(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462851
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】分析物の活性型の検出および分析物の活性部位に結合する、物質の能力の決定の、方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/566 20060101AFI20190121BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20190121BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20190121BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20190121BHJP
【FI】
G01N33/566
G01N33/543 501D
C12N15/09
C12Q1/68
【請求項の数】13
【全頁数】81
(21)【出願番号】特願2017-506677(P2017-506677)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公表番号】特表2017-524133(P2017-524133A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】CZ2015000084
(87)【国際公開番号】WO2016019929
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】PV2014-527
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】516213013
【氏名又は名称】ウスタフ オルガニッケ ヘミエ アー ビオヘミエ アカデミエ ヴェド ツェーエル,ヴェー.ヴェー.イー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ナヴラティル,ヴァーツラフ
(72)【発明者】
【氏名】サシャ,パベル
(72)【発明者】
【氏名】シャーマー,ジリ
(72)【発明者】
【氏名】コンヴァリンカ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マイエル,パベル
【審査官】
大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/016635(WO,A2)
【文献】
特表2014−510015(JP,A)
【文献】
特開2008−069151(JP,A)
【文献】
特表2000−506008(JP,A)
【文献】
特表2009−500423(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/130669(WO,A2)
【文献】
国際公開第03/083435(WO,A2)
【文献】
特開平08−178922(JP,A)
【文献】
特開平06−235727(JP,A)
【文献】
特開2005−257641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルにおける分析物の活性部位に対する、試験物質の結合能の決定のための方法であって、
以下のステップ:
a)上記サンプルからの分析物または複数の分析物の集合が、固体担体の表面に対して、上記分析物の表面官能基および上記固体担体における対応する官能基の、非特異的な非共有結合性の吸着または共有結合によって、不動化されるか、または
上記分析物または複数の分析物の集合の不動化の前に上記固体担体の表面に結合されておりかつ上記サンプルとの上記固体担体のインキュベーションの間に上記サンプルに含まれている上記分析物または複数の分析物の集合を選択的に結合可能である結合分子を介して、上記サンプルからの分析物または複数の分析物の集合が固体担体の表面に対して不動化される;
b)分析物または複数の分析物の集合が、上記分析物の活性部位に選択的に結合するための化合物を介して上記分析物または複数の分析物の集合を選択的に結合する検出プローブとインキュベーションされ、当該インキュベーションは、上記活性部位に結合する能力が試験される、試験物質、または当該物質の混合物の存在下において実施され;
c)それから、上記固体担体が洗浄されて、未結合の検出プローブを除去し;
d)続いて、結合している検出プローブの量が、上記固体担体において直接または遊離後に、決定される
を包含しており、
ステップb)において、上記検出プローブは、
上記分析物の活性部位に選択的に結合するための、2500Da以下の分子量を有している低分子化合物;
共有結合されている蛍光団、ビオチンもしくは化学基を任意に有している、オリゴヌクレオチドタグ、ならびに
上記分析物の活性部位に選択的に結合するための上記化合物および上記オリゴヌクレオチドタグを共有結合的に連結している、化学リンカー
からなり、
上記試験物質または当該物質の集合の、上記分析物の上記活性部位に対する上記結合能が、試験物質なしのインキュベーション後、および当該試験物質とのインキュベーション後の、結合している検出プローブの量における差異から決定される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
固体担体と上記検出プローブをインキュベートするステップb)、または固体担体と上記サンプルをインキュベートするステップa)において、イオン性の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤、カゼインおよびそれから調製されているカゼインブロッキング剤、血清アルブミン、DNA、ならびに免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤が、インキュベートされる溶液に加えられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記分析物または複数の分析物の集合を含んでいる上記サンプルが、ステップb)にしたがって上記検出プローブとまずインキュベートされ、それからステップa)にしたがう不動化が実施され、続いて、ステップc)およびd)実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記分析物が、
・酵素または複数の酵素の集合:ここで、上記活性部位に選択的に結合するための上記化合物は、当該酵素または複数の酵素の集合の選択的な阻害剤である
・受容体または複数の受容体の集合:ここで、上記活性部位に選択的に結合するための上記化合物が、当該受容体または複数の受容体の集合のアゴニストまたはアンタゴニスト
・トランスポータまたは複数のトランスポータの集合:ここで、上記活性部位に選択的に結合するための上記化合物が、輸送される分子の結合部位において、当該トランスポータまたは複数のトランスポータの集合を選択的に結合可能な物質である
からなる群から選択され、
上記オリゴヌクレオチドタグが、当該オリゴヌクレオチドタグの一方または両方の鎖に対して化学リンカーを介して共有結合されている蛍光団、ビオチンおよび反応性化学基からなる群から選択される修飾基を任意に有している、一本鎖DNAまたは二本鎖DNAである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記検出プローブが、上記オリゴヌクレオチドタグの異なる位置に化学リンカーを介して共有結合的に個々に連結されている、上記分析物の上記活性部位に選択的に結合するための同じ分子の2つ以上の分子を含んでいる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
検出が、結合されているビオチンを有している4つのプローブ分子からなる検出プローブ、ならびに蛍光団または酵素が任意に共有結合されているアビジン、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジンの複合物を用いて、実施される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
結合している検出プローブの上記量が、定量的なポリメーラゼ連鎖反応によって、蛍光によって、または結合した酵素反応を介して分光光度的もしくは化学発光的に、決定される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記サンプルからの上記分析物を選択的に結合可能な上記結合分子が、抗体もしくはその断片、抗体を模倣するタンパク質分子(例えば、アフィボディ、アンチカリンまたはDARPin)、ならびにレクチン、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン、オリゴペプチド、およびキレート剤からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)において、上記固体担体に対して不動化されている結合分子に対する、上記分析物または複数の分析物の集合の選択的な結合が、当該分析物または複数の分析物の集合に共有結合されているハプテン、ビオチン、ユニバーサルエピトープ、アフィニティタグまたは精製タグを介して実施される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記サンプルが、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、細菌溶解物、酵母溶解物、組織溶解物もしくは細胞溶解物、細菌、酵母、もしくは細胞の条件培養培地、滑液、羊水、腹水、胸膜液、囲心腔液、糞便抽出物、唾液、汗、および精漿からなる群から選択される、干渉する抗体を任意に含んでいる複合的な生物学的マトリクスである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記試験物質の、上記分析物の活性部位に結合する結合定数の値が、試験物質なしのインキュベーション後、および単一の濃度の当該試験物質とのインキュベーション後の、結合されている検出プローブの量の差異から決定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記分析物が、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIとして知られているヒト前立腺特異膜抗原であり、選択的な結合のための上記化合物が、ヒト前立腺特異膜抗原の阻害剤であるか;または上記分析物が、ヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIであり、選択的な結合のための上記化合物が、ヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIの阻害剤である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記分析物が、ヒト前立腺特異膜抗原であり、選択的な結合のための上記化合物が、ヒト前立腺特異膜抗原の阻害剤であるか;
上記分析物が、ヒト炭酸脱水酵素IXであり、選択的な結合のための上記化合物が、炭酸脱水酵素IXの阻害剤であるか;
上記分析物が、ヒト炭酸脱水酵素XIIであり、選択的な結合のための上記化合物が、炭酸脱水酵素XIIの阻害剤であるか;
上記分析物が、インフルエンザノイラミニダーゼであり、選択的な結合のための上記化合物が、インフルエンザノイラミニダーゼの阻害剤であるか;
上記分析物が、線維芽細胞活性化タンパク質であり、選択的な結合のための上記化合物が繊維芽細胞活性化タンパク質の阻害剤であるか;または
上記分析物がCD26として知られるヒトジぺプジルペプチダーゼ4であり、選択的な結合のための上記化合物がである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、サンプルにおける分析物の活性型の検出するため、およびこれらの分析物の活性部位に結合する、試験物質の能力を決定するための方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
この技術上の解決策は、分析物(好ましくはタンパク質)の活性型の高感度な定量、およびこれらの分析物の活性部位に結合する、試験物質の能力の決定をもたらす。したがって、これらの両方の課題を解決するため現状のアプローチが、以下に要約される。
【0003】
生物学的なサンプルにおけるタンパク質(抗原)の高感度および特異的な検出のための今日の標準は、いわゆる「酵素結合免疫吸着検定法」(略語:ELIZA)、およびある程度まで「ウェスタンブロット」(略語WB)である。両方の方法は、所定の抗原を選択的に結合する(モノクローナルまたはポリクローナル)抗体を調製することの見込みを利用し、サンプルにおける抗原の量に比例する、結合されている抗体の量が、測定可能なシグナルに変換される。当該抗体の調製は、過去20年においてまったく通常の方法および商業的に利用可能な方法になっている。
【0004】
今日のインビトロ診断の、最も多用途な、広く用いられている方法は、第1の抗体が、固体担体に不動化され、それから、生物学的サンプルに含まれている抗原が、上記抗体に結合され、洗浄後に、第2の検出抗体が、当該抗原に結合される(両方の抗体は、同じ抗原における異なるエピトープを認識する必要がある)、いわゆる「サンドイッチELIZA」である。上記検出抗体は、酵素と複合されており、繰り返される洗浄および基質の添加の後に、例えば、サンプルにおける抗原の量に比例している量の、着色された発光生成物が、生成される(酵素および基質の選択に応じて)。いくつかのELISAの変形(例えば、蛍光団または放射性核種が酵素の代わりに検出抗体と複合されている)がある。
【0005】
例えば、前立腺特異抗原(略語:PSA)は、「超高感度な」サンドイッチELISA(Abotto Diagnostics)を用いて0.008ng/mlの濃度の血清において検出され得る。血清中のPSAの定量は、男性の集団の、前立腺がんについてのスクリーニング、および特に患者の処置に対する応答をモニターするために、現在、日常的に使用されている(Catalona et al. 1991, N Engl J Med, p. 1156; Stamey et al. 1987, N Engl J Med, p. 909)。前立腺がんの唯一の決定的な処置は、前立腺の摘出であり;この行為の後に、PSAは血液から消失する。外科手術がすべての腫瘍組織を摘出することに失敗していれば、しばらくの後にPSAの濃度は、ふたたび検出限界まで上昇する。外科手術後の数か月から数年にわたって、PSAレベルは、今日の方法の検出限界をしたまわっている;したがって、より高感度な方法は、既存の方法よりはるかに早く正確な予後を決定し得る(Lepor et al. 2012, Bju International, p. 1770)。
【0006】
ELISAを用いた非常に高感度な試験は、いわゆる血中の干渉する異好性の抗体の存在によって一般的に制限される。これらは、サンドイッチ抗体を認識し得、抗原の存在なしにそれらに結合し、PSAの定量化のような確立されている方法においてさえ偽陽性の結果を導く(Henry et al. 2009, Nature Clinical Practice Urology, p. 164; Preissner et al. 2005, Clinical Chemistry, p. 208)。したがって、そのような抗体の少なくとも部分的な除去に達するには、市販の製品が使用される(Scantibodies)血液の処理において付加的なステップを含めることが、いくらか必要である(de Jager et al. 2005, J. Immunol Methods, p. 124)。また、干渉の程度を測定するためにコントロールを含めることが適切である(Bjerner et al. 2005, Clinical Chemistry, p. 9)。PSMA測定のための市販のキットは、普通、干渉する抗体の作用を回避することを補助するブロッキング剤を含んでいるか;または2つのサンドイッチ抗体が、同じ生物に由来しないが、完全に信頼できる結果は、保証されていない((Loeb et al. 2009; Preissner et al. 2005, see above)。
【0007】
特に上述したPSAの決定のために、今日のELISA法の感度をさらに向上させることが所望されている。前立腺組織におけるPSAの高発現のために、特に疾患の初期段階には、PSAの濃度より相当に低い濃度において、多くの腫瘍マーカーが血中にあると予想され得る。さらに、PSAに対する抗体と同程度の感度の抗体が、所定の抗原に対してい利用可能でない場合、ELISAの感度は大きく低下する。一般的に、より高感度な検出は、ウイルス性疾患(HIV)の早期検出または特定の細菌感染(ライム病)の信頼できる診断のためにも、有益である。
【0008】
2桁の大きさ以上に感度を向上させ、かつ簡単なELISAの構成を維持することは、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(すなわち定量的PCR(略してqPCR))によって後に定量されるオリゴヌクレオチドを用いて、検出抗体を複合させることによって一般に達成され得る。デオキシリボ核酸(以下ではDNA)は、ユニバーサルな免疫PCR(略語:iPCR)と呼ばれる方法に使用される、ビオチンの、ストレプトアビジンとの非共有的な相互作用(Ruzicka et al. 1993, Science, p. 698; Zhou et al. 1993, Nucleic Acids Research, p. 6038; EP 2189539)、または直接iPCRと呼ばれる方法に使用される市販の化学試薬によって形成される共有結合(Hendrickson et al. 1995, Nucleic Acids Research, p. 522; EP 0544212; EP 0625211)によって、上記抗体と複合され得る。しかし、研究室条件におけるiPCRの高い感度にもかかわらず、匹敵する感度は、臨床的な実務に使用されるときに期待され得ない。iPCR(サンドイッチELISAのような)は、生物学的マトリクス(特に血清および血漿)における干渉する抗体の存在によって引き起こされる誤った結果を生じる傾向にあるからである。したがって、生物学的マトリクスにおける決定のために制限なしに適用可能な超高感度法は、依然として必要とされている。
【0009】
酵素阻害剤についての、これまで使用されている高処理能力スクリーニング(HTS)アッセイは、基質/生成物、または試験物質による活性部位プローブの置換の定量にほとんど基づいている(Inglese et al. 2007, Nature Chemical Biology, p. 466)。アッセイの第1の型は、マラカイトグリーンおよびリン酸の反応に由来する着色された生成物の吸収測定であり、当該リン酸は、ホスホリラーゼの反応によって遊離される(Gad et al. 2014, Nature, p. 215)。最も多用途なアッセイは、活性部位プローブを利用し、試験物質による活性部位からのそれらの置換を検出する。これらのアッセイにおける典型的な読み出しは、蛍光発光または蛍光偏光であり、測定される特性は、プローブの結合状態および未結合状態の間において異なり、これらの2つの状態を識別可能にしている(Inglese et al. 2007, Nature Chemical Biology, p. 466)。これらのアッセイの汎用性にもかかわらず、それらは、多量のプローブおよび酵素の使用を必要とする低感度な検出に困る(Alquicer et al. 2012, J Biomol Screen, p. 1030)。したがって、これらのアッセイは、より弱い阻害剤が、そのK
dを大きく超える濃度において使用されるプローブを置き換えることができないので、偽陰性の結果を多く生じる傾向にあり得る。例えば、プローブの作用濃度が、そのK
dを超えて20倍であり、かつ陽性の結果が、蛍光偏光における50%減衰の後に記録されるなら、50nmol
−1に満たないK
iを有している阻害剤のみが、1μmol
−1の試験物質が使用される場合に検出される。さらに、バックグラウンドに対するシグナルの比は、典型的に1桁以下であり、したがって、試験物質の結合についての定性的な情報のみが得られる(Inglese et al. 2007, Nature Chemical Biology, p. 466; Gad et al. 2014, Nature, p. 215)。これらのアッセイのさらなる問題は、蛍光発光または着色された物質を、それらがアッセイの読み出しに干渉するために、正確に選別できないことである。
【0010】
前立腺特異膜抗原(PSMA、GCPIIとしても知られている)、および炭酸脱水酵素IXはいずれも、酵素であり、それらの定量のための正確かつ高感度な生物分析的方法の欠如によって制限されている診断マーカーおよび予後マーカーとして見込まれる用途を有している特定の種類のがんのマーカーであると知られている(Barve et al. 2014, Journal of Controlled Release, p. 118; Hyrsl et al. 2009, Neoplasma, p. 298)。また、両方のタンパク質は、薬剤開発活動の標的である。両方のタンパク質の小分子阻害剤に複合されている毒素からなる薬剤は、有望な結果をともなって、臨床試験および前臨床試験の評価中である(Haberkorn et al. 2015, Ann Oncol 26, p. ii33; Krall et al. 2014, Angewandte Chemie-International Edition, p. 4231)。
さらに、GCPIIの阻害剤は、いくつかの神経疾患の動物モデルにおいて有益であり(Barinka et al. 2012, Current Medicinal Chemistry, p. 856)、CA−IXの阻害は、いくつかの動物モデルにおける腫瘍成長に対する抑制作用を有している(Lock et al. 2013, Oncogene, p. 5210)。有望な結果にもかかわらず、両方のタンパク質にとってのより良好な阻害剤は、既知の化合物がいくつかの重大な副作用を示すので、依然として必要とされている。より詳細には、現状のGCRII阻害剤は、多価に帯電しており、目的とされる標的器官に達するための血液脳関門を効率的に通過できず、既知のCA−XI阻害剤は、不都合な薬理特性を有しているスルホンアミドである(Supuran 2008, Nature Reviews Drug Discovery, p. 168)。これらの酵素を阻害する新規な骨格の発見は、正確なスクリーニング法の非存在によって強く制限されており、阻害剤のGCPII HTSにとっての唯一の開発されているアッセイは、低い感度を有しており(Alquicer et al. 2012, J Biomol Screen, p. 1030)、CA−IXにっとて利用可能な阻害剤のHTSはない。本発明に基づいて、われわれは、複合的な生物マトリクスにおける両方の酵素の定量にとってこれまでで最も高感度なアッセイ、および両方の酵素の阻害剤の高感度かつ正確なスクリーニングにとって初めてのアッセイを開発し得た。
【0011】
〔発明の開示〕
本発明は、分析物の活性型を検出するため、および/または分析物の活性部位に対して結合する、試験物質の能力を決定するための方法を提供する。上記分析物は、好ましくは結合分子を介して選択的に、固体担体に不動化されており;検出プローブは上記分析物に選択的に結合されている。上記検出プローブは、上記分析物の活性部位(リガンド部分)に選択的に結合するための化合物、およびポリメラーゼ連鎖反応のためのDNA鋳型(オリゴヌクレオチドタグ)からなり、当該化合物は、好ましくは2500Da未満、より好ましくは1000Da未満の分子量であり、当該化合物およびDNA鋳型は化学リンカーによって共有結合されている。未結合のプローブを洗い流した後に、結合されているプローブの量が、決定され、不動化されている分析物の量に正比例し、好ましくは上記決定は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCRt)におけるオリゴヌクレオチドタグの検出によって実施される。また、上記プローブは、上記分析物またはそのような物質の混合物の活性部位にとよく結合している、試験物質の存在下において不動化されている分析物とインキュベートされ得る。試験物質または試験物質の混合物の、上記分析物の上記活性部位に対して結合する能力は、上記インキュベーション後の結合されている検出プローブの量を、試験物質もしくは試験物質の混合物の存在および非存在において、比較することによって決定される。
【0012】
本発明は、したがって、サンプルにおける分析物の活性型を検出するため、および/またはこれらの分析物の活性部位に結合する、試験物質の能力を決定するための方法を提供する。当該方法は、以下のステップを包含している。
a)サンプルからの分析物または分析物の集合が、固体担体の表面に対して、上記分析物の表面官能基および上記固体担体における対応する官能基の非特異的な非共有結合性の吸着または共有結合によって、不動化される;
b)上記分析物または分析物の集合が、上記分析物の活性部位に選択的に結合するための化合物を介して上記分析物または複数の分析物の集合を選択的に結合する検出プローブとインキュベーションされ、任意に、当該インキュベーションは、上記活性部位に結合する能力が試験される、種々の濃度の試験物質、または当該物質の混合物の存在下において実施され;
c)それから、上記固体担体が洗浄されて、未結合の検出プローブを除去し;
d)結合している検出プローブの量が、上記固体担体において直接または遊離後に、決定される。
ステップa)において、上記吸着または共有結合は、好ましくは、上記分析物または複数の分析物の集合の不動化の前に上記固体担体の表面に結合されており、かつ上記サンプルとの上記固体担体のインキュベーションの間に上記サンプルに含まれている上記分析物または複数の分析物の集合を選択的に結合可能な、分子を介している。
【0013】
ステップb)において、上記検出プローブは、
上記分析物の活性部位に選択的に結合するための、2500Da以下の分子量を有している低分子化合物;
共有結合されている蛍光団、ビオチンもしくは化学基を任意に有している、オリゴヌクレオチドタグ、ならびに
上記分析物の活性部位に選択的に結合するための上記化合物および上記オリゴヌクレオチドタグを共有結合的に連結している、化学リンカー
からなる。
ステップc)において、上記量は、上記サンプルに上記分析物または複数の分析物の集合の量と比例している。
好ましくは、上記検出プローブを固体担体とインキュベートするステップb)または上記サンプルを固体担体とインキュベートするステップa)において、イオン性の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤、カゼインおよびそれから調製されているカゼインブロッキング剤、血清アルブミン、DNA、ならびに免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤が、インキュベートされる溶液に加えられる。
【0014】
サンプルにおける分析物の活性型を検出するため、およびこれらの分析物の活性部位に結合する、試験物質の能力を決定するための、本明細書に開示されている方法の好ましい実施形態において、ステップa)を実施する前に、上記分析物または分析物の集合を含んでいる試験されるサンプルのインキュベーションは、ステップb)に係る検出プローブとまずインキュベートされ、ステップa)の後に、ステップc)およびステップd)が実施される。
【0015】
本明細書に記載の方法の他の好ましい実施形態において、上記ステップは、a)、b)、c)、d)の順に実施される。
【0016】
本発明に係る好ましい実施形態において、上記分析物は、酵素または複数の酵素の集合、ここで、上記活性部位に選択的に結合するための上記化合物は、当該記酵素または複数の酵素の集合の選択的な阻害剤であり;受容体または複数の受容体の集合、ここで、上記活性部位に選択的に結合するための上記化合物は、当該受容体または複数の受容体の選択的なアゴニストまたはアンタゴニストであり;ならびにトランスポータまたは複数のトランスポータの集合、ここで、上記活性部位に選択的に結合するための上記化合物は、輸送される分子にとっての結合部位において当該トランスポータまたは複数のトランスポータの集合、当該トランスポータまたは複数のトランスポータの集合に選択的に結合可能な物質である、からなる群から選択される。
【0017】
好ましくは、上記オリゴヌクレオチドタグは、当該オリゴヌクレオチドタグの一方または両方の鎖の規定の部位に対して付加的な化学リンカーを介して共有結合されている、蛍光団、ビオチンまたは化学反応基からなる群から選択される1つ以上の修飾基を任意に有している、一本鎖DNAまたは二本鎖DNAである。
【0018】
上記分析物の上記活性部位に潜在的に結合する物質は、上記試験物質である。
【0019】
一実施形態において、上記検出プローブは、上記分析物の上記活性部位に選択的に結合するための同じ化合物の2つ以上を含んでおり、当該化合物のそれぞれは個々に、オリゴヌクレオチドタグの異なる位置に化学リンカーを介して共有結合されている。
【0020】
結合されているビオチンを有している上記プローブの4つの分子、および蛍光団または酵素が任意に共有結合されている(
図2Dを参照)アビジン、ニュートラアビジンもしくはストレプトアビジンからなる上述のような検出プローブの複合物は、上記検出のために使用され得る。
【0021】
本発明の方法に係る好ましい他の実施形態において、結合されている検出プローブの上記量は、定量的なポリメーラゼ連鎖反応によって、蛍光によって、または結合した酵素反応を介して分光光度的もしくは化学発光的に、決定される。
【0022】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、上記サンプルにおける上記分析物に選択的に結合可能な上記結合分子は、抗体およびその断片、抗体を模倣するタンパク質分子(例えば、アフィボディ、アンチカリンまたはDARPin)、ならびにレクチン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン、オリゴペプチド、およびキレート剤からなる群から選択される。
【0023】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態において、ステップa)において、上記固体担体に不動化されている結合分子に対する、上記分析物または複数の分析物の集合の選択的な結合は、上記分析物または複数の分析物の集合に共有結合されているハプテン、ビオチン、ユニバーサルエピトープまたはアフィニティタグもしくは精製タグによって媒介されている。
【0024】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態において、血液、血漿、血清、脳髄液、尿、細菌溶解物、酵母溶解物、組織溶解物もしくは細胞溶解物、細菌、酵母、もしくは細胞の条件培養培地、滑液、羊水、腹水、胸膜液、囲心腔液、糞便抽出物、唾液、汗、および精漿からなる群から選択される、干渉する抗体を任意に含んでいる、複合的な生物学的マトリクスが、サンプルとして使用され得る。
【0025】
好ましい実施形態において、上記試験物質または当該物質の混合物の、上記分析物の上記活性部位に結合する能力は、試験物質なしのインキュベーション後、および当該試験物質とのインキュベーション後における結合されている検出プローブの量における差異から決定される。
【0026】
より好ましくは、上記分析物の上記活性部位に結合する、上記試験物質の能力は、試験物質なしのインキュベーション後および単一の濃度の試験物質とのインキュベーション後における、結合されている検出プローブの差異から、結合定数(分析物の上記活性部位への上記物質の結合について)の値として決定される。
【0027】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態において、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIとしても知られるヒト前立腺特異膜抗原が、上記分析物として使用され、ヒト前立腺特異膜抗原の阻害剤が、選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIが分析物として使用され、ヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIの阻害剤が選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒト炭酸脱水素酵素IXが分析物として使用され、ヒト炭酸脱水素酵素XIIが選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒト炭酸脱水素酵素XIIが分析物として使用され、ヒト炭酸脱水素酵素IXが選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒトインフルエンザノイラミニダーゼが分析物として使用され、ヒトインフルエンザノイラミニダーゼの阻害剤が選択的に結合する化合物として使用されるか;またはヒト繊維芽細胞活性化タンパク質が分析物として使用され、ヒト繊維芽細胞活性化タンパク質の阻害剤が選択的に結合される化合物として使用されるか;またはCD26としても知られるヒトジぺプジルペプチダーゼ4が分析物として使用され、ヒトジぺプジルペプチダーゼ4の阻害剤が選択的に結合するための化合物として使用される。
【0028】
