特許第6462786号(P6462786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許64627862,3,3,3−テトラフルオロプロペンの生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462786
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/38 20060101AFI20190121BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C07C17/38
   C07C21/18
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-137884(P2017-137884)
(22)【出願日】2017年7月14日
(62)【分割の表示】特願2014-559934(P2014-559934)の分割
【原出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2018-24638(P2018-24638A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】61/604,629
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】ベクテセヴィック,セルマ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・エス
(72)【発明者】
【氏名】コプカリ,ハルク
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ユオン
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227675(JP,A)
【文献】 特開2009−298781(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/056441(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/111067(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/110889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/38
C07C 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む分離方法:
a)相分離器に組成物を提供し、これに関し、前記組成物は、
i)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、
ii)HF、
iii)トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)からなる群より選択される1以上の有機物、および
iv)CCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClからなる群より選択される1以上の二量体、
を含む;
b)前記組成物を、前記相分離器において上部層と底部層に分離、これに関し、前記上部層は、前記組成物からのすべてのHFおよび1233xfで構成され、前記底部層は、前記組成物のすべての前記1以上の有機物および前記1以上の二量体で構成される
c)前記1以上の二量体を前記1以上の有機物から分離し;
d)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を生産するために前記1以上の有機物を反応器に再循環させる。
【請求項2】
前記分離工程c)が前記底部層をパージシステムに提供し、ここで、前記1以上の二量体を前記1以上の有機物から分離することを含む、請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
以下を含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の調製方法:
a)組成物を相分離器に提供し、これに関し、
前記組成物は、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)と、HFと、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)からなる群より選択される1以上の有機物と、CCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClの群から選択される1以上の二量体とを含み、
前記組成物は、反応器および再循環塔を含む反応器システムから得られる;
b)前記相分離器中の前記組成物を、前記相分離器において上部層と底部層に分離し、これに関し、前記上部層は、前記組成物からのすべてのHFおよび1233xfで構成され、前記底部層は、該組成物のすべての前記1以上の有機物および前記1以上の二量体で構成される;
c)前記1以上の二量体を前記1以上の有機物から分離し;そして
d)前記分離工程c)から得られる前記1以上の有機物を反応器に戻して再循環させる。
【請求項4】
前記分離工程c)が前記底部層をパージシステムに提供し、ここで、前記1以上の二量体を前記1以上の有機物から分離することを含む、請求項に記載の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2012年2月29日提出の米国仮特許出願第61/604629号に対する優先権を主張するものである。該仮特許出願の内容全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0002】
