特許第6462843号(P6462843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462843検出方法、検査方法、検出装置及び検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6462843
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】検出方法、検査方法、検出装置及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
   G01N21/88 J
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-253050(P2017-253050)
(22)【出願日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年7月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100166501
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】西澤 正泰
(72)【発明者】
【氏名】幸山 常仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘修
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6249513(JP,B2)
【文献】 特開2005−241290(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0048467(US,A1)
【文献】 特開平11−311608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明するステップと、
前記照明光によって照明された前記検査対象からの光を集光し、集光した前記光を検査用検出器により検出して、前記検査対象の画像データを取得するステップと、
前記照明光の一部を用いて補正用検出器を照明することにより検出された前記照明光の輝度分布の画像データを取得するステップと、
前記輝度分布の画像データに基づいて、前記検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出するステップと、
を備え
前記パルス光を含む照明光を発生させる光源の発光タイミングを、前記検査用検出器及び前記補正用検出器の転送タイミングと一致しないように同期制御する検出方法。
【請求項2】
パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明するステップと、
前記照明光によって照明された前記検査対象からの光を集光し、集光した前記光を検査用検出器により検出して、前記検査対象の画像データを取得するステップと、
前記照明光の一部を用いて補正用検出器を照明することにより検出された前記照明光の輝度分布の画像データを取得するステップと、
前記輝度分布の画像データに基づいて、前記検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出するステップと、
を備え、
前記パルス光の発光周期をτとし、
前記検査用検出器の画像データの積算時間内に、前記パルス光が発光する回数をNとした場合に、
前記補正用検出器の転送方向画素数をPTCとし、
前記補正用検出器の転送周期をτTCとすると、Mを整数として、
TC=M×N
τTC=τ/M
を満たすように、前記補正用検出器の前記転送方向画素数及び前記補正用検出器の前記転送周期を決定する検出方法。
【請求項3】
前記輝度分布の画像データの倍率に対する前記検査対象の画像データの倍率をRとした場合に、
前記検査用検出器の転送方向画素数をPTIとし、
前記検査用検出器の転送周期をτTIとすると、
TI=R×M×N
τTI=τ/(M×R)
を満たすように、前記検査用検出器の前記転送方向画素数及び前記検査用検出器の前記転送周期を決定する、
請求項に記載の検出方法。
【請求項4】
前記検査用検出器及び前記補正用検出器の前記転送方向画素数を、ファインポジショナに取付けられた遮光板により調整する、
請求項2または3に記載の検出方法。
【請求項5】
前記パルス光を含む照明光を発生させる光源の発光タイミングを、前記検査用検出器及び前記補正用検出器の転送タイミングと一致しないように同期制御する、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
前記輝度分布の画像データにおける倍率を、前記検査対象の画像データの倍率よりも低くする、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項7】
前記照明光の輝度分布の画像データを取得するステップにおいて、
前記検査対象に対して前記照明光を入射させる落とし込みミラーと、前記照明光を収束光として前記落とし込みミラーに入射させる反射鏡と、の間の前記照明光の一部をカットミラーで取り出す、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項8】
前記カットミラーが配置された位置における前記照明光の光軸に直交する断面の断面積において、前記一部の断面積を、前記一部以外の断面積よりも小さくする、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の検出方法により、前記検査用画像データを検出するステップの後に、前記検査用画像データを用いて、前記検査対象を検査するステップをさらに備えた、
検査方法。
【請求項10】
パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明する照明光学系と、
前記照明光によって照明された前記検査対象からの光を集光し、集光した前記光を検査用検出器により検出して、前記検査対象の画像データを取得する検出光学系と、
前記照明光の一部を用いて補正用検出器を照明することにより検出された前記照明光の輝度分布の画像データを取得するモニタ部と、
前記輝度分布の画像データに基づいて、前記検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出する処理部と、
を備え、
前記パルス光を含む照明光を発生させる光源の発光タイミングを、前記検査用検出器及び前記補正用検出器の転送タイミングと一致しないように同期制御した検出装置。
【請求項11】
パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明する照明光学系と、
前記照明光によって照明された前記検査対象からの光を集光し、集光した前記光を検査用検出器により検出して、前記検査対象の画像データを取得する検出光学系と、
前記照明光の一部を用いて補正用検出器を照明することにより検出された前記照明光の輝度分布の画像データを取得するモニタ部と、
前記輝度分布の画像データに基づいて、前記検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出する処理部と、
を備え、
前記パルス光の発光周期をτとし、
前記検査用検出器の画像データの積算時間内に、前記パルス光が発光する回数をNとした場合に、
前記補正用検出器の転送方向画素数をPTCとし、
前記補正用検出器の転送周期をτTCとすると、Mを整数として、
前記補正用検出器の前記転送方向画素数及び前記補正用検出器の前記転送周期は、
TC=M×N
τTC=τ/M
を満たす検出装置。
【請求項12】
前記輝度分布の画像データの倍率に対する前記検査対象の画像データの倍率をRとし、
前記検査用検出器の転送方向画素数をPTIとし、
前記検査用検出器の転送周期をτTIとすると、
前記検査用検出器の前記転送方向画素数及び前記検査用検出器の前記転送周期は、
TI=R×M×N
τTI=τ/(M×R)
を満たす、
請求項11に記載の検出装置。
【請求項13】
前記検査用検出器及び前記補正用検出器の前記転送方向画素数を、ファインポジショナに取付けられた遮光板により調整する遮光部をさらに備えた、
