特許第6462860号(P6462860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462860ポリエチレンイミンを含むジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462860
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ポリエチレンイミンを含むジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20190121BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20190121BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L79/02
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08K5/31
   C08K5/54
   C08K5/548
   B60C1/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-511277(P2017-511277)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公表番号】特表2017-525820(P2017-525820A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015069671
(87)【国際公開番号】WO2016030469
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】14182915.0
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・フェルトヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・ウンターベルク
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ハーゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン−ヨーゼフ・ヴァイデンハウプト
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・ヴィーデマイヤー−ヤラト
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−133378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
C08K 3/04
C08K 3/36
C08K 5/31
C08K 5/54
C08K 5/548
C08L 79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
− ゴム、および
− シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラックを含むゴム混合物のための、ポリエチレンイミンを含む加硫促進剤であって、
ゴム混合物中に含まれるジフェニルグアニジンと置換ジフェニルグアニジンの含量の合計が、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、極めて特に好ましくは0.1phr未満、最も好ましくは0.01phr未満であり、
前記ゴム混合物中に含まれるポリエチレンイミンの含量が、0.01〜10phrとなる量で用いられる、加硫促進剤。
【請求項2】
前記ゴム混合物中に含まれるジフェニルグアニジンと他の有機グアニジン誘導体の含量の合計が、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、極めて特に好ましくは0.1phr未満、最も好ましくは0.01phr未満であることを特徴とする、請求項1に記載の加硫促進剤。
【請求項3】
前記ポリエチレンイミンが、それぞれの場合にポリマーの全質量を基準にして、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の、エチレンイミン−モノマー由来の繰り返し単位の比率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の加硫促進剤。
【請求項4】
前記ゴム混合物が、NR、SBR、BR、IR、IIR、ENR、およびEPDM、好ましくはNR、SBR、BR、IIR、およびEPDM、特に好ましくはNR、BR、およびSBRからなる群から選択される少なくとも1種のゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤。
【請求項5】
前記ゴム混合物が、少なくとも1種の架橋剤、好ましくは少なくとも1種のペルオキシド系または硫黄ベースの架橋剤、特に好ましくは、硫黄、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、およびテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD、CAS No.:10591−85−2)を含む群からの少なくとも1種の架橋剤、特にTBzTDを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤。
【請求項6】
前記ゴム混合物が、少なくとも1種のシリカベースの充填剤、好ましくは5〜1000m/g、特に好ましくは20〜400m/gのBET比表面積を有するシリカを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤。
