(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、林道や作業道など(以下、総称して「造林用作業道」という。)の未舗装道路には、雨水等の流水によって土砂が流出し道路が浸食されることを防ぐための横断
排水具が設けられている。この横断
排水具の従来技術として、例えば、特許文献1には「一般に、森林では林産物の運搬と林業経営のために必要な交通を目的として、森林の内外に通じる林道および作業道を築造している。この林道や作業道は一般に未舗装であって、林道や作業道の排水の如何は林道および作業道の維持に大きく関係するから、路面上の雨水・側方斜面から流出する水、あるいは路傍のわき水などは停滞せぬよう速やかに排除し、路盤にも水が浸入しないようにしなければならない。そのための排水法としては路傍に沿って側溝を設けるものが最も一般的であるが、この側溝によれば集まった水を長い区間流下させると流量を増して溢流し路面の洗掘を来すから、適当な箇所を選んで山側より道路を横断して谷側に放流するための横断渠を設ける必要がある。ところが、側溝や横断渠によれば建造費が莫大であり、また横断渠があっても雨量の多いときには側溝から溢水してしまうなどの問題があった。そこで、従来では路面に所要の間隔で排水用具を埋設し、その排水用具で路面上の流水を谷側に放出させるなどして対処してきた」(段落「0002」〜「0004」参照。)と記載されている。
【0003】
上記の「横断渠」として、例えば、コンクリート製のU字溝を用いると、溝内に木屑、枯葉、土砂等が堆積して排水の効果が発揮されない上に、林業の採算性の悪化を考慮すると、コンクリート製のU字溝は高価であるという問題があり、このため、上述のように、「側溝」や「横断渠」に代えて、「排水用具」が用いられ、「排水用具」の材料としては、木材(特に、間伐材)や、ゴム等の弾性材が用いられることが多く、ゴム等の弾性材を用いた排水用具として、例えば、以下の特許文献1〜5に示すような、いろいろな考案・発明が提案されている。
【0004】
上述した特許文献1には「路傍の一方側から他方側に向けて埋設される角材と、この角材に固定される可撓性部材で成り、その可撓性部材は二つ折り構成として両側縁が重合して成る下端を前記角材の長手方向に沿って固定し、逆U字形となる上端が路面上に突出するようにしたことを特徴とする路面用排水具」(「請求項1」参照。)が記載され、特許文献2には「上面が地面より突出しない状態で、道路を横切る方向に地中に埋設する長尺の補強部と、この補強部から立ち上げて、地上に突出させる長尺の弾性材料からなる板状部とから形成したことを特徴とする路面排水帯」(「請求項1」参照。)が記載され、特許文献3には「固定台座(2)の上部に弾性膜(3)を弧状に張り。その両側部を固定副台座(4)で挟み込み、ボルト(5)で締め付けてなる林道横断排水誘導膜」(「請求項1」参照。)が記載され、特許文献4には「長尺の板状の弾性部と、道路を横切る方向に埋設させるものであって前記弾性材部を路面上に突出させるように支持する長尺の支持部と、その支持部と前記道路の支持基盤との間に設ける長尺の支持強化部とを備え、前記支持強化部を前記支持部の底面に可動自在に取り付けることを特徴とする路面排水帯」(「請求項1」参照。)が記載され、特許文献5には「堰となって設置面上に流れる水を誘導する弾性板からなる帯部と、帯部の下方にて帯面に対し屈曲又は湾曲して設置面に接地しうる複数の接地片と、接地片を設置面に固定する固定手段とを具備してなり、複数の固定された接地片によって帯部が立設固定される自立式導水帯であって、少なくともいずれか2つ以上の接地片は、両帯面のうち一の帯面側及び他の帯面側へ交互に屈曲又は湾曲固定されてなることを特徴とする自立式導水帯」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1には、「路面用排水具」は「角材1」と等長の「可撓性部材2」を「角材1」に固定して形成され、「角材1」を「路面Rに埋設」し、「山側から流れてくる雨水を路面Rに突出する可撓性部材2にて谷側Gに導き排出させることができる」(段落「0023」、
図3参照。)ことが記載されている。ここで、「角材1は作業道Mにおける路傍m,mの一方側から他方側に向けて埋設される」(段落「0022」、
