特許第6463199号(P6463199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463199
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ラバーシート及びサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20190121BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   F16F9/32 B
   F16F1/12 N
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-72912(P2015-72912)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191453(P2016-191453A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100198579
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲一
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 積磨
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰隆
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−199134(JP,A)
【文献】 特開2004−216922(JP,A)
【文献】 特開2013−185670(JP,A)
【文献】 特開2014−181776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
F16F 1/12
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を弾性支持するコイルスプリングと前記コイルスプリングの下端部を支持するスプリングガイドとの間に設けられるラバーシートであって、
前記ラバーシートは、
円弧状または円環状に形成された本体部と、
前記本体部に溝状に形成され前記コイルスプリングが着座する着座部と、
前記本体部における前記コイルスプリングの末端部が着座する位置において、前記本体部の外周から径方向外側に突出するように形成され、前記本体部の変形を規制する変形規制部と、を備えることを特徴とするラバーシート。
【請求項2】
前記変形規制部は前記スプリングガイドに当接するように形成されることを特徴とする請求項1に記載のラバーシート。
【請求項3】
前記ラバーシートは、円弧形状であって、その周方向の端部に前記変形規制部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のラバーシート。
【請求項4】
前記ラバーシートは、前記本体部の内周及び外周の側面からそれぞれ径方向に向かって突出するように形成され、前記スプリングガイドに当接して前記本体部と前記スプリングガイドとの間への異物の侵入を防止するリップをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のラバーシート。
【請求項5】
前記変形規制部は、前記本体部の周方向における一部にのみ形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のラバーシート。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のラバーシートと、
車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバと、
前記ショックアブソーバのロッドの先端に取り付けられるアッパーマウントと、
前記ショックアブソーバの外周面に取り付けられる前記スプリングガイドと、
前記アッパーマウントと前記スプリングガイドとの間に設けられる前記コイルスプリングと、を備えることを特徴とするサスペンション装置。
【請求項7】
前記コイルスプリングの前記末端部は、前記車体の内側に位置することを特徴とする請求項に記載のサスペンション装置。
【請求項8】
前記スプリングガイドには、円弧溝が形成され、
前記ラバーシートは、円弧形状であって、その周方向の端部が前記円弧溝の端部に位置し、かつ、前記変形規制部が前記円弧溝の底面に当接するようにして前記円弧溝に嵌合され、
前記コイルスプリングは、その末端部が前記ラバーシートの前記端部に位置するように前記ラバーシートに支持されることを特徴とする請求項6または7に記載のサスペンション装置。
【請求項9】
