(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の第1〜第mデータ設定部は、前記第2の第1〜第mドット群に属するインクドットの少なくとも一部が重複するように前記第2の第1〜第mドット群を設定する、
請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
前記第2の第1〜第mデータ設定部は、前記第2の第1〜第mドット群に属するインクドットが前記第2のインクのインクドット全体を含むように前記第2の第1〜第mドット群を設定する、
請求項6または7に記載のインクジェットプリンタ。
前記第2インクヘッドは、同数の前記第2ノズルを有し前記副走査方向の上流側から下流側に向かって順に並んだ第2の第1ノズル列から第2の第mノズル列までのm個の第2のノズル列を備え、
前記第2の第1ノズル列は、前記副走査方向に関して前記第1ノズル列と同じ位置に設けられ、
前記第2の第nノズル列は、前記副走査方向に関して前記第nノズル列と同じ位置に設けられ、
前記第2の第1印刷制御部は、前記第2の第1ノズル列の前記第2ノズルから前記第2のインクを吐出させて、前記記録媒体上に前記第2の第1ドット群を形成させ、
前記第2の第n印刷制御部は、前記副走査方向移動装置を制御して前記記録媒体を前記副走査方向の下流側に移動させ、前記移動の後に、第2の第nノズル列の前記第2ノズルから前記第2のインクを吐出させて、第2の第(n−1)ドット群の上に第2の第nドット群を形成させる、
請求項6〜8のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方(副走査方向Xの下流X2側)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ25に搭載された第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70(いずれも
図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0011】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、プリンタ本体10aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10aは、ガイドレール21と、ガイドレール21に係合したキャリッジ25とを備えている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール21は、キャリッジ25の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ25には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、ガイドレール21の右側に設けられたプーリ23aおよび左側に設けられたプーリ23bに巻き掛けられている。右側のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ24は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ25がガイドレール21に沿って主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ25が主走査方向Yに移動することによって、インクヘッド40〜70も主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ベルト22とプーリ23aとプーリ23bとキャリッジモータ24とが、キャリッジ25およびキャリッジ25に搭載されたインクヘッド40〜70を主走査方向Yに移動させる主走査方向移動装置20の一例である。
【0013】
キャリッジ25の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ31が設けられている。ピンチローラ31は、キャリッジ25より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ32が設けられている。グリットローラ32は、ピンチローラ31の下方に配置されている。グリットローラ32は、ピンチローラ31と対向する位置に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33(
図3参照)に連結されている。グリットローラ32は、フィードモータ33の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ33は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ33は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ32が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ31とグリットローラ32とフィードモータ33とが、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる副走査方向移動装置30の一例である。
【0014】
図2は、キャリッジ25の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)の構成を示す模式図である。
図2に示すように、キャリッジ25の下面には、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70が保持されている。キャリッジ25において、第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70は主走査方向Yに並んで配置されている。
【0015】
第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70の4つのインクヘッドは、それぞれ、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインクを吐出する。本実施形態にあっては、第1インクヘッド40は、シアンインクを吐出する。第2インクヘッド50は、マゼンタインクを吐出する。第3インクヘッド60は、イエローインクを吐出する。第4インクヘッド70は、ブラックインクを吐出する。ただし、インクヘッドの数は4個に限定されず、また、プロセスカラーインクの色調は何ら限定されない。
【0016】
図2に示すように、複数のインクヘッド40、50、60、70は、それぞれ、副走査方向Xに並んだ複数のノズルを有している。各インクヘッドの複数のノズルは、副走査方向Xに一列に並んでノズル列を構成している。より詳しくは、第1インクヘッド40は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル41を備え、複数のノズル41はノズル列42を構成している。第2インクヘッド50は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル51を備え、複数のノズル51はノズル列52を構成している。第3インクヘッド60は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル61を備え、複数のノズル61はノズル列62を構成している。第4インクヘッド70は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル71を備え、複数のノズル71はノズル列72を構成している。
