(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製品と関連した改ざん防止反偽造モジュールは、好ましくは、一回の使用のみのためである。したがって、電気泳動ディスプレイフィルムをそのようなモジュールへ組み込む場合、好ましいのは、フィルムが、生成物のためのパッケージを開いた後に操作可能とならないことである。試みの1つはモジュール中のフィルムを物理的に破損することである。しかしながら、この試みは、パッケージが開かれるときに電気泳動流体の漏れを生じさせ、これは不快であり、環境問題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの局面は、電気泳動ディスプレイフィルムを含むモジュールを対象とし、このフィルムは、
i)隔壁、マイクロセル下部層および溶媒中に分散した帯電顔料粒子を含む電気泳動流体で充填したマイクロセルを有するマイクロセル層を含み、ここでマイクロセル層は、第1積層と第2積層の間に挟まれ、および
ii)1以上の強バリア層を除去して溶媒を蒸発させた後、3未満のコントラスト比を示す。
【0005】
1つの実施形態では、コントラスト比の低下が24時間以内に生じる。1つの実施態様では、流体中の溶媒は炭化水素溶媒である。別の実施態様では、溶媒はフッ素化溶媒である。1つの実施態様では、マイクロセル層は弱バリア層である。別の実施態様では、マイクロセル層は強バリア層である。
【0006】
本発明の別の局面は、方法を対象とし、その方法は以下を含む:
a)電気泳動ディスプレイフィルムを含むモジュールを与える工程、
i)フィルムは隔壁、マイクロセル下部層および溶媒中に分散した帯電顔料粒子を含む電気泳動流体で充填したマイクロセルを有するマイクロセル層を含み、ここでマイクロセル層は、第1積層と第2積層の間に挟まれ、
ii)マイクロセル層は弱バリア層であり、
iii)第1積層の少なくとも1つの層は、強バリア層であり;および
iv)第2積層における少なくとも1つの層は、強バリア層であり、および
b)1以上の層を第1積層からまたは1以上の層を第2積層から、あるいはその両方を、弱バリア層のみを積層中に残して除去して、溶媒をディスプレイフィルムから蒸発させる工程。
【0007】
1つの実施形態では、第1積層は、封止層、接着剤層、第1電極層および必要に応じて第1保護層を含む。1つの実施態様では、第2積層は、下塗剤層、第2電極層、基材層および必要に応じて第2保護層を含む。
【0008】
1つの実施態様では、流体中の溶媒は炭化水素溶媒である。この場合、弱バリア層は、炭化水素溶媒の極性に類似する極性を有するが、強バリア層は、炭化水素溶剤の極性と異なった極性を有する。1つの実施態様では、弱バリア層は、疎水性材料から調製されるか、または多量の疎水性官能基または結合を含むが、強バリア層は、親水性材料から調製されるか、または多量の親水性官能基または結合を含む。
【0009】
溶媒が炭化水素溶媒である場合、強バリア層は水溶性ポリマーから形成され得、弱バリア層は、ポリウレタン、アクリレートポリマーおよびエポキシ樹脂からなる群から選択される材料から形成される。
【0010】
1つの実施態様では、流体中の溶媒はフッ素化溶媒である。この場合、非フッ素化熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性前駆体からなる群から洗濯された材料から強バリア層を形成し、フッ素化ポリマーおよびその前駆体からなる群から選択された材料から弱バリア層を形成する。
【0011】
1つの実施態様では、強バリア層としての電極層は、インジウム錫オキサイド、アルミニウムドープト酸化亜鉛およびインジウムドープトカドミウムオキサイドからなる群から選択される材料から形成する。弱バリア層としての電極層は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブおよび銀ナノワイヤーからなる群から選択される材料から形成する。
【0012】
本発明の更なる局面は、以下を含む方法を対象とする:
a)電気泳動ディスプレイフィルムを含むモジュールを供給する工程、
i)フィルムは隔壁、マイクロセル下部層および溶媒中に分散した帯電顔料粒子を含む電気泳動流体で充填したマイクロセルを有するマイクロセル層を含み、ここでマイクロセル層は、第1積層と第2積層の間に挟まれ、
ii)マイクロセル層は強バリア層であり、
iii)第1積層は、少なくとも1つの強バリア層および弱バリア層である封止層を含み;および