前記円弧溝は、周方向の端部に向かって深さが浅くなることを特徴とする請求項8に記載のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラバーシート及びサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ショックアブソーバに外装されたコイルスプリングと、このコイルスプリングの下端部分を支持し且つショックアブソーバの途中部に固定されたスプリング受け部材と、このスプリング受け部材とコイルスプリングの下端部分との間に介設されたスプリングラバーシートと、を備えたサスペンションが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたサスペンションでは、スプリング受け部材の径方向内側部分に突出部が形成されている。この突出部の上端部にスプリングラバーシートに形成された変形規制部が当接している。変形規制部は、着座部に接触するコイルスプリング下端部分のうち最上部分に対応する位置に形成されている。
【0004】
特許文献1に記載されたサスペンションでは、コイルスプリングの下端部分がスプリングラバーシートの着座部の上面部分を押圧しているため、着座部の圧縮に起因してスプリングラバーシートの嵌合部を径方向外側へ湾曲変形させる応力が作用する。このとき、変形規制部の下部とスプリング受け部材の突出部の上端面が当接しているため、両者の摩擦力により嵌合部の径方向外側への湾曲変形が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−219825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コイルスプリングが収縮動作するときには、コイルスプリングの末端部に径方向外側に向かって荷重が作用する。コイルスプリングの末端部に大きな荷重が作用した場合には、スプリングラバーシートのコイルスプリングの末端部を支持している部位が、径方向外側に向かって捻じれるように変形するおそれがあった。このようにスプリングラバーシートが変形すると、コイルスプリングがスプリングラバーシートから外れてしまい、スプリングラバーシートがコイルスプリングを安定して支持できないおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、コイルスプリングを安定して支持できるラバーシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ラバーシートは、円弧状または円環状に形成された本体部と、本体部に溝状に形成されコイルスプリングが着座する着座部と、本体部におけるコイルスプリングの末端部が着座する位置において、本体部の外周から径方向外側に突出するように形成され、本体部の変形を規制する変形規制部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、コイルスプリングが収縮して末端部に径方向外側に向かう荷重が作用しても、ラバーシートのコイルスプリングの末端部が着座する位置は、変形規制部によって径方向外側に捻じれるように変形することが規制される。
【0010】
第2の発明は、変形規制部はスプリングガイドに当接するように形成されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、変形規制部とスプリングガイドとの間に摩擦抵抗が生じるため、ラバーシートがスプリングガイド上でずれることを防止できる。
【0012】
第3の発明は、ラバーシートは円弧形状であって、その周方向の端部に変形規制部が形成されることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、ラバーシートは円弧形状であるためその周方向の端部は変形しやすい。このような構成であっても、ラバーシートの周方向の端部に変形規制部が形成されるので、ラバーシートの変形を効果的に規制することができる。
【0014】
第4の発明は、ラバーシートは、本体部の内周及び外周の側面からそれぞれ径方向に向かって突出するように形成され、スプリングガイドに当接して本体部とスプリングガイドとの間への異物の侵入を防止するリップをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、ラバーシートとスプリングガイドとの間に隙間が生じても、リップがスプリングガイドに当接しているので、本体部とスプリングガイドとの間への異物の侵入を防止することができる。
第5の発明は、変形規制部は、本体部の周方向における一部にのみ形成されることを特徴とする。
【0016】
の発明は、サスペンション装置が、第1から第の発明のいずれかのラバーシートと、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバと、ショックアブソーバのロッドの先端に取り付けられるアッパーマウントと、ショックアブソーバの外周面に取り付けられるスプリングガイドと、アッパーマウントとスプリングガイドとの間に設けられるコイルスプリングと、を備えることを特徴とする。
