(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図3において、本発明の誤給油防止装置1は、給油通路に設けられ、小径の給油管(例えばガソリンの給油ガン)の挿通を阻止し大径の給油管(例えば軽油の給油ガン)の挿通を許容する装置である。誤給油防止装置1は、スライドおよび回動するフラップ2と、ブラケット3と、ハウジング4とを備えて構成されている。
【0017】
「フラップ2」
フラップ2は、給油通路の中心である軸心Oを境に両開きとなるように一対設けられている。フラップ2A,2Bは互いに軸心Oを挟んで、概ね線対称形状を呈しており、以下ではフラップ2Aについて説明し、フラップ2Bについては重複のため説明は省略する。また、フラップ2Aの軸心O方向外側に臨む面を上面、軸心O方向内側に臨む面を下面というものとする。フラップ2Aは、閉位置において軸心Oと略直交する方向に延在する半円状の開閉板部5と、開閉板部5の円弧周縁部から軸心Oに沿って形成される周壁部6と、周壁部6の外周面から互いに平行に間隔を空け、スライド方向に延設された一対の支持アーム部7と、を有した形状からなる。
【0018】
開閉板部5の直線縁部5Aは、軸心Oの径方向に沿って形成されており、フラップ2B側の直線縁部5Aと互いに略突き合うことで給油通路が遮断される。開閉板部5のうちで直線縁部5Aから最も離れた範囲(スライド方向外側の範囲)には、給油管の挿通方向(軸心O方向)に対して傾斜し給油管に押圧される傾斜面8が形成されている。傾斜面8は、スライド方向外側に向かうにしたがい、上方に変位するように形成されている。傾斜面8の下面側には、後記する捩りコイルばね19の一端側を係止するためのばね係止部11(
図2ではフラップ2Bのばね係止部11を示す)が形成されている。
【0019】
開閉板部5には、直線縁部5Aとの直交径方向に沿う屈曲部5Bが形成されている。
図4にも示すように、屈曲部5Bを境とした一方の開閉板部5の範囲は、軸心Oと直交する方向に延在する直交平面部5Cとして形成され、他方の開閉板部5の範囲は、屈曲部5Bから離れるにしたがい下方に変位する緩傾斜面部5Dとして形成されている。なお、屈曲部5Bは傾斜面8まで形成されているので、
図5に示すように、傾斜面8も屈曲部5Bを境として屈曲形成されている。軸心O方向内側に変位する緩傾斜面部5Dを形成することで、開閉板部5の上面に残留した燃料や異物を緩傾斜面部5Dを介して開閉板部5の径外方向に効果的に流すことができる。緩傾斜面部5Dから流出した異物等はブラケット3のダスト排出部22およびハウジング4のダスト排出孔24を通って外部に排出される。
【0020】
図2に示すように、フラップ2Aの開閉板部5の下面には、相手側のフラップ2Bの下面に当接する片開き阻止部9が一対形成されている。片開き阻止部9は、フラップ2A,2Bのどちらか一方の片開きを阻止する機能を有する。片開き阻止部9は、開閉板部5の下面に一体に形成された略方形の突状体からなる。片開き阻止部9の一部は直線縁部5Aからフラップ2B側に突出するように形成されており、閉位置のとき、直線縁部5Aから突出した部分が相手側のフラップ2Bの開閉板部5の下面に略接するように位置する。フラップ2B側にも、フラップ2Aの片開き阻止部9と干渉しない位置に片開き阻止部9が一対形成されている。片開き阻止部9の作用については後述する。
【0021】
図2に示すように、周壁部6は、開閉板部5の上面側において、直交平面部5C寄りでは比較的高く形成されている一方、緩傾斜面部5D寄りでは、異物等をブラケット3のダスト排出部22に排出しやすくするために低く形成されている。直線縁部5Aの一端寄りおよび他端寄りの周壁部6の外周面には第1スライド部10が突設されている。第1スライド部10の下面は、後述するブラケット3の一端側支持部14にスライド方向に摺動可能に支持される。
【0022】