図3参照。)と記載されているので、「可撓性部材2」の両端は、「作業道M」の「路傍m,m」、つまり、「作業道M」の両路端に位置するように形成されているものと認められる(
図1、
図3等参照。)。また、
図3において、「作業道M」の「谷側G」は、地山を削り、地山の上に法面保護工を設けずに、直接盛土が形成されていることが多い。このような場合、「可撓性部材2にて谷側Gに導き排出」される流水の落下地点(以下、「水叩き部」という。)は、盛土法面の一部分になる。なお、「流水」は、特許文献1に記載された「路面上の雨水・側方斜面から流出する水、あるいは路傍のわき水」(段落「0002」参照。)を含むものとする。以下、同様である。一般的に、盛土は、地山に比べて、地盤の強度がかなり弱いので、同一の「水叩き部」に流水の排出を何回も繰り返していると、「水叩き部」が徐々に浸食されていき、最悪の場合、盛土法面が崩壊してしまうという問題がある。そして、この問題は、特許文献2〜
5に記載の発明にも共通して存在する。
【0007】
特許文献2の「弾性材からなる板状部4」の両端は、「道路2」の両路端に位置するように形成され(
図1、
図3、
図4等参照。)、特許文献3の「弾性膜(3)」の両端は、「林道」の両路端に位置するように形成され(
図1等参照。)、特許文献4の「弾性部4」の両端は、「新設道路Q」の両路端に位置するように形成され(
図2、
図5等参照。)、特許文献5の「帯部1」の両端は、「未舗装の路面」の両路端に位置するように形成され(
図7参照。)ており、いずれの文献に記載の発明も、道路の路端部に側溝を設けずに、雨水は盛土の法面の水叩き部に排出されることを前提にしているものと推量される。
【0008】
このため、本発明では、造林用作業道の谷側が、盛土が直接地山の上に形成されている構成においては、排出される流水の水叩き部が盛土より下方の地山になるように形成された造林用作業道横断
排水具を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明では、造林用作業道の谷側が、盛土が法面保護工を介して地山の上に形成されている構成においては、排出される流水の水叩き部が盛土より下方の法面保護工になるように形成された造林用作業道横断
排水具を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明では、安価で、施工が簡単にできる造林用作業道横断
排水具を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明では、管理費用を削減することができる造林用作業道横断
排水具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、未舗装の造林用作業道に設けられ、流水を堰き止めて排出する造林用作業道横断
排水具であって、長尺の支持角材と、該支持角材に取付けられた第1の弾性材及び第2の弾性材を備え、前記第1の弾性材は、帯状に形成され、上端が前記支持角材の上面より突出して前記支持角材に取付けられ、前記第2の弾性材は、帯状に形成され、両端部のうち、一方の端部は前記支持角材の上面に固定され、他方の端部は固定されていないことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の造林用作業道横断
排水具であって、前記未舗装の造林用作業道は、山側と谷側との間に敷設され、該谷側は、地山の上側に盛土が形成された構成であり、前記第2の弾性材は、前記固定されていない他方の端部が前記地山に到達可能な長さに形成されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の造林用作業道横断
排水具であって、前記未舗装の造林用作業道は、山側と谷側との間に敷設され、前記谷側は、地山の上側に法面保護工を介して盛土が形成された構成であり、前記第2の弾性材は、前記固定されていない他方の端部が前記法面保護工に到達可能な長さに形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の造林用作業道横断