【請求項7】
前記ゴム混合物が、50〜100phrのヒドロキシル含有酸化物系充填剤と、0.2〜12phrの有機シラン、好ましくは硫黄含有有機シラン、特に好ましくはアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シラン、極めて特に好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランとを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤。
【請求項8】
前記ポリエチレンイミンが、担体、好ましくは天然および合成シリケート、特に天然の酸性または塩基性のシリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、およびそれらの混合物を含む群から選択される担体上に吸収および/または吸着されて使用されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤。
【請求項9】
前記ゴム混合物が、酸または塩として、0.1〜15phrの1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンおよび/またはヘキサメチレン−1,6−ビス(チオサルフェート)、好ましくは0.1〜2phrの1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、最も好ましくは0.2〜1phrのビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤を用いることによりゴム混合物を製造する方法であって、それぞれの場合に少なくともゴムと、シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラックと、前記加硫促進剤とが、好ましくは少なくとも30℃、好ましくは40〜200℃、特に好ましくは80〜150℃の温度で互いに混合されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤を用いることによりゴム加硫物を製造する方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に規定のゴム混合物が、好ましくは100〜250℃、特に好ましくは130〜180℃の温度で加硫されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載の加硫促進剤を用いてゴム混合物を加硫することによって得ることが可能な加硫物。
【請求項13】
請求項1に記載の1種または複数のゴム加硫物を含むゴム製品、好ましくは工業用ゴム物品およびタイヤ。
【請求項14】
請求項1に記載のゴム製品を含む車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが少なくともゴムと、シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラックと、ポリエチレンイミンとを含む、実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物、その製造および使用、ならびにまた、特にタイヤ、タイヤの部材、または工業用ゴム物品の形態である、加硫プロセスによって得ることが可能な加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムの加硫の発明によって新規な材料が得られるようになり、そのユニークな性能プロファイルが、近代技術の発展に大いに貢献してきた。20世紀の初頭には、塩基性の有機化合物の促進効果が発見された。
【0003】
(特許文献1)は、天然ゴムおよび合成的に製造されたゴムにおける加硫を促進させるためにピペリジンが使用されたことを開示している。ピペリジンは毒性があり、揮発性が高く、不快臭を有するため、ゴム加工産業では、当初からピペリジンに対する塩基性の代替物を追求し、かつ使用してきた。
【0004】
他の特許公報は、促進剤として、たとえば、アニリン、ならびにたとえばヘキサメチレンテトラミンおよびチオカルバニリドなどの他の窒素含有有機化合物を記載している。
【0005】
硫黄加硫促進剤系を用いてゴムを架橋させると、一般的には、各種の加硫促進剤およびそれらの組合せを使用することにより、たとえば誘導期間(スコーチ時間、これは理想的には短すぎないようにするべきである)の調節および反応速度(これは、完全加硫時間が短くなるように、高いのが好ましい)の調節など、加工性および製品の性質を広い範囲で変化させることが可能となるという利点が得られる。誘導時間および加硫時間を調節する目的で、ゴム混合物にいわゆる二次促進剤を添加することができる。
【0006】
グアニジン加硫促進剤は、最もよく知られた二次加硫促進剤に含まれる。それらは、遅効性の加硫促進剤であり、初期の(スコーチ)および/または完全加硫時間に適合させるように使用することができる。それらはさらに、酸性の充填剤の抑制効果を打ち消す。
【0007】
グアニジン加硫促進剤を含むゴム混合物の加硫の進行の指標である弾性率曲線は、典型的には、立ち上がりが遅く、最大値に達するのが比較的遅いことを特徴としている。これらの加硫促進剤を単独で使用すると、通常、比較的好ましくない流動時間/加熱時間比となり、そのゴム加硫物においてかなり激しい加硫戻りが起きるようになる。これらの欠点を回避する目的で、それらは、一次加硫促進剤、たとえばスルフェンアミドベースの加硫促進剤と組み合わせて使用されることが多い。
【0008】
しかしながら、グアニジン加硫促進剤、特にジフェニルグアニジンは、単に加硫挙動を調節するだけでなく、それと同時に、ゴム混合物の各種の重要な材料物性、特にムーニー粘度と、それらから得られる加硫物の材料物性、たとえば破断時伸び、引張強度および300弾性率とを改良する。
