。これに代えて、発光部23と受光部24とが入れ替わって配置されてもよい。このことは、検知機構21として透過型の光電センサを使用する他の実施形態においても同じである。
【0027】
図2(c)も併せて参照しながら、発光部23の発光領域LAと受光部24の受光領域RAとの形状を説明する。発光部23の発光領域LAと受光部24の受光領域RAとの形状は、同一の光軸OPを中心にする同一の有効直径Dを有する円であることが好ましい。この円は、それぞれ有効直径Dを有する発光領域LAと受光領域RAとの検知範囲Sに相当する。
図2(c)には、受光部24に含まれる撮像素子の視野CVが、長方形の細い破線によって示される。加えて、発光領域LAと受光領域RAと検知範囲Sとが、1個の円形の細い破線によって示される。
【0028】
入射光26(
図2(c)においてハッチングが付された部分に相当する)は、発光部23から照射された照射光25のうち回転砥石10によって遮られなかった光を含む。受光部24は入射光26を受けることができる。入射光26は、照射光25に起因しない外乱光(例えば、照明光)を含む。外乱光の光量は照射光25の光量に比べて充分に小さいので、回転砥石10に関する検知は外乱光による影響を受けない。
【0029】
発光部23は、発光ダイオード、レーザーダイオード(laser diode:LD )等の発光素子を含む。受光部24は、CCD( Charge Coupled Device )、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )イメ−ジセンサ等の撮像素子(後述)を含む。
図2(c)を併せて参照しながら説明すると、受光部24に含まれる撮像素子の視野CV内に、受光部24が検知範囲Sにおいて受けた入射光26が導かれる。
【0030】
発光部23と受光部24とは、検知対象物である回転砥石10の外周部の側方に設けられる。回転砥石10の外縁における上部を発光部23と受光部24とが挟むようにして、発光部23と受光部24とが配置されることが好ましい。回転砥石10の外縁における最上端を発光部23と受光部24とが挟むようにして、発光部23と受光部24とが配置されることがいっそう好ましい。光軸OPに沿って見た場合において、発光部23の発光領域LAと受光部24の受光領域RAとは、円形に近い形状であることが好ましく、円形であることがいっそう好ましい。
【0031】
上述したように発光部23と受光部24とが配置されることによって、次の2つの効果が得られる。第1に、加工対象物に相当する封止済基板2が切削される部分付近に供給される切削水、冷却水等の加工水に起因する液滴が発光部23と受光部24とに付着することが、抑制される。第2に、入射光26が受光部24まで進む光路において加工水に起因する液滴が移動することが、抑制される。これらのことによって、照射光25及び入射光26が液滴による擾乱を受けにくくなる。したがって、回転砥石の欠け不良と回転砥石の磨耗との双方を検知する際に、液滴に起因するノイズによる悪影響(例えば、検知する感度の低下等)が抑制される。
【0032】
本出願書類において「同一の光軸」、「同一の直径」、「面積は同一」、「範囲は同一」等の表現は、光軸の位置、直径の大小、面積の大小、範囲の大小等に差がある場合を含む。例えば、発光部23の光軸と受光部24の光軸との間にずれがある状態であっても、受光部24が受ける入射光26の量を測定する精度が実用的に影響を受けない程度の光軸のずれであれば、その状態は「同一の光軸」に含まれる。
【0033】
図2においては、封止済基板2が有するプリント基板、リードフレーム等からなる基板27が上になり、封止済基板2が有する封止樹脂28が下になるようにして、封止済基板2がテーブル4に一時的に固定される。
図2(a)、(b)に示されるように、封止済基板2には、仮想的な格子状の切削線29が形成される。切削線29によって囲まれた複数の領域30のそれぞれが、1個の製品P(
図1参照)に相当する。
【0034】
図2(a)に示されるように、テーブル4には、回転砥石10の外縁における下端が収容される溝31が形成される。溝31に設けられた吸引路32を介して封止済基板2が吸引されることによって、テーブル4の上面に封止済基板2が一時的に固定される。テーブル4に溝31と吸引路32とを形成せずに、粘着テープを使用してテーブル4の上面と封止済基板2が有する封止樹脂28とを仮固定してもよい。この場合には、回転砥石10の外縁における下端が、粘着テープの厚さのうち上部を部分的に切削する。
【0035】
図2(c)を併せて参照しながら説明すると、受光部24に含まれる撮像素子の視野CVに、受光部24が検知範囲Sにおいて受けた入射光26が導かれる。回転砥石10が新品である状態と検知範囲Sとの関係、及び、回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態と検知範囲Sとの関係を、説明する。
図2(c)には、回転砥石10の2つの状態が示される。第1の状態は、回転砥石10が新品である状態である。新品の回転砥石10は外縁33nを有する。この状態において、回転砥石10の摩耗量は0(零)である。第2の状態は、回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態である。この状態において、限界まで磨耗した回転砥石10は外縁33wを有する。
【0036】
図2(c)に示されるように、有効直径Dを有する円に相当する検知範囲Sには、回転砥石10に関連する次の3つの要素が含まれる。
(1)第1の要素
第1の要素は、新品の回転砥石10の外縁33nである。言い換えれば、摩耗量が0である回転砥石10の外縁33nである。
【0037】
(2)第2の要素
第2の要素は、回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態における回転砥石10の外縁33wである。
【0038】
(3)第3の要素
第3の要素は、回転砥石10が新品の状態から使用できる限界まで磨耗した状態までの間において発生した欠けのうち特定の欠けである。具体的には、第3の要素は、欠けた部分が非許容範囲における最小である場合に相当する特定の欠け(以下「最小欠けCmin 」という。)である。言い換えれば、最小欠けCmin の大きさは、小さい欠けから徐々に大きくなる欠けを想定した場合において、回転砥石10の不良に相当すると判断される最小の大きさである。回転砥石10の不良に相当する欠け不良は、回転砥石10の回転を停止したうえで切削する工程を中断する必要がある欠けに相当する。