一対の支持アーム部7にはそれぞれ、後述するブラケット3の曲面部16にガイドされるガイド部12が形成されている。ガイド部12は、支持アーム部7からブラケット3側に向けて突設された円柱状のガイドピンからなる。当該ガイドピンの軸心方向は、フラップ2Aのスライド方向と直交し、かつ軸心O方向と直交する方向であり、フラップ2Aの回動中心方向と平行である。支持アーム部7のうちでガイド部12よりもスライド方向外側は、第2スライド部13として構成される。第2スライド部13は、スライド方向断面視して矩形状を呈しており、スライド方向に延設されている。第2スライド部13の下面は、後述するブラケット3の他端側支持部15にスライド方向に摺動可能に支持される。また、支持アーム部7には、第1スライド部10が一端側支持部14の支持状態から解かれる位置までスライドしたときに、他端側支持部15におけるスライド方向内側の部位に略当接する当接部25が形成されている。
【0023】
「ブラケット3」
図2に示すように、ブラケット3は、フラップ2A,2Bをスライド可能かつ回動可能に支持する短筒形状の部材であり、周面の一部には、フラップ2上の異物を排出するためのダスト排出部22が矩形状に切り欠き形成されている。ブラケット3におけるフラップ2Aの支持構造とフラップ2Bの支持構造は互いに同じであるので、以下ではフラップ2Aの支持構造を説明し、フラップ2Bについては省略する。ブラケット3には、フラップ2Aの一端側下面を支持する、具体的には前記第1スライド部10の下面を支持する一対の一端側支持部14と、フラップ2Aの他端側下面を支持する、具体的には前記第2スライド部13の下面を支持する一対の他端側支持部15と、他端側支持部15を中心に形成された一対の曲面部16と、が形成されている。また、ブラケット3には、捩りコイルばね19の付勢力に抗してフラップ2Aを閉位置に位置させる一対の規制部17が形成されている。
【0024】
一端側支持部14は、ブラケット3の内面側から略方形体状に突設されている。一端側支持部14の上面にはフラップ位置決め部18が突設されている。フラップ位置決め部18を挟んで一方側の一端側支持部14はフラップ2Aの第1スライド部10を支持し、他方側の一端側支持部14はフラップ2Bの第1スライド部10を支持する。フラップ2A,2Bの各第1スライド部10がフラップ位置決め部18の側面に当接することで、スライド方向に関するフラップ2A,2Bの閉位置が位置決めされる。
【0025】
他端側支持部15は、ブラケット3の内面側から略円柱状のピンとして突設されている。当該ピンの軸心方向は、フラップ2Aのスライド方向と直交し、かつ軸心O方向と直交する方向である。そして、当該ピンの軸心がフラップ2Aの回動中心となる。他端側支持部15は、捩りコイルばね19の過剰変形の抑制機能も兼ねている。捩りコイルばね19は、フラップ2Aを常時、閉方向に回動付勢およびスライド方向内側に付勢する付勢部材である。捩りコイルばね19は、円筒状のコイル部の内部に他端側支持部15が位置するように配置されることで、コイル部の過剰変形が他端側支持部15によって抑制される。捩りコイルばね19の一端側は前記したようにフラップ2Aのばね係止部11に係止され、他端側はブラケット3のばね係止部20に係止される。なお、捩りコイルばね19が被さるのは他端側支持部15の先端側のみであり、根元側が第2スライド部13を支持するようになっている。
【0026】
曲面部16は、ブラケット3の内面側に形成されており、他端側支持部15の軸心を中心とした曲率を有している。曲面部16はガイド部12をガイドする機能を担う。本実施形態では、曲面部16に対向して、他端側支持部15の軸心を中心とし曲面部16の曲率よりも大きい曲率の内側曲面部21が形成されている。フラップ2Aは、他端側支持部15を中心に回動する際に、ガイド部12の外側が曲面部16にガイドされるとともにガイド部12の内側が内側曲面部21にガイドされる。
【0027】
規制部17は、ブラケット3の内面側から略円柱状のピンとして突設されている。当該ピンの軸心方向は、他端側支持部15の軸心方向と平行である。規制部17は、フラップ2Aのスライド方向における一端側支持部14と他端側支持部15との間であって、フラップ2Aの上面側、具体的には支持アーム部7の上面に当接するように設けられていることにより、フラップ2Aのスライド移動のガイド機能も兼ね備えている。