【0009】
ゴム混合物のムーニー粘度の低下は、充填されたゴム混合物、特にシリカベースの充填剤および/またはカーボンブラックを含みかつたとえばタイヤで使用されるものにおいて特に重要である。そのようなゴム混合物は、典型的には、高いムーニー粘度を有し、それが加工の大きい妨げになっている。
【0010】
グアニジン加硫促進剤は、加硫条件下では比較的揮発性の高い有機アミン化合物を放出し、たとえば実務上最も広く使用されているジフェニルグアニジン(DPG)は、加硫時にアニリンを脱離することが当業者には公知である。それらの有機アミン、特にアニリンの排出を回避するには、新規な二次加硫促進剤が必要となる。
【0011】
極めて多数の特許および特許出願が、DPGを削減した各種の混合物を記載している。
【0012】
したがって、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)は、特定のアミンまたはチウラムジスルフィドを用いて、ゴム混合物中のDPGを完全または部分的に置き換えることを提案している。
【0013】
(特許文献6)は、0.65phrのDPGおよび2phrのポリオール、たとえばTMPを含むゴム混合物を記載している。
【0014】
(特許文献7)は、0.45phr未満のDPGおよび0.4phrのアミノエーテルアルコール(たとえば、2−(2−アミノエトキシ)エタノール)を含む混合物を記載している。
【0015】
(特許文献8)は、0.5phr未満のDPGと、0.45phr未満のエーテルアミン、たとえば3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンとを含む混合物を記載している。
【0016】
(特許文献9)は、0.5phr未満のDPGと、約3.0phrのアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物とを含む混合物を記載している。
【0017】
(特許文献10)は、0.5phr未満のDPGと、8phr未満の一級アミン、たとえばヘキサデシルアミンとを含む混合物を記載している。
【0018】
しかしながら、上述の従来技術は、スコーチ時間がDPGを使用した場合と比較して変化しないか、または長くなることを説明しているのみであり、DPGの比率を下げた結果としてゴム混合物のムーニー粘度がどの程度高くなると予想されるか、およびそれから得られる加硫物の材料物性、たとえば破断時伸び、引張強度および300弾性率の低下をどのように補償できるかについて、当業者に何らの示唆も与えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許第265221号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0048775号明細書
【特許文献3】米国特許第7605201号明細書
【特許文献4】米国特許第6753374号明細書
【特許文献5】米国特許第7714050号明細書
【特許文献6】国際公開第2013/104492号パンフレット
【特許文献7】仏国特許第2984898号明細書
【特許文献8】仏国特許第2984897号明細書
【特許文献9】仏国特許第2984895号明細書
【特許文献10】仏国特許第2984896号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明がその目的としているのは、毒性の問題が小さく、加硫時に揮発性の有機アミンの放出がないゴム混合物であって、用途に関係する性質、すなわち、ゴム混合物のムーニー粘度、さらにはそれから得られる加硫物の破断時伸び、引張強度、300弾性率、および加硫時間(T95)が、それに相当するジフェニルグアニジン含有混合物および加硫物よりも実質的に悪化しないか、理想的には改善される、ゴム混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
驚くべきことに、ポリエチレンイミンをそれぞれの場合に少なくともゴムならびにシリカベースの充填剤および/またはカーボンブラックと共に使用することによって、DPGを含有する均等物と比較してより低いムーニー粘度およびより短い完全加硫時間(t95)を示し、それから得られる加硫物が、DPG含有加硫物と比較して、同等のまたは改良された300弾性率、引張強度および破断時伸びの値を示す、実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物を得ることが可能となることが今や見出された。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に関連して、「実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物」という用語は、0.4phr以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1未満、極めて特に好ましくは0.01phr未満のジフェニルグアニジンを含むゴム混合物を意味しているものと理解されたい。好ましい実施形態において、ゴム混合物は、ジフェニルグアニジンおよび置換ジフェニルグアニジンの全含量として、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、より好ましくは0.1phr未満、極めて特に好ましくは0.01phr未満のジフェニルグアニジンを有する。より好ましい実施形態において、ゴム混合物は、ジフェニルグアニジン、置換ジフェニルグアニジン、および他の有機グアニジン誘導体(すなわち、グアニジン官能基が1個または複数のC〜C−アルキル基、C〜C−アルケニル基、C〜C−アリール基、C〜C10−アラルキル基および/またはC〜C−ヘテロアルキル基で置換された化合物)の全含量として、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、より好ましくは0.1phr未満、極めて特に好ましくは0.01phr未満のジフェニルグアニジンを有する。phrという単位は、ゴム混合物中で使用されているゴム100重量部を基準にした重量部を表している。
