特許第6463079号(P6463079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6463079硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463079
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20190121BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20190121BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190121BHJP
   C08L 63/06 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20190121BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C08G59/32
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   G03F7/029
   C08K3/013
   C08L63/06
   C08L101/08
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-219107(P2014-219107)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-193786(P2015-193786A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-54616(P2014-54616)
(32)【優先日】2014年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】今野 清
(72)【発明者】
【氏名】依田 愛子
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝典
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−170050(JP,A)
【文献】 特開2011−215384(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125820(WO,A1)
【文献】 特開2011−227308(JP,A)
【文献】 特開平09−185166(JP,A)
【文献】 特開平09−185167(JP,A)
【文献】 特開平11−315078(JP,A)
【文献】 特開2000−007672(JP,A)
【文献】 特開2013−210443(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/147018(WO,A1)
【文献】 特開2011−215362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
G03F 7/004−7/04、7/06、7/075−7/115、
7/16−7/18
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体のみからなるトリグリシジルイソシアヌレート、および、(D)無機充填物を含有し、
前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、前記(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量比が、2.0以下であり、前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、エチレン性不飽和二重結合を有さず、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である請求項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、前記(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量比が、0.9以下である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)酸化防止剤をさらに含む請求項1〜のうちいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
銅上に塗布して用いられる請求項1〜のうちいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
キャリアフィルム上に、請求項1〜のうちいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項7】
請求項1〜のうちいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物、または、請求項記載のドライフィルムの前記樹脂層を、光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関し、詳しくは、熱硬化性成分の改良に係る硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板は、積層板に貼り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成したものであり、電子部品がはんだ付けにより所定の場所に配置されている。このようなプリント配線板においては、必要な部分へのはんだの付着を防止するとともに、回路の導体が露出して酸化や湿気により腐食されることを防止するための保護膜として、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域に、ソルダーレジストが形成される。ソルダーレジストは回路基板の永久保護膜としても機能するので、ソルダーレジストには、アルカリ現像性やはんだ耐熱性などの種々の性能を備えることが要求される。
【0003】
基板上に所望のパターンのソルダーレジストを形成する方法の一つとして、フォトリソグラフィ技術を利用した形成方法が用いられている。例えば、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物からなる感光性ソルダーレジストを、パターンマスクを通して露光した後、アルカリ現像することにより、露光部と非露光部とに生じたアルカリ現像液への溶解性の差を利用してパターンを形成することができる。
【0004】
アルカリ現像型の感光性樹脂組成物には、アルカリ現像性を発現するためのカルボキシル基含有樹脂とともに、絶縁信頼性やはんだ耐熱性を向上する目的で、カルボキシル基と架橋可能な熱硬化性成分が使用され、これらを分けた2液型のものが一般的である。しかし、2液型のソルダーレジスト組成物には、混合後の可使時間(ポットライフ)が数時間〜1日程度と短いために、塗布工程の直前で混合しなければならないことに加え、混合工程に時間がかかるという問題があり、従来から1液型のソルダーレジスト組成物に対する要求がある。また、ソルダーレジスト組成物については、加工性等の観点からドライフィルム化の要求もあり、これらの観点から、保存安定性の向上が求められている。さらに、ソルダーレジスト組成物の乾燥塗膜には、指触乾燥性(タックフリー性)も要求される。
【0005】
さらにまた、ソルダーレジスト組成物には、通常、無機充填物を配合するが、無機充填物として比重の大きいものを使用したり、組成物中に無機充填物を多量に添加したりすると、現像性が悪化する場合があり、問題となる。さらにまた、白色ソルダーレジストの場合、ソルダーレジストとしての要求特性に加えて、熱や光に晒されることで、硬化物の変色が生じないことも重要となる。
