特許第6463186号(P6463186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6463186二酸化炭素を分離回収するための吸収剤、及びそれを用いた二酸化炭素の分離回収方法
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  • 特許6463186-二酸化炭素を分離回収するための吸収剤、及びそれを用いた二酸化炭素の分離回収方法 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463186
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】二酸化炭素を分離回収するための吸収剤、及びそれを用いた二酸化炭素の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20190121BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20190121BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B01D53/14 220
   B01D53/62ZAB
   B01D53/78
   B01D53/14 210
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-64407(P2015-64407)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-182562(P2016-182562A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年1月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、環境調和型製鉄プロセス技術開発(STEP2) 化学吸収技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】591178012
【氏名又は名称】公益財団法人地球環境産業技術研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 次裕
(72)【発明者】
【氏名】松崎 洋市
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正巳
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−226251(JP,A)
【文献】 特開平09−066215(JP,A)
【文献】 特開昭62−240691(JP,A)
【文献】 特開2009−006275(JP,A)
【文献】 特開2010−188336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85,53/92,53/96
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアミン化合物、及び
触媒
を含有する、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収剤であって、
前記アミン化合物の内の少なくとも1種のアミン化合物と前記触媒との結合エネルギーが7〜18 kcal/molであり、且つ前記結合エネルギーが前記触媒と水との結合エネルギー以上であり、
前記触媒が、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]、及びフタロシアニンからなる群より選択される少なくとも1種の配位子を有する錯体化合物である、吸収剤。
【請求項2】
前記触媒が、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)マグネシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)コバルト、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)カルシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)亜鉛、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)銅及びビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項3】
前記アミン化合物が、三級アルカノールアミン及び三級アルキルアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の吸収剤。
【請求項4】
以下の工程A及びBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収する方法:
請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収剤を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収剤を得る工程A、及び、
工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収剤を加熱して、吸収剤から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程B。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高効率に分離回収するための吸収剤、及び該吸収剤を用いた二酸化炭素を分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人類の社会活動に付随する二酸化炭素やメタンといった温室効果ガス排出量の急激な増加が地球温暖化の原因の一つに挙げられている。特に、二酸化炭素は温室効果ガスの中でも最も主要なものであり、2005年に発行された京都議定書に従い、二酸化炭素排出量削減へ向けての対策が急務となっている。
【0003】
今日、二酸化炭素の発生源である石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、製鉄所の高炉、セメント工場のキルン、製造所のボイラー等から排出される混合ガスを対象に、混合ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収し、圧縮して、輸送の後、圧入するという一連の二酸化炭素分離回収貯留(Carbon dioxide Capture and Storage、CCS)技術が、化石燃料に代わる代替エネルギー開発までの繋ぎ(ブリッジング)技術として注目されている。
【0004】
この貯留技術の実用化のためには、可能な限りの低コスト化が要求される。二酸化炭素の分離回収、圧縮、輸送、圧入の一連の工程の中では、二酸化炭素の分離回収に要するコストが二酸化炭素分離回収貯留に係わる総コストの60%以上を占めていることから、この二酸化炭素分離回収コストを低減するための技術開発が重要となる。
【0005】
そのため近年では、発電所や製鉄所から排出される二酸化炭素含有ガスを対象として、アミン化合物の水溶液を主成分とする化学吸収法による二酸化炭素分離回収の技術開発が精力的に推進されている。
【0006】