請求項11または12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記パルス光を含む照明光を発生させる光源の発光タイミングを、前記検査用検出器及び前記補正用検出器の転送タイミングと一致しないように同期制御した、
請求項11〜13のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項15】
前記モニタ部が取得した前記輝度分布の画像データにおける倍率は、前記検出光学系が取得した前記検査対象の画像データの倍率よりも低い、
請求項10〜14のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項16】
前記照明光学系は、
前記検査対象に対して前記照明光を入射させる落とし込みミラーと、前記照明光を収束光として前記落とし込みミラーに入射させる反射鏡と、を有し、
前記モニタ部は、
前記反射鏡と、前記落とし込みミラーとの間の前記照明光の一部を取り出すカットミラーを有する、
請求項10〜15のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項17】
前記カットミラーが配置された位置における前記照明光の光軸に直交する断面の断面積において、前記一部の断面積は、前記一部以外の断面積よりも小さい、
請求項16に記載の検出装置。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか一項に記載の検出装置を備え、
前記処理部は、検出した前記検査用画像データを用いて、前記検査対象を検査する、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出方法、検査方法、検出装置及び検査装置に関し、特に、検査対象の検査用の画像データを検出する検出方法及び検出装置、並びに、検出した検査用の画像データを用いて検査対象を検査する検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EUV(Extreme Ultra Violet)リソグラフィ用のマスク(以下、EUVマスクという。)を検査対象とする検査において、検査の精度を向上させるために、高輝度のパルス光を用いる場合がある。また、照明光の輝度を確保するために、クリティカル照明が用いられる場合がある。クリティカル照明は、光源の像をEUVマスクの上面に結像させるように照明する方法であり、高輝度で照明することができる光学系となっている。
【0003】
さらに、検査用画像データを検出する際、XY方向の2次元エリアセンサの画素値をX方向にステージと同期させながら転送させ、得られる画素値を時間遅延積分するTDI(Time Delay Integration)モードでエリアセンサを動作させる場合がある。TDIモードを用いることにより、センサ素子の感度不足を補い、マスクパターンを高感度で撮像できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−311608号公報
【特許文献2】特開2005−241290号公報
【特許文献3】特開2009−075068号公報
【特許文献4】特開2010−091552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リソグラフィ用マスク検査装置では、撮像した検査画像と、設計データあるいは試料上の同一パターンを撮像した参照画像とを比較し、両者が一致しない場合にはパターン欠陥が有ると判断する。
【0006】
検査装置の光源としてパルス光源を用いる場合、しばしば、光源から発光されたパルス光の輝度分布がパルス毎に変化し、バラつきが生じる場合がある。ここで言うバラつきとは、パルス光の全光量がパルス毎に変化することに加え、パルス光が照射される面内での照射光強度の位置分布(以下では単に輝度分布と呼ぶ)がパルス毎に変化することを含む。このようなバラツキを輝度ムラと呼ぶ。
【0007】
パルス光源から照射される照射光に輝度ムラがあると、それに応じて、撮像されたマスクパターン像に意図しない輝度の変化(アーティファクト)が生じるため、パターン欠陥の判定に誤りが生じる。そこで、光源の輝度ムラを検出し、TDIセンサの出力変動を補正する、ということが必要となる。
【0008】
パルス光の全光量がパルス毎に変化することについては、特許文献4にあるように、パルス光の光量を検知する補正用光量センサを設置し、パルス光の周期に同期させてパルス毎の全光量を測定することにより、TDIセンサの出力変動を補正することができる。しかし、この文献では輝度分布がパルス毎に変化することが考慮されておらず、これに起因するアーティファクトは補正できないという問題がある。
【0009】
輝度ムラを補正するためには、パルス毎の全光量を測定するだけでなく、パルス光の輝度分布を検出できる補正用検出器を用いることが必要である。そこで、輝度ムラを補正するための検出装置として、第二のTDIセンサを用いて光源の輝度分布を検出し、輝度ムラ補正を行う方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、検査対象の画像データ及び輝度分布の画像データを、TDIセンサを用いて取得する場合、後に実施形態の説明において明らかになるように、検査用検出器及び補正用検出器の転送方向の画素数が異なると、それぞれの検出器の積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差を含む可能性がある。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、輝度ムラ補正の誤差を抑制し、検査対象を精度よく検査することができる検出方法、検査方法、検出装置及び検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る検出方法は、パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明するステップと、前記照明光によって照明された前記検査対象からの光を集光し、集光した前記光を検査用検出器により検出して、前記検査対象の画像データを取得するステップと、前記照明光の一部を用いて補正用検出器を照明することにより検出された前記照明光の輝度分布の画像データを取得するステップと、前記輝度分布の画像データに基づいて、前記検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出するステップと、を備える。このような構成により、検査対象の画像データを精度よく検出することができる。
【0013】
また、前記輝度分布の画像データにおける倍率を、前記検査対象の画像データの倍率よりも低くする。これにより、輝度分布を検出する光量密度を大きくすることができ、照明光の輝度分布を精度良く補正することができる。
【0014】
パルス光を発光する光源の発光タイミングは、検査用検出器及び補正用検出器の転送タイミングと一致しないように制御する。すなわち、検査用検出器及び補正用検出器の転送タイミングとパルス光源の発光タイミングとの間に、ある一定の位相差を持つよう同期制御する。この同期制御を行うことにより、以下に述べる検出器の積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差の抑制が可能となる。
【0015】
前記パルス光の発光周期をτとし、前記検査用検出器の画像データの積算時間内に、前記パルス光が発光する回数をNとした場合に、前記補正用検出器の転送方向画素数をPTCとし、前記補正用検出器の転送周期をτTCとすると、Mを整数として、PTC=M×N、τTC=τ/Mを満たすように、前記補正用検出器の前記転送方向画素数及び前記転送周期を決定する。これにより、積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差を抑制することができる。
【0016】
前記輝度分布の画像データの倍率に対する前記検査対象の画像データの倍率をRとした場合に、前記検査用検出器の転送方向画素数をPTIとし、前記検査用検出器の転送周期をτTIとすると、PTI=R×M×N、τTI=τ/(M×R)を満たすように、前記検査用検出器の前記転送方向画素数及び前記転送周期を決定する。これにより、積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差を抑制することができる。
