特許第6462975号(P6462975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462975
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20190121BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20190121BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20190121BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20190121BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190121BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   B25F5/00 H
   H01M2/10 K
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   H02H7/18
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-288526(P2012-288526)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-131431(P2014-131431A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月28日
【審判番号】不服2017-11485(P2017-11485/J1)
【審判請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100195992
【弁理士】
【氏名又は名称】城臺 顕
(74)【代理人】
【識別番号】100206092
【弁理士】
【氏名又は名称】金 佳恵
(72)【発明者】
【氏名】堀江 由季
(72)【発明者】
【氏名】中野 恭嗣
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一彦
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 東 昌秋
【審判官】 井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−162656(JP,A)
【文献】 特開2005−285458(JP,A)
【文献】 特開2010−130768(JP,A)
【文献】 特開2010−93953(JP,A)
【文献】 特開2011−78282(JP,A)
【文献】 特開2011−229319(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086645(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00
B25F5/00
H01M2/10
H01M10/44
H01M10/48
H02H7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池セルを接続してなる電池組と、
外部の電池接続手段と接続される接続部と、
前記電池組のプラス側に設けられ、前記電池組と前記接続部との第1の経路を遮断する第1の遮断手段と、
前記電池組のマイナス側に設けられ、前記電池組と前記接続部との第2の経路を遮断する第2の遮断手段とを有した電源装置において、
前記第1の遮断手段と、前記第2の遮断手段とを制御する制御部と、
前記制御部に所定電圧を供給する降圧回路と、
前記電池組からの放電電流を検出する電流検出手段と、
前記第1の遮断手段の状態を切替え可能な第1の切替部と、
前記第2の遮断手段の状態を切替え可能な第2の切替部と、を更に有し、
前記降圧回路は、前記接続部を介して充電器と接続される第3の経路と、前記電池組と接続される第4の経路とに接続され、
前記第4の経路は第3の遮断手段を備え、
前記第3の遮断手段は、前記制御部により制御され、
前記制御部は、前記電流検出手段の検出結果に基づき、前記第1の遮断手段および前記第2の遮断手段の少なくとも一方を制御し、
前記制御部に前記所定電圧が供給されないとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断し、
前記第4の経路は、前記電池組と前記第1の遮断手段との間に接続され、
前記制御部は、前記第1の切替部と前記第2の切替部とを駆動可能であり、
前記第1の経路に印加されている電圧に基づく駆動電圧が前記第1の経路から前記第2の遮断手段に印加可能であり、
前記制御部が前記第1の切替部を駆動したときに、前記第1の切替部は、前記第1の経路に印加されている電圧に基づいて、前記第1の経路を遮断する状態と、前記第1の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第1の遮断手段の状態を切替可能であり、
前記制御部が前記第2の切替部を駆動したときに、前記第2の切替部は、前記駆動電圧に基づいて、前記第2の経路を遮断する状態と、前記第2の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第2の遮断手段の状態を切替可能であることを特徴とする電動工具に用いられる電源装置。
【請求項2】