上記アミン化合物としては、一級アルカノールアミンであるモノエタノールアミン(MEA)、ジグリコールアミン(DGA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、二級アルカノールアミンである2-メチルアミノエタノール(MAE)、2-エチルアミノエタノール(EAE)、2-イソプロピルアミノエタノール(IPAE)、ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、三級アルカノールアミンであるN-メチルジエタノールアミン(MDEA)、トリエタノールアミン(TEA)、三級アルキルアミンであるN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン(TMDAB)、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(BDER)等が知られており、特にMEAが広く用いられている。
【0007】
上記アルカノールアミンの水溶液を二酸化炭素の液状吸収剤として用いる場合、MEAなどの一級アルカノールアミンは二酸化炭素分離回収のための装置材質に対する腐食性が高いため、装置材質として高価な耐食鋼を用いるか、或いは液状吸収剤中のアミン濃度を下げるなどの対策が必要となる。
【0008】
また、一般に液状吸収剤を再生させる際には、液状吸収剤の温度を120℃程度に加熱することで、吸収した二酸化炭素を放散させるが、上記の一級アルカノールアミンの水溶液を液状吸収剤とした場合では、液状吸収剤再生時の二酸化炭素放散量が十分でないため、また二酸化炭素との吸収反応熱が比較的高いため、結果的に回収される二酸化炭素単位重量当たりに大きなエネルギーを必要とする。
【0009】
より少ないエネルギーでの二酸化炭素の分離回収のための従来技術として、例えば、特許文献1には、アミノ基周辺にアルキル基等の立体障害を有する二級アルカノールアミンの水溶液と大気圧下の燃焼排ガスとを接触させ二酸化炭素を吸収させる方法による燃焼排ガス中の二酸化炭素の除去方法が記載されている。
【0010】
上記特許文献1においては、二級アルカノールアミンとしてMAE及びEAEの実施例が記され、MAE及びEAEの30重量%の水溶液が、二酸化炭素の吸収に好ましいと記載されている。その他の二級アルカノールアミンとしては、実施例の記載はないが、2-イソプロピルアミノエタノール(IPAE)等4種類のアミンが記されている。
【0011】
特許文献2には、同じく二級アルカノールアミンであるIPAEのみを含む液状吸収剤が記載されており、高い吸収性と放散性が特徴として挙げられているが、比較例1及び2に示されているように二酸化炭素の回収をより効率的にするために濃度を60重量%までに上げると吸収速度の低下、及び放散量の低下が大きく立体障害性アミンの特性が生かされず液状吸収剤の性能が低下する結果が記載されている。
【0012】
特許文献3には、三級アルカノールアミンの水溶液を液状吸収剤とし、3.5 bar絶対圧(約0.35 MPa)を超え、且つ20 bar絶対圧(約2 MPa)を超えない圧力下で行われる酸性ガス再生方法が記載されている。該特許文献においては、三級アルカノールアミンとしてMDEAの43重量%水溶液についての実施例が記されている。その他の三級アルカノールアミンとしては、実施例の記載はないが、TEA等が挙げられている。これら三級アルカノールアミンは、一級又は二級のアルカノールアミンに比べ、一般に二酸化炭素との比較的低い吸収反応熱を持つことが知られ、二酸化炭素の分離回収に要するエネルギーの大幅な低減が期待される。
【0013】
上記特許文献3は、石炭ガス化生成ガスや採掘天然ガス等で想定される二酸化炭素分圧が高い領域において、MDEA又はTEAの水溶液を二酸化炭素の液状吸収剤として使用することを目的とした発明である。これらの三級アルカノールアミンは、火力発電所や製鉄所高炉から発生する比較的低い分圧の二酸化炭素(一般に0.02 MPa程度)に対しては、二酸化炭素の回収及び液状吸収剤の再生の効率が低く、従って回収される二酸化炭素単位重量当たりのエネルギーが高くなる。
【0014】
特許文献4には、アミン化合物に富む相と水に富む相との2相への分離現象を利用することで、液状吸収剤の再生時に必要となる回収される二酸化炭素単位重量当たりのエネルギーを低く抑えることを目的とした二酸化炭素の除去方法が記載されている。該特許文献においては、液状吸収剤に含まれるアミン化合物として三級アルキルアミンであるTMDAHの35重量%水溶液についての実施例が記されている。
【0015】
上記特許文献4は、液状吸収剤の2相分離現象を利用し、二酸化炭素を放散した液状吸収剤のみを系内から選択的に除去することで、二酸化炭素に富んだ相のみを加熱し再生することを目的とした発明である。該特許文献において使用される三級アルキルアミンも、MDEA又はTEAと同様に、二酸化炭素との比較的低い吸収反応熱を持つことが知られるが、低い分圧の二酸化炭素に対しては、二酸化炭素の回収及び液状吸収剤の再生の効率が低い。
【0016】
二酸化炭素の発生量削減、省エネルギー及び省資源が求められる現代において、二酸化炭素分離回収における大量のエネルギー消費は、該技術の実用化を阻む大きな要因となっており、より少ないエネルギーでの二酸化炭素の分離回収技術が求められている。
【0017】
そのため、これらアミン水溶液からなる液状吸収剤による二酸化炭素の分離回収効率を高めることを目的とした触媒材料の開発が進められている。
【0018】
特許文献5及び6には、生体炭酸脱水酵素(CA)について、アミン化合物の水溶液を主成分とする二酸化炭素の液状吸収剤に対して二酸化炭素の分離回収効率を高める効果が記載されている。
【0019】
CAには、二酸化炭素とアミン化合物との反応におけるバイカーボネート生成の高い促進効果が報告されているが、耐熱性が低く寿命が短いため、加熱による二酸化炭素の放散工程を含む二酸化炭素分離回収プロセスにおいては、実用化が難しい。
【0020】
特許文献7には、二酸化炭素の分離回収に向けたアミン化合物の水溶液を主成分とする二酸化炭素の液状吸収剤に対して、二酸化炭素の分離回収効率を高める耐熱性の高いCAの効果が記載されている。
【0021】
上記特許文献7は、新規に発明されたCAが最高で70℃までの耐熱性を持つことを実施例で報告しているが、一般に化学吸収法による二酸化炭素分離回収プロセスでは、二酸化炭素の放散工程において液状吸収剤を120℃程度まで加熱する必要があることから、化学吸収法による二酸化炭素の分離回収プロセスにおいて十分な耐熱性を持つとは言えない。
【0022】
そこで、液状吸収剤による二酸化炭素の分離回収効率を高めるための触媒として、CAの構造を模倣したモデル化合物の開発が進められている。
【0023】
非特許文献1には、CAの構造を模倣したモデル化合物として、亜鉛を中心金属とした錯体化合物である1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン亜鉛(ZC)について、二酸化炭素の液状吸収剤への添加による分離回収効率の向上効果が報告されている。該非特許文献によると、ZCの添加による二酸化炭素の吸収速度の向上効果は、CA添加時の3分の1程度であることが報告されている。
【0024】
非特許文献2は、アミン水溶液中におけるZCの耐熱性について報告しており、200℃程度までの耐熱性が確認されている。
【0025】
非特許文献3には、CAの構造を模倣したモデル化合物として、亜鉛を中心金属とした錯体化合物であるニトリロトリス(2-ベンゾイミダゾリルメチル-6-スルホン酸)亜鉛(NBSZ)について、二酸化炭素の液状吸収剤への添加による分離回収効率の向上効果が報告されている。