b)層を第1積層において、封止層および弱バリア層である封止層の次の任意の層を残して除去して、溶媒をディスプレイフィルムから蒸発させる工程。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、電気泳動ディスプレイフィルムを含むモジュールを対象とし、このフィルムは、
a)各マイクロセルが溶媒中に分散した帯電顔料粒子を含む電気泳動流体で充填されたマイクロカプセルを有するマイクロカプセル層を含み、この液体は、弱バリア層である壁により囲まれ、
b)1以上の強バリア層をマイクロカプセル層の各側上に含み、
c)強バリア層を除去して溶媒を蒸発させた後、3未満のコントラスト比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、一定期間内に永久に機能しないように制御することができる電気泳動ディスプレイフィルムを対象とする。それは、反偽造の目的のための電気泳動フィルムを利用する、洗練された方法を提供する。この概念は、フィルムから強バリア層を除去してフィルム内の電気泳動フィルム中の溶媒を弱バリア層より一定期間内に蒸発させることを含み、ディスプレイの性能は著しく下がり、再度フィルムは使用することができない。ディスプレイフィルムのための用語「著しく下がる」は、3未満に達したフィルムのコントラスト比として定義され、これが24時間以内に起こり得る。
【0016】
強バリア層の除去は、以下、「フィルムの分解あるいは分離」ともいう。
【0017】
本発明では、用語「強バリア層」は、25℃および50%RHにおいて1atm下で24時間以内に特定の厚みでの1m
2の面積において<0.1グラムの溶媒透過率を有する電気泳動ディスプレイフィルム中の層として定義し、および用語「弱バリア層」は、25℃および50%RHにおいて1atm下で24時間以内に特定の厚みでの1m
2の面積において≧0.1グラムの溶媒透過率を有する層として定義する。溶媒透過率は厚み依存性である。同一の材料から形成された層について、層が厚ければ、透過率は低くなる。
【0018】
単層あるいは積層の溶媒透過率をテストするために、標準透過率試験方法、ASTM F739を使用することができる。統合電気泳動ディスプレイについては、透過率を評価するために重量損失を追跡して透過率を見積もることができる。
【0019】
図1は、本発明の電気泳動ディスプレイフィルム(10)のための一般的な構造を示す。これは、溶媒または溶媒混合物中に分散した帯電顔料粒子を含む電気泳動流体(12)で充填された複数のマイクロセル(11)を含む。マイクロセル層は壁エリア(11a)、下部エリア(11b)およびマイクロセルを有し、電極層(15および18)を含み得る2つの積層の間に挟まれる。封止層(13)、および電極層(18)と封止層の間にある任意の接着剤層(17)が存在する。通常、基材層(16)に下部電極層(15)を積層する。下部電極層(15)とマイクロセル層の間に誘電体層(14)もまた存在し得る。
【0020】
ある実施形態では、用語「マイクロセル」は、米国特許6,930,818に記載される通り、カップ様マイクロ容器を含む。この用語はさらにMICROCUP(登録商標)をも含む。
【0021】
必要に応じて、正面保護層(19)および/または下部保護層(20)があってよい。保護層の機能は、機械的および、例えば紫外線照射、高いまたは低い湿度、表面引掻および衝撃からの環境保護を提供することである。見る側の保護層は、さらに表示に光学的効果、例えば表面上にアンチグレア機能またはディスプレイの色温度の調節を供給することができる。必要に応じて、感圧性接着剤(示されていない)を用いてディスプレイ上に保護層を組み込む。
【0022】
誘電体層(14)は下塗剤層であってもよい。マイクロセルと電極層の間の接着を調節するために電極層の上に下塗剤層を予備被覆することが多い。
【0023】
簡潔さのために、層(13)、(17)、(18)および(19)を第1積層と称し、および層(14)、(15)、(16)および(20)を第2層と称し得る。
【0024】
このような表示フィルムは米国特許第6,930,818号に記載の方法により調節し得るが、その内容は、参照によりここに組み込む。この特許によれば、マイクロセルは、回分式方法あるいは連続ロールツーロール法により形成してもよい。まず、マイクロセルを形成するための組成物を電極層上に被覆し、次いでマイクロエンボスまたはフォトリソ法を行う。好適である方法は、マイクロセル組成物上に雄型を適用してマイクロセルを形成することによるマイクロエンボスである。雄型はマイクロセル組成物を硬化する間またはその後に開放する。次いで、マイクロセルをディスプレイ流体で充填し、次いで封止層を形成してマイクロセル内に液体を封止する。
