特許第6463013号(P6463013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

特許64630135員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒
<>
  • 特許6463013-5員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒 図000012
  • 特許6463013-5員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒 図000013
  • 特許6463013-5員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463013
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】5員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/31 20060101AFI20190121BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C23C18/31 Z
   H05K3/18 B
   H05K3/18 E
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-132729(P2014-132729)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-17326(P2015-17326A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】13/930,736
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・エム・ミラム
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・イー・クリアリー
(72)【発明者】
【氏名】マリア・アンナ・ルゼズニク
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−166068(JP,A)
【文献】 特開昭52−151636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属イオンと次式を有する1つ以上の化合物との錯体を含む触媒を提供する工程:
【化1】
(式中、Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、は(C〜C)アルコキシであってもよく;R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル(C〜C)アルコキシ又はウレイドであってもよく;Zは次のいずれかであり
【化2】
式中、R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、直鎖若しくは分枝鎖の置換若しくは非置換(C〜C)アルキル、ヒドロキシル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよく、ただし、R及びRの置換Cアルキルの置換基はアミン基又は塩化物基である);
b)前記触媒を基材に適用する工程;
c)還元剤を前記触媒に適用する工程;及び
d)前記基材を金属めっき浴に浸漬して、基材上に金属を無電解めっきする工程
を含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上の化合物が、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラントイン、びスクシンイミドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の化合物の前記金属イオンに対するモル比が1:1〜4:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属イオンがパラジウム、銀、金、白金、銅、ニッケル及びコバルトから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属めっき浴の金属が、銅、銅合金、ニッケル及びニッケル合金から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の化合物が25ppm〜1000ppmの量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
金属イオン及び次式を有する1つ以上の化合物
【化3】
式中、Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、は(C〜C)アルコキシであってもよく;R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル(C〜C)アルコキシ又はウレイドであってもよく;Zは次のいずれかであり
【化4】
式中、R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、直鎖若しくは分枝鎖の置換若しくは非置換(C〜C)アルキル、ヒドロキシル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよく、ただし、R及びRの置換Cアルキルの置換基はアミン基又は塩化物基である)から本質的になる触媒
【請求項8】
前記1つ以上の化合物が、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラントイン、びスクシンイミドから選択される、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記1つ以上の化合物の金属イオンに対するモル比が1:1〜4:1である、請求項7に記載の触媒。
【請求項10】