【0023】
したがって、本発明は、それぞれが少なくとも
− ゴム、
− シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、
− ポリエチレンイミン
を含む、実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物に関する。
【0024】
本発明はさらに、それぞれの場合に少なくとも
− ゴム、
− シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、
− ポリエチレンイミン
を少なくとも30℃、好ましくは40〜200℃、特に好ましくは80〜150℃のバッチ温度で混合することを含む、実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物を製造するための方法も提供する。その方法は、典型的には、1〜1000sec−1、好ましくは1〜100sec−1の剪断速度で実施する。ポリエチレンイミンの添加は、より高い35℃〜200℃の範囲の温度、好ましくは約40℃の温度で、混合のいかなる時点で実施してもよい。
【0025】
次いで、実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物を、少なくとも1種の架橋剤の添加後に慣用される方式で加硫させてよい。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明によるゴム混合物は、ジフェニルグアニジンも他の有機グアニジン誘導体も含まない。
【0027】
本発明によるゴム混合物は、有利には、亜鉛フリーおよび亜鉛含有の両方のゴム加硫物を製造するために用いることができる。
【0028】
本発明に関連して、「ポリエチレンイミン(PEI)」という用語は、エチレンイミンのホモポリマー/エチレンイミンと1種または複数のコモノマーとのコポリマーを意味していると理解されたい。ここで、コポリマー中では、エチレンイミン由来の繰り返し単位が、それぞれの場合にポリマーの全質量を基準にして、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、極めて特に好ましくは少なくとも98重量%である。「ポリエチレンイミン」という用語にはさらに、たとえば各種の分子量、分岐度、コモノマーなどを有するエチレンイミンのホモポリマーおよび/またはコポリマーの混合物も包含される。
【0029】
そのようなホモポリマーまたはコポリマーは、典型的には200超、好ましくは300〜3,000,000、特に好ましくは400〜800,000、極めて特に好ましくは500〜100,000、より好ましくは600〜30,000、最も好ましくは700〜7000の重量平均分子量を有する。
【0030】
本発明におけるポリエチレンイミンは、直鎖状または分岐状の構造を有することができ、直鎖状のポリエチレンイミンと分岐状のポリエチレンイミンとの混合物も使用することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、一級のみならず、二級および三級のアミノ基を有する分岐状の構造を有するポリエチレンイミンが用いられる。
【0032】
本発明において用いることが可能なエチレンジアミン−エチレンイミンのコポリマー/ポリエチレンイミンのホモポリマーは、たとえばCAS番号25987−06−8および9002−98−6を有するものである。
【0033】
本発明によるゴム混合物は、0.01〜10phr、好ましくは0.03〜3phr、特に好ましくは0.1〜1phr、より好ましくは0.2〜0.6phr、極めて特に好ましくは0.2〜0.5phrのポリエチレンイミンを含んでいるのが好ましい。
【0034】
本発明によるゴム混合物および本発明によるゴム加硫物は、好ましくはさらなる公知のゴム添加剤、たとえば1,3−ビス((3−メチル−2,5−ジオキソピロール−1−イル)メチル)ベンゼン(CAS No.:119462−56−5)、ヘキサメチレン1,6−ビス(チオサルフェート)、特にその二ナトリウム塩二水和物(CAS No.:5719−73−3)、および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)をさらに含んでいてもよい。上述の加硫戻り防止剤は、個別に使用することが可能であり、または互いに任意の所望の混合物として使用することが可能である。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、ゴム混合物は、0.1〜15phr、好ましくは0.1〜2phr、特に好ましくは0.2〜1.0phrの、加硫戻り防止剤である1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含んでいてもよい。
【0036】
さらに好ましい実施形態において、ゴム混合物は、0.1〜40phr、好ましくは1〜12phrのグリセロールのC〜C−アルキルエステル、特にトリアセチンを含んでいてもよい。
【0037】
本発明によるゴム混合物において、ポリエチレンイミンの添加は、硫黄および加硫促進剤と共に、たとえば35〜200℃のバッチ温度で実施するのが好ましい。ポリエチレンイミンを、硫黄および加硫促進剤の前または後に分けてゴムに添加してもよい。
【0038】