排水具であって、前記支持角材は、対向して配設された第1の角材及び第2の角材で構成され、前記第1の角材は、複数の第1の分割角材が連結されて構成され、前記第2の角材は、複数の第2の分割角材が連結されて構成され、前記第2の弾性材の一方の端部は、前記第1の分割角材及び前記第2の分割角材の上面に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の造林用作業道横断
排水具によれば、造林用作業道に設置した際に、水叩き部が盛土より下方の地山又は法面保護工に形成されるので、排出された流水が盛土を浸食する虞がないという顕著な効果を奏することができる。
【0017】
また、本発明の造林用作業道横断
排水具によれば、造林用作業横断
排水具を、間伐材とゴムベルトの廃材とを用いて形成するので、安価で施工も簡単であり、また、メンテナンス等の管理費用も削減できるという顕著な効果を奏することができる。
【0018】
また、本発明の造林用作業道横断
排水具によれば、従来技術のような溝清掃をする必要がないので、管理費用も削減できるという顕著な効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。なお、説明の便宜上、本明細書で示す上,下,左,右の方向は、図中で示す矢印の上,下,左,右の方向と対応するものとする。
【0021】
(第1実施形態)
<全体構成>
図1に本発明の第1実施形態の造林用作業道横断
排水具の斜視図を示し、
図2に
図1の正面図を示し、
図3に
図1の背面図を示し、
図4に
図1の左側面図を示し、
図5に
図1の右側面図を示し、
図6に
図1の平面図を示し、
図7に
図1の底面図を示す。
図示するように、本発明の第1実施形態の造林用作業道横断
排水具1は、長尺の支持角材2と、支持角材2に取付けられた第1の弾性材3及び第2の弾性材4とを備え、第1の弾性材3は、帯状に形成され、上端が支持角材2の上面より突出するように支持角材2に取付けられており、第2の弾性材4は、帯状に形成され、左右の両端部のうち、右側の端部は支持角材2の上面に固定して取付けられ、左側の端部は固定されていない。この第2の弾性材4の固定された右側の端部を固定端部4a、固定されていない左側の端部を自由端部4bという。
【0022】
<支持角材2>
第1実施形態では、支持角材2は、長尺の角柱形状の第1の角材2aと第2の角材2bとで構成されている。第1の角材2aと第2の角材2bとは、好適には同一形状に形成される。第1の角材2aは前側に配設され、第2の角材2bは後側に配設され、第1の弾性材3が第1の角材2aと第2の角材2bとで前後から挟持された状態で、第1の角材2aと第2の角材2bと第1の弾性材3は、複数の螺着手段5が前後方向に貫通されて螺着により固定されている。
【0023】
<螺着手段5>
螺着手段5は、ボルトとナットで構成されており、図では、後側から第1の角材2a、第1の弾性材3、第2の角材2bを貫通してボルトが螺挿され、螺挿されたボルトに前側からナットが螺着されて、第1の角材2aと第1の弾性材3と第2の角材2bとが固定されている。第1の角材2a、第1の弾性材3、及び、第2の角材2bの長手方向には、所定の間隔で複数の螺着手段5が螺挿されている。なお、ボルトを前側から螺挿して、ナットを後側から螺着する構成にしてもよい。
【0024】
<固定手段6>
固定手段6は、複数の螺着手段5の螺軸(図では、ボルト軸)間に、上下方向に第1の角材2a又は第2の角材2bを貫通して固定されている。固定手段6は、例えば、図示するようにアンカーピンが用いられている。アンカーピンは、第1の角材2a及び第2の角材2bのそれぞれの上面に係止する頭部と、頭部から屈曲されて下方に延伸する脚部とからなり、脚部の先端は尖鋭に形成されている。アンカーピンの長さは、第1の角材2a及び第2の角材2bに打ち込まれたときに、脚部の一部が第1の角材2a及び第2の角材2bの下面より突出する長さである。
【0025】
<第1の角材2a及び第2の角材2b>
第1の角材2a及び第2の角材2bで構成される支持角材2は、未舗装の造林用作業道路を山側から谷側に向けて斜めに横切るように、造林用作業道路に対して所定の角度を以て埋設される(詳細は後述する。)。支持角材2の長さL2は、支持角材2の両端が、造林用作業道路の両路端に位置することができる長さに形成されている。本実施形態では、説明の便宜上、第1の角材2aの長さL2a及び第2の角材2bの長さL2bも、支持角材2の長さL2に等しいものとして説明する。
【0026】
<第1の弾性材3>