図2(c)には、最小欠けCmin が、V字形の太い破線によって示される。最小欠けCmin 以上の欠けに相当する欠け不良が発生した回転砥石10は、通常、新品の回転砥石に交換される。
【0039】
発光部23の発光領域LAと受光部24の受光領域RAとの有効直径D(検知範囲Sの直径;
図2(c)参照)が、3mm以上であることが好ましい。加えて、有効直径Dが6mm以下であることが好ましい。
【0040】
有効直径Dが3mm未満である場合には、次の2つの要素のうち少なくとも一方が有効直径Dに含まれないおそれがある。第1に、新品の回転砥石10の外縁33n(第1の要素)又は回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態における回転砥石10の外縁33w(第2の要素)のうちの一方である。回転砥石10の外縁33n又は回転砥石10の外縁33wのうちの一方が有効直径Dに含まれない場合には、回転砥石10の磨耗量を検知できない。第2に、最小欠けCmin (第3の要素)のうち、回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態における最小欠けCmin である。回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態における最小欠けCmin が有効直径Dに含まれない場合には、回転砥石10が限界まで磨耗した状態における最小欠けCmin を検知できない。
【0041】
有効直径Dが6mmを超える場合には、有効直径Dに比較して、上述した3つの要素のうち磨耗量に関する第1の要素である外縁33nと第2の要素である外縁33wとの寸法差が相対的に小さくなる。したがって、磨耗量を検知する感度が低下するおそれがある。ここまで説明した理由から、有効直径Dが3mm以上であって6mm以下であることが好ましい。
【0042】
図3を参照して、本発明に係る製品の製造装置が有する検知機構21を説明する。本実施形態においては、検知機構21に含まれる撮像素子を使用して得られた画像を画像処理する技術が適用される。検知機構21において、発光部23は、発光素子34と光ファイバ束35と光拡散板36とコリメータレンズ37と反射鏡38と透過窓39とを有する。受光部24は、受光窓40と反射鏡41と集光レンズ42と光ファイバ束43と受光素子である撮像素子44とを有する。制御部CTLと発光素子34との間、及び、撮像素子44と制御部CTLとの間は、それぞれ信号線によって接続される。集光レンズ42としては、例えば、単位共役比レンズを使用することができる
。
【0043】
図3(b)に示されるように、光ファイバ束35、43は、0.2mm〜0.3mm程度の直径dを有する複数個(N個)のプラスチック光ファイバ45が束ねられて構成される。複数のプラスチック光ファイバ45は被覆46によって覆われる。プラスチック光ファイバ45の直径dは小さいことが好ましく、0.2mm以下であることが好ましい。プラスチック光ファイバ45の直径dは0.07〜0.08mm程度であることが更に好ましい。
【0044】
発光部23と回転砥石10との間には、スリットSL1を有する光通過板LT1を設けることが好ましい。回転砥石10と受光部24との間には、スリットSL2を有する光通過板LT2を設けることが好ましい。光通過板LT1は、発光部23と回転砥石10との間であって透過窓39の近くに設けられる。光通過板LT2は、回転砥石10と受光部24との間であって受光窓40の近くに設けられる。光通過板LT1は、発光部23における透過窓39の側の本体に取り付けられてもよい。光通過板LT2は、受光部24における受光窓40の側の本体に取り付けられてもよい。光通過板LT1とスリットSL2とのうちどちらか一方が設けられてもよい。まとめると、光通過板LT1、LT2は、発光部発光部23と回転砥石10との間、又は、回転砥石10と受光部24との間の少なくとも一方に設けられる。光通過板LT1の幅及び光通過板LT2の幅は、いずれも受光領域の幅よりも狭い。
【0045】
スリットSL1とスリットSL2とはそれぞれZ方向に伸びる細長い隙間である。これらの隙間の幅(Y方向の寸法)は最適な値に定められる。例えば、これらの隙間の幅は、0.5mm〜1.2mmであることが好ましい。隙間の幅が1.2mmよりも大きい場合には、回転砥石10の欠け不良を検知する感度が低下するおそれがある。隙間の幅が0.5mmよりも小さい場合には、受光量が減少するので、回転砥石10の欠け不良を検知する際に液滴、切りくず等に起因するノイズによる悪影響を受けやすくなる。スリットに関してここまで説明した内容は、他の実施形態においても同じように適用される。
【0046】
発光部23において、発光素子34から照射された光は、光ファイバ束35を経由した後に光拡散板36によって拡散光に変換される。拡散光はコリメータレンズ37によって平行光に変換される。平行光は、反射鏡38に向かって−Z方向に進み反射鏡38によって−90°反射することによって、−X方向に進む照射光25になる。照射光25は、発光部23の透過窓39とスリットSL1とを順次通過する。照射光25の一部分が回転砥石10によって遮られる。回転砥石10によって遮られなかった照射光25の残りの部分が、入射光26として、スリットSL2と受光部24の受光窓40とを順次通過する。受光部24において、入射光26は、反射鏡41によって−90°反射して、+Z方向に進む。反射した入射光26は集光レンズ42によって集光される。集光された光は、光ファイバ束43を経由して撮像素子44に到達する。
【0047】
(検知機構の動作)
以下、
図2と
図3とを参照しながら、実施形態1に係る製品の製造装置1の動作について説明する。例えば、CMOSイメージセンサからなる撮像素子44が受光部24に設けられる。集光された光を撮像素子44まで導く光ファイバ束43は、N個のプラスチック光ファイバ45を有する。N個のプラスチック光ファイバ45が受け取った光が、それぞれ光源に相当する。
【0048】