さらなる実施形態において、ポリエチレンイミンは、第一の混合段階でシランおよびシリカと共に、たとえば100〜250℃のバッチ温度でゴムに添加されてもよい。
【0039】
本発明によるゴム混合物におけるさらなる実施形態では、ポリエチレンイミンの添加および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)の添加は、好ましくは混合プロセスの第一部で、たとえば100〜250℃のバッチ温度で実施することができるが、その後でより低い温度(40〜100℃)において、たとえば硫黄および/または加硫促進剤と共に実施することも可能である。
【0040】
ポリエチレンイミンおよび/または1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)は、純粋な形態か、またはそうでなければ不活性の有機または無機の担体、好ましくは天然および合成ケイ酸塩を含む群から選択される担体、特に中性、酸性もしくは塩基性のシリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラック、および酸化亜鉛上に吸収および/または吸着された形態のいずれかで、相互に独立して使用してもよい。
【0041】
ポリエチレンイミンは、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)との混合物の一部として混合プロセスに添加されてもよい。
【0042】
さらには、ポリエチレンイミンは、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)との混合物の一部として混合プロセスに添加されてもよい。
【0043】
本発明によるゴム混合物は、タイヤのトレッド、サブトレッド、カーカス、およびアペックス(apex)混合物を製造するのに特に適している。この場合のタイヤ/タイヤ部材には、たとえば、夏用、冬用、およびオールシーズン用タイヤのトレッド、さらには乗用車用タイヤおよび貨物車用タイヤのトレッドが含まれる。
【0044】
本発明のさらなる態様は、本発明によるゴム混合物の加硫によって得ることが可能な加硫物を提供する。
【0045】
製造されるゴム加硫物は、極めて多くのゴム製品の製造、たとえば、特にタイヤのトレッド、サブトレッド、カーカス、サイドウォール、ランフラットタイヤのための強化サイドウォール、アペックス混合物などのためのタイヤ構成要素の製造、接着剤混合物、さらには、制震要素、ロールカバー、コンベア用ベルト、他のベルト、紡糸コップ、シール、ゴルフボールの芯、靴底の被覆などの産業用ゴム製品の製造のために好適である。本発明によるゴム製品は、特に、それらを備えた自動車に対して有利な運転特性を与えることができる。したがって、これらの自動車も同様に本発明の主題の一部を形成している。
【0046】
本発明によるゴム混合物およびゴム加硫物は、たとえば天然ゴム(NR)および/または合成ゴムなどの1種または複数のゴムを含む。好ましい合成ゴムとしては、たとえば以下のものが挙げられる。
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C1〜C4−アルキルコポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:1〜60、好ましくは20〜50重量%のスチレン含量を有するスチレン−ブタジエンコポリマー
IIR:イソブチレン/イソプレンコポリマー
NBR:5〜60、好ましくは10〜50重量%のアクリロニトリル含量を有するブタジエン−アクリロニトリルコポリマー
HNBR:部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー
【0047】
好ましい実施形態において、本発明によるゴム混合物は、NR、SBR、BR、IR、SIBR、IIR、ENRおよびEPDMからなる群から、好ましくはNR、SBR、BR、IIRおよびEPDMからなる群から、特に好ましくはNR、BR、およびSBRからなる群から選択される少なくとも1種の無極性ゴムを含み、ここで、ゴム混合物中のこれら無極性ゴムの全含量は、典型的には少なくとも50phr、好ましくは少なくとも60phr、特に好ましくは少なくとも70phrである。ゴム混合物中における17.6より高い溶解パラメーターを有する極性ゴム、たとえばNBR、HNBR、SNBR、HXNBR、およびXNBRの含量は、それぞれの場合に、典型的には10phr未満、好ましくは1phr未満、特に好ましくは0.1phr未満、極めて特に好ましくは0.01phr未満である。
【0048】
シリカベースの充填剤
本発明に関連して、シリカ含有充填剤として採用される物質としては、以下のものが挙げられる:
− シリカ、特に沈降シリカまたはヒュームドシリカ、たとえばケイ酸塩の溶液を沈降させるか、またはハロゲン化ケイ素を火炎加水分解させて製造し、5〜1000、好ましくは20〜400m/g(BET表面積)の比表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。それらのシリカは、任意選択的に、他の金属酸化物、たとえばAl、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物の形態であってもよい。
− 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルカリ土類金属、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムで、20〜400m/gのBET表面積および10〜400nmの一次粒子サイズを有するもの、
− 天然のケイ酸塩、たとえば、カオリンおよび他の天然産のシリカ、
およびそれらの物質の混合物。
【0049】
カーボンブラック充填剤