【0017】
また、前記照明光の輝度分布の画像データを取得するステップにおいて、前記検査対象に対して前記照明光を入射させる落とし込みミラーと、前記照明光を収束光として前記落とし込みミラーに入射させる反射鏡と、の間の前記照明光の一部をカットミラーで取り出す。これにより、検査に用いる照明光への影響を抑制することができ、精度よく検査することができる。
【0018】
さらに、前記カットミラーが配置された位置における前記照明光の光軸に直交する断面の断面積において、前記一部の断面積を、前記一部以外の断面積よりも小さくする。これにより、検査に用いる照明光への影響を抑制することができ、精度よく検査することができる。
【0019】
前記検査用検出器及び前記補正用検出器の前記転送方向画素数を、ファインポジショナに取り付けられた遮光板により調整する。これにより、転送方向画素数を精度よく設定することができ、輝度ムラの補正の誤差を抑制することができる。
【0020】
また、上記検出方法により、前記検査用画像データを検出するステップの後に、前記検査用画像データを用いて、前記検査対象を検査するステップをさらに備える。これにより、検査対象を精度よく検査することができる。
【0021】
本発明に係る検出装置は、パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明する照明光学系と、前記照明光によって照明された前記検査対象からの光を集光し、集光した前記光を検査用検出器により検出して、前記検査対象の画像データを取得する検出光学系と、前記照明光の一部を用いて補正用検出器を照明することにより検出された前記照明光の輝度分布の画像データを取得するモニタ部と、前記輝度分布の画像データに基づいて、前記検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出する処理部と、を備える。このような構成により、検査対象の画像データを精度よく検出することができる。
【0022】
また、前記モニタ部が取得した前記輝度分布の画像データにおける倍率は、前記検出光学系が取得した前記検査対象の画像データの倍率よりも低くする。これにより、輝度分布を検出する光量を大きくすることができ、照明光の輝度分布を精度良く補正することができる。
【0023】
パルス光を発光する光源の発光タイミングは、パルス発光のタイミングと検査用検出器及び補正用検出器の転送タイミングとが一致しないように同期制御する。すなわち、検査用検出器及び補正用検出器の転送タイミングとパルス光源の発光タイミングとの間に、ある一定の位相差を持つよう制御する。これにより、以下に述べる検出器の積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差の抑制が可能となる。
【0024】
さらに、前記パルス光の発光周期をτとし、前記検査用検出器の画像データの積算時間内に、前記パルス光が発光する回数をNとした場合に、前記補正用検出器の転送方向画素数をPTCとし、前記補正用検出器の転送周期をτTCとすると、Mを整数として、前記補正用検出器の前記転送方向画素数及び前記転送周期は、PTC=M×N、τTC=τ/Mを満たす。これにより、積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差を抑制することができる。
【0025】
前記輝度分布の画像データの倍率に対する前記検査対象の画像データの倍率をRとし、前記検査用検出器の転送方向画素数をPTIとし、前記検査用検出器の転送周期をτTIとすると、前記検査用検出器の前記転送方向画素数及び前記転送周期は、PTI=R×M×N、τTI=τ/(M×R)を満たす。これにより、積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差を抑制することができる。
【0026】
また、前記照明光学系は、前記検査対象に対して前記照明光を入射させる落とし込みミラーと、前記照明光を収束光として前記落とし込みミラーに入射させる反射鏡と、を有し、前記モニタ部は、前記反射鏡と、前記落とし込みミラーとの間の前記照明光の一部を取り出すカットミラーを有する。これにより、検査に用いる照明光への影響を抑制することができ、精度よく検査することができる。
【0027】
さらに、前記カットミラーが配置された位置における前記照明光の光軸に直交する断面の断面積において、前記一部の断面積は、前記一部以外の断面積よりも小さくする。これにより、検査に用いる照明光への影響を抑制することができ、精度よく検査することができる。
【0028】
前記検査用検出器及び前記補正用検出器の前記転送方向画素数を、ファインポジショナに取り付けられた遮光板により調整する遮光部をさらに備える。これにより、転送方向画素数を精度よく設定することができ、輝度ムラの補正の誤差を抑制することができる。
【0029】
また、上記検出装置を備え、前記処理部は、検出した前記検査用画像データを用いて、前記検査対象を検査する。これにより、検査対象を精度よく検査することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、輝度ムラ補正の誤差を抑制し、検査対象を精度よく検査することができる検出方法、検査方法、検出装置及び検査装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態1に係る検査装置の構成を例示した図である。
図2】実施形態1に係る検査装置において、モニタ部を例示した構成図である。
図3】実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
図4】TDIセンサの転送タイミング及びパルス光を発光する光源の発光タイミングを例示した図である。
図5】TDIセンサの転送タイミング、TDIセンサの動作、光源の発光タイミング及び光源の発光強度を例示した図である。
図6】実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図7】実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図8】実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図9】実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図10】実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図11】実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図12】比較例に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図13】比較例に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
図14】実施形態2に係る検査装置の構成を例示した図である。
図15】実施形態2に係る検査装置の遮光部を例示した平面図である。
図16】実施形態2に係る検査装置の遮光部を例示した斜視図である。
図17】実施形態2に係る検査装置の遮光部の一部を例示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0033】
(実施形態1)
実施形態1に係る検査装置及び検査方法を説明する。まず、検査装置を説明する。その後、検査装置を用いた検査方法を説明する。
【0034】
(検査装置の構成)
本実施形態の検査装置の構成を説明する。図1は、実施形態に係る検査装置の構成を例示した図である。図1に示すように、検査装置1は、照明光学系10、検出光学系20、モニタ部30及び処理部40を備えている。照明光学系10は、光源11、楕円面鏡12、楕円面鏡13及び落とし込みミラー14を有している。検出光学系20は、穴開き凹面鏡21、凸面鏡22及び検査用検出器TD1を有している。穴開き凹面鏡21及び凸面鏡22は、シュバルツシルト拡大光学系を構成している。モニタ部30は、カットミラー31、凹面鏡32及び補正用検出器TD2を有している。
【0035】