【0026】
上記非特許文献1、2、及び3において報告されるCAの構造を模倣したモデル化合物の合成には、何れも非常に高価な原材料を必要とするため、化学吸収法による二酸化炭素の分離回収プロセスにおいて、これらのモデル化合物を触媒として使用する場合、二酸化炭素の分離回収に要するコストが大幅に増加することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開平5−301023号公報
【特許文献2】特開2009−6275号公報
【特許文献3】国際公開第2005/009592号
【特許文献4】特開2010-188336号公報
【特許文献5】国際公開第2006/089423号
【特許文献6】国際公開第2010/045689号
【特許文献7】国際公開第2008/095057号
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】X. Zhang, et. al, Inorg. Chem., 34 (1995) 5606
【非特許文献2】R. Davy, et. al, Energy Procedia, 4 (2011) 1691
【非特許文献3】K. Nakata, et. al, J. Inorg. Biochem., 89 (2002) 255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、二酸化炭素を含むガスの二酸化炭素を効率的に分離回収するための吸収剤及びこれを用いた二酸化炭素の分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記非特許文献1、2、及び3においては、アミン化合物と二酸化炭素との反応におけるバイカーボネート生成が触媒である亜鉛錯体化合物の添加により促進される触媒機構として、該錯体材料の中心金属が吸収剤中の水と結合することで、結合した水分子がアミン化合物をプロトン化し、触媒表面に残された水酸基が二酸化炭素と反応することで、バイカーボネートの生成を促進することを提案している。
【0031】
本発明者らは、アミン化合物の水溶液中において、水との結合に比べアミン化合物と比較的強く結合する性質を持つ錯体化合物が、上記触媒機構とは全く異なる触媒機構により、該触媒を含む吸収剤による二酸化炭素の分離回収性能を向上させ得ることを見出した。
【0032】
アミン化合物の水溶液を主成分とする吸収剤の多くは、アミン化合物やプロトン化したアミン化合物が分子間力や水素結合により水溶液中において会合体を形成していることが本発明者らの検討により明らかとなっている。該会合体中においては、二酸化炭素や反応に必要な水分子、バイカーボネートイオンなどの介入が妨げられるため、吸収剤における二酸化炭素の吸収や放散の性能が低下する。
【0033】
すなわち、アミン化合物を含む水溶液中において水との結合に比べアミン化合物と比較的強く結合する性質を持つ錯体化合物は、アミン化合物を上記会合体から引き抜き遊離させることで、上記会合体の形成により低下していた吸収剤の性能を部分的に本来持つべき性能に回復させる役割を担うと考えられる。
【0034】
さらに、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、吸収剤が、アミン化合物を含む水溶液中において水との結合に比べアミン化合物と比較的強く結合する性質を持つ錯体化合物の内、アミン化合物との適度な結合エネルギーを持つ錯体化合物を含むことにより、より高い二酸化炭素の分離回収効果を奏することを見出した。
【0035】
本発明は、これらの知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下の二酸化炭素を分離回収するための吸収剤及びそれを用いた二酸化炭素を分離回収する方法を提供するものである。
項1.少なくとも1種のアミン化合物、及び触媒を含有する、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収剤であって、前記アミン化合物を含む水溶液中における、前記アミン化合物の内の少なくとも1種のアミン化合物と前記触媒との結合エネルギーが7〜18 kcal/molであり、且つ前記結合エネルギーが前記触媒と水との結合エネルギー以上である、吸収剤。
項2.前記触媒が、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]、及びフタロシアニンからなる群より選択される少なくとも1種の配位子を有する錯体化合物である、項1に記載の吸収剤。
項3.前記触媒が、2価の金属元素を中心金属とする錯体化合物である、項1又は2に記載の吸収剤。
項4.前記2価の金属元素が、マグネシウム、コバルト、カルシウム、亜鉛、銅、及びパラジウムからなる群より選択される少なくとも1種である、項3に記載の吸収剤。
項5.前記触媒が、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)マグネシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)コバルト、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)カルシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)亜鉛、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)銅及びビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜4のいずれか一項に記載の吸収剤。
項6.前記アミン化合物が、三級アルカノールアミン及び三級アルキルアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜5のいずれか一項に記載の吸収剤。
項7.前記触媒が、前記アミン化合物を含む溶液に溶解又は懸濁されている(即ち、液状吸着剤である)、項1〜6のいずれか一項に記載の吸収剤。
項8.前記触媒及び前記アミン化合物が支持体に担持されている(即ち、固形吸着剤である)、項1〜6のいずれか一項に記載の吸収剤。
項9.前記触媒の添加量が、触媒を除いた吸収剤の重量に対して0.5〜5重量%である、項7に記載の吸収剤。
項10.以下の工程A及びBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収する方法:
項1〜9のいずれか一項に記載の吸収剤を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収剤を得る工程A、及び、
工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収剤を加熱して、吸収剤から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程B。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、二酸化炭素の分離回収工程に要するエネルギーが低減され、低いエネルギーでの二酸化炭素分離回収が可能となる。また、二酸化炭素との比較的低い吸収反応熱を持ちながらも二酸化炭素回収量の低さ故に利用が難しい三級アミン化合物等をも、消費エネルギーの低い高性能な吸収剤の構成成分として利用することが可能となる。さらに、よりコンパクトな二酸化炭素分離回収設備の設計が可能となり、初期コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH)と触媒との結合エネルギーと、吸収剤性能相対値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0039】
