(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462852
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】卵殻を有する少なくとも1つの卵を調理するための装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
A47J 29/02 20060101AFI20190121BHJP
H05B 6/64 20060101ALI20190121BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20190121BHJP
【FI】
A47J29/02
H05B6/64
A23L15/00 E
A23L15/00 Z
【請求項の数】30
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-507066(P2017-507066)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公表番号】特表2017-513674(P2017-513674A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】EP2015058051
(87)【国際公開番号】WO2015162032
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年1月22日
(31)【優先権主張番号】2012688
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】516317399
【氏名又は名称】エッグサイティング プロダクツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネリッセン,ジョセフ ヴィルヘルムス ペトリュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン シャイク,サンダー−ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,エドウィン マテウス ジョゼフ
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−501659(JP,A)
【文献】
特表2013−535993(JP,A)
【文献】
特開平04−071467(JP,A)
【文献】
特開2003−079513(JP,A)
【文献】
米国特許第06097013(US,A)
【文献】
国際公開第2011/108922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 29/02
A23L 15/00
H05B 6/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵殻を有する少なくとも1つの卵(40)を調理するための装置(1、101、201、301)であって、前記装置(1、101、201、301)は、ハウジング(8、10)内の限定された空間内にマイクロ波放射線を提供するためのデバイス(47)を装備したハウジング(8、10)と、前記限定された空間内に配置されるホルダ(9、11)とを備え、前記ホルダ(9、11)は、前記卵殻を有する前記卵(40)の形に適合される少なくとも1つのキャビティ(50)を装備し、前記装置(1、101、201、301)は、前記キャビティ(50)内に配置される前記卵(40)の前記卵殻を少なくとも部分的に包囲すべく前記キャビティ(50)を液体で満たすように前記ホルダ(9、11)内に前記液体を注入するための手段をさらに備え、前記装置(1、101、201、301)は、前記少なくとも1つの卵(40)の調理プロセスの間に前記ホルダ(9、11)内の液体量を制御するための手段(410)を備え、
‐第1の液体量は、前記キャビティ(50)内にマイクロ波放射線を提供する前に前記キャビティ(50)内へ注入され、前記第1の液体量は、前記キャビティ(50)内に配置される前記卵(40)の前記卵殻を少なくとも部分的に包囲し、
‐第2の液体量は、前記キャビティ(50)内にマイクロ波放射線を提供する間に蒸発し前記キャビティ(50)から出た液体量を補充し、かつ前記キャビティ(50)内に配置される前記卵(4)の周囲に所望される液体層を保持するために、マイクロ波放射線を提供する間に前記キャビティ(50)内へ徐々に注入されることを特徴とする、装置(1、101、201、301)。
【請求項2】
前記装置は、前記第2の液体量を前記キャビティ(50)内へ、マイクロ波放射線を提供する第1の所定時間の後に、かつマイクロ波放射線を提供する第2の所定時間の間に徐々に注入することを特徴とする、請求項1に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項3】
半熟卵(40)の調理プロセスに対してマイクロ波放射線を提供する前記第1の所定時間は、固ゆで卵(40)の場合よりも短いことを特徴とする、請求項1または2に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項4】
半熟卵(40)の調理プロセスに対する前記第2の液体量は、固ゆで卵(40)の場合よりも多いことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項5】
前記第2の液体量は、マイクロ波放射線を提供する前記第2の所定時間中にパルス状に加えられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの卵(40)の前記調理プロセスの間に、定出力の前記マイクロ波放射線が使用されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項7】
マイクロ波放射線を提供する前記第1の所定時間とマイクロ波放射線を提供する前記第2の所定時間との合計は、半熟卵(40)および固ゆで卵(40)の調理プロセスでほぼ同じであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項8】