【0028】
「ハウジング4」
ハウジング4は、誤給油防止装置1の筺体部材であり、ブラケット3に外嵌する無底円筒形状を呈している。ハウジング4の上面中央には給油管を通す円形の挿通口23が開口形成され、周面にはブラケット3のダスト排出部22と連通する矩形のダスト排出孔24が開口形成されている。
【0029】
「作用」
図6において、(a)は、フラップ2A,2Bが捩りコイルばね19のスライド方向内側への付勢力により閉じた状態を示している。フラップ2A,2Bには捩りコイルばね19の閉方向への回動付勢力も作用しているが、規制部17に規制されて所定の閉位置に維持されている。そして、第1スライド部10の下方に一端側支持部14が位置しているので、傾斜面8が押されない限りフラップ2A,2Bは開方向に回動不可能の状態にある。
【0030】
フラップ2A,2Bの両傾斜面8に同時に届かない小径の給油管ではフラップ2A,2Bの両方を同時に開くことはできず、これにより小径の給油管の誤給油が防止される。
図6(b)に示すように所定径の給油管31によりフラップ2A,2Bの両傾斜面8が捩りコイルばね19の付勢力に抗して同時に押されると、フラップ2A,2Bは、支持アーム部7が規制部17にガイドされ、第1スライド部10、第2スライド部13がそれぞれ一端側支持部14、他端側支持部15上を摺動することで、3点支持状態の安定した姿勢で
図6(b)に示すように径外方向にスライド移動する。
【0031】
フラップ2A,2Bが所定距離だけスライドすると、第1スライド部10において一端側支持部14の支持状態が解かれる。このとき、フラップ2A,2Bのガイド部12は曲面部16の上方に位置している。これにより、開閉板部5が給油管31に押されると、フラップ2A,2Bは、ガイド部12の外側が曲面部16にガイドされ、本実施形態ではガイド部12の内側も内側曲面部21(
図2参照)にガイドされつつ、
図6(c)に示すように他端側支持部15を中心に開方向に回動し、給油管31が挿通される。なお、内側曲面部21が形成されていない場合でも、捩りコイルばね19がガイド部12を曲面部16に押し付けるように付勢することにより、また当接部25が他端側支持部15に当接することで、回動の際のフラップ2A,2Bのがたつきが阻止される。
【0032】
給油管31が抜かれると、捩りコイルばね19の付勢力により、フラップ2A,2Bは閉方向に回動したうえで、径内方向にスライド移動して
図6(a)の閉位置状態に戻る。次いで
図7を参照して片開き阻止部9の作用を説明する。なお、フラップ2A側の片開き阻止部に符号9Aを付し、フラップ2B側の片開き阻止部に符号9Bを付す。片開き阻止部9Aの直線縁部5Aからの突出寸法をL1、フラップ2Aの閉位置から回動可能位置までのスライド移動距離をS1、フラップ2Bの閉位置から回動可能位置までのスライド移動距離をS2とすると、突出寸法L1は、「S2<L1<S1+S2」の関係を満たす寸法に設定されている。同様に、片開き阻止部9Bの直線縁部5Aからの突出寸法L2は、「S1<L2<S1+S2」の関係を満たす寸法に設定されている。本実施形態ではスライド移動距離S1,S2は互いに同じ値であるので、突出寸法L1,L2は互いに同じ値である。
【0033】
以上により、
図7(a)に示す閉位置の状態から一方のフラップ2Bのみがスライド移動して回動可能位置に達しても、「S2<L1」の関係により、
図7(b)に示すようにフラップ2Bの下方にはフラップ2Aの片開き阻止部9Aが位置しているので、フラップ2Bの片開きが阻止される。同様に、フラップ2Aのみがスライド移動した場合についても、片開き阻止部9Bによってフラップ2Aの片開きが阻止される。そして、
図7(c)に示すように、フラップ2A,2Bの両方がスライド移動してそれぞれ回動可能位置に達した場合には、「L1<S1+S2」,「L2<S1+S2」の関係により、相手方の片開き阻止部9から解かれるので、フラップ2A,2Bの両開きが可能となる。