二酸化炭素を分離回収するための吸収剤
本発明の吸収剤は、少なくとも1種のアミン化合物、及び触媒を含有する、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収剤であって、前記アミン化合物を含む水溶液中における、前記アミン化合物の内の少なくとも1種のアミン化合物と前記触媒との結合エネルギーが7〜18 kcal/molであり、且つ前記結合エネルギーが前記触媒と水との結合エネルギー以上である、吸収剤である。
【0040】
本発明の吸収剤は、前記触媒が前記アミン化合物を含む溶液に溶解し又は懸濁した液体であることができる。また、本発明の吸収剤は、前記触媒及び前記アミン化合物を支持体に担持した吸収剤とすることもできる。具体的には、例えば、固体吸収剤あるいは分離膜等とすることができる。
【0041】
触媒
本発明の吸収剤に含まれる触媒としては、アミン化合物の水溶液が持つpHが9〜12程度の塩基性雰囲気において、十分な化学的安定性を持つ金属錯体化合物や金属酸化物等が好ましく、2価の金属元素を中心金属とする錯体化合物であることが好ましい。
【0042】
2価の金属元素としては、次のものに限定される訳ではないが、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(V)、ラジウム(Rd)、ベリリウム(Be)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)等が挙げられる。
【0043】
このうち、前記錯体化合物を作製するためのコストを低減する観点及び触媒としての性能を向上させる観点からは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等が好ましく、亜鉛(Zn)がより好ましい。
【0044】
本発明の吸収剤に含まれる触媒が有する配位子としては、次のものに限定される訳ではないが、例えば、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、フタロシアニン、トリス(2-ベンズイミダゾリルメチル)アミン、ニトリロトリス(2-ベンズイミダゾリルメチル-6-スルホン酸)等が挙げられる。
【0045】
このうち、入手の容易性及び触媒としての性能を向上させる観点からは、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]、フタロシアニン等が好ましく、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)がより好ましい。
【0046】
本発明の二酸化炭素を分離回収するための吸収剤に含まれる触媒としての、2価の金属元素を中心金属とする錯体化合物は、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(V)、ラジウム(Rd)、ベリリウム(Be)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)等を中心金属とするビス(2,4-ペンタンジオネイト)、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、フタロシアニン、トリス(2-ベンズイミダゾリルメチル)アミン、ニトリロトリス(2-ベンズイミダゾリルメチル-6-スルホン酸)等が挙げられる。
【0047】
このうち、入手の容易性及び触媒としての性能を向上させる観点からは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu) 、パラジウム(Pd)等を中心金属とするビス(2,4-ペンタンジオネイト)、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]、フタロシアニン等が好ましく、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)亜鉛、ビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)マグネシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)カルシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)コバルト、及びビス(2,4-ペンタンジオネイト)銅がより好ましい。
【0048】
本発明の吸収剤に含まれる触媒は、アミン化合物を含む水溶液中において水との結合に比べアミン化合物と比較的強く結合する。
【0049】
アミン化合物を含む水溶液中における、前記触媒のアミン化合物に対する結合エネルギーと、前記触媒の水に対する結合エネルギーとの差は、5 kcal/mol以上であることが好ましい。上記結合エネルギーの差がこの範囲であれば、該吸収剤中において触媒は水よりもアミン化合物と優先的に結合するため、アミン化合物の会合体からアミン化合物がより遊離しやすくなると考えられる。
【0050】
アミン化合物を含む水溶液中における、前記触媒のアミン化合物に対する結合エネルギーは、7〜18 kcal/molである。この範囲であれば、触媒はアミン化合物との結合及び解離を繰り返すことで、アミン化合物をアミン化合物の会合体から効率良く遊離することができると考えられる。前記触媒のアミン化合物に対する結合エネルギーが上記の範囲内にある場合は、アミン化合物の会合体からアミン化合物を遊離する機能が高く、且つ結合したアミン化合物を解離できず触媒表面が埋まり触媒としての機能が失われるということがない。アミン化合物を含む水溶液中における、前記触媒とアミン化合物との結合エネルギーは、より好ましくは8〜17 kcal/molであり、11〜16 kcal/molであることが特に好ましい。
【0051】
本発明の吸収剤に含まれる触媒は、単独で、又は複数の種類を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明の吸収剤が液体である場合、前記触媒は、該吸収剤に対して溶解性を有していても、有していなくてもよい。吸収剤に含まれる触媒が該吸収剤に対し溶解性を有する場合は、該吸収剤中において添加触媒を均一に溶解させて使用することができる。一方、溶解性が低いか又は有していない場合は、該吸収剤中において添加触媒を不均一に懸濁させて使用することができる。また、この場合、支持体等に担持固定することで該吸収剤と部分的に接触させて使用することもできる。
【0053】
本発明の吸収剤に用いられる触媒の耐熱性は高い程好ましく、耐熱温度は150 ℃以上であることがより好ましい。この範囲であれば、後述の二酸化炭素の分離回収方法における工程Bにおいて該吸収剤を加熱した際に、分解されず添加触媒の機能が維持される。前記耐熱温度は、更に好ましくは180 ℃以上であり、200 ℃以上であることが特に好ましい。
【0054】
本発明の吸収剤が液体である場合、吸収剤に含まれる触媒の添加量は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し0.5〜5重量%であることができ、1〜4重量%であることが好ましい。この範囲であれば、吸収剤による二酸化炭素を分離回収する性能を効果的に向上でき、また、吸収剤の粘性の上昇、発泡性の上昇、液性の変化等のような問題も生じない。