前記第1の液体量(V1)は、30ミリリットルから60ミリリットルの間であり、一方で、前記第2の液体量は、60ミリリットルから120ミリリットルの間であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項9】
マイクロ波放射線を提供するための出力1000ワットおよび2.45GHzのデバイスで、前記第1の所定時間(T11、T12、T13)は、15秒から40秒の間であり、マイクロ波放射線を提供する合計時間は、90秒から120秒の間であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項10】
前記液体は、温度0℃〜100℃間、マイクロ波周波数2.45GHzで、20〜500の間の虚数部ε”を有する誘電率の水性液であること、好ましくはNaCl、より好ましくは0.2MのNaClを含有する水、であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項11】
前記装置は、液体を前記キャビティ内へ案内する導管(32)を備え、前記導管(32)は、少なくとも部分的に前記限定された空間内に配置され、前記第2の液体量は、前記液体が前記ホルダ(9、11)内へ注入される前に前記マイクロ波放射線により前記導管(32)内で予備加熱されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項12】
前記限定された空間内に配置された前記導管(32)の部分は、40センチメートルから80センチメートルの間の長さであることを特徴とする、請求項11に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項13】
前記ホルダ(9、11)と前記卵(40)の前記卵殻との間の前記液体の平均層厚さは、2ミリメートルから8ミリメートルの間であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項14】
前記ホルダ(9、11)内へ液体を注入する前記手段は、少なくとも2つのポンプ(402、404)を備え、第1のポンプ(402)は、第1の導管(403)によって液体入口に接続され、一方で第2のポンプ(404)は、第2の導管(405)によって液体出口に接続されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項15】
前記第2のホルダ部(11)は、前記調理プロセスの間に前記キャビティ(50)内に形成される前記液体の少なくとも1つの気相のための開放出口を備えることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の装置(1、101、201、301)。
【請求項16】
ハウジング(8、10)内の限定された空間内にマイクロ波放射線を提供するためのデバイス(47)を装備したハウジング(8、10)と、前記限定された空間内に配置されるホルダ(9、11)とを備える装置(1、101、201、301)において、卵殻を有する少なくとも1つの卵(40)を調理するための方法であって、前記ホルダ(9、11)は、前記卵殻を有する前記卵(40)の形に適合される少なくとも1つのキャビティを装備し、前記装置(1、101、201、301)は、前記キャビティ(50)内に配置される前記卵(40)の前記卵殻を少なくとも部分的に包囲すべく前記キャビティ(50)を液体で満たすように前記ホルダ(9、11)内に前記液体を注入するための手段をさらに備え、前記装置(1、101、201、301)は、前記少なくとも1つの卵(40)の調理プロセスの間に前記ホルダ(9、11)内の液体量を制御するための手段を備え、
‐第1の液体量(V1)は、前記キャビティ(50)内にマイクロ波放射線を提供する前に前記キャビティ(50)内へ注入され、前記第1の液体量(V1)は、前記キャビティ(50)内に配置される前記卵(40)の前記卵殻を少なくとも部分的に包囲し、
‐第2の液体量は、マイクロ波放射線を提供する間に前記キャビティ(50)内へ徐々に注入されることを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記第2の液体量は、前記キャビティ内へ、マイクロ波放射線を提供する第1の所定時間の後に、かつマイクロ波放射線を提供する第2の所定時間の間に徐々に注入されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
半熟卵(40)の調理プロセスに対してマイクロ波放射線を提供する前記第1の所定時間(T11、T12、T13)は、固ゆで卵(40)の場合よりも短いことを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
半熟卵(40)の調理プロセスに対する前記第2の液体量は、固ゆで卵(40)の場合よりも多いことを特徴とする、請求項16、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の液体量は、マイクロ波放射線を提供する前記第2の所定時間中にパルス状に加えられることを特徴とする、請求項16から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの卵(40)の前記調理プロセスの間に、定出力の前記マイクロ波放射線が使用されることを特徴とする、請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
マイクロ波放射線を提供する前記第1の所定時間(T11、T12、T13)とマイクロ波放射線を提供する前記第2の所定時間との合計は、半熟卵(40)および固ゆで卵(40)の調理プロセスでほぼ同じであることを特徴とする、請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の液体量(V1)は、30ミリリットルから60ミリリットルの間であり、一方で、前記第2の液体量は、70ミリリットルから110ミリリットルの間であることを特徴とする、請求項16から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
