特許第6463274号(P6463274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463274
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】改良された締結具
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20190121BHJP
   C08L 71/08 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20190121BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20190121BHJP
   F16B 39/24 20060101ALI20190121BHJP
   F16B 21/12 20060101ALI20190121BHJP
   F16B 21/18 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   F16B35/00 N
   C08L71/08
   C08K3/28
   C08L101/00
   C08K3/38
   C08K7/14
   F16B37/00 C
   F16B35/00 C
   F16B39/24 G
   F16B21/12 Z
   F16B21/18 F
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-548498(P2015-548498)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-509163(P2016-509163A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2013077179
(87)【国際公開番号】WO2014096059
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】61/740,328
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13154980.0
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エル−ヒブリ, モハマド ジャマール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, デーヴィッド ビー.
【審査官】 内山 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−069309(JP,A)
【文献】 特表2012−522195(JP,A)
【文献】 特開2000−141416(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0110901(US,A1)
【文献】 特表2011−503443(JP,A)
【文献】 特開2002−130313(JP,A)
【文献】 特開昭60−238357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
C08K 3/28
C08K 3/38
C08K 7/14
C08L 71/08
C08L 101/00
F16B 21/12
F16B 21/18
F16B 37/00
F16B 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンポリマー[(PAEK)ポリマー]と、
(ii)窒化アルミニウム、窒化アンチモン、窒化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化銅、窒化ガリウム、二窒化三ゲルマニウム、四窒化三ゲルマニウム、窒化ハフニウム、FeNおよびFeNまたはFeのような窒化鉄、窒化水銀、窒化ニオブ、窒化ケイ素、窒化タンタル、窒化チタン、二窒化タングステン、窒化バナジウム、窒化亜鉛および窒化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの窒化物(NI)と
を含むポリマー組成物[以下、組成物(C)]を含み、
ボルト、ナット、ねじ、頭のない止めねじ、スクリベット、ねじ付きスタッド、ねじ付きブッシング、ピン、止め輪、リベット、ブラケットおよび締め付けワッシャーからなる群から選択される、締結具。
【請求項2】
(PAEK)ポリマーの繰り返し単位の50モル%超が、以下の式(J−A)〜(J−O):
(式中:
− 互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
− j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数である)