【0017】
の発明では、第1から第の発明のいずれかのラバーシートはサスペンション装置に適用することができる。
【0018】
の発明は、コイルスプリングの末端部は、車体の内側に位置することを特徴とする。
【0019】
の発明では、コイルスプリングの末端部は、最も荷重が作用する車輪側から離れた位置となる。したがって、コイルスプリングの末端部を介してラバーシートへ大きな荷重が作用することを回避できる。
【0020】
の発明は、スプリングガイドには、円弧溝が形成され、ラバーシートは、円弧形状であって、その周方向の端部が円弧溝の端部に位置し、かつ、変形規制部が円弧溝の底面に当接するようにして円弧溝に嵌合され、コイルスプリングは、その末端部がラバーシートの端部に位置するようにラバーシートに支持されることを特徴とする。
第9の発明は、円弧溝は周方向の端部に向かって深さが浅くなることを特徴とする。
【0021】
8の発明では、ラバーシートの変形規制部とスプリングガイドの円弧溝の底面とが当接しこれらの間には摩擦抵抗が生じるため、ラバーシートの端部が円弧溝から離脱することを防止できる。
第9の発明では、コイルスプリングの末端部が位置するラバーシートの端部は、スプリングガイドの円弧溝の深さが浅くなる端部に位置しているため、コイルスプリングの末端部から荷重を受けたときにラバーシートの端部は円弧溝から離脱しやすくなる。しかしながら、ラバーシートの変形規制部とスプリングガイドの円弧溝とが当接しこれらの間には摩擦抵抗が生じるため、ラバーシート10の端部が円弧溝から離脱することを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コイルスプリングを安定して支持できるラバーシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンション装置の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るサスペンション装置の部分斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの着座面の深さの変化を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るラバーシートの斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係るラバーシートの平面図である。
図8】本発明の実施形態に係るラバーシートがスプリングガイドに取り付けられた状態を示す図である。
図9図8のI−I線に沿う部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係るラバーシート10、及びサスペンション装置100について説明する。
【0025】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るラバーシート10が組み込まれるサスペンション装置100について説明する。
【0026】
サスペンション装置100は、自動車(図示せず)に取り付けられ、車輪(図示せず)を位置決めするとともに減衰力を発生させて車両走行中に路面から受ける衝撃や振動を吸収して車体を安定的に懸架する装置である。
【0027】
サスペンション装置100は、車体と車輪との間に設けられるストラット式のショックアブソーバ1と、ショックアブソーバ1のピストンロッド1aの先端に取り付けられるアッパーマウント2と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周面に取り付けられるスプリングガイド3と、アッパーマウント2とスプリングガイド3との間に設けられるコイルスプリング4と、ピストンロッド1aに嵌装されショックアブソーバ1の縮み側のストロークを規制するバンプストッパ5と、シリンダ1bのピストンロッド1a側の端部に嵌装されるキャップ部材としてのバンプキャップ6と、ピストンロッド1aを保護する筒状のカバー部材としてのダストブーツ7と、を備える。
【0028】
シリンダ1bのピストンロッド1aと反対側の端部には、車輪を保持するハブキャリア(図示せず)とショックアブソーバ1とを連結するためのブラケット1cが設けられる。ショックアブソーバ1は、アッパーマウント2により車体と連結されるとともに、ブラケット1cによりハブキャリアと連結されて車両に組み付けられる。このように構成されたショックアブソーバ1は、ピストンロッド1aがシリンダ1bに対して軸方向(図1の上下方向)に移動したときに、減衰力が発生するように構成されている。サスペンション装置100は、このショックアブソーバ1の減衰力によって車体の振動を素早く減衰させる。
【0029】