検査装置1は、検査用画像データを検出し、検出した検査用画像データを用いて、検査対象を検査する。検査用画像データを検出する点からいえば、検査装置1は、検査用画像データを検出する検出装置でもある。検査対象は、例えば、EUVマスク50である。なお、検査対象は、EUVマスク50に限らない。
【0036】
光源11は、パルス光を含む照明光L11を生成する。光源11は、パルス光を周期的に発光する。パルス光の発光周期をτという。照明光L11は、例えば、検査対象であるEUVマスク50の露光波長と同じ13.5[nm]のEUV光を含んでもよい。光源11から生成された照明光L11は、楕円面鏡12で反射する。楕円面鏡12で反射した照明光L11は、絞られながら進み、集光点IF1で集光される。集光点IF1は、EUVマスク50の上面51と共役な位置に配置されている。
【0037】
照明光L11は、集光点IF1を通過後、拡がりながら進んで、楕円面鏡13等の反射鏡に入射する。楕円面鏡13に入射した照明光L11は、楕円面鏡13で反射し、絞られながら進んで、落とし込みミラー14に入射する。すなわち、楕円面鏡13は、照明光L11を収束光として落とし込みミラー14に入射させる。落とし込みミラー14は、EUVマスク50の真上に配置されている。落とし込みミラー14に入射して反射した照明光L11は、EUVマスク50に入射する。つまり、落とし込みミラー14は、EUVマスク50に対して照明光L11を入射させる。
【0038】
楕円面鏡13は、EUVマスク50に照明光L11を集光している。照明光L11がEUVマスク50を照明する際に、光源11の像を、EUVマスク50の上面51に結像させるように照明光学系10は設置されてもよい。この場合には、照明光学系10は、クリティカル照明となっている。このように、照明光学系10は、光源11で生成されたパルス光を含む照明光L11を用いて検査対象を照明する。照明光学系10は、照明光L11によるクリティカル照明を用いて検査対象を照明してもよい。なお、照明光学系10は、クリティカル照明を用いずに検査対象を照明してもよい。
【0039】
EUVマスク50はステージ52の上に配置されている。ここで、EUVマスク50の上面51に平行な平面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向とする。照明光L11はZ方向から傾いた方向からEUVマスク50に入射する。すなわち、照明光L11は斜め入射して、EUVマスク50を照明する。
【0040】
ステージ52は、XYZ駆動ステージである。ステージ52をXY方向に移動することで、EUVマスク50の所望の領域を照明することができる。さらに、ステージ52をZ方向に移動することにより、フォーカス調整を行うことができる。
【0041】
光源11からの照明光L11は、EUVマスク50の検査領域を照明する。照明光L11によって照明される検査領域は、例えば、0.5[mm]角である。Z方向に対して傾いた方向から入射し、EUVマスク50で反射した反射光L12は、穴開き凹面鏡21に入射する。穴開き凹面鏡21の中心には、穴21aが設けられている。
【0042】
穴開き凹面鏡21で反射された反射光L12は、凸面鏡22に入射する。凸面鏡22は、穴開き凹面鏡21から入射した反射光L12を、穴開き凹面鏡21の穴21aに向けて反射する。穴21aを通過した反射光L12は、検査用検出器TD1で検出される。
【0043】
検査用検出器TD1は、例えば、TDIセンサを含んだ検出器であり、検査対象であるEUVマスク50の画像データを取得する。検査用検出器TD1は、一方向にライン状に並んだ複数の画素を含んでいる。ライン状に並んだ複数の画素で撮像したライン状の画像データを一次元画像データという。検査用検出器TD1は、一方向に直交する方向にスキャンすることにより、複数の一次元画像データを取得する。
【0044】
検査用検出器TD1は、ある画素で露光時間内に受光した光エネルギーを電荷として蓄積し、転送動作時にその電荷を次の画素に転送する。そして、転送先の画素において、さらに、光エネルギーを電荷として蓄積する。このような動作を繰り返している。転送する方向を転送方向という。検査用検出器TD1は、転送方向に周期的に電荷を転送する。検査用検出器TD1の転送する周期を転送周期τTIという。検査用検出器TD1の転送方向における画素数を転送方向画素数PTIという。TDIセンサは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を含んでいる。なお、TDIセンサは、CCDを含むものに限らない。
【0045】
このように、検出光学系20は、照明光L11によって照明された検査対象からの反射光L12を集光し、集光した反射光L12を検査用検出器TD1により検出して検査対象の画像データを取得する。画像データは、例えば、一次元画像データである。
【0046】
反射光L12には、EUVマスク50の欠陥等の情報が含まれている。Z方向に対して傾いた方向からEUVマスク50に入射した照明光L11の正反射光は、検出光学系20によって検出されている。EUVマスク50に欠陥が存在する場合には、暗い像として欠陥が観察される。このような観察方法を、明視野観察という。検査用検出器TD1により取得されたEUVマスク50の複数の一次元画像データは、処理部40に出力され、二次元画像データに処理される。
【0047】
図2は、実施形態1に係る検査装置1において、モニタ部30を例示した構成図である。図2において、凹面鏡32の近傍を拡大した図も示している。図1及び図2に示すように、モニタ部30のカットミラー31は、楕円面鏡13と、落とし込みミラー14との間に配置され、楕円面鏡13と、落とし込みミラー14との間の照明光L11の一部を取り出している。カットミラー31は、照明光L11のビームの一部をわずかに切り出すように反射させる。ビームの一部とは、例えば、ビームの上部である。
【0048】
カットミラー31が配置された位置における照明光L11の光軸15に直交する断面の断面積において、カットミラー31によって反射される一部の断面積は、一部以外の照明光L11の断面積よりも小さくなっている。
【0049】
例えば、カットミラー31が配置された位置における照明光L11の光軸15に直交する断面の断面積を100とすれば、一部の断面積は1程度となっている。光源11から取り出される照明光L11において、光軸15に直交する方向の取り出し角は、例えば、±7[°]である。EUVマスク50に対する照明光L11として用いられるのは、例えば、±6[°]の範囲である。モニタ部30で用いるために、照明光L11のビームの上部をわずか、例えば、1[°]の範囲をカットミラー31で取り出している。このように、ビームの上部をわずかに取り出しても、EUVマスク50上での照明光L11の光量はそれほど低下しない。よって、検査対象の精度の低下を抑制することができる。
【0050】
カットミラー31は、例えば、照明光学系10における瞳に近い位置に配置させる。照明光学系10における瞳に近い位置で、照明光L11をカットミラー31により取り出すことで、検査用検出器TD1により取得された画像データと、補正用検出器TD2により取得された画像データとの間の良好な相関をとることができる。検査用検出器TD1と補正用検出器TD2とは同じ画素サイズのTDIセンサを含んでもよい。
【0051】
カットミラー31で反射させた照明光L11は、絞られながら進み、集光点IF2で集光する。その後、照明光L11は、拡がりながら凹面鏡32に入射する。
【0052】
凹面鏡32及び図示しない複数のミラーは、カットミラー31で取り出した照明光L11を拡大させる。集光点IF2と、凹面鏡32との間を距離G1、集光点IF2と、補正用検出器TD2との間を距離G2とする。補正用検出器TD2により取得される画像データを高倍率にすることもできる。ただし、高倍率(〜500)を得るためには、距離G2を非常に大きくする。例えば、距離G1を〜5[mm]とする場合には、距離G2〜2500[mm]として、500倍の倍率とする。例えば、複数のミラーを用いて、500倍の倍率とすることができる。
【0053】