【0006】
例えば、特許文献1には、UV照射、熱履歴による白色塗膜の変色及び反射率の低下が少なく、かつ、低露光量でパターン形成可能な白色液状感光性樹脂組成物を提供することを目的として、芳香環を有さないカルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤、酸化チタン、および、一種または二種以上の特定構造を有するエポキシ化合物を配合したソルダーレジスト組成物が開示されている。しかし、このソルダーレジスト組成物についても、上記要求性能のすべてを備えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5352340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アルカリ現像性やはんだ耐熱性に加え、保存安定性、熱や光に対する変色耐性、および、指触乾燥性にも優れた硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、カルボキシル基含有樹脂、光重合開始剤および無機充填物に加えて、熱硬化性成分として、特定構造のトリグリシジルイソシアヌレートを、カルボキシル基含有樹脂に対し所定の量で用いるものとすることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体のみからなるトリグリシジルイソシアヌレート、および、(D)無機充填物を含有し、
前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、前記(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量比が、2.0以下であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の組成物において、前記(A)カルボキシル基含有樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂、および、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂のいずれも好適に用いることができ、前記(B)光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を好適に用いることができる。また、本発明においては、前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、前記(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量比が、0.9以下であることが好ましい。本発明の組成物は、好適には、(E)酸化防止剤をさらに含むものであり、銅上に塗布して用いることができる。
【0012】
また、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの前記樹脂層を、光照射により硬化して得られることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、本発明のプリント配線板は、上記本発明の硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アルカリ現像性やはんだ耐熱性に加え、保存安定性、熱や光に対する変色耐性、および、指触乾燥性にも優れた硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を実現することが可能となった。
また、一般的に、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ樹脂とを含む硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂を含む液とエポキシ樹脂を含む液とに分けて保管するが、本発明の硬化性樹脂組成物では、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(C)S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体のみからなるトリグリシジルイソシアヌレートとを、分けることなく1液型とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0017】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂を含有する。(A)カルボキシル基含有樹脂としては、公知のカルボキシル基を含む樹脂を用いることができる。カルボキシル基の存在により、組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、本発明の組成物を光硬化性にすることや耐現像性の観点から、(A)カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いることもできる。(A)カルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有しても有さなくてもよい。
【0018】
本発明の組成物に用いることができるカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0019】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。このカルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、不飽和カルボン酸および不飽和基含有化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0020】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0021】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物および酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0022】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート若しくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0023】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0024】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0025】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、多官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0026】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、2官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0027】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、多官能オキセタン樹脂、ジカルボン酸および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0028】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、エポキシ化合物、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物、不飽和基含有モノカルボン酸および多塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0031】
