特許第6462989号(P6462989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462989炉内切断で長いインゴットを製作する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462989
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】炉内切断で長いインゴットを製作する方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20190121BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20190121BHJP
   B22D 11/041 20060101ALI20190121BHJP
   B22D 11/12 20060101ALI20190121BHJP
   B22D 11/126 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B22D11/16 D
   B22D11/00 D
   B22D11/041 D
   B22D11/12 B
   B22D11/126 Z
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-41152(P2014-41152)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-172093(P2014-172093A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】13/785,467
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518384618
【氏名又は名称】アルコニック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・ジャック
(72)【発明者】
【氏名】クワーン−オー・ユー
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−179499(JP,A)
【文献】 特開平11−170020(JP,A)
【文献】 特開2004−025299(JP,A)
【文献】 米国特許第07484549(US,B2)
【文献】 特表2012−525982(JP,A)
【文献】 特開平02−051493(JP,A)
【文献】 実開昭59−006048(JP,U)
【文献】 特開平07−118773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/16
B22D 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内部チャンバの不活性ガス雰囲気内で、前記炉内部チャンバ内に配置された連続鋳型を用いて、金属鋳造物を形成するステップと、
前記炉内部チャンバ内で切断器を用いて前記金属鋳造物を切断し、前記炉内部チャンバ内に未完成金属インゴットを形成し、前記炉内部チャンバ内で前記未完成金属インゴットの下流に完成金属インゴットを形成するステップと
を含み、
前記切断するステップが切り屑を生じさせ、前記切り屑が環状障壁を越えて落下するのを防止するように前記金属鋳造物の外周に係合しまたはその近傍に位置する前記切断器の下流にある前記環状障壁を通って、前記金属鋳造物を移動させるステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記環状障壁により、前記切り屑が、前記炉内部チャンバの下方に位置する分離バルブ上へ落下するのを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環状障壁により、前記完成インゴットに係合して降下させる、前記炉内部チャンバの下方に位置するインゴットリフト上へ前記切り屑が落下するのを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炉内部チャンバが、互いに流動的に連通している第1および第2の内部チャンバを備え、
前記方法が、前記完成インゴットを前記第1の内部チャンバから前記第2の内部チャンバ内へ下流に移動させるステップをさらに含み、
前記環状障壁により、前記切り屑が前記第2の内部チャンバ内へ落下するのを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粉塵が環状障壁の上流へ移動するのを防止するように前記金属鋳造物の外周に係合しまたはその近傍に位置する前記切断器の上流にある別の環状障壁を通って、前記金属鋳造物を移動させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炉内部チャンバのローラ空間内で前記金属鋳造物を複数のローラに係合させるステップをさらに含み、前記環状障壁により、粉塵が上流へ移動して前記ローラ空間内へ入るのを防止する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記連続鋳型が、前記炉内部チャンバの溶融空間内に配置され、前記環状障壁により、粉塵が前記溶融空間内へ上流に移動するのを防止する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記炉内部チャンバの第1のチャンバから前記炉内部チャンバの第2のチャンバ内へ前記完成金属インゴットを移動させるステップと、
前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間の連通を閉鎖するステップと、
前記第2のチャンバから前記完成インゴットを取り出すステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のチャンバから前記第2のチャンバを切断するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のチャンバに対して前記第2のチャンバを降下させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のチャンバが前記第1のチャンバから前記完成インゴットを受け取る受取り位置から、前記取出しステップが行われる回収位置へ、前記第2のチャンバを移動させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のチャンバが出口開口を有し、
前記第2のチャンバが、前記受取り位置で前記出口開口近傍に位置合わせされた入口開口を有し、
前記入口開口が、前記回収位置で前記出口開口から離れている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のチャンバから前記完成インゴットを取り出すステップ後、
前記第2のチャンバを排気するステップと、
前記第2のチャンバを不活性ガスで充填するステップと、
前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間の連通を開放するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記切断器近傍に位置する温度制御アセンブリを用いて、前記金属鋳造物を加熱または冷却するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記切断器近傍に位置する締付け具を用いて、前記金属鋳造物を締め付けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記炉内部チャンバの第1のチャンバから、前記炉内部チャンバの第2のチャンバ内へ前記第2のチャンバの入口開口を通って、前記完成金属インゴットを移動させるステップと、