マイクロ波放射線を提供するための出力1000ワットおよび2.45Ghzのデバイス(47)で、前記第1の所定時間(T11、T12、T13)は、15秒から40秒の間であり、マイクロ波放射線を提供する合計時間は、90秒から120秒の間であることを特徴とする、請求項16から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記液体は、温度0℃〜100℃間、マイクロ波周波数2.45GHzで、20〜500の間の虚数部ε”を有する誘電率の水性液であること、好ましくはNaCl、より好ましくは0.2MのNaClを含有する水、であることを特徴とする、請求項15から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記装置は、液体を前記キャビティ(50)内へ案内する導管(32)を備え、前記導管(32)は、少なくとも部分的に前記限定された空間内に配置され、前記第2の液体量は、前記液体が前記ホルダ(9、11)内へ注入される前に前記マイクロ波放射線により前記導管(32)内で予備加熱されることを特徴とする、請求項15から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記限定された空間内に配置された前記導管(32)の部分は、40センチメートルから80センチメートルの間の長さであることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ホルダ(9、11)と前記卵(40)の前記卵殻との間の前記液体の平均層厚さは、2ミリメートルから8ミリメートルの間であることを特徴とする、請求項15から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ホルダ(9、11)内へ液体を注入する前記手段は、少なくとも2つのポンプ(402、404)を備え、第1のポンプ(402)は、第1の導管(403)によって液体入口に接続され、一方で第2のポンプ(404)は、第2の導管(405)によって液体出口に接続されることを特徴とする、請求項15から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のホルダ部(11)は、前記調理プロセスの間に前記キャビティ(50)内に形成される前記液体の少なくとも1つの気相のための開放出口を備えることを特徴とする、請求項15から29のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵殻を有する少なくとも1つの卵を調理するための装置に関し、本装置は、ハウジング内の限定された空間(閉鎖空間;confined space)内にマイクロ波放射線を提供するためのデバイスを装備したハウジングと、限定された空間内に配置されるホルダとを備え、このホルダは、卵殻を有する卵の形に適合される少なくとも1つのキャビティ(空洞)を装備し、本装置は、さらに、キャビティ内に配置される卵の卵殻を少なくとも部分的に包囲すべくキャビティを液体で満たすようにホルダ内に液体を注入するための手段を備える。
【0002】
本発明は、このような装置内で卵殻を有する少なくとも1つの卵を調理するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1から知られるこのような装置によって、液体は、卵の卵殻を包囲するようにキャビティに注入され、この後、マイクロ波放射線を提供するためのデバイスがオンにされ、これにより、液体ならびに卵が加熱される。液体は、卵殻と熱交換接触状態にあり、これにより、卵殻周囲の液体層に起因して、マイクロ波放射線による卵の良好な調理プロセスが達成される。
【0004】
卵は、2分未満で調理されることが可能である。特許文献1に記載されている装置は、使用後にホルダから液体を除去するためのドレインへ連結される出口を装備している。
【0005】
調理プロセスの間、全液体は、卵の周りに所望される液体層を保持するようにキャビティ内部に保持される。この既知装置の欠点は、キャビティ内部に圧力増加が生じることにある。この圧力増加に起因して、ホルダは、比較的高い圧力に耐えることができるように、比較的強いものである必要がある。さらに、圧力が増加するこのようなシステムにおいて、例えばシールおよびホース等のコンポーネント(部品)は、比較的重負荷であり、比較的危険であり、かつ比較的要求が厳しく、よって比較的高価である。ホルダは、比較的強い力で閉鎖された状態に保たれる必要がある。これにより、ホルダの手動または電動作動式開閉機構の実現可能性が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2012002814A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明による装置の1つの目的は、キャビティ内の圧力増加を減らしながら、卵の周りに所望される液体層を保持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明による装置によって達成される。本装置は、少なくとも1つの卵の調理プロセスの間にホルダ内の液体量を制御するための手段を備え、
‐第1の液体量は、キャビティ内にマイクロ波放射線を提供する前にキャビティ内へ注入され(加えられ)、前記第1の液体量は、キャビティ内に配置される卵の卵殻を少なくとも部分的に包囲し、
‐第2の液体量は、マイクロ波放射線を提供する間に蒸発されキャビティから出た液体量を補充し、かつキャビティ内に配置される卵の周囲に所望される液体層を保持するために、マイクロ波放射線の提供中にキャビティ内へ徐々に注入される。
【0009】
本発明による装置によると、液体は、キャビティ内の圧力が上昇すると、例えば圧力増加を制限すべくリリーフバルブ(安全弁)を介してキャビティから逃げることができ、または圧力増加が発生しないようにキャビティが周囲に開放連通される。卵の周りに所望される液体量を保持するために、キャビティ内にマイクロ波放射線を提供する間、蒸発してキャビティから放出された液体量を補充すべく第2の液体量がキャビティ内へ徐々に加えられる。
【0010】