前記制御部が二次電池セルの過放電を検出したとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部が二次電池セルの過充電を検出したとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数の二次電池セルは複数のリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
複数の二次電池セルを接続してなる電池組と、
外部の電池接続手段と接続される接続部と、
前記電池組のプラス側に設けられ、前記接続部を介して電動工具または充電器と接続する第1の経路と、
前記電池組のマイナス側に設けられ、前記接続部を介して電動工具または充電器と接続する第2の経路と、
前記電池組と前記接続部との前記第1の経路を遮断する第1の遮断手段と、
前記電池組と前記接続部との前記第2の経路を遮断する第2の遮断手段と、
前記第1の遮断手段と、前記第2の遮断手段とを制御する制御部と、
前記制御部に所定電圧を供給する降圧回路と、
前記電池組からの放電電流を検出する電流検出手段と、
前記第1の遮断手段の状態を切替え可能な第1の切替部と、
前記第2の遮断手段の状態を切替え可能な第2の切替部と、を有し、
前記降圧回路は、前記接続部を介して充電器と接続される第3の経路と、前記電池組と接続される第4の経路とに接続され、
前記第4の経路は第3の遮断手段を備え、
前記第3の遮断手段は、前記制御部により制御され、
前記第3の経路は、前記接続部が前記充電器と接続されている場合には、前記降圧回路を介して前記制御部に前記所定電圧を供給し、
前記制御部が二次電池セルの過放電を検出したとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断し、
前記制御部は、前記電流検出手段の検出結果に基づき、前記第1の遮断手段および前記第2の遮断手段の少なくとも一方を制御し、
前記制御部に前記所定電圧が供給されないとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断し、
前記第4の経路は、前記電池組と前記第1の遮断手段との間に接続され、
前記制御部は、前記第1の切替部と前記第2の切替部とを駆動可能であり、
前記第1の経路に印加されている電圧に基づく駆動電圧が前記第1の経路から前記第2の遮断手段に印加可能であり、
前記制御部が前記第1の切替部を駆動したときに、前記第1の切替部は、前記第1の経路に印加されている電圧に基づいて、前記第1の経路を遮断する状態と、前記第1の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第1の遮断手段の状態を切替可能であり、
前記制御部が前記第2の切替部を駆動したときに、前記第2の切替部は、前記駆動電圧に基づいて、前記第2の経路を遮断する状態と、前記第2の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第2の遮断手段の状態を切替可能であることを特徴とする電動工具に用いられる電源装置と、電動工具または充電器の少なくとも一方と、からなるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等を動力とする電動工具においては、交流の商用電源や、直流の定電圧電源等を接続して用いる工具のみならず、二次電池を装着可能な電動工具が広く用いられている。二次電池を用いた電動工具、いわゆるコードレス電動工具においては、電動工具の種類・用途の拡大により、電池容量の大容量化の需要が高まっており、工具本体に直接装着する方式の電池パックのみならず、二次電池を収容し、腰に装着可能なバッテリーホルスターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−3983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者の腰に装着可能なバッテリーホルスターでは、装着可能な二次電池数に限界があり、電動工具等の携帯用電源としては、背負式等、上記バッテリーホルスターよりもさらに大容量の携帯用電源の実用化が望まれている。
【0005】
大容量の携帯用電源を実現するためには、多数の二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)をケース内部に配列され収容される。この場合、携帯用電源から出力可能なエネルギー(出力電流)は、大きくなる。
【0006】
したがって、例えば、電動工具や電源の内部抵抗が低い場合や、電源の出力端子間を短絡したときには、従来よりも大きな電流が出力される可能性がある。短絡時の出力を防止するヒューズ等の非可逆遮断素子を設けることは従来から行われているが、従来の遮断回路では、遮断を行った後の復旧に手間がかかり、また、上記のとおり大容量の携帯用電源では、ヒューズ等が溶断するまでの間に流れる電流が大きくなる傾向にあるため、新たな対策を講じる必要が生じている。
【0007】
また、前記電源が接続される電動工具は、比較的容量の大きなコンデンサを備えた構成が多く存在し、電動工具を接続した際や駆動を始めた瞬間に、前記コンデンサの容量に応じた突入電流が、電源から電動工具に流れることがある。突入電流の大きさによっては、電源における過放電を保護する回路が起動し、出力が制限される場合がある。よって、電源に十分な残量がある場合であっても、場合によって、電動工具を使用できなくなる問題が生じる。特に、大容量の電源は、小容量の電源に比べて電力を供給する能力が大きいため、従来の小容量電源が接続された場合では問題とならない程度であった突入電流に対しても、十分な対処が必要になる。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、大電流が流れたときに回路を速やかに、かつ、可逆的に遮断し、また、使用開始時等の突入電流を抑制する電源装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数の二次電池セルを接続してなる電池組と、電動工具の電池接続手段と接続される接続部と、前記電池組のプラス側に設けられ、前記電池組からの電力の出力を遮断する第1の遮断手段と、前記電池組のマイナス側に設けられ、前記電池組の電力の出力を遮断する第2の遮断手段とを有することを特徴とする電動工具に用いられる電源装置を提供する。