コイルスプリング4は、アッパーマウント2とスプリングガイド3との間に圧縮状態で挟持され、ショックアブソーバ1を伸長方向に付勢する。アッパーマウント2とコイルスプリング4との間にはアッパー側ラバーシート8が設けられる。これにより、アッパーマウント2とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。スプリングガイド3とコイルスプリング4との間には円弧状のラバーシート10が設けられる。これにより、スプリングガイド3とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。
【0030】
次に、図1図4を参照して、スプリングガイド3について説明する。
【0031】
スプリングガイド3は、コイルスプリング4を支持するためにシリンダ1bの外周に固定される金属製の皿状の部材である。スプリングガイド3は、シリンダ1bを挿入するための開口部30と、アッパーマウント2側に突出し開口部30を囲むように形成される突出部31と、突出部31を囲むように形成されラバーシート10が嵌合する円弧溝38を有する円環状の取付部32と、取付部32の径方向外側に形成される円環状の外縁部33と、外縁部33からアッパーマウント2側に向かって延び、外縁部33を囲むように形成された円環状の支持壁34と、を備える。
【0032】
図1及び図4に示すように、スプリングガイド3をシリンダ1bの外周に固定したときに、開口部30は、スプリングガイド3の中心から車体側に偏心した位置になるように形成される。スプリングガイド3は、開口部30がシリンダ1bの外周に溶接固定されることで、シリンダ1bの外周に固定される。開口部30には、複数の切欠き30aが設けられる。切欠き30aは、スプリングガイド3に水などが溜まった際に水抜きとして機能する。
【0033】
図1及び図3に示すように、突出部31は、アッパーマウント2側(図1における上側)に突出するように形成される。突出部31は、スプリングガイド3をシリンダ1bの外周に取り付けた際に、周方向の両端部が車体側に位置するような円弧状に形成される。
【0034】
取付部32は、外縁部33に対して窪むようにして円環状に形成される。取付部32は、ラバーシート10が嵌合する円弧溝38を備える。円弧溝38は、突出部31及び外縁部33の間で円弧状の溝として形成される。図4図5に示すように、円弧溝38は、溝の深さが車輪側に位置する円弧の中央付近(b位置)で最も深く、車体側、すなわち円弧の周方向両端部(a位置及びc位置)に向かうにつれて溝の深さが浅くなるように形成される。
【0035】
円弧溝38には、複数の係合孔39が形成される。係合孔39には、ラバーシート10の底面に形成された図示しない突起が係合する。このラバーシート10の突起と係合孔39とが係合することで、スプリングガイド3に対するラバーシート10のずれが防止される。
【0036】
円弧溝38は、外周に起立して形成された二つの第一係止片35、及び第二係止片36をさらに備える。二つの第一係止片35のそれぞれは、円弧溝38に円弧状のラバーシート10が嵌合した状態で、ラバーシート10の周方向端部付近と対向する位置に形成される。第二係止片36は、円弧溝38に円弧状のラバーシート10が嵌合した状態で、ラバーシート10の周方向中央部付近と対向する位置に形成される。これにより、円弧溝38にラバーシート10が嵌合した状態では、コイルスプリング4の伸縮にともなってラバーシート10に径方向外側の荷重が作用しても、ラバーシート10の外周は第一係止片35及び第二係止片36に当接して径方向外側への移動が規制される。このように、第一係止片35及び第二係止片36によってラバーシート10の径方向外側へのずれが防止される。
【0037】
突出部31、取付部32及び外縁部33には、複数の貫通孔37が形成される。貫通孔37は、軽量化のための肉抜きとして機能するとともに、スプリングガイド3に水などが溜まった際に水抜き孔としても機能する。
【0038】
次に、図2図6図9を参照して、ラバーシート10について説明する。
【0039】
ラバーシート10は、ゴムなどの弾性を有する材料によって形成される。ラバーシート10は、円弧状に形成されスプリングガイド3の円弧溝38に嵌合する本体部11と、本体部11に溝状に形成されコイルスプリング4が着座する円弧状の着座部12と、本体部11の周方向一端部に形成され、コイルスプリング4の末端部4aの端面と当接してコイルスプリング4の移動を規制するストッパ部13と、コイルスプリング4の末端部4aを支持する本体部11の端部11aにおいて、本体部11の外周から径方向外側に突出するように形成された変形規制部14と、を備える。
【0040】
図9に示すように、着座部12は、その断面がコイルスプリング4の断面形状に沿うように湾曲して形成される。
【0041】
