特許第6462955号(P6462955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462955清掃用ウェットシートおよび清掃用ウェットシートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462955
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】清掃用ウェットシートおよび清掃用ウェットシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20190121BHJP
   D04H 1/498 20120101ALI20190121BHJP
【FI】
   A47L13/17 A
   D04H1/498
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-521667(P2018-521667)
(86)(22)【出願日】2017年10月31日
(86)【国際出願番号】JP2017039298
(87)【国際公開番号】WO2018079822
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2018年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-213857(P2016-213857)
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】新谷 尚己
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−113409(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3203756(JP,U)
【文献】 特開2015−100522(JP,A)
【文献】 特開2011−224385(JP,A)
【文献】 特開2005−204950(JP,A)
【文献】 特開2014−129632(JP,A)
【文献】 特開2007−215619(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0366294(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0010929(US,A1)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2012−0004185(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/00 −13/62
D04H 1/498
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層からなり、薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
当該清掃用ウェットシートは、取付用治具に装着されて床面を清掃するためのものであり、
表面層と裏面層とにそれぞれ設けられる疎水性繊維層と、
これらの前記疎水性繊維層に挟まれる中間層に設けられる親水性繊維層と、
前記疎水性繊維層と前記親水性繊維層とが交絡されている交絡部と、
前記疎水性繊維層と前記親水性繊維層とが交絡されていない非交絡部と、を備え、
前記交絡部は、当該清掃用ウェットシートの拭き方向に対して略直角方向に延設され、前記交絡部と前記非交絡部とが拭き方向に沿って交互に連続してなる凹凸のパターニングが形成されており、
前記親水性繊維層には、25℃での粘度が1−15mPa・sである薬液が含浸されており、
前記疎水性繊維層は、ポリエチレンテレフタレート繊維の配合率が80%以上であり、前記ポリエチレンテレフタレート繊維の繊維径は3.3dtex以上であることを特徴とする清掃用ウェットシート。
【請求項2】
前記交絡部は、前記表面層ないし前記裏面層の平面視における表面積に対して23−80%の面積率で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項3】
前記疎水性繊維層には、50−100%の重量比率で疎水性繊維が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートを製造する清掃用ウェットシートの製造方法であって、
前記交絡部を水流交絡により形成することを特徴とする清掃用ウェットシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用ウェットシートおよび清掃用ウェットシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材に薬液を含浸させた清掃用ウェットシートが知られている。このような清掃用ウェットシートには、複数の層から形成されたものがあり、内層にレーヨンなどの親水性繊維を設け、外層にポリプロピレンなどの疎水性繊維を設け、内層の親水性繊維に薬液を含浸させたものがある(例えば、特許文献1)。
