【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る真空複層ガラスパネル用の間隔保持部材の特徴構成は、一対の板ガラス間の空隙部を減圧状態に保持する際に、前記一対の板ガラスの対向面に所定の間隔で設定された支持点の各々に設置される間隔保持部材であって、前記一対の板ガラスの対向面に各別に当接する一方側の第1平面部および他方側の第2平面部を有する当接部材を少なくとも一つ備えるとともに、前記当接部材から一体に延出した突出片を備え、前記間隔保持部材に外接して高さ方向が前記第1平面部に垂直な仮想の円柱を設定したとき、前記第1平面部の総面積および前記第2平面部の総面積が、前記円柱の円形断面積の半分以下に設定してある点にある。
【0010】
本構成のように、当接部材が一対の板ガラスの対向面に各別に当接する第1平面部および第2平面部を備えることで、板ガラス間に間隔保持部材を設置する際の間隔保持部材の姿勢が安定なものとなる。また、当接部材の平面部が板ガラスに当接するため、大気圧による圧縮応力が分散され、板ガラスおよび間隔保持部材が破損し難いものとなる。
【0011】
さらに、本構成の間隔保持部材では、当接部材を一対のガラス間に設置する際に当接部材の姿勢を決定する突出片を当接部材から一体に延出した状態に備えている。よって、間隔保持部材のサイズは、当接部材から突出片が突き出た状態の全体形状によって決定される。本構成では、間隔保持部材に外接して高さ方向が第1平面部に垂直な仮想の円柱を設定した場合に、第1平面部の総面積および第2平面部の総面積を、前記円柱の円形断面積の半分以下に設定してある。つまり、当該間隔保持部材は、第1平面部および第2平面部が板ガラスに当接して当接部材の姿勢が維持されると共に、当接部材の設置時には当接部材から張り出した突出片が当接部材の姿勢を適切に設定するものであり、第1平面部および第2平面部の面積は、間隔保持部材の全体の面積に比べて小さく設定されている。このため、間隔保持部材を介して一方の板ガラスから他方の板ガラスに移動する熱量が少なくなり、断熱性に優れた真空複層ガラスを得ることができる。
【0012】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記第1平面部の総面積および前記第2平面部の総面積が、前記円柱の円形断面積の4分の1以下に設定してある点にある。
【0013】
本構成のごとく、第1平面部の総面積および第2平面部の総面積を、前記円柱の円形断面積の4分の1以下に設定することで、板ガラスと間隔保持部材との間を流れる熱量がより少なくなり、真空複層ガラスの断熱性が向上する。
【0014】
さらに、第1平面部および第2平面部の面積が上記円柱の円形断面積の半分以下の場合に比べてさらに狭くなる本構成の場合には、板ガラスの表面との当接による当接部材の姿勢の拘束が弱くなる。よって、例えば、板ガラスが風圧等により曲げられ、一対の板ガラスどうしが板ガラスの平面方向に沿って相対変位する場合には、当接部材が傾斜変形し、あるいは転がるように姿勢変化して板ガラスどうしの相対変位をより許容し易くする。
【0015】
ただし、間隔保持部材の材料の圧縮強度が間隔保持部材に作用する圧縮応力よりも低い場合には、間隔保持部材が破損する虞がある。このため、第1平面部の総面積および第2平面部の総面積は、間隔保持部材に作用する圧縮応力が間隔保持部材の圧縮強度を下回る範囲において設定される。
【0016】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記当接部材を一つ備え、前記突出片に支持されて前記当接部材の周囲を囲む状態に配置される環状部を備えた点にある。
【0017】
本構成の如く、突出片に支持されて当接部材の周囲を囲む状態に環状部が配置されていると、間隔保持部材を板ガラスの面上に設置する際に、当接部材が転ぶように姿勢変化しても、環状部が板ガラスの表面に当接して当接部材の配置姿勢を適切に設定することができる。このため、当接部材の第1平面部および第2平面部が一対の板ガラスの対向面に確実に当接し、間隔保持部材の設置性が向上する。
【0018】
また、環状部は当接部材から一体に延出する突出片によって支持されているが、この突出片は、当接部材の所定の部位から突出する片状の部材である。よって、間隔保持部材の全体の重量と比較して突出片の重量比率はそれ程大きなものではない。そのため、本実施形態の間隔保持部材は、環状部を支持する構成でありながら、間隔保持部材の重量分布を中央の当接部材の側に多く残し、間隔保持部材を板ガラスの表面に設置する際に、当接部材が転がるように姿勢変化するのを有効に防止することができる。