決定する上述の方法は、上記分析物を選択的に結合可能な結合分子が、選択された種類の上記固体担体に不動化されるように、典型的に進行し、ここで、上記分析物は、好ましくは酵素、受容体またはトランスポータであり得る。一般に、上記結合分子の不動化の後に、上記固体担体の表面は、非特異的な吸着を抑制するための剤をによってブロッキングされる。したがって、上記固体担体は、上記不動化されている結合分子に選択的に結合されている上記分析物を含んでいるサンプルとインキュベートされ、ここで、当該サンプルは、典型的に、上記分析物を本来的に含んでいる複合的な生物学的マトリクスである。上記分析物が結合されている上記不動化されている結合分子を有している上記固体担体は、それから上記分析物の上記活性部位への、上記プローブの上記リガンド部分の選択的な結合のための上記検出プローブとインキュベートされ、結合されている検出プローブの量は、洗浄後に、好ましくはqPCRによって、定量化される。複合的なサンプルの使用は、上記結合分子に対する上記分析物の結合の選択性によって可能にされており、当該選択性は、非選択的な不動化と違い、上記混合物の微量成分の場合においてさえ効率的な結合を可能にする。また、上記サンプルは、組換え発現によって調製されている分析物を有している溶液であり得る。そのような分析物(天然に生じる分析物と対照的に)は、不動化されている結合分子によって選択的に結合される、人工的に導入されているユニバーサルエピトープを含み得る。当該ユニバーサルエピトープはこの場合に特に選択されている。
【0029】
他の実施形態において、内因性の、または組換え的に調製された精製された分析物が、使用され、上記分析物を結合可能な結合分子の代わりに、選択された種類の上記固体担体の表面に直接(非選択的)に不動化される。この構成は、上記分析物を選択的に結合する結合分子(いくつかの分析物には利用し難いか、または高価過ぎることがある)を必要としないので、上記分析物の上記活性部位に結合する、上記試験物質の能力を試験することにとって、特に有用である。上記分析物が、上記固体担体の表面い直接に不動化されている場合、当該表面は、典型的に、非特異的な吸着を抑制する剤を用いて続いてブロッキングされ、それから、上記固体担体は、上記分析物の上記活性部位に選択的に結合するための上記検出プローブとインキュベートされる。上記結合されたプローブの量は、未結合のプローブを洗い流した後に、好ましくはqPCRによって、決定される。
【0030】
本発明の一局面において、上記リガンド部分を構成している上記化合物が、酵素もしくは複数の酵素の集合の、阻害剤、トランスポータもしくは複数のトランスポータの集合の、アンタゴニストおよびそれらの輸送される物質、受容体もしくは複数の受容体の集合の、アゴニスト、共アゴニスト、アンタゴニストまたはブロッカーを包含している群から好ましく選択され;そのとき、分析物は、酵素、複数の酵素の集合、トランスポータ、複数のトランスポータの集合、受容体、または複数の受容体の集合からなる群から選択される。上記分析物を選択的に結合するための上記化合物は、有機物の特性を有しており、2500Da以下、より好ましくは1000Da以下の総分子量を有している。
【0031】
複数の分析物(複数の酵素、複数の受容体または複数のトランスポータ)の所定の集合に選択的に結合するための化合物の使用は、集合の構成要素間における選択性が、不動化されている結合分子によって十分に確保されているので、多数の異なるタンパク質が単一の検出プローブを用いて定量化され得る分析物の定量化にとって好ましい。さらに、当該使用は、目的の対象物および見込まれる第2の対象物の両方に選択的に結合することを試験することが可能であると証明されたので、上記分析物の上記活性部位に結合する、試験物質の能力を測定することにとって、等しく好ましい。最後に、未結合のプローブが洗い流された後に、結合されているプローブの量が決定される。
【0032】
本発明の他の局面において、qPCRは、不動化されているオリゴヌクレオチドタグ、およびしたがって結合されている検出プローブの検出および定量化に使用され、上記決定の感度を非常に向上させる。例えば、前立腺特異膜抗原(PSMA抗原、PSAと区別されている)の検出について、数十アトグラム(数十のタンパク質分子に等しい)の感度が実現された。これは、現状のPSMA検出法よりおよそ百万倍小さい。他の抗原の検出の、そのような感度は、導入部にすでに述べたPSAを用いた根治的な前立腺摘除術の後における、特定のがんの早期の検出(例えば、前立腺がんの進行を決定すること)を可能にし得る。また、1つの混合物における複数のヌクレオチド鋳型の平行する決定は、標準的かつ一般的な方法であるので、qPCRを用いることは、複数の分析物の、同時並行の決定を可能にする。qPCRを用いることの主な他の利点は、分析物の濃度を決定する大きなダイナミックレンジに表れている。いくつかの分析物の検出について、もとのサンプルにおける分析物の濃度における差の、6〜7桁(ELISAアッセイの場合より3〜4桁大きい)大きくなる。分析物の量が検出の範囲外であった臨床サンプルの、再評価の回数を減少させるので、一般的に使用されている従来のELISAと比べて数桁の範囲の拡大は、財務費用を低減させる。
【0033】
記載されている決定方法の感度の主な制限は、固体担体の表面に対する非特異的な吸着である。本発明の他の局面は、検出プローブの非特異的な吸着が一本鎖オリゴヌクレオチドタグを二本鎖タグと置き換えることによって好ましく抑制されることである。本発明のさらなる他の局面は、非特異的なバックグラウンドからより大きく離れたシグナルが、サンプルおよび特に検出プローブを、非特異的な吸着を抑制する種々のブロッキング剤を含んでいる溶液において希釈することによって実現され得ることである。そのような剤は、好ましくは、非イオン性の界面活性剤、イオン性の界面活性剤、アルブミン、およびカゼイン調製物である。
【0034】
本発明の他の局面において、上記分析物の上記活性部位に対する上記検出プローブの選択的な結合は、当該分析物の当該活性部位に結合する、試験物質の能力を測定することに使用される。この構成において、上記検出プローブは、上記分析物とともに、試験物質または試験される複数の物質の集合の存在下においてインキュベートされる。上記試験物質が上記分析物の上記活性部位に結合する場合、結合されているプローブの量は、上記試験物質の非存在におけるインキュベーションと比べて減少する。上記試験物質の解離定数(K
d)(上記分析物が酵素である場合の阻害定数(K
i)に対応する)は、上記プローブの結合および試験物質の使用される濃度の減少の程度から算出され得ることが分かった。したがって、設定の大きなダイナミックレンジは、非常に重大である;上記分析物に対する試験物質の解離定数が、測定に使用される単一濃度の試験物質から、上記方法のダイナミックレンジの全体において算出され得るからである。これは、試験物質の使用される濃度1mmol.l
−1(およびそのK
dに対応する検出プローブの使用される濃度)に基づいて、0.5mmol.l
−1〜0.5nmol.l
−1の範囲における物質の解離定数を、6桁の大きさの範囲において定量的に決定できること、すなわち、0.5μmol.l
−1〜0.5pmol.l
−1の範囲における上記物質の解離定数が、試験物質の使用される濃度1μmol.l
−1に基づいて、定量的に決定され得ることを意味する。以下に示す通り、測定可能なKdの範囲は、試験物質の濃度を変更すること、または上記検出プローブの濃度を変えることによって変更され得る。
【0035】
上記分析物の活性型を天然に含んでいる生物学的材料の使用は、上記分析物の困難な調製が必要ではないという利点だけでなく、いわゆる個別医療に適用可能である。これは、感染している患者の血液における薬物に対するウイルスタンパク質の抵抗性の測定、または患者のチトクロームP450に対する薬物の結合親和性を決定すること、およびしたがって、患者における薬剤の分解速度を予測することを包含している。
【0036】
提案されている方法の顕著な他の利点は、固体担体の使用および洗浄による過剰な試験物質の除去の可能性が、上記方法を試験物質の蛍光による誤った結果に影響されなくするという事実である。これは、例えば蛍光偏光を用いた方法と、基本的に異なっており、したがって、植物または真菌からの抽出物によって得られた複数の物質の不純な混合物における、酵素、受容体およびトランスポータの活性部位に結合する活性物質の非常に効率的な探索を可能にする。
【0037】
この用途において、上記固体担体は、上記分析物を選択的に結合可能な結合分子の不動化、または分析物の直接的な不動化のための基材の役割を果たす。上記固体担体は、余分な化学物質(特に未結合の検出プローブ)の、洗浄による容易な除去、およびしたがって、ELISAの一般に使用されている免疫アッセイと同様に、結合されているプローブの量の選択的な決定を可能にする。上記固体担体は、結合分子の不動化、分析物およびプローブの結合、ならびに検出プローブのヌクレオチドタグの検出(好ましくはqPCRによる)に使用される溶液の置き換えを可能にする。
【0038】
上記固体担体の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、セファロース、セファデクッス、ガラス、セラミクス、金属および酸化物からなる群から選択される。結合bつンしまたは分析物の共有結合を容易にするために、上記固体担体の表面は、さらに官能化され得、好ましくは、当該表面は、クロロメチル基、トシル基、メシル基、アジド基、アルキン基、アルデヒド基、ケトン基、ヒドロキシル基、スルフィドリル基、エポキシ基またはアミノ基を含み得る。
【0039】
上記固体担体の種類は、マイクロプレートウェルの表面、典型的に100nm〜100μmの直径を有している微粒子、またはマイクロチップ上の特定の表面(「スポット」)からなる群から選択される。洗浄によって未結合の化学物質を除去する方法は、液相、液相デカンテーション、ろ過、磁気分離後の上澄の除去、および後に上澄を除去する遠心分離を包含している。
【0040】
本発明の他の特徴は、上記分析物に選択的に結合可能な結合分子が、上記固体担体に不動化される;当該結合分子が、抗体およびそれらの断片(Fab、F(ab’)
2ScFv、Fv)からなる群から選択され;それから、重鎖およびそれらの断片(単一ドメイン(単一ドメイン抗体、VHH)、組合せ的に調製された、抗体を模倣するタンパク質(例えば、アフィボディ、アンチカリン、DARPin)、レクチン、アビジン、ニュートラアビジン、オリゴペプチド、およびキレート剤(例えば、ヒスタグ付きのタンパク質の不動化用のトリス−ニトリロトリ酢酸)からなる)のみからなる抗体、である。
【0041】
上記結合分子は、好ましくはマイクロプレートのウェルまたはマルチウェルPCRプレートのポリスチレンまたはポリプロピレンの表面に対して直接に、非特異的な非共有結合的な吸着によって、好ましく不動化される。また、上記分析物を選択的に結合可能な結合分子は、上記固体担体の上記表面に共有結合的に好ましく不動化される。タンパク質性の結合分子は、その表面基(一級アミン基、チオール(スルフィドリル)基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基、およびヒドロキシル基が挙げられる)の反応によって不動化される。上記反応は、エポキシ基、クロロメチル基、トシル基、メシル基、アジド基、アルキン基、活性化カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基、ヒドロキシル基、スルフィドリル基、またはアミノ基からなる群から選択される、固体担体の表面に存在する反応性基または活性化された基によって直接に実施される。表面に活性化された基を有している固体担体は、市販されている(Invitrogen, PolyMicrospheres)。
【0042】
また、不動化は、ヘテロ二官能性の連結試薬を介して実施され得;その一方の反応性基は、上記結合分子の表面にある対応する基と反応し、他の反応性基は、上記固体担体の表面にある対応する基と反応する。固体担体に対する共有結合は、最も一般的に、上記結合分子および固体担体の表面にある基のバイオオルソゴナル(bioorthogonal)な反応性対を導入することによって、達成される。必要とされる試薬の多くは、Solulink、Click Chemistry Tools、Jena Bioscience、Sigma Aldrichなどの会社から市販されている。バイオオルソゴナルな基の結合は、上記リガンドおよび上記プローブのオリゴヌクレオチド部分を結合するために使用される結合と同じである。
【0043】
上記分析物を選択的に結合可能な結合分子の選択的な不動化のために、上記固体担体の好適に処理された表面は、上記結合分子が、当該表面に対する直接の吸着後にその活性を失う場合に、好ましく使用される。好ましくは、不動化されているビオチン結合成分を有している表面が、使用され、結合分子が、例えば市販のNHS−ビオチンエステル(Pierce)を用いて、ビオチン化されている表面である。同様に、結合分子は、選択されたユニバーサルエピトープを介して、好適に選択された表面に選択的に不動化され得る。好ましくは、Hisタグ、Strepタグ、Aviタグ、フラッグタグ、GSTタグからなる群から選択されるペプチドタグおよびタンパク質タグが、使用される。抗体は、所定のクラスの抗体を選択的に認識する非特異的に不動化されている抗体または他の化合物を用いて表面に好ましく結合され得る。
【0044】
上記分析物を選択的に結合可能な結合分子の不動化後に、上記固体担体の表面に対する非特異的な吸着は、ブロッキング剤を用いたインキュベーションによって、次のステップにおいて防止される。ブロッキング溶液は、アルブミン、カゼイン、カゼインブロッキング剤、核酸および免疫グロブリンからなる群から選択される剤を好ましく含んでいる。
【0045】
それから、上記分析物を選択的に結合可能な、不動化された結合分子を有している固体担体は、上記サンプルとインキュベートされる。上記分析物の選択的な結合は、複合的な混合物のなかから分析物の結合を可能にする。上記分析物の選択的な結合は、複合的な混合物のなかから分析物を結合することを可能にする。上記分析物を選択的に認識する、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはそれらの断片は、この目的のための結合分子として好ましく使用される。複合的な混合物から分析物の分子の大部分は、抗体に結合し、かつさらに固体担体の洗浄時(特に未結合のプローブを洗い流すとき)に解放されないので、上記分析物に対する抗体の高い親和性は、高感度な検出を可能にする。本発明に係る方法において、血液、血漿、血清、脳髄液、尿、組織溶解液もしくは細胞溶解液、滑液、羊水、腹水、胸膜液、囲心腔液、糞便抽出物、唾液、汗および精漿からなる群から選択される複合的な生物学的マトリクス(干渉性の抗体を任意に含んでいる)が、サンプルとして使用され得る。
【0046】
また、分析物の定量のための、サンドイッチ抗体に基づくこれまで使用されている免疫学的方法(例えば、ELISAまたは免疫PCR)と対照的に、定量化のわれわれの方法は、干渉性の抗体の存在に過敏ではないサンプルにおけるそれらの存在が分析物濃度の測定の結果に影響しない)ことが、確かめられた。サンプル成分の非特異的な結合を抑制するために、好ましくは、サンプルは、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カゼイン、カゼインから調製されたブロッキング剤、血清アルブミン、免疫グロブリンまたはDNAからなる群から選択される成分を含んでいる溶液を用いてさらに希釈される。
【0047】
好ましい他の実施形態において、細菌溶解物、酵母溶解物、細胞溶解物、細菌条件培地、酵母条件培地、および細胞条件培地からなる群から選択される組換え的に調製された分析物を含んでいる溶液が、サンプルとして使用される。組換え的に調製された分析物は、その選択的な結合のための上記結合分子と同様に、固体担体または固体担体の好適に処理された表面に不動化された結合分子に選択的に結合させるため(固体担体の表面への結合分子の選択的な不動化のためと上述の通りに等しく)に使用され得る、人工的に導入されているユニバーサルエピトープを含み得る。
【0048】
精製された組換えの分析物または内因性の精製された分析物の溶液が、サンプルとして使用されるとき、結合分子に対する分析物の選択的な結合に加えて、固体担体の表面に対する直接の分析物の、共有結合的または非共有結合的な、非特異的な吸着(結合分子の直接の吸着について等しく上述されている通り)が、固体担体に分析物を不動化するために使用され得る。非共有結合的な非特異的な吸着または共有結合によって、分析物が固体担体に直接に結合される場合、それから、固体担体の表面は、ブロッキング溶液とインキュベートされる。好ましくは、ブロッキング溶液は、アルブミン、カゼイン、カゼインブロッキング剤、核酸、および免疫グロブリンからなる群から選択される成分を含んでいる。
【0049】
結合分子に対する選択的な、または固体担体の表面に対する直接の、サンプルからの分析物の結合後に、固体担体は、分析物の活性部位(リガンド部分)に選択的に結合する、オリゴヌクレオチドタグを有している化学リンカーを介して共有結合されている、不動化された分析物の活性部位に対する、プローブのリガンド部分の選択的な結合のための、化合物からなる検出プローブの溶液とインキュベートされる。検出プローブの非特異的な結合を抑制するために、検出プローブは、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カゼインおよびカゼインから調製されたブロッキング剤、血清アルブミン、免疫グロブリンまたはDNAからなる群から選択される成分を含んでいる溶液を用いて、好ましく希釈される。
【0050】
また、結合分子を介した分析物の選択的な不動化を用いた手法は、サンプルにおける分析物を固体担体とインキュベートする前に、サンプルにおける分析物が、分析物の活性部位に検出プローブを選択的に結合する検出プローブとともに、まずインキュベートされ得ることが、確認された。分析物および検出プローブのこの混合物は、それから、固体担体およびそれに結合されている不動化された結合分子とインキュベートされる(すなわち、このステップは、サンプルにおける分析物の、固体担体とのインキュベーションのステップ、および続く、結合された固体担体との、検出プローブのインキュベーションのステップを置き換える)。
【0051】
そのような手法は、一般的に自己タンパク質分解的に分解されるエンドプロテアーゼにとって特に有利である。それらの分解は、活性部位への結合がタンパク質分解活性を阻害した後に、検出プローブ、およびそれから固体担体とまずインキュベートすることによって、効率的に防止され得る。逆に、エンドプロテアーゼが、不動化された結合分子を有している固体担体、およびそれから検出プローブのみとまずインキュベートされる場合に、プロテアーゼの自己タンパク質分解性の分解は、固体担体とのインキュベーションの間に起こり得る。また、固体担体との分析物のインキュベーションの前における、分析物との検出プローブのインキュベーションは、分析物の活性型が、固体担体に結合されている結合分子に対して選択的に結合することによって不安定化されるか、またはそうでなければやがて不安定になる場合に、分析物の活性部位に対する検出プローブの結合が、活性型を安定化するので、有利である。さらに、この手法は、1回のインキュベーションステップおよび任意の洗浄を省き、加速に加えて、プロトコールがいくつかの場合にアッセイの感度を向上させ得る。
【0052】
続くステップにおいて、固体担体は、洗浄されて未結合のプローブをなくし、それから、結合されているプローブの量が、好ましくはqPCRによって、決定される。ポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)、プライマー、dsDNA検出用の蛍光発生性のプローブもしくは蛍光色素、および添加剤を有しているバッファーを典型的に含んでいる、qPCR反応混合物が、洗浄された固体担体に加えられる。続いて、オリゴヌクレオチドタグは、qPCRにおいて増幅され、各サイクルの間に、各サンプルについてのC
q値が算出される蛍光強度が、モニターされる。C
q値は、プローブの濃度の対数に反比例し、逆に分析物の濃度に比例する。qPCRの処理および評価は、詳細を説明する必要のない現在の通常の方法である。
【0053】
結合された検出プローブの量は、検出に使用される溶液が固体担体に加えられ、かつ続いて結合されたプローブの量に比例する観察可能な量が測定されるように固体担体において直接に、決定される。これは、qPCRだけでなく、詳細についてさらに説明されている多く他の方法による上述の決定を含み得る。他の構成において、洗い流し溶液が、固体担体を洗浄するためにまず加えられ、結合されたプローブがこの溶液に放出された後に、その量が、この溶液において決定される。解離速度定数K
offによって説明される、活性部位からのプローブの単純な放出は、感度およびダイナミックレンジの損失なしに、結合されたプローブを溶液に放出するために使用され得ることが理解される。代替的に、化学リンカーは、洗い流し溶液に含まれている好適な試薬によって還元される(固体担体の表面から溶液へのオリゴヌクレオチドタグの急速かつ定量的な放出を生じる)ジスルフィド結合を、好ましく含んでいる。好ましくは、続くqPCRアッセイにおいてDNAポリメラーゼと競合する従来の還元剤(例えば、ジチオスレイトール、β−メルカプトエタノール、トリス(2−カルボキシルホスフィン(TCEP)、および不動化されたTCEP)が、還元剤として使用される。そのような構成の利点は、例えば、放出された溶液が、新たなプレートに移され得るように、プローブとの分析物の不動化、および続く検出のために異なるマイクロプレートを用いる可能性である。これは、qPCR用のサーマルサイクラ―における熱サイクルに好適ではないが、ポリスチレンプレートが、qPCRによる続く検出の前の不動化のために使用されることを可能にする。
【0054】
本発明の実際の利点は、主に多くの受容体および酵素が、治療処置のための公的な標的であり、それらの阻害が有益であるので、重要な分析物の活性部位に強力かつ選択的に結合する多くの化合物の化学構造が、すでに知られていることである。また同様に、病原体および宿主の間における重要な相互作用は、特に病原体の表面リガンドおよび宿主細胞受容体の間の相互作用を阻害することによる、治療処置の標的である。難治性または不治のウイルス性疾患に対する最も有効な薬物は、ウイルス複製にとっての重要な酵素の非常に強力な阻害剤である。HIVプロテアーゼ、HIV逆転写酵素、およびHCV NSSBポリメラーゼの阻害剤は、臨床的に最も有効に使用される阻害剤に属する。臨床用途にとって、低分子物質は、必須に、毒性ではなく、水相に可溶であり、本願に開示されている方法は、分析物の選択的な結合に関する化合物だけでなく、毒性化合物、または水相に難溶もしくは完全に不溶な化合物を好ましく利用する。非常に極性かつ可溶性のオリゴヌクレオチドとのそれらの複合が、生じた検出プローブが、決定のために求められる濃度において容易に溶解されるほどに、それらの可溶性を向上させるので、分析物の選択的な結合のための不溶な化合物が、使用され得る。
【0055】
本発明の目的のために、酵素阻害剤は、酵素の活性部位に結合可能な、したがって、基質もしくは複数の基質、および/または酵素の共因子もしくは複数の共因子を、活性部位から移動可能な(基質もしくは複数の基質の酵素触媒反応を減速させる)物質を意味する。酵素は、自由エネルギー活性障壁を下げることによって選択される化学反応を選択的に触媒する三次元構造を有しているポリヌクレオチド鎖またはポリペプチド鎖から一般的に構成されている生体高分子である。触媒の選択性は、基質もしくは複数の基質および任意に共因子が選択的に結合される、酵素の活性部位の特定の配列に起因する。同種の反応を触媒する複数の酵素の集団、および所定の集団における酵素より多くの共通する阻害剤がある。例えば、ぺプスタチンは、アスパラギン酸プロテアーゼの大集団を阻害する。切断された結合の直近は、同じであり得るが、活性部位の全体の結合キャビティ一般的に異なり、したがって、単一の集団(例えば、アスパラギン酸プロテアーゼ)においてさえ、各酵素は、多少は限られた集団の酵素のみにとっての反応を触媒する。結合キャビティにおける説明した差異に起因して、1つの酵素またはわずか数種の酵素のみの活性部位に選択的に結合する選択的な阻害剤がある。選択的な阻害剤の設計は、医薬品化学における極めて共通する困難な問題である。新たな医薬として阻害剤の開発の間に、探索は、いくつかの異なる酵素を阻害する物質にしばしば始まり、阻害剤は、標的酵素のみを阻害するために、より後に修飾される。標的酵素以外の阻害は、副作用の一般的な原因であり、よい例は、COX−1も阻害する非ステロイド性のCOX−2阻害剤である。
【0056】
分析物の定量化の提案されている方法において、決定の選択性はまた、阻害剤の他に、結合分子として使用される抗体によって付与されるので、阻害剤の完全な選択性は、必要とされない。好ましくは、いくつかの酵素の共通する阻害剤は、検出プローブのリガンド部分として、種々の抗体と組み合わせて使用され得、したがって、いくつかの分析物の選択的な決定のためのアッセイは、それらのそれぞれについて個々に検出プローブを開発し、合成する必要なしに、開発され得る。
【0057】
試験物質の阻害有効性を試験するために、いくつかの酵素の共通する阻害剤は、十分に選択的ではない薬物開発パイプラインの開始物質が、検出プローブの合成のために使用されるので、より好ましく使用される。それから、調製されたプローブは、本願に記載されているように、以降の他の物質の選択性を、直接に定量化するために使用され、得られた結果に基づいて、標的の酵素のみを選択的に阻害する剤が、選択され得る。単一のプローブを用いて、試験アッセイは、このようにして、医薬のさらなる開発のために適切な酵素にとって厳密に開発され得る。本願の実施例は、HIVプロテアーゼの選択的な阻害剤、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIおよびIII(GCPIIおよびGPCIII)の共通する阻害剤、炭酸脱水素酵素IIおよびIX(CA−IIおよびCA−IX)の共通する阻害剤、ヒトインフルエンザサブタイプN1およびN2のノイラミニダーゼの共通する阻害剤、ならびにペプシンのアスパラギン酸プロテアーゼの共通する阻害剤の使用を説明している。
【0058】
本出願の目的上、受容体は、リガンド(アゴニスト)と結合した後、酵素活性、若しくは受容体自体の他の活性の変化、または、上記受容体に直接的、若しくは非直接的に結合するタンパク質、または、特定のイオンの濃度変化による、酵素活性、若しくはイオン依存性タンパク質自体の他の活性の変化、または、第2のメッセンジャーの濃度変化にて細胞タンパク質を変化させることにより最終的に特定の遺伝子の発現を任意に変化させることを反映した細胞内シグナルを発生することが可能なタンパク質を意味する。上記受容体の一例は、典型的には、通常細胞膜の両側の構造領域を含み、1以上の膜貫通型セグメントと結合する膜結合性タンパク質である。上記受容体の重要な特徴は、リガンドと結合し、(多くの場合多量体化を介して)自身の構造を変化させることにより、細胞膜を貫通して結合するリガンドの情報を伝達することである。
【0059】
受容体の第1の大きな集団において、上記シグナルは、受容体自体、若しくは受容体と結合するタンパク質(酵素)、GTPases(G−タンパク質)若しくはプロテインキナーゼの、細胞の他方の側の構造領域における酵素活性または他の活性のどちらかの変化を介して形質導入される。
【0060】
活性化した結合タンパク質は、その際、他のタンパク質を活性化させ、多くの場合、例えば、ホスファチジルイノシトールトリホスファイト、ジアシルグリセロール、カルシウムイオン、環状AMPまたは環状GMP等のいわゆる第2のメッセンジャーと関連する、完全なシグナル伝達カスケードを始動させ得る。上記受容体の例は、ヒト神経系におけるいわゆる代謝型グルタミン酸受容体、EGF受容体、インシュリン受容体、インテグリン受容体およびその他多くの受容体である。
【0061】
受容体の第2の主要な集団は、(細胞外または細胞内の何れかにて)リガンドと結合した後、選択されたイオンの透過性の変化、すなわち上記イオンの細胞内の濃度変化により、シグナルを発生する。上記受容体は、その際、イオン型受容体と呼称され、その例には、グルタミン酸AMPA、カイナイトまたはNMDA受容体が含まれる。別の種類の受容体は、例えば、ステロイドホルモン受容体であり、細胞質内に存在し、リガンドと結合した後、核に転写され、特定の遺伝子の発現を制限する。受容体リガンドは、一般に、別のタンパク質であり得、細胞外基質成分であり得、脂質、アミド酸、炭水化物、ステロイド、若しくはそれらの組み合わせにおけるペプチドまたは物質であり得る。
【0062】
受容体のエフェクター部位(すなわち、受容体自体のイオンチャネル、酵素的活性領域、またはその他の活性領域)およびリガンドと結合する部位が、お互いに空間的に離れていることによって、受容体の活性部位と結合するための低分子量のリガンドの使用は、酵素に対する使用よりも複雑となる。本出願の目的上、受容体または受容体の集団のアゴニスト、コアゴニスト、アンタゴニストまたはブロッカーは、NMDAイオン型グルタミン酸受容体の例によって規定される:受容体活性のための、アゴニストおよびコアゴニストの双方は、対応する結合部位と結合し、当該結合が受容体活性をもたらす構造変化を引き起こす。これらの物質のうちの各々は、受容体の別の部位と結合する;アゴニストは、生理的に、主にL−グルタミン酸である一方、コアゴニストは、生理的に、グリシンである。他のアゴニストは、グルタミン酸の結合部位と結合し、例えば、L−アスパラギン酸であり、または、例えば、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)等の半アゴニストである;他のコアゴニストもまた、グリシンの結合部位と結合し、例えば、D−セリンであり、または、半コアゴニストである。加えて、受容体には、例えば、ポリアミン類またはプレグネノロンスルホン酸等の受容体モジュレータ結合を含むと結合するアロステリック部位が存在する。最終的には、受容体のイオンチャネルと直接結合する物質は、これらの受容体のブロッカーとして機能し、上記チャネルを通してイオンが通過することを阻害する。その際、上記受容体のアンタゴニストは、上述のブロッカー、および、例えば、クロロホルム、フェンシクリジン、またはアマンタジン等の非競合的アンタゴニストだけではなく、(例えば、セルフォテル等の)グルタミン酸またはグリシンの部位と結合する競合的アンタゴニストであり得る。これらの物質の集団の全ては、受容体の高感度検出および受容体の対応する部位に対する試験される物質の結合能の決定のための検出プローブのリガンド部分として使用され得る。
【0063】
検出プローブの調製に使用される物質の種類に応じて、受容体の特定の結合部位と試験される物質との結合が試験される。この方法は、特定の結合部位ではなく、物質の効果が、細胞全体に基づく現行のアッセイを使用して検出され得る点のみにおいて、ユニークである。
【0064】
特に、NMDA受容体を対象とする薬剤の発展において、他のグルタミン酸受容体と比較して選択性が低く、副作用を引き起こすことが最も大きな課題であることから、受容体の選択的な阻害の試験もまた重要である。本明細書にて提案される方法は、(酵素についての上述の方法と同様に、)現行の方法では不可能な、多数のセットの物質に対して、選択性の体系的試験が可能である。これらの方法は、典型的に、例えば、試験される物質の作用機構からは正確に決定できない、試験される物質に晒した後の細胞内のカルシウムイオン濃度の変化を測定する。酵素と同様に、種々の異なる受容体と結合するリガンドは、各々の受容体のリガンドを普遍的に試験するためのプローブを調製するために使用され得る。
【0065】
本発明の別の適用できる対象は、上にて定義された受容体には含まれていないが、例えば、テトロドトキシンまたはリドカイン等の、それらの低分子量のブロッカーが知られている、電位型チャネルである。本発明は、イオンチャネルと結合し得る検出プローブの調製のために役立ち、イオンチャネルの定量およびイオンチャネルに対する新たなブロッカーを発見するためにも使用され得る。
【0066】
本発明の目的上、トランスポータもまた、その生物学的機能に基づき規定される。トランスポータは、リガンド、すなわち輸送される物質と選択的に結合することができるタンパク質分子であり、結合の後にその輸送を仲介することができる。トランスポータは、多くの場合、脂質の膜を介する低分子量の物質のトランスポータである一方、トランスポータは、脂質の膜を通過することができないか、あるいは、通過する効率が非常に低い。このことは、トランスポータは、通常、細胞の内部と外部との間の物質のトランスポータであることを意味する。例としては、グルコース受容体、クエン酸塩受容体、または特定の腫瘍の治療に使用される葉酸およびメタトレキサート類似物質の伝達が可能である、高親和性α葉酸塩受容体を含む。類似する種類の例はまた、脳内炎の障壁におけるアミノ酸のトランスポータである。異なる種類のトランスポータの例は、リソソームの場合において、そのリガンドを認識した上で、特定の転写後修飾されたタンパク質であり、細胞成分内の結合リガンドの輸送を仲介する、マンノース−6−リン酸受容体である。上述のトランスポータが脂質の二重層を超えるリガンドのトランスポータである必要はないが、上述のトランスポータは、特定の細胞成分に対するリガンドを選別し、輸送することは明らかである。輸送される物質または輸送される物質に対する結合部位と結合し得る他の物質は、トランスポータの高感度検出のための検出プローブのリガンド部分として、および、トランスポータに対する試験される物質の阻害能を試験するために使用され得る。
【0067】