[0002]本発明は、フッ素化有機化合物の調製プロセス、より詳細にはフッ素化オレフィンの調製プロセス、さらにより詳細には2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の生産プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]現在、テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を含む)など特定のヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、有効な冷媒、伝熱媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、ガス状誘電体、滅菌剤キャリヤー、重合媒体、微粒子除去流体、キャリヤー流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤および動力循環作動流体であることが知られている。ほとんどのクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)とは異なり、ほとんどのHFOはオゾン層に脅威を及ぼさない。HFO−1234yfは、毒性が低い低地球温暖化化合物であることも示されており、したがって、益々厳しくなってきている可動式空調装置の冷媒に関する要件を満たすことができる。したがって、HFO−1234yfを含有する組成物は、上記用途の多くで用いるために開発された材料の中でも優位に立つものである。
【0004】
[0004]いくつかのHFOの調製方法が公知である。例えば、米国特許公法第4900874号(Ihara et al)には、水素ガスをフッ素化アルコールと接触させることによるフッ素含有オレフィンの作製方法が記載されている。これは比較的収率が高いプロセスと思われるが、商業規模において高温で水素ガスを取り扱うことは潜在的に危険である。また、水素のオンサイトプラントの建設など、水素ガスの商業的生産コストは、経済的に高価である。
【0005】
[0005]米国特許公報第2931840号(Marquis)には、塩化メチルおよびテトラフルオロエチレンまたはクロロジフルオロメタンの熱分解によるフッ素含有オレフィンの作製方法が記載されている。このプロセスは比較的収率が低いプロセスであり、非常に大きな割合の有機出発材料が、不要な、および/または重要でない副生成物、例えば、該プロセスで用いられる触媒を失活させる傾向がある相当量のカーボンブラックなどに転化する。
【0006】
[0006]トリフルオロアセチルアセトンおよび四フッ化硫黄からのHFO−1234yfの調製が記載されている(Banks,et al.,Journal of Fluorine Chemistry,Vol.82,Iss.2,p.171−174(1997)参照)。また、米国特許公報第5162594号(Krespan)には、液相でテトラフルオロエチレンを他のフッ素化エチレンと反応させてポリフルオロオレフィン生成物を生じさせるプロセスが開示されている。
【0007】
[0007]フッ素化オレフィン全般および詳細にはフッ素化プロペンを生産するための上記プロセスおよび他のプロセスにもかかわらず、出願人らは、ヒドロフルオロオレフィン全般および詳細にはヒドロフルオロプロペン、例えばHFO−1234yfなどを生産するためのより経済的に効率の良い手段が、依然として必要とされていることを理解するようになった。本発明は、とりわけこの必要性を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公法第4900874号
【特許文献2】米国特許公報第2931840号
【特許文献3】米国特許公報第5162594号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Fluorine Chemistry,Vol.82,Iss.2,p.171−174(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0008]本発明は、部分的に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)などのHFOの生産に用いられる反応効率を改善するための1以上のプロセス段階に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0009]一観点において、本発明は、式I、IIおよび/またはIIIの少なくとも1つの化合物を包含する出発組成物を提供することによる2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの調製プロセスに関する
CX=CCl−CHX (I)
CX−CCl=CH (II)
CX−CHCl−CHX (III)
[式中、Xは、少なくとも1つのXがフッ素ではないという条件で、F、Cl、BrおよびIから独立して選択される]。そのような出発組成物をフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、HCl、未反応HF、所望による未反応出発化合物(1以上)および1以上の副生成物を包含する最終組成物を生産する。副生成物としては、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、ならびにCCl、CCl、CCl、CCl、CClおよび/またはCClなどの二量体(1以上)の1つまたは組み合わせを挙げることができる。特定の観点において、化合物の少なくとも1つは、接触段階に再循環させることができる。
【0012】
[0010]その後、この最終組成物を処理して、望ましい生成物および再循環可能なものを組成物の残りのものから分離する。一観点において、該組成物を再循環塔または蒸留塔に供給することにより、1233xfおよびHClを最初に分離する。前記塔から、より軽質の成分、例えば、1233xf、244bb(存在する場合)、245cb(存在する場合)、HCl、および未反応HFの一部などを第1の流れまたは上部流に単離し、残りの成分、例えば、未反応HF、所望による未反応出発化合物、1以上の副生成物、および残留1233xfなどを第2の流れまたは底部流に回収する。本明細書中に提供する方法などの標準的蒸留法を用いて、上部流から1233xfを精製する。その後、これを反応の第2段階(以下で論じる)に進めて、244bb、および最終的に1234yfを生産する。
【0013】
[0011]その後、再循環塔または蒸留塔の底部流をさらに処理して、第1の反応段階からの再循環可能な化合物を単離する。例えば、未反応HFを相分離により実質的に分離する
。より具体的には、再循環塔からの第2の流れまたは底部流を相分離器に提供し、ここで未反応HFを第1の層中に分離する。特定の態様において、この第1の層は、残留部分として、特定の有機物、例えば、限定されるものではないが、1233xf、1232xfおよび243も包含する。残りの有機物(例えば、所望による未反応出発化合物、残留1233xf、ならびに1232xfおよび/または243を包含することができる1以上の副生成物)を第2の層中に分離する。その後、HFに富む第1の層を抽出し、所望により精製し、再循環させる。第2の層も同様に抽出することができ、未反応出発材料(存在する場合)ならびに再循環可能な生成物および/または副生成物を、再循環させるために精製することができる。