本実施形態では、モニタ部30が取得した輝度分布の画像データにおける倍率は、検出光学系20が取得した検査対象の画像データの倍率よりも低くなっている。取出しに必要な立体角は、倍率の比の2乗である。例えば、検査用検出器TD1の倍率を20倍とし、補正用検出器TD2の倍率を2倍とすると、カットミラー31による取り出しに必要な立体角は、光源11からの取出しの立体角の1/100である。NAで換算すると1/10である。なお、モニタ部30が取得した輝度分布の画像データにおける倍率を、検出光学系20が取得した検査対象の画像データの倍率と同じ倍率としてもよい。
【0054】
凹面鏡32に入射し、凹面鏡32で反射した照明光L11は、補正用検出器TD2で検出される。補正用検出器TD2は、例えば、TDIセンサを含んだ検出器であり、照明光L11の輝度分布の画像データを取得する。補正用検出器TD2は、一方向にライン状に並んだ複数の画素を含んでいる。ライン状に並んだ複数の画素で撮像したライン状の画像データを一次元画像データということは、検査用検出器TD1と同様である。補正用検出器TD2は、一方向に直交する方向にスキャンすることにより、複数の一次元画像データを取得する。
【0055】
補正用検出器TD2の転送する周期を転送周期τTCという。補正用検出器TD2の転送方向における画素数を転送方向画素数PTCという。TDIセンサは、例えば、CCDを含んでいる。なお、TDIセンサは、CCDを含むものに限らない。
【0056】
モニタ部30は、照明光L11の一部を用いて補正用検出器TD2を照射することにより検出された照明光L11の輝度分布の画像データを取得する。例えば、照明光L11の光源11の像を、補正用検出器TD2に結像するように光学系を配置させてもよい。これにより、モニタ部30は、照明光L11の一部を用いたクリティカル照明によって検出された照明光L11の輝度分布の画像データを取得することができる。これにより、精度よく輝度分布を補正することができる。なお、モニタ部30は、クリティカル照明を用いずに照明光L11の輝度分布の画像データを取得してもよい。補正用検出器TD2により取得された照明光L11の輝度分布の画像データは、処理部40に出力される。
【0057】
処理部40は、検出光学系20及びモニタ部30と信号線または無線により接続されている。処理部40は、検出光学系20における検査用検出器TD1から検査対象の画像データを受け取る。また、処理部40は、モニタ部30における補正用検出器TD2から照明光L11の輝度分布の画像データを受け取る。
【0058】
処理部40は、モニタ部30が取得した輝度分布の画像データに基づいて、検出光学系20が取得したEUVマスク50の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出する。したがって、検査装置1は、検出装置を備えた検査装置1ということができる。また、処理部40は、補正を行うことにより検出したEUVマスク50の検査用画像データからEUVマスク50の検査を行う。
【0059】
(検査方法)
次に、実施形態1に係る検査装置1の動作として、検査装置1を用いた検査方法を説明する。図3は、実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【0060】
図3のステップS11に示すように、まず、パルス光を含む照明光を用いて検査対象を照明する。具体的には、例えば、光源11で生成されたパルス光を含む照明光L11でEUVマスク50を照明する。この場合に、EUVマスク50に対してクリティカル照明となるように、照明光学系10を配置させてもよい。そして、EUVマスク50を照明光L11で照明する。
【0061】
次に、図3のステップS12に示すように、検査対象の画像データ及び照明光L11の輝度分布の画像データを取得する。具体的には、例えば、照明光L11によって照明された検査対象からの光を集光し、集光した光を検査用検出器TD1により検出して検査用の画像データを取得する。また、照明光L11の一部を用いて補正用検出器TD2を照射することで検出された照明光L11の輝度分布の画像データを取得する。
【0062】
次に、図3のステップS13に示すように、輝度分布の画像データに基づいて、検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出する。具体的には、処理部40は、検査用検出器TD1より出力された検査対象の画像データを、それに対応する補正用検出器TD2より出力された輝度分布の画像データで除算する。これにより、処理部40は、輝度ムラを補正した検査用画像データを検出する。
【0063】
検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2がTDIセンサを含む場合には、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の画像データは、その積算時間内に発光したパルス光による信号を蓄積したものである。このため、輝度ムラが補正される検査用検出器TD1と、輝度ムラを検出する補正用検出器TD2の画像データは、同じ数のパルス光による信号を蓄積したものであることが望ましい。
【0064】
検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の積算時間内に発光するパルス光の数が常に同じ数となるためには、光源11のパルス光の発光周期τ、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2における転送周期τTI及びτTC、並びに、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2における転送方向画素数PTI及びPTCが、ある特定の関係を持たなければならない。
【0065】
以下では、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2には、同じ画素サイズのTDIセンサを用いるものとする。この条件の下で、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2が、常に同じの数のパルス光による照射によって画像データを取得するための条件を考察する。
【0066】
まず、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数PTI及びPTCが同じ画素数である場合を考察する。この場合、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の積算時間内に発光するパルス光の数は必ず同じである。よって、輝度分布の画像データに基づいて、検査対象の画像データの補正を行うことにより検出した検査用画像データの誤差は小さい。
【0067】
しかし、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数PTI及びPTCが異なる場合には、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の積算時間内に発光するパルス数の違いに起因する誤差が発生することがある。したがって、何らかの対策を行わなければ、検査用画像データに含まれる誤差が大きくなる可能性がある。
【0068】
ここで、TDIセンサを含む検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2を総称して、TDI検出器という。輝度ムラの補正に伴う誤差が大きくなるのは、光源11の発光周期τがTDI検出器の転送周期τよりも長い場合である。以下では、光源11の発光周期τがTDI検出器の転送周期τよりも長いと仮定する。
【0069】
TDI検出器は、ある画素で露光時間内に受光した光エネルギーを電荷として蓄積し、転送動作時にその電荷を次の画素に転送する。そして、転送先の画素において、さらに、光エネルギーを電荷として蓄積する。このような動作を繰り返している。
【0070】
パルス光を発光する光源11を用いる場合に、TDI検出器の転送動作とパルス光の発光のタイミングが重なると、受光した光による電荷が二つの画素に分配される。したがって、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の積算時間内に発光するパルス光の数を一定とするためには、光源11の発光タイミングを、検査用検出器TD1および補正用検出器TD2の転送タイミングと一致しないように制御して発光させなければならない。