のものから選択される繰り返し単位(RPAEK)である、請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記(PAEK)ポリマーの繰り返し単位の50モル%超が、以下の式(J’−A)〜(J’−O):
のものから選択される繰り返し単位(RPAEK)である、請求項1または2に記載の締結具。
【請求項4】
前記窒化物(NI)が、窒化アンチモン、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化銅、窒化ガリウム、二窒化三ゲルマニウム、四窒化三ゲルマニウム、窒化鉄、窒化水銀、窒化ニオブ、窒化ケイ素、二窒化タングステン、窒化バナジウムおよび窒化亜鉛からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項5】
前記窒化物(NI)が窒化ホウ素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項6】
前記組成物(C)中に存在する前記窒化物(NI)の量が、前記組成物(C)の総重量を基準として、最大50.0重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項7】
前記組成物(C)が、前記(PAEK)ポリマーとは異なる、少なくとも1つの他の熱可塑性ポリマー(ポリマーT)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項8】
前記組成物(C)が、添加剤;安定剤;酸化防止剤;滑剤;加工助剤;可塑剤;流動性改良剤;難燃剤;顔料;染料;着色剤;帯電防止剤;増量剤;金属不活性化剤;導電性添加剤からなる群から選択される1つもしくは複数の成分[成分(I)]をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項9】
前記組成物(C)が、少なくとも1つの補強充填材をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項10】
前記補強充填材が、ウォラストナイトおよびガラス繊維から選択される、請求項9に記載の締結具。
【請求項11】
前記補強充填材が炭素繊維である、請求項9に記載の締結具。
【請求項12】
前記組成物(C)からなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項13】
前記組成物(C)の射出成形および固化の工程を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の締結具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年12月20日出願の米国仮特許出願第61/740328号に対するおよび2013年2月12日出願の欧州特許出願第13154980.0号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー組成物で製造された締結具であって、前記ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー組成物が改善された機械的特性を有する、特に剛性と延性との優れたバランスを有することで特徴付けられ、前記締結具がより高い引張および曲げ弾性率ならびに強度、そしてさらに非常に良好な美学的特性、とりわけ改善されたより明るい色を有する締結具に関する。
【背景技術】
【0003】
ナット、ねじ、クリップ、リベットおよび多くの他の多様体などの、多様な設計の締結具が、特に包含される用途に応じて利用可能になっている。それらの共通の特徴は、それらと関連する特に厳しい要件にある。
【0004】
実際に、それらの耐用期間中に、とりわけ、ねじなしおよびねじ付き締結具などの、いかなる締結具もとりわけ、厳しい機械的条件にさらされ:それらは多くの場合伸ばされ、ねじられ、曲げられる。締結具はさらに一般に、振動、熱サイクルおよび/または化学薬品攻撃などの、様々な攻撃的な環境にさらされ、それは、時間と共にそれらの機械的性能を変え、最悪のシナリオでは、締結具が文字通り「失われる」ことを引き起こし得る。
【0005】
特に重要なクラスの締結具は、追加の特定の問題に直面するねじ付き締結具である。ねじ付き締結具が締め付けられる場合に、エネルギーがそれらに注ぎ込まれ、解放された後に、このエネルギーは摩擦拘束によってそれらの中に保持される。典型的には、これらのものは、締結具ねじ山に大体において集中し、ねじ山はさらに多くの場合、それらの細かさの結果として締結具の最も繊細な部分を表す。上に列挙されたような攻撃的な環境因子は、ねじ付き締結具がすべてのそれらのプレロードを失い、文字通り失われること(「緩み」問題)を引き起こし得る。ねじ山外れ(ねじ付き締結具が過剰に締め付けられる場合に起こる別の障害)は、緩みにいくらか関連し;ねじ山外れは、締結具ねじ山の変形(変化)で特徴付けられ、典型的には性能の低下をもたらす。