シリカベースの充填剤に加えて、またはそれらに代わるものとして、カーボンブラックを使用することも可能であり、そのために特に好適なカーボンブラックは、ランプブラックプロセス、ファーネスブラックプロセスまたはガスブラックプロセスで製造され、20〜200m/gのBET表面積を有するもの、たとえば、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、およびGPFカーボンブラックである。
【0050】
ゴム混合物は、好ましくは5〜200phr、特に好ましくは30〜150phrのシリカベースの充填剤を含む。ゴム混合物中における追加の充填剤、特にカーボンブラック、好ましくはランプブラックプロセス、ファーネスブラックプロセスまたはガスブラックプロセスによって製造されたカーボンブラックを合計した比率は、典型的には0〜160phr、好ましくは1〜100phr、特に好ましくは5〜80phrである。ゴム混合物にカーボンブラックおよびシリカベースの充填剤が含まれている場合、それらの2種のタイプの充填剤を合計した量は、好ましくは20〜160phr、特に好ましくは25〜140phrである。
【0051】
好ましい実施形態において、シリカベースの充填剤に対するカーボンブラックベースの充填剤の含量は相対的に低い。
【0052】
本発明によるゴム混合物およびゴム加硫物は、1種もしくは複数の硫黄含有シランおよび/または1種もしくは複数の架橋剤をさらに含んでいてもよい。そのため、硫黄ベースまたはペルオキシド系架橋剤が特に好適であり、特に好ましいのは硫黄ベースの架橋剤である。
【0053】
たとえば中国特許第101628994号明細書に記載されているような、いわゆる再生ゴム(reclaim rubber)は、一般的には、本発明によるゴム混合物中に任意の所望の量で用いることができる。
【0054】
用いることが可能である本発明によるゴム混合物およびゴム加硫物のための硫黄含有シランとしては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンおよびジスルファン、さらには3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、またはシラン、たとえばSi 363(Evonik(Germany)製)またはシランNXT/NXT Z(Momentive(旧GE(USA))製)(ここで、アルコキシ基はメトキシまたはエトキシである)が挙げられ、その使用量は、それぞれの場合に100重量部のゴムを基準として、100%活性物質として計算して2〜20重量部、好ましくは3〜11重量部である。しかしながら、それらの硫黄含有シランの混合物を使用することも可能である。計量性および/または分散性を改良するために、液状の硫黄含有シランを担体上に吸収させてもよい(乾燥液体)。活性成分の含量は、好ましくは、乾燥液体100重量部あたり30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部である。
【0055】
さらなる実施形態において、本発明のゴム混合物は、50〜100phrのシリカベースの充填剤と、0.2〜12phrの有機シラン、好ましくは硫黄含有有機シラン、特に好ましくはアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シラン、極めて特に好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランとを含んでいてもよい。
【0056】
好適に使用されるペルオキシド系架橋剤としては、以下のもの挙げられる:ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
【0057】
これらのペルオキシド系架橋剤に加えて、架橋収率を向上させるのに役立つ可能性のあるさらなる添加物を使用するのも有利となりうる。そのために好適な化合物としては、以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、およびN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0058】
硫黄は、元素状の可溶性もしくは不溶性の形態、または硫黄供与体の形態で架橋剤として使用してもよい。考えられる硫黄供与体の例としては、以下のものが挙げられる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、およびテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTB)。好ましい実施形態において、ゴム混合物は、0.1〜15phr、好ましくは0.1〜2phr、特に好ましくは0.1〜0.5phrのTBzTDを含む。
【0059】
本発明によるゴム混合物の架橋は、原理的には、硫黄または硫黄供与体のみで実施するか、または加硫促進剤と共に実施することができ、加硫促進剤の好適な例としては、以下のものが挙げられる:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、二環もしくは多環アミン、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。好適な化合物としてはさらに、亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、さらには環状ジスルファンがある。本発明によるゴム混合物に硫黄ベースの架橋剤および加硫促進剤が含まれているのが好ましい。
【0060】
架橋剤として硫黄、酸化マグネシウムおよび/または酸化亜鉛を使用し、それに対して、公知の加硫促進剤、たとえば、メルカプトベンゾチアゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、キサントゲネート、およびチオホスフェートなどを加えるのが特に好ましい。