N個のプラスチック光ファイバ45を介して、撮像素子44がN個の光源の光を受け取る。1個の光源の光は、撮像素子44が有する複数個の画素によってそれぞれ光電変換される。撮像素子44はN個の光源の光を光電変換して、それぞれの画素に対応する画像信号を制御部CTLに送る。制御部CTLに含まれる画像処理部IMPは、各画像信号を、例えば、256階調にAD変換する。画像処理部IMPは、AD変換された画像信号をしきい値に基づいて「1」と「0」とに分けることによって(2値化して)、画像情報を生成する。画像処理部IMPは、画像情報に基づいて2値画像を生成する。「1」は「黒」に相当し、回転砥石10が存在する場所を示す。「0」は「白」に相当し、回転砥石10が存在しない場所を示す。画像情報は、回転砥石10の欠け不良の検知と摩耗量の検知とに利用される。画像情報は、信号線によって制御部CTLに接続されたタッチパネル等の表示パネル47に、画像として表示される。2値化以外の画像処理を使用してもよい。
【0049】
1番目に、回転砥石10の磨耗量の検知について説明する。制御部CTLは撮像素子44に信号を送って、その信号に従って撮像素子44が回転砥石10の外周部を撮像する。画像処理部IMPは、撮像された画像の全範囲を画像処理する。回転砥石10の外周部には回転砥石10の外縁が含まれる。画像処理された画像における「黒」と「白」との境界が回転砥石10の外縁として認識される。
【0050】
制御部CTLは、新品の回転砥石10の外縁33nと、回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態における外縁33wとを予め撮像して、それらの画像を画像処理する。制御部CTLは、新品の回転砥石10の外縁33nの位置(初期位置)と、回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した状態における外縁33wの位置(限界位置)とを、併せて記録媒体に記録する。制御部CTLは、初期位置と限界位置との差に基づいて磨耗量を算出して、その磨耗量を限界磨耗量として記録媒体に記録する。
【0051】
新品の回転砥石10が使用され始めた後に、制御部CTLは撮像素子44に信号を送って、その信号に従って撮像素子44が回転砥石10の外縁を撮像する。画像処理部IMPは、撮像された画像の全範囲を画像処理する。制御部CTLに含まれる判定部JDGは、認識した回転砥石10の外縁の位置と、記録媒体から読み出した初期位置とを比較して、例えば、位置の差に基づいてその時点における磨耗量を算出する。判定部JDGは、連続的に算出される磨耗量と、記録媒体から読み出された限界磨耗量とを、比較する。算出される磨耗量が限界磨耗量よりも小さい場合には、判定部JDGは、回転砥石10の磨耗量はまだ限界に達していないと判断する。この場合には、制御部CTLは製造装置1の動作を制限しない。
【0052】
算出される磨耗量が限界磨耗量に等しくなった場合又は限界磨耗量を超えた場合には、判定部JDGは、回転砥石10の磨耗量は限界に達したと判断する。この場合には、制御部CTLは、例えば、製造装置1の動作を次のように制御する。この場合の制御を「異常発生時の制御」という。
【0053】
制御部CTLは、回転砥石10を使用して封止済基板2を切削する動作(以下「切削動作」という。)を停止する。制御部CTLは、例えば、1本の切削線29に沿って封止済基板2を切断し終わった時点において切削動作を停止する。制御部CTLは、回転砥石10とテーブル4とを相対的に移動させる動作(以下「移動動作」といい、
図2(b)に示された封止済基板2の+Y方向の移動に相当する。)を停止させる。制御部CTLは、回転砥石10を上昇させ、回転砥石10の回転を停止させる。ある切削動作と、その切削動作が終わってから次の切削動作が始まるまでの移動動作とのいずれもが、加工対象物を切削する工程に含まれる。
【0054】
加えて、制御部CTLは、表示パネル47に「回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した」ことを表示する。制御部CTLは、表示灯を点滅させる動作、ブザー等の音声を発する動作等を実行する。これらの表示と動作とが、「回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した」という異常が発生したことを作業者に知らせる。「回転砥石10が使用できる限界まで磨耗した」ことを知った作業者は、限界まで磨耗した回転砥石10を新品の回転砥石10(限界まで磨耗していない回転砥石10でもよい)に交換する。
【0055】
2番目に、回転砥石10における欠け不良の検知について説明する。制御部CTLは、最小欠けCmin の大きさ(面積)を、記録媒体に予め記録する。制御部CTLは、「黒」の領域の外縁から下向きに伸びる「白」の領域が存在する場合には、その「白」の領域を欠け(
図2(c)参照)として認識する。判定部JDGは、認識された欠けの大きさと、記録媒体から読み出した最小欠けCmin の大きさとを、比較する。認識された欠けの大きさが最小欠けCmin の大きさよりも小さい場合には、判定部JDGは、回転砥石10には欠け不良は発生していないと判断する。この場合には、制御部CTLは製造装置1の動作を制限しない。
【0056】
欠けの大きさが最小欠けCmin の大きさに等しくなった場合又は最小欠けCmin の大きさを超えた場合には、判定部JDGは、回転砥石10に欠け不良が発生したと判断する。欠け不良が発生した場合には、制御部CTLは製造装置1に対して異常発生時の制御を行う。この場合には、欠け不良の発生が検知された時点において直ちに切削動作を停止することが好ましい。
【0057】
回転砥石10が封止済基板2を切断する期間に欠け不良を、回転砥石10が封止済基板2を切断していない期間に磨耗量を、それぞれ検知することが好ましい。回転砥石10が封止済基板2を切断していない期間としては、例えば、ある切削動作が終わってから次の切削動作が始まるまでの移動動作の期間が挙げられる。欠け不良を検知する期間と磨耗量を検知する期間とを分けることによって、制御部CTLは、回転砥石10が封止済基板2を切断する期間に発生する欠け不良を直ちに検知して、製造装置1に対して異常発生時の制御を行うことができる。したがって、回転砥石10に欠け不良が発生した場合に、その回転砥石10を使用し続けることに起因する切断面の粗面化等の切断の品質の劣化を抑制できる。加えて、製品の不良品の発生を抑制できる。これらのことは、他の実施形態においても同じである。