前記1つ以上の化合物が25ppm〜1000ppmの量である、請求項7に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒に関する。より具体的には、本発明は、保管及び無電解メタライゼーションの間安定な5員複素環式窒素化合物を含有する無電解メタライゼーション触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント回路基板(PCB)は、穿孔めっきスルーホール(PTH)によって基盤の反対側及び/又は内層との間の接続を形成する積層非導電性誘電体基材からなる。無電解めっきは、表面に金属被覆を作製する周知の方法である。誘電体表面の無電解めっきは、触媒の事前付着を必要とする。無電解めっきの前に、積層非導電性誘電体基材領域を触媒又は活性化するために最も一般的に使用される方法は、基板を酸性塩化物媒体中で水性スズ−パラジウムコロイドで処理するというものである。コロイドは、スズ(II)イオンの安定化層で囲まれた金属性パラジウムのコアからなる。[SnCl錯体のシェルは、懸濁物中でのコロイドの凝集を避けるための表面安定化基として機能する。
【0003】
活性化プロセスにおいて、パラジウム系コロイドはエポキシ又はポリイミドのような絶縁基材上に吸着されて無電解銅付着を活性化する。理論的には、無電解金属付着において、触媒粒子は、めっき浴中の還元剤から金属イオンへの電子輸送経路におけるキャリアとしての役割を果たす。無電解銅めっきの性能は付着溶液の組成及びリガンドの選択のような多くの要因によって影響を受けるが、活性化工程は無電解付着の速度及びメカニズムの制御の鍵となる要因である。パラジウム/スズコロイドは、無電解金属付着用の活性化剤として数十年間商業的に使用されており、また、その構造が広範にわたって研究されてきた。しかし、空気の影響を受けやすく、高コストであるという点で改良又は置き換えの余地が残っている。
【0004】
コロイド状パラジウム触媒は十分に機能してきたが、多数の欠点があり、それは製造されるプリント回路基板の品質が高くなるにつれてますます顕著になりつつある。近年、電子素子の小型化及び性能向上に伴って電子回路の実装密度がより高くなり、それに続いて無電解めっき後に欠陥がないことが求められるようになった。信頼性に対する要求がより大きくなった結果、代替触媒組成物が必要とされている。コロイド状パラジウム触媒の安定性も懸念される。上述のように、パラジウム/スズコロイドは、スズ(II)イオンの層によって安定化され、その対イオンはパラジウムが凝集するのを防ぐことができる。スズ(II)イオンはスズ(IV)へと容易に酸化され、そのためコロイドはコロイド構造を維持することができない。この酸化は温度の上昇及び攪拌によって促進される。スズ(II)濃度がゼロ近くまで低下した場合、パラジウム粒子のサイズが成長し、パラジウム粒子が凝集及び沈殿し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規な、より優れた触媒を見いだすためにかなりの努力がなされてきた。例えば、パラジウムが高コストであることから、非パラジウム又はバイメタルの代替触媒の開発に向けて多大な努力が払われてきた。これまでに、スルーホールめっきを行うための十分な活性又は信頼性がない等の問題があった。さらに、これらの触媒は一般的に放置すると徐々に活性が低下し、この活性の変化があるために、このような触媒は信頼できず、商業利用は非現実的である。したがって、パラジウム/スズの代替触媒がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
方法は、金属イオンと次式を有する1つ以上の化合物との錯体を含む触媒を提供する工程:
【化1】
(式中、Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル、(C〜C)アルコキシ又はウレイドであってもよく;Zは次のいずれかであり
【化2】
式中、R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、直鎖若しくは分枝鎖の置換若しくは非置換(C〜C)アルキル、ヒドロキシル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよい);この触媒を基材に適用する工程;還元剤を触媒に適用する工程;及び基材を金属めっき浴に浸漬して基材上に金属を無電解めっきする工程を包含する。
【0007】
触媒は、金属イオン及び次式を有する1つ以上の化合物から本質的になり:
【化3】
式中、Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル(C〜C)アルコキシ又はウレイドであってもよく;Zは次のいずれかであり、
【化4】
式中、R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、直鎖若しくは分枝鎖の置換若しくは非置換(C〜C)アルキル、ヒドロキシル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
触媒は、基材(誘電体材料の基材を含む)上に金属を無電解めっきするために使用でき、従来のスズ/パラジウム触媒と比べて容易に酸化しないことから保管及び無電解めっきの間安定である。調製及び安定性の維持に強酸を必要としないことから、従来の触媒よりも腐食性が低い。さらに、安定のためのスズ化合物を必要とせず、ハロゲンは腐食性となる場合があることからハロゲンフリーであることもできる。触媒は、プリント回路基板及び半導体ウエハの製造において、ビア及びスルーホール充填中の良好な金属被覆を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】パラジウム/アラントイン触媒と従来のパラジウム/スズ触媒の複数の基材でのバックライト評価点である。
図2】パラジウム/ジメチルヒダントイン触媒と従来のパラジウム/スズ触媒の複数の基材でのバックライト評価点である。
図3】パラジウム/スクシンイミド触媒と従来のパラジウム/スズ触媒の複数の基材でのバックライト評価点である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書を通して使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは、以下に示される略語は以下の意味を有する:g=グラム;mg=ミリグラム;mL=ミリリットル;L=リットル;cm=センチメートル;m=メートル;mm=ミリメートル;μm=ミクロン;ppm=百万分率;℃=摂氏度;g/L=グラム/リットル;DI=脱イオン;pd=パラジウム;wt%=重量パーセント;及びT=ガラス転移温度。
【0011】
用語「プリント回路基板」及び「プリント配線板」は本明細書を通して交換可能に使用される。用語「めっき」及び「付着」は本明細書を通して交換可能に使用される。特記のない限り、全ての量は重量パーセントである。全ての数値範囲は境界値を含み、そのような数値範囲が合計で100%になるように制約されることが論理的である場合を除いて任意の順序で組み合わせ可能である。