US20080145491A1が、卵殻を有する少なくとも1つの卵を調理するための装置を開示している点を、留意しなければならない。しかしながら、この装置は、卵を垂直に位置合わせするためのホルダを構成する角が丸い方形開口を有するキャリアプレートを備えている。このキャリアプレートは、卵の周囲に確実に蒸気が十分に循環するように、ワイヤ構造物(wired structure)から製造されることが可能である。キャリアプレートにおける角の丸い方形開口は、キャビティ内に配置される卵の周りに所望される液体層を保持できるように、キャビティ内に配置される卵の卵殻を少なくとも部分的に包囲すべく液体が充填され得るキャビティを形成しているわけではない。
【0011】
本発明による装置の一実施形態は、第2の液体量が、マイクロ波放射線を提供する第1の所定時間(予め決められた時間)の後に、かつマイクロ波放射線を提供する第2の所定時間の間に、キャビティ内へ徐々に注入されることを特徴とする。
【0012】
第1および第2の所定時間は、実験を基礎とすることも、理論的に決定されることも可能である。さらに、所定時間に基づく液体の追加も、容易に制御が可能である。
【0013】
本発明による装置の別の実施形態は、半熟卵(soft-boiled egg)の調理プロセスに対してマイクロ波放射線を提供する第1の所定時間が、固ゆで卵(hard-boiled egg)の場合よりも短いことを特徴とする。
【0014】
追加の液体量を卵調理プロセスの比較的早い段階で加えれば、半熟卵が出来上がり、一方で、追加の液体量を卵調理プロセスの遅い段階で加えれば、固ゆで卵が出来上がる。この方法では、ユーザは、第1の所定時間を修正することにより、所望されるゆで卵を簡単に作ることができる。
【0015】
本発明による装置の別の実施形態は、半熟卵の調理プロセスに対する第2の液体量が、固ゆで卵の場合よりも多いことを特徴とする。
【0016】
比較的多い第2の液体量を、好ましくはマイクロ波放射線を提供するより長い第2の所定時間中に加えれば、半熟卵が出来上がり、一方で、より少ない第2の液体量を、好ましくはマイクロ波放射線を提供するより短い第2の所定時間中に加えれば、固ゆで卵が出来上がる。この方法では、ユーザは、第2の液体量を修正することにより、所望されるゆで卵を簡単に作ることができる。
【0017】
本発明による装置の別の実施形態は、第2の液体量が、マイクロ波放射線を提供する第2の所定時間中にパルス状に(所定時間おきに)加えられることを特徴とする。
【0018】
この方法では、キャビティ内へ加えられる第2の液体量の量およびタイミングを容易に制御することができる。
【0019】
本発明による装置の別の実施形態は、少なくとも1つの卵の調理プロセスの間に、定出力のマイクロ波放射線が使用されることを特徴とする。
【0020】
マイクロ波放射線を提供するデバイスを定出力で作動することにより、マイクロ波放射線の不規則な変化が生じない。さらに、このようなデバイスは、比較的安価であり、かつ、市場で容易に入手可能であり、2.45GHzで作動するデバイスが使用される場合は特に市場で容易に入手可能である。マイクロ波放射線を提供するための比較的単純なデバイスには、キャビティ内のマイクロ波放射線出力の作動中の修正が、数秒間におけるデバイスのオンオフ切換を意味する、という欠点がある。さらに、オン/オフサイクルは、さほど正確ではなく、よって、デバイスを再起動しなければならない度にキャビティ内にマイクロ波放射線の不規則な変化が生じる。マイクロ波放射線の不規則な変化により、卵は上手に、かつ一様に調理されない。
【0021】
本発明による装置の別の実施形態は、マイクロ波放射線を提供する第1の所定時間とマイクロ波放射線を提供する第2の所定時間との合計が、半熟卵および固ゆで卵の調理プロセスでほぼ同じであることを特徴とする。
【0022】
この方法では、卵の調理プロセスの所要時間が事前に予測可能であり、既知である。単に、より短い第1の所定時間およびより長い第2の所定時間へシフトするだけで、半熟卵が出来上がり、一方で、より長い第1の所定時間およびより短い第2の所定時間へシフトするだけで、固ゆで卵が出来上がる。
【0023】
本発明による装置の別の実施形態は、第1の液体量が30ミリリットルから60ミリリットルまでの間であり、一方で、第2の液体量が60ミリリットルから120ミリリットルまでの間であることを特徴とする。
【0024】
この方法では、キャビティ内部の液体量が比較的少なく、この比較的少ない液体量は、マイクロ波放射線によって容易に温められることが可能であり、同時に、この量の補充も容易に可能である。
【0025】
本発明による装置の別の実施形態は、マイクロ波放射線を提供するための出力1000ワットおよび2.45GHzのデバイスにおいて、第1の所定時間が15秒から40秒までの間であり、マイクロ波放射線を提供する合計時間が90秒から120秒までの間であることを特徴とする。
【0026】
このような出力および周波数により、卵は、2分未満でゆであがることが可能である。
【0027】
本発明による装置の別の実施形態は、液体が、温度0℃〜100℃間、マイクロ波周波数2.45GHzで、20〜500の間の虚数部ε”を有する誘電率の水性液であること、好ましくはNaCl、より好ましくは0.2MのNaClを含有する水、であることを特徴とする
【0028】
このような水性液の使用により、卵の良好な調理プロセスが達成され、これにより、卵黄および卵白の双方が望ましい特性を得ることが発見されている。記述した誘電率を有する水性液の優位点は、WO2012002814A1に記載されている。この文書は、参照により本明細書の開示に含まれる。
【0029】
例えば、所望される水性液を達成するために、液体、例えば水に、塩、好ましくはNaClを加えることができる。本装置は、水道水を用いることができ、これに塩、好ましくはNaClを加えて所望される水性液を作ることができる。水は、あらゆる家庭またはレストランで容易に利用可能であり、NaClのような塩も容易に入手することができる。さらに、水と上述の量のNaClとの組合せは、人に無害である。
【0030】
また、他の種類の液体および成分も可能である。
【0031】