【0006】
ある種のねじなしおよびねじ付き締結具などの、ある種の締結具は、複雑な設計を持ち得るし、適切な材料からそれらを造形する/機械加工するのは、困難な事柄であり得る。ねじ付き締結具の場合には、微細なおよび規則正しいねじ山を形成するのは、特に楽ではないことが分かっている。
【0007】
材料選択が締結具にとって極めて重要である。
【0008】
しかし、金属締結具は、ある程度の数の不利点を提示する。金属締結具は重く、それは、とりわけ航空機用途でなどの、重量が関心事である用途では不利である。金属締結具は一般にまた、腐食する傾向があり、導電性である。金属から複雑な形状を機械加工するのは、ならびに微細なおよび規則正しいねじ山を形成するのはまた、困難な事柄である。
【0009】
したがって、上にリストされたような、いくつかの理由で、ポリマー材料は有用な金属代替品である。
【0010】
しかし、前記締結具が、締結具へ加工するのが容易であるポリマー材料から製造されること、ならびに前記ポリマー材料が、とりわけ剛性と延性との優れたバランス、高い伸び強度、高い曲げ強度および、最後に重要な点として、材料の固有のせん断強度に関係する高いねじれ強度(またはトルク)を特に有する、必要とされるレベルの機械的特性を提供できることが重要である。実際に、ねじ付き締結具を含むが、それに限定されない、多くの締結具について、耐荷力は典型的には、構成材料のせん断またはねじれ強度の関数である。
【0011】
炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)組成物が、とりわけ、航空宇宙用途においてなどの多種多様な用途においてアルミニウム、真ちゅう、鋼およびステンレス鋼締結具に取って代わるべく既に使用されていることは公知である。
【0012】
とりわけ射出成形または押出などの、異なる加工技術を用いる、締結具の製造において、前記PAEKポリマーの結晶化速度が重要な役割を果たしていることは公知である。わずかにより遅い結晶化速度は、前記締結具の小さい部分において特に、とりわけ外観および色非一様性などの非一様性欠陥と、ねじ山付きねじが例えば壁の近くでより非晶質で、中心近くでより結晶質であろうスキン−コア変動効果とを例えば有する、締結具の製造を既にもたらし得る。これは、全体として成形品中に制限せん断強度を有するねじの末梢区域をもたらす。
【0013】
ポリマー組成物で作られた締結具であって、前記締結具が、剛性と延性との優れたバランス、高いトルク、高い実際の靱性(高い引張伸び)、引張中のおよび衝撃荷重下での高い伸長性能、高い強度、高い耐化学薬品性、軽量、ならびに一様な結晶性を特徴とし、関心事の部品が複雑な形状および/または非常に薄い部分を有する場合(例えば、ねじ山、または小さいオリフィスの押出機が用いられなければならない場合)を含めて、押出または射出成形などの、溶融加工技術によって容易に形成され得る締結具が依然として引き続き必要とされている。最後に重要な点として、ポリマー材料は、現在および将来世代の航空機の軽量およびエネルギー効率が決定的に重要であるために、できるだけ比重が低いことが必要である。これらの場合には、比較的高いローディング(すなわち、20%以上)のガラス強化材入りガラス繊維強化樹脂の使用は、これらの強化材が相当する無充填ポリマーと比べて組成物の密度を著しく増加させるので、単位重量および流動性の観点から不利になり得る。炭素繊維は、ガラス繊維と比べてそのより低い密度のためにこの効果を軽減することができるが、他方では炭素繊維強化プラスチックは、存在するかみ合いアルミニウム構造体の電解腐食をもたらし得る導電性問題を有する。これは、炭素繊維強化PEEKの実用性の範囲を制限する。ガラス繊維および炭素繊維で強化されたPEEKのような強化プラスチックは、例えば、繊維がどのように配向しているか、および完成部品がどのように製造されるかに依存して、組成物が部品の様々な場所にわたって一様でない特性を有するという事実に悩まされる。強度および剛性特性は、繊維の流れの方向または繊維の整列の方向に非常に高く、はるかにより弱い特性が、これらの繊維の配向に対して垂直に実現される。今述べられた強い異方性はまた、部品の異なる部分または寸法が、当該特定方向での繊維整列の状態に依存して異なって収縮する可能性があるので、射出成形部品に反り問題をもたらす。それ故、この種の高い異方性特徴を、航空機および航空宇宙用途向けに用いられる締結具に使用される組成物に付与しない強化材または充填材が当該技術分野において必要とされている。
【0014】
本発明の詳細な説明のために、添付の図面についてここで言及される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】フックボルト、ラウンドベントの例を示し;A、L、R、C、TおよびDは、前記フックボルトの特有の寸法である。