【0058】
(作用効果)
実施形態1によれば、回転砥石の欠け不良と回転砥石の磨耗量との双方を1個の検知機構21によって検知する。このことによって、製品の製造装置及び製造方法を簡素化することができる。したがって、装置コスト及び製品の製造コストを抑制することができる。このことは、他の実施形態においても同じである。
【0059】
実施形態1によれば、各構成要素(各モジュールA〜C)は、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱できる。供給モジュールAと切削モジュールBとの間に別の切削モジュールBを取り付けることによって、切削モジュールBの数を事後的に増やすことができる。切削モジュールBと払い出しモジュールCとの間に別の切削モジュールBを取り付けることによって、切削モジュールBの数を事後的に増やしてもよい。複数の切削モジュールBのうちの1つの切削モジュールBを取り外すことによって、切削モジュールBの数を事後的に減らすことができる。したがって、製造装置自体の数を増減させることなく、需要の増減等に対応できる。このことは、他の実施形態においても同じである。
【0060】
切削モジュールBとして、回転砥石を使用する切削モジュールに、回転砥石とは異なる切削機構を有する切削モジュールを取り付けてもよい。回転砥石とは異なる切削機構として、レーザ光、ワイヤソー、ウォータージェット、ブラスト等が挙げられる。これによって、線分と曲線(又は折れ線)とを組み合わせた平面形状を有する製品(例えば、メモリーカード)を製造することができる。レーザ光、ブラスト等を使用することによって、線分と曲線(又は折れ線)とを組み合わせた平面形状を有する溝が形成された製品を製造することができる。これらのことは、他の実施形態においても同じである。
【0061】
[実施形態2]
(画像処理の態様)
図2(c)には、検知範囲Sの全範囲の画像を画像処理する態様が示される。この態様に限らず、検知範囲Sの一部分の画像を画像処理する態様を採用することもできる。
図4(a)、(b)に示されるように、視野CVの一部分に円形の検知範囲Sの全範囲の画像が含まれる。処理範囲48は、検知範囲Sの一部分であって、実施形態2において画像処理する対象になる範囲である。このことは、後述する実施形態においても同じである。
【0062】
図4(a)、(b)は、
図2(a)に示された受光部24の側から見た視野CVに含まれる画像のうち、処理範囲48に含まれる画像の外縁を実線によって示し、処理範囲48に含まれない画像(
図3(a)に示された光ファイバ束43に取り込まれなかった画像)の外縁を、破線によって示す。
図4(a)、(b)は、処理範囲48の内部において、回転砥石10が正常である状態と、回転砥石10に最小欠けCmin が発生した場合との双方を、それぞれ実線によって示す。
【0063】
図4(a)には、ある時点における回転砥石10を対象にして、検知範囲Sの一部分の画像に相当する1種類の画像を画像処理する実施形態2が示される。処理範囲48は、
図3(a)に示されたスリットSL1(又はスリットSL2)によって狭められた範囲に相当する。処理範囲48には、新品の回転砥石10の外縁33nと、限界まで磨耗した回転砥石10の外縁33wと、限界まで磨耗した回転砥石10における最小欠けCmin とが含まれる。スリットSL1の幅は、最小欠けCmin を完全に含んでもよく、最小欠けCmin の大部分(例えば、最小欠けCmin の面積の90%程度)を含んでもよい。これら2つの態様が「最小欠けCmin が含まれる」態様として存在する。
【0064】
(作用効果)
実施形態2によれば、画像処理の対象である画像の面積がスリットSL1の面積(=処理範囲48の面積)に相当する。処理範囲48の面積は、検知範囲Sの一部分の面積に相当する。視野CVにおける処理範囲48以外の画像はすべて「黒」であるので、処理範囲48以外の画像を画像処理する必要はない。したがって、検知範囲Sの全範囲の画像を画像処理する態様に比較して、画像処理の対象になる画像情報の量が少ない。このことにより、検知範囲Sの全範囲の画像を画像処理する態様に比較して、高速で画像処理を行うことができる。したがって、実施形態2によれば、単位時間内に処理できる画像の数が増えるので、摩耗量に関する判定と欠け不良に関する判定とを高精度かつ高速に行うことができる。
【0065】
[実施形態3]
(画像処理の態様)
図4(a)には、回転砥石10が使用され始めた後のある時点における回転砥石10を対象にして、検知範囲Sに含まれている異なる一部分の画像に相当する2種類の画像を選択して、それらの画像に基づいて欠け不良の有無と摩耗量とを判定する実施形態3が示される。光透過板LT1(
図3(a)参照)が有するスリットSL1によって狭められた処理範囲48において、異なる2種類の処理範囲における画像情報を選択する。選択されたそれらの画像情報に基づいて、以下の2種類の画像を取得する。
【0066】
新品の回転砥石10を対象にする場合には、2種類の画像の1つ目は、スリットSL1によって狭められた処理範囲48において新品時の最小欠けCmin を含むことができる新品時の欠け検知領域RCの画像である。2種類の画像の2つ目は、処理範囲48において新品時の外縁33nを含む新品時の外縁検知領域REの画像である。
【0067】
限界まで磨耗した回転砥石10を対象にする場合には、2種類の画像の1つ目は、処理範囲48において限界まで磨耗した時の最小欠けCmin を含むことができる限界摩耗時の欠け検知領域RCの画像である。2種類の画像の2つ目は、処理範囲48において限界摩耗時の外縁33wを含む限界摩耗時の外縁検知領域REの画像である。
【0068】
回転砥石10の摩耗量の検知は、外縁検知領域REを設定する際の外縁検知領域REの位置に基づいて算出することによって行われる。具体的には、回転砥石10の摩耗量は、新品の回転砥石10の外縁から摩耗した回転砥石10の外縁までの距離から算出される。回転砥石10の新品時から限界摩耗時に至るまで、Z方向における外縁検知領域REの中央部に回転砥石10の外縁33nから外縁33wまでが位置するようにして、外縁検知領域REが設定される。外縁検知領域REが設定される際のZ方向における外縁検知領域REの移動量は、対応する画素数として把握される。したがって、新品の回転砥石10の外縁から摩耗した回転砥石10の外縁までに相当する外縁検知領域REの移動量に対応する画素数に基づいて、回転砥石10の実際の摩耗量が算出される。