【0012】
水性触媒溶液は、銀、金、白金、パラジウム、銅、コバルト及びニッケルから選択される金属イオンの錯体、並びに1つ以上の次式を有する錯化化合物を包含する:
【化5】
式中、Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル(C〜C)アルコキシ又はウレイドであってもよく;Zは次のいずれかであり
【化6】
式中、(II)の炭素及び(III)の窒素は隣接する(I)の炭素と共有結合しており、式中R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、直鎖若しくは分枝鎖の置換若しくは非置換(C〜C)アルキル、ヒドロキシル又は(C〜C)アルコキシであってもよく;Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル、エステル又は(C〜C)アルコキシであってもよい。置換基としては、限定するものではないが、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、塩化物、臭化物、フッ化物及びヨウ化物)、アミン、アミド、アルコキシ(例えば、メトキシ及びエトキシ)が挙げられる。このような5員複素環式窒素化合物は、25ppm〜1000ppm、又は例えば30ppm〜500ppmの量で包含されてもよい。
【0013】
好ましくはRは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキル、ヒドロキシル又は(C〜C)アルコキシであり、より好ましくは、Rは水素、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(C〜C)アルキルである。R及びRは、好ましくは水素、ウレイド、置換、非置換、直鎖若しくは分枝鎖の(C〜C)アルキル又はヒドロキシルであり、より好ましくは、R及びRは、R又はRがウレイドである場合に他は水素であることを条件として、水素、ウレイド又は置換若しくは非置換(C〜C)アルキルであるが。好ましくは、R及びRは水素又は置換若しくは非置換(C〜C)アルキルである。好ましくは、Rは水素又は置換若しくは非置換(C〜C)アルキルである。好ましい置換基としては、ヒドロキシル、アミン及び塩化物が挙げられる。好ましくはZは構造(III)である。
【0014】
このような5員複素環式窒素化合物の例は、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラントイン、1,3−ジヒドロキシメチル−5,5−ジメチルヒダントイン及びスクシンイミドである。
【0015】
金属イオン源には、触媒活性を有する金属を提供する当該技術分野及び文献で既知の一般的な水溶性金属のいずれも包含される。1種類の触媒金属イオンを使用しても、2種以上の触媒金属イオンの混合物を使用してもよい。そのような塩は、20ppm〜350ppm、好ましくは25ppm〜250ppmの量の金属イオンを提供するように包含される。銀塩としては、限定するものではないが、硝酸銀、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀、銀トシレート、銀トリフレート、フッ化銀、酸化銀、チオ硫酸銀ナトリウム及びシアン化銀カリウムが挙げられる。パラジウム塩としては、限定するものではないが、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウムカリウム、塩化パラジウムナトリウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム及び硝酸パラジウムが挙げられる。金塩としては、限定するものではないが、シアン化金、三塩化金、三臭化金、塩化金カリウム、シアン化金カリウム、塩化金ナトリウム及びシアン化金ナトリウムが挙げられる。白金塩としては、限定するものではないが、塩化白金及び硫酸白金が挙げられる。銅塩としては、限定するものではないが、硫酸銅及び塩化銅が挙げられる。ニッケル塩としては、限定するものではないが、塩化ニッケル及び硫酸ニッケルが挙げられる。コバルト塩としては、限定するものではないが、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト及び硫酸コバルトアンモニウムが挙げられる。好ましくは、金属イオンは、銀、パラジウム及び金イオンである。より好ましくは、金属イオンは銀及びパラジウムである。最も好ましくは、イオンはパラジウムである。
【0016】
水性触媒を構成する成分は、いかなる順序で組み合わせてもよい。水性触媒の調製には、当該技術分野及び文献で既知の任意の好適な方法を使用してもよい。水性触媒溶液に包含される5員複素環式窒素錯化化合物及び1つ以上の金属イオンの量は、錯化化合物対金属イオンのモル比が1:1〜4:1、好ましくは1:1〜2:1となるような量である。一般的に、1つ以上の錯化化合物を、最初に十分な量の水に可溶化する。1つ以上の金属イオン源を最小量の水に溶解し、続いて撹拌下で錯化溶液と合わせて均一水溶液を形成する。一般的に触媒溶液は室温で調製するが、成分の可溶化を促進するために多少の加熱が必要な場合もある。合成された触媒のpHは酸性〜アルカリ性の範囲であってもよい。典型的にはpH範囲は2〜11である。一般的に、酸性範囲は2〜6であり、アルカリ性範囲は8〜11である。無機若しくは有機酸又はその塩を、pHを所望の範囲に維持するために十分な量で使用してもよい。無機及び有機酸並びにその塩の混合物も使用できる。無機酸は、限定するものではないが、塩酸、硫酸、ホウ酸、リン酸及び硝酸を包含する。有機酸は、限定するものではないが、モノ及びポリカルボン酸、例えばジカルボン酸を包含する。有機酸の例としては、安息香酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、酢酸、クエン酸及び酒石酸が挙げられる。
【0017】
触媒を基材に適用した後で、メタライゼーションの前に、触媒された基材に1種以上の還元剤を適用し、金属イオンをその金属状態へと還元する。金属イオンを金属に還元することが知られている従来の還元剤を使用してもよい。そのような還元剤としては、限定するものではないが、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ギ酸及びホルムアルデヒドが挙げられる。好ましくは、還元剤は、次亜リン酸ナトリウムから選択される。還元剤は、実質的に全ての金属イオンを金属に還元する量で包含される。そのような量は一般的に従来量であり、当業者に周知である。