図2】本発明に従った全ねじボルトの例を示す。
図3】本発明に従った植え込みボルトの例を示す。
図4】本発明に従った植え込みボルトの例を示す。
図5】本発明に従った内および外ねじ付きブッシングの例を示す。
図6】ヨークをロッドエンドに接合する本発明に従ったクレビスピンの例を示す。
図7】Aに:新コッタピン、B:取り付けされたコッタピン、C:スプリングピン、D:コッタピンの横断面(伝統的な設計)を示す。
図8】本発明に従ったテーパーピンの例を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上に詳述されたニーズに取り組むものであり、
(i)少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンポリマー[(PAEK)ポリマー]と、
(ii)「Handbook of Chemistry and Physics」、CRC Press、第64版、B−65〜B−158頁に定義される、1.3〜2.5の電気陰性度(ε)を有する元素の少なくとも1つの窒化物(NI)と
を含むポリマー組成物[本明細書では以下、組成物(C)]を含む締結具に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
締結具(F)
締結具(F)を説明するために本明細書で用いられるような用語はすべて、当業者に十分よく知られており、それらの一般的な意味のもとで理解されるべきである。
【0018】
締結具(F)は一般に、単一のまたは複数の構成要素の釣り合いを保持する、接合する、結び付ける、組み立てるまたは維持するように特に設計された機械デバイスである。結果として生じるアセンブリは、メカニズムまたは構造の第一または第二構成要素として動的にまたは静的に機能し得る。意図される用途に基づき、締結具(F)は、様々な程度のビルトイン精密さおよびエンジニアリング能力を受け取り、計画された、あらかじめ決められた環境条件下で十分な、健全なサービスを確実にし得る。
【0019】
締結具(F)の総重量を基準とする、組成物(C)の重量は通常、10%よりも上、好ましくは50%よりも上、より好ましくは90%よりも上である。さらにより好ましくは、締結具(F)は、組成物(C)から本質的になる。最も好ましくは、締結具(F)は組成物(C)からなる。
【0020】
締結具(F)は、1つの部品からなってもよい、すなわち、それは、単一成分デバイスである。そのとき、単一部品は、組成物(C)からなる。あるいは、締結具(F)は、いくつかの部品からなってもよい。この場合であれば、締結具(F)の一つの部品かいくつかの部品かのどちらかが組成物(C)からなってもよい。締結具(F)のいくつかの部品が組成物(C)からなる場合には、それらのそれぞれは、まったく同じ組成物(C)からなってもよいし;あるいは、それらの少なくとも2つは、本発明に従った異なる組成物(C)からなってもよい。
【0021】
締結具(F)は、ねじ付き締結具、すなわち、ねじ山を含有する締結具であり得る。
【0022】
ねじ山は典型的には突起部(すなわち、隆起したラインもしくはストリップ)またはねじ付き締結具の表面の少なくとも一部上に存在する溝もしくは畝である。ねじ山は、スパイラル、らせん形またはパラレルなどの、異なる形態を有することができる。ねじ山はとりわけ、ある種のねじ、ボルトおよびナットの外周周りに存在することができる。
【0023】
有利には、締結具(F)に含有されるねじ山の少なくとも一部は、組成物(C)から構成される。好ましくは、締結具(F)に含有されるねじ山は本質的にすべて、組成物(C)から構成される。より好ましくは、締結具(F)に含有されるねじ山はすべて、組成物(C)から構成される。
【0024】
本発明に従ったねじ付き締結具のねじ付き表面は、そのねじ山が本質的にすべて組成物(C)からなる場合に特に、前記ねじ付き締結具によって創り出される全体表面の1%よりも上、2%よりも上、5%よりも上、10%よりも上、20%よりも上、30%よりも上、40%よりも上、50%よりも上、60%よりも上、70%よりも上、80%よりも上、90%よりも上、95%よりも上、99%よりも上または約100%を表すことができる。
【0025】
締結具(F)は、外ねじ付きであり得る、すなわち、それは、ボルトおよびねじ上などの、シリンダーまたは他のボリュームの外側の少なくとも一部上に形成されたねじ山を有することができる。本発明に従った外ねじ付き締結具のねじ付き表面は、そのねじ山が本質的にすべて組成物(C)からなる場合に特に、前記外ねじ付き締結具によって創り出される外側表面の1%よりも上、2%よりも上、5%よりも上、10%よりも上、20%よりも上、30%よりも上、40%よりも上、50%よりも上、60%よりも上、70%よりも上、80%よりも上、90%よりも上、95%よりも上、99%よりも上または約100%を表すことができる。
【0026】