【0069】
回転砥石10の外縁付近の画像には、以下に説明する画像のぶれが発生する。画像のぶれは、回転砥石10の外縁の凹凸と回転砥石10の外縁付近における霧状の液滴とを含む外乱に起因して発生する。霧状の液滴は、回転砥石10の回転に巻き込まれた加工水等から生成される。画像のぶれは、回転砥石10の外縁の位置を検知する精度を低下させる要因(画像信号にとっては一種のノイズ)になる。画像処理された画像において、回転砥石10の外縁の凹凸と回転砥石10の外縁付近に存在する霧状の液滴とは、画像における外縁のぶれとして現れる。回転砥石10の外縁の位置を検知する精度を保つためには、画像のぶれを補正することが好ましい。ぶれを補正するには、例えば、複数枚の画像を使用して回転砥石10の外縁の位置の平均を算出すればよい。このことは、他の実施形態においても同じである。
【0070】
(作用効果)
実施形態3によれば、画像処理されて生成された画像情報に基づいて選択された2種類の画像の面積が、それぞれスリットSL2の面積の一部分に相当する。したがって、スリットSL2の全範囲の画像を画像処理する実施形態2に比較して、スリットSL2の面積の一部分の画像について判断する実施形態3によれば、いっそう高速で画像処理を行うことができる。実施形態2に比較して、実施形態3によれば、単位時間内に処理できる画像の数が増えるので、摩耗量に関する判定と欠け不良に関する判定とをいっそう高精度かつ高速に行うことができる。
【0071】
[実施形態4]
(画像処理の態様)
図4(b)には、回転砥石10が使用され始めた後のある時点における回転砥石10を対象にして、検知範囲Sにおける異なる一部分の画像に相当する2種類の画像を選択して画像処理する実施形態4が示される。実施形態4においては、スリットSL1に代えて、光透過板LT3が有するスリットSL3を使用して、実施形態3の画像よりも更に狭い幅の画像を取得する。スリットSL3の幅は、スリットSL1の幅よりも小さく、かつ、最小欠けCmin の幅よりも小さい。
【0072】
回転砥石10の新品時から限界摩耗時に至るまで、Z方向の外縁検知領域REの中央部に回転砥石10の外縁33nから33wまでが位置するように、外縁検知領域REが設定される。回転砥石10の新品時から限界摩耗時に至るまで、欠け検知領域RCが最小欠けCmin の内部に含まれるようにして欠け検知領域RCが設定される。言い換えれば、欠け検知領域RCが最小欠けCmin の内側に位置するようにして、欠け検知領域RCが設定される。回転砥石10の新品時から限界摩耗時に至るまで、欠け検知領域RCは、回転砥石10の外縁33n〜33wから−Z方向に離れた状態で最小欠けCmin に含まれる。欠け検知領域RCは、この領域内の画像が「白」であれば最小欠けCmin が発生したと判断されることが予め判明している領域に相当する。
【0073】
(作用効果)
実施形態4によれば、第1に、画像処理されて生成された画像情報に基づいて選択された欠け検知領域RCの面積が、実施形態3において選択された欠け検知領域RCの面積よりも小さい。第2に、上述の画像情報に基づいて選択された外縁検知領域REの面積が、実施形態3において選択された外縁検知領域REの面積よりも小さい。これらにより、実施形態3に比較して、いっそう高速で画像処理を行うことができる。したがって、実施形態3に比較して、実施形態4によれば、単位時間内に処理できる画像の数が増えるので、摩耗量に関する判定と欠け不良に関する判定とをいっそう高精度かつ高速に行うことができる。
【0074】
加えて、実施形態4によれば、欠け検知領域RCは、回転砥石10の外縁33n〜33wから−Z方向に離れた状態で最小欠けCmin に含まれる。したがって、回転砥石10の外縁付近における外乱に起因する画像のぶれによる影響が抑制される。
【0075】
〔実施形態5〕
(検知機構の構成)
図5を参照して、実施形態5で使用する検知機構について説明する。実施形態1及び2との違いは、光電センサである検知機構として透過型に代えて反射型を使用することである。それ以外の構成及び動作は実施形態1と基本的に同じなので、同一の構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。実施形態5は、実施形態2と反射型の光電センサとの組合せに相当する。
【0076】
図5(a)に示されるように、検知機構49は発光部23と受光部24とを有する。切削機構8(
図2参照)において、回転砥石10の両側面がZ方向に沿うようにして回転砥石10が配置される。発光部23の光軸OP1がZ方向に沿うようにして発光部23が配置される。受光部24の光軸OP2がX方向に沿うようにして受光部24が配置される。したがって、光軸OP1と光軸OP2とは直交する。発光部23と受光部24とはケース50の内部に配置される。回転砥石10と受光部24との間には光通過板LT1が配置される。光通過板LT1には、Z方向に沿って伸びる細長いスリットSL1が設けられる。
【0077】
発光部23は、発光素子34と光ファイバ束35と光拡散板36とコリメータレンズ37とハーフミラー51とを有する。発光素子34は、図の−Z方向に向かって光を照射する。受光部24は、集光レンズ42と光ファイバ束43と撮像素子44とを有する。ハーフミラー51に代えてビームスプリッタを使用することもできる。
【0078】
検知機構49は同軸照明を使用する。同軸照明を使用することによって、回転砥石10の表面において反射した反射光を含む入射光を入射させることができ、回転砥石10の外縁における拡散光を逸らすことができる。撮像素子44は、回転砥石10の表面からの反射光を安定して受光できる。したがって、撮像素子44に入射した光に関して回転砥石10の表面と背景との明暗の差(contrast ratio)が明確になる。
【0079】
(検知機構の動作)
図5を参照して、検知機構49を使用して回転砥石10の欠け不良と摩耗量とを検知する動作について説明する。