【0018】
触媒を、種々の基材を無電解金属めっきするために使用してもよい。そのような基材としては、限定するものではないが、ガラス、セラミック、陶器、樹脂、紙、布、これらの組合せ及び半導体のような無機及び有機物質を包含する材料が挙げられる。金属クラッド及び非クラッド材料も、触媒を用いて金属めっきできる基材である。
【0019】
基材にはプリント回路基板も包含される。このようなプリント回路基板には、金属クラッド並びに熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びこれらの組み合わせを有する非クラッド(ガラス繊維のような繊維を包含する)、並びに上記の含浸された実施形態が挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、限定するものではないが、アセタール樹脂、アクリル樹脂(例えば、アクリル酸メチル)、セルロース樹脂(例えば、酢酸エチル、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース及び硝酸セルロース)、ポリエーテル、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブレンド(例えば、アクリロニトリルスチレン)並びにコポリマー及びアクリロニトリル−ブタジエンスチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、並びにビニルポリマー及びコポリマー(例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニリデン及びビニルホルマールが挙げられる。
【0021】
熱硬化性樹脂としては、限定するものではないが、フタル酸アリル、フラン、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド及びフェノール−フルフラールコポリマー(単独で又はブタジエンアクリロニトリルコポリマー若しくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとのコンパウンドで)、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、アリル樹脂、フタル酸グリセリン並びにポリエステルが挙げられる。
【0022】
多孔質材料としては、限定するものではないが、紙、木材、ガラス繊維、布及び繊維、例えば、綿繊維及びポリエステル繊維のような天然繊維及び合成繊維が挙げられる。
【0023】
触媒を、低T及び高Tの両方の樹脂をめっきするために使用してもよい。低T樹脂は160℃未満のTを有し、高T樹脂は160℃以上のTを有する。典型的には、高T樹脂は160℃〜280℃、又は例えば170℃〜240℃のTを有する。高Tポリマー樹脂としては、限定するものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリテトラフルオロエチレンブレンドが挙げられる。このようなブレンドとしては、例えば、PTFEとポリフェニレンオキシド及びシアン酸エステルとのブレンドが挙げられる。高Tを有する樹脂を含むポリマー樹脂の他の種類としては、限定するものではないが、エポキシ樹脂、例えば、二官能性及び多官能性エポキシ樹脂、ビマレイミド/トリアジン及びエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/ポリフェニレンオキシド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT))、ポリエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシ及びこれらの複合体が挙げられる。
【0024】
触媒を、プリント回路基板のスルーホール又はビアの壁上に金属を付着させるために使用してもよい。触媒は、プリント回路基板を製造する水平プロセス及び垂直プロセスの両方で使用できる。
【0025】
水性触媒を、従来の無電解金属めっき浴と共に使用してもよい。この触媒は、無電解めっきできる任意の金属を無電解的に付着させるために使用できることが想定されるが、典型的には、金属は銅、銅合金、ニッケル又はニッケル合金から選択される。より典型的には、金属は銅及び銅合金から選択され、最も典型的には銅が使用される。市販の無電解銅めっき浴の例は、CIRCUPOSIT(商標)880無電解銅浴(Dow Advanced Materials(Marlborough,MA)から入手可能)である。
【0026】
典型的には、銅イオン源としては、限定するものではないが、銅の水溶性ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩並びに他の有機及び無機塩が挙げられる。このような銅塩の1種以上の混合物を、銅イオンを提供するために使用してもよい。例としては、硫酸銅、例えば、硫酸銅五水和物、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅及びスルファミン酸銅が挙げられる。従来量の銅塩を組成物中に使用してもよい。一般的に組成物中の銅イオン濃度は0.5g/L〜30g/Lの範囲であってもよい。
【0027】
1種以上の合金化金属も無電解組成物中に包含されてよい。このような合金化金属には、限定するものではないが、ニッケル及びスズが挙げられる。銅合金の例としては、銅/ニッケル及び銅/スズが挙げられる。典型的には、銅合金は銅/ニッケルである。
【0028】
ニッケル及びニッケル合金無電解浴のためのニッケルイオン源は、1種以上の従来の水溶性ニッケル塩を包含してもよい。ニッケルイオン源としては、限定するものではないが、硫酸ニッケル及びハロゲン化ニッケルが挙げられる。ニッケルイオン源は従来量で無電解合金化組成物に包含されてもよい。典型的には、ニッケルイオン源は0.5g/L〜10g/Lの量で包含される。
【0029】
基材のメタライズに使用する方法の工程は、めっきする表面が金属であるか誘電体であるかによって変動しうる。個別の工程及び工程の順序も方法ごとに変動しうる。基材を無電解金属めっきするために使用される従来工程をこの触媒と共に使用してもよい;ただし、この水性触媒は、多くの従来のプロセスのような、スズを除去して無電解めっきのためにパラジウム金属を露出するアクセレレーション工程を必要としない。したがって、この触媒を使用する際は、アクセレレーション工程は除かれる。好ましくは、金属で無電解めっきする基材の表面に触媒を適用した後、触媒された基材に還元剤を適用し、その後金属めっき浴を適用する。温度及び時間のような無電解金属めっきパラメータは、従来のパラメータであってもよい。従来の基材調製方法、例えば、基材表面のクリーニング又は脱脂、表面の粗化又は微粗化、表面のエッチング又はマイクロエッチング、溶媒膨潤剤適用、スルーホールのデスミア並びに様々なすすぎ及び変色防止処理を使用してもよい。このような方法及び配合物は当該技術分野において周知であり、文献に開示されている。