(13)上記(1)〜(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0032】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0033】
また、上記のうちでも、スチレンまたはスチレン誘導体から誘導された(A)カルボキシル基含有樹脂を用いると、はんだ耐熱性に優れる組成物が得られるため、好ましい。
(A)カルボキシル基含有樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂、および、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも好適に用いることができる。本発明においては、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂とエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂を併用することも好ましい。
【0034】
上記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜180mgKOH/gの範囲である。20〜200mgKOH/gの範囲であると、塗膜の密着性が得られ、アルカリ現像が容易となり、現像液による露光部の溶解が抑えられ、必要以上にラインが痩せたりせずに、正常なレジストパターンの描画が容易となるため好ましい。
【0035】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000〜150,000の範囲が好ましい。この範囲であると、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良く、現像時に膜減りが生じにくい。また、上記重量平均分子量の範囲であると、解像度が向上し、現像性が良好であり、保存安定性が良くなる。より好ましくは、5,000〜100,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0036】
[(B)光重合開始剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。
【0037】
(B)光重合開始剤としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,IRGACURE819)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,DAROCUR TPO)等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。以上の光重合開始剤は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記のうちでも、ビスアシルフォスフィンオキサイド類やモノアシルフォスフィンオキサイド類等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が、タックが少なく、変色抑制効果に優れるために好ましい。中でも、ビスアシルフォスフィンオキサイド類を用いることが、感度およびタックフリー性をより向上できる点で、好適である。
【0039】
(B)光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部である。(B)光重合開始剤をこの範囲で配合することで、銅上での光硬化性が十分となり、塗膜の硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性が向上し、また、深部硬化性も向上する。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5〜40質量部である。
【0040】
[(C)トリグリシジルイソシアヌレート]
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化性成分として、芳香環を有さない複素環式エポキシ樹脂である、(C)S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体のみからなるトリグリシジルイソシアヌレートを含有する。これにより、無機充填物の比重や配合量によらず、良好なアルカリ現像性を確保することができるとともに、はんだ耐熱性、保存安定性、変色耐性および指触乾燥性に優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。(C)トリグリシジルイソシアヌレートとして、S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が異なる方向に結合した構造をもつα体を含むものを用いると、エポキシ基自体の骨格は同じであるものの、エポキシ基が向いている方向によって作用に差異が生じ、本発明の所期の効果が得られなくなる。
【0041】
本発明に用いる(C)S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体のみからなるトリグリシジルイソシアヌレートとしては、例えば、日産化学工業(株)製のTEPIC−HP等を用いることができる。
【0042】
本発明において、上記(C)トリグリシジルイソシアヌレートの配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量比が2.0以下となる範囲とすることが必要である。好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、上記(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量比が0.9以下、例えば、0.3以上0.9以下、特には、0.5以上 0.9以下となる範囲とする。ここで、本発明において、カルボキシル基およびエポキシ基の当量とは、それぞれ、反応基としてのカルボキシル基およびエポキシ基の化学当量を意味する。
【0043】
本発明においては、組成物中における上記(C)トリグリシジルイソシアヌレートの配合量を上記範囲として、カルボキシル基の数に対し、反応するエポキシ基の数を少なくすることで、変色抑制効果を向上することができる。特に、白色組成物の場合には、熱や光の影響により変色しやすいので、上記当量比を満足するものとすることで、黄変を効果的に抑制することができ、好ましい。従来、このように、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基と、エポキシ樹脂、特には、上記(C)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基との当量比に着目した技術は存在しなかった。
【0044】