【0010】
以上の構成によれば、電動工具や、電源装置内部に異常が発生したときに、第1の遮断手段と第2の遮断手段とを用いて確実に電池組の出力を遮断することができる。
【0011】
前記電池組は、あらかじめ定められた第1の電圧値と、前記第1の電圧値よりも低い値であり、かつ、前記電池組に対してあらかじめ定められた第2の電圧値と、あらかじめ定められた電流値を有しており、前記第1の電圧値より高い電圧と、前記第2の電圧値より低い電池組の電圧と、前記電流値よりも大きな電流の少なくとも1つを検出可能な検出手段を有し、前記検出手段と接続され、前記第1の遮断手段、および、第2の遮断手段と接続された制御部を有し、前記制御部は、前記検出手段が前記第1の電圧値より高い電圧と、前記第2の電圧値より低い電圧と、前記電流値より大きな電流との少なくとも1つを検出した場合に、前記第1の遮断手段と、前記第2の遮断手段の少なくとも1つを用いて、電池組の出力を遮断することが好ましい。このような構成によれば、制御手段は、検出手段の検出結果に応じて、第1の手段と第2の遮断手段との少なくとも1つによって確実に電力の出力を遮断することができる。
【0012】
前記制御部の基準電圧を規定する第1の基準電圧部と、前記第2の遮断手段の基準電圧を規定する第2の基準電圧部を有し、前記第1の基準電圧部と前記第2の基準電圧部とは異なる値であることが好ましい。このような構成によれば、第2の遮断手段の状態によらずに、制御部を確実に基準電圧に規定することができる。
【0013】
前記第2の遮断手段に前記電池組の出力の遮断を実行させる制御信号を出力する制御信号出力部をさらに備え、前記制御信号出力部は、前記制御部と、前記第2の遮断手段とを電気的に非接触な状態に維持しながら、前記制御部からの信号を元に、前記制御信号を前記第2の遮断手段に出力することが好ましい。また、前記制御信号出力部はフォトカプラを有することが好ましい。このような構成によれば、制御部と、電池組の出力ラインとを直接的に電気的に接続することを避けることができるので、制御部の電圧を安定させることができる。
【0014】
前記第1の遮断手段は、前記電池組の出力経路をスイッチングにより遮断する遮断部と、前記遮断部をスイッチングによって駆動する駆動部とを備え、前記駆動部のスイッチング速度は、前記遮断部のスイッチング速度より高速であることが好ましい。このような構成によれば、第1の遮断手段のオンオフを高速にスイッチングすることができる。
【0015】
前記電池組のプラス側において、前記電池組と前記接続部との間に、第1の電流を出力する第1の経路と、前記第1の電流よりも小さい第2の電流を出力する第2の経路と、前記第1の経路と、前記第2の経路とを選択する選択手段とを有することが好ましい。このような構成によれば、第1の経路と、第2の経路とを適切に選択して電流を出力することができる。
【0016】
前記第2の経路は、電流値を制限する素子を有することが好ましい。前記電流値を制限する素子は、抵抗素子であることが好ましい。このような構成によれば、第2の経路からは電流値を制限した電流を出力することができる。
本発明は、複数の二次電池セルを接続してなる電池組と、外部の電池接続手段と接続される接続部と、前記電池組のプラス側に設けられ、前記電池組と前記接続部との第1の経路を遮断する第1の遮断手段と、前記電池組のマイナス側に設けられ、前記電池組と前記接続部との第2の経路を遮断する第2の遮断手段とを有した電源装置において、前記第1の遮断手段と、前記第2の遮断手段とを制御する制御部と、前記制御部に所定電圧を供給する降圧回路と、前記電池組からの放電電流を検出する電流検出手段と、前記第1の遮断手段の状態を切替え可能な第1の切替部と、前記第2の遮断手段の状態を切替え可能な第2の切替部と、を更に有し、前記降圧回路は、前記接続部を介して充電器と接続される第3の経路と、前記電池組と接続される第4の経路とに接続され、前記第4の経路は第3の遮断手段を備え、前記第3の遮断手段は、前記制御部により制御され、前記制御部は、前記電流検出手段の検出結果に基づき、前記第1の遮断手段および前記第2の遮断手段の少なくとも一方を制御し、前記制御部に前記所定電圧が供給されないとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断し、前記第4の経路は、前記電池組と前記第1の遮断手段との間に接続され、前記制御部は、前記第1の切替部と前記第2の切替部とを駆動可能であり、前記第1の経路に印加されている電圧に基づく駆動電圧が前記第1の経路から前記第2の遮断手段に印加可能であり、前記制御部が前記第1の切替部を駆動したときに、前記第1の切替部は、前記第1の経路に印加されている電圧に基づいて、前記第1の経路を遮断する状態と、前記第1の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第1の遮断手段の状態を切替可能であり、前記制御部が前記第2の切替部を駆動したときに、前記第2の切替部は、前記駆動電圧に基づいて、前記第2の経路を遮断する状態と、前記第2の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第2の遮断手段の状態を切替可能であることを特徴とする電動工具を提供する。