【0030】
一般に、金属めっきする基材がプリント回路基板の表面上又はスルーホールの壁上にあるような誘電体材料である場合、基板を水ですすぎ、クリーニング及び脱脂した後、スルーホールの壁をデスミアする。典型的には、誘電体表面の準備若しくは軟化又はスルーホールのデスミアは、溶媒膨潤剤の適用から始まる。
【0031】
任意の従来の溶媒膨潤剤を使用してもよい。具体的な種類は誘電体材料の種類に応じて変動しうる。誘電体の例は上に開示されている。どの溶媒膨潤が特定の誘電体材料に適しているかを判断するために少量の実験を行ってもよい。誘電体のTは多くの場合、使用すべき溶媒膨潤剤の種類を決定する。溶媒膨潤剤には、限定するものではないが、グリコールエーテル及びその関連する酢酸エーテルが挙げられる。従来量のグリコールエーテル及びその関連する酢酸エーテルを使用してもよい。市販の溶媒膨潤剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3302、CIRCUPOSIT(商標)ホールプレップ3303及びCIRCUPOSIT(商標)ホールプレップ4120(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。
【0032】
溶媒膨潤剤の後、プロモーターを適用してもよい。従来のプロモーターを使用できる。このようなプロモーターには、硫酸、クロム酸、過マンガン酸アルカリ又はプラズマエッチングが挙げられる。典型的には、過マンガン酸アルカリがプロモーターとして使用される。市販のプロモーターの例はCIRCUPOSIT(商標)プロモーター4130及びCIRCUPOSIT(商標)MLBプロモーター3308(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。任意追加的に、基材及びスルーホールを水ですすぐ。
【0033】
続いて、中和剤を適用して、プロモーターが残した残留物を中和する。従来の中和剤を使用できる。典型的には、中和剤は、1種以上のアミンを含有する酸性水溶液、又は3重量%過酸化水素及び3重量%硫酸の溶液である。市販の中和剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)MLB中和剤216−5である。任意追加的に、基材及びスルーホールを水ですすぎ、続いて乾燥する。
【0034】
中和の後、酸又はアルカリ性コンディショナーを適用してもよい。従来のコンディショナーを使用できる。このようなコンディショナーとしては、1種以上のカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、錯化剤及びpH調節剤又は緩衝剤が挙げられる。市販の酸コンディショナーの例はCIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3320及び3327(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。好適なアルカリコンディショナーとしては、限定するものではないが、1種以上の第四級アミン及びポリアミンを含有するアルカリ界面活性剤水溶液が挙げられる。市販のアルカリ界面活性剤の例はCIRCUPOSIT(商標)コンディショナー231、3325、813及び860である。任意追加的に、基材及びスルーホールを水ですすぐ。
【0035】
コンディショニングの後でマイクロエッチングを行ってもよい。従来のマイクロエッチング組成物を使用できる。マイクロエッチングは、その後めっきされる無電解金属及び後の電気めっきの接着性を向上させるために、露出した金属上に微粗化された金属表面を提供するように設計される(例えば、内層及び表面エッチング)。マイクロエッチング剤としては、限定するものではないが、60g/L〜120g/Lの過硫酸ナトリウム又はオキシモノ過硫酸ナトリウム若しくはカリウム及び硫酸(2%)の混合物、又は一般的な硫酸/過酸化水素が挙げられる。市販のマイクロエッチング組成物の例は、CIRCUPOSIT(商標)Microetch 3330エッチング液及びPREPOSIT(商標)748エッチング液(いずれもDow Advanced Materialsから入手可能)である。任意追加的に、基材を水ですすぐ。
【0036】
任意追加的に、マイクロエッチングした基材及びスルーホールにプレディップを適用してもよい。プレディップの例としては、酒石酸ナトリウムカリウム又はクエン酸ナトリウムのような有機塩、0.5%〜3%硫酸又は25g/L〜75g/L塩化ナトリウムの酸性溶液が挙げられる。
【0037】
続いて、水性触媒を基材に適用する。適用は、当該技術分野において使用される任意の従来方法によって、例えば、基材を触媒溶液中に浸漬することによって又は従来装置を用いて噴霧若しくは霧化することによって、実施してもよい。触媒滞留時間は1分〜10分の範囲であってもよく、一般的には縦置き型装置では2分〜8分、横置き型装置では25秒〜120秒である。触媒は、室温〜80℃、一般的には30℃〜60℃の温度で適用してもよい。触媒適用後に、基材及びスルーホールを、任意追加的に水ですすいでもよい。
【0038】
続いて、還元性溶液を基材に適用して、触媒の金属イオンをその金属状態へと還元する。還元性溶液は、基材を還元性溶液に浸漬する、基材上に還元性溶液を噴霧する、又は霧化によって溶液を適用することによって適用してもよい。溶液の温度は室温〜65℃、典型的には30℃〜55℃の範囲であってもよい。還元性溶液と触媒された基材との間の接触時間は、無電解金属めっき浴の適用前の30秒〜5分の範囲であってもよい。
【0039】
続いて、無電解浴を用いて、基材及びスルーホールの壁を、銅、銅合金、ニッケル又はニッケル合金のような金属で無電解めっきする。典型的には、銅をスルーホールの壁上にめっきする。めっき時間及び温度は従来通りであってもよい。典型的には、金属付着は20℃〜80℃、より典型的には30℃〜60℃の温度で実施する。基材を無電解めっき浴中に浸漬してもよく、又は無電解めっき浴を基材上に噴霧してもよい。典型的には、無電解めっきは5秒〜30分間実施してもよい;ただし、めっき時間は所望される金属の厚さに応じて変動しうる。
【0040】