図5(a)に示されるように、まず、制御部CTLが発光部23に対して、光の照射を命令する信号を送る。受け取った信号に応じて発光素子34から照射された光は、光ファイバ束35と光拡散板36とを順次経由してコリメータレンズ37に導かれ、コリメータレンズ37によって平行光に変換される。平行光は、ハーフミラー51に向かって進み、ハーフミラー51によって−90°反射する。反射した平行光である照射光52は−X方向に進む。照射光52は、検知機構49の開口部53とスリットSL1とを順次通過して回転砥石10の表面に到達する。スリットSL1の範囲が、実施形態2において説明した処理範囲48に相当する(
図4、
図5(b)を参照)。
【0080】
回転砥石10の外周部において、照射光52の一部分が透過光54として回転砥石10を通過する。照射光52のうち透過光54以外の部分(言い換えると、照射光52のうち回転砥石10を透過しなかった残りの部分)は、回転砥石10の表面において反射して反射光55になる。反射光55は、スリットSL1と開口部53とを順次通過して受光部24に入射する。受光部24に入射した反射光55はハーフミラー51を透過して集光レンズ42によって集光される。集光された光は、光ファイバ束43を経由して撮像素子44に到達する。撮像素子44によって得られた画像信号に基づいて回転砥石10の欠け不良と摩耗量とを検知する方法については、実施形態1と同じなので説明を省略する。
【0081】
画像処理部IMPによって画像処理された画像が表示部47に表示される(
図5(b)参照)。
図5(b)の上方に、新品の回転砥石10に最小欠けCmin が発生した状態が、視野CVに含まれる処理範囲48内における実線と処理範囲48外における破線とによって、表示される。
図5(b)の下方に、限界まで摩耗した回転砥石10に最小欠けCmin が発生した状態が、破線によって表示される。
【0082】
(作用効果)
実施形態5によれば、回転砥石10の欠け不良と摩耗量とを検知する検知機構として反射型の検知機構49を使用する。検知機構49は、同軸照明を使用した照明方法によって回転砥石10の欠け不良と摩耗量とを検知する。同軸照明を使用することによって、回転砥石10の外縁における拡散光を逸らすことができる。これにより、撮像素子44に入射した光における回転砥石10と背景との明暗の差が明確になる。したがって、回転砥石10の外縁を精度良く検知するので、回転砥石10における欠け不良の有無と摩耗量とを、検知して判断することができる。
【0083】
実施形態5によれば、反射型の検知機構49を使用して回転砥石10における欠け不良の有無と磨耗量とを検知することができる。したがって、回転砥石10の磨耗量に応じて回転砥石10を下降させる位置を調整することによって、回転砥石10の切り込み深さを一定にして加工対象物を切断することができる。加えて、回転砥石10における欠け不良を検知して切削動作を停止することができる。このことによって、実施形態1と同じように、欠け不良に起因する切断の品質の劣化を抑制でき、かつ、製品の不良品の発生を抑制できるという効果が得られる。
【0084】
実施形態5によれば、反射型の検知機構49を使用するので、透過型の検知機構に比べて検知機構を簡素化し、小型化することができる。これにより、製品の製造装置及び製造方法を簡素化することができる。したがって、装置コスト及び製品の製造コストを抑制することができる。
【0085】
実施形態5によれば、反射型の検知機構49を使用するので、透過型の検知機構のように回転砥石10を両側から挟むようにして検知機構を配置する必要がない。回転砥石10のいずれか一方の面に対向して反射型の検知機構49を配置する。例えば、
図2(a)に示される回転砥石10におけるスピンドル収容部7の側(
図2(a)における回転砥石10の左側)のみに、
図5(a)に示された検知機構49を配置する。このことにより、回転砥石10を交換する際に、検知機構49を回転砥石10の上方に向かって退避させる必要がないので、回転砥石10の交換を容易に行うことができる。したがって、回転砥石10を交換する作業時間を短縮し、作業性の向上を図ることができる。
【0086】
実施形態5において、
図5に示された反射型の検知機構49に代えて、同軸の発光部と受光部とを有する反射型の検知機構を使用する変形例を採用してもよい。この変形例によれば、複数の光ファイバの端部の一部分を発光部として使用し、残りの部分を受光部として使用する、反射型の検知機構を使用する。この場合には、一例として、
図3(b)に示された複数のプラスチック光ファイバ45のうち外周側の2列を発光部として使用し、残りの内側の部分を受光部として使用する。他の例として、
図3(b)に示された複数のプラスチック光ファイバ45のうち右半分を発光部として使用し、残りの左半分を受光部として使用する。この変形例によれば、
図5に示された反射型の検知機構49を使用する場合に比較して、発光と受光とを同軸で行うことによって検知機構をいっそう簡略化し、いっそう小型化することができる。
【0087】
特に反射型の検知機構を使用する場合には、回転砥石10の表面の状態によっては、充分な反射光55が得られない場合がある。充分な反射光55が得られない場合としては、例えば、回転砥石10に含まれる砥粒の光反射率が低い場合等が挙げられる。この場合には、回転砥石10が存在する部分の光量と存在しない部分の光量との差が小さいために、回転砥石10の外縁の検知が困難になるおそれがある。対策として、
図4に示された処理範囲48の内部における−Z方向に沿って伸びる画像に対応するAD変換された画像信号を、−Z方向に沿って微分する。微分された値において、画像信号が立ち上がる位置と飽和する位置とが変曲点として得られる。得られた2つの位置の中間点が回転砥石10の外縁に相当すると推定される。検知機構が透過型、反射型のいずれの場合においても、画像信号を微分する方法は、回転砥石10の表面の色合いが変化する場合、回転砥石10の表面が汚れる場合等に有効である。
【0088】
実施形態5によれば、実施形態2と反射型の光電センサとを組み合わせた。これに限らず、実施形態3と反射型の光電センサとを組み合わせてもよく、実施形態4と反射型の光電センサとを組み合わせてもよい。
【0089】
〔実施形態6〕
図6を参照して、2個の回転機構を有するツインスピンドル構成を備える、製品の製造装置について説明する。特に、その製品の製造装置が有する検知機構について説明する。この検知機構は、2個の回転機構にそれぞれ取り付けられた回転砥石、言い換えれば合計2枚の回転砥石の欠け不良と摩耗量とを、同じ工程において検知することができる。切削機構と検知機構以外の構成は基本的に実施形態1と同じなので、同一の構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