図2において、インクヘッド40〜70には、それぞれ15個のノズルが図示されているが、実際にはさらに多数(例えば300個)のノズルが形成されている。ただし、ノズルの個数は何ら限定されるわけではない。
【0017】
複数のインクヘッド40〜70のノズル列42〜72は、それぞれ副走査方向Xに並んだ複数の部分ノズル列に分割されている。第1インクヘッド40について見ると、ノズル列42は、3つの部分ノズル列42a、42b、および42cに分割されている。以下、符号42aで示される部分ノズル列を第1ノズル列42a、符号42bで示される部分ノズル列を第2ノズル列42b、符号42cで示される部分ノズル列を第3ノズル列42c、と称することとすると、第1ノズル列42aは、ノズル41のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第2ノズル列42bは、ノズル41のうち第1ノズル列42aに属するノズル41の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第3ノズル列42cは最も副走査方向Xの下流X2側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第1ノズル列42a、第2ノズル列42b、および第3ノズル列42cのノズル41の数は同数(ここでは5個)である。そこで、第1ノズル列42a、第2ノズル列42b、および第3ノズル列42cの副走査方向Xについての長さは等しい。他のインクヘッド50〜70も、第1インクヘッド40と同様のノズル列構成となっている。具体的には、第2インクヘッド50においては、ノズル列52は、第1ノズル列52a、第2ノズル列52b、および第3ノズル列52cに分割されている。第3インクヘッド60においては、ノズル列62は、第1ノズル列62a、第2ノズル列62b、および第3ノズル列62cに分割されている。第4インクヘッド70においては、ノズル列72は、第1ノズル列72a、第2ノズル列72b、および第3ノズル列72cに分割されている。上記すべてのノズル列において、属するノズルの数は同数(5個)である。従って、その副走査方向Xに関する長さは同じである。また、第1インクヘッドの第1ノズル列42a、第2インクヘッドの第1ノズル列52a、第3インクヘッドの第1ノズル列62a、および第4インクヘッドの第1ノズル列72aは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。第2ノズル列および第3ノズル列についても同様である。
【0018】
第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70の内部には、圧電素子等を備えたアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータは、制御装置100と電気的に接続されている。アクチュエータは、制御装置100によって制御される。アクチュエータが駆動することによって、第1インクヘッド40の複数のノズル41、第2インクヘッド50の複数のノズル51、第3インクヘッド60の複数のノズル61、第4インクヘッド70の複数のノズル71から記録媒体5に向かってインクが吐出される。
【0019】
第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70は、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、例えばプリンタ本体10aの右端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0020】
なお、本実施形態では、各インクヘッド40〜70のノズル列42〜72は、3つの部分ノズル列に分割されたが、分割数は3個に限定されない。ノズル列の分割数は、4個以上であってもよいし、2個であってもよい。また、上記ノズル列の分割は制御上のものであって、機構上の差異があってのものではない。
【0021】
図1に示すように、プリンタ10は、ヒータ35を備えている。ヒータ35は、プラテン12の下方に設けられている。ヒータ35は、グリットローラ32より前方に配置されている。ヒータ35は、プラテン12を加熱する。プラテン12が加熱されることによって、プラテン12上に配置されている記録媒体5および記録媒体5に着弾したインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。ヒータ35は、制御装置100に電気的に接続されている。ヒータ35の加熱温度は、制御装置100によって制御される。
【0022】
図1に示すように、プリンタ本体10aの右端部には、操作パネル150が設けられている。操作パネル150には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル150の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。
図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図3に示すように、制御装置100は、フィードモータ33、キャリッジモータ24、ヒータ35、各インクヘッド40〜70とそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置100は、変換部101と、モード選択部102と、通常印刷制御部103と、高密度印刷制御部110と、データ設定部120と、データ入力部130とを備えている。
【0023】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ本体10aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0024】
変換部101は、画像データをインクドットのパターンに変換する、所謂スクリーン処理を行う部位である。インクジェットプリンタによる印刷画像は、各プロセスカラーインクのインクドットの集合体として構成されている。本実施形態に係るプリンタ10においては、画像はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色からなるインクドットのパターンに変換される。変換部101は、プリンタ本体10aに備えられていてもよいし、あるいは外部のコンピュータ等に備えられていてもよい。なお、以下の説明においては、変換部101で生成されるインクドットの集合体を、適宜、「インクドット全体」と称し、そのうち特定の色のインクのインクドットの集合体を、例えば「シアンインクのインクドット全体」等と称する。
【0025】
モード選択部102は、印刷方法が選択される部位である。本実施形態では、印刷モードは「通常印刷モード」と「高密度印刷モード」とに区別される。通常印刷モードでは、プリンタ10は、変換部101で生成されたインクドットのパターンをそのまま記録媒体5上に形成する。通常印刷モードは、公知のプリンタにおいて通常行われる印刷を実行するモードである。高密度印刷モードでは、プリンタ10は、変換部101で生成されたインクドットのパターンを一部重複させたインクドットのパターンを記録媒体5上に形成する。高密度印刷モードの詳細については後述する。なお、本実施形態に係るモード選択部102においては、印刷モードの選択は、操作パネル150や外部コンピュータの表示装置などに表示された操作画面を介して作業者が行うが、それに限られない。例えば、印刷モードは印刷データに予め組み込まれ、モード選択部102によって自動的に選択されるようになっていてもよい。