[(D)無機充填物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)無機充填物を含有する。(D)無機充填物としては、例えば、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化カルシウム、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、セピオライト、銅、鉄、カーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、鉛白、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、チタン酸鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ダイヤモンド粉末、ケイ酸ジルコニウム、雲母粉、硫酸鉛、フッ化セリウム、酸化セリウム、ホスフィン酸アルミニウム塩、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、焼成タルク、燐酸マグネシウム、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、製鉄スラグ、酸化鉄、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、脱水汚泥、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン、ホスフィン酸アルミニウム塩などのリン含有金属塩等が挙げられる。これらの無機充填物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明においては、上記(D)無機充填物のうちでも、煮沸法により測定されたpHが6.8以上11以下であるものが好ましい。pHが、6.8以上であると変色を抑制する効果が得られ、11以下であると、組成物の保存安定性が向上する。変色をより抑制する観点からは、上記pHは好適には7.0以上であり、より好適には7.4以上であり、さらに好適には8.1以上である。組成物の保存安定性をより良好にする観点からは、上記pHは好適には10.0以下であり、より好適には9.0以下である。
【0046】
また、上記(D)無機充填物のエネルギーバンドギャップは、2.5eV以上7eV以下であることが好ましい。上記エネルギーバンドギャップが2.5eVよりも低いと、絶縁性が低下するおそれがあり、上記エネルギーバンドギャップが7eVよりも高いと、膜が高温に晒された場合に変色するおそれが生ずる。
【0047】
さらに、上記(D)無機充填物は、465nmでの屈折率が1.8以上であることが好ましく、これにより、LEDを搭載した基板に用いる白色ソルダーレジスト膜に要求される高い反射性能を得ることができる。
【0048】
また、(D)無機充填物は、酸性部位を有することが好ましく、塩基性を高めるために、その酸性部位と反応可能な化合物により表面処理されていることが好ましい。(D)無機充填物の酸性部位と反応可能な化合物としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレートもしくはペンタエリスリトール等の多価アルコール、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン若しくはトリプロパノールアミン等のアルカノールアミン、クロロシランまたはアルコキシシラン等が挙げられる。
【0049】
上記(D)無機充填物のうちでも、本発明においては、白色の無機充填物を用いることが好ましく、これにより、LED用プリント配線基板等の白色ソルダーレジスト膜に好適な組成物を得ることができる。白色の(D)無機充填物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸鉛等が挙げられる。白色の(D)無機充填物の数平均粒子径は、好適には0.01〜1.0μmの範囲内であり、より好適には0.1〜0.5μmの範囲内である。
【0050】
白色の(D)無機充填物の中でも、熱による変色の抑制効果が高いことから、酸化チタンを用いることが好ましい。(D)無機充填物として酸化チタンを含有することで、組成物の硬化物を白色とすることができ、高い反射率を得ることが可能となる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよく、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li0.5TiOに化学酸化によるリチウム脱離処理が施されることで得られる。
【0051】
上記のうち、ルチル型酸化チタンを用いると、耐熱性をより向上することができるとともに、光照射に起因する変色を起こしにくくなり、厳しい使用環境下でも品質を低下しにくくすることができるので、好ましい。特に、アルミナ等のアルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることで、耐熱性をさらに向上することができる。(D)無機充填物として酸化チタンを用いる場合、全酸化チタン中の、アルミニウム酸化物より表面処理されたルチル型酸化チタンの含有量は、好適には10質量%以上、より好適には30質量%以上であり、上限は100質量%以下であって、すなわち、酸化チタンの全量が、上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンであってもよい。上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンとしては、例えば、ルチル型塩素法酸化チタンである石原産業(株)製のCR−58や、ルチル硫酸法酸化チタンである同社製のR−630等が挙げられる。また、ケイ素酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることも好ましく、この場合も、耐熱性をさらに向上することができる。さらに、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物との双方で表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることも好ましく、例えば、ルチル型塩素法酸化チタンである石原産業(株)製のCR−90等が挙げられる。
【0052】
なお、アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型のものよりも低硬度であるので、アナターゼ型酸化チタンを用いた場合、組成物の成形性の点でより良好となる。
【0053】
一方で、酸化チタンを多量に含有する組成物は流動度が低下することから、現像残渣が生じやすい問題があったが、本発明においては、上記特定の(C)トリグリシジルイソシアヌレートを使用するものとしたことで、現像残渣の問題なしで反射率の高い硬化被膜を得ることが可能となった。
【0054】
また、本発明においては、前述したように、(D)無機充填物として比重の大きいもの、例えば、比重が3.5以上のものを使用した場合でも、現像性を良好に確保することが可能である。比重が3.5以上の(D)無機充填物としては、例えば、酸化チタン(4.0)、酸化マグネシウム(3.65)、酸化亜鉛(5.6)、硫酸バリウム(4.5)、アルミナ(約4.0)、チタン酸カリウム(3.5)、チタン酸バリウム(6.02)、銅(8.74)、鉄(7.87)などが挙げられる(括弧内の数値は比重を示す)。
【0055】
このような(D)無機充填物の配合量は、硬化性樹脂組成物中の固形分(硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を除く成分)に対して、好ましくは5〜80質量%の範囲、より好ましくは10〜70質量%の範囲である。本発明においては、前述したように、(D)無機充填物の配合量が多い場合、例えば、50質量%以上の場合でも、現像性を良好に確保することが可能である。
【0056】
[(E)酸化防止剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、(E)酸化防止剤を含有することが好ましい。(E)酸化防止剤を含有させることで、通常、カルボキシル基含有樹脂等の酸化劣化を防止して、変色を抑制する効果が得られることが知られているが、本発明者は、この効果に加えて、耐熱性が向上するとともに、解像性(線幅再現性)が良好になるとの効果が得られることを見出した。すなわち、(E)無機充填物の種類によっては、光を反射し吸収することにより、解像性を悪化させる場合があるが、(E)酸化防止剤を含有させることで、(D)無機充填物の種類によらず、良好な解像性を得ることができるものとなる。