本発明による装置の別の実施形態は、本装置が液体をキャビティ内へ案内する導管を備え、この導管は、少なくとも部分的に限定された空間内に配置され、第2の液体量は、液体がホルダ内へ注入される前にマイクロ波放射線により導管内で予備加熱されることを特徴とする。
【0032】
第2の液体量を予備加熱することにより、キャビティにおける第2の液体量の注入の間にキャビティ内の液体の温度が下がらない、またはほとんど下がらないことが実現可能である。第2の液体量をマイクロ波放射線によって予備加熱することにより、第2の液体量をキャビティへ入れるのに望ましい温度まで予備加熱するための追加的な手段は不要である。
【0033】
本発明による装置の別の実施形態は、限定された空間内に配置される導管の一部が、40センチメートルから80センチメートルまでの間の長さであることを特徴とする。
【0034】
このような長さは、導管内の液体を、前記部分に進入する際の、例えば20℃から、前記部分を出る際の、キャビティ内に既に存在している液体とほぼ同じ温度にまで温めるに足るものである。
【0035】
本発明による装置の別の実施形態は、ホルダと卵の殻との間の液体の平均層厚さが2ミリメートルから8ミリメートルまでの間であることを特徴とする。
【0036】
このような平均層厚さにより、卵の調理に必要な液体量が制限され、一方で、この層厚さは、卵の良好な調理プロセスを提供するに足るものである。卵は、好ましくは、ホルダ内部のスペーサによってキャビティ内に支持され、かつ好ましくは、ばねによって前記スペーサに押し当てられることから、卵とホルダとの間には、幾分かの直接的接触が存在する。しかしながら、このような接触は限定的であって、調理プロセスの開始時には、卵殻のほぼ全体が液体で包囲される。
【0037】
本発明による装置の別の実施形態は、ホルダ内へ液体を注入する手段が少なくとも2つのポンプを備え、第1のポンプが第1の導管によって液体入口に接続され、一方で第2のポンプが第2の導管によって液体出口に接続されることを特徴とする。
【0038】
2つのポンプ、即ち液体入口を介して液体をキャビティ内へポンピング(供給)するためのポンプ、および液体出口を介して液体をキャビティからポンピング(排出)するためのポンプ、を有することにより、これらのポンプのオン、オフを切換えれば各ポンプを介する液体移送が制御されることから、両ポンプとキャビティとの間のバルブは不要である。
【0039】
本発明による装置の別の実施形態は、第2のホルダ部が、調理プロセスの間にキャビティ内に形成される液体の少なくとも1つの気相のための開放出口を備えることを特徴とする。
【0040】
卵および卵の殻を包囲する液体を加熱すると、液体は、気相に変わり、このガスまたは蒸気は、開放出口から逃げることができるため、キャビティ内の圧力増加を防止する。キャビティ内に大きな圧力増加が生じないことから、第1および第2のホルダ部に加わる力は比較的小さく、よって比較的軽い装置を作ることができる。
【0041】
本発明は、卵殻を有する少なくとも1つの卵を上述のような装置によって調理するための方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1a-1b】ハウジング部の開放位置における、本発明による装置の第1の実施形態を示す正面斜視図および背面斜視図である。
【
図2-4】
図1a−
図1cに示されているような装置の一部の斜視図を示す。
【
図5】
図4に示されているような部分の平面図を示す。
【
図6a-6b】ハウジング部の閉鎖位置における、
図1a−
図1bに示されているような装置の正面斜視図および背面斜視図を示す。
【
図7】
図6a−
図6cに示されているような装置の一部の斜視図を示す。
【
図8a-8b】ハウジング部の開放位置における、本発明による装置の第2の実施形態を示す正面斜視図および背面斜視図である。
【
図9】ハウジング部の閉鎖位置における、
図8a−
図8bに示されているような装置の正面および背面斜視図を示す。
【
図10a-10b】ハウジング部の開放位置における、本発明による装置の第3の実施形態を示す正面斜視図および背面斜視図である。
【
図11】ハウジング部の閉鎖位置における、
図10aおよび
図10bに示されているような装置の正面および背面斜視図を示す。
【
図12a-12b】ハウジング部の開放位置における、本発明による装置の第4の実施形態を示す正面斜視図および背面斜視図である。
【
図13】ハウジング部の閉鎖位置における、
図12aおよび
図12bに示されているような装置の正面および背面斜視図を示す。
【
図15】マイクロ波放射の時間とキャビティへ加えられる液体量との関係を開示するダイアグラムを示す。
【0043】
諸図を通じて、類似の参照数字は、類似のエレメント(要素)を指す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1a〜
図7は、本発明による装置1の第1の実施形態およびその特有の部分を示す様々な図である。装置1からは、関連コンポーネントのみが示され、カバーおよび装置内にエレメントを取り付けるための取付け構造体のような他のコンポーネントは、明確さを理由に省略されている。
【0045】
装置1は、2つの容器3および4が配置されるベース2を備える。容器3および4の上には、容器5が配置され、この容器は、投与ユニット6を装備している。投与ユニット6は、容器3の開口7の上に配置される。装置1は、さらに、第1のホルダ部9を有する第1のハウジング部8、および第2のホルダ部11を有する第2のハウジング部10を備える。第2のハウジング部10は、装置内でベース2に接続され、ベース2に固定された関係を有する。第1のハウジング部8は、第2のハウジング部10に対して、
図1a〜
図1cに示されているような第1の開放位置と
図6a〜