前記第2のチャンバから、前記入口開口を通って前記第1および第2のチャンバの外部の雰囲気中へ、前記完成インゴットを取り出すステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記切断器が、(a)プラズマトーチおよび(b)枠上に剛性の切断部材が移動可能に取り付けられるようになっている枠のうち一方を備える、前記、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記形成ステップが、プラズマトーチを用いて炉床内で金属を溶融させて、前記炉床から前記型内へ溶融金属を鋳込むステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記炉内部チャンバ内で前記金属鋳造物を複数のローラに係合させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、金属を鋳造する炉およびそのような炉を使用する方法に関する。より詳細には、この炉は、特に高温になると酸素と反応しやすいチタンなどの金属を連続して鋳造するように構成される。具体的には、この炉は、炉内で金属鋳造物を切断する切断器と、事実上停止しない鋳造プロセスを容易にする回収チャンバとを含む。
【背景技術】
【0002】
多くの連続鋳造炉構成が知られている。たとえば、Jacksonらに付与された米国特許第7,470,305号は、共通の炉床から2つの連続する鋳型内へ鋳込みを交互に行って交互にインゴットを形成し、2つのリフトを交互に使用して、これらのインゴットを2つの別個の回収チャンバ内へ降下させるように構成された炉を開示している。各回収チャンバは、炉床および型が配置されている溶融チャンバから選択的に遮断することができる。各回収チャンバは、それぞれのインゴットをそこから取り出すために開放できるドアを有する。Jacksonの炉は、交互鋳込み方法によって実質上連続する鋳造を実現する一方、したがってこの炉は、2つの型、各型に対するトーチ、2つの回収チャンバ、および2つのリフトを必要とする。さらに、Jacksonの炉は、実質上回収チャンバの下へ延びるラムリフトを使用しており、したがって動作にはさらなる垂直方向の空間を必要とする。
【0003】
チタンおよび特定の他の金属は、高温になると、酸素と非常によく反応する。したがって、そのような金属を鋳造するときは、加熱されたインゴットが炉外の空気に露出されるのを防止することが望ましい。Jacquesらに付与された米国特許第7,484,549号は、炉室を出た後に高温のインゴットを酸素への露出から守るように、インゴット上でガラスまたは他の被覆を使用してそのような反応性金属を鋳造する連続鋳造炉を開示している。そのような被覆は、高温のインゴットが酸素に露出されるのを防止する一方、この方法は、ガラス被覆を施すための構成および被覆をインゴットに適切に施すための制御部を必要とする。さらに、特定の例では、インゴットの外周上にガラスまたは他の被覆のないインゴットを作ることが望ましいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,470,305号
【特許文献2】米国特許第7,484,549号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野では、高い効率の連続鋳造を実現する比較的低コストの炉が必要とされている。本発明は、上記で論じた炉などの他の従来技術の炉に伴う様々な構造およびプロセスをなくしながら、そのような炉を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、炉内部チャンバの不活性ガス雰囲気内で、炉内部チャンバ内に配置された連続鋳型を用いて、金属鋳造物を形成するステップと、炉内部チャンバ内で切
断器を用いて金属鋳造物を切断し、炉内部チャンバ内に未完成金属インゴットを形成し、炉内部チャンバ内で未完成インゴットの下流に完成金属インゴットを形成するステップとを含む方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の例示的な連続鋳造炉の概略断面図である。
図2】型から上部チャンバのローラ区間内へ延びる金属鋳造物を形成する初期段階を示す、図1に類似の図である。
図3】型から上部チャンバのローラ区間および切断区間を通って受取り位置にある下部回収チャンバ内へ延びて、切断器区間内で切断器によって切断されている後の形成段階の金属鋳造物を示す、図2に類似の図である。
図4】金属鋳造物を切断区間内で切断して完成インゴットを形成し、この完成インゴットが受取り位置にある下部回収チャンバ内へ降下して、残りの未完成インゴットが型から上部チャンバのローラおよび切断区間を通って延びていることを示す、図3に類似の図である。
図5】下部回収チャンバが回収位置へ移動し、完成インゴットが下部回収チャンバから回収されていることを示す、図4に類似の図である。
図6図3と同じ動作段階にある第2の例示的な連続鋳造炉を示す、図3に類似の図である。
図7図4と同じ段階にある第2の例示的な炉を示す、図6に類似の図である。
図8図5と同じ段階にある第2の例示的な炉を示す、図7に類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に、本発明の連続鋳造炉を全体として1で示す。炉1は、第1または上部のチャンバ2と、第1のチャンバ2の下流に位置する第2または下部のチャンバ4とを含む。チャンバ2および4間では、第1のチャンバ2の下部下流端部8に、または下部下流端部8に沿って、かつ第2のチャンバ4の上部上流端部10に、または上部上流端部10に沿って、分離アセンブリ6が位置決めされる。例示的な実施形態では、下部チャンバ4は、上部チャンバ2に対して移動可能である。
【0009】
上部チャンバ2は、溶融サブチャンバまたは区間12、ローラサブチャンバまたは区間14、および切断サブチャンバまたは区間16を含むいくつかのサブチャンバまたはチャンバ区間を含む。第1のチャンバ2は、剛性の溶融サブチャンバまたは区間壁22、剛性のローラサブチャンバまたは区間壁24、および剛性の切断サブチャンバまたは区間壁26を含む第1または上部の内部チャンバ20を画定する剛性の第1または上部のチャンバ壁18を含む。壁22は内部溶融空間28を画定し、壁24は内部ローラ空間30を画定し、壁26は内部切断空間32を画定する。上部チャンバ壁18は、第1または上部の通路壁34、第2または中間の通路壁36、および第3または下部の通路壁38をさらに含む。通常、壁34、36、および38はそれぞれ、管またはパイプの形である。空間20は全体として、溶融空間28の頂部から下部通路壁38の底部近傍まで延びる。
【0010】
上部通路壁34の上部または上流の端部は、溶融区間12の壁22の底部または下流の端部に剛性の連結部で堅く連結され、上部通路壁34の下部または下流の端部は、ローラ区間14の壁24の頂部または上流の端部に剛性の連結部で堅く連結される。同様に、中間通路壁36の上部または上流の端部は、ローラ区間14の壁24の底部または下流の端部に剛性の連結部で堅く連結され、中間通路壁36の下部または下流の端部は、切断区間16の壁26の頂部または上流の端部に剛性の連結部で堅く連結される。下部通路壁38の上部または上流の端部は、切断区間16の壁26の底部または下流の端部に剛性の連結部で堅く連結される。下部通路壁38は、そこから下部または下流の端部まで下方へ延びる。下部通路壁38の下部または下流の端部近傍で、下部通路壁38に分離アセンブリ6が連結される。