【0019】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記当接部材を複数備え、前記突出片によって互いに接続されて構成されている点にある。
【0020】
本構成の如く、間隔保持部材が複数の当接部材を備えることで、板ガラスと当接する第1平面部および第2平面部が複数形成される。このため、間隔保持部材を板ガラス間に設置する際に間隔保持部材の姿勢が安定し倒れるような姿勢変化が生じ難くなる。
【0021】
尚、突出片によって接続される当接部材の個数および配置位置は任意である。よって、当接部材を形成する材料の圧縮強度等に応じて、これら個数や配置位置を任意に設定することができる。
【0022】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記突出片の組合せにより、前記複数の当接部材を内部に収容する環状の接続部が形成されている点にある。
【0023】
本構成のように、夫々の当接部材から一体に延出する接続部を環状に形成することにより、間隔保持部材を板ガラスの上に載置する際に間隔保持部材どうしが絡まる不具合を防止することができる。その結果、間隔保持部材の設置効率が向上する。
【0024】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記環状の接続部が円環状に形成されている点にある。
【0025】
本構成の如く、環状の接続部を円環状にすることで、間隔保持部材の外形が全て一定の曲率を持つこととなり、間隔保持部材を板ガラスの表面に載置する際に、特定の一つの間隔保持部材の接続部が、隣接する他の間隔保持部材の接続部の内側に突入する機会が少なくなる。よって、間隔保持部材どうしの絡まりをより確実に防止することができる。
【0026】
また、間隔保持部材は小さいとはいえ、個々の間隔保持部材を視認することは可能である。ただし、夫々の間隔保持部材の向きが様々な方向に自転している場合でも、間隔保持部材の全体形状が円形であれば、各々の間隔保持部材の向きは視認し難くなる。よって、夫々の間隔保持部材の配置位置さえ適切であれば、個々の間隔保持部材は整然と配列されていると認識され、視覚上好ましいものとなる。
【0027】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記第1平面部および第2平面部の少なくとも一方が円形状である点にある。
【0028】
本構成の如く、第1平面部および第2平面部の少なくとも一方が円形状であると、一対の板ガラスが平面方向に沿って相対変位する際に、当接部材が板ガラスに対して転がるように姿勢変化する際の転がり方向による特性の変化が生じない。このため、間隔保持部材は板ガラスどうしの相対移動の方向に拘らず、適切に傾斜変形あるいは転がり姿勢をとり易くなる。これにより、間隔保持部材の配置方向に拘らず何れの方向に対しても板ガラスどうしの相対移動を許容することができる。
【0029】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記当接部材が前記一対の板ガラスの間に設置された状態で、前記突出片が前記板ガラスに離間する点にある。
【0030】
本構成の如く、突出片が板ガラスに離間する構成であると、突出片を介して一対の板ガラス間に熱流が発生しないため、真空複層ガラスパネルの断熱性をより確実に維持することができる。
【0031】
本発明に係る間隔保持部材の他の特徴構成は、前記第1平面部および前記第2平面部の最大幅が前記第1平面部と前記第2平面部との間の高さ寸法以下に設定された点にある。
【0032】
本構成の如く、第1平面部および第2平面部の最大幅が第1平面部と第2平面部との間の高さ寸法以下に設定されると、ガラスパネルが衝撃や風圧などで曲り変形し、一対の板ガラスどうしが面方向に相対移動した場合に、当接部材が一対の板ガラスどうしの間でより傾斜し易くなる。すなわち、当接部材の第1平面部および第2平面部と板ガラスとの当接状態が維持されたまま、当接部材の中間領域が板ガラスの面方向に沿って略S字状に変形易くなり、あるいは当接部材が一対の板ガラスの間で転がるように姿勢変化し易くなることで、一対の板ガラスどうしがより柔軟に相対移動できるようになる。