図6cに示されているような第2の閉鎖位置との間で移動可能である。第1のハウジング部8は、第2のハウジング部10に対して、第1および第2のハウジング部8、10の各側面に配置される手動操作式歯車機構12によって移動可能である。各歯車機構12は、曲がったロッド13を備え、曲がったロッド13は、ベース2および容器3、4の方向へ向いた側面に歯14を装備している。曲がったロッド13は、第1のハウジング部8の2つの反対側面で接続される。各歯車機構12は、さらに、旋回軸17を中心にして旋回可能な第1の歯車16と、歯車16より小さい直径を有する第2の歯車18とを備え、この第2の歯車18は、歯車16へ接続されかつ歯車16と同時に旋回軸17を中心にして回転可能である。旋回軸17は、装置1において固定位置を有する。第1の歯車16は、ロッド13の歯14と協働する。第2の歯車18は、ディスク20上の歯19と協働し、このディスク20は、旋回軸21を中心にして旋回可能である。旋回軸21は、装置1において固定位置を有する。ディスク20は、歯19から遠位の側でU字形のハンドル(取っ手)22に接続される。ハンドル22は、第2のハウジング部10の両側に配置されかつディスク20へ接続される2つの脚23を備え、これらの脚23は、ディスク20から遠位の側でブリッジ形状部24によって互いに接続される。ハンドル22を旋回軸21を中心にして矢印P1が示す方向へ旋回させることにより、ディスク20上の歯19は、第2の歯車18と協働して、歯車18を矢印P2が示すように時計方向へ回転させる。第2の歯車18は、第1の歯車16へ接続されていることから、第1の歯車16も時計方向へ回転される。歯車16の歯がロッド13上の歯14と協働するにつれて、歯車16の回転がロッド13の歯車16に沿った動作を引き起こし、これにより、ロッド13の曲がった形状に起因して、第1のハウジング部8が、まず、主として水平方向に容器3、4へ向かって移動される。この後、第1のハウジング部8は、容器3、4へ向かって、および第2のハウジング部10へと同時に移動され、これにより、第1のハウジング部8の最終移動段階において、第1のハウジング部8は、
図6a〜
図6cに示されているように、第2のハウジング部10へ向かって第2の閉鎖位置へと垂直に移動される。全動作の間、ハウジング部8、10は共に、水平のままである。特に、第1のハウジング部8の水平の開放位置が容器3、4から離れて前方向へ移動されることにより、卵の配置および取出しが容易になり、かつ第1のハウジング部からの卵の落下が容易に防止される。
【0046】
図1c、
図3〜
図5、
図6cおよび
図7から分かるように、第1のハウジング部8は、方形底壁30と、底壁30に対して垂直に延びる4つの側壁31とを備える。底壁30の上には、底壁30の真ん中近くで、垂直に延びる管33内に開口する螺旋状の導管32が配置される。導管32の端34は、
図14および
図16を参照して説明するように、容器3、4と接続されている。第1のハウジング部8は、さらに、第1のホルダ部9を装備していて、このホルダ部9は、半分の卵の形状を有し、かつ第1のホルダ部9の壁36から延びるスペーサ35を装備する。第1のホルダ部9は、その最下部に管37を装備し、これが、第1のハウジング部8内の管33に嵌まる。管37は、その外側に、管33と管37との間に水密密封を提供するためのシールリング38を装備している。管37は、壁36に近い側に、幾つかの開口39を備えるグリッド(格子)を装備している。第1のホルダ部9に配置される卵40が割れた場合でも、グリッドが、卵殻および卵の一部が管37、33内へ、かつ導管32内へ進入することを防止する。
図1cから分かるように、スペーサ35は、卵40の殻を第1のホルダ部9の壁36から所定距離(予め決められた距離)に保つ。第1のホルダ部9の壁36は、第2のハウジング部10へと配向される側に、円錐部41を装備している。
【0047】
第2のハウジング部10は、方形の上壁45、および方形上壁45から下へ延びる4つの側壁46を装備する。壁45、46の内部には、マイクロ波放射線を提供するためのデバイス47が配置される。このようなデバイスは、技術上周知であり、よってさらなる説明を省く。
【0048】
デバイス47の下には、内部に第2のホルダ部11が取り付けられる方形チャンバ48が配置される。第2のホルダ部11は、半分の卵の形状を有する内壁49を装備している。第2のホルダ部11の壁49は、第1のホルダ部9の壁36と共に、卵形の形状を有するキャビティ50を画定し、比較的(相対的に)狭い第1の長手方向の端は、第1のホルダ部9の底近くに配置され、一方で、比較的(相対的に)広い第2の長手方向の端は、壁49の頂部近くに配置される。壁49の頂部近くには、ばね51が設けられ、このばね51は、ハウジング部8、10が各々の第1の閉鎖位置にあるとき(
図6、
図7参照)、卵40の第2の端に当たり、よって卵40がスペーサ35へ押されて卵40がキャビティ50内で固定位置に保持される。
【0049】
第2のホルダ部11は、円錐部52を装備し、円錐部52は、第1のホルダ部9の円錐部41と協働して、第1のハウジング部8の第2のハウジング部10に対する正しいポジショニングを促進する。第2のホルダ部11は、さらに、
図6cに示されているように閉鎖位置で第1のホルダ部9に当たりかつ第1のホルダ部9と第2のホルダ部11との間に水密密封を提供するリング形シール53を装備している。第2のホルダ部11は、その頂部近くで導管54に接続され、この導管54は、
図14および
図16を参照してさらに説明するように、容器4と流体連通されている。
図6a〜
図6cに示されているような閉鎖位置では、限定された空間154内でデバイス47によりマイクロ波放射線を発生することができ、この空間154は、第2のハウジング部10のチャンバ48および第1のハウジング部8の壁30、31によって画定される(境界をつけられる)。第1のホルダ部9および第2のホルダ部11は、マイクロ波放射線を透過する材料から製造され、よって、マイクロ波放射線は、内部に卵40が設置されるキャビティ50にも到達する。このような材料は、例えば先に述べた初期の特許出願WO2012002814A1に記載されているように、技術上周知である。装置1の動作を説明する前に、その主たる動作原理が同じであることから、本発明による装置の他の実施形態について述べる。
【0050】
図8a〜
図9は、本発明による装置101の第2の実施形態を開示していて、本装置101は、歯車18がハンドル24の手動による旋回ではなく電気モータ102によって駆動される点が装置1とは異なる。
【0051】
図10a〜