【0011】
溶融区間壁22は、その底壁部分に沿って、上部通路壁34によって画定された通路の上部または上流の端部に垂直方向に位置合わせされて流動的に連通している底部出口開口40を画定する。ローラ区間壁24は、その頂壁部分に沿って、上部通路壁34によって画定された通路の下部または下流の端部に垂直方向に位置合わせされて流動的に連通している頂部入口開口42を画定する。ローラ区間壁24は、その底壁部分に沿って、中間通路壁36によって画定された通路の上部または上流の端部に垂直方向に位置合わせされて流動的に連通している底部出口開口44を画定する。切断区間壁26は、その頂壁部分に沿って、中間通路壁36によって画定された通路の下部または下流の端部に垂直方向に位置合わせされて流動的に連通している頂部入口開口46を画定する。切断区間壁26は、その底壁部分に沿って、下部通路壁38によって画定された通路の上部または上流の端部に垂直方向に位置合わせされて流動的に連通している底部出口開口48を画定する。下部通路壁38によって画定された通路は、底部出口開口50を有する。
【0012】
空間20内で、中間壁36の通路の下流端部の近傍で切断器区間16の壁26の上部または上流の部分に、環状の上部または頂部の障壁47が取り付けられる。空間20内で、下壁38の通路の上流端部の近傍で切断器区間16の壁26の下部または下流の部分に、環状の下部または底部の障壁49が取り付けられる。障壁47および49はそれぞれ、貫通開口を画定する内周を有し、金属鋳造物は、炉1の鋳造動作中に下方へ移動するとき、この貫通開口を通過する。これらの内周はそれぞれ、型54の内周および型54内で形成される金属鋳造物の外周と実質上同じ寸法および形状を有し、またはやや大きくてもよい。障壁の内周が金属鋳造物の外周と同じである場合、この障壁をワイパと呼ぶこともできる。それは、鋳造物が障壁/ワイパを通って延びるときに障壁が金属鋳造物の外周に係合するためである。各障壁47、49の内周は、たとえば、環状障壁を通って金属鋳造物を受け取ったときに、障壁の内周のどの点も金属鋳造物の外周から外方へ0.1587cm(1/16インチ)、0.3175cm(1/8インチ)、または0.635cm(1/4インチ)の正常距離を超えて隔置されないように寸法設定することができる。したがって、金属鋳造物またはインゴットが円筒形である場合、環状障壁47または49の内周の直径は、たとえば、型54の内径および金属鋳造物の外径と同じになるように、または型54の内径および金属鋳造物の外径より0.3175cm(1/8インチ)、0.635cm(1/4インチ)、もしくは1.27cm(1/2インチ)を超えて大きくならないように制限することができる。障壁47および49はそれぞれ、たとえば、高温圧縮性のシールもしくはパッキングの形、金属ブレードの形、または任意の他の適した構成とすることができる。
【0013】
炉1は、溶融区間12の内部空間28内に、溶融空洞を画定する主または溶融炉床52と、その頂部から底部まで延びる貫通鋳造空洞を画定する内周を有する連続鋳型54と、溶融炉床熱源56と、型熱源58とをさらに含む。通常、炉床52は、水冷式であり、通常は炉床52があふれ出ることによって型54の頂部に流動的に連通している。通常、熱源56および58はプラズマトーチであるが、適した条件下で他の熱源を使用することもできる。例示的な実施形態では、炉床52によって画定された溶融空洞の真上に炉床トーチ56が位置決めされ、型54によって画定された型空洞の真上に型トーチ58が位置決めされる。
【0014】
ローラ区間14の空間30内で壁24上に、数組の上部インゴットローラ60が回転可能に取り付けられ、上部金属鋳造物もしくはインゴットリフトまたは降下機構を形成する。各組は1対のローラ60を含み、ローラ60は、金属鋳造物が型54から区間14内で下方へ移動するとき、金属鋳造物の外周に回転係合して間に金属鋳造物を締め付ける。切断区間16の空間32内には、切断器または切断デバイス62が配置される。例示的な実施形態では、金属鋳造物切断器62は通常、枠と、枠上に移動可能に取り付けられた剛性の切断部材63とを有する物理的または機械的切断器である。たとえば、切断器62は、剛性の剪断部材の形の切断部材を有する剪断タイプの切断器とすることができ、または通常は回転可能に取り付けられ、もしくは前後に振動するように移動可能である、研磨切断ホイールもしくはブレードの形の切断部材を有する研磨切断器とすることができる。プラズマトーチを使用する場合、および/または高温になると酸素と反応しやすい金属を鋳造する場合など、炉内の雰囲気を不活性にする必要があるとき、切断デバイスは、酸素を使用する切断トーチを使用しない。さらに、炉内の雰囲気は通常、水を含むべきではなく、したがって、切断デバイスは通常、噴射水流を使用しない。インゴット切断器62はまた、プラズマトーチに着火したときに切断部材63がプラズマプルームになるように、不活性ガス雰囲気内にプラズマトーチ切断器を含むことができる。
【0015】
切断区間16の空間32内に、1つまたは複数の締付けアセンブリを配置することもできる。例示的な実施形態では、切断区間16内で、切断器62近傍、かつ切断器62の上流、または切断器62より高い位置に、上部締付けアセンブリ55Aが取り付けられ、また、切断区間16内で、切断器62近傍、かつ切断器62の下流、または切断器62より低い位置に、下部締付けアセンブリ55Bが取り付けられる。締付けアセンブリ55はそれぞれ、締付け位置と非締付け位置との間で移動可能な2つ以上の締付け部材57を有する。図1図2図4、および図5に非締付け位置を示し、図3に締付け位置を示す。締付けアセンブリ55は、振れ止めの形とすることができ、これには多数のタイプがある。締付けアセンブリには、任意の適した駆動機構によって動力供給することができる。例示的な実施形態では、駆動機構は、締付け位置と非締付け位置との間で締付け部材57を油圧で移動させる油圧駆動機構である。油圧で動力供給される締付け機構の一例は、油圧ロブスタークロー(lobster claw)と呼ばれることがあり、締付け位置と非締付け位置との間を移動するように枢動可能に取り付けられた1対のはさみまたは締付け部材を含む。しかし、締付け部材57は、たとえば、締付け位置と非締付け位置との間を線形に移動することができる。
【0016】
切断区間16内で空間32内に、温度制御アセンブリまたはユニット59を配置することもできる。ユニット59は、加熱デバイスおよび冷却デバイスの一方または両方を含むことができる。ユニット59は、鋳造プロセス中に金属鋳造物がそこを通過するときに金属鋳造物を囲むように、環状の構成を有することができる。ユニット59の加熱デバイスは、金属鋳造物および金属鋳造物が通過する経路を囲む誘導コイルを含むことができる。また、加熱デバイスは、金属鋳造物もしくは金属鋳造物が進む経路に外接し、またはその周りに全体として隔置される抵抗加熱要素を含むことができる。ユニット59の冷却デバイスは、切断区間16の空間32内で金属鋳造物の外周に沿って不活性ガスを供給または送出する不活性ガス冷却デバイスとすることができる。たとえば、不活性ガス冷却デバイスは、パイプを通って受け取られたときに金属鋳造物および金属鋳造物が進む経路に外接する冷却リングまたは環状パイプを含むことができる。環状パイプは、金属鋳造物の外周の方へ径方向に内方へ誘導された複数の出口ポートまたはノズルを有するように形成することができる。冷却デバイスは、全体として59で示すノズルアセンブリまたは環状パイプから図示の下部供給源78などの不活性ガス源の1つへ延びる不活性ガスライン61によって供給することができる。供給源78近傍または他の位置に送風器を供給して、供給源78からライン61を通ってユニット59の冷却デバイスまたはアセンブリへ不活性ガスを送出することができる。したがって、不活性ガス源78と、送風器と、不活性ガスライン61と、ノズルアセンブリまたは冷却リングと、出口開口またはノズル近傍の空間32の金属鋳造物経路または部分とはすべて、互いに流動的に連通している。