【0057】
(E)酸化防止剤には、発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤や、発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤などがあり、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
具体的には、ラジカル捕捉剤として働く酸化防止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系化合物、メタキノン、ベンゾキノン等のキノン系化合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン等のアミン系化合物などが挙げられる。市販品としては、例えば、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−68、アデカスタブLA−87(以上、(株)ADEKA製、商品名)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、TINUVIN 111FDL、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100(以上、BASFジャパン(株)製、商品名)などを用いることができる。
【0059】
また、過酸化物分解剤として働く酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系化合物などが挙げられる。市販品としては、例えば、アデカスタブTPP、アデカスタブAO−412S((株)ADEKA製、商品名)、スミライザーTPS(住友化学(株)製、商品名)などを用いることができる。
【0060】
上記のうちでも、フェノール系の酸化防止剤を用いることが、変色の抑制効果、耐熱性の向上および良好な解像性がより一層得られる点から、好ましい。
【0061】
(E)酸化防止剤を用いる場合のその配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。(E)酸化防止剤の配合量を、0.01質量部以上とすることで、上述の酸化防止剤の添加による効果を確実に得ることができ、一方、10質量部以下とすることで、光反応を阻害することなく、良好なアルカリ現像性を得ることができ、指触乾燥性や塗膜物性についても良好に確保することができる。
【0062】
また、(E)酸化防止剤、特に、フェノール系の酸化防止剤は、耐熱安定剤と併用することにより、さらなる効果を発揮する場合があることから、本発明の硬化性樹脂組成物には、耐熱安定剤を配合してもよい。
【0063】
耐熱安定剤としては、リン系、ヒドロキシルアミン系、イオウ系耐熱安定剤などを挙げることができる。これら耐熱安定剤の市販品としては、IRGAFOX168、IRGAFOX12、IRGAFOX38、IRGASTAB PUR68、IRGASTAB PVC76、IRGASTAB FS301FF、IRGASTAB FS110、IRGASTAB FS210FF、IRGASTAB FS410FF、IRGANOX PS800FD、IRGANOX PS802FD、RECYCLOSTAB 411、RECYCLOSTAB 451AR、RECYCLOSSORB 550、RECYCLOBLEND 660(以上、BASFジャパン(株)製、商品名)などが挙げられる。上記耐熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
耐熱安定剤を用いる場合のその配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。
【0065】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、熱硬化触媒を含有することが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば、四国化成工業(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ(株)製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基および/またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を、上記熱硬化触媒と併用する。
【0066】
これら熱硬化触媒の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物は、反応性希釈溶剤を含有してもよい。反応性希釈溶剤は、組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を上げたり、密着性などを向上するために用いられ、光硬化性モノマーなどを用いることができる。
【0068】
光硬化性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0069】
このような反応性希釈溶剤の配合率は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは5〜70質量部の割合である。上記配合率の範囲とすることで、光硬化性が向上して、パターン形成が容易となり、硬化膜の強度も向上できる。
【0070】
また、本発明の組成物には、組成物の調製や、基板やキャリアフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で、または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0071】
さらに、本発明の組成物には、電子材料の分野において公知慣用の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、上記以外の充填剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、着色剤、光開始助剤、増感剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体等が挙げられる。
【0072】
次に、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に、本発明の組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムを形成する際には、まず、本発明の組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、キャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0073】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0074】
キャリアフィルム上に本発明の組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0075】
また、本発明の組成物を、例えば、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により本発明の組成物の層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂層を形成できる。
【0076】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0077】
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0078】