【0014】
[0012]上記のことの他の態様において、反応の最終組成物は、少なくとも2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、HCl、未反応HF、所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、ならびに1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される第1の副生成物、ならびにジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される第2の副生成物、ならびにCCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される第3の副生成物のそれぞれを包含する。
【0015】
[0013]その後、最終組成物を再循環塔または蒸留塔に供給し、ここで、より軽質の成分、例えば、1233xf、第1の副生成物(1以上)、HCl、および未反応HFの一部などを、該塔から第1の流れまたは上部流に単離する。残りの成分、例えば、未反応HF、所望による未反応出発化合物、残留1233xf、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、第2の副生成物(1以上)および第3の副生成物(1以上)などを、第2の流れまたは底部流に回収する。
【0016】
[0014]本明細書中に記載する方法などの標準的方法を用いて、上部流から1233xfを精製し、これを反応の第2工程に進めて244bbを生産する。
[0015]その後、底部流中の化合物をさらに分離して、第1の反応段階からの再循環可能な化合物を単離することができる。例えば、未反応HFを相分離により分離する。より具体的には、再循環塔からの第2の流れを相分離器に提供し、ここで未反応HFの大部分を第1の層中に分離する。特定の態様において、この第1の層は、残留部分として、特定の有機物、例えば、限定されるものではないが、1233xf、1232xfおよび243も包含する。第1の層に提供されない残りの有機物(例えば、所望による未反応出発化合物、残留量の1233xf、1231異性体、1232xf、ならびに第2および第3の副生成物(1以上))および未反応HFのほんの一部を、第2の層中に分離する。その後、HFに富む第1の層を抽出し、所望により精製し、再循環させる。第2の層に関しては、所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、第2の副生成物(1以上)を、ハイボイラーパージシステムにより第3の副生成物から分離する。その後、所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、残留量の1233xfおよび第2の副生成物(1以上)を反応器に再循環させることができる。
【0017】
[0016]出願人らは、第1の再循環塔の底部流中の成分(例えば、HF、未反応出発化合物および特定の副生成物)の分離により、より容易に反応体を反応器に戻して再循環させ
ることが可能になることを発見した。そのような再循環材料を精製し、触媒寿命に悪影響を及ぼすか、さもなければ反応器を劣化させる望ましくない副生成物を除去することにより、該プロセスの経済性も改善する。このために、本発明のプロセスは、再循環の結果として触媒の失活を減少させ、反応器の腐食を最低限に抑える。本発明のさらなる態様および利点は、本明細書中に提供する開示内容に基づき、当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0017]図1は、1233xf生成物流から1233xfおよび再循環可能な化合物を除去するプロセスの一態様の概略図を提供する。
図2】[0018]図2は、ハイボイラーパージシステムの概略図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0019]一態様によれば、本発明は、式I、IIおよび/またはIIIのいずれか1つまたは組み合わせに従った出発材料を用いて2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを作製するためのの製造プロセスに関する:
CX=CCl−CHX (式I)
CX−CCl=CH (式II)
CX−CHCl−CHX (式III)
[式中、Xは、少なくとも1つのXがフッ素ではないという条件で、F、Cl、BrおよびIから独立して選択される]。特定の態様において、式I、IIおよび/またはIIIの化合物(1以上)は、Xの大部分を塩素として、またはすべてのXを塩素として、少なくとも1つの塩素を含有する。特定の態様において、式Iの化合物(1以上)として1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)が挙げられる。特定の態様において、式IIの化合物(1以上)として2,3,3,3−テトラクロロプロペン(1230xf)が挙げられる。他の態様において、式IIIの化合物(1以上)として1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)が挙げられる。
【0020】
[0020]該方法は一般に、少なくとも3つの反応段階を包含する。第1の段階において、式I、IIおよび/またはIIIの化合物(例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、2,3,3,3−テトラクロロプロペン、および/または1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)を包含する出発組成物を、第1の蒸気相反応器(フッ素化反応器)において無水HFと反応させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)とHClの混合物を生産する。特定の態様において、反応は、蒸気相触媒、例えば、限定されるものではないが、フッ素化酸化クロムの存在下の蒸気相で行う。触媒の状態に応じて、使用前に触媒を無水フッ化水素HF(フッ化水素ガス)で活性化しなければならない(またはしなくてもよい)場合がある。