締結具(F)は、内ねじ付きであり得る、すなわち、それは、ナット上などの、シリンダーまたは他のボリュームの内側の少なくとも一部上に形成されたねじ山を有することができる。本発明に従った内ねじ付き締結具のねじ付き表面は、そのねじ山が本質的にすべて組成物(C)からなる場合に特に、前記内ねじ付き締結具によって創り出される内側表面の1%よりも上、2%よりも上、5%よりも上、10%よりも上、20%よりも上、30%よりも上、40%よりも上、50%よりも上、60%よりも上、70%よりも上、80%よりも上、90%よりも上、95%よりも上、99%よりも上または約100%を表すことができる。
【0027】
締結具(F)は、内ねじ付きおよび外ねじ付きの両方であり得る、すなわち、それは、ある種の内および外ねじ付きブッシングなどの、シリンダーまたは他のボリュームの外側の少なくとも一部上に形成されたねじ山、および前記シリンダーまたは他のボリュームの内側の少なくとも一部上に形成されたねじ山を有することができる。
【0028】
一実施形態においては、締結具(F)は、ねじ付き締結具であり、傑出した結果は、ねじ付き締結具のねじ山が本質的にすべて、組成物(C)からなり、そしてねじ付き締結具のねじ付き表面がその全体表面の10%よりも上、好ましくは20%よりも上、より好ましくは50%よりも上である場合に得られる。
【0029】
本発明に従った共通タイプのねじ付き締結具としては、ボルト、ナット、ねじ、頭のない止めねじ、スクリベット、ねじ付きスタッドおよびねじ付きブッシングが挙げられる。
【0030】
締結具(F)は、ボルトであり得る。ボルトは典型的には、頭のある、外ねじ付き締結具である。ボルトは一般に、ナットとかみ合うように組立部品中の穴を通して挿入するために設計され、普通は当該ナットを回転させることによって締め付けられるかまたは解放されることを意図する。
【0031】
本発明に従ったある種のボルトは、それらの形状に関連して「ベントボルト」としての資格を与えられる。ベントボルトはとりわけ、「U」、「J」、「L」、またはアイボルトの形状にあってもよい。「U」形状のボルトは典型的には、それらの両端にねじ山を有するが、他の前述のベントボルトは典型的には、ただ1つの端にねじ山を有する。
【0032】
本発明に従った他のボルトは、
− 正方形であるそれらの頭の形状に関連して、四角ボルト;
− 六角形であるそれらの頭の形状に関連して、六角ボルト;
− 六角ボルトに似ているが基板とかみ合うワッシャー様の平らな表面を含有する、六角フランジボルト;
− 丸い頭を一端に典型的には有する、丸頭ボルト;それらの中で、丸頭ショートスクエア・ネックボルト、丸頭波型ネックボルト、丸頭フィンネックボルト、ステップボルト、皿頭ボルトおよびすり割付き皿頭ボルト、平皿頭エレベーターボルト、T頭ボルト、プラウボルトならびにトラックボルトがとりわけ著名であり得る。
図1の例示されたフックボルトにおけるように、フックまたはロープを受け取るように設計された輪になった頭を典型的には有する、アイボルト
である。
【0033】
締結具(F)は、ナットであり得る。ナットは典型的には、一定の関連位置に2つ以上の本体を締め付けるまたは保持する目的でボルトなどの外ねじ山、または雄ねじ山での使用を意図される、内ねじ山、または雌ねじ山を有する孔あきブロックである。
【0034】
本発明に従ったある種のナットは、フランジナットである。フランジナットは典型的には、統合された非回転ワッシャーとして働く幅広フランジを一端に有し;これは通常、固定されている部品にわたってナットの圧力を分配するのに役立ち、部品への損傷の機会を減らし、一様でない締め付け表面の結果として緩む可能性をより少なくする。フランジは一般に、型締め作用を提供するために鋸歯状にされる。
【0035】
本発明に従ったある種の他のナットは、カップリングナットである。カップリングナットは典型的には、初めから終わりまで同じ方向によりもむしろ、両側からタップして中間で出会う長いナットであり、それは、2つのねじ付きロッドの端と端とを連結するために用いることができる。
【0036】
本発明に従ったさらにある種の他のナットは、つまみナットとも呼ばれる、蝶ナットである。これらのものは典型的には、親指と人指し指とで回してこの力でしまる、翼のような突起のあるナットである。
【0037】
締結具(F)は、ねじであり得る。ねじは典型的には、頭のある外ねじ付き締結具である。それは通常、あらかじめ形成された雌ねじとかみ合うかまたはそれ自体のねじ山を形成するという、およびその頭にトルクを加えることによって締め付けられるかまたは解放されるという、組立部品中の穴の中へそれが挿入されるのを可能にする機能を有する。
【0038】
本発明に従ったある種のねじは、ソケットスクリューである。ソケットスクリューは典型的には、マッチする「スクリュードライバー先端」を必要とするトップに六角形、スプライン、または特別の穴を持ったスクリューキャップである。