図11は、本発明による装置の第3の実施形態201を開示していて、本装置201は、第1のハウジング部8が第2のハウジング部10に対してのみ旋回可能である点が装置1、101とは異なる。第1のハウジング部8は、容器3、4に近い側に2つのL字形ブラケット202を装備していて、このL字形ブラケット202は、旋回軸203を中心としてベース2に対して旋回可能である。旋回軸203は、装置201において固定位置を有する。第1のハウジング部8は、容器3、4から遠位の側にハンドル204を装備している。ハンドル204によって、ユーザは、第1のハウジング部8を、
図10a〜
図10bに示されているような開放位置から
図11に示されているような閉鎖位置へ、かつ逆もまた同様に手動で移動させることができる。ハンドル204内には、ハウジング部8、10の閉鎖位置においてハンドル204を第2のハウジング部10へロックするためのロック機構が設けられている。このようなロックには、周知のロック機構を用いることができる。装置201のベース2は、傾斜面205を装備し、第1のハウジング部8は、その開放位置において傾斜面205の上に載る。
【0052】
第1のハウジング部8を閉鎖位置から開放位置へ滑らかに移動させるため、および第1のハウジング部8が単に傾斜面205上へ落下することを防止するために、装置201は、制動機構206を装備している。
【0053】
制動機構206は、各L字形ブラケット202上に、歯208を装備したディスク207を備える。歯208は、歯車209と協働し、歯車209は、装置201内に固定位置を有する軸を中心にして回転可能である。歯車209は、歯208を矢印P3が示すような方向またはその反対方向へ比較的ゆっくりと移動させることによってのみ、第1のハウジング部8を第2のハウジング部10に対して移動させることができるように、比較的速い回転が防止されている。
【0054】
図12a〜
図13は、歯車209がここではモータ302によって電気的に駆動される点が装置201と相違する、本発明による装置の第4の実施形態301を開示しており、前記モータは、装置301内に固定位置を有する。歯車209は、電気モータ302を作動することによって駆動される。歯車209は、ディスク207の歯208と協働することから、ディスク207およびL字形ブラケット202ならびに第1のハウジング部8は、矢印P3が示す方向に移動されて、第1のハウジング部8が、
図12a〜
図12bに示されているような開放位置から
図13に示されているような閉鎖位置へ移動する。歯車209を反対方向へ回転させると、第1のハウジング部8は、閉鎖位置から開放位置へ矢印P3とは反対方向に移動される。
【0055】
図14および
図16は、装置1、101、201、301を示すさらなる概略図である。
【0056】
図から分かるように、第1の容器3は、導管401を介して第1のペリスタルティックポンプ(蠕動ポンプ)402に接続される。ペリスタルティックポンプ402の出口は、導管403を介して、第1のハウジング部8内の螺旋導管32の端34へ接続される。装置1、101、201、301は、さらに、第2のペリスタルティックポンプ404を装備していて、これは、導管405によって螺旋導管32の端34へ接続され、かつポンプ404の別の側で導管406により容器4へ接続される。第2のホルダ部11内のキャビティ50へ接続される導管54は、キャビティ50から遠位の端で容器4内へ開口する。容器3、4は共に、上部が開き、よって、容器3、4内には、大気圧が存在する。
【0057】
第1の容器3は、その下部にバッファユニット(緩衝ユニット)407を装備している。バッファユニット407は、液体を第1のハウジング部8へ入る前に予備加熱するために、導管408によって熱交換器、例えばペルチェ熱交換器(Peltier heat exchanger)409、に接続される。バッファ407には、液体が所望される温度であるかどうかをチェックするために温度センサが存在してもよい。
【0058】
ペリスタルティックポンプ402、404、空間154内にマイクロ波放射線を提供するためのデバイス47、ペルチェ熱交換器、投与ユニット6および例えば容器3、4内の液位(液面)をチェックするためのセンサは、全て、コンピュータ410によって制御される。
【0059】
図14は、キャビティ50の充填スキーム、および卵40の調理プロセスの間の工程を開示している。
【0060】
装置1、101、201、301は、下記のように動作する。
【0061】
キャビティ50内に卵40を置き、第1のハウジング部8および第2のハウジング部10を閉じた後、バッファユニット407内の液体を、例えば摂氏20度である所定温度(予め決められた温度)まで加熱する。
【0062】
液体が所望される温度に到達した後、液体は、第1のポンプ402により、導管401および導管403を介して矢印P4が示す方向に送られ、螺旋導管32内へ、かつキャビティ50内へ入る。卵40は、スペーサ35およびばね51と接触している場所を除いて、液体でほぼ完全に包囲される。ばね51に近い卵40の小部分は、液体で完全にはカバーされない可能性もある。液体は、0℃〜100℃間の温度および2.45GHzのマイクロ波周波数で20〜500の間の虚数部ε”を有する誘電率の液体にするために、NaClが添加された水、例えば好ましくは0.2MのNaCl(水1リットル当たり約12グラム)が添加された水であることが可能である。
【0063】
約60〜65グラムで長さ約56〜60ミリメートルの卵の場合、卵40の殻と第1のホルダ部9および第2のホルダ部11の壁36、49との間の空間を満たすに足る液体量は、約45ミリリットルであり、これにより、卵殻の周りに平均厚さ2〜8ミリメートルを有する液体層が達成される。
【0064】
キャビティ50がまず所望される液体量で充填された後、一般的な2.45GHzで作動するデバイス47が例えば1000ワットの定出力でオンにされ、これにより、空間154内で、キャビティ50内の液体および卵40を加熱するためのマイクロ波放射線を発生させる。液体が沸騰し始めるとすぐに、発生する蒸気は、導管54を介して逃げることができ、矢印P5が示す方向へ流れて容器4に入る。液体の蒸発によって卵40が液体で包囲されなくなることを防止するために、追加の液体がキャビティ50へ加えられる。この液体は、温度約20度で、第1のポンプ402を所定時間に渡って起動することによる小さなパルスで第1のハウジング部8へ入る。導管32は、キャビティ50の内部に配置されることから、導管32内に存在する液体もマイクロ波放射線によって加熱される。液体がキャビティ50に入るときに、キャビティ50内に既に存在する液体とほぼ同じ温度になるよう、導管32は、端34で導管32内の液体を20℃から温めるに足る長さである、例えば40〜80センチメートルの長さを有していてもよい。他の長さもまた、可能である。