【0025】
上で参照した任意の層の所望の厚み、層の機能に依存する。厚みは材質選定に加えてパラメーターであり、これは層の障壁特性を合わせるために使用されてもよい。
【0026】
図1では、マイクロセル底(11b)は0.05μm〜20μmの範囲の厚み有し得る。下塗剤層(14)の厚みは0.05μm〜20μmの範囲であってもよい。封止層(13)の厚さは通常2μm〜40μmの範囲にある。接着剤層(17)の厚みは通常1μm〜40μmの範囲である。基材層(例えば16)の厚みは4μm〜400μmの厚みであってよい。保護層(19または20)の厚みは10μm〜400μmの範囲にあってもよい。感圧性接着剤の厚みは通常6μm〜200μmの範囲である。
【0027】
任意の層のバリア特性(強いまたは弱い)は、その位置およびフィルムの分離が起こる場所に依存する。
【0028】
マイクロセル壁(11a)およびマイクロセル下部(11b)は通常、弱バリア層である。この場合、フィルムの分離前の通常動作中に、流体中の溶媒が蒸発するのを防止するために、層(13)、(17)、(18)と(19)の少なくとも1つは、強バリア層でなければならず、および層(14)、(15)、(16)および(20)の少なくとも1つは、さらに、強バリア層でなければならない。
【0029】
しかしながら、反偽造モジュールへそのようなフィルムを組み込む場合、目標は、フィルムの分解により、一度だけの使用の後にフィルムを不能にすることである。フィルムの分離が層(11b)と(14)の間に起こる場合、流体中の溶媒は、層(11a)および(11b)より蒸発してフィルムの破壊を生じさせる。分離が層(14)と(15)の間に起こる場合、層(14)は、溶媒が層(11a)、(11b)および(14)より蒸発することを可能とする弱バリア層でなければならない。分離は(15)と(16)の間で起こり、両方の層(14)と(15)は、溶媒が層(11a)、(11b)、(14)および(15)より蒸発することを可能にする弱バリア層でなければならない。同様に、分離が層(16)および(20)の間で起こる場合、層(14)、(15)および(16)は全て弱バリア層でなければならない。
【0030】
同様に、フィルムの分離が(13)と(17)の間に起こる場合、層(13)は、溶媒が層(11a)、(11b)および(13)より蒸発させる弱バリア層でなければならない。分離が(17)と(18)の間で起こる場合、層(13)および(17)はいずれも、溶媒が層(11a)、(11b)、(13)および(17)より蒸発する溶媒を可能とする弱バリア層でなければならない。分離が層(18)および(19)の間に起こる場合、層(13)、(17)および(18)は弱バリア層でなければならない。
【0031】
さらに、マイクロセル隔壁(11a)およびマイクロセル下部層(11b)が強バリア層であることも可能である。この場合、封止層(13)は弱バリア層でなければならない。この場合、フィルムの分離が層(13)および(17)の間で起こり、溶媒を層(13)より蒸発させ得る。分離が層(13)と(17)の間に起こらない場合、残存層は、封止層(13)に隣接し、および弱バリア層でなければならない。例えば分離が層(17)と(18)の間で起こる場合、層(13)および(17)はいずれも弱バリア層でなければならない。
【0032】
弱バリア層としてマイクロセルを形成するための適当な組成物は、既に開示される。米国特許第6,831,770および同6,930,818は、マイクロセルの形成に適当な組成物が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいはその前駆体を含み得ることを記載する。熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の前駆体の例は、多官能性アクリレートまたはメタクリレート、多官能性ビニルエーテル、多官能性エポキシド、およびそのオリゴマーまたはポリマーであり得る。架橋性オリゴマー、例えばウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレート等を添加して、形成されるマイクロセルの屈曲抵抗を改善してもよい。
【0033】
米国特許第7,880,958は、極性オリゴマーあるいはポリマー材料を含み得るマイクロセルのための組成物を記載する。そのような極性オリゴマーあるいはポリマー材料は、ニトロ基(−NO