前記制御部が二次電池セルの過放電を検出したとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断することが好ましい。
前記制御部が二次電池セルの過充電を検出したとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断することが好ましい。
前記制御部に前記所定電圧が供給されないとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断することが好ましい。
前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段とは許容ピーク電流に対する特性が異なる素子からなり、前記第1の遮断手段が前記第1の経路を遮断するか否かを切替える第1の切替部と、前記第2の遮断手段が前記第2の経路を遮断するか否かを切替える第2の切替部とを更に備えることが好ましい。
前記複数の二次電池セルの少なくとも一つの電圧を監視し、電圧値があらかじめ定められた数値範囲内にあるか否かを前記制御部に報知する監視手段を更に有し、前記監視手段は、前記複数の二次電池セルの少なくとも1つの電圧を監視する通常モードと、前記複数の二次電池セルの電圧を監視せず、消費電力が前記通常モードよりも小さくなる待機モードとを有し、前記制御部に前記所定電圧が供給されないとき、前記監視手段は前記待機モードとなることが好ましい。
前記監視手段は、前記複数の二次電池セルのすべての電圧を監視することが好ましい。
前記複数の二次電池セルは複数のリチウムイオン電池であることが好ましい。
発明は、複数の二次電池セルを接続してなる電池組と、外部の電池接続手段と接続される接続部と、前記電池組のプラス側に設けられ、前記接続部を介して電動工具または充電器と接続する第1の経路と、前記電池組のマイナス側に設けられ、前記接続部を介して電動工具または充電器と接続する第2の経路と、前記電池組と前記接続部との前記第1の経路を遮断する第1の遮断手段と、前記電池組と前記接続部との前記第2の経路を遮断する第2の遮断手段とを有した電動工具に用いられる電源装置と、電動工具または充電器の少なくとも一方と、からなるシステムにおいて、前記第1の遮断手段と、前記第2の遮断手段とを制御する制御部と、前記制御部に所定電圧を供給する降圧回路と、前記電池組からの放電電流を検出する電流検出手段と、前記第1の遮断手段の状態を切替え可能な第1の切替部と、前記第2の遮断手段の状態を切替え可能な第2の切替部と、を有し、前記降圧回路は、前記接続部を介して充電器と接続される第3の経路と、前記電池組と接続される第4の経路とに接続され、前記第4の経路は第3の遮断手段を備え、前記第3の遮断手段は、前記制御部により制御され、前記第3の経路は、前記接続部が前記充電器と接続されている場合には、前記降圧回路を介して前記制御部に前記所定電圧を供給し、前記制御部が二次電池セルの過放電を検出したとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断し、前記制御部は、前記電流検出手段の検出結果に基づき、前記第1の遮断手段および前記第2の遮断手段の少なくとも一方を制御し、前記制御部に前記所定電圧が供給されないとき、前記第1の遮断手段と前記第2の遮断手段との少なくとも一方は、対応する前記第1の経路または前記第2の経路を遮断し、前記第4の経路は、前記電池組と前記第1の遮断手段との間に接続され、前記制御部は、前記第1の切替部と前記第2の切替部とを駆動可能であり、前記第1の経路に印加されている電圧に基づく駆動電圧が前記第1の経路から前記第2の遮断手段に印加可能であり、前記制御部が前記第1の切替部を駆動したときに、前記第1の切替部は、前記第1の経路に印加されている電圧に基づいて、前記第1の経路を遮断する状態と、前記第1の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第1の遮断手段の状態を切替可能であり、前記制御部が前記第2の切替部を駆動したときに、前記第2の切替部は、前記駆動電圧に基づいて、前記第2の経路を遮断する状態と、前記第2の経路を遮断しない状態とのいずれかに前記第2の遮断手段の状態を切替可能であることを特徴とする電動工具に用いられる電源装置と、電動工具または充電器の少なくとも一方と、からなるシステムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電源装置によれば、電池組からの電力の出力を遮断する第1の遮断手段と、前記電池組のマイナス側に設けられ、前記電池組の電力の出力を遮断する第2の遮断手段とを有するため、電動工具や、電源装置内部に異常が発生したときに、第1の遮断手段と第2の遮断手段とを用いて確実に電池組の出力を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態の電池パックの回路図。
図2】本実施の形態の電池パックが電動工具に電力を出力するときの処理を示すフローチャート。
図3】本実施の形態の電池パックが充電器に充電されるときの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示されるように、電池パック100は、マイコン103と、電池保護IC104と、電池組102と、出力プラス端子120、出力マイナス端子121とを備える。電池パック100は、コードレス電動工具200、又は、充電器300に接続可能である。電池パック100が電動工具200に接続されたときには、電池組102の電力が電動工具200に端子120、121を介して出力される。また、充電器300が電池パック100に接続されたときには、電池組102が充電される。