【0021】
[0021]フッ素化酸化クロムを蒸気相触媒として開示するが、本発明はこの態様に限定されない。当分野で公知の任意のフッ素化触媒を、このプロセスに用いることができる。適した触媒としては、限定されるものではないが、クロム、アルミニウム、コバルト、マンガン、ニッケルおよび鉄の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、それらの無機塩、ならびにそれらの混合物が挙げられ、それらの任意の1つは、所望によりフッ素化されていてもよい。
【0022】
[0022]本発明に適した触媒の組み合わせとしては、非排他的に、Cr、FeCl/C、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlFおよびそれらの混合物が挙げられる。酸化クロム/酸化アルミニウム触媒は米国特許公報第5155082号に記載されており、該特許を本明細書中
で参考として援用する。結晶質酸化クロムまたは非晶質酸化クロムなどの酸化クロム(III)が好ましく、非晶質酸化クロムがもっとも好ましい。酸化クロム(Cr)は、多種多様な粒子サイズで購入することができる市販の材料である。少なくとも98%の純度を有するフッ素化触媒が好ましい。フッ素化触媒は、過剰に、少なくとも反応を推進するのに足る量で、存在する。
【0023】
[0023]この反応の第1段階は、蒸気相フッ素化反応に適した任意の反応器で行うことができる。特定の態様において、反応器は、フッ化水素および触媒の腐食作用に耐性を示す材料、例えば、ハステロイ(Hastalloy)、ニッケル、インコロイ、インコネル、モネルお
よびフルオロポリマーのライニングから構築される。望ましい場合、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを、操作中の反応器に利用してもよい。
【0024】
[0024]式Iの化合物が1230xaである場合、反応の段階1におけるHFと1230xaのモル比は、1:1〜50:1、約10:1〜約50:1、または約10:1〜約20:1である。HFと1230xaの反応は、約200℃〜約600℃、特定の態様では約200℃〜約400℃、または約200℃〜約300℃の温度で実施する。反応圧力は、約0psig〜約500psig、特定の態様では約20psig〜約200psig、または約50〜約100psigである。
【0025】
[0025]同様に、式IIの化合物が1230xfである場合、反応の段階1におけるHFと1230xfのモル比は、1:1〜50:1、約10:1〜約50:1、または約10:1〜約20:1である。HFと1230xfの反応は、約200℃〜約600℃、特定の態様では約200℃〜約400℃、または約200℃〜約300℃の温度で実施する。反応圧力は、約0psig〜約500psig、特定の態様では約20psig〜約200psig、または約50〜約100psigである。
【0026】
[0026]同様に、式IIIの化合物が240dbである場合、反応の段階1におけるHFと240dbのモル比は、1:1〜50:1、約10:1〜約50:1、または約10:1〜約20:1である。HFと240dbの反応は、約200℃〜約600℃、特定の態様では約200℃〜約400℃、または約200℃〜約300℃の温度で実施する。反応圧力は、約0psig〜約500psig、特定の態様では約20psig〜約200psig、または約50〜約100psigである。
【0027】
[0027]フッ素化反応は、少なくとも1%以上、5%以上、10%以上、または約20%以上のシングルパスまたはマルチパス転化率が実現するように実施することができる。本発明の特定の好ましい態様では、出発試薬をシングルパスで1233xfに転化する。これに関し、反応条件は、75%を超えるか、85%を超えるか、95%を超えるか、または99%を超える転化量を達成するものである。このために、得られる流出物は、少量または微量の未反応出発材料を包含するか、そのような化合物を実質的に含まないことができる。
【0028】
[0028]多段反応器配列に存在することができる任意の中間体流出物を含め、フッ素化反応段階からの流出物を処理して、望ましい程度の分離および/または他の処理を実行する。例えば、反応器流出物が1233xfを包含する態様において、流出物は一般に、HCl、未反応HF、および存在する場合は微量の未反応出発成分(例えば、1230xa、1230xfおよび/または240db)も包含する。流出物は、1以上の副生成有機物、例えば、フッ素化が不十分および/または過剰な中間体を包含することもできる。フッ素化が不十分な中間体の非限定的例としては、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体および2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)が挙げられ、フッ素化が過剰な中間体の非限定的例としては、2−クロロ−1,1,1,2−テト
ラフルオロプロパン(244bb)および1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン(245cb)が挙げられる。他の副生成有機物としては、限定されるものではないが、ジクロロトリフルオロプロパン(243)およびトリクロロジフルオロプロパン(242)、および1以上の出発化合物から誘導される二量体を挙げることもできる。非限定的例として、1230xaから誘導される二量体としては、限定されるものではないが、CCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClなどが挙げられる。
【0029】
[0029]該流出物を1以上の段階で処理して、1233xf、ならびに再循環可能なものとして有用な特定の未反応化合物および/または副生成物を単離することができる。一態様において、図1を参照して、出発試薬1を乾燥器3に提供した後、HF2と一緒に反応器5に提供する。蒸気相反応器5から出た流出物流6を冷却器7に供給した後、第1の再循環塔、例えば蒸留塔8に供給する。より軽質な流出物成分9を第1の再循環塔の上部から単離して冷却する。これは、HCl、1233xf、244bb(存在する場合)、245cb(存在する場合)、および未反応HFの一部の1以上を包含する。残りの化合物を塔底流に収集する。これは、未反応HFの大部分、微量の未反応出発成分(存在する場合)、残留1233xf、および1以上の本明細書中で論じる副生成有機物を包含する。塔底流に関し、“残留”量の1233xfは、底部流中の成分の全重量の約30重量%未満、約20%未満、約15%未満、または約10%未満をさす。