【0071】
図4は、TDI検出器の転送タイミング及びパルス光を発光する光源の発光タイミングを例示した図である。図4の(a)は、パルス光の発光タイミングの時間t及びtが、TDI検出器の転送タイミングと一致しないように制御された例を示す。例えば、パルス光の発光周期τの間に、ちょうど12回の転送タイミングがあるようにタイミング制御される。すなわち、光源11の発光タイミングは、検査用検出器TD1および補正用検出器TD2の転送タイミングとある一定の位相差を持つように同期制御される。
【0072】
パルス光の発光タイミングが制御されていない場合には、図4の(b)に示すように、TDI検出器の転送タイミングとパルス光の発光タイミングとが重なる可能性がある。TDI検出器の転送タイミングと発光タイミングとが重なると、本来一つの画素に蓄積されるべき電荷が二つの画素に分割される。これが、TDIセンサの転送方向一番目の画素、もしくは、転送方向最後の画素で生じると、本来、TDIセンサの画素に蓄積されるべき電荷の一部が失われてしまう。言い換えれば、画素に蓄積される実効的パルス数は1より小さい値となる。このため、輝度及び輝度分布の補正に誤差が発生する。
【0073】
図5は、TDIセンサの転送タイミング、TDIセンサの動作、光源の発光タイミング及び光源の発光強度を例示した図である。図5に示すように、TDIセンサに転送タイミングを示すクロックパルスが入力されると、TDIセンサは転送動作を開始する。TDIセンサの転送タイミングを示すクロックパルスの周期は、転送周期τTiである。TDIセンサの転送動作には転送時間τTtを必要とする。
【0074】
TDIセンサの転送タイミングと光源の発光タイミングとは、ある一定の位相差を有するように制御される。すなわち、発光タイミングを示すクロックパルスは、転送タイミングを示すクロックパルスに対して位相差(わずかな時間差)をもって光源にパルス光を発生させる。パルス光の持続時間は、持続時間τである。したがって、転送時間τTtと持続時間τとは重ならない。
【0075】
一方、光源が、転送タイミングと非同期の発光タイミングでパルス光を含む照明光を発光する場合には、TDIセンサの転送タイミングに、パルス光の発光タイミングが重なることがある。具体的には、転送時間τTtと持続時間τとが重なる。このように、TDIセンサの転送タイミングとパルス光の発光タイミングとが重なると、本来一つの画素に蓄積されるべき光量が二つの画素に分割される。これにより、輝度及び輝度分布の補正に誤差を含む可能性が生じる。
【0076】
これを避けるためには、光源11のパルス光の発光周期τが、TDI検出器の転送周期τと、互いのタイミングが重ならないように同期している必要がある。したがって、以下の条件を満たす必要がある。すなわち、条件1として、(1)式に示すように、光源の発光周期τは、TDI検出器の転送周期τの整数倍である。ここで、Mは、整数である。
【0077】
τ=M×τ (1)
【0078】
条件1は、以下のように言い換えてもよい。すなわち、光源11は、TDI検出器がM回転送する毎に発光する。
【0079】
さらに、常に一定の数のパルス光による照射によって画像データを取得するためには以下の条件を満たさなければならない。すなわち、条件2として、(2)式に示すように、TDI検出器の積算時間τは、光源の発光周期τの整数倍である。ここで、Nは、整数である。
【0080】
τ=N×τ (2)
条件2は、以下のように言い換えてもよい。すなわち、光源11は、TDI検出器の画像データの積算時間τ内にちょうどN回発光する。
【0081】
TDI検出器の積算時間τが光源の発光周期τの整数倍でない場合には、TDI検出器の積算時間τを光源の発光周期τで除算して余りが0にならない。この場合には、商の数の照明パルスによる信号を蓄積した画像データと、それより一つ多い照明パルスによる信号を蓄積した画像データとが周期的に出力される。
【0082】
ここで、TDI検出器の積算時間τは、TDI検出器の転送方向画素数Pと、TDI検出器の転送周期τとの積である。
【0083】
τ=P×τ (3)
【0084】
したがって、(2)式及び(3)式より、(4)式が導かれる。
【0085】
×τ=N×τ (4)
【0086】
よって、(5)式となる。
【0087】
τ=(P/N)×τ (5)
【0088】
(1)式と(5)式とを比較すると、(6)式が導かれる。
【0089】
=M×N (6)
【0090】
つまり、条件2により、TDI検出器の転送方向画素数Pは、TDI検出器の積算時間内に発光するパルス数NのM(整数)倍でなければならない。
【0091】
次に、検査用検出器TD1と、補正用検出器TD2との転送方向画素数PTI及びPTCが異なる場合を考察する。この場合において、輝度ムラ補正の誤差を最も小さくするための、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数PTI及びPTCと、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送周期τTI及びτTCの満たすべき条件を考察する。
【0092】
実施形態1では、照明光L11の一部を補正用検出器TD2に用いる。このため、補正用検出器TD2は、検査用検出器TD1よりも集光して照明される。ここでは、補正用検出器TD2が、検査用検出器TD1に比べて、R倍だけ集光された光で照明されるとする。すなわち、輝度分布の画像データの倍率に対する検査対象の画像データの倍率をRとする。
【0093】
輝度ムラの補正を精度よく行うためには、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2がともに同じ視野を持たなければならない。検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2に同じ画素サイズのTDIセンサを用いた場合に、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTI及び補正用検出器の転送方向画素数PTCから、以下の(7)式が導かれる。
【0094】
TI=PTC×R (7)
【0095】
検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2において、転送方向画素数PTI及びPTCが異なるとしても、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2は、上述のTDI検出器の条件を満たさなければならない。補正用検出器TD2がM回転送する毎に光源11が発光し、かつ、補正用検出器TD2の積算時間τ内に、ちょうどN回発光するとした場合に、補正用検出器TD2の転送方向画素数PTCは、以下の(8)式を満たす。
【0096】
TC=M×N (8)
【0097】
補正用検出器TD2の転送周期τTCは、以下の(9)式を満たす。
【0098】
τTC=τ/M (9)
【0099】
そうすると、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTIは、以下の(10)式を満たす。
【0100】
TI=R×M×N (10)
【0101】
なお、検査用検出器TD1と、補正用検出器TD2の積算時間は同じでなければならないので、検査用検出器TD1の転送周期τTIは、補正用検出器TD2の転送周期τTCの1/R倍となる。
【0102】
τTI=τTC/R=τ/(M×R) (11)
【0103】
このような条件のもと、光源11のパルス光の発光周期τ、TDI検出器の積算時間τ内に光源11が発光する回数N、及び、検査用検出器TD1と補正用検出器TD2の光学倍率比Rが与えられたとき、補正用検出器TD2の転送方向画素数PTC、及び、補正用検出器TD2の転送周期τTCを、以下の式を満たすようにする。
【0104】
TC=M×N (12)
τTC=τ/M (13)
【0105】
また、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTI、及び、検査用検出器TD1の転送周期τTIを以下の(14)式及び(15)式と決めることにより、輝度ムラの補正の誤差を抑制することができる。
【0106】
TI=R×M×N (14)
τTI=τTc/R=τ/(M×R) (15)