ラバーシート10は、変形規制部14が形成されていない部分では、本体部11がスプリングガイド3の円弧溝38に嵌合し、変形規制部14が形成されている部分では、本体部11及び変形規制部14がスプリングガイド3の円弧溝38に嵌合する。ラバーシート10とスプリングガイド3の円弧溝38が嵌合した状態では、ラバーシート10の本体部11及び変形規制部14は、円弧溝38の底面と当接する。なお、本体部11のみを円弧溝38に嵌合させ、変形規制部14を円弧溝38に嵌合させずに外縁部33上に当接させるような形状としてもよい。
【0042】
ラバーシート10は、内周及び外周に、内周側リップ15及び外周側リップ16をさらに備える。内周側リップ15は、本体部11の内周側の側面から径方向内側に突出するように形成される。外周側リップ16は、本体部11の外周側の側面及び変形規制部14の外周から突出するように形成される。ラバーシート10がスプリングガイド3の円弧溝38に嵌合した状態では、内周側リップ15は突出部31上を覆うように当接し、外周側リップ16は外縁部33上を覆うように当接する。これにより、コイルスプリング4が伸縮してラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との間に隙間が生じても、内周側リップ15及び外周側リップ16はそれぞれスプリングガイド3の突出部31及び外縁部33上を覆うように当接しているので、ラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との間に異物などが侵入することを防止できる。なお、内周側リップ15及び外周側リップ16を突出部31及び外縁部33側に傾斜させて形成することで、内周側リップ15及び外周側リップ16は突出部31及び外縁部33に押し付けられて当接する。これにより、ラバーシート10の本体部11が変形しても、内周側リップ15と突出部31の間、及び外周側リップ16と外縁部33の間に隙間が生じにくくなり、ラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との間に異物などが侵入することをより一層防止できる。
【0043】
外周側リップ16には、スプリングガイド3の第一係止片35と対向する位置に切欠き18が形成される。また、外周側リップ16には、スプリングガイド3の第二係止片36と対向する位置に、第二係止片36を覆うような覆い部17が外周側リップ16と一体的に形成される。覆い部17を設けることで、第二係止片36を伝ってラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との間に異物などが侵入することを防止できる。なお、切欠き18に代えて、外周側リップ16の第一係止片35と対向する位置に、第一係止片35を覆うような覆い部を設けてもよい。
【0044】
ラバーシート10は、円弧溝38と当接する面に形成された図示しない突起とスプリングガイド3の係合孔39とが係合し、切欠き18及び覆い部17のそれぞれがスプリングガイド3の第一係止片35及び第二係止片36と係合することによってスプリングガイド3に対する位置決めがされ、円弧溝38に嵌合される。
【0045】
一般的にサスペンション装置では、車体側と比較して車輪側に大きな荷重が作用する。このような大きな荷重を受ける位置にコイルスプリング4の末端部4aを配置すると、コイルスプリング4の末端部4aを支持するラバーシート10の端部11aやスプリングガイド3に局所的に大きな荷重が作用してしまう。このため、サスペンション装置100では、コイルスプリング4の末端部4a以外の部分で上述のような大きな荷重を受けるように、末端部4aが車輪側から離れた位置(車体の内側)に配置される(図2参照)。このようにコイルスプリング4を配置することにより、車輪側ではコイルスプリング4の線材の長い領域(末端部4a以外の部分)で大きな荷重を受けることができ、ラバーシート10やスプリングガイド3には荷重が分散されて作用する。したがって、ラバーシート10やスプリングガイド3には、局所的に大きな荷重が作用することはないので、ラバーシート10やスプリングガイド3が損傷することを防止できる。さらに、末端部4aにおいては、コイルスプリング4の末端部4aを介してラバーシート10の端部11aに作用する荷重が低減されるので、ラバーシート10の端部11aの変形が起こりにくくなる。
【0046】
次に、ラバーシート10の変形規制部14の作用について説明する。
【0047】
車両が走行中に路面の凹凸などによって車輪が上下に振動すると、サスペンション装置100のショックアブソーバ1及びコイルスプリング4は、車輪の上下動に伴って伸縮する。コイルスプリング4が収縮するときには、コイルスプリング4の末端部4aに径方向外側に向かって大きな荷重が作用する。コイルスプリング4の末端部4aに大きな荷重が作用すると、ラバーシート10の端部11aには、ラバーシート10を径方向外側に向かって捻じるように変形させようとする応力が作用する。変形規制部14は、本体部11の外周から径方向外側に突出するように形成されてスプリングガイド3の円弧溝38に当接している。これにより、変形規制部14は、コイルスプリング4からの荷重に対抗して、ラバーシート10の本体部11が径方向外側に捻じれるように変形することを規制する。