【0061】
本発明によるゴム混合物では、架橋剤および加硫促進剤を0.1〜10phr、特に好ましくは0.1〜5phrの量で使用するのが好ましい。
【0062】
本発明によるゴム混合物および本発明によるゴム加硫物は、さらなるゴム助剤を含んでいてもよく、そのようなものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:接着システム、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、特にオゾン亀裂防止剤、難燃剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、連鎖延長剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物、および活性剤、特にトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、および加硫戻り防止剤。
【0063】
これらのゴム助剤は慣用される量で使用され、その量は、特に加硫物が意図されている目的に依存する。慣用される量は0.1〜30phrである。
【0064】
好適な老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、ヒンダードフェノール類、たとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含むヒンダードフェノール、チオエーテルを含むヒンダードフェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、およびさらにはヒンダードチオビスフェノール。
【0065】
ゴムの変色がそれほど重要でない場合、たとえば以下のアミン系の老化防止剤を使用することも可能である:ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするもの、たとえば、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)。
【0066】
さらなる老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:ホスファイト、たとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)。これらのものは、ほとんどの場合、上述のフェノール性老化防止剤と組み合わせて使用される。ペルオキシドを用いて加硫されるNBRゴムでは主として、TMQ、MBI、およびMMBIが使用される。
【0067】
オゾン抵抗性は、たとえば以下の抗酸化剤を使用することにより改良することができる:N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、または環状アセタール。
【0068】
加工助剤は、ゴム粒子間で活性であるべきであり、混合、可塑化、および成形時の摩擦力に抵抗できるべきである。本発明によるゴム混合物中に存在しうる加工助剤としては、プラスチックの加工で慣用されるすべての潤滑剤、たとえば以下のものが挙げられる:炭化水素、たとえば、オイル、パラフィンおよびPEワックス、6〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸、たとえば脂肪酸およびモンタン酸、酸化させたPEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、およびたとえばアルコールのエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールと酸成分としての長鎖カルボン酸とからのカルボン酸エステル。
【0069】
燃焼時に燃焼性を抑制し、発煙を抑制する目的で、本発明におけるゴム混合物の組成に難燃化剤を含ませてもよい。この目的のために使用される化合物の例としては、以下のものが挙げられる:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム。
【0070】
架橋前に、本発明によるゴム混合物および本発明によるゴム加硫物にさらなる熱可塑性樹脂を加えてもよく、それらは、たとえばポリマー性加工助剤または耐衝撃性改良剤として機能する。それらの熱可塑性樹脂は、好ましくは、以下のものからなる群から選択される:エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状もしくは非分岐状のC1〜C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレートおよびメタクリレートをベースとするホモポリマーおよびコポリマー、特に好ましいのは、C4〜C8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノールおよび2−エチルヘキサノールの群からの同一または異なるアルコール基を有するポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルコポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー。
【0071】
公知の接着システムは、レソルシノール、ホルムアルデヒド、およびシリカをベースとする、いわゆるRFS直接接着システム(RFS direct adhesion system)である。これらの直接接着システムは、本発明によるゴム混合物中において、本発明によるゴム混合物中に組み入れる際に所望の時点で任意の所望の量で使用することができる。
【0072】