【0017】
分離アセンブリ6は、第1または上部の分離バルブ64と、上部バルブ64の真下で下流に位置する第2または下部の分離バルブ66とを含む。バルブ64および66はそれぞれ、開放位置および閉鎖位置を有する。より具体的には、バルブ64および66はそれぞれ、シールを備えたドア65を有し、ドア65は、閉鎖位置(図4図5)では、下壁38の通路を横切る気密性または本質的に気密性のシールを提供し、開放位置(図1〜3)では、対応する気密性のシールを破断して上部チャンバ2と下部チャンバ4との間で下部通路壁38の通路を通じた連通を解放する。バルブ64および66は、開放位置と閉鎖位置との間でそれぞれのドアを移動させるように独立して動作可能である。
【0018】
下部チャンバ4は、通常は円筒形の管またはパイプの形で内部空間またはチャンバ70を受け取る下部チャンバインゴットを画定する下部チャンバ壁68を備える。内部チャンバ70は、壁68の頂部および下部分離バルブ66、またはそれらの近傍に、頂部入口開口72を有する。入口開口72は通常、開放位置にある下部バルブ66によって画定される。下部チャンバ4の空間70内で壁68上に、複数組の下部インゴットローラ71が回転可能に取り付けられ、下部金属鋳造物もしくはインゴットリフトまたは降下機構を形成する。下部金属鋳造物もしくはインゴットリフトまたは降下機構はまた、金属鋳造物もしくはインゴット回収機構またはそのような回収機構の一部として働くこともできる。各組は1対のローラ71を含み、ローラ71は、金属鋳造物が下部チャンバ4内で下方へ移動するとき、金属鋳造物の外周に回転係合して間に金属鋳造物を締め付ける。下部チャンバ4は、図1〜4に示す接合または連結されたインゴット受取り位置と、図5に実線で示す分離または切断されたインゴット回収位置との間を移動可能である。インゴット受取り位置で、下部チャンバ4の上端部10は、上部チャンバ2の下端部8に連結または固定され、上部入口開口72は、底部出口開口50に垂直方向に位置合わせされ、その結果、上部内部チャンバ20と下部内部チャンバ70は互いに流動的に連通し、内部チャンバ70は、上部内部チャンバ20から開口50および72を介してインゴットを受け取るように構成される。例示的な実施形態では、下部チャンバ4は、下部チャンバリフト69または駆動機構を介して垂直方向に移動可能であり、下部チャンバリフト69または駆動機構は、ローラ71および下部チャンバの上に取り付けられた任意の他の対応する構成要素、ならびに完成インゴット(以下でさらに論じる)が中に保持されているときはその完成インゴットとともに、チャンバ4を上昇および降下させるのに適した任意のリフトの形とすることができ、またはこれらを含むことができる。リフト69は、上昇位置および降下位置を有する。下部チャンバ4は、リフト69上に取り付けられ、またはリフト69によって保持される。したがって、リフト69は、チャンバ4に動作可能に連結され、リフト69が上昇位置にあるときの図1〜4に示す接合または連結されたインゴット受取り位置と、リフト69が降下位置にあるときの図5に破線で示す分離または切断された非回収位置との間で、チャンバ4を移動させるように構成される。この非回収位置を、第1の分離もしくは切断位置、または複数の分離もしくは切断位置の1つと呼ぶこともできる。
【0019】
下部チャンバ4は、その下端部近傍で、図5に破線で示す第1の切断位置と図5に実線で示すインゴット回収位置との間を移動するように、枢動軸74上に枢動可能に取り付けられる。この回収位置を、第2の分離もしくは切断位置、または複数の分離もしくは切断位置の別の1つと呼ぶこともできる。切断された非回収位置では、下部チャンバ4の上部または上流の端部10および下部バルブ66は、上部チャンバ2の壁38の下部または下流の端部8および分離アセンブリ6の上部分離バルブ64から切断されているがその近傍に位置する。切断された回収位置では、下部チャンバ4の上部または上流の端部10は、上部チャンバ2の壁38の下部または下流の端部8および上部バルブ64から切断され、かつそこから離れている。切断された非回収位置では、下部チャンバ4の頂部と上部チャンバ2の底部との間に、完成インゴットを収容するのに十分な空間がないため、下部チャンバ70から外部の雰囲気中へ完成インゴットを回収することはできない。切断された回収位置では、下部チャンバ70から外部の雰囲気中へ完成インゴットを回収することができる。回収位置にある頂部入口開口72は、下部チャンバ4から完成インゴットを回収し、または取り出すための出口開口として働く。
【0020】
リフト69はまた、降下した非回収位置と回収位置との間で下部チャンバ4を枢動させるように下部チャンバ4に動作可能に連結された駆動機構とすることができ、またはそれを含むことができる。リフト69は、たとえば、油圧もしくは空気圧式とすることができ、または油圧もしくは空気圧モータを使用することができ、あるいは持上げと枢動の両方に電気モータを使用することができる。リフト69は、ねじリフト構成、ラックアンドピニオン、シザーズジャッキ、またはこの目的に適した当技術分野で知られている任意の他のリフトを含むことができる。駆動機構はまた、たとえば、チャンバ4の回転または枢動を駆動する回転ドライブを含むことができる。下部チャンバ4の持上げと、非回収位置と回収位置との間を行き来する下部チャンバ4の枢動運動の駆動との両方に対する1つのユニットまたはアセンブリとしてリフト69を示すが、リフト69とは別個の駆動機構を使用してこの枢動移動を駆動することもできる。
【0021】
炉1は、型54の底部から溶融空間28の一部分、上部通路壁34の上部通路、ローラ空間30、中間通路壁36の中間通路、切断空間32、下部通路壁38の下部通路、および下部チャンバ4の内部チャンバ70を通って下方へ延びる金属鋳造物経路73を画定する。したがって、例示的な実施形態では、経路73は、上部チャンバ2の溶融区間12から下部チャンバ4内へ内部チャンバ70および壁68の下端部近傍までまっすぐに下へ延びるまっすぐな垂直の経路である。金属鋳造物経路73は、鋳造プロセス中に型54内で鋳造されて下方へ延びる金属鋳造物と同じ断面形状および寸法を有する。所与の組の各対の上部ローラ60は、経路73の両側に位置しており、その結果、上部ローラ60は互いに面し、かつ経路73に面し、上部ローラ60の円形の外周の表面は、経路73に当接する。同様に、所与の組の各対の下部ローラ71は、経路73の両側に位置しており、その結果、下部ローラ71は互いに面し、かつ経路73に面し、下部ローラ71の円形の外周の表面は、経路73に当接する。剪断部材または研磨部材/ブレードなどの切断器62の切断部材63は、経路73に出入りするように移動可能である。図3では、切断部材63を経路73内に示し、残りの図では、経路73の外側に示す。分離バルブ64および66のドア65も同様に、経路73に出入りするように移動可能であり、したがって、各ドア65は、閉鎖位置(図4図5)で経路73内に位置し、開放位置(図1〜3)で経路73の外側に位置する。
【0022】