また、薬液の保持性を高めるために、高粘度の薬液を含浸させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4033612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の清掃用ウェットシートでは、表面が濡れているため、例えば、床を清掃する際、床面との摩擦抵抗が大きく、床面を摺動させるために大きな負荷を必要とする。このため、清掃用ウェットシートに掛かる負荷により、含浸されている薬液が過剰に放出されてしまう。このため、清掃用ウェットシートが薬液不足に陥るのが早まり、十分に床面を清掃できないという問題がある。
一方、薬液の過剰放出を回避するために、薬液として高粘度のものを用いたものもあるが、高粘度の薬液を用いることで、床面が高粘性の薬液でベタ付いてしまったり、逆に薬液が十分に放出されずに捕集性が低下してしまったり、親水性繊維に薬液を含浸させる工程が煩雑になってしまったりという問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、低粘度の薬液を用いても、薬液の過剰放出が抑制できる清掃用ウェットシートおよび清掃用ウェットシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数層からなり、薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、当該清掃用ウェットシートは、取付用治具に装着されて床面を清掃するためのものであり、表面層と裏面層とにそれぞれ設けられる疎水性繊維層と、これらの前記疎水性繊維層に挟まれる中間層に設けられる親水性繊維層と、前記疎水性繊維層と前記親水性繊維層とが交絡される交絡部と、前記疎水性繊維層と前記親水性繊維層とが交絡されていない非交絡部と、を備え、前記交絡部は、当該清掃用ウェットシートの拭き方向に対して略直角方向に延設され、前記交絡部と前記非交絡部とが拭き方向に沿って交互に連続してなる凹凸のパターニングが形成されており、前記親水性繊維層には、25℃での粘度が1−15mPa・sである薬液が含浸されており、前記疎水性繊維層は、ポリエチレンテレフタレート繊維の配合率が80%以上であり、前記ポリエチレンテレフタレート繊維の繊維径は3.3dtex以上であることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、交絡部は非交絡部に比べて疎水性繊維層の繊維密度が高くなるため、交絡部は非交絡部に対して凹んだ状態とされる。従って、清掃を開始する際の清掃用ウェットシートの被清掃面との接触面を小さくすることができるとともに、交絡部からの薬液の放出を抑制することができる。このため、清掃用ウェットシートで清掃する際、大きな負荷を掛けて拭く必要がなく、含浸された薬液が過剰に放出されるおそれがない。
また、薬液の粘度が25℃において1−15mPa・sであるので、床面が高粘性の薬液でベタ付いてしまったり、薬液が十分に放出されずに捕集性が低下してしまったり、親水性繊維に薬液を含浸させる工程が煩雑になってしまったりというおそれがない。
特に、疎水性繊維層を構成するポリエチレンテレフタレート繊維の繊維径が3.3dtex以上なので、繊維の剛性(クッション性)が向上し、軽い力でも操作できるようになる。また、3.3dtex以上の太い繊維径のポリエチレンテレフタレート繊維により、繊維間空隙が確保され、毛細管現象が起きにくく、内層から外層に薬液が出てしまうことを防止することができる。
また、拭き方向に対して直角に交絡部が延設されているので、清掃用ウェットシートの接触面と離間面とでごみやダストを捕集することができ、良好な捕集性能を発揮する上で好ましい。特に、交絡部と非交絡部とが拭き方向に沿って交互に連続して形成されるので、複数の交絡部と非交絡部とで交互にそれぞれ異なったごみやダストを捕集することができ、より良好な捕集性能を発揮することができる。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項に記載の清掃用ウェットシートにおいて、前記交絡部は、前記表面層ないし前記裏面層の平面視における表面積に対して23−80%の面積率で形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明によれば、請求項に記載の発明と同様の効果を有することは無論のこと、特に、交絡部が表裏面の平面視における表面積に対して23−80%の面積率で形成されているので、より適度な負荷で拭くことができ、薬液を適度に放出させることができる。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項1又は2に記載の清掃用ウェットシートにおいて、前記疎水性繊維層には、50−100%の重量比率で疎水性繊維が含有されていることを特徴とする。
【0017】
請求項記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、特に、疎水性繊維層に50−100%の重量比率で疎水性繊維が含有されているので、親水性繊維層に含浸された薬液の保持および放出量の調整を好適に実現することができる。
【0018】
請求項記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートを製造する清掃用ウェットシートの製造方法であって、前記交絡部を水流交絡により形成することを特徴とする。