【0030】
[0030]その後、上部流と底部流のそれぞれを独立して処理する。例えば、上部流は、HClを除去するために最初にHCl塔(図示していない)に供給する。高純度HClを塔の上部から単離し、HCl回収システムに供給する。非限定的例として、そのような回収システムでは、上部流からのHClを濃HClとして脱イオン水に吸収させることができ、所望により、これを、後で販売するために回収することができる。1233xf、244bb(存在する場合)、245cb(存在する場合)およびHFを包含する残りの成分は、HCl塔の底部から出して、さらに処理する。特定の態様では、その後この底部流をHF回収システムに提供して、HFを回収する。この混合物からHFを除去するために、1233xf/HF流を硫酸抽出器または相分離器に供給する。すなわち、HFを硫酸に溶解するか有機混合物から相分離する。前者の場合、HFを加熱および蒸留により硫酸/HF混合物から脱着させ、反応器に戻して再循環させる。相分離器を用いる場合、以下で論じるような標準的方法を用いてHFを相分離し、反応器に戻して再循環させる。硫酸抽出器の頂部または相分離器の底部層のいずれかからの有機物を、以下で論じる段階(2)のフッ化水素化反応器に供給する。
【0031】
[0031]特定の態様において、第1の再循環塔5の底部流内の成分を、相分離により分離する。より具体的には、該混合物を冷却器10、続いて相分離器11に提供し、ここで、未反応HFを、HFに富む第1または上部層と有機物に富む底部または第2層に分離する。混合物を実質的に液相の状態に維持する任意の圧力を採用することができる。このために、混合物の圧力および温度を、混合物が実質的に液相の状態のままになるように調整することができる。特定の態様において、HFに富む相はまた、残留部分として、特定の有機物、例えば、限定されるものではないが、1233xf、1232xfおよび243を包含する。第1層に提供されない残りの有機物(とりわけ未反応出発化合物(1以上)(存在する場合)、残留1233xf、242異性体、243異性体および二量体)を、有機物に富む第2または底部層に分離する。(上部層に関する場合、有機物の“残留部分”は、上部層中の成分の全重量の約50重量%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10重量%未満をさす。)相分離は、相分離器中に2つの異なる液相が形成するような温度と圧力の任意の組み合わせにおいて実施することができる。相分離は、約−30℃〜60℃、好ましくは約0℃〜40℃、より好ましくは約10℃〜30℃で実施することができる。
【0032】
[0032]その後、HFに富む相をHF相ポンプ12などにより単離し、所望により精製13し、気化器を経由して反応器に戻して再循環17させる。一態様では、HFに富む層を、水分蓄積を除去するために蒸留するか、一段フラッシュ蒸留により単離する。他の態様では、HFに富む流れの再循環に先立ち、水分(存在する場合)を、COCl(またはSOCl)などの化学試薬を前記流れに注入することにより除去する。前記試薬は、水分と反応してCO(またはSO)およびHClを形成する。さらに他の態様では、HFに富む層を、残留有機物を除去するために精製することができ、または有機物と一緒に再循環させることができる。
【0033】
[0033]有機物に富む層も、有機相ポンプ14などにより単離した後、さらに処理して、未反応出発反応体(存在する場合)および再循環可能な中間体を分離して精製する。特定の態様において、有機物に富む層をハイボイラーパージシステム15に提供し、ここで、未反応出発試薬(存在する場合)、残留1233xf、1231異性体、1232xf、243異性体、242異性体などを回収し、望ましくない副生成物、とりわけ二量体および他の不純物を除去する。(有機物に富む層に関する場合、“残留”量のHFは、底部層中の成分の全重量の約15重量%未満、約10%未満、約5%未満、または約3%未満をさす。)ハイボイラーパージシステムは、バッチ式または連続式で、操作上の理由から好ましくはバッチ式で操作される蒸留システムであることができる。他の選択肢は、フラッシュまたは一連のフラッシュを用いることである。どちらの場合(蒸留またはフラッシュ)でも、より多くの揮発性成分を回収し再循環させる一方、より重質の成分をシステムから除去する。非限定的な一態様において、図2を参照して、有機相ポンプ14からの供給物22をバッチ蒸留塔に提供し、蒸気供給30により加熱する。より軽質の成分(例えば、HF、1231異性体、1232xf、残留1233xf、242異性体および243異性体などの未反応出発化合物)を上部流から単離し、凝縮器24で冷却する。非凝縮性化合物(存在する場合)を所望によりパージ25し、残りの化合物を、化合物を揮発性の順に分離して、一連の蒸留留分として収集する。図2には3つの蒸留留分26、27、28を例示しているが、出願人らは、本発明はこれに限定されず、有益または再循環可能な材料、例えば、未反応出発化合物、1231異性体、1232xf、1233xf、243異性体、242異性体などを分離するために、任意の数の蒸留留分を提供することができることに触れておく。一旦単離した後、再び図1を参照し、未反応出発化合物、1233xf、1231異性体、1232xf、243異性体、242異性体を反応器5に再循環16させる。その際に、未反応出発成分(存在する場合)および再循環可能な中間体を、望ましい組成物1233xfおよび/またはその前駆体に転化する。重質化合物(例えば二量体など)を底部流29から単離する。
【0034】
[0034]出願人らは、第1の再循環塔の底部流中の成分を2相に分離することによって、より容易に反応体を反応器に戻して再循環させることが可能になり、相分離器を用いた後、層の一方または両方を精製してから再循環させることにより、該プロセスの経済性が改善されることを発見した。例えば、供給物中に水分が存在すると、触媒が失活し、装備および配管が腐食する。そのような水分は、存在する場合、典型的には相分離中にHFに富む相に濃縮する。したがって、単離後にHFに富む相を精製することにより、水分を除去し、触媒失活および腐食を最低限に抑えることができる。
【0035】