各障壁47および49の内周の寸法および形状については、上記でさらに論じた。したがって、これらの障壁のそれぞれの内周は、経路73の外周と同じ形状を有し、ならびに経路73と同じ寸法、または経路73よりやや大きい寸法を有することにさらに留意されたい。したがって、所与の障壁の内周が経路73の外周より大きいとき、この寸法は、上記で論じた型54の内周および金属鋳造物の外周に対する場合と同様に、経路73の外周に対しても同じ範囲内に入ることができる。締付けアセンブリ55が締付け位置にあるときは、締付け部材57の締付け表面は経路63の外周に当接し、非締付け位置では、これらの締付け表面は経路73の外周から外方へ隔置される。
【0023】
炉1は、それぞれ適した真空ライン80および充填ライン82を介して上部内部チャンバ20および下部内部チャンバ70に流動的に連通している1つまたは複数の排気ポンプ76および不活性ガス源78をさらに含む。したがって、1つの真空ライン80は、一方の端部でポンプ76の1つに連結され、他方の端部で上部チャンバ壁18に連結される。別の真空ライン80は、一方の端部でポンプ76の1つに連結され、他方の端部で下部チャンバ壁68に連結される。同様に、1つの充填ライン82は、一方の端部で供給源78の1つに連結され、他方の端部で上部チャンバ壁18に連結される。別の充填ライン82は、一方の端部で供給源78の1つに連結され、他方の端部で下部チャンバ壁68に連結される。
【0024】
動作の際には、炉1を使用して任意のタイプの金属を連続して鋳造し、金属鋳造物を形成することができ、この金属鋳造物を切断して完成インゴットを形成する。炉1は、高温になると酸素と反応しやすいチタン合金のインゴットまたは他の金属を鋳造するのに特に有用である。炉1を使用して、任意の選択された断面形状および寸法を有するインゴットを形成することができ、この断面形状および寸法は、型54の内面の形状および寸法によって画定される。一般に、インゴットは、約12.7cm(5インチ)の直径を有する円筒形の形で鋳造される。しかし、多くの例では、所与の顧客への配送前に直径を低減させるための後の変形プロセスを要することのない鋳造時の直径を得るために、より小さい直径のインゴットが望ましい。
【0025】
例示的な実施形態では、炉1は、上部チャンバ2および下部チャンバ4内に不活性ガス雰囲気のある状態で動作する。例示的な実施形態では、当業者には理解されるように、本明細書では、不活性ガス雰囲気は、本質的にすべて不活性ガスであり、または不活性ガスのみであり、したがって酸素、窒素、および不活性ガス以外のあらゆるガスを本質的に含まない雰囲気として定義される。最初、分離バルブ64および66は通常は開放位置にあり、下部チャンバ4は受取り位置にあり、したがってチャンバ2および4が封止された状態で連結されており、その結果、内部チャンバ20および70は互いに流動的に連通して、チャンバ2および4の外側の外部の雰囲気から封止された単一の炉内部チャンバをともに形成する。この最初の構成では、1つまたは複数の排気ポンプ76が動作してこの単一の炉内部チャンバを排気し、したがって、ライン80を介して炉内部チャンバからすべてまたは本質的にすべての空気を除去してこの内部チャンバを真空にする。次いで、この単一の炉内部チャンバは、1つまたは複数の供給源78から1つまたは複数のライン82を介して不活性ガス、通常はヘリウムまたはアルゴンで充填される。
【0026】
水冷式の炉床52には、図示しない標準的な供給機構を使用して、溶融すべき固体金属が供給される。不活性ガス雰囲気中で炉床トーチ56を着火し(図2)、金属を加熱および溶融して、炉床52の溶融空洞内に溶融金属83を形成する。次いで、炉床52からスタータスタブ(図示せず)の頂部に位置する型54の頂部内へ溶融金属83を鋳込み、金属鋳造物84の形成を開始する。同様に型トーチ58を着火し(図2)、金属の頂部で型54に熱を供給して、水冷式の型54内の凝固速度を制御する。金属鋳造物84は最初に、ローラ60によって降下される(図2の矢印A)。より具体的には、各対のローラ60は間に金属鋳造物84を締め付け、ローラ60は、所望の制御された速度で駆動機構によって回転され(対応する矢印で示す)、対応する制御された速度で金属鋳造物84を降下させる。いくつかの対のローラ60が使用され、それによって締付け機能は、加熱された金属鋳造物84が冷却される間に金属鋳造物84をまっすぐに保つ。したがって、ローラ60は、鋳造物84を降下させるための金属鋳造物もしくはインゴットリフトまたは降下機構として働く。
【0027】
溶融金属83は、連続して降下する間に、形成された金属鋳造物84の頂部に連続して鋳込まれて凝固し、その結果、金属鋳造物84は、徐々に長さが増大する。したがって、鋳造物84の部分は、経路73に沿って型54から溶融区間12の下部部分、上壁34の通路、ローラ区間14、中間壁36の通路、障壁47、切断区間16、障壁49、下壁38の通路、開放された分離バルブ64および66、ならびに下部チャンバ4を通って下流へ移動する。鋳造物84が下流へ移動するにつれて、鋳造物84の外周は、この外周と各障壁内周との間のそれぞれの連続する環状の境界面に沿って、障壁47および49の内周に摺動可能に係合することができ(図4図5)、またはこれらの内周に接触することなく、各障壁47、49の内周内でその近傍を通ることができる。鋳造物84が下部チャンバ4内へ移動すると、下部ローラ71は、ローラ71が回転しながら(図4の矢印)鋳造物84の外周に回転係合する。ローラ60と同様に、各対のローラ71は、金属鋳造物84を間に締め付ける。ローラ71の回転は、駆動機構によって駆動することができ、またはアイドラローラ、したがって受動ローラとすることができ、すなわち、鋳造物84が下方へ移動するにつれて鋳造物84の外周との接触のみによって駆動することができる。ローラ71が駆動されると、ローラ71の回転速度は、ローラ60の回転速度と協働して下流方向へ鋳造物84の連動した移動速度を提供するように制御される。
【0028】
最終的に、鋳造物84は、鋳造物84の下端部と切断部材63との間に完成インゴットに対して所望の長さが画定される高さまで、鋳造物84の下端部が開放された分離バルブ64および66ならびに開口50および72を通って下方へ移動して下部チャンバ4に入るまで十分に長くなり、十分に降下する(図3)。通常、この時点でローラ60および71の回転が停止し、鋳造物84の降下移動を停止させる。締付けアセンブリ55を動作させて、締付け部材57を非締付け位置から締付け位置へ移動させ、その結果、上部アセンブリ55Aの締付け部材は、切断器62より高い位置で、または切断器62の上流で、金属鋳造物84の外周をしっかりと締め付け、下部アセンブリ55Bの締付け部材57は、切断器62の下流で、または切断器62より低い位置で、金属鋳造物84の外周を締め付ける。鋳造物84が締め付けられて静止している間に、切断器62は、通常は実質上水平の平面に沿って鋳造物84を切断するように動作し、下部金属鋳造物または完成インゴット86を形成する。完成インゴット86は、上部金属鋳造物または未完成インゴット88からその下で分離される。未完成インゴット88は、金属鋳造物84のうち、経路83の上部の長さ内で、型54から切断器62に位置する新しく形成された底部まで下へ延びる残り部分である。より具体的には、切断器62の切断部材63は、鋳造経路73の外側に位置する非切断位置(図2)から経路73内の切断位置(図3)へ移動する。鋳造物84が停止し、切断器62が鋳造物84を切断している間、障壁47および49はそれぞれ、各障壁と鋳造物84の外周との間で連続する環状の境界面に沿って接触を維持し、または前記外周近傍に位置する。切断プロセス中、切断器62により、切り屑90および粉塵92が得られる。切り屑90は切断器62から落下し、粉塵92は、切断区間16の空間32内の不活性雰囲気中に落下または浮遊することがある。切り屑90は通常、粒子状物質の形であり、大部分は金属鋳造物84から切断された金属粒子である。
