(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関制御装置につき、詳細に説明する。
【0022】
〔内燃機関の構成〕
まず、
図1を参照して、本実施形態における内燃機関制御装置が適用される内燃機関の構成について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態における内燃機関及びそれに適用される内燃機関制御装置の構成を示す模式図である。
【0024】
図1に示すように、内燃機関1は、図示を省略する二輪自動車等の車両に搭載され、1又は複数の気筒2aを有するシリンダブロック2を備えている。シリンダブロック2の気筒2aに対応する部分の側壁内には、シリンダブロック2を冷却するためのクーラントが流通するクーラント通路3が形成されている。なお、
図1中では、便宜上、気筒2aの個数を1個のみとした例を示している。
【0025】
気筒2aの内部には、ピストン4が配置されている。ピストン4は、コンロッド5を介してクランクシャフト6に連結されている。クランクシャフト6には、それと共に同軸に回転するリラクタ7が設けられている。リラクタ7の外周面には、その周方向に所定のパターンで並置された複数の歯部7aが立設されている。
【0026】
シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド8が組み付けられている。シリンダブロック2の内壁面、ピストン4の上面、及びシリンダヘッド8の内壁面は、協働して気筒2aの燃焼室9を画成している。
【0027】
シリンダヘッド8には、燃焼室9内の燃料及び空気から成る混合気に点火する点火プラグ10が設けられている。各燃焼室9に対する点火プラグ10の個数は、複数であってもよい。
【0028】
シリンダヘッド8には、燃焼室9と対応して連通する吸気管11が組み付けられている。シリンダヘッド8内には、燃焼室9と吸気管11とを対応して連通する吸気通路11aが形成されている。燃焼室9と吸気通路11aとの対応する接続部位には、吸気バルブ12が設けられている。なお、吸気管11は、気筒2aの個数に応じた多岐管であってもよく、吸気通路11aの個数は、気筒2aの個数に等しくなる。各燃焼室9に対する吸気バルブ12の個数は、複数であってもよい。
【0029】
吸気管11には、その内部に燃料を噴射するインジェクタ13が設けられている。吸気管11には、インジェクタ13の上流側にスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14は、図示を省略するスロットル装置の構成部品であり、スロットル装置の本体部が吸気管11に組み付けられている。なお、インジェクタ13は、対応する燃焼室9に燃料を直接噴射するものであってもよい。また、インジェクタ13及びスロットルバルブ14の個数は、各々複数であってもよい。
【0030】
また、シリンダヘッド8には、燃焼室9と対応して連通する排気管15が組み付けられている。シリンダヘッド8内には、燃焼室9と排気通路15aとを対応して連通する排気通路15aが形成されている。燃焼室9と排気管15との対応する接続部位には、排気バルブ16が設けられている。なお、排気管15は、気筒2aの個数に応じた多岐管であってもよく、排気通路15aの個数は、気筒2a及び排気管15の個数に等しくなる。なお、各燃焼室9に対する排気バルブ16の個数は、複数であってもよい。
【0031】
〔内燃機関制御装置の構成〕
次に、
図1を参照して、本実施形態における内燃機関制御装置の構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態における内燃機関制御装置100は、水温センサ101、クランク角センサ102、吸気温センサ103、スロットル開度センサ104、吸気側温度センサ105、及び排気側温度センサ106に電気的に接続されたECU(Electronic Control Unit)107を備えている。
【0033】
水温センサ101は、クーラント通路3に侵入した態様でシリンダブロック2に装着され、クーラント通路3内を流通するクーラントの温度を内燃機関1の温度(内燃機関温度TE)として検出し、このように検出した内燃機関温度TEを示す電気信号をECU107に入力する。
【0034】
クランク角センサ102は、リラクタ7の外周面に形成されている歯部7aに対向した態様でシリンダブロック2の下部に組み付けられた図示を省略するロアケース等に装着され、クランクシャフト6の回転に伴って回転する歯部7aを検出することによって、クランクシャフト6の回転速度を内燃機関1の回転速度(内燃機関回転速度NE)として検出する。クランク角センサ102は、このように検出した内燃機関回転速度NEを示す電気信号をECU107に入力する。
【0035】
吸気温センサ103は、吸気管11内に侵入した態様で吸気管11に装着され、吸気管11内に流入する空気の温度を吸気温TAとして検出し、このように検出した吸気温TAを示す電気信号をECU107に入力する。
【0036】
スロットル開度センサ104は、スロットル装置の本体部に装着され、スロットルバルブ14の開度をスロットル開度THとして検出し、このように検出したスロットル開度THを示す電気信号をECU107に入力する。