2)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COO)、アルコキシ基(−OR、ここでRはアルキル基である)、ハロ(たとえばフッ素、クロロ、ブロモあるいはヨード)、シアノ(−CN))、スルホネート(−SO
3)等の基の少なくとも1つを有するオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択され得る。極性高分子材料のガラス転移温度は、好ましくは約100℃未満、より好ましくは約60℃未満である。適当な極性オリゴマーあるいはポリマー材料の具体例としては、これらに限定されないが、ポリヒドロキシ官能化ポリエステルアクリレート(例えばBDE1025、Bomar Specialties Co、Winsted、CT 1025等)またはアルコキシル化アクリレート、例えばエトキシル化ノニルフェノールアクリレート(例えばSR504、Sartomer Company)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えばSR9035、Sartomer Company)またはエトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(例えばSR494、Sartomer Company)が挙げられる。
【0034】
米国特許出願第13/686,778はマイクロセルの形成のために別の種類の組成物を開示する。組成物は、(a)少なくとも1つの二官能性UV硬化性成分、(b)少なくとも1つの光開始剤および(c)少なくとも1つの離型剤を含んでなる。適当な二官能性成分には約200より高い分子量を有し得る。二官能性アクリレートが好ましく、ウレタンまたはエトキシル化骨格を有する二官能性アクリレートが特に好ましい。より具体的には、適当な二官能性成分としては、これらに限定されないが、ジエチレングリコールジアクリレート(例えばSartomerからのSR230)、トリエチレングリコールジアクリレート(例えばSartomerからのSR272)、テトラエチレングリコールジアクリレート(例えばSartomerからのSR268)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えばSartomerからのSR295、SR344あるいはSR610)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(例えばSartomerからのSR603、SR644、SR252あるいはSR740)、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(例えばSartomerからのCD9038、SR349、SR601またはSR602)、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(例えばSartomerからのCD540、CD542、SR101、SR150、SR348、SR480あるいはSR541)およびウレタンジアクリレート(例えばSartomerからのCN959、CN961、CN964、CN965、CN980あるいはCN981; CytecからのEbecryl 230、Ebecryl 270、Ebecryl 8402、Ebecryl 8804、Ebecryl 8807あるいはEbecryl 8808)が挙げられる。適当な光開始剤としては、これらに限定されないが、ビス−アシル−ホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−イソプロピル−9H−チオキサンゼン−9−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルヂフェニルスルフィドおよび1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンあるいは2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが挙げられる。適当な離型剤としては、これらに限定されないが、有機変性シリコーンコポリマー、例えばシリコーンアクリレート(例えばCytecからのEbercryl 1360あるいはEbercyl 350)、シリコーンポリエーテル(例えばMomentiveからのSilwet 7200、Silwet 7210、Silwet 7220、Silwet 7230、Silwet 7500、Silwet 7600あるいはSilwet 7607)等が挙げられる。組成物は必要に応じて下記成分の一以上を含み得る:共開始剤、単官能性UV硬化性成分、多官能性UV硬化性成分あるいは安定剤。