第1の弾性材3は、長さL3,幅W3,厚さt3の帯状に形成され、造林用作業道路に支持角材2と共に埋設されるときに、上端部が造林用作業道路から突出されるように、支持角材2の長手方向に沿って、支持角材2の上面より突出する帯状の突出帯部3aを設けて、支持角材2に取り付けられている。突出帯部3aの幅をW3aで示している。この突出帯部3aが、流水を堰き止めて、第2の弾性材4の方に誘導して集水する。第1の弾性材3の下端は、図示のように第1の角材2a及び第2の角材2bの下端と同じ位置でもよいが、螺着手段5の螺軸(つまり、ボルトの軸)が挿通される位置よりも下方にあればよい。第1の弾性材3の長さL3は、好適には、図示のように支持角材2の長さL2と等しい長さに形成されているが、第1の弾性材3の長さL3は、支持角材2の長さL2より多少長くてもよい。
【0027】
<第2の弾性材4の幅>
第1実施形態においては、第2の弾性材4の幅W4は、第1の角材2aの幅W2aと第1の弾性材3の厚さt3と第2の角材2bの幅W2bの総和に略等しく設定されている(特に、
図4参照。)。造林用作業道横断
排水具1を造林用作業道に設置して使用する際に、第1の弾性材3によって堰き止められ、集水された流水が、第2の弾性材4に沿って自由端部4bから地山の水叩き部に排出されるまでの間に漏出するのをできるだけ低減するためには、第2の弾性材4の幅W4は、好適には広く形成した方がよい。
【0028】
<固定手段7>
第2の弾性材4の固定端部4aは、固定手段7で、第1の角材2a及び第2の角材2bの上面の所定位置に固定して取付けられている。固定端部4aには切欠部4cが設けられ、この切欠部4cが第1の弾性材3の突出帯部3aを挟み込むようにして、固定端部4aが第1の角材2a及び第2の角材2bの上面に取り付けられている。固定手段7としては、例えば、図示するようなスクリュー座金が用いられる。スクリュー座金は、座金とナットが一体化しており、アンカーボルトを螺着することができる。座金は、第2の弾性材4の上面から突出しないので、車両通行時のタイヤの損傷が防止できる。また、アンカーボルトは、左端の螺着手段5よりも右側位置に貫通される。固定手段7の個数と取付位置は、第1の角材2a及び第2の角材2bに取付ける第2の弾性材4の長さ(つまり、重さ)に応じて、適宜変更することができる。例えば、第2の弾性材4の長さが長くなり重量が増してくると、固定端部4aを第1の角材2a及び第2の角材2bの右側に移動させて固定手段7の数を増やして取付ける構成にしてもよい。
【0029】
<第2の弾性材4の長さ>
本発明では、従来技術とは異なり、支持角材2に帯状の第2の弾性材4が設けられており、第2の弾性材4の長さL4は、造林用作業道の谷側の構成に応じて決められる。一般的に、造林用作業道は、地山の斜面の土砂を切取り、切取った土砂を下方の地山の斜面に積み重ねて盛土を形成し、この盛土(一部に地山を含むこともある。)の上に敷設される。山側には切土斜面が形成され、谷側には盛土斜面が形成される。このとき、地山の上に直接盛土が形成される構成と、地山の上の少なくとも一部に形成された植生工や構造物工等の法面保護工を介して盛土が形成される構成とがある。法面保護工は、盛土の環境保全や浸食防止等に設けられるもので、法面植生工は法面に植物を繁茂させて構成され、構造物工は法面にコンクリート等の構造物(ふとん篭、擁壁等)を構築して構成される。
【0030】
[谷側が、地山の上側に直接盛土が形成された構成の場合]
造林用作業道Mは、特に、作業道の敷設においては、法面保護工を設置するための莫大な工事費用の投入が困難であることから、
図8(a)に示すように、谷側Vsの構成が、地山Gの上側に、法面保護工が設置されずに、直接盛土Fが形成されている場合が多いものと思われる。しかしながら、一般に、盛土Fは地山Gに比べ地盤強度が弱く、浸食を受けやすいことが知られている。水叩き部、つまり、造林用作業道横断
排水具から排出される流水の落下地点が、直接盛土F上にあるときは、盛土Fが流水により浸食される虞がある。そこで、本願発明者は、水叩き部が盛土にならないように構成された造林用作業道横断
排水具を発明した。
第1実施形態においては、造林用作業道横断