【0034】
以上のように、フラップ2A,2Bは、傾斜面8が押圧されることにより、一端側支持部14および他端側支持部15に摺動しつつ給油通路の径外方向にスライド移動し、所定距離だけスライド移動して一端側支持部14の支持状態が解かれると、ガイド部12が曲面部16にガイドされて開方向に回動する構成とすれば、フラップ2A,2Bの支持構造として、軸部材と長孔とを係合させる従来の係合構造が不要となる。これにより、狭小な長孔における異物の詰まりの問題も無くなり、フラップ2A,2Bの動作不良を低減できる。
【0035】
また、フラップ2A,2Bを閉方向に回動付勢する捩りコイルばね19(付勢部材)と、捩りコイルばね19の付勢力に抗してフラップ2A,2Bを閉位置に位置させる規制部17と、を備え、規制部17は、フラップ2A,2Bのスライド方向における一端側支持部14と他端側支持部15との間であってフラップ2A,2Bの上面側に当接するように設けられることにより、フラップ2A,2Bのスライド移動のガイド機能を兼ね備える構成とすれば、フラップ2A,2Bの支持要素の点数を減らすことができ、その分、複数の支持要素間の製造誤差や組み付け誤差の影響を低減できる。なお、付勢部材は、捩りコイルばね19に限定されず、板ばね等を用いてもよい。
【0036】
次に片開き阻止部9に起因するフラップ2A,2Bの片閉じの問題について
図8を参照して説明する。例えば給油管31が軸心Oに対して傾いて抜かれたとき、給油管31と非接触状態となったフラップ2Aのみが先に閉じ、フラップ2Bが遅れて閉方向に回動する場合が考えられる。このとき、フラップ2Bの上縁がフラップ2Aの片開き阻止部9Aに引っ掛かってそれ以上のフラップ2Bの回動が阻害され、フラップ2Aのみが閉じた片閉じ状態になるおそれがある。
【0037】
しかし、この問題は以下に示す片閉じ阻止機構を備えることで解決できる。
図9〜
図11を参照してこの片閉じ阻止機構を説明する。片閉じ阻止機構は、一方のフラップが他方のフラップよりも遅れて閉方向に回動するとき、他方のフラップの径内方向へのスライドを抑制することで、一方のフラップと他方のフラップの片開き阻止部9との接触を阻止する。
図9では、片閉じ阻止機構として、第1片閉じ阻止機構50と、第2片閉じ阻止機構60との2つの機構で構成している。片閉じ阻止機構を2つ設けた理由は、主に力のかかり具合を分散させてフラップ2A,2Bのスライド動作、回動動作をスムーズに行わせるためであり、もしこれらの動作に支障がなければ、第1片閉じ阻止機構50、第2片閉じ阻止機構60の内のどちらか一方のみを設ける構成にしても構わない。場合により、第1片閉じ阻止機構50を2つ設ける、或いは第2片閉じ阻止機構60を2つ設ける構成にしてもよい。
【0038】
「第1片閉じ阻止機構50」
先ず、第1片閉じ阻止機構50について説明する。第1片閉じ阻止機構50は、各フラップ2A,2Bに形成された第1スライド抑制部51と、各フラップ2A,2Bに形成され相手側のフラップ2A,2Bの第1スライド抑制部51に当接する第2スライド抑制部52と、を備えている。以下、フラップ2A側の第1スライド抑制部、第2スライド抑制部に符号51A,52Aを付し、フラップ2B側の第1スライド抑制部、第2スライド抑制部に符号51B、52Bを付して説明する。
【0039】
図9(a)に示すフラップ2Aにおいて、第1スライド抑制部51Aおよび第2スライド抑制部52Aは、直線縁部5Aの一端側(直交平面部5Cが形成されている側)における周壁部6と第1スライド部10との間に形成されている。第1スライド抑制部51Aは、開閉板部5と略同じ高さ位置において、直線縁部5Aからフラップ2B側に向け、フラップ2Aの回動軸(他端側支持部15(
図1))方向視して略半円形状を呈するように突設された凸状板部53Aとして形成されている。凸状板部53Aの直線縁部5Aからの突出寸法M1(
図10)は、フラップ2Bの第2スライド抑制部52Bと当接したとき、フラップ2Bがフラップ2Aの片開き阻止部9Aに引っ掛かることなく閉方向に回動できるように、フラップ2Aの径内方向のスライドを抑制し得る寸法である。