【0065】
図15から分かるように、第1の液体量V1は、マイクロ波放射の始動前に加えられる。例えば25秒である時間T11の後、キャビティ50に例えば5ミリリットルである少量V2が加えられ、次いでこの量V2が3.5秒毎に加えられる。ダイアグラムでは、パルスが線501で示されている。このダイアグラムには、線502によって、キャビティ50に加えられる平均液体量も示されている。マイクロ波放射線による調理プロセスの間、デバイス47の出力は、1000ワットで一定に保たれる。デバイスを定出力で作動させることにより、マイクロ波放射線に不規則な変化が生じない。ダイアグラムから分かるように、95秒の後、マイクロ波放射線は停止される。
図15に示されているように、当初の第1の液量45ミリリットル以降、ほぼ100ミリリットルがキャビティ50に加えられている。このような比較的短い時間T11の後に、このような比較的多い第2の液体量の追加を開始することにより、半熟卵が作られる。
【0066】
キャビティ50における追加的な液体の注入を、マイクロ波放射の開始からさらに長い時間期間T12の後、例えば32秒後に開始し、かつ同じ液量V2を同じ3.5秒間隔で加えることにより、半ゆで卵(middle-boiled egg;半熟卵より固く、固ゆで卵よりも柔らかいゆで卵)が出来上がる。線503、線504は、各々、追加される液体のパルスおよび平均量を示す。半ゆで卵の場合にキャビティ50へ加えられる第2の液体量の総量は、半熟卵の場合より少ない。
【0067】
追加的な液体の注入を、さらに遅く、例えばさらに長い時間期間T13の後、例えば39秒後に同量V2を、および同じ間隔で開始すれば、固ゆで卵が出来上がる。線505、線506は、各々、追加される液体のパルスおよび平均量を示す。固ゆで卵の場合にキャビティ50へ加えられる第2の液体量の総量は、半熟卵および半ゆで卵の場合より少ない。
【0068】
マイクロ波放射線がオフに切換えられた後、第2のポンプ404がオンにされ、ポンプ404によってキャビティ50内の液体は、矢印P6が示す方向へ、導管32を介して導管405内に、ポンプ404を介して導管406に流れ、容器4へ至って廃棄される。導管32ならびに管33および管37は、キャビティ50への液体入口およびキャビティ50からの液体出口の双方として使用される。
【0069】
また、マイクロ波放射線を、その出力が変わるように、例えば調理プロセスの間は低下されるように用いることも可能である。このような場合、マイクロ波放射の間に加えられる液体量は、
図15に示されている量とは異なる。また、量V2の液体をパルス式に加える代わりに、上述より少ない、またはより多い量の液体を、より長い、またはより短い間隔で加えることも可能である。
【0070】
また、液体を一定速度で加えること、または加える液体量を時間的に変えることも可能である。また、より小さいステップサイズを選ぶこともでき、よって、流れは、パルス幅変調によって正確に制御され、その結果、同量の液体ポンピングによる同じ卵調製プログラムが生じる。
【0071】
また、異なるサイズの卵のための異なるホルダを有することも可能である。
【0072】
また、水中に他の量のNaClを有すること、例えば、水1リットル当たり10グラムから14グラムの間のNaClを有することも可能である。
【0073】
また、ハウジングへ入る前に、液体を別の温度、例えば摂氏約30〜35度に予備加熱することも可能である。
【0074】
また、第2の液体量の追加を、例えばキャビティ内の温度または蒸発してキャビティから出た液体量を基にして開始することも可能である。
【0075】
当業者には、本発明が決して好適な実施形態に限定されるものではないことが認識されるであろう。図面、開示内容および添付の特許請求の範囲を考察すれば、クレームされた発明の実施において、当業者は、開示されている実施形態に対する他の変形を理解しかつ実行することができる。
【0076】
特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」「an」は、複数を排除するものではない。所定の手段が互いに異なる従属クレームに記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示すものではない。包含される参照符号は何れも、クレームの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0077】
1 装置
2 ベース
3 容器
4 容器
5 容器
6 投与ユニット
7 開口
8 第1のハウジング部
9 第1のホルダ部
10 第2のハウジング部
11 第2のホルダ部
12 歯車機構
13 ロッド
14 歯
16 歯車
17 旋回軸
18 歯車
19 歯
20 ディスク
21 旋回軸
22 ハンドル
23 脚
24 ブリッジ形状部
30 底壁
31 側壁
32 導管
33 管
34 端
35 スペーサ
36 壁
37 管
38 シールリング
39 開口
40 卵
41 円錐部
45 上壁
46 側壁
47 デバイス
48 チャンバ
49 壁
50 キャビティ
51 ばね
52 円錐部
53 シール
54 導管
101 装置
154 空間
201 装置
202 ブラケット
203 旋回軸
204 ハンドル
205 面
206 制動機構
207 ディスク
208 歯
209 歯車
301 装置
302 モータ
401 導管
402 ペリスタルティックポンプ
403 導管
404 ペリスタルティックポンプ
405 導管
406 導管
407 バッファ
409 熱交換器
410 コンピュータ
501 線
502 線
503 線
504 線
505 線
506 線
P3 矢印
P4 矢印
P6 矢印
V1 液体量
V2 液体量
T11 時間
T12 時間
T13 時間