【0035】
上で参照した特許と特許出願のすべての内容は、それらの全体において参照によってここに組み込まれる。
【0036】
フッ素化溶媒を流体中で使用する場合、マイクロセルのための材料は、好ましくは、弱バリア層であるマイクロセル層を与えるためにフッ素化官能基を有する。
【0037】
電気泳動流体中で使用される適当な溶媒は、好ましい沸点および粘度を有する無極性溶媒であり得る。低粘性の溶媒は、ディスプレイ性能、例えばスイッチング速度などのために好ましい。好適である無極性溶媒は、炭化水素溶剤およびフッ素化溶媒である。フッ素化溶媒好ましくは50重量%を超えるフッ素を有する。
【0038】
溶媒としては、通常のアルカン溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、イソカン、その異性体あるいは混合物が挙げられる。市販のアルカン溶媒としては、これらに限定されないが、ExxonMobile chemicalからのIsopar、ShellからのShellSol、ChevronからSoltrol、TotalからのIsaneが挙げられる。一般に用いられるフッ素化溶媒としては、フッ素化アルカン、フルオロエーテル、フッ素化アミン等が挙げられる。市販のフッ素化溶媒としては、これらに限定されないが、3MからのFC−43、ソルベーからのGalden流体が挙げられる。
【0039】
共溶媒は、任意に流体に添加し得る。適当な共溶媒としては、これらに限定されないが、水素化フッ素化溶媒、ハロゲン化アルカン等、例えばHalocarbon Product Corporationからのハロゲン化炭素油等が揚げられる。
【0040】
流体のための溶媒の選択は、ディスプレイフィルム中の層のバリア特性の決定において重要である。言いかえれば、異なった溶媒を流体中に用いる場合、層は異なったバリア特性を示してよい。
【0041】
マイクロセル(弱バリア層の場合)を形成するための材料は通常、電気泳動流体中の溶媒の極性と類似の極性を有するが、強バリア層は、溶媒の極性と実質的に異なった極性を有する。
【0042】
例えば流体中で炭化水素溶剤を使用する場合、マイクロセルは疎水性材料から調製すべきであるが、強バリア層は、親水性材料から調製すべきである。より具体的には、弱バリア層は、電気泳動流体中のアルカン溶媒の極性と類似する極性を有するが、強バリア層は、アルカン溶媒の極性と実質的に異なった極性を有する。例えば、流体中で炭化水素溶剤を使用する場合、弱バリア層は疎水性材料からを調製されるか、または多量の疎水性官能基あるいは結合を含むべきであるが、強バリア層は親水性材料から調製されるか、または多量の親水性官能基または結合を含むべきである。10重量%を超えるのが多量であると考えられる。ポリマー層のために、高い架橋密度および/またはガラス転移温度(Tg)もまたバリア特性を強くすることを助け得る。
【0043】
炭化水素溶剤の場合には、バリア層としての誘電体層(14)あるいは基材層(16)を親水性ポリマー、好ましくは水溶性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、セルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどから形成し得る。
【0044】
流体中で炭化水素溶剤を使用する場合、弱バリア層としての誘電体層を形成するための適当な材料は、ポリウレタン、アクリレートポリマー、エポキシ樹脂などであり得る。
【0045】
弱バリア特性を付与するために、層内の親水性ポリマー(好ましくは水溶性)の濃度は、70重量%未満となるように制御しなければならない。同時に、非水溶性ポリマー、例えばポリウレタンまたはポリエチレン酢酸ビニルを添加し得る。
【0046】
ディスプレイ流体中のフッ素化溶媒の場合には、弱バリア層は、10重量%を超えるフッ素を含むが、強バリアは、疎水性または親水性であってよく、フッ素含有量は、10重量%以内に制御されなければならない。フッ素の含量は、ポリマーマトリクスとフッ素化溶媒の適合性を決定する。適合性の程度は透過率を制御する。フッ素化溶媒は、より高いフッ素含有量のポリマーマトリックスとより親和性、したがってより浸透性であり、およびポリマーマトリックスは、より少ない親水性官能基および結合を有する。