【0026】
通常印刷制御部103は、通常印刷モードにおける印刷動作を制御する部位である。通常印刷制御部103は、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70に接続され、それらを制御することで通常の印刷を行う。また、通常印刷制御部103は、ヒータ35に接続され、ヒータ35の温度を制御することで、印刷後のインクの乾燥を制御する。
【0027】
高密度印刷制御部110は、高密度印刷モードにおける印刷動作を制御する部位である。高密度印刷制御部110も、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、第4インクヘッド70、およびヒータ35に接続され、それらを制御することで高密度印刷を行う。詳しくは後述するが、高密度印刷モードでは、複数の印刷層が記録媒体5上に重ねて印刷される。高密度印刷制御部110は、第1印刷制御部110aと、第2印刷制御部110bと、第3印刷制御部110cとを備えている。
【0028】
第1印刷制御部110aは、高密度印刷モードにおいて、第1印刷層の印刷を制御する部位である。第1印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち最も下層に形成される印刷層である。第1印刷層を構成するインクドットは、インクドット全体の一部または全部によって構成されている。また、第1印刷層を構成するインクドットは、3つのノズル列のうち最も副走査方向Xの上流X1側に配置されている第1ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。即ち、第1印刷制御部110aは、第1インクヘッド40の第1ノズル列42aに属するノズル41からのシアンインクの吐出を制御する。また、第1印刷制御部110aは、第2インクヘッド50の第1ノズル列52aに属するノズル51からのマゼンタインクの吐出を制御する。同様に、第1印刷制御部110aは、第3インクヘッド60の第1ノズル列62aに属するノズル61からのイエローインクの吐出を制御する。また、第4インクヘッド70の第1ノズル列72aに属するノズル71からのブラックインクの吐出を制御する。第1印刷制御部110aは、上記インクの吐出制御に加えて、キャリッジモータ24の駆動を制御することによって、キャリッジ25の移動を制御する。上記制御の詳細については後述する。
【0029】
第2印刷制御部110bは、高密度印刷モードにおいて、第2印刷層の印刷を制御する部位である。第2印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち第1印刷層の直上に形成される印刷層である。第2印刷層を構成するインクドットもまた、インクドット全体の一部または全部である。また、第2印刷層を構成するインクドットは、第2ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。即ち、第2印刷制御部110bは、第1インクヘッド40の第2ノズル列42bに属するノズル41からのシアンインクの吐出を制御し、第2インクヘッド50の第2ノズル列52bに属するノズル51からのマゼンタインクの吐出を制御する。また、第3インクヘッド60の第2ノズル列62bに属するノズル61からのイエローインクの吐出を制御し、第4インクヘッド70の第2ノズル列72bに属するノズル71からのブラックインクの吐出を制御する。第2印刷制御部110bは、上記インクの吐出制御に加えて、キャリッジモータ24の駆動を制御することによって、キャリッジ25の移動を制御する。
【0030】
第3印刷制御部110cは、高密度印刷モードにおいて、第3印刷層の印刷を制御する部位である。第3印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち第2印刷層の直上に形成される印刷層である。本実施形態においては、第3印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち最も上層に形成される印刷層である。第3印刷層を構成するインクドットも、インクドット全体の一部または全部である。また、第3印刷層を構成するインクドットは、第3ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。即ち、第3印刷制御部110cは、第1インクヘッド40の第3ノズル列42cに属するノズル41からのシアンインクの吐出を制御し、第2インクヘッド50の第3ノズル列52cに属するノズル51からのマゼンタインクの吐出を制御する。また、第3インクヘッド60の第3ノズル列62cに属するノズル61からのイエローインクの吐出を制御し、第4インクヘッド70の第3ノズル列72cに属するノズル71からのブラックインクの吐出を制御する。第3印刷制御部110cは、上記インクの吐出制御に加えて、キャリッジモータ24の駆動を制御することによって、キャリッジ25の移動を制御する。
【0031】
なお、上記説明では、第1印刷制御部110a〜第3印刷制御部110bは、それぞれインクヘッド40〜70、およびキャリッジモータ24の動作を制御するとしたが、第1印刷制御部110a〜第3印刷制御部110bの指令を受けた1つまたは複数の制御部が制御してもよい。例えば、インクヘッドの吐出制御はノズル列ごとに、キャリッジモータの制御は1系統で一括制御してもよい。
【0032】
データ設定部120は、変換部101で生成されたインクドット全体のデータを受けて、各印刷制御部110a〜110cが形成させるインクドットを設定する部位である。データ設定部120は、第1データ設定部120a、第2データ設定部120b、および第3データ設定部120cを備えている。第1データ設定部120aは、インクドット全体のデータに基づいて、第1印刷制御部110aが形成させるインクドット、即ち第1印刷層に形成されるインクドットを設定する。第2データ設定部120bは、第2印刷制御部110bが形成させるインクドット、即ち第2印刷層に形成されるインクドットを設定する。第3データ設定部120cは、第3印刷制御部110cが形成させるインクドット、即ち第3印刷層に形成されるインクドットを設定する。データ設定部120によって各印刷層にインクドットが割り当てられる方法については後述する。
【0033】
データ入力部130は、データ設定部120が各印刷層に割り当てるインクドットの、インクドット全体に対する割合を入力する部位である。データ入力部130は、例えば、操作パネル150や、外部のコンピュータの表示装置などに操作画面を表示する。データ設定部120が各印刷層に割り当てるインクドットのインクドット全体に対する割合は、作業者によって、上記操作画面等を介して入力される。データ入力部130は、第1データ入力部130aと、第2データ入力部130bと、第3データ入力部130cとを備えている。第1データ設定部120aは、第1データ入力部130aに入力された割合と、第1印刷層に形成されるインクドットのインクドット全体に対する割合とが同じになるように、第1印刷層のインクドットを設定する。同様に、第2データ設定部120bは、第2データ入力部130bに入力された割合と、第2印刷層に形成されるインクドットのインクドット全体に対する割合とが同じになるように、第2印刷層のインクドットを設定する。第3データ設定部120cは、第3データ入力部130cに入力された割合と、第3印刷層に形成されるインクドットのインクドット全体に対する割合とが同じになるように、第3印刷層のインクドットを設定する。