【0048】
スプリングガイド3は、上述のように、開口部30がスプリングガイド3の中心から車体側に偏心した位置になるように形成されている。また、図1に示すように、スプリングガイド3は、車体側が車輪側に比べて低くなるように取り付けられるので、車体側に水抜き用の切欠き30aを設ける必要がある。このように、スプリングガイド3の取付部32は車体側において径方向の幅を確保することが難しく、円弧溝38の深さを深くすることが容易にはできない。また、上述のように、コイルスプリング4の末端部4aは、車体側(車体の内側)に配置されるため、ラバーシート10が円弧溝38に嵌合した状態では、コイルスプリング4の末端部4aを支持するラバーシート10の周方向の端部11aは、スプリングガイド3の円弧溝38の溝の深さが浅くなる端部(図4のc位置)付近に位置することになる。このように、ラバーシート10の端部11aが円弧溝38の深さが浅い位置に位置すると、円弧溝38の側壁によってラバーシート10の端部11aを支持することができず、端部11aは径方向外側に向かって捻じれるように変形しやすくなる。しかしながら、ラバーシート10は、上述のように、変形規制部14が本体部11の外周から径方向外側に突出するように形成されスプリングガイド3の円弧溝38に当接するので、コイルスプリング4からの荷重に対抗して、ラバーシート10の本体部11が径方向外側に捻じれるように変形することを規制する。
【0049】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0050】
ラバーシート10には、本体部11の端部11aにおいて、本体部11の外周から径方向外側に突出するように形成された変形規制部14が設けられる。したがって、コイルスプリング4の収縮時に、コイルスプリング4の末端部4aに大きな荷重が作用しても、ラバーシート10の端部11aは、変形規制部14によって径方向外側に捻じれるように変形することが規制される。これにより、コイルスプリング4がラバーシート10から外れてしまうおそれがなく、ラバーシート10によってコイルスプリング4を安定して支持することができる。
【0051】
また、コイルスプリング4の伸縮にともなってラバーシート10に径方向の荷重が作用すると、ラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との間に摩擦抵抗が生じる。さらに、ラバーシート10の変形規制部14がスプリングガイド3の円弧溝38と当接しているため、ラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との摩擦抵抗に加えて、変形規制部14と円弧溝38との間にも摩擦抵抗が生じることになる。したがって、ラバーシート10に径方向の荷重が作用しても、ラバーシート10がスプリングガイド3上でずれることをより一層防止できる。
【0052】
ラバーシート10は、その周方向の端部11aがスプリングガイド3の円弧溝38の溝の深さが浅くなる端部(c位置)に位置し、かつ、変形規制部14が円弧溝38に当接するようにして円弧溝38に嵌合される。このように嵌合されることで、ラバーシート10の端部11aは、円弧溝38の深さが浅くなる端部に位置することになる。このような構成では、コイルスプリング4の末端部4aから荷重を受けたときにラバーシート10の端部は、円弧溝38から離脱しやすくなる。しかしながら、上述のように、ラバーシート10の変形規制部14がスプリングガイド3の円弧溝38に当接し、これらの間には摩擦抵抗が生じるため、ラバーシート10の端部11aがずれて円弧溝38から離脱することを防止できる。
【0053】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0054】
車体を弾性支持するコイルスプリング4とコイルスプリング4の下端部を支持するスプリングガイド3との間に設けられるラバーシート10であって、ラバーシート10は、円弧状または円環状に形成された本体部11と、本体部11に溝状に形成されコイルスプリング4が着座する着座部12と、本体部11におけるコイルスプリング4の末端部4aが着座する位置において、本体部11の外周から径方向外側に突出するように形成され、本体部11の変形を規制する変形規制部14と、を備えることを特徴とする。
【0055】
この構成では、コイルスプリング4が収縮して末端部4aに径方向外側に向かう荷重が作用しても、ラバーシート10のコイルスプリング4の末端部4aが着座する端部11aは、変形規制部14によって径方向外側に捻じれるように変形することが規制される。これにより、コイルスプリング4がラバーシート10から外れてしまうおそれがなく、ラバーシート10によってコイルスプリング4を安定して支持することができる。