【0039】
本発明に従ったある種の他のねじは、タッピングねじである。タッピングねじは、様々な材料におけるあらかじめ形成された穴中へ突っ込まれる場合にそれら自体のかみ合い雌ねじを「タップ」することができる。タッピングねじは典型的には、高強度、ワンピース、片側取り付けのねじ付き締結具である。それらは、それら自体のかみ合いねじ山を形成するかまたはカットすることができるので、使用中のそれらの緩みに対する抵抗を高める非常に良好なねじ山適合がある。本発明に従ったタッピングねじは、解体することができ、一般に再使用可能である。
【0040】
本発明に従ったさらに他のねじは、機械ねじである。機械ねじは典型的には、それらのシャフトの全体長さに沿ってねじ山を有し;それらはまた、皿頭穴に適合し、そしてねじ込まれる場合にねじ込まれつつある表面とぴったり重なる先細のトップを持ったねじと見なすことができる。
【0041】
本発明に従ったさらに他のねじは、つまみねじまたは蝶ねじ、すなわち、それらが親指と他の指で回すことができるように典型的には設計されるねじである。
【0042】
本発明に従ったさらに他のねじは、それらが典型的には、それだけではないにしても、木材において本質的に用いるのに好適な先のとがったシャンク、すり割り付きまたは穴付き頭、および比較的粗いピッチの鋭い先細のねじ山を有するという点において、「木ねじ」としての資格を与えられる。
【0043】
本発明に従ったさらに他のねじは、それらのとても小さいサイズを参考にしてミニチュアねじとしての資格を与えられる。前記ミニチュアねじの中に、とりわけ丸平頭、なべ頭、皿頭およびバインド頭を挙げることができる。
【0044】
少なくともねじがポリマー材料(M)を含むねじワッシャーアセンブリ(SEMS)はまた、本発明の部品を形成する。
【0045】
締結具(F)は、頭のない止めねじであり得る。典型的には頭のある上に定義されたような本発明に従ったねじとは対照的に、この頭のない止めねじは、突出した頭をまったく持たない。一般に、そのトップは、すり割り付きかソケットを備えているかのどちらかである。
【0046】
締結具(F)は、ねじ付きスタッドであり得る。ねじ付きスタッドは典型的には、コンクリートなどの、材料中へ突っ込まれる1つの先のとがった端を持った締め付けデバイスであり、他端はねじ付きであり、構造部材の取り付けのための表面の上に伸びる。
【0047】
本発明に従ったある種のねじ付きスタッドは、全ねじボルトである、すなわち、それらは、端から端までねじ付きであり、適用された2つのナットをフランジボルト締めするために多くの場合用いられる。図2は、本発明に従った汎用の全ねじボルトの例を示す。
【0048】
本発明に従った全ねじボルトの先端は一般に、平らであり、面取りされている。本発明に従った全ねじボルトはとりわけ、配管用途向けに用いることができ;そのとき、これらの用途向けに必要とされるように、これらのものは、すべての他のスタッドとは異なる長さ測定要件を有する、すなわち、それらの長さは第1ねじ山から第1ねじ山、締め出し点まで測定される。
【0049】
本発明に従ったある種の他のねじ付きスタッドは、植え込みボルトである。典型的な植え込みボルトは、ある種のクラス適合までねじ付きである植え込みと呼ばれる、短ねじ山を一端(この端は、ねじ穴中へねじ込まれるのに好適である)上に有し、一方他端またはナット端は別のクラス適合ありでねじ付きである。植え込みは、面取り先端を有するが、ナット端は、面取り先端か丸先かのどちらかを有してもよい。図3は、本発明に従った植え込みボルトの例を示す。
【0050】
本発明に従ったさらに他のねじ付きスタッドは、両ねじボルトである。両ねじボルトは典型的には、ナットを収容するための実質的に等しい長さかまたは等しい長さのねじ山を各端上に有し、ある種のクラス適合までねじ付きである。両端は互いに独立して、面取り先端または丸先を有してもよい。両ねじボルトは、両端からのトーチングが必要であるかまたは望ましいフランジボルト締め用途かまたは他の用途向けに有用である。図4は、本発明に従った両ねじボルトの例を示す。
【0051】
締結具(F)は、スクリベットであり得る。スクリベットは典型的には、少なくとも部分的にねじ付きのシャンクと頭とを含むねじ付き締結具であり;シャンクは、その全体表面上にねじ付きであり得る。本発明に従ったある種のスクリベットは、前記ねじ付きシャンクと前記頭とからなる。スクリベットは一般に、穴を通して挿入される。スクリベットは、平滑なスクリベット端を変形させて完成機械継ぎ手を創り出す印加力によって2つ以上の構成要素を組み立てるために有用である。
【0052】
締結具(F)は、ねじ付きブッシングであり得る。従ってブッシングは、それらが連結機能性に加えて絶食機能性を提供するように、内および/または外ねじ付きである。好ましくは、それらは、内および外ねじ付きである。本発明に従った内および外ねじ付きブッシングの例は、図5の六角形ブッシングである。