分析物の活性部位と選択的に結合する化合物、すなわち検出プローブのリガンド部分は、好ましくは、オリゴヌクレオチドと連結している化学リンカーを用いて調製される。上記リンカーは、分析物の活性部位における結合に影響しない部分にて、上記化合物と連結される。上記リンカーにおける連結に適した部位は、分析物の活性部位と選択的に結合するための結合型化合物と上記活性部位の三次元構造の知識から、或いは、上記リンカーの種々の連結部位を用いて多量体を調製し、分析物の活性部位内における上記多量体の連結の強さを試験することのどちらかによって決定される。さらに、上記リンカーは、分析物の活性部位と化合物とが結合できるような長さにて調製され、上記リンカーは、分析物の活性部位の結合するための空隙の外側に達し、それゆえに、分析物の活性部位と化合物との結合に影響を与えないオリゴヌクレオチドと連結し得る。上記リンカーの連結に適した部位および適した長さが発見された場合、分析物の活性部位と結合する既知の化合物が、検出プローブのリガンド部分の調製に使用され得る。上記化学リンカーは、好ましくは、ポリエチレングリコール;ペプチド;ポリアミド;脂肪族鎖またはヒドロキシル化された脂肪族鎖;ポリデキストラン、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)等の任意の有機ポリマー;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに、上記リンカーは、ペアの生体直交型の反応性基から選択される基、および調製された所定のペアの生体直交型の反応性基に由来の第2の対応する基を備えるオリゴヌクレオチドタグを用いて調製される。これらの基の反応により、結果として検出プローブ、すなわち化学リンカーとオリゴヌクレオチドタグとの結合を介して、分析物の活性部位と選択的に結合する化合物が生成される。ペアの生体直交型の反応性基は、好ましくは、アミン−活性化エステル、ヒドロキシル−活性化エステル、アミン−活性化リン酸、アジド−アルキン(Cu
2+触媒)、アジド−シクロオクチン、アジド−ジベンジルシクロオクチン、ヒドラジン−アルデヒドまたはケトン、芳香族ヒドラジン−芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトン、テトラジン−アルケン、スルフヒドリル−アルケン、スルフヒドリル−メレイミド、スルフヒドリル−スルフヒドリル、アミンまたはスルフヒドリル−エポキシアルカン、アミンまたはスルフヒドリル−トシレート、メシレートまたはハロゲン化アルキル、スルフヒドリル−ビニルスルホン、アミン−アルデヒドまたはケトン(シアノボロヒドリド還元)、イソシアナート−アミンまたはヒドロキシル、アミン−塩化スルホニル、アミン−アミン(スルファニルクロリドピリジン、ジクロロピリミジンまたは塩化シアヌルを介して)、アジド−ニトリル、ジオール−ボロン酸、ジオール−フェニルボロン基およびアミン−ヒドロキシル(塩化シアヌルを介して)からなる群から選択される。
【0068】
分析物の活性部位と選択的に結合する化合物と、生体直交型のペアに由来する第1の基および上記生体直交型のペアに由来する第2の基を含むオリゴヌクレオチドタグを備えるリンカーとの反応は、上述の化合物の溶液およびリンカーの溶液を好適な反応条件下、好適な割合、最も好ましくは室温下、1晩にて反応できる条件にて単純に混合することによって達成される。リンカーと選択的に結合する化合物はオリゴヌクレオチドよりも大量に入手できるから、反応の定量的な限界のために、モル過剰の上記化合物が使用される。上記化合物がモル過剰であることは、上記化合物が水相にて、例えば、オリゴヌクレオチドタグにおけるアミンと反応する活性化エステルであるとして調製される場合に、水相における活性化エステルは、通常加水分解され、その一部はオリゴヌクレオチドタグにおけるアミンと反応できなくなるため、特に重要である。選択的に結合する化合物は、5〜50倍のモル過剰にて使用されることが好ましいが、水相の代わりに有機相を使用すれば、過剰の量が少なくとも、あるいは、等モル数の量を用いてさえ、定量的な連結が達成され得る。同様に、上記化合物をわずかに過剰な量用いて、例えば、アルキンと反応物におけるアジドとの間における高効率の連結が達成され得る。特定の反応条件が、ほとんど任意に、好ましくは、連結反応および低分子量の物質の種類に応じて選択され得る。いくつかの種類の反応、例えば、活性化エステルとアミンとの反応において、十分な効率性が、狭いPHの範囲においてのみ達成され得る。DNAは、広い範囲のPHにおいて安定であるために、酸性および中性の双方、並びに塩基性でさえも、連結反応にて使用され得る。上記物質が水相にて不溶である場合、上記反応は有機溶媒、例えばDMSO中にて実施され得る。水相似て分析物を選択的に結合する化合物の不溶性は、上記化合物と非常に極性が高く、溶解性がよいDNAとが連結した後、連結している低分子量の化合物の疎水性と関係なく、連結物全体が水に可溶となることから、分析物を決定する上における技術的問題とはならない。結局、DNAと連結させることによって、元々の化合物の生物学的活性を失活させることなく、著しい溶解性が達成され得る。有機相もまた、生体直交型の反応基のうちの1種が水相において安定ではない場合において、上記反応にて使用され得る。PCR反応のためのテンプレートとしてのDNAは、その特定の三次元構造を必要としておらず、従って、(プロテイン類、特に抗体とは対照的に)有機溶媒に溶解することがその機能に悪影響を与えないとの事実から、有機相の使用は可能である。連結後、得られる検出プローブは、好ましくは、検出プローブ(通常、20,000Da)と、上記化合物(通常、1,000Da以下、最大でも2,000Da以下)の分子量の大きな差異に基づき、ミクロ遠心分離カラムにおける限外濾過法にて、残留する分析物と選択的に結合する化合物から精製される。好ましくは、検出プローブを、遊離の化合物に由来する、任意の残留している未反応のオリゴヌクレオチドと共に分離する、細胞膜の「切断(cut off)」が使用され、その結果分子量が10,000Daよりも大きい物質が獲得される。分析物と選択的に結合する遊離の化合物は、分析物と結合する検出プロ――ブと競合するために、検出プローブから分離する必要がある一方、残留している未反応のオリゴヌクレオチドは、検出プローブの性能には有意な影響を与えないことから、上記プローブから分離する必要はない。
【0069】
本発明の基礎的な実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは、典型的には200塩基以下、好ましくは30塩基〜80塩基の長さを有する一本鎖のDNAである。結合した検出プローブの量を決定するために、オリゴヌクレオチドタグの量がqPCRによって選択的に定量される。上述のタグの長さは、qPCRのテンプレート、すなわち、アニール(前後)におけるプライマー対、あるいは蛍光発生プローブ(例えば、オリゴヌクレオチドタグに対して相補的な配列を有し、発蛍光団および消光部を含む、加水分解性のTaqManプローブ;上記発蛍光団と上記消光部は、DNA増幅の間に、ポリマラーゼによる上記プローブの分裂により分離し、蛍光シグナルが増大する)として十分である。蛍光発生プローブを使用しない場合であっても、qPCRの間に生成される二本鎖のDNAと結合するSYBR Green(例えば、ロシュ)のような蛍光色素を使用すれば十分である。オリゴヌクレオチドタグの配列は、完全に任意であり;プライマーの配列、または蛍光プローブの配列もまた、その場合、上記タグの配列に選択的に依存する。
【0070】
配列が、例えば、アプタマーの場合のように、特定の三次元構造を生成する必要があることには限定されていないとの事実により、種々の検出プローブにおいて、種々の分析物に対して種々の配列を選択することが有利に行うことができ、これらの検出プローブのうちの一種が、検出プローブの混合物中から選択的に決定され得る。そのことは、例えば、一つの反応にて多量体の分析物の並行測定のために使用される。上記処理において、各々が異なる分析物を認識する、結合分子の混合物は、固体担体に固定化される。その後、上記固体担体は、結合分子に対応するサンプルに含まれる分析物における選択的な結合のために、上記サンプルと共にインキュベートされた後、結合された分析物を有する上記固体担体は、各々が異なるオリゴヌクレオチドタグを含み、各々が異なる分析物と結合する検出プローブの混合物と共にインキュベートされる。その後、結合していない検出プローブが、洗浄(洗い落とし)によって除去され、サンプルにおける対応する分析物の量に比例する、各々の検出プローブの結合の量が選択的に決定される。
【0071】
固体担体がマイクロプレートのウェルの表面である場合、種々の配列の同時の選択的な決定が、以下に示す方法にて達成され得る:第1の方法において、結合していないプローブを洗い流した後、検出プローブにおける各々のオリゴヌクレオチドタグの増幅のためのプライマーの混合物が、各々の配列に特有の配列、または多くの配列に共通の配列、および、各々の個々の配列に対して特定の(相補的な)種々の有色の蛍光発生プローブに添加される。qPCRに続いて、各々のマイクロプレートのウェルにおいて、すべての検出プローブに存在するすべての配列は、同時に増幅され、それらの選択的な検出が、混合物中の一種の所定の配列のみに対して各々一種のプローブが特定される、種々の有色の蛍光発生プローブを使用することによって達成される。一つの反応にて同時に決定される配列の数は、qPCR装置における異なる色のフィルターの数によって制限され、それゆえに、同時に5〜6個の配列という実際的な限界が存在する。別の代替法は、結合している検出プローブを溶液に放出すること、例えば、単純に抽出溶液と共にインキュベートし、続いて、この溶液を多くのウェル内に分割することであり、各々のウェルにおいて、一種の特定の配列が選択的に増幅され、定量される。この方法は、選択的なプライマーまたは少なくとも一種の選択的なプライマーと一種の一般的なプライマーを使用することによって達成され;一方、選択的な蛍光発生プローブは必要としない。このように、決定される配列の数は全く限定されない。別の類似の方法は、特定または一般的なプライマーを用いて、元々のウェルにおいて、結合している検出プローブの配列を直接的に予め増幅し、続いて、増幅された配列を含む溶液部分割し、多くのqPCR反応に投入し、続いて、前述の方法と同様の方法にて配列を決定することである。多くの種類の結合しているプローブの各々に対する同時の決定がまた、混合プローブを備えるチップの分析、または、次世代配列法によって達成され得る。
【0072】
上述の全ての決定方法において、特にqPCRの装置によって、典型的には10塩基と30塩基の間の非常に短いオリゴヌクレオチドタグを使用することも可能である。上記オリゴヌクレオチドは、非常に短いため、ポリメラーゼ鎖反応のテンプレートとなることができないが、アニールの後、ポリメラーゼによる重合が添加されたテンプレートDNAを伸長する、上記ポリメラーゼ鎖反応におけるプライマーとして働く。上記伸長されたテンプレートDNAは、その後、qPCRにてプライマー対を使用して増幅され、上記プライマーのうちの一つにおける相補的な配列の全て、または一部は、元々の伸長していないテンプレートDNAには含まれていない一方、オリゴヌクレオチドタグには存在する。従って、非常に短いオリゴヌクレオチドタグの量は、定量的に決定される。
【0073】
オリゴヌクレオチドタグの一本鎖のDNAは、様々な修飾された形態にて調製され得る。以下に示す修飾は、このDNAのストランドに直接導入され得るか、あるいは、このストランドが、目的の修飾を含む相補的なストランドと組み合わされ得るかのどちらかである。検出プローブが、(抗体を含むプローブとは異なり、)熱的に安定である場合、第2のストランドと選択的に組み合わされることは、リガンド部分を有するオリゴヌクレオチドタグの連結の前だけでなく、好ましくは連結後も実施され得る。この方法の利点は、一種の化学的に合成された、一本鎖のオリゴヌクレオチドタグを有するプローブが、望ましい修飾を備える二本鎖のDNAを有する多数の誘導体の検出プローブの調製に簡単に使用され得ることである。主に発蛍光団、ビチオン、チオール基、アミノ基、アジド基またはオクチン基である、異なる修飾を備えるオリゴヌクレオチドは、カスタム合成の形態にて市販されている。元々のDNAストランド上における第2のストランドの実際のアニールは、2種類のストランド(第2のストランドおよび検出プローブ)を、適切な割合(通常、等モル)にて混合し、加熱した後、徐々に冷却することによって実施される。
【0074】
代替的には、望ましい修飾を含む第2のストランドは、オリゴヌクレオチドタグの元々のストランドに対するプライマーのアニールと、目的の修飾を備える塩基の混合によるポリマラーゼを用いる伸長とを同時に使用することによって導入される。上記修飾された塩基もまた市販されている。
【0075】
従って、qPCRによる決定のためのオリゴヌクレオチドタグは、一本鎖のDNAだけでなく、二本鎖のDNAによっても形成され得る。好ましくは、上記検出プローブは、上記オリゴヌクレオチドタグに結合されるビオチンによって調製される。それから、このようなプローブは、モル過剰で、四価のビオチンに結合するタンパク質、好ましくは、ニュートラビジンまたはストレプタビジン、でインキュベートされ、このタンパク質への結合の後、全体の混合物を、好ましくは100kDa以上の分子量の化合物を捕捉するための孔を有する膜を通した限外濾過法によって、精製する。上記限外濾過法において、上記複合体は残留成分中に残り、結合していない検出プローブは通過する。それから、生じた四価の複合体は、分析物の活性型の検出、およびこれらの分析物の上記活性部位に対する、試験される物質の結合能のため、当初の検出プローブの代わりに、用いられる。このような複合体の利点は、四価であり、それ故の増加される親和性である。これらの利点は、炭酸脱水素酵素IXに対する検出プローブの例によって実証され、ここで、このような複合体の使用は、当初の一価の検出プローブの使用よりも、アッセイの感度を向上した。この現象に起因して、より弱い阻害剤は、検出プローブの調製のために使用され得る。代わりに、多価のプローブは、リンカーを有する分析物の活性部位に対する選択的な結合のための化合物を、生体直交型のペアからの第1群、および生体直交型のペアからの第2群の複数のコピーを含んでいるオリゴヌクレオチドタグ(このようなオリゴヌクレオチドタグは、商業的に利用可能である)と反応させることによって、調製され得る。もしくは、このようなオリゴヌクレオチドは、要求される生体直交型の群と結合される、商業的に利用可能なヌクレオチド結合ブロックからの固相合成によって調製され得る。CA−IXの検出のため、CA−IXの活性部位に対する選択的な結合のための化合物の2つの分子を含んでいる一本鎖のプローブが調製され、この手順はかなり有利であることが証明された。オリゴヌクレオチドタグに対する二つのコピーの結合によって、本願の化合物と比較される場合または化合物の一つのコピーのみを有するオリゴヌクレオチドタグと比較される場合、少なくとも20倍の向上される親和性を達成でき、上述のようにニュートラビジンを有する複合体と比較される場合、約一桁の大きさの向上される親和性を達成できた。細胞の溶解物または血清中のCA−IXの検出のため、10fg(約200zmol)未満の検出限界は、10fgおよび1ngの間、すなわち五桁の大きさの線形的な範囲で達成された。上記化合物の第2の分子の添加に起因する、親和性のこのような実質的な増加は、上記CA−IXは二つの活性部位を有するダイマーを形成し、二価のプローブは明らかに、これらの部位の両方に対して同時に結合するという事実に起因する。ニュートラビジン複合体と比較されたより高い親和性は、上記二価のプローブにおける一本鎖のDNAのより大きな柔軟性におそらく起因する。これは、ニュートラビジンと複合化されるDNAよりも高く、従って、結合されている化合物は、より簡単にCA−IXの活性部位に到達する。
【0076】
さらに上記結合活性を向上する方法は、金ナノ粒子における、上記検出プローブの複数のコピーの結合である。好ましくは、金ナノ粒子に対する直接の共役のため、オリゴヌクレオチドタグにおいてチオール基を含んでいる、検出プローブが調製される。それから、金ナノ粒子との検出プローブの共役は、上記二つの構成要素の溶液を混合することによって達成され、イオン強度の緩やかな増加がスクロース勾配中の遠心による、粒子および結合していない検出プローブの分離に続く。より好ましい方法は、任意に6〜18の炭素原子を含んでいる、分鎖でないアルカン鎖に結合される、チオール基からなる、複数のコピーの分子からなるフィルムで被覆される金ナノ粒子の調製に関する。この鎖は、一方の末端において生体直交型の反応基の一つ(好ましくはアジド基)を有している、エチレングリコール鎖、任意には3から18のエチレングリコール単位に対して(反対側の末端において)結合される。それから、これらの分子は、チオール基を介して金ナノ粒子に対して結合される。また、上記アルカンおよび上記エチレングリコール部分は、粒子の表面において半結晶構造を形成し、従って、これらのコロイドの安定性を著しく向上させる。それから、上記アジド基は、触媒なしでチアゾールを形成するために、すぐに上記アジド基と反応するジベンジルシクロオクチン(OBCO)基を好ましくは含んでいる、検出プローブに対する単一の共役のために使用される。DBCO基を有している検出プローブは好ましくは、DBCO基を含んでいる相補鎖のDNAとペアにされる標準的な方法によって調製される、一本鎖の検出プローブから調製される。
【0077】
極めて感度のよい検出は、極めて少量の組織を取り、それにより外科手術の侵襲性を減少することを可能とするため、前立腺摘除術後の癌患者の血清中のPSAの決定のためだけなく、組織生検のためにも重要である。サブミクロモルの親和性を有する化合物から調製される検出プローブによって、10fgの感度が達成された、CA−IXの実施例に従うと、上記化合物および上記分析物のミクロモルの解離定数によって、100kDaの分子量を有する1pgの分析物に対応する、10amolより低い感度を有する、分析物の検出が通常、可能となるであろうことが推測され得る。
【0078】
十アトグラム(数十分子に対応している)の感度が達成された、PSMAの検出に関する実施例に記載されるように、よりしっかりと結合している化合物によって、結合活性の利用なしであっても、著しく優れた検出の感度さえも可能となる。ウェスタンブロッティング(100pgの検出限界)またはELISA(10pgの検出限界)による、PSMAの近年で最も感度のよい検出を用いる場合、約六桁の大きさ未満である。同時に、六桁の大きさ以上の決定の範囲が達成される。上記実施例は、1fg未満から1ngを越えるPSMAの範囲における、定量的な検出を示す(ELISAアッセイの最大の範囲は、約三桁の大きさである)。
【0079】
このように結合されるプローブは、不動化される分析物に対して選択的に結合されるプローブと同様に検出されるため、分析物の決定の感度の限界は、上記検出プローブの非特異的な吸着である。従って、アッセイの感度の増加は、適した因子を検出プローブの作用溶液へと加えることで、上記検出プローブの非特異的な吸着を抑制することによって達成される。上記検出プローブは、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カゼインおよび、カゼイン、血清アルブミン、DNAまたは免疫グロブリンから調製されるブロッキング剤からなる群から選択される、添加剤を含んでいる溶液で希釈される。通常、上記検出プローブは、結合される分析物を有する固形担体とのインキュベーションの前に、適したpH(好ましくは生理学的なpH7.4)において、緩衝される溶液で希釈される。また通常、緩衝される溶液は、0以上から1.5mol.l
−1までの濃度において、溶解される塩(好ましくは、溶解される塩化ナトリウム)を含んでいる。また、上記溶液は任意に、0%以上から1%(体積/体積)の濃度(好ましくは0.1%(体積/体積)の濃度)で、非イオン性界面活性剤(好ましくは、Tween−20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート))を含んでいる。上記プローブの非特異的な吸着における著しい減少は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の低いレベル(好ましくは、最終濃度0.001%から0.02%(重量/体積)の範囲)での添加によって達成される。上記プローブの非特異的な吸着の減少はまた、カゼインブロッキング溶液の少ない量(好ましくは、200倍から500倍の最終希釈の範囲(上記溶液の初期濃度は5.5%(重量/体積)である))における添加によっても達成される。SDSおよびカゼインブロッカーの両方を加えることで、非特異的な結合のさらなる抑制にもつながる。上記実施例に示されるように、上記検出プローブの非特異的な吸着を削減し、同時に、上記分析物の活性部位に対する特異的な結合における親和性に著しくは影響を与えない溶液のこのような組成物を得るため、これらの物質およびこれらの組み合わせの両方の様々な濃度がそれぞれの分析物および対応している検出プローブについて試験される。非特異的な結合における減少は、典型的には、一桁から二桁の大きさ(しかし、相当により大きくてもよい)の範囲であり、それによって、シグナル対バックグラウンドの割合の増加、それ故に、同じ大きさのアッセイの感度の増加という結果となる。上記実施例にも示されるように、少なくとももう一桁の大きさだけ非特異的な結合を抑制し、その結果、同じ大きさの分析物の検出の感度を増加するための、さらに驚くべき方法は、二本鎖のタグへの一本鎖のオリゴヌクレオチドタグの置換である。
【0080】
分析物決定の選択性のさらなる向上は、最適な作用濃度における検出プローブを用いた、結合された分析物との固体担体のインキュベーションによって実現された。最適な濃度を決定するために、対応する分析物に対するK
d値は、各検出プローブについて決定されており、滴定(すなわち、検出プローブの濃度を変えながら、同じ分析物濃度についての複数の測定)によって実際になされている。
【0081】
解離定数についての式は:
K
d=[E]*[P]/[EP](1)
であり、ここで、[E]は、自由な分析物の濃度であり、[P]は、自由な検出プローブの濃度であり、[EP]は、結合されている検出プローブと複合している分析物の濃度である。分析物の濃度は、合計の分析物濃度(E
tot)およびプローブと複合されている分析物の濃度(EP)の差に対応し、する。
上記式にこの環系を代入し、かつ[EP]について解くことによって、式:
[EP]=E
tot*[P]/(K
d+[P])(2)
(基質および酵素のミカエリス定数の決定と同様)を得る。
【0082】
自由な検出プローブの濃度[P]は、未知であるが、分析物の総濃度が、検出プローブのK
dまたは検出プローブの総濃度P
totより低い場合、滴定評価の簡略化のために、[P]は、P
totに置き換えられ得、最終的な関係は:
[EP]=E
tot*P
tot/(K
d+P
tot)(3)
と表される。
【0083】
複合物EPにおいて結合され、不動化されているプローブの濃度は、qPCRによって測定される量である。実際の解離定数は、検出プローブの使用された分析濃度に対して、EP量の測定値をプロットすること、およびプローブの解離定数の数値決定(および予めわかっていない分析物の分析濃度)と関連している式(3)によって表される関数に、それらをフィッティングすることによって、決定される。
【0084】
経験的に知られている特性の数字は、式(3)から、P
totに対する[EP]の依存性をプロットすることに基づいて導出され得る。P
totがKdより十分に小さいとき、[EP](すなわち、不動化された分析物に結合した検出プローブの量)は、P
totの増加とともに直線的に増加する。
P
totがK
dに近くなると、[EP]の上昇は緩やかになり、P
tot>>K
dにおいて徐々にプラトーに達する。このとき、[EP]値はE
totに一致する。例えば、P
tot=K
dのとき、[EP]=1/2E
tot(すなわち、分析物のちょうど半分がプローブによって結合されている)。対照的に、検出プローブの非特異的に吸着されている量の、総濃度(P
tot)に対する、観察される依存性は、試験されるすべての濃度について(すなわち、特異的な相互作用の対応するK
dより小さい、K
dと同等である、またはK
dより大きいとき)およそ直線的であり、非特異的な相互作用を特徴づける、ほとんど相当に大きい解離定数によって説明され得る。
【0085】
これらの観察から、検出プローブの最適な作用濃度が、推定され得る。分析物の決定の最も高い感度は、所定の分析物に対するそのK
dにおよそ等しいプローブ濃度、または所定のプローブにおいて非ゼロの非特異が観察される場合に所定の分析物に対するK
dより十分に小さい濃度を用いたときに、達成される。
【0086】
われわれの技術的解決は、検出の定量的なダイナミックレンジが、分析物濃度の範囲(測定されるシグナルが分析物の総濃度に線形的に比例する範囲)として規定されるときの、非常に大きいダイナミックレンジにおいて顕著である。この場合に、C
q値は、qPCRによって測定され;C
q値は、分析物に結合している検出プローブの量(EP)の対数に反比例(負の比例定数と線形的)する。当該量は、上述の定量的なダイナミックレンジの範囲において、分析物総濃度(E
tot)に比例する(すなわち、[EP]/E
tot比は、この範囲において一定である)。変形された式(2)は:
[EP]/E
tot=[P]/(K
d+[P])(4)
プローブの濃度[P]が、その分析濃度P
totによって代入され得る場合に、この条件が満たされることを意味する。P
totもK
dも分析物E
totの変化する総量に依存せずに、式(4)の左側全体は、ほぼ一定であるからである。変形された式(2)は:
[EP]/[P]=E
tot/(K
d+[P])(5)
E
tot<K
dまたはE
tot<[P]またはE
tot<<P
totの条件のもとに[P]が、P
totによって代入され得ることを、さらに意味し、そのときの[EP]<[P]であるから、[P]=P
tot−[EP]〜P
totと表し得る([EP]<P
totであるから)。これらの条件のもとに、測定されたシグナルは、E
totに比例する。これは、測定のダイナミックレンジについての重大な知見に導く;
分析物に対するプローブの選択的な結合のK
dより低い、またはK
dに等しい、プローブの低濃度のとき、ダイナミックレンジは、検出の下限において、検出プローブの非特異的吸着によって制限され、検出の上限において、プローブのK
dによって制限される。Kdより高いプローブ濃度のとき非特異吸着は増大するが、検出の上限は、もはやK
dによって制限されず、より高いプローブの濃度によって制限される。したがって、プローブの濃度が高くなるほど、ダイナミックレンジを分析物のより高い濃度に移動させ、検出の下限および上限の差の倍数は不変である。
【0087】
[Ep]がE
totに正比例する範囲のより正確な認識のために、[EP]についての正確な関係が、導出され得る。
[EP]=(K
d+P
tot+E
tot−((K
d+P
tot+E
tot)2−4*(P
tot*E
tot))
0.5)/2(6)。
【0088】
式2(線形的相関とみなす)および6にしたがって算出されたEPを比較することによって、線形比例から、Etotに対する依存性[EP]の偏差を決定し得る。例えば、E
tot>P
totである場合に、線形性からの偏差は、E
tot=1/2K
dのときに約40%であり、E
tot=1/4K
dのときに約20%であり、E
tot濃度の減少につれて、偏差はさらに減少する。これは、E
tot>P
totのとき、E
totについての線形範囲が、およそ1/4K
dに達するを意味する。対照的に、E
totおよびK
dの比に関係なくE
tot≦P
totの場合、線形性からの偏差は25%を決して超えない。これは、線形範囲が検出プローブの濃度にまで少なくとも達することを意味し、検出プローブの濃度を上昇させることによってダイナミックレンジをシフトさせる可能性を支持している。
【0089】
全体のダイナミックレンジは、実際に、線形範囲より一様に大きく、実施例における分析物の検定においてよく証明されている。例えば、PSMA検出のための線形範囲は、PSMA濃度の6桁の大きさを網羅しており、合計のダイナミックレンジは、よそ1桁の大きさだけ広い。分析物濃度は、非線形領域の外において同様に読み取られ得、線形領域における濃度より小さい。
【0090】
分析物定量化の線形範囲は、検出プローブと同じ活性部位に結合する試験物質の解離定数を決定するために、特に重要である。その原理は、検出プローブおよび試験物質の間における分析物の活性部位に対する結合についての、競合である。そのような大きいダイナミックレンジにおける競合の強度を測定するための可能性は、完全に新規であり、酵素反応速度論おいていまだに未知の、有益さを利用するためのいくつかの新たな関係を導出することが必要である。
【0091】
第1に、上述した条件のもとに、結合されたプローブの決定された量は、不動化された分析物の量(より正確には、分析物の自由な活性部位の数)に正比例する。それは、活性部位に対して結合する試験物質の非存在において、分析物のすべての活性部位が、自由であり、かつ結合されたプローブの量は、活性部位の総数に対応し;試験物質が、活性部位のある数に結合されており、かつプローブがしたがってもはやそれらに結合できない場合、結合されたプローブの量は、残りの自由な活性部位の数に正比例することを意味する。したがって、活性部位の測定された濃度の、x%までの減少から、x%の活性部位が試験物質によって占有されていることが明らかになり;試験物質のありおよびなしの測定されたシグナルを比較は、結合された試験物質による活性部位の割合を直接に反映している。
【0092】
試験物質の解離(阻害)定数に、検出プローブの解離(阻害)定数を説明する式(1)を適用する。
K
i=[E]*[I]/[EI](7)
ここで、K
iは試験物質の解離定数であり、[E]は自由な分析物の濃度であり、[I]は自由な試験物質の濃度であり、[EI]は、結合された試験物質と複合された試験物質の濃度である。次の導出における検出プローブに関連する変数は、式(1)と同じである。分析物の総量について、
E
tot=[E]+[EP]+[EI](8)
を適用し、試験物質によって占有されている活性部位の比率は、
[EI]/E
tot=x/100(9)
に等しい。ここで、xはm百分率として表されている、試験物質によって占有されている活性部位との分析物の部分である。式(9)をE
totについて解き、式(8)に代入し、式(1)から[EP]を解いて代入し、式(7)から[EI]に代入し、解くことによって、K
iについての式:
K
i=(100/x−1)*[I]/(1+[P]/K
d)(10)
が得られる。試験物質の総(分析)濃度I
totを用いた未結合の試験物質の濃度を表す
式(9)からの[EI]を代入し、[I]について解いて、
[I]=I
tot−x*E
tot/100(11)
を得る。I
totは、結合されたプローブおよび未結合のプローブの濃度の総和(I
tot=[I]+[EI])である。
【0093】
K
iを算出するためにもたらされた式は、上記方法の定量的範囲における
K
i=(100/x−1)*(I
tot−x*E
tot/100)/(1+([P]/K
d))(12)
である。この式は、プローブの既知の分析濃度P
totを用いて、自由な検出プローブ[P]の濃度を置き換えることによって、さらに単純化される。実質的に常に、I
totは、E
totより極めて大きく、全数(x*E
tot/100)は、したがって、I
totに比べて無視され得る。そのとき、単純化された式は
K
i=(100/x−1)*I
tot/(1+(P
tot/K
d))(13)
である。
【0094】
しかし実際上、阻害の百分率は、直接には測定されないが、試験物質よのインキュベーション後における残りの自由な分析物の量(E
tot−[EI])は、試験物質なしのインキュベーション後における分析物の総量(E
tot)(すなわち(E
tot−[EI]/E
tot))と比較される。2つの量のそれぞれについて、当該量に反比例する(すなわち、分析物の自由な活性部位の量が減少するにつれて測定されたC
q値が増大する)C
q値が測定される。ΔC
qが、試験物質とのインキュベーションについて測定されたC
qから減じられた、試験物質なしのインキュベーションについて測定されたC
qと規定されるなら、そのとき、
(E
tot−([EI])/E
tot=(1+eff.)
−ΔCq(14)
を適用する。ここで、eff.は、最適条件において1に等しい、PCR反応の効率である。
【0095】
式(13)は、阻害百分率について以前に述べられている関係を用いて、ふたたび公式化される。
Ki=((1+eff.)
−ΔCq/(1−(1+eff.)
−ΔCq))*I
tot/(1+(P
tot/K
d))(15)。
【0096】
ΔC
qに依存するK
i測定の精度および範囲は、例えばこの依存性をグラフにプロットすることによって決定される。ΔC
qに対するlog K
iの依存性は、ΔC
q≧3のとき線形性であり、より低いΔC
qのとき線形性から離れる。それは、より低いΔC
qが、K
dを算出するために使用され得ないことを意味せず、決定の標準誤差が、より低いΔC
qのときより大きいだけである。qPCRによるC
q決定の、通常の標準偏差(サイクルの0.15に等しい)のときに、測定されたΔC
qに依存する、決定されたK
iの相対的な標準偏差は、以下の通りである(偏差の不均整は対数相関に起因する)。
a)サイクルのΔC
q=0.25のとき、+164%〜41%、試験物質による分析物の活性部位の16%占有(すなわちこの物質による16%阻害)に対応
b)ΔC
q=0.42のとき、+64%〜30%、25%阻害に対応
c)ΔC
q=0.5のとき、+51%〜27%、29%阻害に対応
d)ΔC
q=1.0のとき、+25%〜13%、50%阻害に対応
e)ΔC
q=2.0のとき、+15%〜13%、75%阻害に対応
f)ΔC
q=3.0のとき、+13%〜11%、88%阻害に対応
g)ΔC
q≧5.0のとき、+11%〜10%、97%阻害に対応。
【0097】
これは、0.42以上のΔC
qが、K
iの算出に好適であることを意味する。ここで、ΔC
q≧1.0のとき、著しく高い正確さが実現される。6桁の大きさの線形範囲について、適用可能なΔC
q範囲は、25%〜99.9999%の範囲における阻害百分率に対応する0.42〜0.20である。99.9998%および99.9999%阻害における差と同程度に小さい絶対値の差の区別は、分析物の残りの自由な部位(量が、対応する場合に0.0002%および0.0001%である)が測定され、検出が、対数的(絶対値の差おりむしろ倍数の変化が検出されることを意味し、ΔC
qが1に等しい場合に2倍の変化に対応する)である事実のために、非常に良好かつ正確に可能である。標準偏差を示している線を含んでいるK
iおよびΔC
qの依存性は、
図4におけるグラフにプロットされている。
【0098】
分析物に二重に結合可能な2価の検出プローブを用いる方法における試験物質のK
iを算出するための式は、同様に導出され得る。
K
i=(1−2*R
aff)/(1−R
aff−(R
aff2+(1+eff.)
−ΔCq−2*R
aff*(1+eff.)