【0034】
通常印刷モードによる印刷(通常印刷)は、以下のように実施される。通常印刷において、通常印刷制御部103は、キャリッジモータ24を駆動してキャリッジ25を主走査方向Yに移動させるとともに、アクチュエータを駆動して第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70からインクを吐出させ、記録媒体5上に各色のインクを着弾させる。また、通常印刷制御部103は、記録媒体5が順次前方F(副走査方向Xの下流X2側)に送り出されるように、フィードモータ33を制御する。フィードモータ33に送り出された記録媒体5上のインクは、順次ヒータ35によって加熱され乾燥される。通常印刷制御部103は、例えば、記録媒体5が1回前方Fに送り出されるまでに、キャリッジ25を主走査方向Yに1回または複数回移動させる。
【0035】
ところで、上記通常印刷においては、記録媒体5上における各インクドットの形成位置は、それぞれ異なっている。言い換えれば、各インクドットの形成位置には、1つのインクドットだけが形成され、その状態におけるインクドットの密度が通常印刷モードにおけるインクドットの密度である。画像データの解像度を上げる(画素を細かくする)ことによってインクドットの密度を上げることはできるが、その限界はプリンタ10が実現できる解像度の範囲内である。画像データの解像度を高く設定したときには、プリンタ10は、所謂マルチパス印刷などの方法によって、設定された解像度の印刷を実施する。しかしながら、印刷される画像や記録媒体の種類などによっては、プリンタ10の解像度よりも高密度にインクドットが配置された印刷が要望される場合があり得る。
【0036】
そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、高密度印刷モードを選択できるモード選択部102と、高密度印刷における印刷動作を制御する高密度印刷制御部110とを備え、画像データのインクドットの密度よりも高密度にインクドットを形成することができるように構成されている。高密度印刷モードにおいては、1つの領域に対する印刷が複数回に分けて実施される。本実施形態にあっては、3回に分けて実施される。そして、3回に分けて重ね印刷された結果出来上がる画像は、一部に重複するインクドットを含んでいる。言い換えれば、少なくとも一部のインクドットの形成位置には、2つ以上のインクドットが重ねて形成される。一部のインクドットの形成位置に2つ以上のインクドットを重ねて形成することにより、本実施形態に係るプリンタ10は、高密度の印刷を実現する。本実施形態のように一部のインクドットを重複させて高密度印刷を行う方法には、印刷解像度を上げることで高密度印刷を行う方法に比べ、印刷データの量を増加させないという利点がある。
【0037】
3回の重ね印刷による印刷層のうち最も下層に形成される第1印刷層に形成されるインクドット群を「第1ドット群」と称することとすると、第1ドット群は、インクドット全体のデータに基づいて、第1データ設定部120aによって設定される。第1印刷層の直上に形成される第2印刷層に形成されるインクドット群を「第2ドット群」と称するとすると、第2ドット群は、第2データ設定部120bによって設定される。3回の重ね印刷による印刷層のうち最も上層に形成される第3印刷層に形成されるインクドット群を「第3ドット群」と称するとすると、第3ドット群は、第3データ設定部120cによって設定される。高密度印刷制御部110の内部に構成されている第1印刷制御部110aは、第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70、およびキャリッジモータ24を制御して、記録媒体5上に第1印刷層を形成させる。第2印刷制御部110bは、第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70、およびキャリッジモータ24を制御して、第1印刷層の上に第2印刷層を形成させる。第3印刷制御部110cは、第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70、およびキャリッジモータ24を制御して、第2印刷層の上にさらに重ねて第3印刷層を形成させる。上記のようにインクの吐出を複数回に分けて行うことにより、1回のインク吐出量が適切な量に調整され、高密度印刷においても高品質の画像を印刷することができる。より詳しくは、インクを同一地点に重複させて吐出しても、下層のインクは適切な吐出量に設定されているため既に乾燥しており、インクの滲み等の問題が発生しにくい。
【0038】
本実施形態に係るプリンタ10にあっては、第1ドット群、第2ドット群、および第3ドット群のインクドットは、それぞれ第1ノズル列のノズル、第2ノズル列のノズル、第3ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。第1ノズル列は、複数のインクヘッド40〜70において最も副走査方向Xの上流X1側に設けられたノズル列である。第2ノズル列は、複数のインクヘッド40〜70において第1ノズル列の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられたノズル列である。第3ノズル列は、複数のインクヘッド40〜70において最も副走査方向Xの下流X2側に設けられたノズル列である。上記のように、本実施形態に係るプリンタ10は、副走査方向Xに関するノズル列の並び順と印刷層の印刷される順とが一致するように構成され、連続的に高密度印刷を実施することが可能となっている。
【0039】
以下では、本実施形態に係るプリンタ10が高密度印刷を実施するプロセスについて説明する。
図4は、モード選択部102およびデータ入力部130に係る操作画面の一例を示す図である。
図4に示されるように、本実施形態に係る操作画面は、印刷モードを選択可能なチェックボックスCBを備えている。また、各印刷層のインクドットの、インクドット全体に対する比率を入力可能な第1入力ボックスBa、第2入力ボックスBb、および第3入力ボックスBcを備えている。チェックボックスCBでは、いずれかのチェックボックスにチェックを入れることにより、通常印刷モードおよび高密度印刷モードのいずれかを選択可能である。高密度印刷モードが選択されると、第1入力ボックスBa〜第3入力ボックスBcに入力が可能となる。第1入力ボックスBa、第2入力ボックスBb、および第3入力ボックスBcは、それぞれ第1データ入力部130a、第2データ入力部130b、および第3データ入力部130cによって操作画面に表示された入力部である。第1入力ボックスBaは、第1ドット群のインクドット全体に対する比率が入力可能に構成されている。
図4に示された操作画面においては、上記第1ドット群のインクドット全体に対する比率は、「第1印刷率」と表示されている。同様に、第2入力ボックスBbは、第2ドット群のインクドット全体に対する比率が入力可能に構成されている。
図4に示された操作画面においては、上記第2ドット群のインクドット全体に対する比率は、「第2印刷率」と表示されている。第3入力ボックスBcは、第3ドット群のインクドット全体に対する比率が入力可能に構成されている。
図4に示された操作画面においては、上記第3ドット群のインクドット全体に対する比率は、「第3印刷率」と表示されている。
【0040】