(切削機構及び検知機構の構成)
図6を参照して、実施形態6において使用される切削機構及び検知機構の構成について説明する。
図6(a)に示されるように、製造装置56において、切削モジュールB(
図1も併せて参照)には、例えば、2個のテーブル4a、4bが設けられる。製造装置56はツインカットテーブル構成を有する。2個のテーブル4a、4bにはそれぞれ加工対象物として封止済基板2が載置される。封止済基板2は、吸着機構(図示なし)によってテーブル4a、4bの上面にそれぞれ吸着される。
【0091】
切削モジュールBには、それぞれの封止済基板2を切断する2個の回転機構8a、8bが設けられる。回転機構8a、8bには、それぞれスピンドルモータSMa、SMbが設けられる。製造装置56はツインスピンドル構成を有する。2個のスピンドルモータSMa、SMbは、それぞれ回転軸9a、9bを有する。回転軸9a、9bには、それぞれ回転砥石10a、10bが装着される。
【0092】
回転砥石10aの外縁部を挟むようにして検知機構21aが設けられる。回転砥石10bの外縁部を挟むようにして検知機構21bが設けられる。検知機構21a、21bは透過型の検知機構であって、実施形態1において開示された検知機構21と同じ構成を有する。
【0093】
検知機構21aは、相対向する発光部23aと受光部24aとを有する。発光部23aと受光部24aとは、回転砥石10aの外縁部を挟むようにしてそれぞれ配置される。回転砥石10aにおけるスピンドルモータSMaの側(
図6(a)における回転砥石10aの左側)に、発光部23aが配置される。回転砥石10aにおける回転軸9aの先端側(
図6(a)における回転砥石10aの右側)に、受光部24aが配置される。
【0094】
検知機構21bは、相対向する発光部23bと受光部24bとを有する。発光部23bと受光部24bとは、回転砥石10bの外縁部を挟むようにしてそれぞれ配置される。回転砥石10bにおけるスピンドルモータSMbの側(
図6(a)における回転砥石10bの右側)に、発光部23bが配置される。回転砥石10bにおける回転軸9bの先端側(
図6(a)における回転砥石10bの左側)に、受光部24bが配置される。
【0095】
発光部23a及び発光部23bは、いずれも実施形態1において説明した発光部23と同じ構成を有する。受光部24a及び受光部24bは、いずれも実施形態1において説明した受光部24と同じ構成を有する(
図3(a)参照)。
【0096】
検知機構21aが有する発光部23aは、光ファイバ束35aを介して、発光部23aの外部に設けられた発光素子34aに接続される。検知機構21aの受光部24aは、光ファイバ束43aを介して、受光部24aの外部に設けられた1個の共通する撮像部57に接続される。撮像部57には、受光部24aから受け取った光を集光する集光レンズ42aが設けられる。撮像部57には1個の共通する撮像素子44が設けられる。撮像素子44として、CCD 、CMOSイメ−ジセンサ等が使用される。後述するように、撮像素子44は、回転砥石10aの外周部と回転砥石10bの外周部とを同時に撮像できる。
【0097】
検知機構21bが有する発光部23bは、光ファイバ束35bを介して、発光部23bの外部に設けられた発光素子34bに接続される。検知機構21bの受光部24bは、光ファイバ束43bを介して、受光部24bの外部に設けられた1個の共通する撮像部44に接続される。撮像部57には、例えば、受光部24bから受け取った光を集光する集光レンズ42bが設けられる。2個の集光レンズ42a、42bに代えて、光ファイバ束43a、43bからそれぞれ受け取った入射光の双方を対象にする1個の共通する集光レンズ(
図3(a)に示された集光レンズ42に相当する)を使用してもよい。
【0098】
撮像部57は、検知機構21aの受光部24a及び検知機構21bの受光部24bの双方に接続される。撮像部57は、受光部24a及び受光部24bが受光した双方の光を受光し、それぞれの光の強さを電気信号に変換する。検知機構21aの受光部24aの外部かつ検知機構21bの受光部24bの外部に撮像部57を設けることによって、撮像部57を受光部24a、24bの共通の撮像部として使用することができる。この構成によって、撮像部57は検知機構21a及び検知機構21bが受光した光を同時に撮像することができる。
【0099】
図6(a)において、2個砥石用の検知部58が破線の長方形によって示される。2個砥石用の検知部58は、発光素子34a、34bと、光ファイバ束35a、35bの一部分と、光ファイバ束43a、43bの一部分と、1個の共通する撮像部57とを、少なくとも有する。
図6(a)に示された構成によれば、撮像素子44を含む2個砥石用の検知部58は、切削モジュールBには含まれず、供給モジュールAに含まれる。
図6(a)に示された検知機構21a、21bには、発光素子34a、34b及び撮像部57は含まれない。この構成によれば、回転砥石10a付近及び回転砥石10b付近には発光素子34a、34b及び撮像部57は含まれない。通常は、供給モジュールAの内部の温度・湿度等の環境は、回転砥石10a付近及び回転砥石10b付近の環境よりも良好な一定の環境に保たれる。したがって、液滴、切りくずの存在、温度変化等の影響を発光素子34a、34b及び撮像部57が受けることが抑制される。
【0100】
2個砥石用の検知部58を使用することによって、検知機構21a及び検知機構21bが受光した光を、同時に撮像することができる。必要に応じて、受光部24aから受け取った光と受光部24bから受け取った光とが干渉することを防ぐために、撮像素子44の中間部に遮光板LSを配置してもよい。
図6(a)、(b)は、遮光板LSが配置された例を示す。
【0101】
発光素子34a、34b及び撮像素子44は、それぞれ信号線を介して供給モジュールA(
図1も併せて参照)に設けられた制御部CTLに接続される。制御部CTLには、画像処理部IMPと判断部JDGとが設けられる。撮像部57から制御部CTLに送られてきたデータに基づいて、制御部CTLが2個の回転砥石10a、10bの欠け不良の有無と摩耗量とを検知して判断する。
【0102】