−ΔCq)
0.5)(16)
ここで、R
affは2価および1価のプローブの解離定数の比率に等しい。上記式は、特に、自由な活性部位の変量にともなって、1価のプローブより険しいΔC
qの変化があることを意味する。C
q決定の正確さは変わりないので、1価のプローブについて述べられている正確さより高い、K
i決定の正確さを生じる。
【0099】
上述の手順とともに、ウェルへCA−IX PGの1ngをアプライ後、濃度依存性の結合検出プローブ量を測定し、プローブの解離定数が、プローブの最も高い使用濃度、すなわち50nmol.l
−1よりも著しく高いことが分かった。さらに、検出プローブの濃度5nmol.l
−1において、ゼロ・コントロールのウェルと、CA IX PGの1ngを伴うウェルとにおいて測定されたCqの差異は約10サイクルであり、これは結合したプローブの量において2桁以上の差異に相当する。同じ条件下で、CA−IX PGの定量のダイナミックレンジは50pgから1ngであった。表13を参照のこと。同じ手順において、検出プローブの溶液への、0.1%から10%(体積/体積)の濃度でのDMSOの添加は、プローブの選択的結合または非選択的結合へ影響しないことが実証された。
【0100】
上記反応緩衝液中におけるプテロイル−ビス(L−グルタミン酸)Avi−PSMAの切断の反応速度パラメータ(K
Mおよびk
cat)は、上述の手順に従って決定した。上記決定においては、阻害剤を加えず、15nmol.l
−1〜400nmol.l
−1の範囲の種々の基質濃度を用いた。すべての反応の反応率は、13±2%であった。次に、競合阻害であると仮定し、上記パラメータを用いて、測定されたIC
50の値を阻害定数(K
i)の値に変換した。上記変換は、Cheng-Prusoff式[Cheng et al., 1973, Biochemical Pharmacology, p. 3099]に従った。
【0101】
本発明の実際の利点は、主に多くの受容体および酵素が、治療処置のための公的な標的であり、それらの阻害が有益であるので、重要な分析物の活性部位に強力かつ選択的に結合する多くの化合物の化学構造が、すでに知られていることである。また同様に、病原体および宿主の間における重要な相互作用は、特に病原体の表面リガンドおよび宿主細胞受容体の間の相互作用を阻害することによる、治療処置の標的である。難治性または不治のウイルス性疾患に対する最も有効な薬物は、ウイルス複製にとっての重要な酵素の非常に強力な阻害剤である。HIVプロテアーゼ、HIV逆転写酵素、およびHCV NSSBポリメラーゼの阻害剤は、臨床的に最も有効に使用される阻害剤に属する。臨床用途にとって、低分子物質は、必須に、毒性ではなく、水相に可溶であり、本願に開示されている方法は、分析物の選択的な結合に関する化合物だけでなく、毒性化合物、または水相に難溶もしくは完全に不溶な化合物を好ましく利用する。非常に極性かつ可溶性のオリゴヌクレオチドとのそれらの複合が、生じた検出プローブが、決定のために求められる濃度において容易に溶解されるほどに、それらの可溶性を向上させるので、分析物の選択的な結合のための不溶な化合物が、使用され得る。
【0102】
本発明の他の局面において、上記分析物の上記活性部位に対する上記検出プローブの選択的な結合は、当該分析物の当該活性部位に結合する、試験物質の能力を測定することに使用される。この構成において、上記検出プローブは、上記分析物とともに、試験物質または試験される複数の物質の集合の存在下においてインキュベートされる。上記試験物質が上記分析物の上記活性部位に結合する場合、結合されているプローブの量は、上記試験物質の非存在におけるインキュベーションと比べて減少する。上記試験物質の解離定数(K
d)(上記分析物が酵素である場合の阻害定数(K
i)に対応する)は、上記プローブの結合および試験物質の使用される濃度の減少の程度から算出され得ることが分かった。したがって、設定の大きなダイナミックレンジは、非常に重大である;上記分析物に対する試験物質の解離定数が、測定に使用される単一濃度の試験物質から、上記方法のダイナミックレンジの全体において算出され得るからである。これは、試験物質の使用される濃度1mmol
−1(およびそのK
dに対応する検出プローブの使用される濃度)に基づいて、0.5mmol−1〜0.5nmol
−1の範囲における物質の解離定数を、6桁の大きさの範囲において定量的に決定できること、すなわち、0.5μmol−1〜0.5pmol−1の範囲における上記物質の解離定数が、試験物質の使用される濃度1μmol
−1に基づいて、定量的に決定され得ることを意味する。以下に示す通り、測定可能なKdの範囲は、試験物質の濃度を変更すること、または上記検出プローブの濃度を変えることによって変更され得る。
【0103】
本発明の他の局面において、qPCRは、不動化されているオリゴヌクレオチドタグ、およびしたがって結合されている検出プローブの検出および定量化に使用され、上記決定の感度を非常に向上させる。例えば、前立腺特異膜抗原(PSMA抗原、PSAと区別されている)の検出について、数十アトグラム(数十のタンパク質分子に等しい)の感度が実現された。これは、現状のPSMA検出法よりおよそ百万倍小さい。他の抗原の検出の、そのような感度は、導入部にすでに述べたPSAを用いた根治的な前立腺摘除術の後における、特定のがんの早期の検出(例えば、前立腺がんの進行を決定すること)を可能にし得る。また、1つの混合物における複数のヌクレオチド鋳型の平行する決定は、標準的かつ一般的な方法であるので、qPCRを用いることは、複数の分析物の、同時並行の決定を可能にする。qPCRを用いることの主な他の利点は、分析物の濃度を決定する大きなダイナミックレンジに表れている。いくつかの分析物の検出について、もとのサンプルにおける分析物の濃度における差の、6〜7桁(ELISAアッセイの場合より3〜4桁大きい)大きくなる。
【0104】
続くステップにおいて、固体担体は、洗浄されて未結合のプローブをなくし、それから、結合されているプローブの量が、好ましくはqPCRによって、決定される。ポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)、プライマー、dsDNA検出用の蛍光発生性のプローブもしくは蛍光色素、および添加剤を有しているバッファーを典型的に含んでいる、qPCR反応混合物が、洗浄された固体担体に加えられる。続いて、オリゴヌクレオチドタグは、qPCRにおいて増幅され、各サイクルの間に、各サンプルについてのC
q値が算出される蛍光強度が、モニターされる。C
q値は、プローブの濃度の対数に反比例し、逆に分析物の濃度に比例する。qPCRの処理および評価は、詳細を説明する必要のない現在の通常の方法である。
【0105】
本発明はまた、新規基質の同定およびそれらの動態パラメータK
Mおよびk
catの決定を可能にする。これは、検出プローブが種々の濃度試験物質の存在下において酵素とインキュベートされるように実施される。物質が基質である場合に、これらの濃度において基質の大部分が酵素によって切断されるので、Kiによって特徴づけられている活性部位からのプローブの移動だけでなく、試験物質の濃度低下にしたがった明らかなK
iの低下がある。試験物質の変化する濃度にしたがってK
i値の変化がないより高い物質濃度において、測定されたK
iが、K
Mに対応することは、明らかである。そのとき、k
cat算出について、
K
cat=(S
0−S
t+K
M*1n(S
0/S
t))/(E
tot*t)(17)
を適用する。ここで、S0は初期濃度であり、Stは時間tにおける基質の濃度であり、tは、酵素と基質のインキュベーション時間である濃度Stは、式に15にしたがって、試験物質とのインキュベーションの間に測定されるΔCqから算出される。K
iにK
Mが代入され、式は、Stに対応するItotについて解かれる。
【0106】
この用途において、上記固体担体は、上記分析物を選択的に結合可能な結合分子の不動化、または分析物の直接的な不動化のための基材の役割を果たす。上記固体担体は、余分な化学物質(特に未結合の検出プローブ)の、洗浄による容易な除去、およびしたがって、ELISAの一般に使用されている免疫アッセイと同様に、結合されているプローブの量の選択的な決定を可能にする。上記固体担体は、結合分子の不動化、分析物およびプローブの結合、ならびに検出プローブのヌクレオチドタグの検出(好ましくはqPCRによる)に使用される溶液の置き換えを可能にする。
【0107】
極めて感度のよい検出は、極めて少量の組織を取り、それにより外科手術の侵襲性を減少することを可能とするため、前立腺摘除術後の癌患者の血清中のPSAの決定のためだけなく、組織生検のためにも重要である。サブミクロモルの親和性を有する化合物から調製される検出プローブによって、10fgの感度が達成された、CA−IXの実施例に従うと、上記化合物および上記分析物のミクロモルの解離定数によって、100kDaの分子量を有する1pgの分析物に対応する、10amolより低い感度を有する、分析物の検出が通常、可能となるであろうことが推測され得る。
【0108】
酵素阻害剤についての、これまで使用されている高処理能力スクリーニング(HTS)アッセイは、基質/生成物、または試験物質による活性部位プローブの置換の定量にほとんど基づいている(Inglese et al. 2007, Nature Chemical Biology, p. 466)。アッセイの第1の型は、マラカイトグリーンおよびリン酸の反応に由来する着色された生成物の吸収測定であり、当該リン酸は、ホスホリラーゼの反応によって遊離される(Gad et al. 2014, Nature, p. 215)。最も多用途なアッセイは、活性部位プローブを利用し、試験物質による活性部位からのそれらの置換を検出する。これらのアッセイにおける典型的な読み出しは、蛍光発光または蛍光偏光であり、測定される特性は、プローブの結合状態および未結合状態の間において異なり、これらの2つの状態を識別可能にしている(Inglese et al. 2007, Nature Chemical Biology, p. 466)。これらのアッセイの汎用性にもかかわらず、それらは、多量のプローブおよび酵素の使用を必要とする低感度な検出に困る(Alquicer et al. 2012, J Biomol Screen, p. 1030)。したがって、これらのアッセイは、より弱い阻害剤が、そのK
dを大きく超える濃度において使用されるプローブを置き換えることができないので、偽陰性の結果を多く生じる傾向にあり得る。例えば、プローブの作用濃度が、そのK
dを超えて20倍であり、かつ陽性の結果が、蛍光偏光における50%減衰の後に記録されるなら、50nmol
−1に満たないK
iを有している阻害剤のみが、1μmol
−1の試験物質が使用される場合に検出される。さらに、バックグラウンドに対するシグナルの比は、典型的に1桁以下であり、したがって、試験物質の結合についての定性的な情報のみが得られる(Inglese et al. 2007, Nature Chemical Biology, p. 466; Gad et al. 2014, Nature, p. 215)。これらのアッセイのさらなる問題は、蛍光発光または着色された物質を、それらがアッセイの読み出しに干渉するために、正確に選別できないことである。
【0109】
結合分子に対する選択的な、または固体担体の表面に対する直接の、サンプルからの分析物の結合後に、固体担体は、分析物の活性部位(リガンド部分)に選択的に結合する、オリゴヌクレオチドタグを有している化学リンカーを介して共有結合されている、不動化された分析物の活性部位に対する、プローブのリガンド部分の選択的な結合のための、化合物からなる検出プローブの溶液とインキュベートされる。検出プローブの非特異的な結合を抑制するために、検出プローブは、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カゼインおよびカゼインから調製されたブロッキング剤、血清アルブミン、免疫グロブリンまたはDNAからなる群から選択される成分を含んでいる溶液を用いて、好ましく希釈される。
【0110】
PSMA用の検出プローブを、尿素系PSMA阻害剤であるS,S−2−[3−[5−アミノ−1−カルボキシペンチル]−ウレイド]−ペンタン二酸を、DNAに対して結合させることによって作製した。続いて、上記阻害剤の誘導体を作製した:上記DNAオリゴヌクレオチドのアミノ基に対して結合するための、末端のNHS−エステルを有しているリンカーを有している阻害剤(化合物3)。上記DNAオリゴヌクレオチドの結合の、阻害能に関する影響の決定のために、上記化合物を、エタノールアミンと反応させた(化合物4)。
【0111】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態において、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIとしても知られるヒト前立腺特異膜抗原が、上記分析物として使用され、ヒト前立腺特異膜抗原の阻害剤が、選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIが分析物として使用され、ヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIの阻害剤が選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒト炭酸脱水素酵素IXが分析物として使用され、ヒト炭酸脱水素酵素XIIが選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒト炭酸脱水素酵素XIIが分析物として使用され、ヒト炭酸脱水素酵素IXが選択的に結合するための化合物として使用されるか;またはヒトインフルエンザノイラミニダーゼが分析物として使用され、ヒトインフルエンザノイラミニダーゼの阻害剤が選択的に結合する化合物として使用されるか;またはヒト繊維芽細胞活性化タンパク質が分析物として使用され、ヒト繊維芽細胞活性化タンパク質の阻害剤が選択的に結合される化合物として使用されるか;またはCD26としても知られるヒトジぺプジルペプチダーゼ4が分析物として使用され、ヒトジぺプジルペプチダーゼ4の阻害剤が選択的に結合するための化合物として使用される。
【0112】
化合物17である、1−(6−アジドへキシル)−1−メチル−(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ−3−(1−エチルプロポキシ)−1−シクロへキセン−1−ホスホネートは、(Carbain 2010, Doctoral thesis, University of Sussex)中に説明された手順と同様にして調製した。
【0113】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、酵素の選択的な定量のための方法の原理を示している。Abは、固体担体上に不動化されている抗体であり、Enは、上記抗体によって認識されるサンプルに含まれている酵素である。
【0114】
図2A〜Eは、qPCRによって検出されるオリゴヌクレオチドタグに対して共有結合的に連結されている、分析物(ここでは阻害剤)の活性部位に対する選択的な結合のための化合物からなる検出プローブの考えられる構成を示している。オリゴヌクレオチドタグは、一本鎖DNA(ssDNA;A)、二本鎖DNA(dsDNA;B)であり得、蛍光団またはビオチンを任意に含んでいる(C)。検出プローブ上にあるビオチンは、代替的な検出のための共有結合されている蛍光団または酵素を任意に有している、4量体型のビオチン結合タンパク質(例えば、ニュートラアビジン(Neu))に対する結合後に、4価の粒子を形成するために使用され得る(D)。また、検出プローブは、金ナノ粒子(Au)の表面に結合され得る(E)。より高い結合活性を実現するために、分析物の選択的な結合のための2つ以上の同じ化合物は、個々に、オリゴヌクレオチドタグの異なる位置に共有結合的に連結され得る(F)。
【0115】
図3A、Bは、分析物の活性部位に結合する、試験物質の力を決定する原理を示している。
図3Aは、酵素を結合している固体担体が、検出プローブのみとインキュベートされ;qPCRにおいて測定されるシグナルが、結合されている酵素の量に比例する(下部)状況を説明している。
図3Bは、酵素を結合している固体担体が、検出プローブおよび試験物質の混合物とインキュベートされる状況を示している。試験物質が活性部位に結合する場合に、結合される検出プローブの量は、比例的に減少し、qPCRによって測定されるより高いC
qを生じ、かつ酵素の総量に対する残りの自由な酵素の比率は、試験物質とのインキュベーションの間のC
q値、および当該物質なしのC
q値の差異に比例する。
【0116】
図4は、検出プローブを有している分析物の、試験物質とのインキュベーション後におけるサイクル数、および当該物質なしのサイクル数の間における、測定された差異(ΔC
q、x軸)に応じた、試験物質の決定された解離定数(y軸)の精度を示している。太線は、測定されたΔC
qに応じた、試験された物質の決定された解離定数をプロットしている。大きいΔC
q値についての解離定数の対数は、そのΔC
qに正比例している。小さいΔC
q値について、相関関係は、線形性から逸脱しており;顕著な逸脱が、ΔC
q値の低いほど認められ;したがって、細い破線は、直接の相関関係を示している。細いグレイの線は、その定量の解離定数+−標準偏差の値を示している。
【0117】
図5は、PSMAを選択的に結合するための検出プローブ(ssPSMA)の構造を示している。オリゴヌクレオチドタグ配列内のヌクレオチドは、1文字コードを用いて記載されている。
【0118】
図6は、PSMAに選択的な検出プローブ(ssPSMA)のLC/ESI−MS分析において測定された質量スペクトル(電荷についての質量がx軸にプロットされている)を示している。記載されているピークから決定された、算出された質量は、17426.84である。
【0119】
図7は、iqPCRに対して相補的な、3’末端に修飾されているオリゴヌクレオチドを示している。一本鎖DNAの3’末端に、ビオチン(2−ヒドロキシ−18−オキソ−22−((3aS,4S,6aS)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)−4,7,10,13−テトラオキサ−17−アザドコシルリン酸塩)が、化学リンカーを介して結合されている。
【0120】
図8は、種々の検出プローブの種々の濃度についての、ウェルにおけるPSMAタンパク質の量(x軸)に対する、測定されたC
q値(y軸)の依存関係を示している。
【0121】
図9は、PSMA分子の数(x軸)に対する、測定されたC
q値(y軸)の依存関係を示している。検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)が、縦の破線によって示されている。
【0122】
図10は、本明細書に開示されている方法によって測定された計15の正常なドナーから得られたクエン酸血漿のサンプルにおけるPSMA濃度(x軸)、および放射性酵素学的アッセイ(y軸)の相関関係を示している。
【0123】
図11は、本明細書に開示されている方法(y軸)、および基準の酵素反応速度論(x軸)を用いて測定された、Avi−PSMAに対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。より良好な明確さのために、グラフの両方の軸は、対数目盛において示されている。
【0124】
図12は、rhPSMA(y軸)および血漿からの内因性のPSMA(x軸)についての、本明細書に開示されている方法を用いて測定された種々の物質の阻害定数Kiを示している。
【0125】
図13は、分析物の選択的な結合のための、調製された検出プローブの構造を示している。オリゴヌクレオチド配列内のヌクレオチドが、1文字コードを用いて記載されている。
A)HIVプロテアーゼの選択的な結合のための化合物を有している、検出プローブ(ssHIV1)
B)炭酸脱水酵素の選択的な結合のための化合物を有している、検出プローブ(ssCA)
C)アスパラギン酸プロテアーゼの選択的な結合のための化合物を有している、検出プローブ(ssAP)
D)インフルエンザノイラミニダーゼの選択的な結合のための化合物を有している、検出プローブ(ssAD_NA)。
【0126】
図14は、pH6.0における直接的な抗原吸着を採用している本明細書に開示されている方法(2つの独立した測定の平均、y軸)、およびpH4.7における基準の酵素反応速度論(x軸)を用いて測定された、HIVプロテアーゼに対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。より良好な明確さのために、グラフの両方の軸は、対数目盛において示されている。
【0127】
図15は、pH7.4における本明細書に開示されている方法(y軸)、およびpH4.7における基準の酵素反応速度論(x軸)を用いて測定されたHIVプロテアーゼに対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。より良好な明確さのために、グラフの両方の軸は、対数目盛において示されている。
【0128】
図16は、本発明にしたがって(y軸)、および基準の酵素反応速度論を用いて(x軸)測定された、炭酸脱水素酵素に対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。より良好な明確さのために、グラフの両方の軸は、対数目盛において示されている。
【0129】
図17は、二価のプローブssCAbisを用いた、細胞溶解液におけるCAーIXの量(株HT−29、x軸)に対する、測定されたC
q値(y軸)の、依存関係を示している。
【0130】
図18は、2価のプローブssCAbisを用いて(y軸)か、または市販のELISAキット(RnD System、x軸)によって、36のボランティアの血液において本発明にしたがう方法によって測定されたCA−XIの濃度の比較を示している。実線は、対数的に変換された濃度の直線回帰を表しており、破線は、直線回帰より1.25倍、大きい値または小さい値を示している。エラーバーは、2つ1組の標準偏差に対応する。
【0131】
図19は、個々の提供者の診断によって分類されている(正常な12の男性(正常)、淡明細胞型腎臓がんであると組織学的に確認されている10の男性および2の女性(ccRCC)、ならびに前立腺がんであると組織学的に確認されている12の男性(PCa))、2価のプローブssCAbisを用いた、本発明にしたがう方法による血清における、測定されたCA−XIの濃度を示している。表示*および**は、測定された濃度が、患者の2つの群において正常な人と比べて有意に異なっていた(マンホイットニー検定、p<0.05)ことを示している。
【0132】
〔実施例〕
(溶液の組成)
改変バッファー 100mmol.l
−1のリン酸バッファー;150mmol.l
−1のNaCl;pH=7.8
TBS 20mmol.l
−1のTris;150mmol.l
−1のNaCl;pH=7.4
TBST 20mmol.l
−1のTris;150mmol.l
−1のNaCl;0.055のTween20(vol./vol.)
TBST200 20mmol.l
−1のTris;150mmol.l
−1のNaCl;pH=7.4;0.05%のTween20(vol./vol.)
TSBT’ 20mmol.l
−1のTris;200mmol.l
−1のNaCl;pH=7.4;0.1%のTween20(vol./vol.)
CaSDS 20mmol.l
−1のTris;150mmol.l
−1のNaCl;pH=7.4;0.1%のTween20(vol./vol.);0.005のSDS(hm./obj.);500倍希釈のカゼインブロッカー(SDT;カタログ番号.CBC1)
TBSE 20mmol.l
−1のTris;150mmol.l
−1のNaCl;pH=7.4;5mmol.l
−1のEDTA
MEST 20mmol.l
−1のMES;750mmol.l
−1のNaCl;pH 6.0;0.05%のTween20(vol./vol.)
CLP 50mmol.l
−1のTris;100mmol.l
−1のNaCl;pH=7.4
HEPESTC 100mmol.l
−1のHEPES;400mmol.l
−1のNaCl;pH=7.5;0.01%のTween20(vol./vol.);2000倍希釈のカゼインブロッカー(SDT;カタログ番号.CBC1)
HEPESTC’ 100mmol.l
−1のHEPES;400mmol.l
−1のNaCl;pH=7.5;0.1%のTween20(vol./vol.);500倍希釈のカゼインブロッカー(SDT;カタログ番号.CBC1)。
【0133】
(用語および略語の説明)
GCPII グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII
PSMA 前立腺特異膜抗原
Avi−PSMA N末端に付されているAvi−タグを有している前立腺特異膜抗原の細胞外部分からなるタンパク質
rhPSMA 組換えヒト前立腺特異膜抗原
GCPIII グルタミン酸カルボキシペプチダーゼIII
Avi−GCPIII N末端に付されているAvi−タグを有しているグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIIの細胞外部分からなるタンパク質
ssPSMA PSMAの検出用の検出プローブ(一本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
dsPSMA PSMAの検出用の検出プローブ(二本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
dsA3PSMA PSMAの検出用の検出プローブ(二本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
dsbiotPSMA PSMAの検出用の検出プローブ(ビオチン化されている二本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
Neu_dsbiotPSMA PSMAの検出用の検出プローブ(ニュートラアビジンに結合されている、ビオチン化されている二本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
NeuHRP_dsbiotPSMA PSMAの検出用の検出プローブ(ペルオキシダーゼと複合されているニュートラアビジンに結合されている、ビオチン化されている二本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
ssHIV HIVプロテアーゼの検出用のプローブ(一本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
CA−II 炭酸脱水酵素II
CA−IX 炭酸脱水酵素IX
ssCA 炭酸脱水酵素の検出用のプローブ(一本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
ssCAbis 炭酸脱水酵素の検出用の2価のプローブ
Neu_dsbiotCA 炭酸脱水酵素の検出用のプローブ(ニュートラアビジンに結合されている、二本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
ssAP アスパラギン酸プロテアーゼの検出用のプローブ(一本鎖オリゴヌクレオチドタグを含んでいる)の意味
ssAD DBCOの結合されているオリゴヌクレオチドの意味
ssAD_NA インフルエンザノイラミニダーゼの検出用の検出プローブの意味
eq 等量
RT 滞留時間
Tween20 ポリオキシレン(20)ソルビタンモノラウレート(USB、カタログ番号.20605)
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DBCO ジベンゾイルシクロオクチン
HEPES N−2−ヒドロキシエチレンピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムを有している、電気泳動用のポリアクリルアミドゲル
LC−MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
ESI エレクトロスプレーイオン化
FBS ウシ胎児血清
THF テトラヒドロフラン
DMF ジメチルホルムアミド
DIEA ジイソプロピルエチレンアミン
ACN アセトニトリル
TFA トリフルオロ酢酸
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
TEA トリエチルアミン
EPG5 5つの連結されているエチレングリコールの単位
HOBT/DIC ヒドロキシベンゼントリアゾール/ジイソプロピルカルボジイミド
AAZ アセタゾールアミド
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCU ジシクロヘキシル尿素
TBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
HRMS 高分解能質量分析計。
【0134】
〔実施例1:PSMAの定量化、およびPSMA阻害剤の効能の試験〕
[1a:リンカーおよび活性化されているNHSエステルを有している、PSMA阻害剤の作製]
PSMA用の検出プローブを、尿素系PSMA阻害剤であるS,S−2−[3−[5−アミノ−1−カルボキシペンチル]−ウレイド]−ペンタン二酸を、DNAに対して結合させることによって作製した。続いて、上記阻害剤の誘導体を作製した:上記DNAオリゴヌクレオチドのアミノ基に対して結合するための、末端のNHS−エステルを有しているリンカーを有している阻害剤(化合物3)。上記DNAオリゴヌクレオチドの結合の、阻害能に関する影響の決定のために、上記化合物を、エタノールアミンと反応させた(化合物4)。
【0135】
別途言及されていない限り、すべての化学薬品は、Sigma-Aldrichから購入した。分析用Jasco PU-1580 HPLC(流速:1ml/分、不変勾配:30分間で2〜100%(vol./vol.)ACN、RT:それぞれの化合物に対して示した)、およびカラムWatrex C18 Analytical Column(5μm、250×5mm)を用いて、化合物の純度を試験した。分取スケールHPLC Waters Delta 600(流速:7ml/min、勾配およびRT:それぞれの化合物に対して示した)、およびカラムWaters SunFire C18 OBD Prep Column(5μm、19×150mm)を用いて、すべての最終生成物を精製した。すべての最終生成物は、99%以上の純度のものであった。LTQ Orbitrap XL(Thermo Fisher Scientific)のHRMS、およびNMR(クライオプローブが備えられているBruker Avance I(商標)500 MHz、またはBruker Avance I(商標)400 MHz)によって、上記最終生成物の構造をさらに確かめた。
【0136】
3,3’−オキシジプロパン酸(化合物1)の作製:2.38ml(20mmol)の3,3’−オキシジプロパンニトリルを7mlの濃塩酸に溶解させ、24時間、50℃まで熱した。次に、反応混合物を一晩放置して冷却し、窒素気流により塩酸を除去した。生じたスラリーを水に溶解させ、凍結乾燥させた。2.25gの白色の生成物を得た(収率=70%)。上記生成物のスペクトル分析は、[White et al. 2003, Tetrahedron-Asymmetry, p. 3633]に記載されているものと同一だった。
【0137】
ビス(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)3,3’オキシジプロピオナート(化合物2)の作製:化合物1(260mg、1.6mmol、1eq)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(660mg、3.2mmol、2eq)の溶液(10mlのTHF中)に対して、固体DCC(368mg、3.2mmol、2eq)を一度に加えた。反応を一晩放置した後、DCUを濾過し、揮発性物質を回転させながら蒸発させた。クロマトグラフィー(He:EtOAc 1:2)により、粗生成物をさらに精製した。338mgの純生成物を得た(単離された収量=60%)。分析用HPLCのRT=16.2分。
【0138】
1HNMR(400MHz、CDCl
3)による分析結果:δ 3.85 (t, J = 6.4 Hz, 4H), 2.90 (t, J= 6.4 Hz, 4H), 2.83 (bs, 8H)。
【0139】
13CNMR(101MHz、CDCl
3)による分析結果:δ 169.07, 166.77, 65.78, 32.20, 25.73。
【0140】
HRMS(ESI+)による分析結果:C
14H
16O
9N
2[MNa]
+の計算上の質量379.07480、検出された質量379.07469。
【0141】
19−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−5,13,19−トリオキソ−16−オキサ−4,6,12トリアザナノデカン−1,3,7トリカルボン酸(化合物3)の作製:1mlのDMF中に溶解している、化合物2(69mg、193μmol、1.2eq)の攪拌されている溶液に対して、ジ−tert−ブチル2−(3−(6−アミノ−1−(tert−ブトキシ)−1−オキソヘキサン−2−イル)ウレイド)ペンタンジオアート(100mg、161μmol、1.0eq、[Murelli et al. 2009, Journal of the American Chemical Society, str. 17090]に記載されている通りに作製された)およびDIEA(34μl、193μmol、1.2eq)の溶液(1mlのDMF中)を、1時間かけて滴下した。反応混合物を2時間攪拌し続けた。その後、HPLC分析によると、反応物質はすべて消失したことが判った。次に、溶媒を回転・真空環境下によって(by rotary vacuo)除去し、化合物を完全に乾燥させた。次に、トリフルオロ酢酸を窒素気流により除去する、室温、1時間のインキュベーションの後、1mlのTFAを粗混合物に加えて、標記の化合物を得た。分取用HPLC(勾配:40分間で5〜50%(vol./vol.)ACN、RT 18分間)を用いて、粗生成物を精製した。20mgの生成物を得た(単離された収量=22%)。分析用HPLCのRT=13.7分間。
【0142】
1HNMR(500MHz、DMSO−d6)による分析結果:
【0144】
13CNMR(125.7MHz、DMSO−d6)による分析結果:
【0146】
HRMS(ESI+)による分析結果:C
22H
32O
13N
4[MNa]
+の計算上の質量583.18581、検出された質量583.18596。