【0056】
また、変形規制部14はスプリングガイド3に当接するように形成されることを特徴とする。
【0057】
この構成では、ラバーシート10の本体部11とスプリングガイド3の円弧溝38との摩擦抵抗に加えて、変形規制部14とスプリングガイド3の円弧溝38との間に摩擦抵抗が生じるため、ラバーシート10がスプリングガイド3上でずれることをより防止できる。
【0058】
また、ラバーシート10は円弧形状であって、その周方向の端部11aに変形規制部14が形成されることを特徴とする。
【0059】
この構成では、ラバーシート10は円弧形状であって、その周方向の端部11aに変形規制部14が形成される。ラバーシート10は円弧形状であるため、その端部11aは変形しやすい。このような構成であっても、ラバーシート10の周方向の端部11aに変形規制部14が形成されるので、ラバーシート10の変形を効果的に規制することができる。
【0060】
また、ラバーシート10は、本体部11の内周及び外周の側面からそれぞれ径方向に向かって突出するように形成され、スプリングガイド3に当接して本体部11とスプリングガイド3との間への異物の侵入を防止するリップ(内周側リップ15及び外周側リップ16)をさらに備えることを特徴とする。
【0061】
この構成では、ラバーシート10とスプリングガイド3との間に隙間が生じても、リップ(内周側リップ15及び外周側リップ16)がスプリングガイド3に当接しているので、本体部11とスプリングガイド3との間への異物の侵入を防止することができる。
【0062】
また、サスペンション装置100が、ラバーシート10と、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバ1と、ショックアブソーバ1のロッド(ピストンロッド1a)の先端に取り付けられるアッパーマウント2と、ショックアブソーバ1の外周面に取り付けられるスプリングガイド3と、アッパーマウント2とスプリングガイド3との間に設けられるコイルスプリング4と、を備えることを特徴とする。
【0063】
この構成では、ラバーシート10をサスペンション装置100に適用することができる。
【0064】
また、コイルスプリング4の末端部4aは、車体の内側に位置することを特徴とする。
【0065】
この構成では、コイルスプリング4の末端部4aは、最も荷重が作用する車輪側から離れた位置となる。したがって、コイルスプリング4の末端部4aを介してラバーシート10の端部11aに作用する荷重を低減することができる。
【0066】
また、スプリングガイド3には、周方向の端部に向かって深さが浅くなる円弧溝38が形成され、ラバーシート10は、円弧形状であって、その周方向の端部がスプリングガイド3の円弧溝38の端部に位置し、かつ、変形規制部14が円弧溝38に当接するようにして円弧溝38に嵌合され、コイルスプリング4は、その末端部4aがラバーシート10の端部11aに位置するようにラバーシート10に支持されることを特徴とする。
【0067】
この構成では、コイルスプリング4の末端部4aが位置するラバーシート10の周方向の端部11aは、円弧溝38の深さが浅くなる端部に位置しているため、コイルスプリング4の末端部4aから荷重を受けたときにずれて円弧溝38から離脱しやすくなる。しかしながら、ラバーシート10の変形規制部14がスプリングガイド3の円弧溝38に当接しこれらの間には摩擦抵抗が生じるため、ラバーシート10の端部11aがずれて円弧溝38から離脱することを防止できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。
【0069】
例えば、ラバーシート10は、円環状であってもよい。また、変形規制部14は、円弧溝38に当接可能であれば円弧溝38との間に一定の隙間を設けてもよい。この場合には、ラバーシート10の変形をある程度許容することになる。さらに、円弧溝38を、円環状の溝として構成してもよい。また、変形規制部14に補強材などを埋設してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1・・・ショックアブソーバ、1a・・・ピストンロッド(ロッド)、2・・・アッパーマウント、3・・・スプリングガイド、4・・・コイルスプリング、4a・・・末端部、10・・・ラバーシート、11・・・本体部、11a・・・端部、12・・・着座部、13・・・ストッパ部、14・・・変形規制部、15・・・内周側リップ、16・・・外周側リップ、30・・・開口部、32・・・取付部、33・・・外縁部、35・・・第一係止片、36・・・第二係止片、38・・・円弧溝、100・・・サスペンション装置
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