任意追加的に変色防止剤を金属に適用してもよい。従来の変色防止組成物を使用できる。変色防止剤の例はANTI TARNISH(商標)7130(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。基材を任意追加的に水ですすいでもよく、その後基板を乾燥してもよい。
【0041】
さらなる処理としては、フォトイメージングによる従来処理、並びに、例えば、銅、銅合金、スズ及びスズ合金の電解金属付着のような基材へのさらなる金属付着が挙げられる。
【0042】
本発明の触媒は、誘電体材料の基材をはじめとする種々の基材上に金属を無電解めっきするために使用でき、従来のスズ/パラジウム触媒と比較して容易に酸化しないことから、保管中及び無電解めっきの間安定である。この触媒は、調製又は安定性の維持のために強酸を必要とせず、そのため従来触媒よりも腐食性が低い。更に、安定性のためにスズ化合物を必要とせず、ハロゲンフリーであってもよい。イオン性触媒は、プリント回路基板の製造において、ビア及びスルーホール充填の間の良好な金属被覆を可能にする。
【0043】
以下の実施例は本発明の範囲を限定することを意図するのではなく、本発明をさらに例証することを意図している。
【実施例】
【0044】
実施例1
1リットルの水に75ppmのパラジウムイオンと220ppmのアラントインとを含有する触媒を、50g/Lアラントイン原液の4.4mLのアリコート(aliquat)を900mLのDI水で希釈することによって調製した。208mgのテトラクロロパラジウム酸ナトリウムを最小量のDI水に溶解し、前記アラントイン溶液に添加した。この混合物を希釈して1リットルとし、室温で30分間撹拌した。アラントイン対パラジウムイオンのモル比は2:1であった。溶液のpHは3.4であった。
【0045】
1リットルの水に75ppmのパラジウムイオンと180ppmの5,5−ジメチルヒダントインとを含有する第2の触媒を調製し、50g/Lの原液を作製した。この50g/L 5,5−ジメチルヒダントイン原液の3.6mLのアリコート(aliquat)を900mLのDI水で希釈した。188mgの硝酸パラジウム二水和物を最小量のDI水に溶解し、5,5−ジメチルヒダントイン溶液に添加した。この混合物を希釈して1リットルとし、室温で30分間撹拌した。5,5−ジメチルヒダントイン対パラジウムイオンのモル比は2:1であった。溶液のpHを、1M水酸化ナトリウムを用いて8.5に調節した。
【0046】
続いて、各触媒を用いて、NY−1140非クラッド積層体(NanYaから入手可能)を以下の方法に従って無電解めっきした:
1.各非クラッド積層体をCIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3325溶液に50℃で5分間浸漬した後、水道水の流水で4分間すすいだ;
2.続いて、積層体を、PREPOSIT(商標)748エッチング液に室温で1分間浸漬した後、DI水の流水で4分間すすいだ;
3.各積層体を、パラジウムイオン/アラントイン触媒又はパラジウムイオン/5,5−ジメチルヒダントイン触媒のいずれかの溶液に40℃で5分間浸漬した後、DI水の流水で1分間すすいだ;
4.続いて、積層体を0.25M次亜リン酸ナトリウム溶液に50℃で1分間浸漬してパラジウムイオンを金属パラジウムへと還元し、続いてDI水の流水で1分間すすいだ;
5.活性化した積層体をCIRCUPOSIT(商標)880無電解銅浴に40℃及びpH13で15分間浸漬し、銅を積層体上にめっきした;
6.銅めっき後、積層体を水道水の流水で4分間すすいだ。
【0047】
各積層体を、銅めっき性能について試験した。いずれの積層体も光沢があり、均一な銅付着を有することが認められた。
【0048】
実施例2
触媒が、70ppmの硝酸銀由来銀イオン及び102ppmのアラントイン、並びに70ppmの硝酸銀由来銀イオン及び83ppmの5,5−ジメチルヒダントインを含有することを除いて、実施例1の方法を繰り返す。触媒は、実施例1に記載のプロセスと実質的に同じプロセスによって調製する。錯化剤対銀イオンのモル比は1:1である。各触媒溶液のpHは3である。NY−1140非クラッド積層体を、実施例1に記載のように、無電解銅めっき用に前処理する。めっき後、積層体の銅付着の品質を試験する。いずれの積層体も平滑で光沢のある銅付着を有すると予想される。
【0049】
実施例3
次の6種類の銅クラッドパネルの各2枚に、複数のスルーホールを設けた:TUC−662、SY−1141、SY−1000−2、IT−158、IT−180及びNPG−150。TUC−662はTaiwan Union Technologyから入手し、SY−1141及びSY−1000−2はShengyiから入手した。IT−158及びIT−180はITEQ Corp.から入手し、NPG−150はNanYaから入手した。パネルのT値は140℃〜180℃の範囲であった。各パネルは5cm×12cmであった。
【0050】
75ppmパラジウムイオン/220ppmアラントイン触媒を調製した。室温にて、50g/Lの原液から4.4mLのアラントイン溶液をpH10にて900mLのDI水に溶解した。208mgのテトラクロロパラジウム酸ナトリウムを最小量のDI水に溶解し、前記アラントイン溶液に添加した。十分なDI水を撹拌下で溶液に加えて1リットルとした。触媒中のアラントイン対パラジウムイオンのモル比は2:1であった。非調節時のpHは3.4であった。
【0051】
各パネルのスルーホールを以下のように処理した:
1.各パネルのスルーホールを、CIRCUPOSIT(商標)MLBコンディショナー211溶液で、80℃にて7分間デスミアした;
2.続いて、各パネルのスルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
3.続いて、スルーホールをCIRCUPOSIT(商標)MLBプロモーター3308過マンガン酸塩水溶液で80℃にて10分間処理した;
4.続いて、スルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
5.続いて、スルーホールを3wt%硫酸/3wt%過酸化水素の中和剤で、室温にて2分間処理した;
6.続いて、各パネルのスルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
7.続いて、各パネルのスルーホールをCIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3325アルカリ溶液で50℃にて5分間処理した;