【0019】
請求項記載の発明によれば、交絡部を水流交絡により交絡するので、親水性繊維層と疎水性繊維層とを接着剤等を用いずに交絡することができ、簡易な構成とすることができるとともに、薬液の放出面を接着剤が閉塞してしまうことによる拭きムラ等を回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、清掃用ウェットシートおよび清掃用ウェットシートの製造方法は、低粘度の薬液を用いても、薬液の過剰放出が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る実施形態における清掃用ウェットシートを示す模式斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態における清掃用ウェットシートを示す模式断面図である。
図3】本発明に係る実施形態における清掃用ウェットシートを示す模式分解斜視図である。
図4】本発明に係る実施形態における清掃用ウェットシートのパターニングを示す模式図である。
図5】本発明に係る実施例および比較例の試験方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃用ウェットシートを詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0023】
本発明の実施形態に係る清掃用ウェットシートについて、図1から4に基づいて説明する。
【0024】
図1−4に示すように、清掃用ウェットシート1は、親水性繊維層としての内層2と、疎水性繊維層としての外層3と、を備えている。
内層2は、後述する外層3に挟まれた中間層であり、主として親水性繊維により形成されており、この親水性繊維に薬液が含浸されている。
また、内層2は、目付が10−50g/mになるように形成され、後述する外層3との総重量に対して10−60%の重量比率を占めている。
なお、親水性繊維としては、パルプ、綿、麻などの天然繊維、および、レーヨン、アセテートなどのセルロース系化学繊維などが適用されるが、保水性を維持する観点からパルプを適用することが好ましい。
また、内層2は、親水性繊維のみで構成することが好ましいが、疎水性繊維が適宜含有されていてもよい。
【0025】
薬液は、清掃用ウェットシート1の清掃洗剤として用いられ、後述する外層3を介して表面ないし裏面から放出されるようになっている。また、薬液は、粘度が25℃において1−15mPa・sになるように調製されている。粘度はブルックフィールド(B型)回転粘度計(型番:LVDV-I+)を用いて測定され、使用ローターおよび回転数は、水性洗浄剤の粘度に応じて適宜変更する。測定条件は25℃、回転数は60rpmとし、方法についてはJIS K 7117-1:1999に準じて実施する。
なお、薬液としては、エタノールなどの低級アルコールと、塩化ベンザルコニウムなどの界面活性剤や殺菌剤と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と、を水に溶かしたものが例として挙げられる。
ここで、薬液の粘度の下限を25℃において1mPa・s以上としたのは、1mPa・sを下回ると、清掃時に薬液が過度に放出されて後述する有効拭き面積が小さくなってしまうからである。また、薬液の粘度の上限を25℃において15mPa・s以下としたのは、15mPa・sを上回ると、薬液による床面のベタ付きが改善されないからである。
【0026】
外層3は、清掃用ウェットシート1の表面層と裏面層とを形成する層であり、主に疎水性繊維により層形成されている。具体的には、疎水性繊維は、外層3の総重量に対して50−100%の重量比率で含有されている。これにより、一定以上の圧力を加えないと内層2の薬液が外部に出にくい構造となっている。疎水性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを主成分とする化学繊維が適用される。なお、ポリエチレンテレフタレート繊維の配合率は80%以上であることが好ましく、その繊維径は、3.3dtex以上であることが好ましい。
繊維径が3.3dtex以上とすることで、繊維の剛性(クッション性)が向上し、軽い力でも操作できるようになる。また、3.3dtex以上の太い繊維径のポリエチレンテレフタレート繊維により、繊維間空隙が確保され、毛細管現象が起きにくく、内層2から外層3に薬液が出てしまうことを防止することができる。
また、外層3は、交絡部31と、非交絡部32とを備えている。
【0027】
交絡部31は、内層2と外層3とが、それぞれの繊維を交絡させることにより一体となっている箇所である。また、交絡部31を交絡させる手法として、例えば、水流交絡が採用されている。具体的には、全面に20kPa未満の微弱な水圧で水を掛けてプレ交絡を施して内層2と外層3とが一体にされ、その後、交絡部31となる箇所に60−80kPaの水圧で水流交絡を施すことで、凹凸のパターニングを有する形状が形成されている。
また、水流交絡は、清掃用ウェットシート1の表面層および裏面層の同一箇所に両側から水を当てて行う。すなわち、交絡部31は、凹凸のパターニングが表面層と裏面層とにおいて、同一箇所に対応して形成されている。