【0029】
使用される切断器のタイプおよび形成されるインゴットのタイプなどの様々な状況に応じて、温度制御デバイス59を動作させて、切断器62近傍の領域内で金属鋳造物84を加熱または冷却することができる。切断器62近傍でインゴットを冷却することが望ましい場合、下部不活性ガス源78に付随する送風器を動作させることなどによって、冷却装置を動作させて、ライン61を通ってユニット59の冷却デバイスへ不活性ガスを送出することができ、その結果、アルゴンまたはヘリウムなどの不活性ガスが、金属鋳造物84の外周に沿って切断器62近傍を流れる。この冷却プロセスにより、切断器62近傍で鋳造物84の温度が所望の温度になったとき、上記のように、切断器62を動作させて鋳造物を切断する。別法として、ユニット59を動作させて、誘導コイルおよび/または電気抵抗要素に電力を提供して切断器62近傍の領域で金属鋳造物を加熱することなどによって、金属鋳造物を加熱することもできる。例示のみを目的として、特にこのタイプの鋳造物の切断を容易にするために油圧式の剪断タイプの切断器を使用するとき、インゴットを切断器62近傍で比較的高い温度(815.6℃(1500°F)など)まで加熱することができる。
【0030】
障壁47と鋳造物84との間の上記の接触もしくは境界面、または障壁47と鋳造物84との間の密接のため、鋳造物84が静止しているとき、および鋳造物84が降下しているとき、障壁47は、粉塵または粉塵粒子の障壁として働き、障壁47がなければ普通なら生じるように、切断プロセスからの粉塵または粉塵粒子92が空間32から上流に障壁47を越えて上方へ移動して、中間壁36および上壁34の通路、ならびに溶融区間12およびローラ区間14の空間28および30に入るのを阻止し、または実質上防止する。障壁49と鋳造物84との間の上記の接触もしくは境界面、または障壁49と鋳造物84との間の密接のため、鋳造物84が静止しているとき、および鋳造物84が降下しているとき、障壁49は、粉塵/粉塵粒子および/または切り屑の障壁として働き、切断プロセスからの粉塵および切り屑が空間32から下流に障壁49を越えて下壁38の通路に入り、分離バルブ64および66上へ落下し、下部チャンバ4の内部チャンバ70に入るのを阻止し、または実質上防止する。したがって、障壁またはワイパ47は、切断区間16の上流、または切断区間16より上で、炉1内の汚染を実質上防止し、したがって、ワイパまたは障壁49は、切断区間16の下流、または切断区間16より下で、炉の汚染を実質上防止する。したがって、具体的には、障壁49は、障壁49がなければ普通なら生じるように、粉塵92または切り屑90が切断器62からこれらの分離バルブおよびローラ上へ落下するのを防止することによって、分離バルブ64および66ならびにローラ71を適切な状態で保つのに役立つ。切断器区間16は通常、封止されたドアを含み、炉1が動作していないときは、このドアを開放して切り屑を切断器区間16から除去することができ、また、摩耗して有用性を失ったときは、障壁47および49を取り出して交換することができる。
【0031】
切断プロセス中、締付けアセンブリ55に加えて、上部ローラ60が鋳造物84の上部区間を締め付け、下部ローラ71が鋳造物84の下部区間を締め付けて、鋳造物84を静止状態で確保する。切断器62が鋳造物84を完全に2つに切断して未完成インゴット86および完成インゴット88(図4図5)を形成し、締付けアセンブリ55が再び非締付け位置へ移動した後、上部ローラ60は未完成インゴット88を締め付けてインゴット86を確保し、下部ローラ71は完成インゴット86を締め付けてインゴット88を確保する。切断が完了した後、切断器62の切断部材63を制御して、経路73内の切断位置(図3)から経路73の外側の非切断位置(図4)へ迅速に移動させる。次いで、鋳造プロセスが炉床52から型54内への溶融金属83の鋳込みを継続しながら、上部ローラ60は再び回転して(図4の対応する矢印)、金属鋳造物の残り部分または未完成インゴット88の降下(図4の矢印C)を再開する。
【0032】
鋳造物84を切断する目的で鋳造物84の下方への移動を停止させることは、非常に短時間で行うことができる。たとえば、5.08cm(2インチ)の直径を有する金属鋳造物の切断は、たとえば約5秒、通常は約10秒以内で実現することができる。この場合、約5秒または約10秒以内などの期間にわたって、鋳造物84を静止したまま保つ必要があることがある。当然ながら、より大きいインゴットを切断するにはより長い時間を要する。たとえば通常、12.7cm(5インチ)の直径を有する典型的な鋳造物には、約75秒、通常は約90秒以内を要する。この場合、約75秒または約90秒以内などの期間にわたって、鋳造物84を静止したまま保つ必要があることがある。特に切断プロセスが短時間であるときは、切断器62が垂直方向または下流方向に移動していないときでも、切断プロセス中に溶融金属83の鋳込みを継続して行うことができる。さらに、切断器62および締付けアセンブリ55は、鋳造物84の下流への移動と同じ速度で切断プロセス中に下流方向に移動するように取り付けることができ、その結果、炉1の通常動作中に鋳造プロセスを本当に連続して行うことができ、すなわち、金属鋳造物84の降下を停止させることなく、また炉床52から型54内への溶融金属83の鋳込みを停止させることなく、金属鋳造物の形成を継続することができることに留意されたい。そのような切断器62および金属鋳造物84の下方への同時移動を、図3に矢印Bで示す。
【0033】
切断プロセス中に金属鋳造物の下方への移動が継続されるか、それとも停止されるか否かにかかわらず、下部ローラ71は、切断が完了した後、完成インゴット86の降下(図4の矢印D)を確保および制御する。より具体的には、ローラ71を回転させて(図4の対応する矢印)、未完成インゴット88の降下速度より急速に完成インゴット86を降下させて、完成インゴット86を完全に下部内部チャンバ70内に入れる。この段階で、各ドア65を開放位置から閉鎖位置へ移動させることによって(図4の矢印E)、分離バルブ64および66を閉鎖し、それによって、上部バルブ64を閉鎖することで、依然として不活性ガスが充填されたままの封止された上部内部チャンバ20を形成し、下部バルブ66を閉鎖することで、上部内部チャンバ20から分離され、依然として不活性ガスが充填されたままの封止された下部内部チャンバ70を形成する。上部バルブ64は閉鎖されたままであり、下部チャンバ70が上部チャンバ20から分離されている期間全体にわたって、上部チャンバ20内で不活性ガス雰囲気が維持される。また、バルブ64および66を閉鎖することで、最初は不活性ガス雰囲気を維持する小さい封止されたチャンバを間に形成する。
【0034】
2つの分離バルブを閉鎖して2つの別個の封止されたチャンバ20および70を形成した後、上部内部チャンバ20内では不活性ガス雰囲気中で未完成インゴット88の鋳造を継続し、炉1は、完成インゴット86の取出しを準備するように制御される。具体的には、分離バルブ64および66が閉鎖されたままである間に、未完成インゴット88の鋳造を継続し、壁68および下部バルブ66を含む下部チャンバ4は、上部チャンバ2から分離または切断され、したがってチャンバ2および4間の気密性または実質上気密性のシール(チャンバ2および4が連結された受取り位置で接合されているときに存在する)を破断し、チャンバ4を回収位置(図5の実線)へ移動させ、その結果、下部チャンバ4の上流端部10が上部チャンバ2の下流端部8から切断され、そこから離れる方へ移動する。通常、シールのこの切断および破断は、通常は静止したままである上部チャンバ2から離れる方へ、下部チャンバ4全体を下方へ降下または押下することによって行われる。