8.続いて、スルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
9.続いて、パネルのうち6枚については2分間、残りの6枚については1分間、スルーホールをPREPOST(商標)748エッチング液で室温にて処理した;
10.続いて、各パネルのスルーホールをDI水の流水で4分間すすいだ;
11.続いて、2分間エッチングしたパネルのスルーホールをCATAPREP(商標)404プレディップ溶液に室温で1分間浸漬した後、このパネルを75ppmのパラジウム金属を過剰なスズと共に有する従来のパラジウム/スズ触媒に40℃で5分間浸漬した;一方で、1分間エッチングしたパネルは上記パラジウムイオン/アラントイン触媒に40℃で5分間浸漬した;
12.続いて、パラジウムイオンとアラントインとを含有する触媒で処理したパネルを、0.25M次亜リン酸ナトリウム還元剤溶液に50℃で1分間浸漬してパラジウムイオンを金属パラジウムへと還元した;
13.続いて、全てのパネルをDI水の流水で4分間すすいだ;
14.続いて、パネルをCIRCUPOSIT(商標)880無電解銅めっき浴に40℃、pH13で浸漬し、銅をスルーホールの壁上に15分間付着した;
15.続いて、銅めっきしたパネルを冷水で4分間すすいだ;
16.続いて、銅めっきした各パネルを圧縮空気で乾燥した;
17.パネルのスルーホールの壁の銅めっき被覆率を、下記のバックライトプロセスを用いて試験した。
【0052】
各パネルを、スルーホールの中心のできるだけ近くで垂直に切断して銅めっきされた壁を露出した。スルーホール壁被覆率を測定するため、各パネルのスルーホールの中心から3mm以下の厚さで断面切片を採取した。欧州バックライト評価基準(European Backlight Grading Scale)を用いた。各パネルから得た断面切片を倍率50Xの従来の光学顕微鏡下に、光源を試料の後方にして置いた。銅付着の品質は、試料中を透過して顕微鏡下で観察できる光の量によって決定した。透過光は、めっきスルーホールの無電解被覆が不完全な領域でのみ観察できた。光が透過せず、切片が完全に黒に見える場合、バックライト基準でスルーホールの完全な銅被覆を示す5点と評価した。光が切片全体を透過し、暗い領域がない場合、これは壁上に銅金属付着がほとんど〜全くないことを示し、切片を0点と評価した。切片が多少の暗い領域と明るい領域を有する場合、その切片は0〜5点の間と評価した。各基板について少なくとも10のスルーホールを検査し、評価した。
【0053】
図1は、めっきした6種類のパネルのそれぞれについて、両方の触媒のバックライト性能を示す評価点分布グラフである。グラフのプロットは、各基板の10のスルーホール切片のバックライト評価点の95%信頼区間を示す。各プロットの中央を通る水平線は、測定した10のスルーホール切片の各群について平均バックライト値を示す。パラジウム/アラントイン触媒は従来のパラジウム/スズコロイド触媒と実質的に同じ性能を示し、バックライト値は4.5を超えた。4.5以上のバックライト値は、めっき産業において商業的に許容できる触媒であることを示す。
【0054】
実施例4
触媒溶液が75ppmのパラジウムイオン及び180ppmのジメチルヒダントインを含有することを除いて、同じパネルを用いて実施例3の方法を繰り返した。360mgのジメチルヒダントインを1900mLのDI水に溶解し、溶液のpHを1M水酸化ナトリウムで10.2に調節した。375mgの硝酸パラジウム水和物を最小量のDI水に溶解し、錯化剤を含有する溶液に添加した。続いて、溶液を室温下で30分間撹拌しながら、2リットルに希釈した。最終溶液のpHは8.5であった。錯化剤対パラジウムイオンのモル比は2:1であった。
【0055】
各パネルのスルーホールを以下のように処理した:
1.各パネルのスルーホールを、CIRCUPOSIT(商標)MLBコンディショナー211溶液で、80℃にて7分間デスミアした;
2.続いて、各パネルのスルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
3.続いて、スルーホールをCIRCUPOSIT(商標)MLBプロモーター3308過マンガン酸塩水溶液で80℃にて10分間処理した;
4.続いて、スルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
5.続いて、スルーホールを3wt%硫酸/3wt%過酸化水素の中和剤で、室温にて2分間処理した;
6.続いて、各パネルのスルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
7.続いて、各パネルのスルーホールをCIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3325アルカリ溶液で50℃にて5分間処理した;
8.続いて、スルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
9.続いて、スルーホールを1%硫酸及び75g/L過硫酸ナトリウムエッチング液で室温にて2分間処理した;
10.続いて、各パネルのスルーホールをDI水の流水で4分間すすいだ;
11.続いて、パネルの1/2のスルーホールをCATAPREP(商標)404プレディップ溶液に室温で1分間浸漬した後、このパネルを75ppmのパラジウム金属を過剰なスズと共に有する従来のパラジウム/スズ触媒溶液に40℃で5分間浸漬した;一方で、残りの1/2のパネルを、上記パラジウムイオン/ジメチルヒダントイン触媒に40℃で5分間浸漬した;
12.続いて、パラジウムイオンとジメチルヒダントインとを含有する触媒で処理したパネルを、0.25M次亜リン酸ナトリウム還元剤溶液に50℃で1分間浸漬してパラジウムイオンを金属パラジウムへと還元した;
13.続いて、パラジウム/スズ触媒で触媒されたパネルをDI水の流水で4分間すすぎ、パラジウム/ジメチルヒダントイン触媒で触媒されたパネルを30秒間すすいだ;
14.続いて、パネルをCIRCUPOSIT(商標)880無電解銅めっき浴に38℃及びpH13で浸漬し、スルーホールの壁上に銅を15分間付着した;
15.続いて、銅めっきしたパネルを冷水で4分間すすいだ;
16.続いて、銅めっきした各パネルを圧縮空気で乾燥した;
17.パネルのスルーホールの壁の銅めっき被覆率を、上記実施例3に記載のバックライトプロセスを用いて試験した。
【0056】