[0035]高沸点副生成物および不純物の除去は、再循環される場合そのような化合物も触媒失活を引き起こすので、同様に有利である。上記のように、相分離中に、そのような化合物は有機層中に濃縮する傾向がある。したがって、単離後、有機層を上記に従って精製して、そのような化合物を除去し、再循環可能な化合物のみを単離することもできる。高沸点化合物を除去すると、触媒寿命が改善し、パージ流が最小限になる。
【0036】
[0036]2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンの形成プロセスの第2段階において、精製した1233xf中間体流を2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)に転化する。一態様において、この段階は、TFEまたはPFAでライニングされていてもよい液相反応器中の液相で実施することができる。そのようなプロセスは、約70〜120℃の温度範囲および約50〜120psigで実施することができる。
【0037】
[0037]任意の液相フッ素化触媒を本発明に用いることができる。限定的なリストとしては、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属酸化物、IVb族金属ハロゲン化物、Vb族金属ハロゲン化物、またはそれらの組み合わせが挙げられる。液相フッ素化触媒の非排他的例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、およびハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化ハロゲン化クロム、フッ素化酸化クロム、またはそれらの組み合わせである。液相フッ素化触媒の具体的な非排他的例は、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TaCl、TiCl、NbCl、MoCl、FeCl、SbClのフッ素化種、SbClのフッ素化種、SnClのフッ素化種、TaClのフッ素化種、TiClのフッ素化種、NbClのフッ素化種、MoClのフッ素化種、FeClのフッ素化種、またはそれらの組み合わせである。五塩化アンチモンがもっとも好ましい。
【0038】
[0038]これらの触媒は、失活した場合、当分野で公知の任意の手段により容易に再生することができる。触媒の適した再生方法の1つは、触媒に塩素流を流すことを包含する。例えば、液相フッ素化触媒1ポンドごとに、1時間あたり約0.002〜約0.2lbの塩素を液相反応に加えることができる。これは、例えば、約1〜約2時間にわたり、または連続的に、約65℃〜約100℃の温度で行うことができる。
【0039】
[0039]この反応の第2段階は必ずしも液相反応に限定されず、米国特許出願公開第20070197842号に開示されているように、蒸気相反応または液相と蒸気相の組み合わせを用いて実施することもできる。該特許出願公開の内容を、本明細書中で参考として援用する。このために、1233xfを含有する供給物流を約50℃〜約400℃の温度に予熱し、触媒およびフッ素化剤と接触させる。触媒としては、そのような反応に用いられる標準的な蒸気相作用物質を挙げることができ、フッ素化剤としては、当分野で一般に公知のもの、例えば、限定されるものではないが、フッ化水素を挙げることができる。
【0040】
[0040]1234yfを生産する第3段階では、244bbを脱塩化水素するために第2の蒸気相反応器(脱塩化水素反応器)に供給して、望ましい生成物2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)を作製する。この反応器には、HCFC−244bbを触媒的に脱塩化水素してHFO−1234yfを作製することができる触媒が入っている。
【0041】
[0041]触媒は、バルクまたは担持した形での金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(もしくは酸化状態ゼロ)の金属もしくは金属合金、または活性炭であることができる。金属ハロゲン化物または金属酸化物触媒としては、限定されるものではないが、一価、二価および三価の金属のハロゲン化物、酸化物、ならびにそれらの混合物/組み合わせ、より好ましくは、一価および二価の金属のハロゲン化物ならびにそれらの混合物/組み合わせを挙げることができる。成分金属としては、限定されるものではないが、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、KおよびCsが挙げられる。成分ハロゲン化物としては、限定されるものではないが、F、Cl、BrおよびIが挙げられる。有用な一価または二価の金属のハロゲン化物の例としては、限定されるものではないが、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、およびCsClが挙げられる。ハロゲン
化処理としては、従来技術で公知の処理のいずれか、とりわけ、ハロゲン化源としてHF、F、HCl、Cl、HBr、Br、HIおよびIを採用する処理を挙げることができる。
【0042】
[0042]中性、すなわちゼロ価の場合、金属、金属合金およびそれらの混合物を用いる。有用な金属としては、限定されるものではないが、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、および合金または混合物としての前記金属の組み合わせが挙げられる。触媒は、担持されていても担持されていなくてもよい。金属合金の有用な例としては、限定されるものではないが、SS316、モネル400、インコネル825、インコネル600およびインコネル625が挙げられる。そのような触媒は、別個の担持または非担持要素として、ならびに/または反応器および/もしくは反応器壁の一部として、提供することができる。
【0043】
[0043]好ましい非限定的な触媒としては、活性炭、ステンレス鋼(例えばSS316)、オーステナイトニッケルに基づく合金(例えばインコネル625)、ニッケル、フッ素化10%CsCl/MgO、および10%CsCl/MgFが挙げられる。反応温度は約300〜550℃であることが好ましく、反応圧力は約0〜150psigであることができる。反応器流出物を苛性スクラバーまたは蒸留塔に供給してHClの副生成物を除去して、酸を含まない有機生成物を生産することができる。該生成物を、所望により、当分野で公知の精製技術の1つまたは任意の組み合わせを用いて、さらに精製にかけてもよい。
【0044】
[0044]以下は本発明の実施例であり、限定的なものと理解すべきではない。