本発明の組成物は、例えば、約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化皮膜(硬化物)を形成することができる。
【0079】
また、本発明の組成物を塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、もしくは、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光して、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、レジストパターンが形成される。
【0080】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザーおよび固体レーザーのいずれでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm、好ましくは20〜600mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0081】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板上に硬化皮膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層またはカバーレイを形成するために使用される。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、ソルダーダムを形成するために使用してもよい。また、本発明の組成物は、白色とすることで、照明器具や携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト等において、その光源として使用される発光ダイオード(LED)やエレクトロルミネセンス(EL)から発せられる光を反射する反射板に、好適に使用される。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表中に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散させ、混練して、それぞれ組成物を調製した。なお、表中の配合量は、質量部を示す。
【0084】
〈カルボキシル基含有樹脂の調製〉
(ワニスAの合成例)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、EPICLON N−695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却し、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液(ワニスA)を得た。
【0085】
このようにして得られたワニスAの固形分濃度は65質量%、固形分の酸価は89mgKOH/gであった。
【0086】
(ワニスBの合成例)
温度計、冷却管および撹拌機を備えた耐圧容器に、脱イオン水200質量部および硫酸ナトリウム0.3質量部を仕込み、溶解を確認した。その後、光重合開始剤としてのBPO(ベンゾイルパーオキサイド)5質量部と、連鎖移動剤としてのMSD(α−メチルスチレンダイマー)5質量部とをMMA(メタクリル酸メチル)10.4質量部、n−BA(ノルマル−アクリル酸ブチル)5質量部、MAA(メタクリル酸)24.6質量部およびSt(スチレン)60質量部からなる単量体混合物に加え、十分に溶解した。その後、分散剤を濃度が300ppmになるように加えて十分に撹拌し、釜内部を窒素で置換した後に昇温させ、懸濁重合を行った。
【0087】
重合終了後、得られた懸濁液を目開き30μmのメッシュで濾過し、40℃の温風で乾燥させて、粒状樹脂を得た。これをワニスBとする。このようにして得られたワニスBの固形分濃度は50質量%、固形分の酸価は120mgKOH/gであった。
【0088】
(ワニスCの合成例)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子(株)製、商品名「ショーノールC RG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0089】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
【0090】
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液(ワニスC)を得た。
【0091】
このようにして得られたワニスCの固形分濃度は71質量%、固形分の酸価は88mgKOH/gであった。
【0092】
(ワニスDの合成例)
温度計、撹拌機および環流冷却器を備えた5リットルのセパラブルフラスコに、ポリマーポリオールとしてのポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製、PLACCEL208、分子量830)1,245g、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてのジメチロールプロピオン酸201g、ポリイソシアナートとしてのイソホロンジイソシアナート777gおよびヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしての2−ヒドロキシエチルアクリレート119g、さらにp−メトキシフェノールおよびジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエンを各々0.5gずつ投入した。攪拌しながら60℃まで加熱して停止し、ジブチル錫ジラウレート0.8gを添加した。反応容器内の温度が低下し始めたら再度加熱して、80℃で攪拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアナート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了し、粘稠液体のウレタンアクリレート化合物を得た。カルビトールアセテートを用いて、不揮発分=50質量%に調整し、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液(ワニスD)を得た。
【0093】
このようにして得られたワニスDの固形分濃度は50質量%、固形分の酸価は47mgKOH/gであった。
【0094】
(ワニスEの合成例)
温度計、撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてのジプロピレングリコールモノメチルエーテル325.0質量部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0質量部、ε−カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0質量部、メタクリル酸メチル77.0質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0質量部、および、重合触媒としてのt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、パーブチルO)12.0質量部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却後、ダイセル化学工業(株)製サイクロマーA200を289.0質量部、トリフェニルホスフィン3.0質量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル1.3質量部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液(ワニスE)を得た。