排水具1を未舗装の造林用作業道Mに埋設したときに、第2の弾性材4の自由端部4bが、谷側Vsの盛土Fより下方の地山Gに到達することが可能なように、第2の弾性材4の長さL4が形成される。つまり、第1の弾性材3で堰き止められ誘導された流水が集水され、第2の弾性材4に沿って排出され、排出された流水が盛土Fよりも下方に形成されている地山Gに到達することができるので、水叩き部WPが地山Gの法面S3に形成され、盛土Fが流水で浸食される虞がない。第2の弾性材4の長さL4は、盛土Fの高さ、勾配等から決まる盛土法面S2の長さ等も考慮して適宜調整される。
【0031】
[谷側が、地山の上側に法面保護工を介して盛土が形成された構成の場合]
上述したように、盛土は地山に比べ地盤強度が弱く、浸食を受けやすいことから、
図8(b)に示すように、地山Gの上に部分的に法面保護工SPが形成され、この法面保護工SPの上に盛土Fが形成されることもある。法面保護工SPは、上述したように構造物工(擁壁、ふとん篭等)や植生工で形成されるので盛土Fに比べ地盤強度が強い。谷側Vsがこのような構成である場合は、水叩き部(造林用作業道横断
排水具から排出される流水の落下地点)WPは、法面保護工SP上に形成すればよい。つまり、造林用作業道横断
排水具1の第2の弾性材4の長さL4は、自由端部4bが谷側Vsの地山Gに到達するほど長くなくてもよく、少なくとも自由端部4bが法面保護工SPに到達する長さに形成されていればよい。なお、植生工は、施工後、植物が一定の大きさに成長するまでは、地盤が所望の強さに形成されていないので、植生工の施工と同時期に造林用作業道横断
排水具1を設置するような場合は、好適には、第2の弾性材4の長さL4は、自由端部4bが谷側Vsの地山Gに到達することができる長さに形成される。
【0032】
<素材>
本実施形態では、第1の角材2a及び第2の角材2bに間伐材を用いているので、安価であり、また、丸太ではなく角材を用いることで、第1の角材2a及び第2の角材2bを造林用作業道路に埋設したときに、安定性が向上する。また、第1の角材2a及び第2の角材2bの上下方向に固定手段6を貫通させ、固定手段6の下部が第1の角材2a及び第2の角材2bの下端面から突出するようにして固定しているので、埋設時の安定性がさらに向上する。第1の弾性材3及び第2の弾性材4にはゴムベルトの廃材を用いているので、製造コストを低減することができる。
【0033】
<使用状態>
次に、本実施形態の造林用作業道横断
排水具1の使用状態について説明する。
図9は造林用作業道横断
排水具1の使用状態を説明する断面図を示し、
図10は造林用作業道横断
排水具1の使用状態を説明する斜視図である。
図9(a)及び
図10では、上述した「谷側が、地山の上側に直接盛土が形成された構成の場合」を示している。
図9(b)では、上述した「谷側が、地山の上側に法面保護工を介して盛土が形成された構成の場合」を示している。図示するように、谷側Vsの地山Gの斜面の一部を切り取って地山G斜面上に盛土Fが形成され、この地山Gと盛土Fの上に造林用作業道Mが敷設されている。造林用作業道Mの山側Msには、地山Gの切土法面S1が形成されている。なお、造林用作業道Mに横断勾配が設けられているときは、横断勾配に合わせて造林用作業道横断
排水具1を設置するとよい。
【0034】
以下、「谷側が、地山の上側に直接盛土が形成された構成の場合」について、
図9(a)及び
図10を参照しながら説明する。造林用作業道横断
排水具1は、流水を集水して谷側Vsに排出させるため、未舗装の造林用作業道Mを山側Msから谷側Vsに向けて斜めに横切るように埋設される。造林用作業道横断
排水具1を構成する支持角材2の両端部は、未舗装の造林用作業道Mの両路端に位置するように埋設される。第1の角材2a及び第2の角材2b及び第1の弾性材3についても同様である。支持角材2は、上面が造林用作業道Mの路面と一致するように、造林用作業道M下の地山G又は盛土F中に埋設され、第1の弾性材3は、突出帯部3aが造林用作業道Mの路面より上に突出するように、造林用作業道M直下に形成されている地山G又は盛土Fの地中に埋設される。同様に、螺着手段5及び固定手段6も、造林用作業道M直下の地山G又は盛土Fの地中に埋設される。
【0035】
第2の弾性材4は盛土Fの盛土法面S2に沿って配設され、第2の弾性材4の固定端部4aは、造林用作業道路Mの左側(谷側Vs)の路端部に位置し、第2の弾性材4の自由端部4bは、盛土Fと地山Gとの境界地点より低い位置、つまり、盛土法面S2と地山法面S3との境界地点より低い位置に形成されるように構成されている。このため、