【0047】
より具体的には、フッ素化溶媒については、非フッ素化熱可塑性または熱硬化性の前駆体、例えば熱可塑性ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、アクリルモノマーおよびオリゴマー、グリシジルまたはビニルエーテル等から形成され得る。弱バリア特性を付与するために、フッ素化ポリマーあるいはその前駆体を組成物へ添加することができる。適当なフッ素化ポリマーおよびその前駆体としては、これらに限定されないが、フッ素化アクリレート、例えば1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート、1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシ−4−メチル−5−ペンチルメタクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレートまたはホモポリマーまたはそのコポリマー、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートとフッ素化アルコール、例えばパーフルオロエーテルジオールおよびフッ素化アルキルジオール等から形成されたフッ素化ポリウレタンが挙げられる。
【0048】
電極層(例えば15または18)が強バリア層である場合、例えばインジウム錫オキサイド、アルミニウムドープト酸化亜鉛、インジウムドープト酸化カドミウムなどの材料から形成され得る。
【0049】
炭化水素溶媒を使用する場合、導電性ポリマー(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンポリ(スチレンスルホネート))(PEDOT:PSS)から弱バリア層としての電極層を形成してもよい。
【0050】
電極層の他の材料としては、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤーなどが挙げられる。これらの材料のバリア特性は、それらのポリマーマトリクスに依存する。言いかえれば、それらのバリア特性は、ディスプレイフィルム中で使用される溶媒に依存する。
【0051】
マイクロセル層は、バリア層を除去する場合に損傷を受けないように十分に強くあるべきである。この場合、マイクロセル内に含有されたディスプレイ流体中の溶媒は、劇的な環境衝撃を有することなく弱バリア層よりゆっくり蒸発することができる。
【0052】
マイクロセルは本出願において特に言及されるが、本発明の概念が他の種類の電気泳動ディスプレイに適用可能であると理解される。ディスプレイセルとしてのマイクロセルは、マイクロカプセル、マイクロチャネルあるいは他の種類のマイクロ容器と置き換えることができる。電気泳動ディスプレイのためのディスプレイセルとしてのマイクロセルの製造は、種々の米国特許および出願、例えば米国特許第5,930,026に電気泳動ディスプレイのためのディスプレイセルとしてのマイクロカプセルの製造について記載される。マイクロカプセルの壁が最終組み立てフィルムにおいて、弱バリアである場合、一以上の強バリアを用いて溶媒を蒸発から防ぐことができる。強バリアが剥がれると、ディスプレイ流体中の溶媒は蒸発し、ディスプレイの機能不全をもたらす。
【0053】
記載の通り、電気泳動ディスプレイフィルムは、反偽造応用、例えばスマートラベル等に適当である。例えば、本発明のフィルムは、包装品を密閉するのに用いる改ざん防止モジュールの一部であり得る。パッケージを開ける前に、消費者はフィルムを活性化して、パッケージ中の品物を確証する特別のグラフィックパターンを表示することができる。パッケージを開ける場合、フィルムは壊れ、フィルム中の強バリア層を除去してディスプレイフィルム中の溶媒を蒸発させる。その結果、フィルムはもはや操作可能ではなく、再度使用することができない。
【0054】
本発明はその特定の態様に関して記載したが、当業者は、様々な変更を行なってもよいことを理解するべきである。また、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、等価物で置換し得る。更に、特別の状況、材料、組成物、方法、プロセス段階あるいは工程を本発明の目的、精神および範囲に適応させるために多くの改良がなされてよい。添付の特許請求の範囲内になるようにそのような改良をすべて意図する。
【0055】
したがって、添付の特許請求の範囲によって先行技術と同じくらい広く定義される本発明が可能となることが明細書の観点から考慮される。