上記第1印刷率、第2印刷率、および第3印刷率は、合計が100%を超えるように設定される。第1印刷率、第2印刷率、第3印刷率の合計が100%を超えない場合は、例えば、操作画面にはエラーが表示され、入力値が拒絶される。
【0041】
第1印刷率、第2印刷率、および第3印刷率が入力された後の、データ設定部120による第1ドット群、第2ドット群、および第3ドット群の設定手順は、例えば以下のようなものである。
図5は、データ設定部120による各ドット群の設定手順を表す模式図である。
図5は、
図4の各入力ボックスBa〜Bcに示されている入力値に対応している。具体的には、第1印刷率=40%、第2印刷率=40%、第3印刷率=40%(計120%)である。従って、第1ドット群Daは、インクドット全体D0に対して40%相当の数のインクドットから構成される。第1ドット群Daは、シアンインクのインクドット全体の40%、マゼンタインクのインクドット全体の40%、イエローインクのインクドット全体の40%、およびブラックインクのインクドット全体の40%から構成されている。第2ドット群Db、第3ドット群Dcについても同様である。
図5のステップS01に示されるように、本実施形態に係る第1データ設定部120aは、第1印刷率Pa(ここでは40%)が設定されたマスクを使ってインクドット全体D0から第1ドット群Daを抽出する。換言すれば、第1データ設定部120aに設定されたマスクの間引き率は60%である。第1データ設定部120aに設定されたマスクは、例えば、ランダムマスクである。そこで、第1データ設定部120aは、インクドット全体D0から40%のインクドットをランダムに抽出することによって第1ドット群Daを構成する。第1ドット群Daに抽出されなかった残りは60%である。次いで、ステップS02では、第2データ設定部120bによって第2ドット群Dbが設定される。第2データ設定部120bも、第1データ設定部120aと同じく、第2印刷率Pbが設定されたマスクによって第2ドット群Dbを抽出するように構成されている。
図4に示される例では、第2印刷率Pbも40%である。そこで、第2データ設定部120bは、第2ドット群Dbとして、第1ドット群Daに割り当てられなかった残り60%のインクドットのうち3分の2(=インクドット全体D0に対して40%)をランダムに抽出する。第1ドット群Daにも第2ドット群Dbにも割り当てられなかった残りは20%である。ステップS03では、第3データ設定部120cは、まず上記残り20%のインクドットを抽出する。しかしながら、第3印刷率は40%であり、第3ドット群Dcに割り当てられたインクドットはインクドット全体D0の40%であるから、ステップS03の処理では20%不足である。そこで、第3データ設定部120cは、ステップS04において、ランダムマスクを使用して第1ドット群Daと第2ドット群Dbの合計(80%)から4分の1(つまり、インクドット全体D0に対して20%)のインクドットを抽出する。上記20%が、ステップS03において不足していた20%分のインクドットに相当する。
【0042】
上記のように、第1ドット群Da、第2ドット群Db、第3ドット群Dcは、インクドット全体D0からランダムにインクドットが抽出された「薄い」インクドットである。従って、各ドット群が構成する画像は、印刷データとして記憶されている画像と、インクドットの密度を除いて同じ画像である。本実施形態に係るプリンタ10は、「薄い」画像を積み重ねて、最終的に高密度の画像を実現する。ただし、各ドット群へのインクドットの割り当て方法は、上記した方法に限られない。例えば、各データ設定部120a〜120cが備えるマスクはランダムマスクでなくともよく、例えば、何らかの統計的方法によるマスクであってもよい。
【0043】
上記のようにして各ドット群へのインクドットの割り当てがなされた後、記録媒体5に対して印刷が施される。以下では、
図4に示された場合に実施される印刷プロセスについて説明する。
図6Aは、高密度印刷中のある時点における記録媒体5上を示す模式図である。
図6Aの左端には、キャリッジ25を上方Uから見た平面図が示されている。キャリッジ25の右方には、記録媒体5が示されている。
図6Aにおいては、キャリッジ25の真下に位置する記録媒体5上の領域が、キャリッジ25の右に図示されている。例えば、
図6Aの時点において、第1ノズル列Naの真下に位置する記録媒体5上の領域は、領域A1である。第1ノズル列Naは、第1インクヘッド40の第1ノズル列42a、第2インクヘッド50の第1ノズル列52a、第3インクヘッド60の第1ノズル列62a、および第4インクヘッド70の第1ノズル列72a(いずれも
図2参照)から構成されている。
図6Aにおいて、領域A1上には、第1印刷層Laが形成されている。第1印刷層Laは、第1ノズル列Naから吐出されるインクのインクドット、即ち第1ドット群Daから形成されている。
図6Aの第1印刷層La上には、第1印刷層Laに係る第1印刷率Pa(ここではPa=40%)が示されている。これは、領域A1に第1ドット群Daのインクドットが形成され、第1印刷層Laをなしたことを意味している。また、領域A1には、この時点までの積算の印刷率(
図6Aでは、「total」と表記)が示されている。
【0044】
図6Bは、
図6Aに示された時点の次のパスにおける記録媒体5上を表す模式図である。
図6Aに示される時点と
図6Bに示される時点との間において、第2印刷制御部110bは、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を1回前方Fに送っている。そこで、領域A1は第2ノズル列Nbの真下(
図6Bでは右)に移動され、第1ノズル列Naの真下には、領域A1の次の領域A2が位置している。
図6Bの領域A1には、第1印刷層La(第1印刷率Pa=40%)と第2印刷層Lb(第2印刷率Pb=40%)がともに図示され、さらに積算の印刷率total=80%が図示されている。これは、
図6Bに示される時点において、領域A1に第1印刷層Laおよび第2印刷層Lbが重ねて形成され、この時点における領域A1の積算の印刷率が80%であることを意味している。第2印刷層Lbは、第2ドット群Dbによって形成された印刷層である。さらに、
図6Bの領域A2には、第1ノズル列Naのノズルによって、第1ドット群Daからなる第1印刷層Laが形成されている。
【0045】
図6Cは、
図6Bに示された時点のさらに次のパスにおける記録媒体5上を示す模式図である。
図6Bに示される時点と
図6Cに示される時点との間で、第3印刷制御部110cは、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を1回前方Fに送っている。そこで、領域A1は第3ノズル列Ncの真下に移動され、第1ノズル列Naの真下には、領域A2の次の領域A3が位置している。また、第2ノズル列Nbの真下には、領域A2が位置している。
図6Cの領域A1には、第1印刷層La(第1印刷率Pa=40%)、第2印刷層Lb(第2印刷率Pb=40%)、第3印刷層Lc(第3印刷率Pc=40%)がともに図示され、さらに積算の印刷率total=120%が図示されている。これは、
図6Cに示される時点において、領域A1に第1印刷層La、第2印刷層Lb、第3印刷層Lcが重ねて形成され、この時点における領域A1の積算の印刷率が120%であることを意味している。第3印刷層Lcは、第3ドット群Dcによって形成された印刷層である。さらに、