【0021】
電池組102は、直列に複数接続されることで高出力電圧とした二次電池102Bが複数並列接続された構成である。本実施の形態では、一例として二次電池102はリチウムイオン電池である。尚、本発明における電池パック100は、二次電池を有するものであれば特に限定はなく、上記大容量電源の一例として例示した背負式の電源装置に限定されるものではない。例えば、電動工具100と一体的に装着される小型の電池パック、作業者の腰に装着されるバッテリーホルスター、作業者の背中に背負われる背負式電源などにおいても、上記課題を解決することが可能な構造に適用可能である。
【0022】
マイコン103はポートP1〜P10を有している。マイコン103の接地電をG1とする。
【0023】
二次電池102のハイサイド(正極出力側)における出力経路は、メインの出力ラインたる第1経路131と、バイパスラインたる第2経路132とに分岐し、第1経路131と、第2経路132とは、接続点134で共通の第3経路133に接続される。第3経路133はプラス出力端子120に接続されている。
【0024】
電池パック100の上記経路には、第1経路に遮断回路105、第2経路に遮断回路106と、第3経路に遮断回路107とを備えている。
【0025】
第1経路遮断回路105は、一例としてpチャネル型FET1と、nチャネル型FET3とを備え、FET3のドレインはFET1のゲートに抵抗を介して接続され、FET3のゲートは、抵抗を介してマイコン103のポートP2に接続されている。ポートP2からの信号がハイまたはローに切替わることにより、FET3及びFET1のオンオフが切替えられ、第1経路131の導通、および、遮断が切替えられる。
【0026】
第2経路遮断回路106は、pチャネル型FET5と、nチャネル型FET6と、抵抗115とを備えている。FET5と抵抗115は第2経路132に設けられ、FET6のドレインは、抵抗を介してFET5のゲートに接続され、FET6のゲートは、抵抗を介してマイコン103のポートP4に接続されている。ポートP4からの信号がハイまたはローに切替わることにより、FET6及びFET5のオンオフが切替えられ、第1経路132の導通、および、遮断が切替えられる。ここで、第2遮断経路106を流れる電流は、抵抗115によって電池組102の出力電流が制限されて、第3の経路に出力される。
【0027】
第3経路遮断回路107は、pチャネル型FET2と、nチャネル型FET4とを備えている。FET2は、第3経路133に設けられている。FET4のドレインは、抵抗を介してFET2のゲートに接続され、FET4のゲートは、抵抗を介してマイコン103のポートP1に接続されている。ポートP1からの信号はハイまたはローに切替わる。これにより、FET4及びFET2のオンオフが切替えられ、第3経路133の導通、および、遮断が切替えられる。
【0028】
尚、出力経路131、132、133にそれぞれ配置されたFET1、2にはピーク電流(瞬間電流)として大電流が流れることを想定し、許容ピーク電流が大きいものを使用している。本実施の形態では、一例として、FET1、2の許容ピーク電流は、持続時間10ミリ秒(msec)で400アンペア(A)程度である。一方、FET3、4、6は、それぞれ、FET1、2、5を駆動する駆動部であり、そのオンオフの切替動作が対応するFET1、2、5よりも早い素子を使用している。
【0029】
FET1とFET2がオンし、FET5がオフであるときには、第1の経路131と第3の経路133とを介して、電池組102の出力電圧、及び、電流がそのまま端子120から出力される。一方、FET5とFET2とがオンし、FET1がオフであるときには、第2の経路132と第3の経路133とを介して、電池組102の電力が端子120から出力される。このとき、抵抗115によって電池組102からの電流が制限される。
【0030】
プラス端子120とマイコン103との間には出力電圧検出回路70が設けられている。出力電圧検出回路70は、第3経路133の電圧を検出し、検出した電圧をマイコン103に出力している。
【0031】
電池組102のローサイド(電池組102のマイナス側)と端子121との間には、ローサイド出力経路136が設けられている。ローサイド出力経路136には、シャント抵抗122を介してnチャネル型のFET7、FET14からなるローサイド遮断回路109A、109Bが設けられている。ローサイド遮断回路109Aは充電時の電流を遮断し、ローダサイド遮断回路109Bは放電時の電流を遮断する。FET7、FET14には大電流が流れることを想定し、上記FET1,2と同様に許容ピーク電流が大きいものを使用している。ここで、FET7、14は、許容ピーク電流等に対する特性が、FET1、2とは異なる素子であることが好適である。上記プラス端子120側の第3経路に印加される電圧を抵抗141と抵抗142とにより分圧し、基準(接地)電位B2に対する電圧Bが抵抗を介してFET7、14のゲートに供給される。なお、ローサイド遮断回路109Aが接地される接地(基準)電位G2は基準電位G1とは異なる。なお、基準電位G1は、シャント抵抗下部の基準電位G3と同電位である。このようにマイコン103と、ローサイド遮断回路109Aの基準電位を分離することで、FET7、14のオン、オフに関わらず定常的にFET7、14のソース電位、及び、マイコン103の基準電位を安定にすることが可能になる。
【0032】