【0035】
例示的な実施形態では、通常、下部通路壁38の底部または下部バルブ66の頂部に環状面シールが位置し、上部チャンバ2と下部チャンバ4が互いに接合されたときに上部チャンバ20と下部チャンバ70との間に気密性または実質上気密性のシールを形成する。したがって、この封止された接合部は通常、面シールが通路壁38上に取り付けられた場合は下部バルブ66を面シールに押し付けるように、または面シールが下部バルブ66上に取り付けられた場合は面シールを通路壁38の下端部に押し付けるように、下部チャンバ4に上方への圧力をかけることによって簡単に形成される。したがって、チャンバ4を降下させることで、下部バルブ66と面シール(壁38上に取り付けられた場合)との接触を断つことによって、または面シール(バルブ66上に取り付けられた場合)と通路壁38との接触を断つことによって、気密シールを破断する。
【0036】
より具体的には、リフト69を動作させて、上流端部10および下部バルブ66を下流端部8および上部バルブ64から分離するのに十分に短い距離だけチャンバ4を降下させ(図5の矢印F)、次いで枢動軸74を中心として下端部8から離れる方へ横方向に上流端部10を枢動させる(図5の矢印G)。したがって、上端部10のこの横方向または側方への移動は、鋳造中の上部チャンバ2内および受取り位置にあるときの下部チャンバ4内の金属鋳造物84の下方または下流への移動方向に対して傾けて行われる。したがって、例示的な実施形態では、この上端部10の移動は、最初は水平に行われ、次いで下部チャンバ4の枢動を介して横方向および下方へ移動し始める。
【0037】
下部バルブ66が開放され、その結果、入口開口72が外部の雰囲気に露出される。次いで、下部ローラ71を動作させて、インゴット88の降下中に使用される方向とは反対の方向に回転させると(図5の対応する矢印)、開口72は、内部チャンバ70から完成インゴット86を取り出す(図5の矢印H)ことができる出口開口として働く。受取り位置から回収位置への下部チャンバ4の移動は、それとともにローラ71およびチャンバ4内の経路73の部分が移動することを含み、したがって、この部分は、回収位置で取出し経路になり、内部チャンバ70からのインゴット86の取出し中は、この取出し経路に沿って完成インゴット86が進み、この取出し経路から出ることに留意されたい。したがって、回収位置におけるチャンバ4およびチャンバ4内の経路73部分は、それぞれチャンバ4および経路73の受取り位置に対して傾いている。したがって、チャンバ4に対して、チャンバ4からの取出し中の完成インゴット86の移動方向は、鋳造中にローラ60および71を介してインゴット86が降下している間の受取り位置におけるチャンバ4内への完成インゴット86の移動方向とは反対である。
【0038】
下部分離バルブ66の開放は、最初に下部チャンバ70から不活性ガスを取り出すことなく行うことができるが、それによって不活性ガスの逃げおよび損失が生じる可能性がある。したがって、別法として、上部分離バルブ64および下部分離バルブ66を閉鎖している間、チャンバ70に流動的に連通している1つまたは複数のポンプ78によって、下部チャンバ70内の不活性ガスを排気することができる。次いで、炉内に不活性ガスを保持して再び使用することができる。内部チャンバ70から完成インゴット86を取り出した後、チャンバ4を回収位置から受取り位置へ移動させ、または戻す。これは通常、チャンバ4が垂直になって上端部10が下端部8と垂直方向に位置合わせされて下端部8の真下に位置するように、枢動軸74を中心として上端部10を枢動させ、次いでリフト69を動作させてチャンバ4を上昇または上方へ移動させ、前述の面シールを介して端部8および10を互いに再連結することによって実現され(図5の矢印G)、この場合も、この再連結は、チャンバ2および4間に本質的に気密性のシールを形成する。
【0039】
チャンバ2および4が再連結された後、下部内部チャンバ70を排気して不活性ガスで充填する。具体的には、上部バルブ64を閉鎖したまま、下部バルブ66を閉鎖して、下部チャンバ70を外部の雰囲気から封止する。両バルブ64および66が閉鎖された状態で、下部内部チャンバ70に流動的に連通している1つまたは複数のポンプ76によって下部内部チャンバ70を排気し、下部内部チャンバ70からすべてのガスを本質的に除去し、次いで、チャンバ70に流動的に連通している1つまたは複数の供給源78からの不活性ガスで、チャンバ70を充填する。チャンバ70を不活性ガスで再充填してチャンバ70内に不活性ガス雰囲気を提供した後、上部分離バルブ64および下部分離バルブ66を開放し(図4の矢印Eの反対)、それによって、上部チャンバ20および下部チャンバ70から本質的に構成されて不活性ガスで充填された単一の封止された炉内部チャンバをもう一度形成する。
【0040】
未完成インゴット88は、封止された上部チャンバ20内に位置するままであり、追加の溶融金属83を炉床52から型54内へ鋳込み、未完成インゴット88を降下させる(図5の矢印J)ことによって、未完成インゴット88の鋳造を継続する。この間、完成インゴット86は、封止された下部内部チャンバ70内に位置し、受取り位置から非回収位置へチャンバ2からチャンバ4を切断/降下させることを含めて、下部チャンバ4を受取り位置から回収位置へ移動させ、チャンバ2とチャンバ4との間のシールを破断し、チャンバ4を非回収位置から回収位置へ枢動させ、チャンバ4から完成インゴット86を回収し、下部チャンバ4を回収位置から非回収位置へ、そして受取り位置へ移動させ、したがって対応するチャンバ4の枢動および上昇を含めて、上部チャンバ2および下部チャンバ4を互いに再連結して再封止し、下部内部チャンバ70を不活性ガスで排気および充填し、分離バルブ64および66を開放して内部チャンバ20および70間の流動的連通を開放または再開放し、単一の封止された炉内部チャンバを再び形成する。これを行うことが可能になるように、炉1は、切断器62の下および上部分離バルブ64の上に十分な空間を有するように構成される。より具体的には、切断器62および上部バルブ64は、上記の期間全体にわたって未完成インゴット88の下端部を上部バルブ64のドア65の上方に隔置したまま切断器62の下方へ移動させるのに十分なほど長い経路73の一部分の垂直の長さを間に画定する。
【0041】
したがって、バルブ64および66が再び開放された後、鋳造プロセスを継続して、型54内への溶融金属の鋳込みおよび未完成インゴット88の降下を行い、その結果、未完成インゴット88はまた、完成インゴット86に本質的に同一の別の完成インゴットとして切断するのに十分なほど長くなり、十分なほど離れて切断器62の下方へ延びる。次いで、切断プロセスに続くステップも同様に繰り返し、チャンバ4から追加の完成インゴットを取り出し、その後さらに別の完成インゴットを引き続き形成し、以下同様である。
【0042】
図6〜8は、下部チャンバ4の空間70内に修正された下部金属鋳造物もしくはインゴットリフトまたは降下機構を含む炉1を示す。修正された下部金属鋳造物もしくはインゴットリフトまたは降下機構は、金属鋳造物もしくはインゴット回収機構またはそのような回収機構の一部として働くこともできる。この下部インゴットリフトは、本明細書では概ねカップ状の部材として示す剛性の金属鋳造物またはインゴット支持体94を含み、インゴット支持体94は、1対の可撓性の閉ループ96上に取り付けられる。ループ96は、チェーン96の形とすることができ、それぞれの上部および下部の回転可能な部材98またはホイール上に循環式に取り付けられ、回転可能な部材98の周りを循環可能である。回転可能な部材98は、スプロケットの形とすることができるが、類似の閉ループおよび回転可能な部材を使用することができることが、当業者には理解されよう。各ループまたはチェーン96は、それぞれの上部スプロケットからそれぞれの下部スプロケットへ延びる実質上まっすぐな内側および外側の区分を含み、その結果、インゴット支持体94は、2つのチェーン96の内側区分に固定されてそれらの間に延びる。