【0040】
凸状板部53Aの上方には、フラップ2Aの回動軸(他端側支持部15(
図1))を曲率中心とした円弧凸面部54Aが、凸状板部53Aよりも軸心Oの径外方向側に幅広となるように形成されている。この凸状板部53Aよりも軸心Oの径外方向側に形成された円弧凸面部54Aの範囲(
図9(a)に網線で示す範囲)が、フラップ2Bの第1スライド抑制部51Bと当接する範囲、つまり第2スライド抑制部52Aを構成する。円弧凸面部54Aの円弧長さは、給油管31(
図8)が最も傾いた状態で抜かれ、そのときに、フラップ2Aが想定し得る最大の回動角度で開いた状態になっても、フラップ2Bの第1スライド抑制部51Bと当接する長さに設定されている。第2スライド抑制部52Aの下方には、フラップ2Aおよびフラップ2Bが共に完全に閉じたときに、フラップ2Bの第1スライド抑制部51Bを収容するための凹部55Aが形成されている。
【0041】
フラップ2Bの第1スライド抑制部51B、第2スライド抑制部52Bは、フラップ2Aの第2スライド抑制部52A、第1スライド抑制部51Aと補完し合う位置に形成されており、形状自体はフラップ2Aのものに準じている。すなわち、
図9(b)に示すフラップ2Bにおいて、第1スライド抑制部51Bおよび第2スライド抑制部52Bは、直線縁部5Aの一端側(直交平面部5Cが形成されている側)における周壁部6と第1スライド部10との間に形成されている。第1スライド抑制部51Bは、開閉板部5と略同じ高さ位置において、直線縁部5Aからフラップ2A側に向け、フラップ2Bの回動軸(他端側支持部15(
図1))方向視して略半円形状を呈するように突設された凸状板部53Bとして形成されている。
【0042】
凸状板部53Bの上方には、他端側支持部15(
図1)を曲率中心とした円弧凸面部54Bが、凸状板部53Bよりも軸心Oの径内方向側に幅広となるように形成されている。この凸状板部53Bよりも軸心Oの径内方向側に形成された円弧凸面部54Bの範囲(
図9(b)に網線で示す範囲)が、フラップ2Aの第1スライド抑制部51Aと当接する範囲、つまり第2スライド抑制部52Bを構成する。第2スライド抑制部52Bの下方には、フラップ2Aおよびフラップ2Bが共に完全に閉じたときに、フラップ2Aの第1スライド抑制部51Aを収容するための凹部55Bが形成されている。
【0043】
「第2片閉じ阻止機構60」
第1片閉じ阻止機構50を直線縁部5Aの他端側(緩傾斜面部5Dが形成されている側)に設けることも可能であるが、そうすると、緩傾斜面部5Dを伝って流れ出る開閉板部5上の残留燃料や異物を第1片閉じ阻止機構50が遮るおそれがある。そのため、第2片閉じ阻止機構60はフラップ2A,2Bの各開閉板部5の下面に設けられている。第2片閉じ阻止機構60は、各フラップ2A,2Bに形成された第1スライド抑制部61と、各フラップ2A,2Bに形成され相手側のフラップ2A,2Bの第1スライド抑制部61に当接する第2スライド抑制部62と、を備えている。以下、フラップ2A側の第1スライド抑制部、第2スライド抑制部に符号61A,62Aを付し、フラップ2B側の第1スライド抑制部、第2スライド抑制部に符号61B、62Bを付して説明する。
【0044】
図9(a)に示すフラップ2Aにおいて、屈曲部5B寄りの直交平面部5Cの下面には、リブ63Aが下方に向けて突設されている。リブ63Aのフラップ2Bとの対向部には、フラップ2Bの回動軸(他端側支持部15(
図1))を曲率中心とした円弧凹面部64Aが形成されている。この円弧凹面部64Aは、第1スライド抑制部61Aを構成する。円弧凹面部64Aの円弧長さは、給油管31(
図8)が最も傾いた状態で抜かれ、そのときに、フラップ2Bが想定し得る最大の回動角度で開いた状態になっても、フラップ2Bの第2スライド抑制部62Bと当接する長さに設定されている。直線縁部5A近傍のリブ63Aの上部には、フラップ2Aおよびフラップ2Bが共に完全に閉じたときに、フラップ2Bの第2スライド抑制部62Bを収容するための凹部65Aが形成されている。