フォトカプラ110Aは、ポートP9Aとローサイド遮断回路109Aとを光学的に接続している。マイコン103からのハイ信号、ロー信号により、フォトカプラ110Aを介してFET7のオン、オフを切替え、電池組102からの電力の供給、遮断を切替えている。フォトカプラ110Aを用いることにより、マイコン103と、FET7とを電気的に分離しながら、電池組102の電力の供給と遮断とを切替えることが可能になる。同様に、フォトカプラ110Bは、ポートP9Bとローサイド遮断回路109Bとを光学的に接続している。マイコン103からのハイ信号、ロー信号により、フォトカプラ110Bを介してFET14のオン、オフを切替え、電池組102への電力の供給、遮断を切替えている。フォトカプラ110Bを用いることにより、マイコン103と、FET14とを電気的に分離しながら、電池組102の電力の供給と遮断とを切替えることが可能になる。フォトカプラ110A,110Bは、基準電位G1,G2が異なるマイコン103とFET7、14とにおける信号の伝達のために設けられたものであり、電磁リレーやトランス等、任意の代替手段を採用することが可能である。
【0033】
電池組102のローサイドにはショート電流検出回路119が設けられている。ショート電流検出回路119は、出力電流が所定値以上であるかを検出することで、端子120、121間のショートを検出する。本実施の形態では、検出された前記ショート信号は、マイコン103のポートP8に入力され、該信号に基づきマイコン103はFET1,14を遮断する。尚、ショート信号をマイコン103に入力すると共に、又は、入力に代えて、前記信号を保持するラッチ回路を設け、該ラッチ回路によりFET1,14を遮断するドライブ回路を設ける構成としてもよい。
【0034】
電池組102のプラス側の電圧Vddは、スイッチ回路140と降圧回路117とを介してマイコン103に供給される。スイッチ回路140は、スイッチSWと、FET10と、FET11とを備えている。FET11はポートP3とFET10とに接続されている。スイッチSWはユーザによって切替え可能なスイッチである。スイッチSWがオンされると電圧Vddが抵抗を介してFET11に印加され、FET11、FET10がオンされるこれにより電圧Vddが降圧回路117に印加される。降圧回路117は、電圧Vddを降圧した電圧をマイコン103に印加する。本実施の形態では、一例として、電圧Vddは5Vである。これによりマイコン103が起動する。
【0035】
FET10のソース、ドレイン間にサーマルプロテクタ230が設けられている。サーマルプロテクタ230は、自身の温度によってオン、オフが切替る。本実施の形態では、所定の温度(一例として100℃)以上になるとオンされ、所定の温度未満であればオフされる。本実施の形態ではサーマルプロテクタ230は電池組102の近傍に設けられており、電池組102の温度を監視し、仮に、FET10が駆動しておらず、充電器も接続されていないためにマイコン103が休止状態であったとしても、電池組102の温度が上昇した場合は、該サーマルプロテクタ230がオンされ、マイコン103や電圧Aの接続回路に電力が供給される。尚、サーマルプロテクタ230はスピーカなどの報知装置を備えてもよく、サーマルプロテクタ230がオンされたときに報知装置によってユーザに温度が上昇していることを報知する構成としてもよい。
【0036】
プラス端子120から降圧回路117の間に充電経路135が設けられている。充電器300が電池パック100に接続されたときには、充電器300からの電圧は充電経路135を経由して降圧回路117に印加される。充電器300からの電圧は降圧回路117によって降圧されマイコン103に印加される。これにより、マイコン103が起動する。以下では、降圧回路117に入力される電圧をAとする。
【0037】
電池保護IC104は、各二次電池セルの通常使用における所定の上限電圧値以上(以下、便宜的に「過充電電圧」と呼ぶ。)、及び、通常使用における所定の下限電圧値以下(以下、便宜的に「過放電電圧」と呼ぶ。)にならないように監視する。保護回路IC104はポートP11〜P13を備えている。電池保護IC104は通常モードと待機モードとに切替え可能であり、通常モードにおいて各二次電池セルの過充電(過電圧)、過放電を監視する。待機モードにおいては、電池保護IC104は、各二次電池セルの過充電(過電圧)、過放電を監視しない。待機モードでは、電池保護IC104は電力を全く消費しないか、あるいは、通常モードの消費電力よりはるかに小さく、過放電電圧以下の二次電池セルが接続された場合であっても該二次電池に影響を与えない程度、すなわち、消費が無視できる程度の電力消費である。電池保護IC104は、本実施の形態では、ポートP13にハイ信号が入力されているときに通常モードになり、ロー信号が入力されているときには待機モードになる。
【0038】
過充電信号送出回路111は、FET12からなり、ポートP11とポートP6との間に設けられている。電池保護IC104が、二次電池102の一つが、所定の上限電圧値以上であると判断すると、ポートP11からハイ信号を過充電信号送出回路111に送出し、過放電送出回路111においてFET12がオンされることによりポートP6に過充電信号たるロー信号が送出される。
【0039】
FET12のゲートとポートP11との間には、過充電信号遮断回路210が設けられている。過充電信号遮断回路210は、FET18と、FET16と、FET16のゲート、ソース間に設けられたRC回路16を構成する抵抗16Rとコンデンサ16Cとを備える。FET16には電圧Aが印加されている。従って、電圧Aがゼロになると、FET16、FET18がオフされ、ポートP11と、グランド間の経路は遮断されるため、該回路は電力を消費しない。
【0040】
過放電信号送出回路112は、FET13からなり、ポートP12とポートP7との間に設けられている。電池保護IC104が、二次電池102の一つが所定の下限電圧値以下であると判断すると、ポートP12からハイ信号を過放電送出回路112に送出し、過放電送出回路112においてFET13がオンされることによりポートP7に過放電信号たるロー信号が送出される。