交絡部31は、水流交絡が施されるため内層2および外層3の繊維が絡まり合っており、後述する非交絡部32よりも繊維密度が高くなっている。このため、交絡部31を形成する疎水性繊維は、それぞれの繊維が空間的な自由度を非交絡部32に比べて持たず、拭き動作の際、それぞれの繊維が非交絡部32に比べて自由に動くことがないようになっている。
また、交絡部31は、繊維密度が非交絡部32よりも高い分、非交絡部32に対して凹状に窪んだ形状とされている。すなわち、交絡部31は、窪みの底である底部311と、後述する非交絡部32と底部311とを接続する傾斜面である傾斜部312と、を備えている。
【0028】
交絡部31は、清掃用ウェットシート1が使用される際、拭き方向(CD方向)となる向きに対して直角な方向(MD方向)に沿って延設されている。また、交絡部31は、所定の間隔に離間して複数列に形成されている。また、これらの交絡部31は、清掃用ウェットシート1の表面ないし裏面の面積に対して、平面視において適度な面積率となるように形成されている。ここで、面積率とは、交絡部31の平面視における表面積となる交絡表面Aと、非交絡部32の平面視における表面積となる非交絡表面Bとの割合を示しており、面積率は、以下の式により算出されている。
面積率(%)=A/(A+B)×100・・・(式1)
ここで、交絡部31の面積率は、23−80%の範囲であることが好ましい。交絡部31の面積率は23%を下回ると、内層2から外層3への薬液の移行がスムーズにいかなくなるからであり、交絡部31の面積率は80%を超えると、外層3の表面の繊維密度が上がり、摩擦抵抗が大きくなって、却って薬液が放出されやすくなるからである。
【0029】
非交絡部32は、内層2と外層3とがプレ交絡のみ施され、水流交絡を施されていない箇所である。
また、非交絡部32は、水流交絡が施されないため交絡部31と比較して繊維密度が低くなっており、この箇所の繊維は、拭き動作の際、繊維が交絡部31の繊維に比べて自由に動くことができるようになっている。
交絡部31と非交絡部32は、拭き方向に沿って交互に設けられており、被清掃面には、最初、非交絡部32のみが接触するようになっている。
なお、プレ交絡は水流交絡処理には含めずに説明している。すなわち、プレ交絡後に高水圧で水を当てて繊維交絡を行う処理のみを水流交絡としている。このため、プレ交絡のみが施される非交絡部32は、厳密にはプレ交絡により僅かに繊維交絡されているが、便宜上交絡されていない箇所として扱う。
【0030】
本実施形態によれば、清掃用ウェットシート1において、表面層と裏面層とに凹状の交絡部31が設けられるので、清掃開始時の清掃用ウェットシート1の被清掃面との接触面が小さくなり、摩擦抵抗値を小さくすることができる。このため、清掃用ウェットシート1で清掃する際、大きな負荷を掛けて拭く必要がなく、含浸された薬液が過剰に放出されるおそれがなく、薬液不足により十分に清掃できないなどのおそれがない。
また、薬液の粘度が25℃において1−15mPa・sであるので、薬液による床面のベタ付きが改善されるとともに、薬液が十分に放出されずに捕集性が低下してしまったり、親水性繊維に薬液を含浸させる工程が煩雑になってしまったりというおそれがない。
【0031】
また、本実施形態によれば、平面視において交絡部31が表面層ないし裏面層の面積に対して平面視において23−80%の面積率で形成されているので、清掃用ウェットシート1の摩擦抵抗値をより良好な数値に設定することができる。このため、より適度な負荷で拭くことができ、薬液をより好適に放出させることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、交絡部31が水流交絡により交絡されているので、内層2と外層3とを接着剤等を用いずに交絡することができ、簡易な構成とすることができるとともに、薬液の放出面を接着剤が閉塞してしまうことによる拭きムラ等を回避することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、CD方向に対して直角に交絡部31が延設されているので、清掃用ウェットシート1の接触面と離間面とで交互にごみやダストを捕集することができ、良好な捕集性能を発揮する上で好ましい。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、具体的な構造について適宜変更可能であるのは勿論である。
【実施例】
【0035】
〔実施例1〕
実施例1では、清掃用ウェットシート1として以下のものを用いた。
疎水性繊維にはポリエチレンテレフタレートを主成分とする不織布を用い、親水性繊維にはパルプ原料を主成分とする繊維を用いた。
また、疎水性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを主成分とする化学繊維が適用される。具体的には、外層3は、疎水性繊維が100%で構成されており、疎水性繊維としてポリエチレンテレフタレートが90%含有され、バインダー繊維としてポリプロピレンとポリエチレンの芯鞘繊維が10%含有されている。また、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊度が3.3dtex、バインダー繊維は、繊度1.7dtexのものを用いた。