【0147】
1−ヒドロキシ−4,10,18−トリオキソ−7−オキサ−3,11,17,19−テトラアザドコサン−16,20,22−トリカルボン酸(化合物4)の作製:5mg(9.87μmol、1eq)の化合物3を、200μlのDMFに溶解させ、6μl(99μmol、10eq)のエタノールアミンを、14μl(80.4μmol、8eq)のDIEAとともに、混合物に対して加えた。上記混合物を、一晩攪拌し続けた。溶媒を回転させながら蒸発させ、上記混合物をACN/水に溶解させ、3回凍結乾燥させた(残存しているエタノールアミンを蒸発させるために)。さらなる精製なしに、化合物を生化学研究に用いた(唯一の不純物はNHSであり、NHSを無視すれば純度は95%超であった)。分析用HPLC RT=11.3分間。HRMS(ESI+)による分析結果:C
20H
33O
11N
4[M]
+の計算上の質量505.21513、検出された質量505.21515。
【0148】
[1b:PSMAに対して選択的に結合するための検出プローブの作製]
PSMAに対して選択的に結合するための検出プローブは、化合物3および6−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)ヘキシルリン酸の修飾を3’末端に有している一本鎖DNAの、反応によって作製した。上記一本鎖DNAの配列は、CCT GCC AGT TGA GCA TTT TTA TCT GCC ACC TTC TCC ACC AGA CAA AAG CTG GAA Aであった(Generi-Biotechに委託合成、OPC精製)。
【0149】
オリゴヌクレオチド(以下、iqPCR_aminoと表記する)を、1mmol.l
−1の濃度で、再蒸留水に溶解させた。続いて、Amicon Ultra 0.5 ml 3K column(Millipore, カタログ番号:UFC500396)での反復される限外濾過により、溶液の一部について、水を100mmol.l
−1のリン酸緩衝液(150mmol.l
−1のNaCl(p.a.; Penta)を含んでいる。pH7.8。以下、「修飾緩衝液」)と置換した。上記溶液の残りは、限外濾過の各ステップ後に再蒸留水の溶液で希釈した以外は、同様に扱った。いずれの場合も、元の溶媒の総希釈度は、10
5倍であった。生じた溶液におけるオリゴヌクレオチド濃度は、260nmにおける測定された吸収(Nanodrop ND-1000, Thermo Scientific)から算出した。オリゴヌクレオチド溶液の推定される光学濃度は、1OD=1744pmolであった。
【0150】
実体および純度を確認するために、iqPCR_aminoの蒸留水溶液を、陰イオンを検出するために設定されているデュアルAJS ESI源(4GHz, HiRes)が備えられているAgilent 6230 TOF LC/MS装置(Agilent Technologies)において、LC/ESI−MS法で分析した。分離は、Agilent Zorbax Extend-C18 1.8μm(2.1×50mm)カラムにより、室温にて行った。上記分離は、HFIP溶液(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールの200mmol.l
−1水溶液。トリエチルアミンの添加によりpHを7.0に調節した)とアセトニトリルとの比率を変化させる、流速0.3ml.min
−1(6分間で2〜45%(vol./vol.)ACN)の勾配溶出により行われた。5pmolのiqPCR_aminoの分析の結果、260nmにおいて単一の吸収ピークが存在し、保持時間は4.84分間であり、測定された質量(それぞれの電荷zについて、最も強いピークから算出された)は16981.87であった。分子量16983.09について、ChemBioDraw Ultra 13.0.0.3015プログラム(CambridgeSoft)により予測された最も存在量の多い質量は、16979.91であった。
【0151】
上記オリゴヌクレオチド(iqPCR_amino)とPSMA阻害剤(化合物3)との複合体の作製:6.9μlの1mol.l
−1HEPES緩衝液(pH=8.0)を、10μlのオリゴヌクレオチド(修飾緩衝液中、10.2nmol、1eq)に加えた。攪拌後、濃度100mmol.l
−1、3.1μlの化合物3の溶液(無水DMSO中、307nmol、30eq)を加えた。無水DMSOは、DMSO(Sigma, A.C.S. spectrophotometric grade)を、活性化されているモレキュラーシーブス(Sigma, カタログ番号688363)とともに、振盪さ続けながら数時間インキュベートすることにより作製した。次に、16000gでの短時間の遠心分離により、上記モレキュラーシーブを除去した。
【0152】
生じた混合物を、室温にて24時間インキュベートし、蒸留水で500μlに希釈し、その後、化合物3の加水分解生成物からの精製のために、Amicon Ultra 0.5 ml 10Kカラム(Millipore, カタログ番号UFC501096)に通した。上記カラムでの限外濾過による反復された濃縮および反復された希釈を通じて、元の溶媒(加水分解反応生成物を伴っている)は、再蒸留水により10
10倍に希釈された。このように、260nmにおける吸収により決定されたオリゴヌクレオチド濃度が215pmol.μl
−1である、43μlの溶液を得た(9.2nmol、収率90%)。以下、生じた生成物をssPSMAと呼ぶ。ssPSMAの予想される構造を、
図5に示す。
【0153】
複合の効率を確認するために、LC−MSによりssPSMAを分析した。分析の手順は、オリジナルのiqPCR_aminoと同一であった(本項目に上述されている)。分析の結果、260nmにおいて単一の吸収ピークが存在し、保持時間は4.85分間であり(すなわち、オリジナルのiqPCR_aminoと同じ保持時間)、測定された質量(それぞれの電荷zについて、最も強いピークから算出された)は17426.84であった(
図6)。一方、分子量17428.52について、予測された最も存在量の多い質量は17425.08であった。ssPSMA複合体の測定された質量と、上記オリジナルのオリゴヌクレオチドiqPCR_aminoとの差は444.97であり、予測される差445.17と比較される。上記オリジナルのiqPCR_aminoに対応する質量対電荷の比率は、スペクトル中に検出されなかった。これは、iqPCR_aminoが、90%を遥かに超えて転化していることを意味する。
【0154】
化合物3の加水分解の残留生成物(具体的には、6,14−ジオキソ−3−オキサ−7,13,15−トリアザオクタデカン−1,12,16,18−テトラカルボン酸)の存在について、上記ssPMSA溶液をまた分析した。言うまでもなく、この化合物はPMSAの活性部位に対して結合する。もしも、実際のプローブと同等またはそれ以上の量で、上記化合物がサンプル中に発生しているならば、上記化合物は結合について上記プローブと競合しうるし、それゆえ、PSMAアッセイの感度を低下させる。分析は、上述したものと同じ手順で、LC−MSにより行った。上記分析には、Waters Acquity C18 BEH column 1.8μm(100×2.1mm)ならびに、移動相として0.1%(vol./vol.)酢酸およびアセトニトリルを用いた。溶出の勾配は、6分間で2〜100%(vol./vol.)ACNであった。溶出の間中、推定される質量463.18(m/z=462.18)に、少なくとも大よそは対応している(±0.2)信号は検出されなかった。
【0155】
バイオアッセイにおける使用に先立って、上記ssPSMA複合体および上記オリジナルのオリゴヌクレオチドiqPCR_aminoを、水および10×濃縮TBS緩衝液中で、最終濃度5μmol.l
−1まで希釈した(1×TBSの最終濃度:20mmol.l
−1 Tris、150mmol.l
−1 NaCl、pH=7.4)。ポリプロピレン製薄肉エッペンドルフPCRチューブ(Biotix, カタログ番号3423.AS)中に体積50μlを注入した状態で、上記ssPSMA複合体および上記オリジナルのオリゴヌクレオチドiqPCR_aminoを、Tgradient Biometra thermocycler(Labrepco)を用いて、下記の温度サイクルを課した(以下、温度アニーリング)。98℃まで急速過熱の後、1℃ずつ反復される冷却(0.2℃/s)および各ステップについて5分間の保温;温度が60℃に到達した後、20℃に到達するまで、5度ずつ反復される冷却(0.2℃/s)および各ステップについて5分間の保温;全工程の間、リッド温度は99℃に設定した。
【0156】
二本鎖オリゴヌクレオチドのタグを有している検出プローブを、同様の手順で作製した。温度アニーリングの前に、上記ssPSMA複合体を、幾つかの相異なる相補的オリゴヌクレオチドと、ほぼ等モル比で引き続いて混合した。dsPSMA検出プローブは、ssPSMAを一本鎖DNAと混合することにより形成した。上記一本鎖DNAの配列は、TTT CCA GCT TTT GTC TGG TGG AGA AGG TGG CAG ATA AAA ATG CTC AAC TGG CAG Gであった(相補鎖溶液の濃度の算出ために用いられる、上記溶液の光学濃度:1OD=1649pmol)。dsA3PSMA検出プローブは、ssPSMAを一本鎖DNAと混合することにより形成した。上記一本鎖DNAの配列は、CCA GCT TTT GTC TGG TGG AGA AGG TGG CAG ATA AAA ATG CTC AAC TGG CAG Gであった(1OD=1721pmol)。一方、検出プローブであるdsbiotPSMAプローブは、ssPSMAを一本鎖DNA(以下、iqPCR_biotin)と混合することにより形成した。上記一本鎖DNAの配列は、CCA GCT TTT GTC TGG TGG AGA AGG TGG CAG ATA AAA ATG CTC AAC TGG CAG GTAであり(1OD=1639pmol)、3’末端がビオチン化されている(この修飾の構造を、
図7に示す)。
【0157】
[1c:作製された化合物、および検出プローブの阻害定数の決定]
酵素アッセイにおいて用いられる、PMSAのビオチン化されている細胞外の部分(以下、Avi−PMSAと呼ぶ)を、[Tykvart et al. 2012, Protein Expression and Purification, p. 106]に従って、作製し精製した。純粋な組換えタンパク質濃度は、製造元の説明書に従って、Biochrom30装置(Biochrom)によるアミノ酸分析により決定した。次に、酵素を分取した状態で、−80℃にて冷凍保存した。オリゴヌクレオチド濃度は、分光光度計により決定した(上記を参照)。化合物4の濃度は、化学天秤における重量から得た(蒸留水中に溶解させた)。
【0158】
すべての化合物のIC
50値は、HPLCに基づいている方法を用いて決定した。96ウェルプレート中で、0.2ngのAvi−PSMA(25mmol.l
−1 Bis−Trisプロパン、150mmol.l
−1 NaCl、および0.001%(wt./vol.)オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(C
12E
8)中。pH7.4。以下、「反応緩衝液」と表記する)を、試験される阻害剤とともに混合した(総体積180μl)。10種類の相異なる阻害剤の濃度(4倍の希釈系列)を用いて、阻害曲線を決定した。反応は、37℃にて5分間プレインキュベートされた。その後、4μmol.l
−1、20μlのプテロイル−ビス−L−グルタミン酸(Schircks Laboratories)を加えることによって開始され、37℃にて追加で20分間インキュベートされた。酵素反応は、25μmol.l
−1、20μlの阻害剤2−PMPA(2−(ホスホノメチル)ペンタン二酸[Jackson et al., 1996, Journal of Medicinal Chemistry, p. 619])を加えることにより停止させた。
【0159】
続いて、100μlの反応混合物を、UPLC HSS T3 column 1.8μm(2.1×100mm, Waters)が備えられているAgilent 1200 Series装置によるHPLCによって、分析した。2.7%(vol./vol.)アセトニトリルおよび97.3%(vol./vol.)20mmol.l
−1リン酸(pH=6.0)の定組成、流速0.4ml.min
−1で溶出させた。基質および生成物の吸光度は、281nmにおいて検出した。これらの量は、自動積分法により決定した。得られたデータは、GraFit v.5.0.11プログラム(Erithacus Software)で評価した。このようにして、IC
50値を得た。
【0160】
上記反応緩衝液中におけるプテロイル−ビス(L−グルタミン酸)Avi−PSMAの切断の反応速度パラメータ(K
Mおよびk
cat)は、上述の手順に従って決定した。上記決定においては、阻害剤を加えず、15nmol.l
−1〜400nmol.l
−1の範囲の種々の基質濃度を用いた。すべての反応の反応率は、13±2%であった。次に、競合阻害であると仮定し、上記パラメータを用いて、測定されたIC
50の値を阻害定数(K
i)の値に変換した。上記変換は、Cheng-Prusoff式[Cheng et al., 1973, Biochemical Pharmacology, p. 3099]に従った。
【0161】
結果として得られた化合物4のK
i値は、3.3nmol.l
−1であった。上記オリジナルのiqPCR_aminoオリゴヌクレオチドのK
iは、決定されなかった(最高濃度(0.5μmol.l
−1)を用いてさえも、阻害は観測されなかった)。ssPSMA検出プローブのK
iは0.14nmol.l
−1であった。dsbiotPSMAプローブのK
iは0.16nmol.l
−1であった。dsPSMAプローブのK
iは0.28nmol.l
−1であった。これらのデータからは、以下のことがである。すなわち、一本鎖オリゴヌクレオチドタグの結合により阻害定数が悪化することなく、実際には、一本鎖オリゴヌクレオチドタグの結合により一桁以上も阻害定数が向上される。さらに、第2の鎖の添加は阻害定数に影響せず、したがって、PSMAの活性部位に対する検出プローブの結合能に影響しないことが確認された。これは、オリジナルの一本鎖検出プローブssPSMAに対して、改変されている相補鎖と対合させることにより、種々の修飾が派生的に加えられうることを意味する。
【0162】
[1d:qPCRを用いる検出プローブの決定]
ssPSMA中に含まれている一本鎖DNAの設計配列は、Vector NTI 10.3(Invitrogen)で最適化して、強固な二次構造を形成しないようにした。端部を、プライマーに対して相補的な配列に用いた。このために、上記プライマーにより鋳型DNAが高効率で増幅されうること、および、所定のPCR条件において上記プライマーがプライマー二量体を形成しないことを、事前に確認した。このようにして、上記ssPSMAプローブ中のオリゴヌクレオチドタグの決定の感度を、1分子のオーダーで確実なものとした。使用されたプライマーの配列は、CCA GCT TTT GTC TGG TGG AGおよびCCT GCA GCC AGT TGA TTT TT(Generi-Biotech; 脱塩精製)であった。 Roche "Universal Probe Library"から加水分解プローブ#87(LNA8塩基配列CTG CCA CC、カタログ番号04689127001)を選択して、qPCR中に増幅された鋳型DNAを検出した。
【0163】
決定の有効性を試験するために、再蒸留水中の上記ssPSMA検出プローブの10倍希釈系列を調製した(濃度範囲:10nmol.l
−1〜10mol.l
−1。溶液1μlあたり6〜6×10
9コピーの濃度に対応する)。次に、上記希釈系列を、qPCRの較正のために用いた。LC 480 Probes Master(Roche, カタログ番号04707494001。製造元により推奨されている最終濃度まで希釈した)、両プライマー(それぞれの最終濃度:1μmol.l
−1)、蛍光性加水分解プローブ#87(最終濃度:50nmol.l
−1)、ならびに、1μlの鋳型DNAもしくは鋳型を含んでいないコントロール中の1μlの蒸留水からなる、10μlの反応混合物。それぞれの濃度および鋳型を含んでいないコントロールは、3倍にした状態で測定した。96ウェルプレートFrameStar 480/96(4titude, カタログ番号4ti-0951)を用い、上記ウェル内に上記反応混合物を注入した後、粘着性光学フィルム(Roche, カタログ番号4729692001)で蓋をした。PCRのタイムコースは、連続する以下の過程を含んでいた。すなわち、95℃にて3分間;次に、3ステップ(95℃にて10秒間、66℃にて30秒間、および72℃にて30秒間)からなる45回の反復;最後に、37℃にて2分間。FAM蛍光性分子に調整されている励起フィルターおよび放出フィルターを有している、Light Cycler 480 II(Roche)を用いた。Light Cycler 480 II Software(Roche)でSecond Derivative maximum法(method of maxima of the second derivative)を用いて、測定された蛍光曲線から閾値サイクル(C
q)を得た。
【0164】
鋳型の濃度の常用対数に対してプロットされている、得られたC
q値によると、上記アッセイが線形である範囲は、6〜6×10
8コピーの範囲(90%超の増幅効率において)であることが示された。6コピー(C
q:約37サイクル)は、鋳型を含んでいないコントロール(測定できる信号がなかった)と有意に異なった。データを表1にまとめた。
【0166】
[1e:最適な使用濃度、およびPSMAの量を決定するための検出プローブ用の最適な希釈剤の決定]
PSMAに対する上記検出プローブの解離定数を決定するための個々の試験において、本来の形状のPSMAを認識する種々の抗体(2G7, J415, J591, D2B, 107-1A4。[Tykvart et al. 2014, Prostate, p. 1674]に記載されている)の溶液(10μl。濃度:TBS緩衝液中で10ng.μl
−1)を、96ウェルプレートFrameStar 480/96(4titude, カタログ番号4ti-0951)のウェルの底に注入し、室温にて30〜120分間インキュベートした。次に、ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。次に、100μlのカゼインブロッキング剤(TBS中で5倍希釈、"casein blocker biotin free 5.5% w/v"; SDT; カタログ番号CBC1)を上記ウェルの上記底に注ぎ、室温にて1〜15時間インキュベートした。次に、上記ウェルの内容物を再び捨て、上記ウェルを200μlのTBST(0.05%(vol./vol.)Tween20を含んでいるTBS)で3回洗浄した。その後、10μlの純粋なTBST’緩衝液(0.1%(vol./vol.)Tween20を含んでいるTBS)、または組換えにより作製されている精製されたヒトPSMAの細胞外の部分(以下、rhPSMA)のTBST’溶液(10μl。濃度:1pg.μl
−1。すなわち、約10pmol.l
−1)のいずれかを、上記ウェルの上記底に注いだ。rhPSMAは、[Barinka et al., 2002, Journal of Neurochemistry, p. 477]に記載されている通りに作製し精製した。純度はSDS−PAGEにより確認し、濃度はBiochrom30(Biochrom)によるアミノ酸分析によって、製造元の説明書に従い決定した。分取したタンパク質のストック溶液は、−80℃にて保存した。室温にて60〜120分間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで5回洗浄した。最後に、上記ssPSMA検出プローブを含んでいる10μlのTBST’溶液(0.1pmol.l
−1〜10nmol.l
−1の10倍希釈系列における、幾つかの異なる濃度)を、ウェルの上記底に加え、室温にて15〜75分間インキュベートした。次に、上記ウェルの内容物を再び捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで10回洗浄した。続いて、10μlのqPCR混合物(上述の実施例1dにおける、鋳型を含んでいないコントロールの場合と同じ組成物)を、上記ウェルの上記底に加えた。次に、結合されている検出プローブの量を、実施例1dにおいて説明した通りに、qPCRを用いて決定した。
【0167】
説明されている手順により、プローブの使用濃度(rhPSMAを加えられていないウェルにおける、検出プローブの希釈系列)によって定まる、非選択的に吸着されている上記プローブの量を測定した。同様に、プローブの使用濃度(rhPSMAを加えられているウェルにおける、検出プローブの希釈系列)によって定まる、PSMAの活性部位に対して選択的に結合されている上記プローブの量を測定した。選択的に結合されているプローブの、上記プローブ濃度に対する依存性を、Microsoft Office Excel 2003の"Solver"を用いて、式(3)に説明されている関数に当て嵌めた。ここで、解を得られる変数はE
tot(選択的に結合されているプローブの最大量)およびK
d(上記プローブの解離定数)とし、測定値と当て嵌められた関数から算出される値との間の相対偏差の2乗の合計を最小化した。
【0168】
アッセイの全体を、上述したすべての抗体を用いて連続して繰り返した。不動化されている酵素の活性部位に対して結合している上記ssPSMAプローブのK
dの値は、常に100〜200pmol.l
−1の範囲であることが示された。上記の値は、上記酵素アッセイにおいて測定された阻害定数140pmol.l
−1と非常によく対応している。上述のいずれの抗体に対する上記酵素の不動化も、上記検出プローブの上記酵素の上記活性部位に対する結合親和性に、影響を及ぼさなかった。それぞれの抗体について、選択的に結合されているプローブの最大量は、qPCRから読み取られるC
qの15〜16をもたらした。したがって、上記抗体の間において、上記溶液からの上記抗体の不動化の効率における有意差は全くなかった。非選択的に吸着されている検出プローブの量もまた、すべての抗体について同等であった。非選択的に吸着されている検出プローブの量は、使用したすべての濃度範囲において、上記プローブ濃度に正比例していた。同じ抗体が使用され、上記プローブ濃度が同じである条件において、上記酵素を含んでいるウェルにおけるC
q(上記プローブの選択的な結合に対応する)から、上記酵素を含んでいないウェルにおいて測定されたC
q(上記プローブの非選択的な結合に対応する)を減じることにより、信号/背景比を決定した。信号/背景比は、上記プローブ濃度が、PSMAの上記活性部位に対して結合している上記プローブのK
d以下のとき、最も高かった。また、信号/背景比は、上記抗体に依存しており、qPCAで8〜12サイクルの範囲にあった(これは、用いられた10pgの量のrhPSMAについて、100倍〜1000倍の差に相当する)。
【0169】
実験の全体を、2G7抗体を用いて繰り返した。上記実験では、(1)TBST’、または(2)濃度が0.005%〜0.02%(wt./vol.)の範囲のSDSを加えたTBST’、または(3)100倍〜1000倍の範囲で希釈したカゼインブロッカーを加えたTBST’、または(4)同じ濃度の範囲内で両方の添加物を加えたTBST’中での希釈後、異なる濃度のssPSMA検出プローブを注入した。0.005%(wt./vol.)SDSおよび500倍希釈カゼインブロッキング剤を含んでいるTBST’(以下、「緩衝液CaSDS」)が、最適であると決定された。上記の緩衝液において、上記検出プローブの選択的な結合に関する解離定数は、ごく僅かしか増加しておらず、したがって、選択的な結合はほとんど変化しないままであった。一方、非選択的な吸着は低減した。5〜6サイクル分の測定されたC
qの増加が示され、したがって、対応する程度分の上記信号/背景比の増加も示された。さらなる実験により、本来の形状のPSMAを認識する他の抗体を用いたときもまた、同じ効果を得ることが示された。
【0170】
上記2G7抗体を用いた場合、ssPSMAプローブの上記解離定数のみならず、dsPSMA、dsA3PSMAおよびdsbiotPSMAの上記解離定数もまた、さらなる実験における同じ手順よりも、正確に測定された。上述の手順とは異なり、rhPSMAの注入された濃度は0.1pg.μl
−1であった。それぞれのプローブは、通常、3〜1600pmol.l
−1の範囲にある、12種類の異なる濃度にて注入した。同じプローブについて、上記解離定数の決定は、数回繰り返し行った。個々の測定から決定される、結果として得られたK
d値は、互いにほとんど同一であった。TBST’中の上記ssPSMAプローブ、dsA3PSMAプローブ、a dsbiotPSMAプローブのK
dは約60pmol.l
−1であり、一方、上記dsPSMAプローブのK
dは約100pmol.l
−1であることが判った。上記CaSDS緩衝液中では、上述のすべてのプローブの上記解離定数は非常に類似しており、約100pmol.l
−1であった。それぞれのプローブのそれぞれの濃度について考慮し、抗体が加えられていないコントロールウェルをも含めて考慮すると、一本鎖プローブの非選択的な結合と二本鎖プローブの非選択的な結合とは、互いに異なることが判った。TBST’中で濃度1000pmol.l
−1の上記ssPSMAプローブによって、24に等しいC
qに対応する上記プローブ量の非選択な的結合、という結果を得た。CaSDS中における同濃度の同じプローブによっては、30に等しいC
q、という結果を得た。一方、TBST’中で濃度1000pmol.l
−1の上記dsbiotPSMAプローブ(または他の二本鎖プローブ)によって、28に等しいC
qに対応する上記プローブ量の非選択的な結合、という結果を得た。CaSDS中における同濃度の同じプローブによっては、33に等しいkC
q、という結果を得た。上記ssPSMAプローブおよび他の形状のPSMAに関する解離定数は、両方の緩衝液中において、同じ手順により決定した。今度は、PSMAを発現しており、PSMAを約0.1pg.μl
−1の濃度で含んでいるヒト細胞株の溶解物(全タンパク質:1ng。[Mlcochova et al. 2009, Prostate, p. 471]に記載されているHEK株1〜750)または、内因性のPSMAを約0.1pg.μl
−1の濃度で含んでいる10倍希釈したヒトクエン酸血漿、のいずれかを上記ウェルに注入した。上記細胞の溶解物において存在しているPSMAに対する、上記プローブの決定された解離定数は、TBST’中で約140pmol/l
−1であり、CaSDS中で約250pmol/l
−1であった。血漿中に含まれている上記内因性のPSMAに対する、上記プローブの決定された解離定数は、TBST’中で約280pmol/l
−1であり、CaSDS中で450pmol/l
−1であった。種々の抗体を用いて、上記ssPSMAプローブの希釈系列について得られたC
q値を、表2にまとめた。
【0172】
組換えにより作製されているビオチン化Aviタグ付加生成タンパク質(Avi−PSMAおよびAvi−GCPIII)に対する、上記ssPSMAプローブの解離定数は、同様の方法により決定した。精製されたAvi−GCPIIIは、[Tykvart et al. 2014, Prostate, in press]に記載されている手順に従って作製した。精製されたタンパク質の濃度は、製造元の説明書に従い、Biochrom30(Biochrom)によるアミノ酸分析によって決定した。分取されたタンパク質のストック溶液は、−80℃にて保存した。GCPIIIは、PSMAの近いヒトのホモログであり、非常に類似した酵素活性を有しているため、定量化のための他の適切な標的である。手順は、第一のステップにおいて、上記抗体の代わりに、10ng.μl
−1の濃度のニュートラアビジン(Pierce, カタログ番号31000)のTBS溶液を上記ウェル中に注入した以外は、本段落の冒頭において説明されている手順と同一であった。以降のステップは、rhPSMAの代わりに、TBST’中で0.24pg.μl
−1の濃度まで希釈した上述のAvi−PSMAまたはTBST’中で100pg.μl
−1の濃度まで希釈したAvi−GCPIIIを注入した以外は同じである。決定された上記ssPSMAプローブの解離定数は、Avi−PSMAに対しては160pmol.l
−1であり(酵素反応速度論によると140pmol.l
−1)、Avi−GCPIIIに対しては1700pmol.l
−1であった。これは、上記プローブが、Avi−GCPIIIの活性部位に対してもまた、効率的に結合していることを意味している。
【0173】
[1f:PSMAおよびそのGCPIIIホモログの、溶液中における濃度の決定]
PSMA濃度を決定するための個々の試験において、10μlの上記2G7抗体溶液または10μlのニュートラアビジン溶液のいずれか(両方ともTBS中で10ng.μl
−1の濃度)を、96ウェルプレートFrameStar 480/96のウェルの底に注入し、室温にて30〜120分間インキュベートした。次に、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。次に、TBSで5倍希釈された100μlのカゼインブロッキング剤を、上記ウェルの上記底に注入し、室温にて1〜15時間インキュベートした。上記ウェルの内容物を再び捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。次に、決定されるべき種々の濃縮されたタンパク質を含んでいる10μlのTBST’溶液を、上記ウェルの上記底に加えた。室温にて60〜120分間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで5回洗浄した。最後に、10μlの上記検出プローブのTBST’溶液を、ウェルの上記底に加え、室温にて15〜75分間インキュベートした。上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで10回洗浄した。次に、10μlのqPCR混合物(実施例1dにおける、鋳型を含んでいないコントロールの場合と同じ組成物)を、上記ウェルの上記底に加えた。続いて、実施例1dにおいて説明されている方法と同じqPCRにより、結合されている検出プローブの量を決定した。
【0174】
第一の実施形態において、上記2G7抗体を上記ウェルに注入し、表面をブロッキングした後、濃度が1ng.μl
−1〜0.1fg.μl
−1の10μlのrhPSMA溶液(TBST’緩衝液中における、既知の濃度の精製されたrhPSMAの希釈系列により調製された)を加えた。CaSDS中で100pmol.l
−1のssPSMA溶液、CaSDS中で1000pmol.l
−1のdsbiotPSMA溶液、およびCaSDS中で60pmol.l
−1のNeu_debiotPSMA溶液を、検出のために連続して試験した。上記Neu_debiotPSMA検出プローブは、3μlのニュートラアビジン溶液(濃度:1mg.ml
−1)に、20μlのビオチン化dsbiotPSMA検出プローブのTBS緩衝液溶液(濃度:10μmol.l
−1。ニュートラアビジンと比較して4倍モル過剰に相当する)を、混合することにより作製した。氷上における一晩のインキュベーションの後、Amicon Ultra 0.5ml 100Kによる限外濾過によって、過剰な遊離dsbiotPSMAプローブから、生じた複合体を精製した。上記限外濾過においては、2回連続して、保持液の体積をTBSで10倍に希釈した。上記複合体中における上記検出プローブの最終濃度は、qPCRによる、ssPSMAの標準希釈系列(実施例1dにおいて説明されている)との比較によって決定した。
【0175】
濃度1000pmol.l
−1、CaSDS中のdsbiotPSMA検出プローブ溶液を用いることにより、試験の範囲(すなわち、10ng〜1fg)を通じて、rhPSMA濃度が決定でき、決定の線形範囲が約6桁である(10ng〜1fg。上記範囲における7種類の濃度に由来する結果の対数当て嵌めの、信頼性のR
2の値は1.00であった(Microsoft Office Excel 2003で算出した)。
図8を参照)ことが判った。C
qに関して、分析物濃度の対数に依存した線形相関が確認されたため、対数当て嵌めを用いた。濃度100pmol.l
−1、CaSDS中の上記ssPSMA検出プローブ溶液を用いた場合、線形の範囲は、rhPSMAが約数百pg〜数fgの範囲であった(316pg〜1fgの範囲における12種類の濃度に由来する結果の対数当て嵌めの、信頼性のR
2値は0.99であった。
図8を参照)。複合検出プローブNeu_debiotPSMAを用いることにより、感度およびダイナミックレンジに関する、オリジナルのプローブの好ましい特徴のすべてが保持されることも、また判った。すなわち、1fg rhPSMAより有意に低い検出限界、および、少なくとも5桁のrhPSMAの決定の線形範囲(20pg〜2fgの範囲における5種類の濃度の結果の、対数当て嵌めのR
2は1.00であった。
図8を参照)が保持されていた。R
2値は、濃度の決定の優れた正確性を示している。というのも、上記の値は、各濃度につき単一のウェルのみから(すなわち、複製なしに)得られたためである。検出プローブをTBST’緩衝液中で希釈した場合は、上記緩衝液中における上記検出プローブのより高い非選択的な吸着のために、ダイナミックレンジが約1桁狭く、結果としてより低い感度となった以外は、同様の結果を得た。rhPSMAの量に応じて、一本鎖プローブおよび二本鎖プローブ(ssPSMAおよびdsbiotPSMA)を用いて測定されたC
q値を、表3にまとめた。
【0177】
上述の実施例1eにて示されているように、PSMA用の上記検出プローブはまた、PSMAの近いホモログであるGCPIIIの上記活性部位に対して結合する。それ故に、上記と同じ手順により選択性の決定を試験した。上記10μlのrhPSMA溶液の他に、10μlのビオチン化タグ付加精製Avi−GCPIIIの溶液、または10μlの組換え発現により作製された精製ヒトGCPIIIの細胞外の部分(以下、rhGCPIII。[Hlouchova et al. 2007, Journal of Neurochemistry, p. 682]における手順に従って作製された)の溶液を、いずれも1ng.μl
−1〜0.1fg.μl
−1の種々の濃度にて他のウェルに注入した。濃度1000pmol.l