【0053】
本発明の特別な実施形態においては、締結具(F)は、プリベイリングトルクねじまたはプリベイリングトルクナットなどの、プリベイリングトルク締結具である。プリベイリングトルク締結具は、内蔵プリベイリングトルク特徴のために回転に対して摩擦耐性があるねじ付き締結具と定義することができ;特に、プリベイリングトルクねじは、内蔵プリベイリングトルク特徴により、そしてねじのアンダーヘッドベアリング面に対して創り出された圧縮荷重またはねじのシャンクにおいて創り出された引張荷重のためではなく回転に対して摩擦耐性がある外ねじ付き締結具と見なすことができる。本発明に従ったある種のプリベイリングトルク締結具は、それらのねじ付き長さの中に、滑剤などの、ポリマー材料(M)以外の融合物質のインサートが添加された、ポリマー材料(M)で作られた締結具である。表面仕上げ材および滑剤のために存在する摩擦の量に依存して、インサートの寸法特性は、性能要件を達成するために変わってもよい。
【0054】
別の実施形態においては、締結具(F)は、ねじなし締結具であり得る、すなわち、それは、ねじ山を含有しない。
【0055】
本発明に従ったねじなし締結具の共通のタイプとしては、ピン、止め輪、リベット、ブラケットおよび締め付けワッシャーが挙げられる。
【0056】
締結具(F)は、ピンであり得る。ピンは典型的には、細い、多くの場合真っ直ぐな、円筒形ねじなし締結具であり;それらは、2つ以上の機械部分の位置を固定するために好適である。
【0057】
本発明に従ったある種のピンは、クレビスピンである。クレビスピンは典型的には、クレビスをロッドに接合するために用いられる一端に頭、他端に穴を持った締結具である。クレビスは典型的には、穴がロッドに一端に形成されたかまたは取り付けられたヨークであり;図6は、ヨークをロッド端に接合する本発明に従ったクレビスピンの例を示す。第2ロッドのアイまたは穴が、ヨークにおける穴と一直線になっている場合、クレビスピンは、2つを接合するために挿入することができる。コッタピンを次に、クレビスピンの穴に挿入してそれを中に保持することができ、その上この締め付けは容易に取り外し可能である。この継ぎ手は、いくらかの柔軟性が必要とされる引張中のロッドのために用いられる。
【0058】
本発明に従ったある種の他のピンは、コッタピン(米国専門用語)である。コッタピンは典型的には、2つの部品を一緒に保持するという目的のためにスロットを通して挿入することができる2つの鋭くとがった先を持ったねじなし締結具である。コッタピンは伝統的に、半円形の横断面を有する。英国においては、用語「スプリットピン」が伝統的に、同じデバイスを記載するために用いられる。新しいコッタピン(図7Aを参照されたい)は、それが典型的にはスプリットシリンダー(図7D)であるように見えるように、その長さのほとんどに接触するその平らな内面を有する。いったん挿入されると、ピンの2端は、別々に曲げられ、それを所定の位置に固定する(図7B)。鋭くとがった先の冒頭の分離を容易にするために、コッタピンの1つの鋭くとがった先は多くの場合、他のものよりも目に見えて長く;穴中への容易な挿入のために、より長い鋭くとがった先は多くの場合、より短い鋭くとがった先の先端と重なるようにわずかに曲がっているかまたは斜めになっている。
【0059】
本発明に従ったさらに他のピンは、スプリングピンである。それらの形状からRピンとしても知られる、ヒッチピンとも呼ばれる、図7Cに示されるような、スプリングピンもまた、利用可能であり、それは、永久に曲がっているように設計されていない。この設計では、ピンの1つの部分が固定されるべきシャフトを通過するにすぎず、他の部分はシャフトの外側を包み込むように曲がっている(図7C)。
【0060】
本発明に従ったさらに他のピンは、テーパーピンである。テーパーピンは、一般に王冠付き端を持った、制御された直径、長さ、およびテーパーを有する頭のない、中実ピンである。これらの自己保持ピンは、一緒に部品を連結するために有用である。標準的なテーパーピンは、1/4インチ〜12インチ(0.6cm〜30cm)の直径テープを有し、ドリルで開けられたおよびリーマーで広げられた穴に突っ込まれて適合する。それらは、ハブまたはカラーをシャフトに連結するために用いられるときもある。テーパーピンは頻繁に、別の表面に対して一表面の位置を維持するために用いられる。テーパーピン設計の例は、図8に示される。
【0061】
本発明に従ったさらに他のピンは、ダボピンである。ダボピンは多くの場合、典型的には先のとがったまたは変形した端を有する。それらは、2つの隣接部品中へ穴中へ挿入することができ、一緒にそれらを保持する。それらはとりわけ、ほぞ穴−および−ほぞ継ぎ手を締め付けるために有用である。ダボピンは、ダボロッド、すなわち、中実の、円筒形ロッドを短い長さに切断することから得ることができる。
【0062】
本発明に従ったさらに他のピンは、直線ピンである。直線ピンは典型的には、両端が面取りされた状態の、接地されていない、直線の円筒形側面を有する。