【0043】
各チェーンが係合するスプロケットの少なくとも1つは、駆動式のスプロケットであり、駆動式のスプロケットを回転させるためのモータによって駆動され、それによって対応するチェーンがその上部および下部のスプロケットの周りを循環する。したがって、駆動式のスプロケットが第1の回転方向に回転すると、そこに取り付けられたチェーンが第1の循環方向に循環し、チェーンの内側区分が第1の内側区分方向に移動するのに対して、駆動式のスプロケットが第2の反対の回転方向に回転すると、そこに取り付けられたチェーンが第2の反対の循環方向に循環し、チェーンの内側区分が第2の反対の内側区分方向に移動する。インゴット支持体94は、チェーンの内側区分とともに対応する内側区分方向に移動する。
【0044】
図6および図7は、受取り位置にある下部チャンバ4を示し、図8は、回収位置にある下部チャンバを示す。したがって、支持体94、チェーン96、およびスプロケット98を含む下部インゴットリフトは、受取り位置と回収位置との間を下部チャンバ4とともに移動する。チェーン96の内側および外側のまっすぐな区分は、受取り位置では実質上垂直であり、回収位置では上方かつ側方へ傾く。下部スプロケット98は、下部チャンバ4が回収位置にあるときの回収位置と、下部チャンバ4が受取り位置にあるときの受取り位置とを有する。同様に、上部スプロケット98は、下部チャンバ4が回収位置にあるときの回収位置と、下部チャンバ4が受取り位置にあるときの受取り位置とを有する。下部スプロケット98の回収位置は、下部スプロケットの受取り位置とは異なるがその近傍にある。しかし、上部スプロケット98の回収位置は、上部スプロケットの受取り位置とは異なり、かつそこから離れている。受取り位置では、金属鋳造物経路73の下部部分は実質上垂直であり、チェーン96の内側区分間に配置される。回収位置では、金属鋳造物経路73の下部部分は、上方かつ側方へ傾いてチェーン96の内側区分間に配置される。
【0045】
上述した炉1の全体的な動作は、ローラ71を使用するインゴットリフトとチェーン96を使用する修正されたリフトとの違いを除いて、修正された下部インゴットリフトを使用するときも本質的に同じである。したがって、大部分については、これらの違いのみを以下に説明する。鋳造物84が下部チャンバ4内へ移動すると、金属鋳造物84の底部はインゴット支持体94に接触し、その時点で、下部インゴットリフトを動作させて、上部ローラ60を有する上部リフトの降下速度と同じ降下速度で支持体94を下方へ移動させる。図6に示すように、鋳造物84をさらに降下させるとき、支持体94はこの後、鋳造物84の重量の一部を支持し、鋳造物84の底部は、支持体94の上向きの表面に接触したままである。
【0046】
鋳造物84が十分に長くなり、十分に降下したとき、通常、上部および下部リフトを停止させて鋳造物84の降下移動を停止させ、この時点で(図6に示す)、すでに論じたように、締付けアセンブリ55は鋳造物84を締め付け、切断器62は鋳造物84を切断し、完成インゴット86および未完成インゴット88を形成する。また、すでに論じたように、温度制御デバイス59によって鋳造物84を加熱または冷却することもできる。切断プロセス中に鋳造物84を締め付ける下部ローラ71とは異なり、修正された下部インゴットリフトは、切断プロセス中にもいずれの時間にも、鋳造物84を締め付けない。切断器62が鋳造物84を完全に2つに切断して未完成インゴット86および完成インゴット88を形成し、締付けアセンブリ55が再び非締付け位置(図7)へ移動した後、上部ローラ60は未完成インゴット88を締め付けてインゴット86を確保し、下部インゴットリフトは、インゴット86の底部が支持体94の頂部に載った状態で、完成インゴット86の全重量を支持する。鋳造物84を切断した後、下部インゴットリフトは、完成インゴット86の降下(図7の矢印D)を制御する。より具体的には、完成インゴット86を完全に下部内部チャンバ70内に入れるまで、スプロケット98を降下方向に回転させて(図7の対応する矢印)、未完成インゴット88の降下速度より急速に完成インゴット86を降下させる。
【0047】
次いで、すでに論じたように、分離バルブ64および66を動作させて、下部チャンバ4からの完成インゴット86の取出しに備える。チャンバ4を回収位置(図8の実線)へ移動させ、下部バルブ66を開放し、その結果、入口開口72を外部の雰囲気に露出させて出口開口として働くようにした後、スプロケット98を動作させて、インゴット88の降下中に使用される方向とは反対の回収方向に回転させ(図8の対応する矢印)、それによってチェーン96の内側区分、支持体94、およびインゴット88を回収方向に上方かつ側方へ移動させて、内部チャンバ70から完成インゴット86を取り出す(図8の矢印H)。分離バルブの動作、下部チャンバ4の排気および充填、回収位置から受取り位置へのチャンバ4の移動などは、前述の内容と同じである。したがって、このように未完成インゴット88の鋳造を続けることができる。
【0048】
したがって、炉1は、切断のために金属鋳造物の降下を停止させる期間を除いて、連続したまたは停止しない状態で金属鋳造物を鋳造するように構成されるが、この期間は、型の頂部からあふれ出ることなく溶融金属を型54内へ鋳込む能力を妨げるには十分なほど長い。すでに論じたように、切断器62および締付けアセンブリ55は、金属鋳造物を切断しながら金属鋳造物とともに下流方向に移動可能とすることができ、それによって、炉1の通常動作中に本当に連続したまたは停止しない鋳造手順を可能にする。
【0049】
例示的な実施形態の炉に様々な変更を加えることができ、それらは本発明の範囲内である。そのような一態様は、下部チャンバ4に類似の下部チャンバの操作に関する。たとえば、下部チャンバ4は、下部チャンバ4の図示の枢動を伴わないように、受取り位置と回収位置との間で移動させることができ、他の構造および他のタイプの移動を伴うように移動させることができる。例として、下部チャンバ4は、側方に対して水平または他の方向に摺動するリフトまたは他の支持体上に取り付けることができる。追加の例は、2つ以上の下部チャンバを保持するカルーセルの使用を含み、それによって、たとえば、カルーセルは、カルーセルによって保持されている下部チャンバの1つを上部チャンバ2の下端部から切断し、そこから離れる方へ移動させて完成インゴットを回収する一方、カルーセル上の下部チャンバの別の1つは、受取り端部または入口開口が上部チャンバ2の下端部または出口開口50に位置合わせされてチャンバ2の下端部に連結された位置へ移動するように、移動させることができる。
【0050】
上記の説明では、簡潔さ、明快さ、および理解のために、特定の用語を使用した。そのような用語は説明を目的として使用され、広く解釈されるものであるため、そのような用語から、従来技術の要件を超えて不必要な限定を示唆するものではない。
【0051】
さらに、本発明の説明および図示は一例であり、本発明は、図示または説明した正確な詳細に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8