−1のssPSMAプローブのCaSDS溶液を、検出のために用いた。rhPSMAは、最も低い注入量(1fg)においてさえも、検出可能であった。一方、最も高い2つ(1および10ng)を除くすべての注入量のAvi−GCPIIIまたはrhGCPIIIにおいては、分析物を全く含んでいないウェルと比べて、検出可能な差異はなかった。上記タンパク質が10ng含まれているウェルにおいて結合されている検出プローブの量は、PSMAが10fg含まれているウェルにおいて結合されているプローブの量に、概ね対応していた。これは、分析されるサンプルにおけるGCPIII濃度が、PSMA濃度よりも約6桁以上高い場合のみにしか、PSMAの決定は偽陽性となりえないことを意味している。また、検出プローブ濃度を10倍に低減させ、PSMAに対する上記プローブのK
dを低下させることで、上記選択性を、さらなる桁数で増加させることができる。GCPIIIに対する上記プローブのK
dは、20倍近く高いからである。本実施例によって、選択的な抗体の組み合わせにより、より多くの分析物に対して結合しているプローブに対しても、並外れて高い選択性が達成されうることが示される。
【0178】
他の実施形態においては、第1のステップにおいて、上記ウェルにニュートラアビジン溶液を注入した。表面をブロッキングした後、10μlのビオチン化タグ付加精製Avi−PSMAまたはビオチン化タグ付加精製Avi−GCPIIIの、TBST’で希釈されている溶液を、種々の濃度にて上記ウェルに注入した。濃度1000pmol.l
−1の上記ssPSMAプローブCaSDS溶液を、Avi−PSMAの検出のために用いた。濃度10000pmol.l
−1の上記ssPSMAプローブCaSDS溶液を、Avi−GCPIIIの検出のために用いた。Avi−PSMAの検出が線形である範囲は10ng〜100fgであり、Avi−GCPIIIの検出が線形である範囲は10ng〜10pgであった。Avi−PSMAまたはAvi−GCPIIIの量に依存しているC
qの測定値を、表4にまとめた。
【0180】
すべてのアッセイにおいて、分析物の検出の選択性を確認するコントロールが含まれていた。コントロールウェルにおいては、試験されるタンパク質の選択的な不動化のための抗体またはニュートラアビジンは上記ウェルに注入されず、表面のみがブロッキングされた。この場合、上記分析物を含まないウェルに対応している、結合されているプローブの量が観察された。一方で、PSMAまたはGCPIIIの公知の競合阻害剤を、PSMAまたはGCPIIIの阻害定数よりも有意に高い濃度にて含有している溶液を含んでいる上記ウェルに、検出プローブを加えることにより、結合しているプローブは、上記阻害剤を含んでいないウェルと比較して大幅に減少した。
【0181】
他の実施形態において、PSMAの活性部位に対して選択的に結合しているプローブの、溶出を試験した。手順は、本実施例の冒頭にて説明されているものと同じあった。まず、2G7抗体をウェルの表面に不動化させた。上記表面をブロッキングした後、TVST’緩衝液のみの他に、rhPSMAのTBST’中の10倍の希釈系列(2pg〜2fgのrhPSMA)を、上記ウェルに注入した。濃度100pmol.l
−1のssPSMAのCaSDS溶液を、決定のために上記ウェルに加えた。最後に、結合されていないプローブを洗い流した後、10μlのTBST’緩衝液を、幾つかのウェルに加えた。室温にて1時間後、上記ウェルから溶液(以下、「溶出液」)を回収し、ウェルを200μlのTBSTで10回再度洗浄した。その次に、10μlのqPCR混合物(実施例1dにおける、鋳型コントロールを含んでいない場合と同じ組成物)を、上記ウェルに加えた。続いて、結合されているプローブの量を、実施例1dにおいて説明されているものと同じ手順によって、qPCRにより決定した。さらに、回収された溶出液1μl中におけるプローブの量を、同じ方法にて決定した(10μlのqPCR混合物(上記と同じ組成物)をクリーンウェルに注入し、1μlの上記溶出液を加え、上述のqPCRにより検出プローブの量を決定した)。TBST’によって溶出されたウェルにおける結合されている検出プローブの量と、溶出させなかったウェルにおける結合されている検出プローブの量とを比較することにより、約50%の上記検出プローブが、1時間以内に上記表面から放出されていたことが示された。この値は、上記溶出液中において測定された、上記プローブ濃度によるものである。PSMA濃度に依存しているC
qの測定値、および決定の手順を、表5にまとめた。
【0183】
溶出したプローブを決定するときの線形である範囲および決定の限界は、固体担体に対して結合しているプローブを決定するときと同じであることは、明白である。このように、この手順は、結合されているプローブを溶液に対して放出させることに用いることができるので、不動化が既になされている固体担体と異なり、他の種類の固体担体においても決定を行うことができる。
【0184】
[1g:溶液中における、PSMAの検出の限界の決定]
濃度2.5ng.μl
−1、10μlの2G7抗体TBSE緩衝液(TBSにEDTAを濃度5mmol.l
−1で加えたもの)溶液を、96ウェルプレートFrameStar 480/96のウェルの底に注入し、室温にて6時間インキュベートした。次に、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。次に、200μlのカゼインブロッキング剤(TBSE中で5倍希釈)を上記ウェルの上記底に注入し、室温にて18時間インキュベートした。上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで5回洗浄した。その後、10μlのTBST’緩衝液、または、10μlのrhPSMA TBST’溶液(0.1fg.μl
−1〜0.5ag.μl
−1の範囲の既知の濃度のrhPSMA、すなわちrhPSMAの総量は1fg〜5ag)のいずれかを、ウェルの上記底に注入した。ここで、それぞれの濃度は、最低でも3組ずつ注入した。室温にて3時間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。最後に、10μlの検出プローブdsA3PSMA(1:1.2)のCaSDS緩衝液溶液(上記プローブ濃度75pmol.l
−1)を、ウェルの上記底に注入し、室温にて1時間インキュベートした。上記dsA3PSMA(1:1.2)プローブは、上記ssPSMAプローブを1.2モル過剰の相補鎖と対合させ、ssPSMA濃度を1μmol.l
−1と変更させて、dsA3PSMAプローブと同じ手順により作製した。続いて、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで10回洗浄した。次に、10μlのqPCR混合物(実施例1dにおける、鋳型コントロールを含んでいない場合と同じ組成物)を、上記ウェルの上記底に注入した。続いて、結合されている検出プローブの量を、実施例1dにおいて説明されているものと同様に、qPCRにより決定した。注入したrhPSMAの量に依存している測定されたC
q値を、表6および
図9にまとめた。rhPSMA定量の線形である範囲が0.1fgまで拡張されることは、明らかである。この値は、MALDI−TOFにより決定された上記rhPSMAの単量体の分子量(88.7kDa)において、約680分子のrhPSMAに(すなわち340個の二量体に)対応する。rhPSMAを含まないウェルと25agのrhPSMAを含んでいるウェルとの平均C
qの違いが、1サイクル以上であったため、検出の限界は少なくとも10〜25ag(すなわち34〜85個の二量体)であった。
【0186】
それぞれの試験されたサンプルは3回測定され、5agのサンプルは6つの複製が、0のサンプルは9つの複製があった。したがって、これらのサンプルは、上記表よりも多くの行を有している。
【0187】
[1h:複合的な生体マトリクスにおける、PSMA濃度の決定]
5ng.μl
−1、10μlの2G7抗体TBS溶液を、96ウェルプレートFrameStar 480/96のウェルの底に注入し、室温にて1〜1.5時間インキュベートした。次に、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。次に、100μlのカゼインブロッキング剤(TBS中で5倍希釈)を上記ウェルの上記底に注入し、室温にて24時間インキュベートした。上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。その後、10μlのrhPSMA標準溶液(TBST’中で12種類の異なる濃度(32pg.μl
−1〜0.1fg.μl
−1))、または、分析されるサンプルである細胞溶解物、尿および血漿(TBST’緩衝液中で様々に希釈されている)のいずれかを、上記ウェルの上記底に加えた。尿および細胞溶解物中におけるPSMAの決定にあたっては1.5時間のインキュベーション後、または、血漿中におけるPSMAの決定にあたっては18時間のインキュベーション後(常に室温にて)、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで5回洗浄した。最後に、10μlのssPSMA検出プローブのCaSDS緩衝液溶液(上記プローブ濃度1000pmol.l
−1)を、ウェルの上記底に加え、室温にて1時間インキュベートした。続いて、上記ウェルの内容物を捨て、上記ウェルを200μlのTBSTで10回洗浄した。次に、10μlのqPCR混合物(実施例1dにおける、鋳型コントロールを含んでいない場合と同じ組成物)を、上記ウェルの上記底に加えた。続いて、結合されている検出プローブの量を、実施例1dにおいて説明されている通りに、qPCRを用いて決定した。
【0188】
上記rhPSMAの上記標準希釈系列によると、検出が線形である範囲は、上記の実施例と同じであった。次に、生体サンプル中におけるPSMA濃度を、得られた較正曲線(rhPSMA濃度の対数に対するCqの相関を、線形関数に当て嵌めた)および分析される生体サンプルの希釈率の情報から算出した。まず、健康なドナーのクエン酸血漿15サンプルにおける、上記PSMA濃度を決定した。このとき、10倍、100倍、1000倍に希釈された個々のドナーの血漿サンプルにおいて決定された濃度の平均を、最終的な値とした。種々の希釈液から決定されたPSMA濃度は、互いに同一であった(僅かな変異を除いて)。また、決定されたPSMAの量は、最も希釈され、PSMA濃度が最低であるサンプルでさえも、検出の限界を常に充分に上回った(PSMAを含まないコントロールと比較すると、C
qの差異は少なくとも3サイクルであった)。これは、上述されているPSMAの決定のためには、体積10nl以下の血漿で充分であることを意味している。さらに、リガンド部分を介する上記検出プローブの結合の選択性を、以下の両方によって確認した。(1)注入されるプローブ溶液にPSMAの競合阻害剤を加えたときの、分析されるサンプルを含んでいる上記ウェルの上記表面に対する抑制された結合によって。およびさらに、(2)分析されるサンプルを含んでいる上記ウェルの上記表面に対する、上記リガンド部分を有していないオリゴヌクレオチドiqPCR_aminoの結合は、サンプルを伴わない上記表面に対する非選択的結合を超えないことによって。
【0189】
次に、測定された濃度を、同じサンプルにおいて放射性酵素アッセイを用いて測定された濃度と、比較した(クエン酸血漿を回収し処理する手順、および、放射性酵素アッセイによってこれらのサンプルにおける上記PSMA濃度を決定する手順は、[Knedlik et al. 2014, Prostate, p. 768]に説明されている)。本明細書において説明されている方法により決定された絶対値は、放射性酵素による決定と比較して、約10倍小さかった(表7)。しかし、2種類の方法に由来する値は、非常によく相関していた。このことは、両方法の結果を比較しているグラフ上のプロット(
図10)、および、両方法の結果の間における直接的相関関係の信頼性のR
2の値(0.98)から理解される。測定されたPSMAの絶対濃度の差異は、不正確な放射性酵素による決定に起因しうる。上記不正確な放射性酵素による決定は、rhPSMA(標準として用いられた)と、決定されるべき血漿中の内因性PSMAとの間における、基質の切断率の違いによるものである。所与の放射性酵素アッセイ条件における、内因性PSMAによる基質の切断率は決定されていないが、rhPSMASについての切断率と同じであると考えた。対照的に、本明細書において開示されている方法により決定したときは、rhPSMA標準に対する上記プローブの親和性、および内因性PSMAに対する上記プローブの親和性の両方を、測定した。上記プローブ濃度を、個々のタンパク質に対する上記プローブの結合強度の違いによる、結果の偏向を避けるように用いた(上記プローブの両タンパク質に対するK
dよりも、充分に高かった)。
【0191】
TBST’中で10倍および100倍に希釈されている尿サンプルにおけるPSMA濃度をもまた、上述の方法により決定した。測定された濃度の間における偏差は非常に小さく、通常は10%であった。前立腺癌に罹患している患者に由来する2つの尿サンプルにおいて、測定されたPSMA濃度は、33pg.ml
−1および192pg.ml
−1であった。健康な男性の尿中においては、PSMA濃度は15pg.ml
−1であった。一方健康な女性の尿中においては、PSMA濃度は8pg.ml
−1でしかなかった。本方法によってPSMAを決定するためには、1μlの尿で充分であった。しかし、測定された濃度が比較できる、充分な感度を有する参照方法は、従来利用できなかった。しかしながら、血漿中と同様に、上記検出プローブの結合は、PSMAの競合阻害剤の添加によって抑制された。これは、PSMAの活性部位に対する、リガンド部分を介した、上記検出プローブの選択的な結合を示している。
【0192】
上述の方法はまた、前立腺癌に由来する(具体的には、転移細胞であるLNCaP、DU−145およびPC−3に由来する)培養細胞株の、溶解物中における濃度を決定するためにも用いられた。37℃、5%(vol./vol.)CO
2雰囲気下において、RPMI培地(Sigma、LNCaP細胞株)または10%(vol./vol.)FBS(Sigma)を追加したIMDM培地(Invitrogen)にて、直径100mmのペトリ皿中で細胞を培養した。上記細胞は、培養組織(SPL Life Sciences)が約90%コンフルエントに達した後に、上記培地中で再懸濁するようにした。上記細胞を、マイクロチューブに移し、室温、250gにて5分間遠心分離した。次に、上記培地を除去し、上記細胞を、100mmol.l
−1のNaClを加えた50mmol.l
−1のTris(pH7.4。以下、CLPと表記する)で洗浄した。次に、約2000万個の細胞を、300μlのCLP中で懸濁し、2mlの丸底マイクロチューブに移した。上記マイクロチューブに、直径約3mmのスチールボールを加えた。続いて、Tissue Lyzer(Qiagen、最大出力にて3分間)により細胞を溶解させ、均一化させた。次に、溶液を新しいチューブに移し、体積の1/10の10%(wt./vol.)オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(Affymetrix、カタログ番号:O330、C
12E
8)を加えた。混合後、超音波処理用氷浴Elmasonic S30にて、上記溶液を1分間超音波処理した。生じた溶液を、15分間/600g/4℃にて遠心分離し、上澄みを回収した。これが溶解物である。上記溶解物中における総タンパク質濃度を、Biorad Protein Assay試薬を用いて決定した。種々の溶解物のTBST’希釈液(総タンパク質の注入量が100ng〜100pgの範囲)における、PSMA濃度を決定した。LNCaP細胞株において測定されたPSMA濃度は0.27ng/μg(総タンパク質)であった。DU−145細胞株およびPC−3細胞株においては、PSMAは検出されなかった。これは、所与の決定の条件において、濃度が0.1pg/μg(総タンパク質)以下であることを表している。上記検出プローブの結合もまた、上記検出プローブの溶液に対して、PSMAの競合阻害剤を加えることにより抑制された。測定された濃度はまた、ウェスタンブロットによる決定に従うものであった。 1i:PSMAの種々の型およびPSMAのホモログGCPIIIに対する、化合物の阻害活性の試験。
【0193】
TBSバッファー中10ng.μl
−1のニュートラビジン溶液10μlを96ウェルプレートFrameStar480/96のウェルの底に注ぎ、1.5時間室温でインキュベートした。それから、上記ウェルの内容物をタップアウト(tapped out)し、当該ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。それから、TBSで5回希釈されているカゼインブロッキング剤200μlをウェルの底に注ぎ、室温で24時間インキュベートした。上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。その後、10μlの標準試薬を、TBST´中既知の濃度の、Avi−PSMA(50pg.μl
−1)またはAvi GCPPIII(2ng.μl
−1)と共に、ウェルの底に加えた。また、バッファーのみを含んでいるゼロコントロールをインキュベートした。室温での2時間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで5回洗浄した。それから、TBST‘バッファー中のssPSMAの検出プローブ溶液10μlを、Avi−PSMAのウェルに対して、プローブ200pmol.l
−1の濃度で、またはAvi−GCPIIIのウェルに対して、1000pmol.l
−1の濃度で、上記ウェルの底に注いだ。それに続くインキュベーションを室温で1時間実行した。続いて、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで10回洗浄した。それから、実施例1dにおいてテンプレートコントロールがない場合と同様の組成のqPCR混合物10μlを上記ウェルの底に注ぎ、実施例1dに記載されているように、結合されている検出プローブの量をqPCRで決定した。
【0194】
特定の濃度の試験される物質を上記検出プローブに加えることによって、結合されている検出プローブの量の減少から、上記物質の阻害係数を導くことができた。上記試験される物質を常にある濃度だけ加え、アッセイを二重に実行した。試験のため、15の物質を選択した。また、Avi−PSMAに関する上記物質の阻害係数を、実施例1cに記載されている酵素学的なアッセイによって測定した。上記物質の阻害係数は、数十pmol.l
−1から数百μmol.l
−1の範囲内であった。上記試験される物質に加えて、酵素と純粋な検出プローブとを含んでいるウェルで測定されるCqから、上記酵素と上記検出プローブとを含んでいるウェルで測定されるCqを引き算する場合、式(9)および(14)を用いて、ΔCqを計算し、当該ΔCqから、上記試験される物質によって占有される酵素の活性部位の割合を導いた。qPCRの効率を1の値で置換した。ゼロコントロール(酵素を含んでいないウェル)で測定されるCqから、酵素を含んでいるウェルで測定されるCqを引き算することによって得られたΔCqを用いて、上記酵素の占有される活性部位の割合の数値の決定の最大範囲を決定した。
【0195】
試験される物質の濃度、ΔCq、実施例1eで同定された上記検出プローブのK
d(TBST´中、ssPSMAおよびAvi−PSMAに対して、160pmol.l
−1;TBST´中、ssPSMAおよびAvi−GCPIIIに対して、1700pmol.l
−1)および上記検出プローブの濃度を数式(15)に代入することによって、上記物質の阻害係数の値を決定した。表8に、上記決定で使用された、上記試験される物質の濃度、当該試験される物質によって占有される上記酵素の活性部位の割合、所定の酵素に関して測定される阻害係数、および実施例1cに記載されている酵素反応速度論で測定される阻害係数の参照の値をまとめる。それぞれの物質のK
iを測定するため、入手可能な量よりも多くの量の酵素が必要でありうるため、Avi−GCPIIIの酵素に関する参照の値は知られていない。上記表は、Avi−PSMAに関する上記2つの方法の間の偏差は、高く結合されている阻害剤のせいぜい数十パーセントであり、6番目に弱い結合阻害剤に関して本明細書に開示される方法で決定される係数は、2〜4倍高いことを示す。上記2つの方法の間の優れた一致は、
図11に示される、両方の方法の結果の図の比較から明らかである。我々の方法で決定されたK
iと、参照の酵素反応速度論で決定されたK
iとの線形相関の信頼度の値R
2は、Avi−PSMAに関して0.94であった。
【0196】
上記2つの方法の間の小さな違いは、我々の決定における不正確さ、または酵素反応速度論の決定における不正確さが原因であり得る。我々の決定は、同じ濃度の上記試験される物質、または異なる濃度の上記試験される物質のいずれかを用いて、複数の反復を測定し、上記の結果の値を平均することによって、精度を高め得る。酵素反応速度論による決定におけるミスは、主に、基質K
Mの不正確な決定(すべてのK
iにおける体系的なシフト)、および上記阻害剤の濃度に依存した、反応速度の不正確なフィッティングから生じる。この点について、酵素の性質(我々の場合は特に、上記基質に対する酵素の親和性および当該酵素の触媒される反応の速度)は、基本的には溶液の組成に依存するため、適切に測定されるK
i値でさえ、適切な物理値として見なすことができないことは強く強調されるべきである。従って、測定されるK
iは、一般に、特定のpH、温度、使用されるバッファー物質、上記溶液のイオン強度、上記溶液中のイオンの性質、種々の添加剤(例えば、界面活性剤)、およびその他の影響に強く依存する。よく似た条件でK
iが酵素反応速度論によって決定される場合であっても、かなり多くの場合、結果は異なる(例えば、2−PMPAの既知の阻害剤のK
iの決定を参照のこと)。「Jackson et al. 1996, Journal of Medicinal Chemistry, p. 619」に記載されている仕事において、2−PMPAのK
iは0.3nmol.l
−1と決定された。一方で、「Kozikowski et al. 2004, Journal of Medicinal Chemistry, p. 1729」においては、1.4nmol.l
−1と決定された。我々のアッセイでは、上記酵素反応速度論と比較して、他のバッファー剤および他の界面活性剤を使用し、さらにこれらを高い濃度で使用したため、上記結果において観察される小さな違いにつながったのであろう。
【0197】
同様の方法おいて、N末端に結合されているHisタグを用いて、精製されていない組換えPSMAについて、物質の阻害活性を試験したが、よく似た結果を示した。上記手法は、Avi−PSMAについて上記に記載されている手法と同一であったが、ニュートラビジンの不動化の後、TBST‘バッファー中1mmol.l
−1の濃度のNiCl
2の存在下で、10μmol.l
−1の濃度で共有結合されているビオチンを含んでいる、トリス−ニトリロトリ酢酸(ビオチン−トリス−NTA)10μlを含んでいるウェルの1時間のインキュベーション、という1つの追加の工程、および洗浄の後にのみ、His標識されたPSMAでのインキュベーションの工程が存在していた。
【0199】
試験される物質によって占有される活性部位の割合についての数字の異なる数値は、異なる占有の割合についての、異なる測定の精度に対応する。50パーセント未満の占有の割合から導かれるK
iは、信頼性が低いと判断される。重要なことに、上記試験を用いて、Avi−GCPIIIについて比較される、Avi−PSMAに関する第1の阻害剤の選択が見出された。ここで、Avi−GCPIIIに対する、試験される物質4の阻害活性を、酵素反応速度論によって検証した(測定されるK
i=140nmol.l
−1)。
【0200】
試験される物質は通常、種々の有機溶剤に溶解する、という事実は、アセトニトリル、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)および界面活性剤Tween20の存在下における我々の方法の信頼性を試験することにつながっている。上記手法は、初めにおいてのみ、ニュートラビジンの溶液の代わりに、TBS中5ng.μl
−1の濃度で2G7の抗体溶液をウェルに注いだ以外は、上記に記載されている手法と同一であった。それから、Avi標識されるタンパク質の代わりに、TBST´中、既知の濃度2pg.μl
−1でrhPSMA溶液を注いだ。TBST´、種々に濃縮された有機溶剤を含んでいるTBST´、または種々の濃度のTween20を含んでいるTBS中、60pmol.l
−1の濃度で、上記ssPSMAのプローブ溶液を検出のために使用した。使用される各検出プローブ溶液について、抗原を含まないゼロコントロールが含まれており、すべてを二重に測定した。アッセイにおけるプローブ希釈剤の組成物の可能性の高い影響を、抗原を含んでいるウェルおよび抗原を含んでいないウェルにおいて、測定されるC
qを比較することで決定した。DMSO、アセトニトリル、またはメタノールは、0.1%、1%または10%(体積/体積)の濃度において、測定される結果に影響を与えなかったことがわかった。同様に、希釈剤中0%から1%(体積/体積)の範囲の、種々の濃度のTween20は、決定において影響を有さなかった。上記濃度のDMSO、Tween20(任意には、500倍から2000倍に希釈されるカゼインブロッカーの添加と共に)において、100pmol.l
−1から100μmol.l
−1の値を有する、それぞれのK
i値の一連の阻害剤を試験し、それぞれのK
i値の決定の正確性において添加剤は影響を有さないことが分かった。また種々の濃度において、3つの阻害する物質の添加を試験し、数百pmol.l
−1、数十nmol.l
−1、数十μmol.l
−1の阻害係数を有し、上記決定の線形の範囲内において、上記試験される物質の濃度に関係ない、よく似たK
i値が得られることがわかった。
【0201】
先行する段落に記載されている手法は、内因性の酵素に対する物質の阻害活性の試験も可能とする。従って、rhPSMAだけでなく、ヒトの血漿に含まれる内因性PSMAに関する一連の36の物質の阻害係数は、先行する段落と同じ方法で決定された。rsPSMAに関する阻害活性を決定するため、TBST´中、2pg.μl
−1の濃度でrhPSMAの溶液を上記ウェルに注ぎ、上記ssPSMAの検出プローブをTBST´中、60pmol.l
−1の濃度で使用した。一方、内因性PSMAに関する阻害活性の決定のため、TBST´で10倍に希釈されているクエン酸血漿を上記ウェルに注ぎ、TBST´中300pmol.l
−1の濃度で、上記ssPSMAの検出プローブを使用した。結合されている検出プローブの量の減少は、それぞれの試験される物質のみに対して1つの濃度において再度測定された。測定されるデータから、我々は、ΔC
q、試験される物質に占有される酵素の活性部位の割合、および上記試験される物質のK
iを、上述される手法と同様の手法によって計算した(TBST´中、ssPSMAおよびrhPSMAに対して、K
d=60pmol.l
−1;TBST´中、ssPSMAおよび内因性PSMAに対して、K
d=300pmol.l
−1、両方の値は実施例1eにて決定された)。上記試験される物質の濃度、上記物質に占有される酵素の活性部位の割合、およびrhPSMAまたは内因性PSMAに関して測定された阻害係数を、表9にまとめる。rhPSMAおよび内因性PSMAに関して測定される阻害係数の比較を、
図12に図示する。まず上記試験される物質と共に、rhPSMAの溶液を混合し、それから、上記検出プローブおよび得られた混合物を、不動化されている抗体2G7と共に、マルチウェルプレートに加える、という手法によって、よく似た結果が得られた。測定されるK
iの範囲は、数十pmol.l
−1から数百μmol.l
−1の範囲であり、2つの試験される物質は、全く阻害しなかった。グラフは、両方のタンパク質についての阻害係数の間の顕著に優れた相関を明らかに立証する。PSMAの両方の型について決定されるK
iの間の直接の相関についての信頼度の値R
2は0.93であった。しかし、内因性PSMAについて測定されたK
i値は、5回の平均において、rhPSMAに対する値よりも高かった。これは、内因性PSMAが、膜貫通型の部位および細胞内の部位が欠損している昆虫の細胞において産生される、少し異なる型のタンパク質であるという、事実が原因であるだろう。K
iの違いは、内因性PSMAについての検出プローブのK
dは、rhPSMAについての値よりも約5倍高い、という事実と一致する。サブナノモルの阻害剤に対して観察されたより大きな違いは、内因性PSMAの決定の線形範囲を超えることによって得られ、当該内因性PSMAは、血漿中における顕著に少ない量のPSMAが原因で、より小さい。内因性PSMAについてのより正確な結果は、より低い濃度のこれらの阻害剤、またはより多い量の血漿を使用することで達成され得る。
【0202】
さらに、試験される物質のより広い範囲の阻害係数は、1つの試験される濃度から、以下の手法によって量的に決定された。当該手法では、マルチウェルプレートのウェルの底に、抗体2G7を介して250pgのrhPSMAを不動化し、その後洗浄した。それから、特定のウェルを、TBST´バッファー中、100μmol.l
−1の濃度の特定の試験される物質と、TBST´バッファー中、125pmol.l
−1の濃度の検出プローブdsA3PSMAとの混合物で、500倍希釈されているカゼインブロッカーの添加と共に、インキュベートした。それに続く洗浄の後、結合されている検出プローブの量をqPCRによって決定し、上記物質のそれぞれのK
i値を、検出プローブのみでインキュベートされたウェルにおける結合されているプローブの違い、および検出プローブと特定の試験される物質との混合物でインキュベートされたウェルにおける結合されているプローブの違いから、本発明の説明に記載されている式15に従って計算した。上記方法において、40の物質の阻害係数を決定した。実施例1cに記載されている酵素反応速度論によって決定されるように、上記物質の阻害活性は、19pmol.l
−1から250μnol.l
−1の範囲を有するKi値の範囲において、だいたい均等に分配されており、すべての物質のKi値は、ここで記載されている手法によってかなり正確に決定されたことがわかった。決定された値は、平均して、酵素反応速度論からの値の85%に対応し、いずれの場合においても、酵素反応速度論からの値(R
2=0.991)よりも2倍以上は異なっていなかった。これらの結果は、ここで記載されている手法によって1つの試験される濃度の上記物質(100μmol.l
−1)から、7ログ(19pmol.l
−1から250μmol.l
−1)の範囲において、上記試験される物質のKi値を正確に決定することができることを示す。
【0204】
上記物質の表記は、上記先行する表の記載に一致している。(上記試験される物質で)占有される活性部位の割合の数字の違いは、異なる割合の占有における、異なる決定の正確性に対応する。
【0205】
1j:化学発光法の検出を用いる、溶液中のPSMAの決定
TBS中2.5ng.μl
−1の濃度の2G7抗体溶液100μlを、96ウェルNunc Maxisorbマイクロプレート(カタログ番号437111)のウェルに注ぎ、室温で1時間インキュベートした。それから、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。それから、TBSで5回希釈されているカゼインブロッキング剤200μlを上記ウェルに注ぎ、室温で18時間30分間インキュベートした。それから、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。それから、TBST´中、種々の既知の濃度のrhPSMA標準溶液100μlを、1ngから1pgの範囲の得られた注がれる量において、上記ウェルに加えた。rhPSMAを含んでいないゼロコントロールもインキュベートし、すべてを2回反復して行った。室温での2時間45分間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。最後に、CaSDS中600pmol.l
−1の濃度で、NeuHRP_dsbiotPSMAの検出プローブ溶液100μlを上記ウェルに加えた。1mg.ml
−1の濃度のニュートラビジン−HRPの共役溶液(Pierce、カタログ番号31001)6.1μlを、TBSバッファー中10μmol.l
−1(ニュートラビジン−HRPの共役に比較して、4倍モル過剰に対応している)のビオチン化される検出プローブdsbiotPSMAの溶液10μlと共に混合することで、NeuHRP_dsbiotPSMAの検出プローブを調製した。氷上での一晩のインキュベーションの後、残りのフリーのdsdiotPSMAプローブから、透過度のカットオフが100kDaの膜上で限外濾過することによって、得られた複合体を精製した。最初の溶液は、合計で100倍希釈された。上記複合体中の検出プローブの最終濃度は、実施例1dに記載されているように、一連のssPSMAの標準溶液との比較によって、qPCRによって決定された。室温での1時間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物をタップアウトし、上記ウェルを200μlのTBSTで10回洗浄した。その後、160μlの化学発光基質(2nmol.l
−1の濃度の4−ヨードフェノール(Acros Organics、カタログ番号122390100)の水溶液、2.5mmol.l
−1の濃度のルミノール(5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン、Sigma Aldrich、カタログ番号A8511)、3.2%のDMSO(体積/体積)、0.02%(重量/体積)の過酸化水素、および0.1mol.l
−1のTris−HCl、pH8.0)をウェルに加え、TecanリーダーInfinite M1000を用いて、それぞれのウェルにおいて上記発光を測定した。
【0206】
検出の動的な範囲は、1ngから1pgの注がれた量のrhPSMAの範囲において観察された。1pgの検出限界は、現在最も感度が高く入手可能な、ELISAによるPSMAの決定(Sokoloff et al. 2000, Prostate, p.150)よりも、感度が高い決定であることを示す。発光の二重測定の測定された値を表10にまとめる。
【0208】
1k:基質の加水分解についてのPSMAの触媒活性の決定
セクション1iに記載されている手法に従って、不動化されているニュートラビジンを用いて20pgのAvi−PSMAを上記ウェルの底に不動化し、続いて、35pmol.l
−1の濃度でdsA3PSMAの検出プローブと共に、および同時に、10nmol.l
−1から100μmol.l
−1の範囲において、種々の濃度のフォリル−γ−L−グルタミン酸の基質と共に40分間インキュベートし、洗浄後、結合されているプローブの量をqPCRで決定した。数式(15)に従って、最も高い濃度の基質を含んでいるウェルと検出プローブのみを含んでいるウェルとのΔC
qの違いから、基質のK
M(K
iに対応する)を計算した。上記の計算されたK
iおよびそれぞれの初期濃度の基質に対して測定されたΔC
qの違いを元に、その後、インキュベーションの終了時の最終基質濃度、S