【0095】
このようにして得られたワニスEは、重量平均分子量(Mw)が15,000で、かつ、固形分濃度が45.5質量%、固形物の酸価が70mgKOH/gであった。
【0096】
なお、得られた樹脂の重量平均分子量は、(株)島津製作所製のポンプLC−6ADと、昭和電工(株)製のカラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0097】
(1)保存安定性
実施例および比較例の各組成物を、ふた付きのプラスチック製容器に入れて、30℃の恒温槽に90日放置し、25℃における初期粘度と放置後粘度とをそれぞれ測定して、初期から放置後までの粘度の増加率を算出し、保存安定性を評価した。
【0098】
(2)現像性
実施例および比較例の各組成物を、銅厚70μm、ラインアンドスペース100/100の銅回路が形成されたFR−4材に塗布し、80℃30分の条件で乾燥させて、乾燥基板を得た。この乾燥基板を、炭酸ナトリウム溶液で現像した後に、ライン間の組成物の残渣を目視にて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:残渣がないもの
△:僅かに残渣があるもの
×:残渣があるもの
【0099】
(3)指触乾燥性
実施例および比較例の各組成物を、バフロール研磨された銅張り積層板にスクリーン印刷にて全面塗布し、80℃で30分間乾燥させて、基板を作製した。その塗膜表面の指触乾燥性を、下記に従い評価した。
○:まったくベタつきがないもの
△:僅かにベタつきの有るもの
×:ベタつきのあるもの
【0100】
(4)はんだ耐熱性
実施例および比較例の各組成物を、FR−4材に塗布、乾燥、露光、現像、ポストキュアをして硬化させて得た基板にロジン系フラックスを塗布し、あらかじめ260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:10秒間浸漬を3回以上繰り返しても剥がれが認められないもの
△:10秒間浸漬を3回以上繰り返すと少し剥がれるもの
×:10秒間浸漬を3回以内にレジスト層に膨れ、剥がれがあるもの
【0101】
(5)線幅再現性
実施例および比較例の各組成物を、銅厚70μm、ラインアンドスペース300/300の銅回路が形成されたFR−4材に塗布、乾燥し、幅100μm、長さ2mmのラインが残るように露光、現像、ポストキュアをして硬化させて得た基板を裁断し、光学顕微鏡を用いて組成物の断面形状を確認した。組成物の最大幅を測長し、線幅の設計値である100μmよりどの程度変化しているかを、アンダーカットとして評価した。
アンダーカット(μm)=(最大線幅−100)÷2
◎:10μm以下のもの
○:20μm以下のもの
△:30μm未満のもの
×:30μm以上のもの
【0102】
(6)リフロー処理後の変化率ΔE
実施例および比較例の各組成物を、FR−4材に塗布、乾燥、露光、現像、ポストキュアをして硬化させて得た基板を、リフロー炉(最高285℃)で5回繰り返し処理した。色差計を用いて、処理前後の基板の変化率ΔEを求めた。判定基準は以下のとおりである。
◎:ΔEが2以下のもの
○:ΔEが3以下のもの
△:ΔEが4未満のもの
×:ΔEが4以上のもの
【0103】
【表1】
*1)(B−1)アセトフェノン系光重合開始剤「イルガキュアー907」、BASFジャパン(株)製
*2)(B−2)オキシムエステル系光重合開始剤「イルガキュアーOXE02」、BASFジャパン(株)製
*3)(B−3)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤「イルガキュアー819」、BASFジャパン(株)製
*4)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
*5)(C−1)β体のみからなるトリグリシジルイソシアヌレート「TEPIC−HP エポキシ当量;100」、日産化学工業(株)製、
*6)(C−2)α体およびβ体混合トリグリシジルイソシアヌレート「TEPIC−S エポキシ当量;100」、日産化学工業(株)製
*7)(C−3)フェノールノボラック型エポキシ樹脂「N870 エポキシ当量;210」、DIC(株)製
*8)(D−1)酸化チタン「CR−90」、石原産業(株)製、(比重:4.0)
*9)(D−2)水酸化アルミニウム「H−42M」、昭和電工(株)製、(比重:2.4)
*10)(D−3)硫酸バリウム「B−30」、堺化学工業(株)製、(比重:4.5)
*11)(D−4)ホスフィン酸アルミニウム塩「エクソリットOP935」、クラリアントジャパン(株)製、(比重:1.35)
*12)(E−1)酸化防止剤「イルガノックス1010」、BASFジャパン(株)製、フェノール系
*13)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製
*14)ジシアンジアミド
*15)メラミン、日産化学工業(株)製
*16)KS−66、信越シリコーン(株)製
*17)乾燥状態(固形分換算)における、組成物中の(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量(数)と、(B)トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量(数)との比(エポキシ基数/カルボキシル基数)である。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
上記表中の結果から、トリグリシジルイソシアヌレートとして、S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体のみからなるものを所定量で用いた各実施例および参考例の組成物においては、保存安定性、現像性、指触乾燥性、はんだ耐熱性、線幅再現性および変化率のすべてについて、良好な結果が得られていることが確かめられた。特に、参考例1〜3の比較から、当量比(エポキシ基数/カルボキシル基数)が低いほど保存安定性が良好となり、特に0.9以下であると、変化率がより低下することがわかる。
【0107】
また、参考例2と参考例4との比較、参考例5と参考例6との比較、および、参考例11と参考例15との比較から、酸化防止剤を含有させることで、はんだ耐熱性、線幅再現性および変化率の良化が見られ、特に、線幅再現性が向上していることがわかる。さらに、参考例4と参考例9,10との比較からは、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系のものを用いることで、他の光重合開始剤の場合と比較して保存安定性や指触乾燥性、変化率が向上しており、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いた場合に最も良好な結果が得られていることがわかる。
【0108】
これに対し、S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が異なる方向に結合した構造をもつα体を含むトリグリシジルイソシアヌレートを用いた比較例1,4では、保存安定性および指触乾燥性が大幅に悪化しており、現像性、はんだ耐熱性、線幅再現性および変化率についても十分なものではなかった。また、トリグリシジルイソシアヌレート以外のエポキシ樹脂を用いた比較例2では、保存安定性、現像性および変化率が大幅に悪化しており、指触乾燥性、はんだ耐熱性および線幅再現性についても十分なものではなかった。さらに、トリグリシジルイソシアヌレートに含まれるエポキシ基の当量が、カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し2.0以下との条件を満足しない比較例3では、現像性、指触乾燥性、はんだ耐熱性および線幅再現性は良好であるものの、保存安定性および変化率が不十分な結果となった。