【0107】
具体的には、例えば、光源11のパルス光の発光周期τ=200[μs]、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の積算時間τ内にパルス光が発光する回数N=42、検査用検出器TD1と補正用検出器TD2との光学倍率比R=4とした場合に、整数M=16とすると、補正用検出器TD2の転送方向画素数PTC及び転送周期τTCは、以下の(16)式及び(17)式となる。
【0108】
TC=M×N=16×42=672 (16)
τTC=τ/M=200/16=12.5[μs](80[kHz]) (17)
【0109】
検査用検出器TD1の転送方向画素数PTI及び転送周期τTIは、以下の(18)式及び(19)式となる。
【0110】
TI=R×M×N=4×16×42=2688 (18)
τTI=τ/(MC×R)=200/16×4=3.125[μs](320[kHz]) (19)
【0111】
このようにして、補正用検出器TD2の転送方向画素数PTC及び転送周期τTCを決定する。上記の例では、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の積算時間内に光源11がパルス光を発光する回数は、いずれの検出器においても、42回となる。このため、輝度ムラの補正を行う場合に、パルス数の違いに起因する誤差を抑制することができる。
【0112】
上述したパルス数の違いに起因した誤差を明確にする単純化したモデルを、図6図13を用いて説明する。図6図11は、実施形態1に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。図12及び図13は、比較例に係る検査用検出器及び補正用検出器の動作を単純化したモデルで例示した図である。
【0113】
まず、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数PTI及びPTCが、パルス数Nで割り切れる場合を説明する。
【0114】
図6に示すように、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTI=25、補正用検出器TD2の転送方向画素数PTC=5とする。また、光源11の発光周期τ=5、検査用検出器TD1の転送周期τTI=1、補正用検出器TD2の転送周期τTC=5として単純化する。検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の画素サイズは、実際は同じであるが、図では、補正用検出器TD2の画素サイズを転送方向に5倍だけ大きくしてある。
【0115】
図7に示すように、時間t=1のとき、光源11の1回目のパルス光の発光により、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の各画素は、N=1のパルス光を受光する。次に、図8に示すように、時間t=2のとき、検査用検出器TD1は、画素に蓄積された電荷を、転送方向に1段転送する。例えば、画素の1段目の電荷を2段目に転送する。画素の1段目には、パルス数N=0の部分が形成される。そして、図9に示すように、時間t=5のとき、検査用検出器TD1の1段目から4段目には、パルス数N=0の部分が形成される。
【0116】
図10に示すように、さらに、時間t=1経過した時間t=6のとき、検査用検出器TD1は、画素に蓄積された電荷を、転送方向に1段転送する。補正用検出器TD2も、画素に蓄積された電荷を、転送方向に1段転送する。このとき、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2に同期して、2回目のパルス光が発光する。そうすると、検査用検出器TD1の下方5段の画素は、1回目のパルス光を受光する。検査用検出器TD1の下方5段以外の画素は、2回分のパルス光を受光する。一方、補正用検出器TD2の下方1段の画素は、1回目のパルス光を受光する。補正用検出器TD2の下方1段以外の画素は、2回分のパルス光を受光する。このように、パルス光は、検査用検出器TD1が5段転送する毎と、補正用検出器TD2が1段転送する毎に発光する。
【0117】
図11に示すように、時間t=26のとき、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2から画像データが読み出される。検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2からは、同じパルス数のパルス光が受光された画像データが読みだされる。よって、パルス数の違いに起因する誤差を抑制することができる。
【0118】
次に、比較例として、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTIが、パルス数Nで割り切れない場合を説明する。図12に示すように、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTI=26とした場合において、補正用検出器TD2の転送方向画素数PTC=5とし、光源11の発光周期τ=5、検査用検出器TD1の転送周期τTI=1、補正用検出器TD2の転送周期τTC=5とする。この場合には、PTI=R×M×N及びτTI=τ/(M×R)を満たすことができない。
【0119】
図12に示すように、時間t=26のとき、6回目のパルス光が発光される。この場合に、検査用検出器TD1の26段目の画素は、6回目のパルス光を受光する。一方、補正用検出器TD2は、画像データを出力し、6回目のパルス光を受光する画素は存在しない。そして、図13に示すように、時間t=27のとき、検査用検出器TD1は、パルス光を6回受光した画像データを出力する。一方、補正用検出器TD2は、パルス光を5回受光した画像データを出力する。
【0120】
このように、検査用検出器TD1の転送方向画素数PTIが、パルス数Nで割り切れない場合には、積算時間τを発光周期τで除算した商の数(N=5)のパルス光による信号を蓄積した画像データと、それより一つ多い数(N=6)のパルス光による信号を蓄積した画像データとが周期的に出力される。よって、比較例のように、転送方向画素数及び転送周期が所定の関係を満たさないときは、パルス数の違いに起因する誤差を抑制することができない。
【0121】
本実施形態では、転送方向画素数及び転送周期が所定の関係を満たすようにしている。そして、そのようにして取得した輝度分布の画像データに基づいて、検査対象の画像データの補正を行い、検査用画像データを検出する。
【0122】
次に、図3のステップS14に示すように、検査用画像データを用いて、検査対象を検査する。具体的には、処理部40は、上述した検査対象の画像データの補正を行うことにより検出した検査用画像データを用いて、検査対象を検査する。その後、処理を終了する。このようにして、検査装置1は、検査対象を検査することができる。
【0123】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態では、補正用検出器TD2により照明光L11の輝度分布の画像データを取得し、検査対象の画像データを補正している。よって、検査対象の画像データを精度よく検出することができる。
【0124】
また、輝度分布の画像データにおける倍率を、検査対象の画像データの倍率よりも低くする。これにより、輝度分布を検出する光量を大きくすることができ、照明光L11の輝度分布を精度良く補正することができる。
【0125】
パルス光源の発光タイミングは、検査用検出器及び補正用検出器の転送タイミングと一致しないように制御する。すなわち、検査用検出器及び補正用検出器の転送タイミングとパルス光源の発光タイミングとの間に、ある一定の位相差を持つよう同期制御する。これにより、検出器の積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差の抑制が可能となる。
【0126】
さらに、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数PTI及びPTC、並びに、転送周期τTI及びτTCを所定の関係を満たすように決定する。これにより、輝度ムラ補正における積算時間内に発光するパルス数の違いに起因した誤差を抑制することができる。