【0041】
FET13のゲートとポートP12との間には、過放電信号遮断回路220が設けられている。過放電信号遮断回路220は、FET15と、FET17と、FET17のゲート、ソース間に設けられたRC回路を構成する抵抗117Rとコンデンサ117Cとを備えている。FET15には電圧Aが印加されている。従って、電圧Aが低下すると、FET17、FET15がオフされ、ポートP12と、グランド間の経路が遮断されるため、該回路は電力を消費しない。
【0042】
切替回路150は、電池保護IC104を通常モードと待機モードとの何れか一方に切替える。切替回路150は、FET8、FET9を有している。スイッチSWが押下された場合、何らかの理由で電池温度が所定温度以上となり、サーマルプロテクタ230がオンされた場合、あるいは、充電器からの充電電圧が充電経路135を介して降圧回路117に印加されたときに、電圧Aが抵抗を介してFET9に印加され、結果としてFET8がオンする。これにより切替回路150から電池保護IC104にハイ信号が送出され、電池保護IC104が通常モードになり、二次電池102の過放電、過充電を監視する。一方、切替回路150のポートP13にロー信号が送出されているときには、電池保護IC104が待機モードになる。待機モードにおいて電池保護IC104は、二次電池102の過放電、過充電を監視せず、上述のとおり、電力を消費しない、あるいは、超低消費電力状態になる。ただし、ポートP11と、ポートP12とは過充電、及び、過放電を警告する状態として、一例としてハイ信号状態に維持される。尚、他の例としては、通常状態を、ハイ信号状態とし、過充電,過放電等の非通常状態をロー信号や無信号状態等にする構成であってもよい。
【0043】
スイッチSWがオフされたときや、電力が電動工具200などによって消費され電池電圧が低下したとき、あるいは、充電中に充電器300との接続が解除され、電池電圧が十分に高くないときには、電圧Aが低い状態になり、FET9のゲートがロー状態になるため、FET9がオフされる。このときには電池保護IC104は待機モードになる。また、電圧Aの低下により遮断回路210、220がそれぞれ、ポートP11とグランドとの接続、及び、Pポート12とグランドとの接続を遮断する。これにより、P11、P12は過電圧、過放電を示す状態(ハイ状態)を維持しながら、ポートP11、P12からの電流が遮断された状態になる。ポートP11とグランド間の消費電力、および、ポート12とグランド間は電力消費がなくなる。これにより、電源装置100の消費電力を低減することができる。また、例えば、サーマルプロテクタ230が高温を検知し、オンしたときなど、異常起動時にマイコン103が作動し、かつ、電圧Aにより遮断回路210、220が通電したときに、直ちにP11、P12から過充電信号、過放電信号が出力される。これにより、異常時において、マイコン103が過充電信号、過放電信号を受取り、FET1、2、7、14を用いて電池組102からの出力を遮断することができる。
【0044】
尚、電圧AがFET16、17に印加された直後は、RC回路16、17の時定数に応じた所定時間、FET16、FET17はオンされない。言い換えれば、電圧Aがハイになってから、電池保護IC104が起動する時間は、電圧AがハイになってからFET14、15がオンになる時間より短い。この期間(電圧AがハイになってからFET14、15がオンになる時間)に電池保護IC104が起動し、電池組102に異常がないことを確認する。もし、電池組102に異常がなければポートP11、12をロー状態に変更する。これにより、電池保護IC104が、電池組102に異常がないことを確認する前に、マイコン103に過充電信号、過放電信号を誤送出することを防止している。このため、電池組102が正常であるにも関わらず、マイコン103が電池組に異常があったと判断して誤動作することを防止することができる。
【0045】
電池電圧検出回路160は、電池組102の電圧を検出し、検出結果をマイコン103のポートP6に出力する。
【0046】
電池パック100が電動工具200に電力を出力中に、出力電圧検出回路70において所定の電圧より大きい電圧を検知した場合や、電池組102が電力を出力中に電池保護ICから過放電信号が出力された場合、ショート電流検出回路がショートを検出した場合には、マイコン103は、FET1,FET2、FET9、及びFET14、特に、FET1,14をオフさせて電力の供給を遮断する。
【0047】
また、電池組102が充電されているときに、電池保護IC104から過充電信号が出力された場合には、マイコン103はFET1,FET2、FET7、及びFET14、特にFET2,FET7をオフさせて充電を遮断する。
【0048】
次に電池パック100の放電時における突入電流防止処理について図2を参照して説明する。この処理によって、電池パック100が接続する電動工具200に放電を開始する際、電動工具200に搭載される大容量(一例として500μF程度)のコンデンサに突入電流が流れるのを防止している。
【0049】
S1において、ユーザがスイッチ141をオンし、FET10がオンされ、マイコン103が起動する。マイコン103は、ポートP4、ポートP1の両者にハイ信号を送出し、FET5、FET2をオンする。このときポートP2はロー状態であり、FET1はオフされている。これにより、第2経路132、および、第3経路133が導通する。また、電圧Bが抵抗を介してFET7に印加され、FET7がオンされ、ローサイド経路136が導通する。これにより、電池組102の電力は第2経路132、第3経路133を経て端子120に出力される。第2経路の抵抗115によって、電流が制限され、電動工具200のコンデンサが小電流により充電される。