【0037】
吸気側温度センサ105は、燃焼室9内の混合気に点火プラグ10により点火されてそれが着火されることにより生成された火炎が伝播しにくい部位である吸気バルブ12側の壁表面温度(シリンダブロック2又はシリンダヘッド8における吸気バルブ12側であって燃焼室9側の内壁表面温度)TCC1を検出するようにシリンダブロック2又はシリンダヘッド8に装着され、このように検出した吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1を示す電気信号をECU107に入力する。ここで、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1は、燃焼室9内の混合気が着火されることにより生成された火炎が伝播しにくい部位の温度であるため、燃焼室9内の混合気の燃焼の状態に敏感に反応する温度である。
【0038】
排気側温度センサ106は、燃焼室9内の混合気に点火プラグ10により点火されてそれが着火されることにより生成された火炎が伝播しやすい部位である排気バルブ16側の壁表面温度(シリンダブロック2又はシリンダヘッド8における排気バルブ16側であって燃焼室9側の内壁表面温度)TCC2を検出するようにシリンダブロック2又はシリンダヘッド8に装着され、このように検出した排気バルブ16側の壁表面温度TCC2を示す電気信号をECU107に入力する。ここで、排気バルブ16側の壁表面温度TCC2は、燃焼室9内の混合気が着火されることにより生成された火炎が伝播しやすい部位の温度であるため、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1に比較して、燃焼室9内の混合気の燃焼の状態に敏感には反応しない温度である。なお、燃焼室9内の混合気の燃焼の状態に敏感に反応する温度となるものであれば、吸気側温度センサ105以外の温度センサで検出されるシリンダブロック2等の壁表面温度を壁表面温度TCC1として採用することも可能であり、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1に比較して、燃焼室9内の混合気の燃焼の状態に敏感には反応しない温度であれば、排気側温度センサ106以外の温度センサで検出されるシリンダブロック2等の壁表面温度を壁表面温度TCC2として採用することも可能である。
【0039】
ECU107は、車両が備えるバッテリからの電力を利用して動作する。ECU107は、マイコン108を備え、マイコン108は、メモリ108a及びCPU(Central Processing Unit)108bを備えている。CPU108bは、センサ補正処理や内燃機関運転状態制御処理等の車両の各種制御処理を実行する制御部として機能する。
【0040】
メモリ108aは、不揮発性の記憶装置によって構成され、センサ補正処理や内燃機関運転状態制御処理用等の制御プログラムや制御データを格納している。
【0041】
CPU108bは、水温センサ101、クランク角センサ102、吸気温センサ103、スロットル開度センサ104、吸気側温度センサ105、及び排気側温度センサ106からの電気信号を用いて、ECU107全体の動作を制御する。
【0042】
以上のような構成を有する内燃機関制御装置100は、以下に示す冷機電源投入時におけるセンサ補正処理や内燃機関運転中における内燃機関運転状態制御処理を実行することによって、簡便な構成で、燃焼室9内の燃焼状態を検出して内燃機関1の運転状態を制御する。以下、更に
図2から
図3をも参照して、冷機電源投入時におけるセンサ補正処理及び内燃機関運転中における内燃機関運転状態制御処理を実行する際の内燃機関制御装置100の動作について、詳細に説明する。
【0043】
〔冷機電源投入時のセンサ補正処理〕
まず、
図2(a)を参照して、冷機電源投入時のセンサ補正処理を実行する際の内燃機関制御装置100の動作について説明する。なお、かかる冷機電源投入時のセンサ補正処理は、内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理をより精度よく実行するために、実行されることが好ましいものである。つまり、かかる冷機電源投入時のセンサ補正処理が実行される場合には、その完了後に内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理が実行されるものである。
【0044】
図2(a)は、本実施形態の内燃機関制御装置100における冷機電源投入時のセンサ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
図2(a)に示すフローチャートは、車両の図示を省略するイグニッションスイッチがオンされて内燃機関制御装置100が稼働されたタイミングで開始となり、冷機電源投入時のセンサ補正処理はステップS1の処理に進む。
【0046】