【0055】
アミン化合物
本発明の吸収剤に含まれるアミン化合物は、水溶液として二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を選択的に分離回収する性能を有するという特徴を除いては特に限定されるものではなく、例えば、一級アルカノールアミンであるモノエタノールアミン(MEA)、ジグリコールアミン(DGA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、二級アルカノールアミンである2−メチルアミノエタノール(MAE)、2-エチルアミノエタノール(EAE)、2-イソプロピルアミノエタノール(IPAE)、ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、三級アルカノールアミンであるN-メチルジエタノールアミン(MDEA)、トリエタノールアミン(TEA)、三級アルキルアミンであるN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン(TMDAB)、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(BDER)等が挙げられる。二酸化炭素の分離回収に要するエネルギーを低減させる目的においては、一般に二酸化炭素との比較的低い吸収反応熱を持つことが知られている三級アルカノールアミン、又は三級アルキルアミン(以下、三級アミン化合物)を用いることが好ましい。
【0056】
本発明の吸収剤は、上記のアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種のアミン化合物を含むことができる。2種以上のアミン化合物を含む場合、前記アミン化合物の内の少なくとも1種のアミン化合物と前記触媒との結合エネルギーは7〜18 kcal/molであり、且つ前記結合エネルギーは前記触媒と水との結合エネルギー以上である。
【0057】
本発明の吸収剤が液体である場合、上記のアミン化合物の溶媒として、水溶媒を含み、さらに非水溶媒を含んでいてもよい。
【0058】
水溶媒としては、特に限定されず、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水等を適宜使用することができる。
【0059】
本発明の吸収剤が液体である場合、吸収剤に含まれるアミン化合物の濃度は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し通常20〜70重量%とすることができ、25〜65重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。
【0060】
本発明の吸収剤が液体である場合、吸収剤における水の含有量は、特に限定的なものではなく、残部を水とすることができる。
【0061】
本発明の吸収剤は、固体吸収剤とすることもできる。
【0062】
本発明の吸収剤が固体吸収剤である場合は、前記アミン化合物及び前記触媒を支持体に担持させることができる。
【0063】
前記アミン化合物及び前記触媒を担持させる支持体としては、特に限定されず、メソポーラスシリカ、ポリメチルメタクリレート、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、ゼオライト類縁化合物、天然鉱物、廃棄物固体、活性炭、カーボンモレキュラーシーブ、又はそれらの混合物等が挙げられる。前記支持体は、市販品をそのまま用いてもよいし、公知の方法によって合成したものを用いてもよい。市販品としては、シグマ−アルドリッチ社製のメソ構造シリカMSU-F、三菱化学株式会社製のダイヤイオン(登録商標)HP2MG等が挙げられる。
【0064】
前記支持体は、前記アミン化合物及び前記触媒をより多く担持するために、多孔質で比表面積と細孔容積が大きな材料が好ましい。
【0065】
前記アミン化合物及び前記触媒の担持体は、前記アミン化合物及び前記触媒を含むアルコール溶液等に、前記支持体を混合し、室温で撹拌後、アルコール溶媒を留去することにより製造することができる。アルコール溶媒を留去する方法としては、例えば、エバポレーター等で加熱しながら、減圧する方法が挙げられる。
【0066】
前記アミン化合物及び前記触媒を支持体に担持させることにより、液体である吸収剤では適用できない圧力スィング法(吸収剤を減圧条件下におき、二酸化炭素を脱離させる方法)に適用することが可能であり、かつ温度スィング法(吸収剤を加熱し、二酸化炭素を脱離し、放散させる方法)においても良好な結果を得ることができる。
【0067】
この他に、本発明の吸収剤は、前記アミン化合物及び前記触媒を含む液体を多孔質体に含浸させた固体吸着剤、前記アミン化合物及び前記触媒を含む液体を固体高分子でゲル状にして分離膜等の形態で使用することができる
【0068】
その他の含有物
また、本発明の吸収剤が液体である場合、触媒、アミン化合物、及び前記溶媒以外の成分を、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。その他の成分としては、本発明の吸収剤の化学的又は物理的安定性を確保するための安定剤(酸化防止剤等の副反応抑制剤)や本発明の吸収剤を用いる装置や設備の材質の劣化を防ぐための防止剤(腐食防止剤等)等が挙げられる。これらその他の成分の含有量は本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限的なものではないが、重量比で本発明の二酸化炭素を吸収及び回収するための吸収剤全体に対して、5重量%以下が好ましい。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0070】
腐食防止剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ホスホノプロパン-2,3-ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、マレイン酸系重合体(例えばマレイン酸及びアミレンの共重合体、又はマレイン酸、アクリル酸、及びスチレンの三元共重合体)等が挙げられる。
【0071】
物理吸収剤としては、例えば、シクロテトラメチレンスルホン及びその誘導体、脂肪族酸アミド(例えばアセチルモルホリン、又はN-ホルミルモルホリン)、N-アルキル化ピロリドン及び相応するピペリドン(例えばN-メチルピロリドン、又はN-メチルピペリドン)、プロピレンカーボネート、メタノール、ポリエチレングリコールのジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0072】
吸収剤による二酸化炭素の分離回収方法
本発明の吸収剤による二酸化炭素の分離回収方法は、二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を分離回収するための方法であって、本発明の吸収剤を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収剤を得る工程A、及び、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収剤を加熱して、吸収剤から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程Bを含むことを特徴とする。
【0073】
以下、本発明の吸収剤が液体である場合と固体である場合に分けて説明する。