図2は、めっきした6種類のパネルのそれぞれについて、両方の触媒のバックライト性能を示す評価点分布グラフである。グラフのプロットは、各基板の10のスルーホール切片のバックライト評価点の95%信頼区間を示す。各プロットの中央を通る水平線は、測定した10のスルーホール切片の各群について平均バックライト値を示す。パラジウム/ジメチルヒダントイン触媒は従来のパラジウム/スズコロイド触媒ほどの性能を示さなかったが、パラジウム/ジメチルヒダントイン触媒のバックライト値は商業目的で許容できる4.5を超えた。
【0057】
実施例5
触媒溶液が75ppmのパラジウムイオン及び140ppmのスクシンイミドを含有することを除いて、同じパネルを用いて実施例3の方法を繰り返した。0.24gのスクシンイミドを400mLのDI水に溶解した。溶液を、1M水酸化ナトリウムでpH10.5に調節した。375mgの硝酸パラジウム水和物を最小量のDI水に溶解し、スクシンイミド溶液に添加した。続いて、このパラジウムイオンとスクシンイミドの溶液を、1gのクエン酸三ナトリウムカリウムと3.8gの四ホウ酸ナトリウム十水和物とを含有する1リットルの溶液に添加した。この溶液を室温で30分間撹拌した。錯化剤対パラジウムイオンのモル比は2:1であり、溶液のpHは9であった。
【0058】
各パネルのスルーホールを以下のように処理した:
1.各パネルのスルーホールを、CIRCUPOSIT(商標)MLBコンディショナー211溶液で、80℃にて7分間デスミアした;
2.続いて、各パネルのスルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
3.続いて、スルーホールをCIRCUPOSIT(商標)MLBプロモーター3308過マンガン酸塩水溶液で80℃にて10分間処理した;
4.続いて、スルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
5.続いて、スルーホールを3wt%硫酸/3wt%過酸化水素の中和剤で、室温にて2分間処理した;
6.続いて、各パネルのスルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
7.続いて、各パネルのスルーホールをCIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3325アルカリ溶液で50℃にて5分間処理した;
8.続いて、スルーホールを水道水の流水で4分間すすいだ;
9.続いて、スルーホールを1%硫酸及び75g/L過硫酸ナトリウムエッチング液で室温にて2分間処理した;
10.続いて、各パネルのスルーホールをDI水の流水で4分間すすいだ;
11.続いて、パネルの1/2のスルーホールをCATAPREP(商標)404プレディップ溶液に室温で1分間浸漬した後、このパネルを75ppmのパラジウムを過剰なスズと共に有する従来のパラジウム/スズ触媒の溶液に40℃で5分間浸漬した;一方で、残りの1/2のパネルを、最初に0.5g/Lクエン酸三ナトリウムを含有するプレディップに室温で1分間浸漬し、続いてパラジウムイオン/スクシンイミド触媒に40℃で5分間浸漬した;
12.続いて、パラジウムイオンとスクシンイミドとを含有する触媒で処理したパネルを、0.25M次亜リン酸ナトリウム還元剤溶液に50℃で1分間浸漬してパラジウムイオンを金属パラジウムへと還元した;
13.続いて、パラジウム/スズ触媒で触媒されたパネルをDI水の流水で4分間すすぎ、パラジウム/スクシンイミド触媒で触媒されたパネルを30秒間すすいだ;
14.続いて、パネルをCIRCUPOSIT(商標)880無電解銅めっき浴に38℃及びpH13で浸漬し、スルーホールの壁上に銅を15分間付着した;
15.続いて、銅めっきしたパネルを冷水で4分間すすいだ;
16.続いて、銅めっきした各パネルを圧縮空気で乾燥した;
17.パネルのスルーホールの壁の銅めっき被覆率を、上記実施例3に記載のバックライトプロセスを用いて試験した。
【0059】
図3は、めっきした6種類のパネルのそれぞれについて、両方の触媒のバックライト性能を示す評価点分布グラフである。グラフのプロットは、各基板の10のスルーホール切片のバックライト評価点の95%信頼区間を示す。各プロットの中央を通る水平線は、測定した10のスルーホール切片の各群について平均バックライト値を示す。パラジウム/スクシンイミド触媒は従来のパラジウム/スズコロイド触媒ほどの性能を示さなかったが、パラジウム/スクシンイミド触媒のバックライト値は商業目的で許容できる4.5を超えた。
【0060】
実施例6
銀イオン及び5,5−ジメチルヒダントイン触媒を用いて6枚のパネルを活性化することを除いて、実施例4の方法を繰り返した。150ppmの酢酸銀由来の銀及び208ppmのヒダントインが触媒に包含される。触媒は、実施例4に記載のプロセスと実質的に同じプロセスによって調製する。ヒダントイン対銀イオンのモル比は1.5:1である。手順及びパラメータは上記の実施例3と実質的に同じである。バックライトの結果は、パラジウム及び5,5ジメチルヒダントイン触媒に関する図2で示した結果と実質的に同じであると予想される。
【0061】
実施例7
金イオン及びスクシンイミド並びに白金及びスクシンイミドを用いて触媒を作製したことを除き、実施例5の方法を繰り返す。金イオンは、塩化金カリウムから提供され、白金イオンは四塩化白金酸カリウムから提供される。触媒は、実施例5に記載の方法と実質的に同じ方法によって調製する。金/スクシンイミド触媒は60ppmの金イオン及び60ppmのスクシンイミドを含有する。白金/スクシンイミド触媒は80ppmの白金イオン及び82ppmのスクシンイミドを含有する。スクシンイミド対金属イオンのモル比は2:1である。手順及びパラメータは、上記の実施例5と実質的に同じである。バックライトの結果は、図3で示したバックライト値が4.5以上であったパラジウム/スクシンイミド触媒に関する結果と実質的に同じであると予想される。
【0062】
実施例8
銅及びアラントイン、コバルト及び5,5−ジメチルヒダントイン、並びにニッケル及びスクシンイミドのイオン性触媒を調製することを除き、実施例3の方法を繰り返す。触媒の調製方法は、実施例1と実質的に同じである。銅イオン/アラントイン触媒は、100ppmの硫酸銅五水和物由来の銅イオン及び498ppmのアラントインを含有する。コバルトイオン/5,5−ジメチルヒダントイン触媒は、110ppmの酢酸コバルト由来のコバルトイオン及び477ppmの5,5−ジメチルヒダントインを含有し、ニッケルスクシンイミドのイオン性触媒は120ppmの塩化ニッケル由来のニッケルイオン及び403ppmのスクシンイミドを含有する。錯化剤対金属イオンのモル比は2:1である。手順及びパラメータは、上記の実施例3と実質的に同じである。バックライト値は4.5以上であると予想される。
図1
図2
図3