図6(b)は、視野CV内に映し出された回転砥石10a、10bの外周部をそれぞれ受光部24a、24bの側から見た図である。
図6(b)に示されるように、表示部47は、撮像素子44が撮像した2個の回転砥石10a、10bの状態をそれぞれ同じ画面上に表示する。回転砥石10a、10bの欠け不良と摩耗量とを検知する方法については実施形態1と同じなので、説明を省略する。
【0103】
(作用効果)
実施形態6によれば、撮像部57は、検知機構21aの受光部24a及び検知機構21bの受光部24bの双方に接続される。撮像部57に含まれる1個の撮像素子44は、受光部24a及び受光部24bが受光した双方の光を同時に受光し、それぞれの光の強さを電気信号に変換する。撮像素子44は、回転砥石10a、10b双方の状態を同時に撮像する。1個の撮像部57から制御部CTLに送られてきたデータに基づいて、制御部CTLが2個の回転砥石10a、10bの欠け不良の有無と摩耗量とを検知して判断する。このことにより、製品の製造装置及び製造方法を簡素化することができる。したがって、装置コスト及び製品の製造コストを抑制することができる。
【0104】
実施形態6によれば、制御部CTLは2個の回転砥石10a、10bの欠け不良の有無と摩耗量とを判断する。このことにより、ツインスピンドル構成を有する製造装置において、2枚の回転砥石10a、10bの欠け不良と摩耗量とを、加工対象物を切削する工程を実行しながら検知することができる。したがって、製造装置56の生産性を向上することができる。加えて、切断の品質を向上することができる。
【0105】
実施形態6においては、2枚の回転砥石10a、10bの欠け不良と磨耗量を検知するために、透過型の検知機構21a、21bをそれぞれ使用した。これに限らず、2枚の回転砥石の欠け不良と摩耗量とを検知するために、反射型の検知機構を使用することもできる。
【0106】
実施形態6においては、ツインスピンドル構成とツインカットテーブル構成とを有する製造装置について説明した。これに限らず、ツインスピンドル構成とシングルカットテーブル構成とを有する製造装置においても、本発明の検知機構を適用することができる。
【0107】
実施形態6においては、発光素子34a、34bと撮像素子44を含む撮像部57とを切削モジュールBの外部に設ける構成にした。この場合には、2個砥石用の検知部58を、製造装置56が有する供給モジュールAに設けられた制御部CTL内に配置する構成を採用してもよい。
図6(a)にはこの構成が示される。これらの構成に限らず、実施形態1と同じように、2個の発光素子34a、34bを2個の発光部の内部にそれぞれ1個ずつ設ける構成と、2個の撮像素子44を2個の受光部の内部にそれぞれ1個ずつ設ける構成とを、採用してもよい。
【0108】
なお、
図2に示された駆動機構22を、作業者が手動で操作してもよい。例えば、
図2に示された取付板16にマイクロメータヘッドを取り付け、そのマイクロメータヘッドを駆動機構として使用する。作業者がマイクロメータヘッドを操作することによって、検知機構21を昇降させることができる。作業者は、Z方向における光軸OPの位置をマイクロメータヘッドの目盛により知ることができる。このような駆動機構は、複数の外径の値を有する複数の種類の回転砥石10を同じ切削機構8に取り付けて交換しながら使用する場合であって、外径の値の差が大きい場合に、特に有用である。
【0109】
このような駆動機構を使用する場合には、新品の回転砥石10を使用する前に、上述した第1の要素〜第3の要素が検知範囲Sに含まれるようにして、作業者が手動で駆動機構22を操作する。第1の要素〜第3の要素が検知範囲Sに含まれる位置に、検知機構21を固定する。このことによって、検知機構21を固定したままで、回転砥石10が新品の状態から限界まで磨耗した状態までの間における回転砥石10の磨耗量と、その間において発生した最小欠けCmin とを、検知できる。
【0110】
画像処理する機能を有する画像処理部IMPと、回転砥石10の欠け不良及び磨耗量を検知する機能を有する判定部JDGとを、制御部CTLとは別に設けてもよい。検知機構21と画像処理部IMPと判定部JDGとを、製品の製造装置1に事後的に取り付けることもできる。この場合には、画像処理、欠け不良と磨耗量との検知及び判定のためのソフトウェアを、事後的に制御部CTLに追加すればよい。
【0111】
各実施態様においては、加工対象物として、チップ状の素子を含む板状部材である封止済基板11を切断して個片化する場合を示した。これに限らず、封止済基板11以外の加工対象物として、次の加工対象物を個片化する場合に本発明が適用される。
【0112】
第1の加工対象物は、シリコン(Si)等の半導体ウェーハ(semiconductor wafer )である。半導体ウェーハは、IC、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の機能素子が作り込まれた板状部材である。第2の加工対象物は、抵抗体、コンデンサ、センサ、表面弾性波デバイス等の機能素子が作り込まれたセラミックス基板等である。セラミックス基板等が個片化されて、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップ型のセンサ、表面弾性波デバイス等の製品が製造される。これら2つの場合には、半導体ウェーハ、セラミックス基板等が、複数の領域にそれぞれ対応する機能素子が作り込まれた板状部材に該当する。第3の加工対象物は、板状部材である樹脂成形品である。樹脂成形品を個片化することにより、レンズ、光学モジュール、導光板等の光学製品、一般的な成形製品が製造される。この場合には、光学製品及び成形製品が機能素子に該当する。上述した4つの場合を含む様々な場合において、ここまで説明した内容を適用できる。
【0113】
加工対象物に溝を形成した後に加工対象物に外力を加えることによって加工対象物を分割(breaking)した場合には、分割された(個片化された)物が製品に相当する。それぞれ適当な幅と深さとを有する溝を加工対象物に形成することによって、溝を有する製品を製造してもよい。この製品のうち微細な溝を有する製品は、MEMS用の部品等として使用される。
【0114】
本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。