図10に示すように、造林用作業道路Mの上流又は切土法面S1から流れてきた雨水等の流水FWは、第1の弾性体3の突出帯部3aによって堰き止められ谷側Vsに誘導されて集水され、第2の弾性体4に沿って流れ、盛土F下方の地山Gの水叩き部WPに落下して排出されることになる。つまり、水叩き部WPが盛土Fではなく、盛土F下方の地山Gに形成されることになる。これにより、従来技術の「盛土に雨水が排出され、盛土が浸食される」という問題が解決されるので、盛土Fの崩壊の虞がなくなった。また、流水FWの殆どが第2の弾性材4に沿って地山Gの水叩き部WPまで誘導されるので、流水FWが誘導途中に溢れて排出されても、その量は少量であり、盛土法面S2に落下しても浸食される虞がない。そして、第1の角材2a及び第2の角材2bに間伐材を利用し、第1の弾性材3及び第2の弾性材4にゴムベルトの廃材を利用しているので、非常に安価な造林用作業道横断
排水具1を製作することができる。また、構成が簡単であるので、施工も容易に行うことができ、施工費用を削減することができる。さらに、「溝の清掃」という従来技術の課題もないので、管理面の費用も削減することができる。なお、本実施形態において、造林用作業道横断
排水具1は、造林用作業道Mの長さ方向に所定間隔で複数埋設されるが、
図9、
図10では、一つの造林用作業道横断
排水具1について示している。
【0036】
(第2実施形態)
図11に本発明の第2実施形態の造林用作業道横断
排水具10の斜視図を示し、
図12に本発明の第2実施形態の造林用作業道横断
排水具10の平面図を示す。なお、第1実施形態と同じ構成の部材には、同じ符号を付している。造林用作業道横断
排水具10が、第1実施形態の造林用作業道横断
排水具1と異なる点は、第1実施形態では、支持角材2を一対の長尺の第1の角材2a及び第2の角材2bで構成していたが、第2実施形態では、支持角材12を、第1実施形態で用いた第2の角材2bのみで構成し、第2の弾性材14の幅W14を第2の角材2bの幅W2bと同じ幅にし、さらに、第1の弾性材13の長さL13を第2の角材2bの長さL2bよりも長くしたことである。このため、
図11、
図12に示すように、第2の角材2bの前面に第1の弾性材13を取付け、螺着手段5を第2の角材2b及び第1の弾性材13に前後方向に貫通して、第2の角材2bと第1の弾性材13とを螺着固定し、第2の角材2bの上下方向に固定手段6を貫通して固定する。第2の弾性材14の固定端部14aは、第2の角材2bの上面に固定手段7によって固定して取付けられている。本実施形態では、第2の弾性材14の幅W14が、第1実施形態の第2の弾性材4の幅W4よりも狭くなったので、第1の弾性材13によって堰き止めて集水された流水の漏出を低減するため、第1の弾性材13の長さL13を第2の角材2bの長さL2bよりも長くすることで突出帯部13aを第1実施形態の突出帯部3aよりも谷側Vsの方に長くなるように構成したのである。したがって、作用・効果も、第1実施形態の作用・効果と同じである。なお、第1の弾性材13全体の長さを一様に長くしなくても、突出帯部13aの部分だけを第2の角材2bの長さL2bよりも長くする構成でもよい。なお、第2実施形態では、第2の弾性材14の固定端部14aの第2の角材2bへの取付け位置は、山側Msと谷側Vsの位置関係によっても適宜調整する必要してよい。
【0037】
(第3実施形態)
図13に本発明の第3施形態の造林用作業道横断
排水具20の斜視図を示し、
図14に本発明の第3施形態の造林用作業道横断
排水具20の平面図を示す。第3実施形態では、第1実施形態に対して、支持角材22が第1の角材22aと第2の角材22bとで構成されている点では同様であるが、第1の角材22aが複数の第1の分割角材221aで連結して構成され、第2の角材22bが複数の第2の分割角材221bで連結して構成されている点が異なっている。第1の分割角材221aは、一端又は両端に継手部221cを備え、隣接する第1の分割角材221a同士が継手部221cで連結されている。また、第2の分割角材221bは、一端又は両端に継手部221cを備え、隣接する第2の分割角材221b同士が継手部221cで連結されている。図では、支持角材22の両端部に配設される第1の分割角材221aは、一方の端部に継手部221cが形成されていればよく、その他の第1の分割角材221aは、両端に継手部221cが形成される。同様に、支持角材22の両端部に配設される第2の分割角材221bは、一方の端部に継手部221cが形成されていればよく、その他の第2の分割角材221bは、両端に継手部221cが形成される。継手部221cの構成は、好適には、図示のように相欠き継ぎが用いられるが、他の継手を用いてもよい。