薬液には、水を溶媒とし、界面活性剤(陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤)、水溶性溶剤(1価アルコールあるいは多価アルコール)を用いた。本実施例では、水93.65%、非イオン界面活性剤としてプリストール1%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が2.8mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を50%に形成した。
【0036】
〔実施例2〕
実施例2では、水92.65%、非イオン界面活性剤としてプリストール2%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が3.0mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を80%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0037】
〔実施例3〕
実施例3では、水89.65%、非イオン界面活性剤としてプリストール5%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が3.4mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を23%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0038】
〔実施例4〕
実施例4では、水96.60%、アルコール類としてエタノール3.4%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が1.0mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を40%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0039】
〔実施例5〕
実施例5では、水93.55%、非イオン界面活性剤としてプリストール1%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)0.1%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が15.0mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を60%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0040】
〔実施例6〕
実施例6では、水89.60%、非イオン界面活性剤としてプリストール5%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.1%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が4.0mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を85%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0041】
〔比較例1〕
比較例も実施例と同様に、疎水性繊維として実施例1と同一のものを用いた。
また、水93.35%、非イオン界面活性剤としてプリストール1%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)0.3%を各々配合した結果、25℃における粘度が37.6mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を50%に形成した。
【0042】
〔比較例2〕
比較例2では、水93.60%、非イオン界面活性剤としてプリストール1%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)0.05%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が10.0mPa・sの薬液を得た。 また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を0%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0043】
〔比較例3〕
比較例3では、水20.00%、アセトニトリル80.00%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が0.5mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を50%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0044】
〔比較例4〕