【0074】
<吸収剤が液体の場合>
(工程A)
工程Aでは、吸収剤を、二酸化炭素を含むガスと接触させることで、該二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を吸収剤に吸収させて分離する。
【0075】
工程Aにおける、吸収剤を、二酸化炭素を含むガスと接触させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、吸収剤中に二酸化炭素を含むガスをバブリングさせる方法、二酸化炭素を含むガス中に吸収剤を霧状に降らす方法(噴霧乃至スプレー方式)、磁製や金属網製の充填材が入った吸収塔内で高圧の二酸化炭素を含むガスと吸収剤とを向流接触させる方法等が挙げられる。
【0076】
工程Aにおける温度は、25〜60℃とすることができる。この範囲であれば、吸収剤が二酸化炭素回収量及び二酸化炭素吸収速度に優れる。工程Aにおける温度は、好ましくは25〜50℃であり、より好ましくは25〜40℃である。
【0077】
工程Aにおける圧力は、通常ほぼ大気圧である。吸収性能を高めるためより高い圧力まで加圧することもできるが、二酸化炭素回収後の圧縮のために要するエネルギー消費を抑えるためには、大気圧下で行うことが好ましい。
【0078】
(工程B)
工程Bでは、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収剤を加熱して、吸収剤から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する
工程Bにおける温度は、70〜150 ℃とすることができる。この範囲であれば、吸収剤が二酸化炭素の放散速度に優れる。工程Bにおける温度は、好ましくは70〜120 ℃であり、より好ましくは70〜100 ℃である。
【0079】
工程Bにおいて、二酸化炭素を吸収した吸収剤から二酸化炭素を放散させ、回収する圧力は、通常0.1〜0.3 MPa程度とすることができる。回収量及び放散速度を高めるためより低い圧力まで減圧することもできるが、二酸化炭素回収後の圧縮のために要するエネルギー消費、及び吸収剤の沸騰による揮散損失を抑えるためには、この範囲で行うことが好ましい。
【0080】
二酸化炭素を吸収した吸収剤を加熱して、二酸化炭素を放散させ、回収する方法は、特に限定されるものではない。例えば、蒸留と同じく、吸収剤を加熱して釜で泡立てて脱離する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製、金属網製等の充填材の入った放散塔内で液界面を広げて加熱する方法等が挙げられる。これらの方法により、純粋な、あるいは非常に高濃度の二酸化炭素を回収することができる。
【0081】
工程Bにおいて二酸化炭素を放散した後の吸収剤は、再び工程Aに戻し、循環再利用することができる。該循環過程において、工程Bで加えられた熱は、二酸化炭素を吸収した吸収剤との熱交換により、吸収剤の昇温に利用される。該熱交換により二酸化炭素分離回収工程全体のエネルギーの低減が計られる。
【0082】
<吸収剤が固体である場合>
二酸化炭素を脱離させる方法としては、
(A)二酸化炭素分離材を減圧条件下におき、二酸化炭素を脱離させる方法(圧力スィン
グ法)、
(B)二酸化炭素分離材に二酸化炭素を含まない不活性ガスを接触させ、二酸化炭素を脱
離させる方法、及び
(C)二酸化炭素分離材を加熱し、二酸化炭素を脱離させる方法(温度スィング法)
が挙げられる。
【0083】
前記(A)の方法では、二酸化炭素の脱離量及び前記二酸化炭素分離材の安定性の点で、0.2 Pa程度まで圧力を下げることが好ましい。減圧時に二酸化炭素分離材又はこれを含む容器を加熱してもよい。加熱する場合の温度は60℃程度まで加熱することができ、この場合の圧力は0.5 Pa程度まで圧力を下げることが好ましい。
【0084】
前記(B)の方法では、二酸化炭素を含まない不活性ガスを接触させることにより、二酸化炭素分圧を下げ、二酸化炭素を脱離させることができる。前記不活性ガスとしては、二酸化炭素分離材がそのガス中で安定であり、二酸化炭素を含まないものであればよいが、例えば、アルゴンや窒素等が挙げられる。
【0085】
前記(C)の方法では、二酸化炭素吸収時の温度から温度を上昇させることにより、二酸化炭素を脱離させることができる。この場合における、二酸化炭素吸収時の温度と二酸化炭素脱離時の温度は、例えば、二酸化炭素吸収時の温度として20〜25℃、二酸化炭素脱離時の温度として60℃程度であればよい。
【0086】
本発明の二酸化炭素を分離回収する方法により分離回収された二酸化炭素は、通常95〜99.9体積%の濃度を持ち、純粋な、あるいは非常に高濃度であり得る。該分離回収された二酸化炭素は、現在その技術が開発されつつある地中や海底等への隔離貯蔵(CCS)や石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery、EOR)に供することができる。その他、該分離回収された二酸化炭素の利用用途は、特に限定されるものではない。例えば、化成品等の合成原料、或いは食品冷凍用の冷剤等が挙げられる。
【0087】
処理対象である二酸化炭素を含むガス
二酸化炭素を含むガスとしては、例えば、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、製造所のボイラーあるいはセメント工場のキルン、コークスで酸化鉄を還元する製鐵所の高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する同じく製鉄所の転炉等からの排ガスが挙げられる。
【0088】
本発明の吸収剤が液体である場合、該ガス中の二酸化炭素濃度は特に規定されるものではないが、通常5〜30体積%程度、特に10〜20体積%程度であればよい。かかる二酸化炭素濃度範囲では、本発明の作用効果が好適に発揮される。なお、該ガス中には、二酸化炭素以外に水蒸気、CO等の発生源に由来する不純物ガスが含まれていてもよい。該ガス中の二酸化炭素濃度は、通常10〜50体積%であり得、20〜40体積%であり得る。この範囲であれば、本発明の吸収剤による二酸化炭素分離回収性能が特に好適に発揮される。なお、二酸化炭素を含むガスは、二酸化炭素以外の成分として、水蒸気、NOx、SOx、CO、H2S、COS、H2、O2等のガス成分を含んでいてもよい。
【0089】
本発明の吸収剤が固体である場合、これらに限定される訳ではないが、該ガスは、例えば、二酸化炭素分圧:100 kPa以下で温度:20〜60℃であればよい。また、該ガスは、大気圧であっても、加圧されていてもよい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。但し、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0091】
試薬
実施例及び比較例で使用した試薬及びガス種をそれぞれ表1及び2に示す。ここで、価格比は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン亜鉛(過塩素酸塩)(ZC)に対する入手価格の比を表す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
試験方法
試験例1から3において、吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度の測定は、炭酸ガスボンベ及び窒素ガスボンベ、炭酸ガス流量コントローラー及び窒素ガス流量コントローラー、ガラス製反応容器(0.5 L)及び温度調整器、ガス流量計、チラー、並びに二酸化炭素濃度計(YOKOGAWA製IR100)を順次接続した図示しない二酸化炭素吸収放散装置を用いて行った。