【0038】
対応する第1の分割角材221aと第2の分割角材221bとで、帯状の突出帯部23aが支持角材22の上面より突出するように、第1の弾性材23を挟持した状態で、第1の分割角材221aと第2の分割角材221bと第1の弾性材23とは、複数の螺着手段5が水平方向に貫通されて螺着により固定されている。第1の弾性材23は、図示するように、支持角材22と略同じ長の一枚のゴムベルトで形成されてもよいし、複数のゴムベルトで形成された分割弾性材に分割されていてもよい。その他、第1実施形態と同様に、第2の弾性材4と固定手段7、アンカーピンによる固定手段6等が設けられている。なお、第3実施形態では、座堀孔5aに固定手段6を螺挿することで、螺着手段5のボルト頭、ナットが支持角材22の前面及び背面から突出しないようにしてる。また、螺着手段5には、座金を用いている。
【0039】
第3実施形態によれば、支持角材22を第1の角材22a及び第2の角材22bで構成し、第1の角材22aを複数の第1の分割角材221aで連結して構成し、第2の角材22bを複数の第2の分割角材221bで連結して構成するようにしたことで、第1の分割角材221a、第2の分割角材221bを適宜連結して、幅員の広い造林用作業道に対しても適用することができる。支持角材22を製造するときに、4mを超えるような部材を用いると、部材の価格が極端に高くなるが、第3実施形態によれば、4m以下の第1の分割角材221a、第2の分割角材22bを製造することで、製造コストを低くすることができる。また、支持角材の長さが長すぎるときは輸送が困難であったが、第3実施形態によれば、造林用作業道横断
排水具20を分割した状態で輸送し、現場で組み立てるようにすれば、輸送も容易に行うことができる。また、第3実施形態においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【0040】
(変形例1)
図15に第2の弾性材の形状の変形例について示す。
図15(a)は、斜視図であり、
図15(b)は、正面図である。第1乃至第3実施形態では、第2の弾性材4の上面は、平坦形状で図示しているが、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、第2の弾性材14の上面側に、複数のV字状の溝14aを形成し、流水をより流れやすくしてもよい
【0041】
(変形例2)
図16に第2の弾性材の幅の変形例について示す。
図16(a)は、第1実施形態の弾性材の幅の変形例であり、
図16(b)は、第2実施形態の弾性材の幅の変形例であり、それぞれ、左側面図を示している。第1実施形態(第3実施形態でも同様。)では、第2の弾性材4の幅W4は、第1の角材2aの幅W2aと第1の弾性材3の厚さt3と第2の角材2bの幅W2bとの総和に略等しく、第2実施形態では、第2の弾性材14の幅W14は、第2の角材2bの幅W2bと略等しくなるように形成したが、
図16(a)に示すように、第2の弾性材104の幅W104を、第1の角材2aの幅W2aと第1の弾性材3の厚さt3と第2の角材2bの幅W2bとの総和より拡幅して形成して造林用作業道横断
排水具100を構成してもよく、
図16(b)に示すように、第2の弾性材114の幅W114を、第2の角材2bの幅W2bよりも拡幅して形成して造林用作業道横断
排水具110を構成してもよい。これらの変形例によれば、より多くの量の流水に対応することができる。
であって、長尺の支持角材と、該支持角材に取付けられた第1の弾性材及び第2の弾性材を備え、前記第1の弾性材は、帯状に形成され、上端が前記支持角材の上面より突出して前記支持角材に取付けられ、前記第2の弾性材は、帯状に形成され、両端部のうち、一方の端部は前記支持角材の上面に固定され、他方の端部は固定されていないことを特徴とする。