好適なホルムアルデヒド供与体としては、ヘキサメチレンテトラミンのみならず、メチロールアミン誘導体も挙げられる。可能性のある接着性の改良は、公知のゴム混合物に、合成樹脂を形成することが可能な成分、たとえばフェノールおよび/またはアミンおよびアルデヒド、またはアルデヒド脱離化合物を添加することによって達成される。ゴムの接着性混合物中に樹脂形成成分として広く使用されている化合物としては以下のものが挙げられる:レソルシノールおよびヘキサメチレンテトラミン(HEXA)(英国特許第801 928号明細書、仏国特許第1 021 959号明細書)、任意選択的にシリカ充填剤との組合せ(独国特許公開第1 078 320号明細書)。
【0073】
本発明によるゴム加硫物は、たとえば発泡体を製造するためにも使用することができる。この目的のため、化学的発泡剤または物理的発泡剤をそれに添加する。化学的発泡剤として使用することが可能な物質は、この目的のために公知である任意のものでよく、たとえば以下のものが挙げられる:アゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラアゾール、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン、炭酸亜鉛、または炭酸水素ナトリウム、またはそうでなければ、それらの物質を含む混合物。適切な物理的発泡剤の例としては、二酸化炭素およびハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0074】
本発明によるゴム混合物の加硫は、任意選択的に、10〜200barの加圧下、典型的には100〜250℃、好ましくは130〜180℃の温度で実施される。
【0075】
本発明はさらに、本発明によるゴム混合物、加硫物および/またはゴム製品を製造するためのポリエチレンイミンの使用も提供する。
【実施例】
【0076】
本発明によるゴム加硫物の製造
表1に示した実施例1および参照例のゴム配合物から加硫物を製造した。この目的のために、実施例1〜3および参照例のそれぞれの成分を、以下において述べるそれぞれの混合プロセスで混合した。次いで、ゴム混合物の完全加硫を150℃で実施した。
【0077】
混合工程:
・最初に、天然ゴム(NR、たとえばTSR/RSS DEFO 1000)をニーダー(GK 1.5)内に仕込み、添加剤のZINKWEISS ROTSIEGEL、CORAX(登録商標)N339、EDENOR(登録商標)C 18 98−100、VULKANOX(登録商標)4020/LGを80℃未満、好ましくは約40℃の温度において約40回転で添加した。
・次いで、このNRゴム混合物を温度調節されたロール上に置き、製品のCHANCEL 90/95摩砕硫黄、VULKACIT(登録商標)CZ/C、RHENOGRAN(登録商標)DPG−80および/またはポリエチレンイミンを加え、ゴム混合物中に組み入れた。そのロール温度は、100℃未満、好ましくは50℃未満、極めて特に好ましくは約40℃である。
【0078】
製造されたゴム混合物および加硫物を、以下において述べる技術的試験にかけた。測定値は表2に示す。
【0079】
混合工程および添加剤の添加順序を必要に応じて変えることができ、ポリエチレンイミンも任意の所望の混合工程で加えることができる。
【0080】
ゴム混合物/加硫物の物性の測定:
ムーニー粘度の測定:
測定は、ASTM D1646に準拠し、剪断円板式粘度計により測定した。粘度は、ゴム(およびゴム混合物)が、加工に抵抗する力から直接求めることができる。ムーニー剪断円板式粘度計において、襞付きの円板が上下共に試験物質で取り囲まれ、加熱可能なチャンバー内で約2回転/分の速度で回転される。そのために必要とされる力をトルクとして測定し、これがそれぞれの粘度に相当する。試験片は一般的には1分間で100℃に予備加熱し、それから4分かけて測定し、その間、温度は一定に保たれる。粘度は、それぞれの試験条件と共に報告する:たとえば、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、ローターサイズL、予備加熱時間および試験時間(分)、試験温度)。
【0081】
レオメーター(加硫計)完全加硫時間 150℃(t95):
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)加硫プロファイルおよびそれに伴う分析データは、ASTM D5289−95に準拠し、MDR 2000 Monsantoレオメーターで測定する。ゴムの95%が架橋された時点を完全加硫時間として測定する。選択された温度は150℃であった。
【0082】
破断時伸び、引張強度、300弾性率:
これらの測定は、DIN 53504(引張試験、ロッドS2)に従って実施した。
【0083】
表1:ゴム配合
以下において実施例を使用して本発明を説明するが、それらに限定される訳ではない。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
実施例2〜4
実施例1と同様にして実施例2〜4を実施し、実施例1との唯一の違いは、ポリエチレンイミンを0.6phrより少ない量で用いたことである。参照例および比較例に比べて、低いムーニー粘度を維持しながらも、完全加硫時間(t95)が有利に短くなり、かつ表3に見られるように優れた加硫特性を依然として伴っている。
【0088】
【表4】
【0089】
驚くべきことに、ジフェニルグアニジンまたは有機グアニジン化合物に代えてポリエチレンイミンを使用することによって、実際のところ、特にムーニー粘度および完全加硫時間(t95)の点において、ならびにそれから得ることが可能な加硫物の300弾性率、引張強度および破断時伸びで優れた適用性能を有するゴム混合物を得ることが可能になることがわかった。
【0090】
本発明によるゴム混合物は、分散の問題を全く示さなかった。加工時のアニリンの放出も微少であるか、または全くない。