【実施例】
【0045】
[0045]実施例1
[0046]パイロット実証ユニットは、供給物送達システム、気化器、反応器/加熱システム、蒸留塔、相分離器、再循環システム、苛性溶液スクラバー、および生成物(1233xf)収集システムで構成されている。始動中に、10重量%の1233xfと90重量%の1230xaを含有する有機供給物を乾燥塔に通し、HF供給物と組み合わせた後、気化器に入れた。その後、気化した蒸気混合物を、6.5Lのフッ素化酸化クロム触媒が入っている反応器に導入した。反応温度および反応圧力は、それぞれ200℃および70psigであった。反応器流出物を約30℃で操作されている冷却器に誘導した後、60psigで操作されている蒸留塔に入れた。蒸留塔の上部からの流出物(1233xf、HCl、およびHF、および244bb/245cb(存在する場合))を、スクラバー、乾燥塔に通した後、生成物収集シリンダー(PCC)に送った。蒸留塔の底部からの流出物(主としてHF、未反応1230xa(存在する場合)、1232xf、および他のフッ素化が不十分な化合物、およびさまさまな副生成物)を熱交換器(冷却器)に通した後、相分離器(PS)に送る。該相分離器は、圧力変換器、熱電対、視覚管(sight tube)、破裂板、および浸漬管を備える20ガロン容器であり、この実施例では約25℃および約25psigで操作した。浸漬管の長さはPSの長さの50%である。HFの再循環は、十分な材料がPS中に蓄積した時点で開始した。試料をPSの上部および底部から定期的に採取して分析した。表1に示すように、上部層はHFに富み、底部層は有機物に富んでいた。表2に示すように、HFに富む層中の有機物は、主として、より軽質の成分、例えば、1233xf、1232xfなどで構成され、有機物に富む層中の有機物では、より軽質の成分は50%未満であった。これらの結果は、相分離器により、HFに富む層から重質成分を除去することが可能になることを示している。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
[0047]実施例2
[0048]実施例1と同じパイロット実証ユニットを用いた。HFの再循環を、HFに富む層の液体を相分離器の浸漬管に通してポンプ移送することにより開始した。反応器流出物の分析は、1000時間の運転後に1230xaが検出されないことを示した。これは、この期間中に失活が起こらなかったことを示している。
【0049】
[0049]比較例2
[0050] 実施例1と同じパイロット実証ユニットを用いた。HF再循環流の他に、有機物の再循環も、有機物に富む層の液体を相分離器の底部に通してポンプ移送することにより開始する。反応器流出物の分析は、100時間の運転後にかなりの量の1230xaが検出されることを示している。これは、この期間中に失活が起こることを示している。
本発明は以下の態様を含む。
[1] 以下を含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの調製方法:
式I、IIおよび/または式IIIの少なくとも1つの出発化合物を含む組成物を提供し
CX=CCl−CHX (I)
CX−CCl=CH (II)
CX−CHCl−CHX (III)
[式中、Xは、少なくとも1つのXがフッ素ではないという条件で、F、Cl、BrおよびIから独立して選択される];
(a)前記出発組成物をフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、HCl、未反応HF、所望による未反応出発化合物、ならびにトリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、CCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の副生成物を含む、最終組成物を生産し、これに関し、少なくとも1つの副生成物は接触段階に再循環可能である;
(b)該最終組成物を、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびHClを含む第1の流れと、所望による未反応出発化合物、1以上の副生成物、および未反応HFを含む第2の流れに分離し;
(c)第1の流れの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをHClから分離し;
(d)第2の流れの未反応HFを、所望による未反応出発化合物および1以上の副生成物から分離し;そして
(e)再循環可能な副生成物(1以上)を接触段階(a)に分離して再循環させる。
[2] 分離段階(b)が蒸留を含み、ここで、少なくとも2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびHClを第1の流れに回収し、少なくとも所望による未反応出発化合物、1以上の副生成物、および未反応HFの一部を第2の流れに回収する、[1]に記載の方法。
[3] 第1の流れの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを段階(c)で蒸留によりHClから分離する、[1]に記載の方法。
[4] 段階(d)において未反応HFを所望による未反応出発化合物および1以上の副生成物から相分離により分離する[1]に記載の方法であって、第1の層が未反応HFを含み、第2の層が所望による未反応出発化合物および1以上の副生成物を含む、前記方法。
[5] 第1の層を抽出し、所望により精製する、[4]に記載の方法。
[6] 第1の層中に存在する水分を除去する、[5]に記載の方法。
[7] 第1の層を再循環させる、[6]に記載の方法。
[8] 第2の層を抽出する、[4]に記載の方法。
[9] 所望による未反応出発化合物を単離する、[8]に記載の方法。
[10] 所望による未反応出発化合物を再循環させる、[8]に記載の方法。
[11] 再循環可能な副生成物を単離する、[8]に記載の方法。
[12] 再循環可能な副生成物を再循環させる、[8]に記載の方法。
[13] 以下を含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの調製方法:
式I、IIおよび/または式IIIの少なくとも1つの出発化合物を含む組成物を提供し
CX=CCl−CHX (I)
CX−CCl=CH (II)
CX−CHCl−CHX (III)
[式中、Xは、少なくとも1つのXがフッ素ではないという条件で、F、Cl、BrおよびIから独立して選択される];