【0045】
屈曲部5B寄りの緩傾斜面部5Dの下面には、直線縁部5Aからフラップ2B側に突き出るように凸状部66Aが形成されている。この凸状部66Aは、フラップ2Bの第1スライド抑制部61Bと当接する第2スライド抑制部62Aを構成する。凸状部66Aの直線縁部5Aからの突出寸法N1(
図11)は、フラップ2Bの第1スライド抑制部61Bと当接したとき、フラップ2Bがフラップ2Aの片開き阻止部9Aに引っ掛かることなく径内方向に回動できるように、フラップ2Aの閉方向のスライドを抑制し得る寸法である。
【0046】
フラップ2Bの第1スライド抑制部61B、第2スライド抑制部62Bは、フラップ2Aの第2スライド抑制部62A、第1スライド抑制部61Aと補完し合う位置に形成されており、形状自体はフラップ2Aのものに準じている。すなわち、
図9(b)に示すフラップ2Bにおいて、屈曲部5B寄りの緩傾斜面部5Dの下面にはリブ63Bが下方に向けて突設されており、このリブ63Bのフラップ2Aとの対向部に、フラップ2Aの回動軸(他端側支持部15(
図1))を曲率中心とした円弧凹面部64Bが形成されている。この円弧凹面部64Bが、第1スライド抑制部61Bを構成する。直線縁部5A近傍のリブ63Bの上部には、フラップ2Aおよびフラップ2Bが共に完全に閉じたときに、フラップ2Aの第2スライド抑制部62Aを収容するための凹部65Bが形成されている。
【0047】
屈曲部5B寄りの直交平面部5Cの下面には、直線縁部5Aからフラップ2A側に突き出るように凸状部66Bが形成されている。この凸状部66Bが、フラップ2Aの第1スライド抑制部61Aと当接する第2スライド抑制部62Bを構成する。
【0048】
「作用」
図10を参照して第1片閉じ阻止機構50の作用を説明する。給油管31が軸心Oに対して傾いて抜かれ、一方のフラップ2Bが他方のフラップ2Aよりも遅れて閉方向に回動する場合、
図10(a−i)に示すように、フラップ2Aの凸状板部53A(第1スライド抑制部51A)とフラップ2Bの円弧凸面部54B(第2スライド抑制部52B)とが当接する。これにより、フラップ2Aは、捩りコイルばね19(
図1)のスライド方向内側への付勢力に抗して、フラップ2Bの円弧凸面部54Bにスライド方向外側に押されることで、径内方向のスライドが抑制される。そして、
図10(b−i)に示すように、フラップ2Bが閉方向に回動すると、
図10(b−ii)に示すように、フラップ2Bはフラップ2Aの片開き阻止部9Aに引っ掛かることなく回動可能となる。
図10(c−i),(c−ii)に示すように、フラップ2Bが回動し終えると、フラップ2Aの凸状板部53Aがフラップ2Bの凹部55Bに収容されることでフラップ2Aおよびフラップ2Bが共に閉じた状態となる。
フラップ2Aがフラップ2Bよりも遅れて閉方向に回動する場合も同様であるので、その説明は省略する。
【0049】
図11を参照して第2片閉じ阻止機構60の作用を説明する。給油管31が軸心Oに対して傾いて抜かれ、一方のフラップ2Bが他方のフラップ2Aよりも遅れて閉方向に回動する場合、
図11(a)に示すように、フラップ2Aの円弧凹面部64A(第1スライド抑制部61A)とフラップ2Bの凸状部66B(第2スライド抑制部62B)とが当接する。これにより、フラップ2Aは、捩りコイルばね19(
図1)のスライド方向内側への付勢力に抗して、フラップ2Bの凸状部66Bにスライド方向外側に押されることで、径内方向のスライドが抑制され、フラップ2Bがフラップ2Aの片開き阻止部9Aに引っ掛かることなく閉方向に回動する。そして、
図11(c)に示すように、フラップ2Bが回動し終えると、フラップ2Bの凸状部66Bがフラップ2Aの凹部65Aに収容されることでフラップ2Aおよびフラップ2Bが共に閉じる。
フラップ2Aがフラップ2Bよりも遅れて閉方向に回動する場合も同様であるので、その説明は省略する。
【0050】
以上のような片閉じ阻止機構を設ければ、片開き阻止部9に起因するフラップ2A,2Bの片閉じの問題を簡単な構造で回避できる。