比較例4では、水93.50%、非イオン界面活性剤としてプリストール1%、両性界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド0.5%、アルコール類としてエタノール3.4%、1−メトキシー2−プロパノール1.4%、第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム0.05%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)0.15%を各々配合し、その結果、25℃における粘度が18.0mPa・sの薬液を得た。
また、外層3の交絡部31の平面視における面積率を50%に形成した。
この他の構成は、実施例1と同様である。
【0045】
以上の実施例1−6および比較例1−4の清掃用ウェットシート1を用いた拭き取り回数試験を行った。
拭き取り回数試験方法は、清掃用ウェットシート1の取付用治具(クイックルワイパー/花王株式会社2015年製)に清掃用ウェットシート1をたるみなく取り付け、アクリル板で形成した床面を一方向に拭く。冶具の横幅25cmでアクリル板床面(縦90cm、横130cm)の縦方向に沿ってアクリル板床面の端から端までの90cmの拭き取り作業を1回として測定する。
1.床面と取付用治具軸の角度は、60度とし、角度変動しないようヘッドの軸元を市販ボンドで固定する。
2.ヘッドの軸に、筒状円柱の530gの錘(直径100mm長さ200mm)を通し、シートを装着する。
3.測定は幅1300mm×奥行900mmの市販アクリル板を床面に用い、冶具の軸を床面と取付用治具軸の角度が、60度となるように手前側にし、手前から奥へ300mm/sの速度で清掃する。
4.清掃後の面と重ならないようアクリル板床面の幅方向に順次清掃を実施する。
5.次測定の前に清掃用ウェットシート残液を乾いた布でくまなく除去する。
前述の条件により、清掃用ウェットシート1の全幅から薬液が放出されなくなった状態を終点とし、終点に達するまでの拭いた回数(有効拭き回数)を測定する。
6.言い換えれば、床面への薬液放出が明らかに認められない部分が拭き筋として発生し、途中で薬液がかすれて放出されていない状態が全幅で発生した時点が終点となる。
7.終点と判断した回は、回数に含まず測定した。また、測定した拭き回数から以下の式により、有効拭き面積を算出した。
有効拭き面積(m)=0.25×0.9m×(回数)
また、上記の試験を5回実施し、有効拭き回数、有効拭き面積の平均値を測定値とする。
そして、有効拭き回数が30回以上を○とし、30回未満を×として評価した。
【0046】
また、捕集性の試験としては、拭き取り面に配置した各種捕集物をどの程度捕集することができたかを調べた。
試験方法は、図示しない清掃用ウェットシート1の取付用治具に清掃用ウェットシート1を取り付けてアクリル板で形成した床面を摺動させて拭くこととした。
また、取付治具は、取っ手となる棒状部材の先端に平板部材が略全方向に回動可能に取り付けられており、この平板部材に清掃用ウェットシート1を取り付けるようになっている。
また、平板部材には、450gの錘を取り付けて清掃用ウェットシート1と床面との押圧力が一定になるようにした。
拭き動作としては、清掃用ウェットシート1を幅50cmの拭き取り面に対し、中央から右へ25cm、左へ50cm、再び右へ25cm移動させて、拭き取り面を1往復するものとした。
捕集物としては、砂塵、毛髪の3種類について試験を行った。
具体的には、図5に示すように、毛髪Hは、拭き方向に沿って3本並べ、拭き方向に直角に2本並べたものを拭いた。
砂塵は、JIS Z 8901試験用粉体1 No.7(関東ローム層)を200メッシュのふるいに掛けたものを0.2g採取し、床面に設けた5cm×15cmの枠内に配置し、拭き取れた砂塵の量を目視確認し、以下のように評価した。
毛髪は、〇:5本中4−5本捕集、△:5本中2−3本、×:5本中0−1本捕集、という基準により評価した。
また、砂塵は、拭き取れた量を目視確認し、〇△×の評価を行った。
【0047】
また、床面のベタつき評価は、ユーザーによる実使用官能評価である。具体的には、20人のユーザーが、実施例1〜6および比較例1〜4の清掃用ウェットシートを用いて清掃しながら歩いて、べたつきを感じるかどうかで評価した。評価は、べたつきを感じる人数
5名以下:○、6〜14名:△、15名以上:×とした
【表1】
【0048】
表1の結果について以下に述べる。
実施例1−6と比較例1−4とを比較すると、薬液の粘度を1−15mPa・sとしても、高粘度のものと同等以上の有効拭き面積および有効拭き回数を実現でき、特に、有効拭き回数は30回以上を実現できた。
また、ごみの捕集性については、薬液の粘度を1−15mPa・sとしても影響がなく、むしろ、ごみの種別に関係なく一定以上の捕集性を実現できた。また、ベタつき評価も実施例1−6については、全て○で良好であった。
よって、本願発明においては、薬液粘度が1−15mPa・sと低粘度であっても、薬液の放出量を抑制して有効拭き面積、ごみの捕集量を維持できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、清掃用ウェットシートおよびその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 清掃用ウェットシート
2 内層(親水性繊維層)
3 外層(疎水性繊維層)
31 交絡部
32 非交絡部
311 底部
312 傾斜部
A 交絡表面
B 非交絡表面
図1
図2
図3
図4
図5