(a)前記出発組成物をフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、HCl、未反応HF、所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、ならびに1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの第1の副生成物、ならびにジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの第2の副生成物、ならびにCCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの第3の副生成物を含む、最終組成物を生産し;
(b)少なくとも2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、第1の副生成物(1以上)およびHClを含む第1の流れを、未反応HFの一部および最終組成物の残りを含む第2の流れから分離し;
(c)第1の流れの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをHClおよび第1の副生成物(1以上)から分離し;そして
(d)第2の流れの未反応HFを、所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、第2の副生成物(1以上)および第3の副生成物(1以上)から分離し;そして
(e)所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)および第2の副生成物(1以上)を、第3の副生成物(1以上)から分離する。
[14] 分離段階(b)が蒸留を含み、ここで、少なくとも2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、第1の副生成物(1以上)およびHClを第1の流れに回収し、少なくとも所望による未反応出発化合物、第2の副生成物、第3の副生成物、および未反応HFの一部を第2の流れに回収する、[13]に記載の方法。
[15] 第1の流れの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを段階(c)で蒸留によりHClおよび第1の副生成物(1以上)から分離する、[13]に記載の方法。
[16] 段階(d)において、第2の流れの未反応HFを、所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、第2の副生成物(1以上)および第3の副生成物から相分離により分離する、[13]に記載の方法であって、第1の層が未反応HFを含み、第2の層が未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、第2の副生成物(1以上)および第3の副生成物を含む、前記方法。
[17] 第1の層を抽出し、精製する、[16]に記載の方法。
[18] 第1の層中に存在する水分を除去する、[17]に記載の方法。
[19] 第1の層を再循環させる、[17]に記載の方法。
[20] 第2の層を抽出する、[15]に記載の方法。
[21] 段階(e)で分離した少なくとも所望による未反応出発化合物、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)および第2の副生成物を再循環させる、[16]に記載の方法。
[22] 以下を含む分離方法:
a)相分離器に組成物を提供し、これに関し、前記組成物は、
i)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、
ii)HF、
iii)トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)からなる群より選択される1以上の有機物、および
iv)CCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClからなる群より選択される1以上の二量体、
を含む;
b)該組成物を、前記相分離器において上部層と底部層に分離する、これに関し、前記上部層は、前記組成物からの実質的にすべてのHFおよび1233xfで構成され、前記第2の層は、該組成物の実質的にすべての有機物および二量体で構成される。
[23] さらに、底部層をパージシステムに提供し、ここで、前記二量体を前記有機物から実質的に分離することを含む、[22]に記載の分離方法。
[24] さらに、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を生産するために前記有機物を反応器に再循環させることを含む、[23]に記載の分離方法。
[25] 以下を含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の調製方法:
a)組成物を相分離器に提供し、これに関し、
前記組成物は、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)と、HFと、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、トリクロロジフルオロプロパン(242)からなる群より選択される1以上の有機物と、CCl、CCl、CCl、CCl、CCl、CClの群から選択される1以上の二量体とを含み、
前記組成物は、反応器および再循環塔を含む反応器システムから得られる;
b)前記相分離器中の前記第1の組成物を、前記相分離器において上部層と底部層に分離し、これに関し、前記上部層は、前記組成物からの実質的にすべてのHFおよび1233xfで構成され、前記第2の層は、該組成物の実質的にすべての有機物および二量体で構成される;
c)前記底部層をパージシステムに提供し、ここで、前記二量体を前記有機物から実質的に分離し;そして
d)前記パージシステムから得られる有機物を反応器に戻して再循環させる。
【符号の説明】
【0050】
1 出発試薬
2 HF
3 乾燥器
5 蒸気相反応器
6 流出物流
7 冷却器
8 蒸留塔
9 より軽質な流出物成分9
10 冷却器
11 相分離器
12 HF相ポンプ
13 精製
14 有機相ポンプ
15 ハイボイラーパージシステム
16 再循環
17 再循環
22 供給物
24 凝縮器
25 パージ
26 蒸留留分
27 蒸留留分
28 蒸留留分
29 底部流
30 蒸気供給
図1
図2