tを同じ式に従って計算し、本発明の説明に上述された数式(17)に従って、触媒の性能k
catを計算した。初期濃度のフォリル−γ−L−グルタミン酸107nmol.l
−1において、80%はインキュベーションの間に解離し、これは1.2s
−1のk
catに対応する。336nmol.l
−1の濃度において、43%が解離し、これは2.3s
−1のk
catに対応し、1049nmol.l
−1の濃度において、16%が解離し、これは2.6s
−1のk
catに対応する。得られたk
catの値は、セクション1cに記載されているように酵素反応速度論によって得られる、5s
−1のk
cat値と一致している。
【0209】
実施例2:HIV−1プロテアーゼの検出、HIV−1プロテアーゼ阻害剤の能力の試験
2a:リンカーと活性化されたNHSエステルとを含んでいる、HIV−1プロテアーゼ阻害剤の調製
DNAオリゴヌクレオチドのアミノ基における、末端NHSエステル(化合物7)とリンカーとのHIV−1プロテアーゼ阻害剤の連結によって、HIV−1プロテアーゼについての検出プローブを調製した。エタノールアミンと化合物7との反応によって調製された化合物8を、阻害活性におけるDNAオリゴヌクレオチドの連結の影響の決定のため、使用した。実施例1aに記載されているように、すべての化合物を精製し特徴づけた。
【0210】
リトナビル(RTV、Abbott Laboratories発のブランド名ノービアにおいて入手可能)を、商業的に入手可能なカプセルから単離した。当該カプセルにおいて、どちらかといえば非極性の化合物の油性混合物においてRTVは懸濁される。50のタブレット(それぞれ100mgのRTV)を切り開き、丸底形状のフラスコ21個へと油性物質を絞り出した。500mlのジエチルエーテルと共に200mlのヘキサンを加えた。すべての油脂が白い沈殿へと変化するか、または溶液に溶けるまで、得られた懸濁物を3時間粉砕し、超音波処理した。上記沈殿を濾過し、再度、純粋なジエチルエーテルで粉砕/超音波処理し、その後、純粋なRTVを濾過した。3.6gのRTVを得た(収率72%)。RTVの純度はHPLCによって決定され、99%を上回っていた。
【0211】
リトナビル(RTV)の部分加水分解による、チアゾール−5−イルメチル((2S、3S、5S)−5−アミノ−3−ヒドロキシ−1,6−ジフェニルヘキサン−2−イル)カルバミン酸(化合物5)の調製:丸底フラスコにおいて、1.00gのRTVを50mlのジオクサンに溶解した。50mlの濃縮された塩酸を加え、得られた混合物を65℃で20時間撹拌した(なお、異なる温度および/または時間では、異なる解離生成物が得られる)。20時間後、上記混合物を室温まで冷却させた。得られる混合物が標準のpHを示すまで、K
2CO
3の添加によって混合物を中和した。回転式の蒸発装置を用いて約50mlまで上記溶媒を濃縮し、150mlの水にスラリーを溶解し、100mlのEtOAcによって3回洗浄した。水相を除去し、有機相を乾燥および蒸発させた。885mgの粗混合物が得られ、さらに精製することなく次の反応に使用された(解析的HPLCで決定されたように、純度は約80%)。スペクトルの決定のため、予備HPLCを使用して、50mgを精製した(勾配:20〜50%(体積/体積)のACNで40分、室温15分)。解析的HPLC 室温=17.3分。
【0212】
1H NMRによる解析の結果(500MHz、DMSO−d6):
【0214】
13C NMRによる解析の結果(125.7MHz、DMSO−d6):
【0216】
HRMSによる解析の結果(ESI+):C
23H
28O
3N
3S[M]
+の計算された質量426.18459;検出された質量426.18454。
【0217】
(S)−1−(((2S,4S,5S)−4−ヒドロキシ−1,6−ジフェニル−5−(((チアゾール−5−イルメトキシ)カルボニル)アミノ)ヘキサン−2−イル)アミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−アミニウム 2,2,2−トリフルオロ酢酸(化合物6)の調製:526mg(1.64mmol、1eq)のTBTUを、690μlのDIEA(3.94mmol、2.4eq)と共に、1.5mlのDMFに溶解されている、356mg(1.64mmol、1eq)のBOC−Valへと加えた。RTVの粗加水分解物(700mg、1.64mmol、1eq)を1mlのDMFに溶解し、5分の撹拌の後、一部に加えた。上記反応を一晩放置し、上記DMFを回転蒸発した。反応混合物を50mlのEtOAcに溶解し、飽和されているNaHCO
3によって2回、10%KHSO
4(重量/体積)によって2回、食塩水によって1回洗浄した。上記有機混合物を乾燥および蒸発させ、フラッシュクロマトグラフィーを用いて生成物を精製した(TLC解析:EtOAc、Rf=0.65)。さらに生成物を5mlの熱いEtOAcに溶解し、5mlのジエチルエーテルを加えた。250mgの生成物の純度を高めるため(>99%、HPLC)得られたゲルを濾過し、乾燥した。BOC保護された化合物を純粋なTFAに溶解し、10分間超音波処理した。窒素のフローによって上記TFAを除去し、得られた油分を水/CANに溶解し、残りのTFAを除去するために凍結乾燥した。全体の収量:25%(低い収量は、TLCから不純物と共に除去された分画が原因であった)。解析的HPLC 室温=17.4分。
【0218】
1H NMRによる解析の結果(500MHz、DMSO−d6):
【0220】
13C NMRによる解析の結果(125.7MHz、DMSO−d6):
【0222】
HRMSによる解析の結果(ESI+):C
28H
37O
4N
4S[M]
+の計算された質量525.25300;検出された質量525.25292。
【0223】
(5S,6S,8S,11S)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 5,8−ジベンジル−6−ヒドロキシ−11−イソプロピル−3,10,13−トリオキソ−1−(チアゾール−5−イル)−2,16,19,22,25,28−ヘキサオキサ−4,9,12−トリアザヘントリアコンタン−31−オエート(化合物7)の調製:50mg(78.3μmol、1eq)のNHS−PEG5−NHS(Broadpharm)を30μl(172μmol、2.2eq)のDIEAと共に0.5mlのDMFに溶解し、0.5mlのDMFに溶解されている化合物6、46mg(86.1μmol、1eq)を30分間滴下した。一晩中反応させるため、反応を放置し、その後、反応混合物を回転蒸発させ、予備HPLCを用いて、粗生成物を精製した(勾配:20〜50%(体積/体積)のACNで40分、室温32分)。凍結乾燥後30mgを単離し(収率40%)、解析的HPLCによって決定したように、純度は99%を優に超えていた。解析的HPLC 室温=21.2分。
【0224】
HRMSによる解析の結果(ESI+):C
46H
63O
14N
5S[MNa]
+の計算された質量964.39844;検出された質量964.39922。
【0225】
チアゾール−5−イルメチル((24S,27S,29S,30S)−27−ベンジル−1,29−ジヒドロキシ−24−イソプロピル−4,22,25−トリオキソ−31−フェニル−7,10,13,16,19−ペンタオキサ−3,23,26−トリアザヘントリアコンタン−30−イル)カルバミン酸(化合物8)の調製:4mg(4.25μmol、1eq)の化合物7を200μlのDMFに溶解し、7μl(42.5μmol、10eq)のDIEAと共に、3μl(49.7μmol、12eq)のエタノールアミンを混合物に加え、全体の反応混合物を一晩撹拌放置した。溶媒を回転蒸発させ、上記混合物をACN/水に溶解し、(エタノールアミンを除去するため)3回凍結乾燥させた。さらに精製することなく、化合物を生化学実験に用いた(混入はNHSのみであり、そうでなければ純度は98%より高かった)解析的HPLC 室温=19.0分。
【0226】
HRMSによる解析の結果(ESI+):C
44H
65O
12N
5S[MNa]
+の計算された質量910.42426;検出された質量910.42479。
【0227】
2b:HIV−1プロテアーゼの選択的な結合のための、検出プローブの調製
HIV−1プロテアーゼの定量化のための検出プローブを、修飾バッファーにおいて、化合物7とiqPCR_aminoのオリゴヌクレオチドとを反応させることによって調製した。修飾バッファーにおいて8μlのDMSOを10μlのオリゴヌクレオチドに加え(10.2nmol;1eq)、混合後、無水のDMSOにおいて、得られた溶液を2μlの化合物7の溶液へと加えた(205nmol;20eq)。混合物を室温で4.5時間インキュベートし、それから、480μlのTBSを加え、同じ温度で一晩、インキュベーションを続けた。
【0228】
得られた検出プローブ(
図13を参照のこと)を、Amicon Ultra 0.5 ml 3Kカラムにおける超音波処理によって、化合物7の加水分解生成物から精製し、保持剤の体積は、TBSで9倍に続いて10倍に希釈され、上記検出プローブの濃度を分光光度法で測定した。こうして調製されるプローブを酵素アッセイにおいて阻害係数を決定するために使用した(以下では、ssHIV1/TBSと記載する)。LC−MSによる特徴づけのため、上記プローブをAmicon Ultra 0.5 ml 3Kカラムで再度精製し、保持剤の体積を、蒸留させた水で5倍に続いて10倍に再度希釈した(以下では、ssHIV1と記載する)。HIV−1プロテアーゼの濃度の決定およびHIV−1プロテアーゼ阻害剤の試験のため、上記プローブを再度1回Amicon Ultra 0.5 ml 10Kカラムにおける超音波処理によって精製し、まず、保持剤の体積を、二度蒸留された水で7倍から10倍に希釈し、その後、TBSバッファーで5倍から10倍に希釈し、検出プローブの濃度を分光光度法で測定した(OD 1=1744pmol)。最後に、プローブをTBSで5μmol.l
−1の濃度へと希釈し、実施例1bに記載されている手法に従って、50μlの体積でサーマルペアリングに曝露した。
【0229】
結合の効率を検証するため、ssHIV1のサンプルはLC/ESI−MSによって解析され、手法は、当初のiqPCR_aminoオリゴヌクレオチドおよびssPSMAの検出プローブの、手法と同一であった(実施例1bに記載)。結果は、5.18分の保持時間で、260nmにおいて1つの強い吸着ピークであり、4.94分および4.99分の保持時間で、2つの関連した低い強度のピークであり、17035.34および17085.99の対応している質量であった(質量の違いは当初のオリゴヌクレオチド53.47および104.12によるものである)。16981.87付近の初期の質量は、これらのピークのm/zスペクトルにおいて確認されなかった。これら2つの新たな質量は、ssPSMAの解析においてピークの最初および最後(時間4.92分および5.00分)において小さな強度で確認されるが、当初のiqPCR_aminoのピークにおいては見られなかった。従って、上記溶剤は両方の修飾されたオリゴヌクレオチドの一般的な特性のみであり、当初のオリゴヌクレオチドを溶解するために使用されなかったため、DMSO中の不純物と共に形成された塩または付加物が生じ得る。17809.07の質量は、明らかに強いピークが与えられ、当初のiqPCR_aminoと比較された質量の違いは827.20であった。上記検出プローブに対して予測された最も大きな質量は、17810.29の分子量において17806.29であり、ssHIV1の結合と当初のiqPCR_aminoとの質量における予測された違いは、826.38であった(ChemBioDrawプログラムによる)。LC−MS解析が提供している、260nmにおけるピークの吸光度の積分値によると、ssHIV1の検出プローブ(反応変換)の純度は約80%だった。このような変換は、さらなる利用のために十分であり、サンプルはさらに精製されなかった。
【0230】
2c:調製された化合物および検出プローブの、阻害係数の決定
アッセイにおいて使用されたHIV−1プロテアーゼ酵素は、「Kozisek et al. 2008, Journal of Virology, p. 5869; Weber et al. 2002, Journal of Molecular Biology, p.739」に記載されているように、発現され、再度折りたたまれ、精製された。最終組成物におけるHIV−1プロテアーゼの濃度は、ブレカナビル阻害剤による活性部位の滴定によって決定された。上記酵素は、使用前、−20℃においてアリコート中で凍結貯蔵された。ssHIV1/TBSの濃度は、分光光度法で決定され、化合物8の濃度は、解析のバランスにおける重量から導かれた。
【0231】
阻害剤の解析は、「Weber et al. 2002, Journal of Molecular Biology, p.739」に記載されているように、クロモジェニックペプチド基質KARVNle
*NphEANle−NH2を用いて実施された。反応は、総体積1mlの、pH4.7において100mmol.l
−1の酢酸ナトリウムと300mmol.l
−1のNaClにおいて実行された。最終基質濃度はK
M(すなわち、16μmol.l
−1)付近に維持され、反応におけるプロテアーゼの総量は、6pmolから8pmolであった。種々の濃度の(DMSOに溶解された)化合物8またはssHIV1/TBSを混合物に加えた。DMSOの最終濃度は、常に2.5%(体積/体積)より低かった。基質の加水分解は、UV−Vis分光計UNICAM UV500(Thermo Scientific)において305nmの吸光度での減少によって監視された。続いてデータは、GraFitプログラムにおけるWilliams and Morrisonによって競合的な阻害に対する数式を用いて解析された。従って、K
i=2.3±0.1nmol.l
−1は、化合物8について測定され、一方でssHIV1/TBSについてK
iは0.23±0.03nmol.l
−1だった。
【0232】
2d:固体担体における直接吸着による、HIV−1プロテアーゼの決定およびHIV−1プロテアーゼ阻害剤の試験
本実施形態において、10%グリセロール(体積/体積)中、244ng.μl
−1の濃度で精製されたHIV−1プロテアーゼのストック溶液は、TBSで10ng.μl
−1へと希釈され、10μlは96ウェルプレートFrameStar480/96のウェルの底に注がれた。同じ体積の純粋なPBSのみは、ゼロコントロールのウェルに注がれた。室温における15分のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物はタップアウトされ、当該ウェルは200μlのTBSで3回洗浄された。それから、TBSで5回希釈されているカゼインブロッキング剤200μlを上記ウェルの底に注ぎ、室温で1時間インキュベートした。上記ウェルの内容物をタップアウトし、200μlのTBSで3回洗浄した。10μlのssHIV1の検出プローブを、pH6.0において、750mmol.l
−1のNaClおよび0.05%のTween20(体積/体積)を含んでいる、20mmol.l
−1のMESの水溶液(ここでは、MESTと称する)に加えた。室温における45分のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで8回洗浄した。それから、実施例1dのテンプレートコントロールがない場合と同様の組成のqPCR混合物10μlを、上記ウェルの底に注ぎ、結合されている検出プローブの量は、実施例1dに記載されているように、qPCRによって決定された。
【0233】
記載されている方法によって、結合されている検出プローブの量は、注がれた濃度に依存して測定され、不動化されているHIVプロテアーゼに関するプローブの解離定数は、最も高く使用された濃度のプローブ(すなわち、32nmol.l
−1)よりも高いことがわかった。3.2nmol.l
−1の検出プローブの濃度において、ゼロコントロールのウェル、および100ngの吸着されたHIVプロテアーゼを含んでいるウェルにおいて測定されたC
qの違いは、約8サイクルであった。この違いは、結合されているプローブの量における、2桁の大きさの違いに対応する。同じ条件下において、プローブ溶液に対する0.1%、1%または10%のDMSOの添加が、プローブの選択的結合または非選択的結合に影響しないことを検証した。最後に、種々の濃度の12の異なるHIV−1プロテアーゼ阻害剤を、ウェルに注がれた検出プローブ溶液に加え、阻害係数を実施例1iに記載されている手法によって決定した。計算のため、50〜99%の範囲における活性部位の占有の値のみ、および阻害剤の対応する濃度が使用された。1つの高い濃度の物質だけで、試験される物質のHIV−1プロテアーゼを阻害するための能力についての質的な情報には十分であった。しかし、質的な情報のため、動的範囲の2桁の大きさによると、一連の10倍に希釈されている濃度を試験することが必要であった。それから、得られたK
i値を、実施例2cに記載されている酵素反応速度論の方法から得られた参照の値K
irefと比較した。それによって、
図14の両方の方法の結果の図の比較からわかるように、両方の方法の値は互いによく相関していることがわかった。我々の方法で決定されたK
iと、参照の酵素反応速度論で決定されたK
iとの間の線形相関の信頼度の値R
2は、0.97であった。それにも関わらず、本願の方法によって測定された平均値Kiは、K
irefよりも顕著に高い(平均して10倍以上)。これはおそらく、pH4.7(参照の値はこのpHにおいて決定した)およびpH6.0(我々の方法はこのpHで実施した)における、酵素反応速度論によってK
irefを決定することが異なる結果につながることも知られているように、両方の方法において使用された異なるpHが原因である。pH6.0で決定されたK
irefは、我々の方法によって決定された値であるpH4.7の値よりも顕著に高い。K
iref値および2つの独立した実験から測定されたK
i値を、表11にまとめる。
【0235】
K
i(1)およびK
i(2)は、2回の独立した実験において結果として決定された阻害定数を示していおり、K
irefは、酵素反応速度論(pH4.7)によって得られた基準値である。
【0236】
2e:不動化されている抗体に対する結合による、HIV−1プロテアーゼの検出およびHIV−1プロテアーゼの阻害剤の試験
他の実施形態において、HIV−1プロテアーゼ(MyBiosource、MBS536030)を結合しているポリクローナル抗体の溶液10μlを、TBS中5ng.μl
−1で、96ウェルプレートFrameStar480/96のウェルの底に注ぎ、室温で45分間インキュベートした。それから、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSで3回洗浄した。それから、TBSで5回希釈されているカゼインブロッキング剤200μlを、上記ウェルの底に注ぎ、室温で3時間インキュベートし、それから、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。続いて、10μlの精製されているHIV−1プロテアーゼ溶液を、TBST中異なる濃度で上記ウェルの底に注いだ。室温における1時間のインキュベーションの後、上記ウェルの内容物をタップアウトし、当該ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。それから、TBST中のssHIV1の検出プローブ溶液10μlを加えた。さらなる手法は、実施例2dと同様であった。
【0237】
上記手法は、検出プローブが10nmol.l
−1の濃度で注がれた際、検出の範囲が100ngから1ngのHIV−1プロテアーゼに達し、100ngのプロテアーゼを含んでいるウェルと含んでいないウェルとのΔCqの違いは9サイクルであったことを示した。また、上記検出プローブ溶液に対する、2000倍の最終希釈での、カゼインブロッキング剤の添加は、100ngのプロテアーゼを含んでいるウェルと含んでいないウェルとの間のΔCqの違いを12サイクルに増加させ、これは、上記プローブの結合における1000倍の違いに対応することがわかった。従って、さらなる決定のため、上記プローブはカゼインブロッキング剤を含んでいるTBSTバッファーで希釈された。上記検出プローブ溶液の代わりに、iqPCR_aminoのリガンド部分を含んでいない当初のオリゴヌクレオチドの溶液を使用した場合は、100ngのHIV−1プロテアーゼの量を注ぐ場合であっても、リガンド部分を介して結合している上記検出プローブの選択性を確認する場合であっても、結合は観察されなかった。また、上記手法は、上記検出プローブ溶液に添加されている溶媒の影響について試験された。0.1%、1%および10%(体積/体積)の最終濃度のDMSOにおいて、アセトニトリルまたはメタノールは、検出プローブの結合、プロテアーゼに対する選択的な結合またはプロテアーゼを含まない表面に対する非選択的な結合のいずれにおいても、全く影響しなかった。最後に、種々の濃度の12の異なるHIV−1プロテアーゼの阻害剤を、上記ウェルに注がれている上記検出プローブ溶液に加え、阻害係数を実施例1iに記載されている手法によって決定した。50〜99%の範囲における活性部位の占有の値のみおよび阻害剤の対応する濃度が使用された。決定(物質)の正確性をチェックするため、HIV−1プロテアーゼを阻害しない多くの物質を高い濃度(1mmol.l
−1)で徐々に加え、これらは、結合されている検出プローブの量の減少につながらなかった。すなわち、間違ったポジティブな結果は観察されなかった。試験された物質のHIVプロテアーゼを阻害するための能力についての質的な情報には、1つの高い濃度の物質で十分である。しかし、量的な情報については、動的な範囲の2〜3桁の大きさが原因で、一連の10倍に希釈されている濃度を試験することが必要であった。得られたK
i値は、実施例2cに記載されている酵素反応速度論の方法から得られた、参照の値K
irefと比較され、
図15の両方の方法の結果の図の比較から明らかであるように、両方の方法の値は互いによく相関していることがわかった。我々の方法で決定されたK
iと参照の酵素反応速度論で決定されたK
iとの直接の相関の信頼度の値R
2は、1.00であった。それにも関わらず、本願の方法によって測定された平均値Kiは、K
irefよりもかなり高い(平均して100倍以上)。これはおそらく、実施例2dで議論されているように、両方の方法において使用された異なるpHが原因である。この場合、酵素反応速度論(4.7)および我々の方法(7.4)におけるpHの違いが重要である。対応する、H3O
+イオンの濃度の違いも、3桁の大きさである。この違いがおそらく、測定された値の、100倍の違いの原因であろう。酵素反応速度論において、pH4.7を使用することには実質的な理由がある。pH7.4においては、実質的な測定には、活性はかなり小さいが、HIVプロテアーゼはpH4.7において最も活性化しているためである。従って、pH7.4においてK
iref値を決定することは難しい。この観点において、我々の方法は向上を提供する。生理学的なpHにおける測定は、HIVプロテアーゼ阻害剤の臨床的な使用の生物学的な環境とかなり近いと考えられるためである。K
iref値および測定されたK
i値を、表12にまとめる。
【0239】
K
iは、決定された阻害定数(pH7.4)を指し、K
irefは、酵素反応速度論(ph4.7)から得られた基準値である。
【0240】
〔実施例3:炭酸脱水酵素IIおよびIXの検出、およびその阻害剤の試験〕
3a:炭酸脱水酵素IIおよびIXの共通阻害剤、およびそのNHSエステルの調製
全ての化合物は精製され、実施例1aにおいて説明されたような特性を有する。メチル4−(4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ブトキシ)ベンゾエート(化合物9)の調製は、メチル4-ヒドロキシベンゾエートの161mg(1当量、1.06mmol)、tert−ブチル(4−ヒドロキシブチル)カルバメートの300mg(1.5当量1.59mmol)およびTHF10ml中のトリフェニルフォスフィンの400mg(1.5当量、1.59mmol)の溶液に、312μl(1.5当量、1.59mmol)のDIADを一回分添加し、上記反応物を一晩撹拌し続けた。次に、その混合反応物を蒸発させて、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル 4:1、RF=0.25、ここで、メチル4−ヒドロキシベンゾエートは上記生成物と同一のRFを有する、それゆえ他の反応体は1.5当量が用いられた)によって精製し、260mgの白い粉末を得た(収率75%)。
【0241】
1H NMRによる分析物の結果は、以下の通りである。(400MHz,CDCl
3)δ7.95(d,j=8.9Hz,2H),6.87(d,J=8.9Hz,2H),4.71(s,1H),3.99(t,J=6.2Hz,2H),3.85(s,3H),3.17(dd,J=12.8,6.3Hz,2H),1.86−1.75(m,2H),1.69−1.61(m,2H),1.42(s,9H)。
【0242】
13C NMRによる分析物の結果は、以下の通りである。(101MHz,CDCl
3)δ166.92(s),162.78(s),156.10(s),131.64(s),122.57(s),114.12(s),79.20(s)67.73(s),51.89(s),40.29(s),28.49(s),26.86(s),26.49(s)。
【0243】
MS(ESI+)による分析物の結果はC
17H
25O
5N〔MNa〕
+の予想質量は346.17、測定質量は346.2であった。
【0244】
4−(4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ブトキシ)安息香酸(化合物10)の調製は、270mgの化合物9を5mlのメタノール中へ溶解して5mol.l
−1水酸化ナトリウムを5ml添加した。TLC分析が化合物9の完全な消失を示す迄、上記混合物を還流した(6時間)。上記反応混合物を酢酸エチル(20ml)により希釈し、その水相を10%硫化水素カリウム(重量/体積)によって酸性のPHへ酸性化させて20mlの酢酸エチルによりさらに2回抽出した。僅少溶媒の除去後、結晶性白色に変化する、240mgの油状生成物が得られた(収率95%)。
【0245】
1H NMRによる分析物の結果は、(400MHz,CDCl
3)δ8.03(d,J=8.9Hz,2H),6.91(d,J=9.0Hz,2H),4.65(s,1H),4.04(t,J=6.2Hz,2H),3.27−3.20(m,2H),1.91−1.78(m,2H),1.69(dd,J=14.8,7.2Hz,2H),1.44(s,9H)。
【0246】
13C NMRによる分析物の結果は、(101MHz,CDCl
3)δ171.51(s),163.46(s),156.20(s),132.42(s),121.92(s),114.28(s),79.42(s),67.86(s),40.36(s),28.56(s),26.89(s),26.53(s)。
【0247】
MS(ESI−)による分析物の結果はC
16H
22O
5N[M]
−の測定質量308.16、検出質量308.2であった。
【0248】
tert−ブチル(4−(4−(3−(4−スルファモイルフェニル)ウレイド)フェノキシ)ブチル)カルバメート(化合物11)の調製は、次のとおりである。化合物10 720mg(1当量、2.33mmol)を15mlの乾燥トルエンへ溶解して、810μl(2当量、4.65mmol)のDIEAを添加した。DPPA(552μl、1.1当量、2.56mmol)を1回分において反応混合物へ添加し、反応混合物の温度を2時間の間、90℃まで上げた。次に、その反応混合物は蒸発させ、乾燥ACN中に溶解し、601mg(1.5当量、3.49mmol)のスルファニルアミドを一回分添加し、反応混合物を撹拌しながら一晩60℃まで暖めた。12時間後全ての揮発性物質が蒸発し、粗生成物をシリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した(ヘキサン:酢酸エチル 2:5、RF=0.25)。340mgの生成物が得られた(単離収率30%)。
【0249】
1H NMRによる分析物の結果は、(400MHz,DMSO)δ8.98(s,1H),8.59(s,1H),7.71(d,J=8.8Hz,2H),7.59(d,J=8.9Hz,2H),7.34(d,J=9.0Hz,2H),7.20(s,2H),6.91−6.81(m,3H),3.91(t,J=6.4Hz,2H),2.96(dd,J=12.9,6.7Hz,2H),1.71−1.61(m,2H),1.51(dt,J=13.1,6.5Hz,2H),1.37(s,9H)。
【0250】
13CNMRによる分析物の結果は(101MHz,DMSO)δ155.37(s),154.02(s),152.16(s),142.99(s),136.40(s),132.04(s),126.61(s),120.14(s),117.12(s),114.50(s),77.06(s),67.05(s),40.35(溶媒ピークとの重複)27.77(s),26.85(s),25.73(s)。
【0251】
MS(ESI+)による分析物の結果は、C
22H
30O
6N
4S[MNa]
+の測定質量501.17、検出質量501.2であった。
【0252】
4−(4−(3−(4−スルファモイルフェニル)ウレイド)フェノキシ)ブタン−1−アミニウム2,2,2,−トリフルオロアセテート(化合物12)の調製は、次の通りである。500mgの化合物11は1mlのTFA中に溶解し、15分間、超音波処理と撹拌とを交互に行った。TFAは次に窒素の流れにより除去し、その生成物をいかなる性質決定も精製もすることなしにさらなるステップに用いた。
【0253】
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 19−オキソ−24−(4−(3−(4−スルファモイルフェニル)ウレイド)フェノキシ)−4,7,10,13,16−ペンタオキサ−20−アザテトラコサン−1−オエート(化合物13)の調製は、33mg(1当量、67μmol)の化合物12を、ビスNHS−PEG5(36mg、1当量、67μmol、Broadpharm)およびDMF(1ml)中のDIEA(22μl、2.5当量、168μmol)の溶液中にゆっくり加えた(1時間)。その反応混合物は3時間撹拌し続け、次にその揮発性物質を蒸発させた。最終生成物は分取HPLCによって精製した(勾配、15−50%(体積/体積)ACN40分、RT30分間)。15mgの生成物は99%より高い良い純度を伴って単離された(収率28%)。
分析HPLCのRTは18.7分である。HRMS(ESI+)による分析物の結果は、C
35H
50O
14N
5S
[MH]+の測定質量795.30695、検出質量796.30678であった。
【0254】
18−オキソ−23−(4−(3−(4−スルファモイルフェニル)ウレイド)フェノキシ)−3,6,9,12,15−ペンタオキサ−19−アザトリ−コサン−1−アミニウム2,2,2−トリフルオロアセテート(化合物14)の調製は、次の通りである。46mg(1当量、112μmol)のBoc−PEG5−COOHを36mg(1当量、112μmol)のTBTUおよび49μl(2.5当量、279μmol)のDIEAとともに0.5mlのDMF中に溶解した。この溶液55mg(1当量、112μmol)の化合物12を添加しその混合物を一晩中撹拌した。その溶媒を次に蒸発させてその粗生成物を10mlの酢酸エチルへ溶解した。その有機層を飽和重炭酸塩によって2回洗浄し、10%(質量/体積)硫化水素カリウムによって2回洗浄し、乾燥させ蒸発させて、53mgの生成物を単離した。1mlのTFAを加え、その混合物を、15分間、超音波処理と撹拌とを交互に行った。TFAは次に窒素の流れにより除去しその生成物を分取HPLCによって精製した(勾配:10−50%ACN40分間、RT=22分間)。生成物の17mgを単離した(収率31%)。分析HPLCのRTは、16.5分であった。HRMS(ESI+)による分析物の結果は、C
30H
48O
10N
5S[MH]+の計測質量は670.31164、検出質量は670.31164であった。
【0255】
3b:炭酸脱水酵素の選択的結合用の検出プローブの調製
炭酸脱水素酵素の選択的結合のための検出プローブは、修飾バッファー中で、iqPCR_アミノオリゴヌクレオチドと化合物13とを反応させることにより調製した。pH8.0の1mol.l
−1HEPES水性溶液2μlを、修飾バッファー(8.2nmol、1当量)中の10μlのオリゴヌクレオチドにはじめに追加した。撹拌後、無水DMSO中の50mmol.l
−1濃度の化合物13の溶液8.2μl(410mmol、50当量)を加えて、再び撹拌した。最後に、無水DMSO5μlを該混合物に加え、撹拌後、室温にて一晩インキュベートした。上記混合物は、次に、pH8.0の0.1mol.l
−1HEPES水溶液900μl中に希釈し、室温でさらにもう一日インキュベートした。得られた検出プローブ(以降ssCA、
図13)は、化合物13の加水分解生成物からアミコンウルトラ0.5ml 10Kの限外濾過により精製され、当該プローブを含む濃縮水の容積は2段蒸留水中に5回連続的に10倍希釈され、次にTBS中に5回連続的に10倍希釈された。ssCAプローブの濃度は、次に分光測定で定量した(OD1=1744pmol)。
【0256】
ssCAサンプルは、実施例1bにおいて説明したと同様の方法で、Agilent6230TOF LC/MSのLC/ESI−MSを用いて分析し、ただし0.05%(重量/体積)酢酸アンモニウム水溶液を、HFIPの代わりとしてTEAとともに移動相として用いた。分析結果は、保持時間5.14分で相関重量が17663.28である260nmの主要な吸着ピークであって、一方予想された分子量は17663.86であった。ssCAと元のiqPCR_アミノとの間の測定質量の差異は予想された差異680.30に対し681.40である。該生成物の純度は約80%だった。
【0257】
炭酸脱水酵素の検出において用いるため、およびその阻害剤を試験するために、検出プローブを有するニュートラアビジンの複合体であるNeu_dsbiotCAを調製した。はじめに、750pmolのssCAプローブを500pmolのiqPCR_ビオチンとともに50μlのTBSにて希釈し、実施例1bにおいて説明された手順により熱的に対合させた。得られた溶液10μlを、1mg.ml
−1の濃度のニュートラアビジン3μlと混合し、混合後、はじめに3時間を室温でインキュベートし、次に氷上で一晩インキュベートした。得られたNeu_dsbiotCA複合体は、アミコンウルトラ0.5ml 100K上の限外濾過によって精製され、その複合体を含んだ濃縮液の体積はTBSにて2回連続的に10倍希釈された。複合体中の検出プローブの最終濃度はqPCRにより、実施例1dに説明したようなssPSMA基準の希釈系列と比較することにより決定した。