【0095】
ガラス製反応容器の周囲は、電気式ヒーターで覆い、温度調整器によりガラス製反応容器内の吸収剤の温度を任意に制御する仕様とした。ガラス製反応容器内には撹拌翼を設け、ガラス製反応容器内の吸収剤を強制撹拌することで気液接触を促す仕様とした。
【0096】
ガラス製反応容器内に0.1 Lの液状水溶剤を加えた後、窒素ガスによりガラス製反応容器内上部の気体を置換した。ガラス製反応容器内の吸収剤を二酸化炭素の吸収工程の温度条件および圧力条件で保持した。0.14 L/minの流量の炭酸ガス及び0.56 L/minの流量の窒素ガスをガラス製反応容器内の吸収剤に吹き込み二酸化炭素の吸収工程を開始し、2時間継続した。
【0097】
二酸化炭素の吸収工程が終了した後、ガラス製反応容器内の吸収剤を二酸化炭素の放散工程の温度条件および圧力条件に設定し、二酸化炭素の放散工程を開始し、2時間継続した。上記二酸化炭素の吸収工程及び放散工程において、ガラス製反応容器からの排出ガスを二酸化炭素濃度計により分析した。
【0098】
吸収剤への二酸化炭素溶解量Sc[g/L]は、二酸化炭素濃度計から得られる二酸化炭素濃度C[体積%]の経時変化から下記の式(1)を用いて求めた。
【0099】
【数1】
【0100】
吸収剤による二酸化炭素回収量は、二酸化炭素の吸収工程の開始2時間後における二酸化炭素溶解量から、二酸化炭素放散工程の開始2時間後における二酸化炭素溶解量を引いた値として定義した。
【0101】
吸収剤への二酸化炭素吸収速度は、二酸化炭素の吸収工程における最大の二酸化炭素溶解量に対し50%溶解時における単位時間当たりの二酸化炭素溶解量変化として定義した。
【0102】
吸収剤からの二酸化炭素放散速度は、二酸化炭素の放散工程の開始から10分間における単位時間当たりの二酸化炭素溶解量変化の平均値として定義した。
【0103】
実施例1〜12
三級アルキルアミンであるTMDAHを水に加えて混和し、TMDAH:30重量%、水:70重量%とした。触媒として、2価の亜鉛を中心金属とするPDZ及びBOPZをそれぞれ添加し、吸収剤とした。各触媒の添加量は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し0.5〜5重量%とした。PDZ及びBOPZは上記吸収剤に対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させた。
【0104】
比較例1
触媒を添加しなかったことを除き、実施例1〜12と同様にして吸収剤を得た。
【0105】
比較例2〜6
触媒として、2価の亜鉛を中心金属とするZCを添加したこと、及び該触媒の添加量を、触媒を除いた吸収剤の重量に対し0.5〜4重量%としたことを除き、実施例1〜12と同様にして吸収剤を得た。ZCは上記吸収剤に対し溶解性を持つため、該吸収剤中で均一に溶解させて使用した。
【0106】
試験例1
上記試験方法により、上記二酸化炭素吸収放散装置を用いて、吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度の測定を行った。
【0107】
本試験例における二酸化炭素の吸収工程及び放散工程における試験条件は、それぞれ温度40℃:圧力0.1 MPa及び温度70℃:圧力0.1 MPaであった。但し、上記の吸収剤組成及び試験条件は、本発明を何ら限定するものではない。
【0108】
本試験例の結果として得られたPDZ、BOPZ及びZCをそれぞれ含有する吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度を、それぞれ比較例1に対する相対値として表3、4及び5に示す。ここで、触媒添加量の単位[重量%-Sol]は、触媒を除いた吸収剤の重量に対する重量比を表す。
【0109】
表3〜4に示すように、本発明の触媒の添加により、吸収剤の二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度及び二酸化炭素放散速度の少なくとも一つの性能が向上した。特にBOPZの添加により、吸収剤の二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度及び二酸化炭素放散速度のほぼ全ての性能が顕著に向上した。
【0110】
また、PDZについては、その添加による性能向上効果が比較的低いが、表5に示すZC添加時の効果と同等程度であり、非常に低い入手価格を考慮すれば、有望な添加触媒である。
【0111】
表3〜5に示すいずれの吸収剤についても、触媒添加量の増加に伴い各性能が向上し、触媒添加量の過多による性能の低下が観測された。触媒の最適添加量は添加触媒の構造により異なるが、いずれの添加触媒も触媒を除いた吸収剤の重量に対し1〜4重量%の添加量の範囲で最大の効果が観測された。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
実施例13〜16
三級アルキルアミンであるTMDAHを水に加えて混和し、TMDAH:30重量%、水:70重量%とした。触媒として、PDM、PDCa、PDCo及びPDCuをそれぞれ添加し、吸収剤とした。各触媒の添加量は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し3重量%のPDZと等モルとした。PDM、PDCa、PDCo及びPDCuのいずれも上記吸収剤に対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させて使用した。
【0116】
比較例7
触媒として、PDPを添加したことを除き、実施例13〜16と同様にして吸収剤を得た。PDPは上記吸収剤に対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させて使用した。
【0117】
試験例2
上記試験方法により、上記二酸化炭素吸収放散装置を用いて、吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度の測定を行った。
【0118】
本試験例における二酸化炭素の吸収工程及び放散工程における試験条件は、それぞれ温度40℃:圧力0.1 MPa及び温度70℃:圧力0.1 MPaであった。但し、上記の吸収剤組成及び試験条件は、本発明を何ら限定するものではない。
【0119】
本試験例の結果として得られたPDM、PDCa、PDCo、PDCu及びPDPをそれぞれ含有する吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度を、それぞれ上記試験例1の比較例1に対する相対値として表6に示す。ここで、触媒添加量の単位[重量%-Sol]は、触媒を除いた吸収剤の重量に対する重量比を表す。
【0120】
表6に示すように、本発明の触媒の添加により、吸収剤の二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度及び二酸化炭素放散速度の少なくとも一つの性能が向上した。特にPDM及びPDCoは、その添加により、吸収剤の二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度の全ての性能が顕著に向上した。PDM及びPDCoは入手価格も安価であることから、非常に有望な添加触媒である。また、PDCa及びPDCuについては、その添加による性能向上効果が比較的低いが、比較例3に示すZC添加時の効果及び比較例7に示すPDP添加時の効果と同等程度であり、非常に低い入手価格を考慮すれば、有望な添加触媒である。