ステップS1の処理では、CPU108bが、車両のイグニッションスイッチが初めてオンされたか否か、つまり車両が製造されてから初めて冷機電源が投入されたか否かを判別する。車両が製造されてから初めて冷機電源が投入されたか否かは、例えば、車両が製造されてから初めて冷機電源が投入されたタイミングでオンされるメモリ108a中のフラグのオン/オフ情報を参照することによって判別することができる。判別の結果、既に冷機電源が投入されたことがある場合には、CPU108bは、今回の一連のセンサ補正処理を終了する。一方、初めての冷機電源の投入である場合には、CPU108bは、センサ補正処理をステップS2の処理に進める。
【0047】
ステップS2の処理では、CPU108bが、クランク角センサ102から入力される電気信号に基づいて内燃機関回転速度NEを検出し、その内燃機関回転速度NEに基づいて内燃機関1の始動前であるか否かを判別する。判別の結果、既に内燃機関1が始動している場合には、CPU108bは、今回の一連のセンサ補正処理を終了する。一方、内燃機関1がまだ始動していない場合には、CPU108bは、センサ補正処理をステップS3の処理に進める。
【0048】
ステップS3の処理では、CPU108bが、吸気温センサ103、水温センサ101、吸気側温度センサ105、及び排気側温度センサ106から入力された電気信号に基づいて、吸気温TA、内燃機関温度TE、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1及び排気バルブ16側の壁表面温度TCC2が、各々、所定の誤差範囲内にあるか否かを判別する。判別の結果、これらの温度が各々の所定の誤差範囲内にない場合には、CPU108bは、今回の一連のセンサ補正処理を終了する。一方、これらの温度が各々の所定の誤差範囲内にある場合には、CPU108bは、センサ補正処理をステップS4の処理に進める。
【0049】
ステップS4の処理では、CPU108bが、メモリ108aに格納されていたマスタデータを対応して参照しながら、吸気温TA及び内燃機関温度TEと吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1及び排気バルブ16側の壁表面温度TCC2とを対応して比較することにより、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1及び排気バルブ16側の壁表面温度TCC2の誤差を各々補正する。例えば、壁表面温度TCC1が吸気温TA及び内燃機関温度TEを各々用いて得られるべきそのマスタデータ中の標準温度よりも2℃高い場合には、CPU108bは、壁表面温度TCC1を2℃低くなるように補正する。また、例えば、壁表面温度TCC2が吸気温TA及び内燃機関温度TEを各々規準として得られるべきそのマスタデータ中の標準温度よりも2℃低い場合には、CPU108bは、壁表面温度TCC2を2℃高くなるように補正する。ここで、マスタデータとしては、各々が量産中央値の出力特性を発揮する内燃機関1における吸気温TA及び内燃機関温度TEと吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1及び排気バルブ16側の壁表面温度TCC2との対応関係をこれらの実測検出温度に基づき予め設定してメモリ108aに格納されていたものを用いる。なお、かかる補正は、必要に応じて、吸気温TA及び内燃機関温度TEの一方を用いてなされていてもよいし、更に別の基準温度を用いてなされていてもよい。この結果、吸気側温度センサ105及び排気側温度センサ106の各々の補正が、内燃機関1の量産中央仕様の性能が発揮できるように精度よくなされることになり、内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理が、精度よく実行される結果につながることになる。これにより、ステップS4の処理は完了し、今回の一連のセンサ補正処理は終了する。
【0050】
〔内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理〕
次に、
図2(b)、及び
図3(a)から
図3(c)をも更に参照して、内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理を実行する際の内燃機関制御装置100の動作について説明する。
【0051】
図2(b)は、本実施形態の内燃機関制御装置100における内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理の流れを示すフローチャートである。また、
図3(a)は、本実施形態の内燃機関制御装置100における内燃機関運転状態制御処理で用いる内燃機関回転数及びスロットル開度とノック発生閾値との関係を示すテーブルデータの模式図であり、
図3(b)は、本実施形態の内燃機関制御装置100における内燃機関運転状態制御処理で用いる内燃機関回転数及びスロットル開度とMBT閾値との関係を示すテーブルデータの模式図であり、
図3(c)は、本実施形態の内燃機関制御装置100における内燃機関運転状態制御処理で用いる内燃機関回転数及びスロットル開度と質量燃焼点閾値との関係を示すテーブルデータの模式図である。
【0052】