図6Cの領域A2には、第1ドット群Daからなる第1印刷層Laと、第2ドット群Dbからなる第2印刷層Lbとが重ねて形成されている。領域A2の積算の印刷率は、80%である。領域A3には、第1ノズル列Naのノズルによって、第1ドット群Daからなる第1印刷層Laが形成されている。
【0046】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10は、連続的に実施される3回の重ね印刷によって高密度印刷を行うように構成されている。そのために、本実施形態に係るインクヘッド40〜70は、それぞれ、全て同数(ここでは5個)のノズルからなる3つの部分ノズル列Na、Nb、およびNcを有している。また、本実施形態に係るデータ設定部120では、マスクに任意の印刷率(あるいは間引き率)を設定できるため、上記印刷率によってインクの乾燥状態を制御することができる。即ち、次の吐出までにインクが十分に乾燥するような印刷率を設定することにより、インクの重なりによる滲みを抑制し、高品質な画像を提供することができる。
【0047】
上記高密度印刷は、マルチパス方式によって実施されてもよい。例えば4パスで1つの画像を完成させるマルチパス印刷の場合には、4パスが上記シングルパス印刷の1回の走査に相当する。その場合、例えば
図6Aの時点において、キャリッジ25は4回主走査方向Yに走査される。上記4回の走査によって、領域A1には第1印刷層Laが形成される。以下のプロセスも同様である。
【0048】
なお、上記した実施形態では、操作画面は
図4のような仕様を備えていたが、操作画面はそれに限られない。例えば、設定操作はもっと単純化され、積算の印刷率だけが入力されるようになっていてもよい。その場合、各印刷層に割り当てられる印刷率は、データ設定部120が自動設定する。例えばそれは、等分であってもよいし、データ設定部120に記憶された所定の法則に則ったものであってもよい。
【0049】
例えば、各印刷率が自動設定される場合において好適な1つの実施形態は、以下のようなものである。作業者による入力操作によって積算の印刷率が120%に設定されたとするとき、上記好適な実施形態に係るデータ設定部120は、例えば、第1印刷率に70%、第2印刷率に25%、第3印刷率に25%を割り当てる。つまり、第2ドット群以降のドット群の印刷率を、第1ドット群の印刷率よりも低く設定する。比較的後の方で形成されるドット群は、既にインクドットが形成されている地点の上に重ねて形成されることが多いが、このように比較的後の方で形成されるドット群のインクドットの数を少なく設定することで、インクドットの重なりによって起こる問題(滲み等)を緩和することができる。
【0050】
また、各印刷率が自動設定の場合において好適な別の実施形態は、例えば以下のようなものである。前述の例と同じく、作業者による入力操作によって積算の印刷率が120%に設定されたとするとき、上記好適な別の実施形態に係るデータ設定部120は、例えば、第1印刷率に60%、第2印刷率に20%、第3印刷率に40%を割り当てる。つまり、第2ドット群の印刷率を第1ドット群の印刷率よりも低く設定するとともに、第3ドット群以降のドット群の印刷率を、第1ドット群の印刷率よりも低く、かつ第2ドット群の印刷率よりも高い値に設定する。第1ドット群のインクドットに重ねて吐出される第2ドット群のインクの量を抑えることによって当該時点における滲み等の問題を解決しておけば、第3ドット群以降のドット群の印刷率は比較的自由に設定できると考えられ、第2ドット群の印刷率よりも高い印刷率を設定しても差し支えない。
【0051】
あるいは、各ドット群の印刷率は、交互に高、低を繰り返すように設定されてもよい。そのように各ドット群の印刷率を設定することにより、2印刷層単位で確実にインクを乾燥させながら高密度印刷を進行させることができる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態は、操作画面の操作によって、作業者がノズル列の分割数を指定できる実施形態である。つまり第2実施形態に係るプリンタ10は、固定されたノズル列を持たず、作業者は、都度、ノズル列の数と、それぞれのノズル列に係る印刷率を設定する。第2実施形態では、1個のインクヘッドにつき最大5個のノズル列を設定可能な実施形態について説明する。ただし、上記最大5個というのは単なる例示であって、1個のインクヘッドにつき設定可能なノズル列の数は5個に限られない。なお、第2実施形態に係るプリンタは、上記構成を除いて、第1実施形態に係るプリンタ10と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。第3実施形態についても同様である。
【0053】
図7は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。
図7に示されるように、本実施形態に係る高密度印刷制御部110は、第1印刷制御部110a〜第3印刷制御部110cに加えて、第4印刷制御部110dと第5印刷制御部110eを備えている。また、本実施形態に係るデータ設定部120は、第1データ設定部120a〜第3データ設定部120cに加えて、第4データ設定部120dと第5データ設定部120eを備えている。本実施形態に係るデータ入力部130は、第1データ入力部130a〜第3データ入力部130cに加えて、第4データ入力部130dと第5データ入力部130eを備えている。
【0054】
図8は、本実施形態に係る操作画面の一例を示す模式図である。
図8に示されるように、本実施形態に係る操作画面は、第1入力ボックスBa〜第5入力ボックスBeまでの5個の入力ボックスを備えている。第1実施形態と同様に、本実施形態に係る操作画面においても、入力ボックスBa〜Beには、作業者によって印刷率が入力されるようになっている。第1入力ボックスBa〜第5入力ボックスBeは、第1データ入力部130a〜第5データ入力部130eが操作画面上に表示されたものである。ただし、本実施形態にあっては、第1入力ボックスBa〜第5入力ボックスBeの全ての入力ボックスに印刷率が入力される必要はなく、印刷率が入力された入力ボックスに対応するデータ入力部だけが有効に動作する。例えば、
図8に示されるように、第1入力ボックスBa、第2入力ボックスBb、第3入力ボックスBc、第4入力ボックスBdに印刷率が入力されている場合には、第1データ入力部130a、第2データ入力部130b、第3データ入力部130c、第4データ入力部130dが有効になっている。各データ入力部、各データ設定部、および各印刷制御部の関係は、第1実施形態と同じである。例えば、第4データ入力部130dに第4印刷率が入力されると、第4データ設定部120dは第4印刷率に基づいて第4ドット群を設定する。第4ドット群に属するインクドットは、第4印刷制御部110dによって、第4印刷層を構成するインクドットとして第3印刷層の上に形成される。
図8に示す例では、第5データ入力部130eは、第5入力ボックスBeに印刷率の入力がされていないため、動作しない。
【0055】
図9は、本実施形態に係るキャリッジ25の下面の構成を示す図である。本実施形態に係るキャリッジ25の下面の構成は、第1実施形態と同じである。つまり、インクヘッドは第1インクヘッド40〜第4インクヘッド70の4つであり、インクヘッド40〜70が有するノズルの数は各15個である。
図9は、
図8に示された4層重ね印刷に対応したノズル列の分割を示している。即ち、