【0258】
3c.CA−IIの検出およびCA−IIの阻害剤の試験
ヒト炭酸脱水酵素IIの精製基準は、シグマ−アルドリッチ社から指示されたものである(cat.no.C6165)。その凍結乾燥タンパク質を2段留水中に溶解した後、そのタンパク質を、最終濃度10ng.μl
−1から10pg.μl
−1となるようにTBS中に希釈し、その溶液の10μlを96ウェルプレートFrameStar480/96のウェルの底へアプライし、純TBSの10μlをコントロールのためにアプライした。40分間室温でインキュベーションした後、ウェルの内容物を吸いきって、ウェルを200μlのTBSを用いて3回洗浄した。次に、TBS中にて5倍希釈されたカゼインブロッキング剤100μlをウェルの底へアプライし、室温にて2時間インキュベートした。続けて、ウェルの内容物を吸いきって、ウェルを200μlのTBSTを用いて3回洗浄した。1nmol.l
−1濃度の検出Neu_dsbiotCAプローブの溶液10μlを、合計で1000倍希釈されたカゼインブロッカーの追加を伴う、20mmol.l
−1トリス、200mmol.l
−1塩化ナトリウムおよび0.05%Tween20(体積/体積) pH7.4の溶液(以降、TBST200バッファー)に添加した。更なる手順は、実施例2dと同様である。
【0259】
その説明された手順は、CA−IIタンパク質100ng(0コントロールと比較したΔC
qは9サイクルである)および10ng(0コントロールと比較したΔC
qは5サイクルである)の両方を検出することができた。アプライされた検出プローブの溶液中において1%(体積/体積)の最終濃度となるようなDMSOの追加は、固定化されたタンパク質CA−IIへのプローブの選択的な結合、または、ゼロ・コントロールにおける表面への非選択的結合を、変えることが無い、ということもまた見出した。最後に、最終濃度100μmol.l
−1における12の異なる既知のCA−IIの阻害剤を、ウェルへアプライされた検出プローブの溶液へ個別に加えた。これは、全ての12物質がCA−IIを阻害したということ、すなわち、試験された全ての阻害物質において、検出プローブの結合の観測可能な減少があったこと、が定性的に実証された。
【0260】
3d:CA−IXの検出およびCA−IX阻害剤の試験
精製抗体M75(Zavada etal.2000,British Journal of Cancer,p.1808)の溶液10μlを、TBS中10ng.μl
−1の濃度において、96ウェルプレートFrameStar480/96のウェルの底へアプライして、75分間室温にてインキュベートした。次にウェルの内容物を吸いきって、200μlのTBSを用いてウェルを3回洗浄した。次に、TBS中に5倍希釈されたカゼインブロッキング剤100μlを、ウェルの底へアプライして室温にて2時間インキュベートし、次にウェルの内容物を吸いきって、ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。次に、TBST200中の様々な濃度での、精製炭酸脱水酵素IXの溶液10μlを、ウェルの底に添加した。炭酸脱水素酵素IXの触媒ドメインおよびPGドメインを含むコンストラクト(アミノ酸55から390、以下、CA−IX PGと称される)は、昆虫のS2細胞において組換え発現により調製し、(Mader, 2010 Doctoral Thesis,Charles University Prague)にて述べられるように精製した。室温にて2時間インキュベーション後、ウェルの内容物を吸いきって、ウェルを200μlのTBSTで3回洗浄した。次にTBST200中の様々な濃度での、Neu_dsbiotCA検出プローブの溶液10μlを、結果として2000倍希釈となるようにカゼインブロッカーとともに加えた。更なる手順については、実施例2dと同様である。
【0261】
上述の手順とともに、ウェルへCA−IX PGの1ngをアプライ後、濃度依存性の結合検出プローブ量を測定し、プローブの解離定数が、プローブの最も高い使用濃度、すなわち50nmol.l
−1よりも著しく高いことが分かった。さらに、検出プローブの濃度5nmol.l
−1において、ゼロ・コントロールのウェルと、CA IX PGの1ngを伴うウェルとにおいて測定されたCqの差異は約10サイクルであり、これは結合したプローブの量において2桁以上の差異に相当する。同じ条件下で、CA−IX PGの定量のダイナミックレンジは50pgから1ngであった。表13を参照のこと。同じ手順において、検出プローブの溶液への、0.1%から10%(体積/体積)の濃度でのDMSOの添加は、プローブの選択的結合または非選択的結合へ影響しないことが実証された。
【0263】
最後に、合計12の異なるCA−IX阻害剤(上記CA−IIのために試験されたものと同一の物質)の様々な濃度を、ウェル中へアプライされた検出プローブ溶液へ添加し、実施例1iにおいて説明された手順をもって、その阻害定数を決定した。40から99.5%の範囲における活性部位占有率の値、および、これに対応する阻害剤の濃度のみが、計算のために用いられた。被験物質のCA−IXを阻害する能力についての定性的な情報のために、一つの高濃度(100μmol.l
−1)で物質を試験することで充分であった。定性的な情報を得る上で、セッティングのダイナミックレンジ(2〜3桁)のために、濃度の10倍希釈系列を試験することは必要であり、これにより、阻害剤の2〜3の連続的な希釈物において、測定されるK
i値は実質的に、常に同一である。得られたK
i値を、次に酵素反応速度論から得られた引用K
iref値と比較した。2つの方法によって得られたその値は、表14に要約した。酵素反応速度論はまた、化合物13(すなわち検出プローブ単体のリガンド部分)のK
irefを約400nmol.l
−1と決定した。その表と、
図16における両方の結果の図式的な比較とから明白なように、両方の方法により決定されるその値はとても良く相関し、絶対値でさえも一致した。ここで開示された方法により決定されたK
iと、参照酵素反応速度論をもって決定されたK
irefとの間での直線相関の信頼性値R
2は0.96であった。
【0264】
2、3の物質にのみ、K
iおよびK
irefの間で見られるより著しい差異(5〜10倍)があった。これらの差異の正確な理由は明らかではない。一方または他方の方法による決定に際してのエラーによってか、2つの決定法間の主要な相違によってか、の両方によって引き起こされた可能性がある。はじめに、酵素反応速度論は、大量の荷電アミノ酸を含むPGドメインをもたず、かつ、その部位のN−グリコシル化を防ぐ部分変異N346Dを含むCA−IXコンストラクトを用いて測定された。K
irefの決定と同様に、コンストラクトの調製および精製は、(Brynda et al., 2013, Angewandte Chemie−International Edition, pp. 13760−13763)に説明されている。部分変異と同様、構造ドメインの欠失が炭酸水素酵素の特性に影響するかもしれず、故に異なる結果が引き起こされると推測されうる。そのうえ、酵素反応速度論を用いた決定は、CA−IXの触媒作用の結果として、反応溶液のpHが初期の10から7へ変化することを、pH指示薬を用いて測定することに基づくものである。しかしながら、pH変化はまたいかなる酵素活動がなくともCO
2飽和によっても発生するので、規定したpHにおける阻害剤の親和力が測定されず、むしろpHのレンジが10から7までにわたる平均的な親和力が測定される。対して、我々の方法において、阻害剤(被験物質)の親和力は、規定したpH7.4にて測定され、それは測定の間変化しない。このことは、異なるK
i値が決定された理由に非常になりそうである。
【0266】
3e:CA−IXの検出および厳密結合性二価プローブを用いるCA−IX阻害剤の試験
CA−IX検出用の二価プローブは、化合物13と、3’末端6−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)ヘキシルリン酸修飾および5’末端6−アミノへキシルリン酸修飾を含む配列AAA CCT GCC AGT TGA GCA TTT TTA TCT GCC ACC TTC TCC ACC AGA CAA AAG CTG GAA A(カスタム合成Generi−Biotech, OPC purification)のオリゴヌクレオチドと、を反応させることにより調製した。その調製、精製およびLC/MS分析は実施例3bにおいて説明した手順と同一であった。測定された元のオリゴヌクレオチドの重量は18100.85であった、一方、化合物13との反応後のオリゴヌクレオチド(以降ssCAbis)の重量は19462.36であり、付加した化合物13の質量(680.30)の2倍に相当する1361.50の重量差異相当である。
【0267】
前述の実施例において説明した手順に従って、HT−29株(Bradford分析により決定された、使用した総タンパク質量は1μg)の細胞溶解物中に含まれる約80pgのCA−IXを、M75抗体を用いて固定化した。固定化CA−IXは続いて、HEPESTCバッファー中に希釈した様々な濃度のssCAbis検出プローブ(濃度範囲10pmol.l
−1から100pmol.l
−1)とともにインキュベートし、プローブのK
dを2.1nmol.l
−1として決定し(+−0.3nmol.l
−1)、それは一価プローブ(1分子の化合物13のみを含むプローブ)の親和力と比較し20倍以上の改善されたものである。同じ手順を、1μlの血清から固定化したCA−IXに対して繰り返し、測定されたK
dはほぼ同一であった(2.2nmol.l
−1+−0.3nmol.l
−1)。
【0268】
当該アッセイの検出限界および分析のダイナミックレンジを決定するため、RnDSystem社製の商業的なELISAキットを用いることで濃度を決定しているCA−IXの基準(standard)を調製した(HT−29細胞株の細胞溶解物)。この基準の希釈系列は、次に、ウェル中で、3時間、固定化したM75抗体と共にインキュベートした。洗浄後、HEPESTCバッファーにおいて200pmol.l
−1の濃度へ希釈したssCAbis検出プローブを、1時間、ウェルへ加え、次の洗浄の後、結合したプローブの量をqPCRを用いて決定した。
図17に示すように、分析の直線的なレンジはCA−IXの8fgから800pgの間で、最も低い検出された量は2.5fgであった。
【0269】
36人の被験者から採取した血清サンプル中のCA−IXの濃度は、同じ手順によって決定した。36人の被験者は、12人の健康な男性;組織学的に確認された腎臓明細胞癌を有している10人の男性と2人の女性;組織学的に確認された前立腺癌を有する12人の男性;である。10μlの希釈していない血清(固定化されたM75抗体を配したウェル中にて21時間インキュベートした。)においてCA−IXの量を決定した。サンプル中におけるCA−IXの濃度は、結合したプローブの量を、前のパラグラフで説明した、0.1から1.5ng.ml
−1までを範囲とする、基準の希釈系列と比較することによって決定した。得られたデータを裏付けるために、全てのサンプルを拮抗的なCA−IX阻害剤アセタゾルアミド(AAZ)の存在下においてもまた、プローブとともにインキュベーションした。そのプローブの結合はAAZを加えることにより抑制されることと、プローブ結合の阻害の強さはアセタゾルアミドのK
iに相当することとが確認された。CA−IXの濃度1pg.ml
−1未満に対応する量まで、アセタゾルアミドの添加がプローブ結合を抑制したことは、検出限界が、約10μlの血清の消費を伴うときに、約1pg.ml
−1であること(全体において10fg)を示す。その得られた値の更なる確認のため、全てのサンプル中におけるCA−IXの濃度をRnDSystemから商業的に入手可能なELISAキットをもって測定し、
図18に示すように、両方の方法の結果は非常に良く相関し、ただし、我々の方法で測定した濃度は、ELISAキットで得た濃度に比べ、絶対値において約80%高かった。ELISAキットと比較して、我々の方法はいくつかの利点を提供する。この利点は、血清の10倍低い消費量にて同じ感度;約2〜3桁の直線レンジ;および、何よりも、阻害剤無しでプローブとCA−IXとをインキュベートすることによって、結果の精度を実証することが出来る機会があることである。
【0270】
図19は、グループに従って分けた、我々の方法で測定した濃度を示し、血清中のCA−IXの濃度が、腎臓明細胞癌の患者および前立腺癌の患者の両方が健常者よりも高く(中央値がそれぞれ順に、0.159、0.162、および、0.062ng.ml
−1)、両方のケースにおいて差異が統計的に有意である(p<0.05)。
【0271】
二価ssCAbisプローブはまた、10の被験物質の阻害定数を決定するために用いられた。TBSTバッファー中に溶解したHT−29株の細胞溶解物(ウェル中のタンパク質の総量は、約800pgのCA−IXを含む10μg)またはヒトドナーからの純粋血清の10μl(約10pgのCA−IXを含む)のいずれかに含まれる未精製CA−IXは、M75抗体を用いてウェルの底へ固定化した。未結合物質をマトリクスから洗い落とした後、固定化CA−IXを、10%DMSOを含むHEPESTCバッファーにおいて500pmol.l
−1の濃度へ希釈されたssCAbisプローブと;個別に、100μmol.l
−1または1μmol.l
−1の濃度の、様々な被験物質と;ともにインキュベートした。洗浄後、結合したプローブの量をqPCRを用いて決定し、被験物質が添加されたウェルと添加されていないウェルとにおける、結合したプローブ量の相違から、これら物質の阻害定数を、式(16)に従って計測した。その阻害定数は、ブリンダらが(2013年、Angewandte Chemie−International Edition、13760頁)において記載した、精製したトランケート体組換えタンパク質を用いた酵素反応速度論から得たK
iref値と比較した。得られた値は表15に要約され、我々の方法により得られた値は、酵素反応速度論から得られた値と同一であることが明らかである。同じ方法で、化合物14の阻害定数は300nmol.l
−1と決定された。我々の方法はそれゆえこの標準分析法と同様に適切である、しかし加えていくつかの利点をもち、標準分析法とは異なり、組換えCA−IXを調製または精製する必要が無い、なぜなら、それは例えば血清中に含まれるような極少量のみで十分だからである;さらに、直線的レンジが大きいため、被験物質の2つの濃度のみを試験すれば十分であって、酵素反応速度論におけるように、被験物質の全希釈系列を試験する必要がないためである。さらに、我々の方法はCA−IX阻害剤のHTSに適する。なぜなら、我々の方法は、全工程がマイクロプレート配置上において行われてオートメーション化可能であるが、酵素反応速度論の場合は不運にもそうではないからである。
【0273】
〔実施例4:アスパラギン酸プロテアーゼの活性部位への選択的結合用の、ユニバーサル検出プローブ〕
4a:ペプスタチンNHSエステルの調製
全ての化合物は精製され、実施例1aに説明したとおりの特性を有する。(21S,24S,27S,28S,32S,35S,36S)−1−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−28,36−ジヒドロキシ−27,35−ジイソブチル−21,24−ジイソプロピル−32−メチル−1,19,22,25,30,33−ヘキサオキソ−4,7,10,13,16−ペンタオキサ−20,23,26,31,34−ペンタアザオクタトリアコンタン−38−オイック酸、NHS−PEG
5−ペプスタチン(化合物15)の調製は、以下の通りである。ペプスタチンは、2−クロロトリチルクロライド樹脂(Iris−Biotech)を用いた、固相上の標準アミノ−Fmoc合成により合成した。スタートアミノ酸(Fmoc−Sta−OH)は、製品の指示書に従って固相へ固定した。上記の樹脂は、Fmoc−Sta−OH(樹脂代替に対して0.6当量)とともに、4当量のDIEAの存在下において、2時間、ジクロロメタン(DCM)中で反応させておいた。残りの反応性残渣は、15分間、DCM/MeOH/DIEA(17:2:1)の混合物を用いてクエンチングした。他の全てのアミノ酸は、HOBt/DIC方法を用いて付加した。得られたタンパク質は、次に、95%(体積/体積)TFA(2.5%(体積/体積)水および2.5%(体積/体積)トリイソプロピルシラン)を用いて固相から切断し、得られた粗成生物をさらに精製することなしに次のステップへ用いた(切断後の精製度は95%以上)。18mg(1.1当量、33μmol)のbis−PEG5−NHSエステル(Broadpharm)は、25μl(5当量、165μmol)のDIEAとともに、0.25mlのDMFへ溶解した。20mg(1当量、30μmol)のペプチドは、次に、撹拌している上記溶液へゆっくり滴状で添加し(1時間の間)、その反応は3時間行った。次に揮発性物質を蒸発させ、得られた最終生成物を分取規模HPLCにより精製した(勾配:15−50%(体積/体積))ACN中に40分、RT=31分)。10mgの生成物が、99%以上の純度で単離された(収率33%)。分析HPLC RT=19.5分であった。HRMS(ESI−)による分析結果は、C
47H
81O
18N
6[M]
−の計算質量は1017.56128、検出質量は1017.56079であった。
【0274】
4b:アスパラギン酸プロテアーゼの選択的結合用の検出プローブの調製
アスパラギン酸プロテアーゼの選択的結合用の検出プローブは、修飾バッファー中で、化合物15とiq_PCRアミノオリゴヌクレオチドとを反応をすることにより調製した。はじめに、4μlのpH8.0 HEPES 1mol.l
−1水溶液を、修飾バッファー中の20μlのオリゴヌクレオチド(16.3nmol、1当量)へ添加した。撹拌後、無水DMSO中20mmol.l
−1濃度の化合物15溶液を16.3μl(326nmol、20当量)添加し、再び撹拌した。最後に、15μlのDMSOをその混合物へ添加し、撹拌後、その混合物を室温にて一晩インキュベートした。
【0275】
得られた検出プローブ(以降ssAP、
図13)は、化合物15の加水分解生成物から、アミコンウルトラ0.5ml 10K上の限外濾過により精製した。カラムにアプライされる前に、反応混合物は1mlの2段蒸留水に希釈し、次に、限外濾過中に、プローブを含んだ濃縮水の体積を2段蒸留水にて10回連続的に10倍希釈した。ssAPプローブの濃度は、分光測定で定量した(OD1=1744pmol)。ssAPのサンプルは実施例3bにおいて説明されたものと同様の手順によって、Agilent 6230 TOF LC/MSのLC/ESI−MSにより分析したが、ACNの勾配だけは6分間で5−60%(体積/体積)であった。分析の結果、保持時間4.54分の、260nmの主要な吸着ピークがみられ、17887.10の重量に相当する(予想分子量は17887.20)。ssAPと元のiqPCR_アミノとの間の測定重量の差異は、予想された差異の904.20と比較して905.23であった。生成物の精製度は95%以上であった。
【0276】
4c:ヒトカゼプシンD用の、調製済検出プローブの阻害力の決定
ヒトカゼプシンD用のssAP検出プローブの阻害能力は、酵素反応速度論から決定した。その手順は、(Masa et al. 2006, Biochemistry, p. 15474)において説明されたものと同様であった。カゼプシンDは、(Fusek et al. 1992, Journal of Molecular Biology, p. 555)中の手順によって調製した。円錐形の底を持つ白色96ウェルプレート(NUNC V96)のウェルへ、pH4.0のアセテートバッファー93.5μl(100mmol.l
−1酢酸ナトリウム、300mmol.l
−1塩化ナトリウム)、0.5μlのカゼプシンD溶液、および、既知濃度の検出プローブ溶液1μlを次々に充填した。測定の直前に、2%(体積/体積)DMSO中の40μmol.l
−1濃度の、蛍光原基質の溶液(Abz−Lys−Pro−Ala−Glu−Phe−Nph−Ala−Leu、Absはアミノ安息香酸であり、Nphは4−ニトロフェニルアラニン)5μlを加えて、次に、基質の開裂率をTecan infinite M1000reader(330nmでの励起および放射410nm)で観察した。そのIC
50値は、検出プローブの濃度のv
i/v
0比率への依存性から、約1nmol.l
−1となるように決定された。上述のようなプローブの親和力は、カゼプシンDの十分な感受性検出のために効率的である。
【0277】
〔実施例5:インフルエンザノイラミニダーゼの活性部位への選択的結合用検出プローブ〕
5a:アジド基が付加された、インフルエンザノイラミニターゼの選択的阻害剤の調製
化合物17である、1−(6−アジドへキシル)−1−メチル−(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ−3−(1−エチルプロポキシ)−1−シクロへキセン−1−ホスホネートは、(Carbain 2010, Doctoral thesis, University of Sussex)中に説明された手順と同様にして調製した。
【0278】
化合物18である、1−(6−アジドへキシル)−(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ−3−(1−エチルプロポキシ)−1−シクロへキセン−1−ホスホネートの調製は、下記の通りである。化合物17のジアステレオマーの混合物(0.068g、0.12mmol)を乾燥THFの4ml中に溶解し、チオフェノール(0.05ml、0.66mmol)およびトリチルアミン(0.15ml、0.18mmol)をこの溶液中に溶解した。その反応混合物を2日間室温にて撹拌し、次にチオフェノール(0.05ml、0.66mmol)およびトリエチルアミン(0.15ml、1.08mmol)を再び加えた。次の日、その反応混合物をロータリーエバポレーター上で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出剤はエチルアセテート:メタノール/3:1から1:2)により抽出した。収量は、脱メチル化生成物として0.042g。HRMS(ESI−)による分析結果は、C
24H
43O
7N
5Pの計算質量は544.2906、検出質量は544.2902であった。
【0279】
化合物19である、1−(6−アジドへキシル)−(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3−(1−エチルプロポキシ)−1−シクロへキセン−1−ホスホネートの調製は、以下の通りである。化合物18(0.04g、0.073mmol)3mlをトリフルオロ酢酸へ溶解し、室温において2時間撹拌後、その反応混合物を蒸発させて、残渣をリバースカラム上の分取HPLCにより精製した(固定相C−18修飾シリカゲル、移動相はアセトニトリル/0.1%(体積/体積)トリフルオロ酢酸を含む水)。収量は最終生成物0.02g。
【0280】
HRMS(ESI+)による分析結果は、C
19H
37O
5N
5Pの計算質量は446.2527、検出質量は446.2527であった。
【0281】
5b:インフルエンザノイラミニダーゼの検出プローブの調製
ジベンジルシクロオクチン基を有するオリゴヌクレオチド(以降ssAD)の調製は以下の通りである。最初に、2倍濃縮の50μlの修飾バッファーを、48μlの2段蒸留水中に溶解したiqPCRアミノオリゴヌクレオチド(20.2nmol、1当量)へ添加した。無水DMSO中20mmol.l
−1(1.008μmol、50当量)濃度のジベンジルシクロオクチンNHS−エステル(Sigma、cat.no.761524)を50.4μl添加し、撹拌した。沈殿が認められると、追加の70μlのDMSOを続けて添加し、撹拌した。室温にて2日間インキュベーション後、得られた修飾オリゴヌクレオチド(ssAD)は、アミコンウルトラ0.5ml 10Kカラム上の限外濾過により精製された。カラムへアプライする前に、この反応混合物を2段蒸留水に希釈して1mlとし、次に、限外濾過中に、その濃縮水の体積を2段蒸留水にて10回連続的に10倍希釈した。濃縮水中のオリゴヌクレオチド濃度は、分光測定で定量した(OD1=1744pmol)。生成物のサンプルは、実施例4bにおいて説明された通り、Agilent 6230 TOF LC/MSのLC/ESI−MSにより分析した。分析の結果、17269.75の重量に相当する、保持時間4.47分の、260nmの吸着ピークが見られた。元のiqPCR_amninoに対応する重量は検出されず、反応による完全な転化が示唆される。ssADと元iqPCRアミノとの間の測定重量の差異は、予想された差異の287.40と比較して、278.88であった。
【0282】
インフルエンザノイラミニダーゼの検出プローブ(以降ssAD_NA、
図13)の調製は次のとおりである。最初に、2倍濃縮の修飾バッファー8.8μlを、2段蒸留水7.3ml中のssADオリゴヌクレオチド(3.0nmol、1当量)に加えた。撹拌後、無水DMSO中20mmol.l
−1(30nmol、10当量)濃度の化合物19の溶液を1.5μl加え、再び撹拌した。3日室温にてインキュベーション後、得られた検出プローブssAD_NAは、アミコンウルトラ0.5ml 10Kカラム上の限外濾過により精製した。カラムへアプライする前に、この反応混合物を2段蒸留水に希釈して1mlとし、次に、限外濾過中に、その濃縮水の体積を2段蒸留水にて10回連続的に10倍希釈した。濃縮水中のプローブ濃度は、分光測定で定量した(OD1=1744pmol)。プローブのサンプルは、実施例4bにおいて説明された通り、Agilent 6230 TOF LC/MSのLC/ESI−MSにより分析した。分析の結果、17715.25の重量に相当する、保持時間4.73分の、260nmの吸着ピークが見られた。元のssADに対応する重量は検出されず、反応による完全な転化が示唆される。ssAD_NAと元のssADとの間の測定重量の差異は、予想された差異の445.50と比較して、445.50であった。
【0283】
5c:調製した検出プローブの阻害定数の決定
試験されるノイラミニダーゼN1型は、流行性ウイルスA/California/07/2009(GenBankCY121682)に由来する。触媒ドメイン(アミノ酸82−469)のコーディング配列はGenscript社により合成され、pMTBiPベクターへクローニングし、得られたコンストラクトは(シグナルペプチドに加えて)、N末端のAvi−tagと、当該タグの切断のためのトロンビン切断部位とを含む。ノイラミニターゼを昆虫のS2細胞中に発現させて、分泌タンパク質を、硫酸アンモニウムを用いた沈殿によって、SF900培地(USA、Invitrogenから商業的に入手可能な培地)から精製した。50%硫酸飽和状態から得られた可溶性画分は50mmol.l
−1トリス、pH8.0の150mmol.l
−1塩化ナトリウム中に透析され、ゲル浸透クロマトグラフィーによって、Superdex200カラム上に濃縮および分離された。ノイラミニターゼ触媒活性を伴う複数の画分を統合して、最終濃度10mmol.l
−1の塩化カルシウム溶液およびトロンビンアガロース(Sigma−Aldrich、USA)を添加し、4℃にて12時間インキュベートした。この混合物は、Superdex75カラム上のゲル浸透クロマトグラフィーによって分けた。Avi−tagをもたない活性型のノイラミニダーゼを含む画分(SDSポリアクリルアミド電気泳動およびウェスタンブロッティングによる決定)は、反応速度実験の為に凍結した。
【0284】
ノイラミニダーゼの酵素活性は、100mmol.l
−1MES、150mmol.l
−1塩化ナトリウム、pH6.15の10mmol.l
−1塩化カルシウム中の蛍光基質2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセチルノイラミニン酸(4−MUNANA)を用いた蛍光定量的分析をもって測定した。反応混合物の最終濃度は、16nmol.l
−1ノイラミニダーゼ、500μmol.l
−1の4−MUNANA基質(K
M=1.1mmol.l
−1)および2%DMSO(体積/体積)であった。基質の切断は、Tecan Infinite M1000 reader上で、励起波長λ
exc=365nmおよび放出波長λ
em=450nmにてモニターし、その反応は、37℃で20分間インキュベートし、次にナトリウムフェノキシド溶液を0.5mol.l
−1の最終濃度になるように加えることにより停止した。見かけKi’値およびKi値は、Williams and Morrisonによる阻害反応速度と非阻害反応速度との比率v
i/v
0を評価することにより得た。医療に用いられるオセルタミビルの測定K
iは24nmol.l
−1(±4nmol.l
−1)であり、化合物19のKiは24nmol.l
−1(±5nmol.l
−1)でありssAD_NA検出プローブのKiは0.79nmol.l
−1(±0.09nmol.l
−1)であった。化合物19の見かけKiおよび検出プローブssAD_NAの見かけKiもまた、100mmol.l
−1トリス、150mmol.l
−1塩化ナトリウム、10mmol.l
−1塩化カルシウム中で、生理的なpH7.4において決定した。化合物19のKi’は約40nmol.l
−1であり、一方ssAD_NA検出プローブのKi’は約2nmol.l
−1であった。すなわち、前述のオリゴヌクレオチドを化合物19に結合することは、化合物19およびオセルタミビル双方と比較して少なくとも20倍高いノイラミニダーゼへの親和性を有する物質を生む結果になった。
【0285】
5d:インフルエンザノイラミニダーゼN1に対する物質の阻害活性の試験
1000倍希釈されたカゼインブロッカーと5mmol.l
−1濃度の塩化カルシウムとを含むTBSTバッファー中に希釈された、N末端にstrep−tagを含む1ngの精製組換えノイラミニダーゼN1を、前の実施例において説明した手順に従って、strep-tagを認識する抗体を用いて、PCRプレートのウェルの底に固定化した。続いて、固定化したノイラミニダーゼは、同じバッファー中で、250pmol.l
−1濃度のssAD_NA検出プローブと、さらに100nmol.l
−1から1mmol.l
−1の範囲内の様々な濃度でのいくつかの異なる被験物質とともにインキュベートされ、洗浄後、結合したプローブの量をqPCRにより定量した。被験物質が含まれるウェルと検出プローブのみが含まれるウェルとの間でのΔC
qの差異から、被験物質の阻害定数Kiは、式(15)と、用いた被験物質の濃度とに基づいて計算された。オセルタミビルでは、Kiは48nmol.l
−1と決定され(前節において説明した酵素反応速度論による参照値は24nmol.l
−1であった。)、化合物19のKiは138nmol.l
−1(24nmol.l
−1)であり、他の物質については次の通りであった。基質41は85nmol.l
−1(26nmol.l
−1)、基質42は159nmol.l
−1(39nmol.l
−1)、基質43は6100nmol.l
−1(2100nmol.l
−1)、基質44は38100nmol.l
−1(12700nmol.l
−1)。測定値は、括弧内に報告された酵素反応速度論により得られたものと非常に良く相関した(R
2=1)。
【0286】
〔産業上の利用可能性〕
記載されている方法は、医療における広い用途を有している。わずか数十分子のオーダーにおける優れた感度を法慮すれば、当該方法は、これまで測定不可能な濃度における血中のタンパク質マーカー(例えば、前立腺外科手術後のPSA)を決定する可能性をもたらす。
【0287】
さらに、分析物の活性部位に結合するプローブのために、同じ結合部位に対する試験物質の結合強度を測定することができる。大きなダイナミックレンジとの組合せにおいて、われわれのアッセイは、単一濃度の試験物質を用いたわずか1回の測定から、試験物質の阻害定数の値を決定することを可能にする。上記方法の高い感度および選択性のために、生物学的マトリクスに含まれている分析物の最少量が十分な量である。
【図面の簡単な説明】
【0288】
【
図1】酵素の選択的な定量のための方法の原理を示している。
【
図2】検出プローブの考えられる構成を示している。
【
図3】分析物の活性部位に結合する、試験物質の力を決定する原理を示している。
【
図4】検出プローブを有している分析物の、試験物質とのインキュベーション後におけるサイクル数、および当該物質なしのサイクル数の間における、測定された差異に応じた、試験物質の決定された解離定数の精度を示している。
【
図5】PSMAを選択的に結合するための検出プローブの構造を示している。
【
図6】PSMAに選択的な検出プローブのLC/ESI−MS分析において測定された質量スペクトルを示している。
【
図7】iqPCRに対して相補的な、3’末端に修飾されているオリゴヌクレオチドを示している。
【
図8】種々の検出プローブの種々の濃度についての、ウェルにおけるPSMAタンパク質の量に対する、測定されたC
q値の依存関係を示している。
【
図9】PSMA分子の数に対する、測定されたC
q値の依存関係を示している。
【
図10】健常なドナーから得られたクエン酸血漿のサンプルにおけるPSMA濃度、および放射性酵素学的アッセイの相関関係を示している。
【
図11】本明細書に開示されている方法)、および基準の酵素反応速度論を用いて測定された、Avi−PSMAに対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。
【
図12】rhPSMAおよび血漿からの内因性のPSMAについての、本明細書に開示されている方法を用いて測定された種々の物質の阻害定数Kiを示している。
【
図13】分析物の選択的な結合のための、調製された検出プローブの構造を示している。
【
図14】本明細書に開示されている方法、および基準の酵素反応速度論を用いて測定された、HIVプロテアーゼに対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。
【
図15】本明細書に開示されている方法、および基準の酵素反応速度論を用いて測定されたHIVプロテアーゼに対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。
【
図16】本発明にしたがって、および基準の酵素反応速度論を用いて測定された、炭酸脱水素酵素に対する種々の物質の阻害定数K
iの相関関係を示している。
【
図17】二価のプローブssCAbisを用いた、細胞溶解液におけるCAーIXの量に対する、測定されたC
q値の、依存関係を示している。
【
図18】2価のプローブssCAbisを用いてか、または市販のELISAキットによって、血液において本発明にしたがう方法によって測定されたCA−XIの濃度の比較を示している。
【
図19】2価のプローブssCAbisを用いた、本発明にしたがう方法による血清における、測定されたCA−XIの濃度を示している。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]