図2(b)に示すフローチャートは、車両の図示を省略するイグニッションスイッチがオンされて内燃機関制御装置100が稼働されたタイミングで開始となり、内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理はステップS11の処理に進む。内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理は、内燃機関制御装置100が稼働している間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0053】
ステップS11の処理では、CPU108bが、クランク角センサ102から入力される電気信号に基づいて内燃機関回転速度NEを検出し、その内燃機関回転速度NEに基づいて内燃機関1が運転中であるか否かを判別する。判別の結果、内燃機関1が運転中でない場合には、CPU108bは、今回の一連の内燃機関運転状態制御処理を終了する。一方、内燃機関1が運転中である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS12の処理に進める。
【0054】
ステップS12の処理では、CPU108bが、吸気側温度センサ105及び排気側温度センサ106から入力された電気信号に基づいて、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1と排気バルブ16側の壁表面温度TCC2との差分ΔTCC(=TCC2−TCC1)を算出する。ここで、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1は、燃焼室9内の混合気が着火されることにより生成された火炎が伝播しにくい部位の温度であって燃焼室9内の混合気の燃焼の状態に敏感に反応する温度であり、排気バルブ16側の壁表面温度TCC2は、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1に比較して、燃焼室9内の混合気が着火されることにより生成された火炎が伝播しやすい部位の温度であって燃焼室9内の混合気の燃焼の状態に敏感には反応しない温度であるから、これらの差分ΔTCCは、燃焼室9内の燃焼状態が良好である場合には、大きな値を示す一方で、燃焼室9内の燃焼状態が不良になればなるほど、小さな値を示すものである。これ故、吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1と排気バルブ16側の壁表面温度TCC2との差分ΔTCCの値は、燃焼室9内の燃焼状態の良・不良を示す指標となる。これにより、ステップS12の処理は完了し、内燃機関運転状態制御処理はステップS13の処理に進む。
【0055】
ステップS13の処理では、CPU108bが、ステップS12の処理において算出された差分ΔTCCの値が内燃機関1のノッキングレベルに対応する閾値(ノック発生閾値)以上であるか否かを判別する。具体的には、本実施形態では、メモリ108a内に
図3(a)に示すような内燃機関回転数NE及びスロットル開度THに対するノック発生閾値の値に対応した特性曲線L1を規定したテーブルデータが格納されている。CPU108bは、クランク角センサ102及びスロットル開度センサ104から入力された電気信号に基づいて、内燃機関回転数NE及びスロットル開度THに対応する特性曲線L1上の値であるノック発生閾値を
図3(a)に示すテーブルデータから読み出す。そして、CPU108bは、差分ΔTCCの値が読み出されたノック発生閾値以上であるか否かを判別する。判別の結果、差分ΔTCCの値がノック発生閾値未満である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS17の処理に進める。一方、差分ΔTCCの値がノック発生閾値以上である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS14の処理に進める。
【0056】
ステップS14の処理では、CPU108bが、ステップS12の処理において算出された差分ΔTCCの値が内燃機関1のトルクが最大となる点火時期に対応する閾値(MBT(Minimum advance for the Best Torque)閾値)以上であるか否かを判別する。具体的には、本実施形態では、メモリ108a内に
図3(b)に示すような内燃機関回転数NE及びスロットル開度THに対してMBT閾値の値Txyを対応させたテーブルデータが格納されている。CPU108bは、クランク角センサ102及びスロットル開度センサ104から入力された電気信号に基づいて、内燃機関回転数NE及びスロットル開度THに対応するMBT閾値Txyを
図3(b)に示すテーブルデータから読み出す。そして、CPU108bは、差分ΔTCCの値が読み出されたMBT閾値Txy以上であるか否かを判別する。判別の結果、差分ΔTCCの値がMBT閾値Txy未満である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS17の処理に進める。一方、差分ΔTCCの値がMBT閾値Txy以上である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS15の処理に進める。
【0057】
ステップS15の処理では、CPU108bが、ステップS12の処理において算出された差分ΔTCCの値が内燃機関1の所定(例えば50%)の質量燃焼クランク角に対応する閾値(質量燃焼点閾値)以上であるか否かを判別する。具体的には、本実施形態では、メモリ108a内に