【0127】
照明光L11の一部をカットミラーで取り出し、補正用検出器TD2で検出している。これにより、検査に用いる照明光L11への影響を抑制することができ、精度よく検査することができる。
【0128】
また、照明光L11の光軸15に直交する断面の断面積において、一部の断面積を、一部以外の断面積よりも小さくする。これにより、検査に用いる照明光L11への影響を抑制することができ、精度よく検査することができる。
【0129】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る検査装置2を説明する。本実施形態の検査装置2は、遮光部を備えている。図14は、実施形態2に係る検査装置の構成を例示した図である。図14に示すように、検査装置2において、検査用検出器TD1における反射光L12の入射面上及び補正用検出器TD2における照明光L11の入射面上に遮光部60が配置されている。その他の構成は、実施形態1の検査装置1と同様である。
【0130】
一般的に、TDI検出器の転送方向画素数は、固定された遮光板によって決められる。したがって、転送方向画素数を任意の画素数に設定することは困難である。また、一般的なTDI検出器の動作においては、設定した転送方向画素数に、数画素から数十画素程度の誤差があったとしても、全画素数に占める割合は小さく、積算した電荷に対する影響は少ない。
【0131】
しかしながら、実施形態1のように、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2を用いて輝度ムラの補正を行う際には、設定した転送方向画素数に対して、数画素から数十画素程度の誤差でも抑制することが望ましい。そこで、本実施形態では、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数を、0.1画素以下の精度に設定する遮光部60を導入する。
【0132】
図15は、実施形態2に係る検査装置2の遮光部60を例示した平面図である。図16は、実施形態2に係る検査装置2の遮光部60を例示した斜視図である。図15及び図16に示すように、遮光部60は、本体部61、ピエゾ素子62、ファインポジショナ63a及び63b、遮光板64a及び64bを含んでいる。
【0133】
本体部61は、円板状の部材であり、中央に略矩形の開口部65が形成されている。開口部65の短手方向をX軸方向、長手方向をY軸方向とする。開口部65のX軸方向に対向した2つの辺66a及び66bの中央部に凹部67a及び67bが形成されている。凹部67a及び67bに複数のピエゾ素子62が組み込まれている。
【0134】
ファインポジショナ63a及び63bは、各辺66a及び66bに配置されている。ファインポジショナ63aは、Y軸方向に延びた梁68a及び68b、並びに、X軸方向に延びた固定部68cを組み合わせたフレクシャー構造となっている。ファインポジショナ63aの梁68a及び梁68bの+Y軸方向側の端部同士、並びに、−Y軸方向側の端部同士は接続されている。また、梁68bの中央部分に固定部68cの−X軸方向側の端部が接続され、固定部68cの+X軸方向側の端部は、凹部67aに接続されている。
【0135】
ファインポジショナ63bは、Y軸方向に延びた梁68d及び68e、並びに、X軸方向に延びた固定部68fを組み合わせたフレクシャー構造となっている。ファインポジショナ63bの梁68d及び梁68eの+Y軸方向側の端部同士、並びに、−Y軸方向側の端部同士は接続されている。また、梁68eの中央部分に固定部68fの+X軸方向側の端部が接続され、固定部68fの−X軸方向側の端部は、凹部67bに接続されている。
【0136】
図17は、実施形態2に係る検査装置2の遮光部60の一部を例示した拡大図である。図17に示すように、開口部65の辺66aにおける+Y軸方向側において、ファインポジショナ63aの梁68bには、ノッチ69が形成されている。よって、ノッチ69と、梁68bの端部との間の部分を力点として、ピエゾ素子62の作動により移動させる。これにより、ノッチ69を支点とした、てこの原理により、梁68bの端部を作用点として、X軸方向に移動させる。ノッチ69を力点に近づけることで、てこ比α=(β1+β2)/β1を大きくすることができる。てこ比を変えても変位の方向を同じ方向とすることができる。開口部65の辺66aにおける−Y軸方向側、並びに、開口部65の辺66bにおける+Y軸方向側及び−Y軸方向側にも同様の構造が形成されている。
【0137】
遮光板64aは、辺66aに沿って配置されたファインポジショナ63aの梁68aに取り付けられている。遮光板64bは、辺66bに沿って配置されたファインポジショナ63bの梁68dに取り付けられている。ピエゾ素子62を作動させ、梁68b及び梁eを移動させる。これにより、遮光板64a及び64bは、開口部65のX軸方向の幅を規定する。
【0138】
本実施形態の遮光部60は、ファインポジショナ63a及び63bを含んでいる。ファインポジショナ63a及び63bは、2つのピエゾ素子62を用いて遮光板64a及び64bを取り付けた梁68a及び68dの位置を制御することができる。また、ファインポジショナ63a及び63bは、遮光板64a及び64bをX軸方向に移動させるだけでなく、X軸方向に対する角度を調整することができる。さらに、ファインポジショナ63a及び63bは、転送方向の両端の画素の位置を規定することができる。遮光板64a及び64bの幅は、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の画像データをモニタしながら調整することができる。
【0139】
ファインポジショナ63a及び63bのX軸方向の動作範囲は、100[μm]程度であり、位置決め精度は、1[μm]以下である。したがって、10[μm]程度のサイズを有する画素が転送方向に並んだ転送方向画素数を精度よく制御することができる。
【0140】
このように、本実施形態の検査装置2は、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数を、ファインポジショナ63a及び63bに取付けられた遮光板64a及び64bにより調整する遮光部60をさらに備えている。よって、検査用検出器TD1及び補正用検出器TD2の転送方向画素数PTI及びPTCを所定の値に設定することができ、輝度ムラ補正の誤差を抑制することができる。これ以外の効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0141】
以上、本発明の実施形態1及び2を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0142】
1、2 検査装置
10 照明光学系
11 光源
12、13 楕円面鏡
14 落とし込みミラー
15 光軸
20 検出光学系
21 穴開き凹面鏡
21a 穴
22 凸面鏡
30 モニタ部
31 カットミラー
32 凹面鏡
40 処理部
50 EUVマスク
51 上面
52 ステージ
60 遮光部
61 本体部
62 ピエゾ素子
63a、63b ファインポジショナ
64a、64b 遮光板
65 開口部
66a、66b 辺
67a、67b 凹部
68a、68b、68d、68e 梁
68c、68f 固定部
69 ノッチ
L11 照明光
L12 反射光
IF1 集光点
TD1 検査用検出器
TD2 補正用検出器
【要約】
【課題】輝度ムラ補正の誤差を抑制し、検査対象を精度よく検査することができる検出方法、検査方法、検出装置及び検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る検出方法は、パルス光を含む照明光L11を用いて検査対象を照明するステップと、照明光L11によって照明された検査対象からの光を集光し、集光した光を検査用検出器TD1により検出して、検査対象の画像データを取得するステップと、照明光L11の一部を用いて補正用検出器TD2を照明することにより検出された照明光L11の輝度分布の画像データを取得するステップと、輝度分布の画像データに基づいて、検査対象の画像データの補正を行うことにより、検査用画像データを検出するステップと、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17