図9に示されるように、インクヘッド40のノズル列42は、第1ノズル列42a、第2ノズル列42b、第3ノズル列42c、第4ノズル列42dの4つの部分ノズル列、および不使用ノズル列42eに分割されている。詳しくは、第1ノズル列42aは、ノズル列42において最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた3個のノズル41から構成されている。第2ノズル列42bは、第1ノズル列42aに次いで副走査方向Xの上流X1側に設けられた3個のノズル41から構成されている。第3ノズル列42cは、第2ノズル列42bに次いで副走査方向Xの上流X1側に設けられた3個のノズル41から構成されている。第4ノズル列42dは、第3ノズル列42cに次いで副走査方向Xの上流X1側に設けられた3個のノズル41から構成されている。不使用ノズル列42eは、最も副走査方向Xの下流X2側に設けられた3個のノズル41から構成されている。第1ノズル列42a〜第4ノズル列42dに属するノズル41は、第1実施形態と同様に、それぞれ第1印刷層、第2印刷層、第3印刷層、第4印刷層を構成するインクを吐出する。不使用ノズル列42eは、インクを吐出しないノズル41からなる部分ノズル列である。上記構成は、インクヘッド50、60、70においても同様である。
【0056】
図9では、1つのインクヘッドが15個のノズルを備えるとしているため、全ノズルに対するノズルの使用率は80%である(全ノズル数15に対し、使用ノズル数12=3ノズル×4部分ノズル列)。しかし、実際のインクヘッドは、インクヘッド1つにつき、もっと多数のノズルを備えている。例えば、インクヘッド1つのノズル数が仮に310個であるとした場合、第1ノズル列42a〜第4ノズル列42dのノズル41の数は、それぞれ77個であり、不使用ノズル列42eのノズル41の数は2個である。その場合のノズル41の使用率は、約99.4%である。つまり、実際のインクヘッドでは、ノズル41の使用率は80%よりももっと高い。なお、本実施形態では、不使用ノズル列42eは最も副走査方向Xの下流X2側に設定されたが、インクヘッド40における不使用ノズル列42eの位置はそれに限定されない。例えば、不使用ノズル列42eは、インクヘッド40において最も副走査方向Xの上流X1側に設定されてもよい。また、不使用ノズルは1か所に固まって配置されている必要はなく、使用するノズル列の間に分散配置されていてもよい。
【0057】
第2実施形態に係るプリンタ10においても、高密度印刷のプロセスは、第1実施形態と同様である。
図8の条件の場合、第1ノズル列Naのノズルから吐出されるインクによって第1印刷層(第1印刷率=40%)が形成され、第1印刷層の上に第2ノズル列Nbのノズルから吐出されるインクによって第2印刷層(第2印刷率=40%)が形成され、さらに、第3ノズル列Ncのノズルから吐出されるインクによって第2印刷層の上に第3印刷層(第3印刷率=40%)が形成され、第3印刷層の上に第4ノズル列Ndのノズルから吐出されるインクによって第4印刷層(第4印刷率=40%)が形成される。その間、記録媒体5は、副走査方向移動装置30によって間欠的に副走査方向Xの下流X2側に移動される。積算の印刷率は160%である。
【0058】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、高密度印刷におけるインクの乾燥に関して、より自由度の高い制御が可能である。従って所望の印刷品質を達成するための調整がより容易であり、より高い印刷品質を実現することができる。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態は、複数のインクヘッドそれぞれについて、独立した印刷率を設定できる実施形態である。本実施形態に係るプリンタ10は、1つ1つのインクヘッドについて、他のインクヘッドの印刷率とは独立した第1印刷率〜第m印刷率を設定できる。
【0060】
図10は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。本実施形態に係るプリンタ10が実行する高密度印刷は、第1実施形態と同様に3層重ね印刷である。そこで、本実施形態に係る高密度印刷制御部110は、第1ヘッド用印刷制御部111と、第2ヘッド用印刷制御部112と、第3ヘッド用印刷制御部113と、第4ヘッド用印刷制御部114とを備え、第1〜第4ヘッド用印刷制御部111〜114は、それぞれ第1印刷制御部、第2印刷制御部、第3印刷制御部を備えている。詳しくは、第1ヘッド用印刷制御部111は、第1印刷制御部111aと、第2印刷制御部111bと、第3印刷制御部111cとを備えている。第2ヘッド用印刷制御部112は、第1印刷制御部112aと、第2印刷制御部112bと、第3印刷制御部112cとを備えている。第3ヘッド用印刷制御部113は、第1印刷制御部113aと、第2印刷制御部113bと、第3印刷制御部113cとを備えている。第4ヘッド用印刷制御部114は、第1印刷制御部114aと、第2印刷制御部114bと、第3印刷制御部114cとを備えている。第1ヘッド用印刷制御部111は、高密度印刷モード時の第1インクヘッド40の動作を制御する部位である。同様に、第2ヘッド用印刷制御部112は、高密度印刷モード時の第2インクヘッド50の動作を制御する部位である。第3ヘッド用印刷制御部113は、高密度印刷モード時の第3インクヘッド60の動作を制御する部位である。第4ヘッド用印刷制御部114は、高密度印刷モード時の第4インクヘッド70の動作を制御する部位である。第1〜第4ヘッド用印刷制御部111〜114が備える第1印刷制御部、第2印刷制御部、第3印刷制御部は、それぞれの色のインクの第1印刷層、第2印刷層、第3印刷層の形成動作を制御する部位である。
【0061】
図10に示されるように、本実施形態に係るデータ設定部120は、第1ヘッド用データ設定部121と、第2ヘッド用データ設定部122と、第3ヘッド用データ設定部123と、第4ヘッド用データ設定部124とを備えている。第1ヘッド用データ設定部121は、第1データ設定部121a、第2データ設定部121b、および第3データ設定部121cを備えている。第2ヘッド用データ設定部122は、第1データ設定部122a、第2データ設定部122b、および第3データ設定部122cを備えている。第3ヘッド用データ設定部123は、第1データ設定部123a、第2データ設定部123b、および第3データ設定部123cを備えている。第4ヘッド用データ設定部124は、第1データ設定部124a、第2データ設定部124b、および第3データ設定部124cを備えている。第1ヘッド用データ設定部121の第1データ設定部121aは、第1インクヘッド40から吐出されるインク(ここではシアンインク)に関して第1ドット群を設定する部位である。第1ヘッド用データ設定部121の第2データ設定部121bは、第1インクヘッド40から吐出されるインクに関して第2ドット群を設定する部位である。第1ヘッド用データ設定部121の第3データ設定部121cは、第1インクヘッド40から吐出されるインクに関して第3ドット群を設定する部位である。第2ヘッド用データ設定部122〜第4ヘッド用データ設定部124の第1〜第3データ設定部についても同様である。
【0062】
本実施形態に係るデータ入力部130についても同様であって、データ入力部130は、第1ヘッド用データ入力部131、第2ヘッド用データ入力部132、第3ヘッド用データ入力部133、第4ヘッド用データ入力部134を備えている。第1ヘッド用データ入力部131は、さらに第1データ入力部131a、第2データ入力部131b、および第3データ入力部131cを備える。第2ヘッド用データ入力部132は、さらに第1データ入力部132a、第2データ入力部132b、および第3データ入力部132cを備える。第3ヘッド用データ入力部133は、さらに第1データ入力部133a、第2データ入力部133b、および第3データ入力部133cを備える。第4ヘッド用データ入力部134は、さらに第1データ入力部134a、第2データ入力部134b、および第3データ入力部134cを備える。