【0050】
S2においてマイコン103は、出力電圧検出回路70と電池電圧検出回路160との検出結果を比較し、電池組102の電圧(定格電圧)と出力電圧との差が、例えば1V以下であるかを判定する。S2が肯定判定されたときには(S2:YES)、電動工具2のコンデンサが十分チャージされたとみなせるため、S3において、ポートP2をハイに維持してFET2をオンしたまま、ポートP4、ポートP2とにそれぞれロー信号とハイ信号を出力し、FET5をオフさせると共にFET1をオンさせる。これにより第2経路132が遮断され、第1経路131、第3経路133が導通する。その結果、S4において、第1経路131、第3経路133を介して電池組102の電力が、そのまま端子120から供給される。これにより、電動工具200は通常動作(モータの回転など)が可能になる。なお、上述した電圧を判定する方式に代えて、一定時間(例えば100ミリ秒(msec)経過後に、FET5をオフし、FET1をオンする構成としてもよい。
【0051】
一方、S2が否定判定された場合には、S5において、S1のタイミング(マイコン103が起動した時点)から所定時間(一例として5秒等。)が経過したかどうかを判定する。かかる所定時間は電動工具200のコンデンサが充電されるのに十分な時間に基づいて事前に定めた任意の値である。S5において否定判定された場合には(S5:NO)、S2に処理が戻る。S5が肯定判定されたときには(S5:YES)、S6において、マイコン103は異常が発生していると判断しFET1、5、2、7、及び、14をオフし出力経路を遮断する。
【0052】
次に充電開始処理について図3に基づき説明する。尚、電池パック100において、ユーザがスイッチ回路140を遮断し、端子120に何も装着されていないときには、FET1、2、7、及び14はオフ状態である。S21において、電池パック100が充電器300に装着される。これにより、端子120、充電経路135を介して充電器300の電圧が降圧回路117に入力される。降圧回路117は入力された電圧を降圧しマイコン103に出力する。これによりマイコン103が起動する。また、充電器300から電圧が印加されることに伴って、S22において、充電器300の電圧を分圧した電圧BがFET7に印加され、FET7、及び、14がオンされる。これにより、ローサイド出力経路136が導通する。S23において、出力電圧検出回路70を介してマイコン103は充電電圧が入力されていると判断する。S24において、マイコン103は充電を実行するために、ポートP2、P4からハイ信号を出力して、FET1、2をオンさせる。これにより充電電圧が電池組102に印加され充電が開始される。S25においてマイコン103は充電が完了したかどうかを判定し、充電が完了しない間は(S25:NO)待機状態になる。充電が完了した場合には(S26:YES)FET1、2、7、および、14をオフして充電制御を終了する。
【0053】
以上の本実施の形態の電池パック100では、電池組102のハイサイドにおいて第1、2、3遮断回路105、106、107によって電力の供給が遮断され、電池組102のローサイドにおいて、ローサイド遮断回路109A、109Bによって電力の供給が遮断される。これにより、出力ラインがショートした場合において、電力の遮断を確実に行うことができる。特に出力の大きい電池パックにおいては、FETに印加される電圧は高く、電流も大きくなる。そのため、ピーク電流近傍の電流がFETに流れることに対して十分な対策が求められる。本実施の形態では電池組のハイサイドとローサイドとで独立に遮断回路を設けているため一方の遮断回路に問題が生じても他方の遮断回路により電力供給を遮断することができ、仮に異常時に確実に電流を遮断することができる。
【0054】
また、ハイサイドはpチャネル型のFET1、2、5によって電流が遮断され、ローサイドはnチャネル型のFET7、14によって電流が遮断される。即ち、ハイサイドとローサイドとで特性が異なるFETを用いて電流の遮断をしている。このため、FETをハイサイド又はローサイドの一方のみとした場合と比べて、保護の二重化を行うことができる。尚、上記構成に加えて、前記FETの許容ピーク電流と同等、もしくは、それ以上に閾値を有するヒューズ等の溶断型の遮断素子を更に設けることも好ましい。
【0055】
また、本実施の形態では、電動工具200への放電時に、まず、第2経路132、第3経路133によるの出力を行い、その後に、第1経路131、第3経路133による、電池組102からのそのままの電圧の出力をしている。第2経路132に設けた突入電流を制限する抵抗115により、接続、もしくは、起動時の電動工具200に流れる突入電流を軽減している。
【0056】
尚、本実施の形態では、ハイサイドとローサイドにそれぞれ遮断回路を設けた構成を例示していたが、例えば、ハイサイドに複数の特性からなるFETを主体とした遮断回路を複数設けローサイドには設けない構成、あるいは、逆にローサイドに複数の遮断回路を設け、ハイサイドには設けない構成とすることも可能である。また、上記実施の形態と同様に、ハイサイドとローサイドのそれぞれに遮断回路を設けた上で、ハイサイド、又はローサイドのいずれか一方、もしくは、両方に対し、複数の特性からなるFETを主体とした遮断回路を複数設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
102 電池組
103 マイコン
104 保護回路
105 第1経路遮断回路
106 第2経路遮断回路
107 第3経路遮断回路
109A、109B ローサイド遮断回路
210 過充電信号遮断回路
220 過放電信号遮断回路

図1
図2
図3