図3(c)に示すような内燃機関回転数NE及びスロットル開度THに対して質量燃焼点閾値の値TTxyを対応させたテーブルデータが格納されている。CPU108bは、クランク角センサ102及びスロットル開度センサ104から入力された電気信号に基づいて、現在の内燃機関回転数NE及びスロットル開度THに対応する質量燃焼点閾値TTxyを
図3(c)に示すテーブルデータから読み出す。そして、CPU108bは、差分ΔTCCの値が読み出された質量燃焼点閾値TTxy以上であるか否かを判別する。判別の結果、差分ΔTCCの値が質量燃焼点閾値TTxy未満である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS17の処理に進める。一方、差分ΔTCCの値が質量燃焼点閾値TTxy以上である場合には、CPU108bは、内燃機関運転状態制御処理をステップS16の処理に進める。
【0058】
ステップS16の処理では、CPU108bが、点火プラグ10の点火時期を典型的にはフィードバック制御することによって、燃焼室9内の混合気への点火時期を進角することにより内燃機関1の運転状態を制御する。これにより、ステップS16の処理は完了し、一連の内燃機関運転状態制御処理は終了する。
【0059】
ステップS17の処理では、CPU108bが、点火プラグ10の点火時期を典型的にはフィードバック制御することによって、燃焼室9内の混合気への点火時期を遅角することにより内燃機関1の運転状態を制御する。これにより、ステップS17の処理は完了し、一連の内燃機関運転状態制御処理は終了する。
【0060】
なお、内燃機関運転中の内燃機関運転状態制御処理を簡素化するために、ステップS12の処理において算出された差分ΔTCCの値に直接的に基づいて、点火プラグ10の点火時期を制御することも可能であり、かかる場合には、ステップS13からステップS15の各々の処理を省略することも可能である。また、内燃機関1の運転状態を制御するパラメータには、点火時期の他に燃料噴射量や空気供給量が挙げられるため、点火時期の調整の他に燃料噴射量や空気供給量を調整して内燃機関1の運転状態を制御してもよいし、これらを適宜組み合わせて内燃機関1の運転状態を制御してもよい。
【0061】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関制御装置100では、制御部108bが、内燃機関1の燃焼室9の吸気バルブ12側における壁表面温度に対応した第1の温度TCC1と内燃機関1の燃焼室9の排気バルブ16側における壁表面温度に対応した第2の温度TCC2との差分ΔTCCに基づいて、内燃機関1の運転状態を制御するものであるため、簡便な構成で、燃焼室9内の燃焼状態を検出しその燃焼状態に応じて内燃機関1の運転状態を制御することができる。特に、燃焼室9内の混合気に着火生成された火炎が伝播しにくい吸気バルブ12側の壁表面温度TCC1と、燃焼室9内の混合気に着火生成された火炎が伝播しやすい排気バルブ16側の壁表面温度TCC2と、の差分ΔTCCは、燃焼室9内の燃焼状態の良・不良を示す適切な指標として用いることができるため、内燃機関1の暖機中等の過渡的な温度状態や内燃機関1が比較的低負荷で運転されることに起因する低温度状態においても、燃焼室9内の燃焼状態を精度よく把握して内燃機関1の運転状態を制御することができる。また、このように内燃機関1の運転状態を適切に制御することにより、内燃機関1の燃料消費率を向上することができる。
【0062】
また、本実施形態における内燃機関制御装置100では、制御部108bが、第1の温度TCC1と第2の温度TCC2との差分ΔTCCに基づいて、混合気への点火の時期を制御することにより内燃機関1の運転状態を制御するものであるため、適切に点火時期を制御しながら内燃機関1の運転状態を適切に制御することができる。
【0063】
また、本実施形態における内燃機関制御装置100では、制御部108bが、第1の温度TCC1と第2の温度TCC2との差分ΔTCCと所定の閾値との大小関係に応じて、点火の時期を進角又は遅角する制御を行い、所定の閾値が、内燃機関1のノッキングレベルに対応する第1の閾値を含んで設定されているものであるため、精度よく点火時期を制御しながら内燃機関1の運転状態をノックの発生を抑制するように精度よく制御することができる。
【0064】
また、本実施形態における内燃機関制御装置100では、所定の閾値が、内燃機関1のトルクが最大となる点火の時期に対応する第2の閾値を更に含んで設定されているものであるため、より精度よく点火時期を制御しながら内燃機関1の運転状態を最大トルクを発生させるようにより精度よく制御することができる。
【0065】
また、本実施形態における内燃機関制御装置100では、所定の閾値が、内燃機関1の所定の質量燃焼クランク角に対応する第3の閾値を更に含んで設定されているものであるため、所定の質量燃焼角に対応してより高精度に点火時期を制御しながら内燃機関1の運転状態をより高精度に制御することができる。
【0066】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。