【0063】
図11は、本実施形態に係る操作画面の一例を示す図である。
図11に示される操作画面は、条件テーブルTbを備えている。条件テーブルTbは、第1ヘッド用データ入力部131の第1〜第3データ入力部131a〜131c、第2ヘッド用データ入力部132の第1〜第3データ入力部132a〜132c、第3ヘッド用データ入力部133の第1〜第3データ入力部133a〜133c、第4ヘッド用データ入力部134の第1〜第3データ入力部134a〜134cの計12個のデータ入力部に対応する12個の入力ボックスBxを有している。12個の入力ボックスBxには、それぞれ印刷率が入力される。
図11に示す例では、第1インクヘッド40に関する入力ボックスBxは、条件テーブルTbの左端に縦に並んでいる。第1インクヘッド40に関する入力ボックスBxの右隣には、第2インクヘッド50に関する入力ボックスBxが並んでいる。さらにその右隣には、第3インクヘッド60に関する入力ボックスBxが並び、条件テーブルTbの右端には第4インクヘッド70に関する入力ボックスBxが並んでいる。
【0064】
また、条件テーブルTbの一番上端には、第1印刷率(第1ドット群)に関する入力ボックスBxが横に並んでいる。第1印刷率に関する入力ボックスBxの直下には、第2印刷率に関する入力ボックスBxが並んでいる。さらに、第2印刷率に関する入力ボックスBxの直下には、第3印刷率に関する入力ボックスBxが並んでいる。
【0065】
作業者が条件テーブルTbに印刷率を入力する際には、条件テーブルTbをマトリクスとして読みながら入力を行う。例えば、条件テーブルTbの左から3番目、上から2番目の入力ボックスBxは、第3インクヘッド60(ここではイエローインクを吐出する。)の第2印刷率が入力される入力ボックスBxであり、当該入力ボックスBxには、第3ヘッド用データ入力部133の第2データ入力部133bが対応する。
【0066】
図11に示されるように、条件テーブルTbの12個の入力ボックスBxには、それぞれ異なる印刷率が入力可能である。また、積算の印刷率がインクヘッドごとに異なってもよいように構成されている。
図11に示される例では、第1インクヘッド40(ここではシアンインクを吐出)に関する積算の印刷率は、120%である。第2インクヘッド(マゼンタインクを吐出)に関する積算の印刷率は、130%である。第3インクヘッド(イエローインクを吐出)に関する積算の印刷率は、140%である。第4インクヘッド(ブラックインクを吐出)に関する積算の印刷率は、150%である。
【0067】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、インクの色ごとに独立に印刷率が設定でき、それだけインクの乾燥状態の制御に関する自由度が向上している。例えば、他のインクに比べ乾燥しにくいインクが使用されているときなどに、本実施形態に係るプリンタ10は有効である。また、本実施形態に係るプリンタ10によれば、画像データの色バランスとは異なる色バランスを備えた画像を印刷することができる。例えば、記録媒体5が有色の紙であるときなどには、実際に印刷される画像と画像データとの色味が違うというような不具合が起こり得る。そのような場合、本実施形態に係るプリンタ10では、印刷結果を考慮した色味の調整が可能である。
【0068】
本実施形態は、第1実施形態に上記仕様が付加された実施形態であるが、例えば、第2実施形態に付加されたものであってもよい。その場合、さらに制御の自由度が向上する。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0070】
例えば、上記した実施形態では、制御装置100はデータ入力部130を備えていたが、データ入力部130を備えない実施形態であってもよい。その場合、各ドット群の印刷率は、例えば、固定であったり、自動計算であったり、画像データ中に予め含まれていたりする。
【0071】
また、上記した実施形態では、ノズル列は副走査方向Xに分割された複数の部分ノズル列に分割され、分割された複数の部分ノズル列のノズルから吐出されたインクが各ドット群のインクドットを形成していた。しかし、インクの吐出形態は、上記に限定されない。例えば、各ノズル列は部分ノズル列に分割されず、インクの吐出だけが複数回に分割されてもよい。
【0072】
上記した実施形態では、各ドット群は相補的に構成され、最終的に全てのインクドットが少なくとも1回形成された。例えば、「第2ドット群」は「第1ドット群」に抽出されなかったインクドットから優先的に抽出された。しかし、すべてのインクドットが最低1回形成されなくてもよい。例えば、「第1ドット群」をインクドット全体から印刷率90%でランダム抽出し、「第2ドット群」もインクドット全体から印刷率90%でランダム抽出した場合、確率的には1回も形成されないインクドットが1%残るが、本発明はこのような形態で実施されてもよい。
【0073】
上記した実施形態では、複数のインクは、それぞれ別のインクヘッドから吐出されていたが、それに限られない。1つのインクヘッドは複数のノズル列を備え、1つのインクヘッドから複数のインクが吐出されてもよい。本発明における「インクヘッド」は、そのような場合も含むものである。
【0074】
上記した実施形態では、記録媒体5上のインクを乾燥させる乾燥装置は、プラテン12の下に設けられたヒータ35であったが、乾燥装置はそれに限定されない。乾燥装置は、例えば、赤外線照射装置やハロゲンヒータなどの遠隔加熱方式であってもよい。また、ヒータであってもプラテン12を加熱する方式に限られない。さらに、乾燥装置は、プレヒータやアフターヒータをさらに備えていてもよい。
【0075】
上記した実施形態では、インクを吐出させる方式は、いわゆるピエゾ駆動式であった。しかしながら、本発明に係るプリンタのインク吐出方式は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式であってもよい。インク吐出方式は、限定されない。
【0076】
上記した実施形態では、キャリッジ25が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ25と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ25が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ25および記録媒体5のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【0077】
さらに、ここに開示される技術は様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。上記実施形態で示したロール状の記録媒体5を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのインクジェットプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタ10は独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタ10は、他の装置に内蔵されていてもよい。