【0121】
【表6】
【0122】
実施例17
三級アルキルアミンであるTMDAHを水に加えて混和し、TMDAH:40重量%、水:60重量%とした。触媒として、2価の亜鉛を中心金属とするPDZを添加し、吸収剤とした。触媒の添加量は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し3重量%とした。PDZは上記吸収剤に対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させた。
【0123】
実施例18
二級アルカノールアミンであるIPAE及び三級アルキルアミンであるTMDAHを水に加えて混和し、IPAE:30重量%、TMDAH:25重量%及び水:45重量%とした。触媒として、2価の亜鉛を中心金属とするPDZを添加し、吸収剤とした。触媒の添加量は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し3重量%とした。PDZは上記吸収剤に対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させた。
【0124】
実施例19
三級アルカノールアミンであるMDEAを水に加えて混和し、MDEA:30重量%、水:70重量%とした。触媒として、2価の亜鉛を中心金属とするPDZを添加し、吸収剤とした。触媒の添加量は、触媒を除いた吸収剤の重量に対し3重量%とした。PDZは上記吸収剤に対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させた。
【0125】
比較例8〜10
比較例8、9及び10は、触媒を添加しなかったことを除き、それぞれ実施例17、18及び19と同様にして吸収剤を得た。
【0126】
試験例3
上記試験方法により、上記二酸化炭素吸収放散装置を用いて、本発明の添加触媒を含有する吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度の測定を行った。
【0127】
本試験例における二酸化炭素の吸収工程及び放散工程における試験条件は、それぞれ温度40℃:圧力0.1 MPa及び温度80℃:圧力0.1 MPaであった。但し、上記の吸収剤組成及び試験条件は、本発明を何ら限定するものではない。
【0128】
本試験例の結果として得られたPDZを含有する各吸収剤に対する二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度及び二酸化炭素放散速度を、それぞれ比較例8〜10に示すいずれの添加触媒も含有しない各吸収剤の各性能に対する相対値として表7に示す。ここで、触媒添加量の単位[重量%-Sol]は、触媒を除いた吸収剤の重量に対する重量比を表す。
【0129】
表7に示すように、本発明の触媒の添加により、各吸収剤の二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度及び二酸化炭素放散速度の少なくとも一つの性能が向上した。特に三級アミン化合物に対する性能向上効果が顕著であった。三級アミン化合物は一般に二酸化炭素との比較的低い吸収反応熱を持つことが知られており、二酸化炭素の分離回収に要するエネルギーを低減させる目的において、有望な添加触媒である。
【0130】
【表7】
【0131】
試験例4
上記試験例1〜3において、吸収剤の二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び/又は二酸化炭素放散速度を向上させる高い効果が観測された添加触媒について、該吸収剤中におけるアミン化合物又は水との結合エネルギーをGaussian09プログラムを用いた量子化学計算により求めた。
【0132】
上記量子化学計算を実施するにあたり、SMD溶媒和モデルを適用したwB97XD密度汎関数理論を用い、安定分子構造を求めた後に、該分子構造におけるエネルギー値を算出した。上記安定分子構造の計算における基底関数は、C、H、N、O、Mg、Ca原子には6-31G(d)を、Co、Cu、Zn原子には[5s4p2d](S. Huzinaga, J. Andzelm, M. Klobukowski, E. Radzio-Andzelm, Y. Sakai, H. Tatewaki, Gaussian Basis Sets for Molecular Calculations; Elsevier: New York, 1984)を、Pd原子にはSDDを、それぞれ用い、上記安定分子構造におけるエネルギー値の計算における基底関数は、C、H、N、O、Mg、Ca、Co、Cu、Zn原子には6-311++G(2df,2p)を、Pd原子にはSDDを、それぞれ用いた。本試験例の計算結果として得られた添加触媒とアミン化合物との結合エネルギー及び添加触媒と水との結合エネルギーを表8に示す。
【0133】
表8に示すように、本発明の二酸化炭素を分離回収する吸収剤への添加触媒は、何れも水との結合エネルギーに比べTMDAHとの結合エネルギーが比較的高く、従って、該吸収剤中において水との結合に比べアミン化合物と比較的強く結合することが予想される。上記添加触媒のTMDAHに対する結合エネルギーと水に対する結合エネルギーとの差は、何れも5 kcal/mol以上であり、従って、該吸収剤中において添加触媒は水よりもアミン化合物と優先的に結合し、アミン化合物の会合体からアミン化合物を遊離することができると予想される。
【0134】
【表8】
【0135】
図1は、上記試験例4における各添加触媒とTMDAHとの結合エネルギーの計算結果に対し、上記試験例1又は2に記載の実施例4、8及び13〜16、並びに比較例3及び7の各吸収剤の各性能を、それぞれ上記試験例1の比較例1に対する相対値として比較したグラフである。すなわち、グラフの縦軸の1は、本発明の添加触媒の何れも添加しなかった吸収剤の各性能を表す。
【0136】
本発明の添加触媒を含有する吸収剤による二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、及び二酸化炭素放散速度は、該添加触媒とTMDAHとの結合エネルギーに対し、それぞれ相関を示し、該結合エネルギーで15 kcal/mol付近に最適値を持つことが確認された。アミン化合物との結合エネルギーが低い場合は、アミン化合物の会合体からアミン化合物を遊離する機能が低く、アミン化合物との結合エネルギーが高い場合は、結合したアミン化合物を解離できず触媒表面が埋まるため触媒としての機能が失われるものと考察される。
【0137】
TMDAH以外のアミン化合物に対しても、表8に示すように、上記試験例3に記載の実施例18の吸収剤に含まれるIPAEとPDZとの結合エネルギー、及び実施例19の吸収剤に含まれるMDEAとPDZとの結合エネルギーは、それぞれ7.5及び10.3 kcal/molであり、上記試験例3の結果として得られた触媒添加による各性能向上効果が発現している。
【0138】
上記結合エネルギーが7〜18 kcal/molの範囲であれば、触媒はアミン化合物との結合及び解離を繰り返すことで、アミン化合物をアミン化合物の会合体から効率良く遊離することができ、従って、本発明の触媒を添加することで二酸化炭素を分離回収する吸収剤の性能を向上させられる。より高い性能向上効果が期待される上記結合エネルギーの範囲は、11〜16 kcal/molである。
図1