【0063】
本発明に従ったさらに他のピンは、溝付きピンである。溝付きピンは、溝を持ったピンであり;溝付きピンは多くの場合、ピンの直径上に等間隔で3つの溝を有する。
【0064】
締結具(F)は、止め輪であり得る。止め輪は典型的には、中空の中心および開断面を持った、平らな、円形の、ねじなし締結具である。止め輪は、肩部を典型的には提供し、シャフト上へまたは内部溝を持った穴の内側に挿入することができる。
【0065】
締結具(F)は、リベットであり得る。リベットは典型的には、シャンクおよび頭を含むねじなし締結具であり;本発明に従ったある種のリベットは、前記シャンクおよび前記頭からなる。リベットは一般に、穴を通して挿入される。リベットシャンクは、リベットの他の側面上に置かれたマッチする頭へ成形することができる。リベットは、完成した機械継ぎ手を創り出すために平滑なリベット端を変形させる印加力によって2つ以上の構成要素を組み立てるために有用である。
【0066】
締結具(F)は、ブラケットであり得る。ブラケットは、とりわけシェルフ、ランプまたは任意の他の物体などの物体を保持するための角度が付いた支持体であって、前記角度が典型的には0〜90度であり、前記支持体が多くの場合壁などの垂直表面に取り付けられている支持体と定義することができる。
【0067】
締結具(F)は、ロックワッシャーなどの、締め付けワッシャーであり得る。ロックワッシャーは典型的には、圧力をかけることによる緩みを防ぐという目的のためにナットまたはねじの下部に置かれたワッシャーである。本発明に従ったロックワッシャーは有利には、圧力をかける際に役立つ、らせん形の構造を有する。スプリングワッシャーは、ロックワッシャーに似ている。
【0068】
ポリアリールエーテルケトンポリマー
本発明の文脈内で、「少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンポリマー[(PAEK)ポリマー]」という表現は、1つもしくは2つ以上の(PAEK)ポリマーを意味することを意図する。(PAEK)ポリマーの混合物を本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0069】
本文の残りにおいて、「(PAEK)ポリマー」という表現は、本発明の目的のためには、複数形および単数形での両方で、すなわち、本発明の組成物が1つもしくは2つ以上の(PAEK)ポリマーを含んでもよいと理解される。
【0070】
本発明の目的のためには、用語「ポリアリールエーテルケトン(PAEK)」は、繰り返し単位を含み、前記繰り返し単位の50モル%超が、Ar−C(O)−Ar’基を含む繰り返し単位(RPAEK)であり、互いに等しいかもしくは異なる、ArおよびAr’が芳香族基である、任意のポリマーを意味することを意図する。繰り返し単位(RPAEK)は一般に、以下の式(J−A)〜式(J−O):
(式中:
− 互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
− j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数である)
からなる群から選択される。
【0071】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部分は独立して、繰り返し単位においてR’とは異なる他の部分に対して1,2−、1,4−または1,3−結合を有していてもよい。好ましくは、前記フェニレン部分は、1,3−または1,4−結合を有し、より好ましくはそれらは、1,4−結合を有する。
【0072】
さらに、繰り返し単位(RPAEK)において、J’は、出現ごとにゼロである、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖における結合を可能にするもの以外の置換基をまったく持たない。
【0073】
好ましい繰り返し単位(RPAEK)はしたがって、以下の式(J’−A)〜(J’−O):
のものから選択される。
【0074】
上に詳述されたような、(PAEK)ポリマーにおいて、繰り返し単位の好ましくは60モル%超、より好ましくは80モル%超、さらにより好ましくは90モル%超が、上に詳述されたような、繰り返し単位(RPAEK)である。
【0075】
さらに、(PAEK)ポリマーの実質的にすべての繰り返し単位は、上に詳述されたような、繰り返し単位(RPAEK)であることが一般に好ましく;鎖欠陥、または非常に少量の他の単位が存在してもよく、これらの後者は(RPAEK)の特性を実質的に変性しないと理解される。
【0076】
(PAEK)ポリマーはとりわけ、ホモポリマー、ランダム、交互またはブロックコポリマーであってもよい。(PAEK)ポリマーがコポリマーである場合、それはとりわけ、(i)式(J−A)〜(J−O)から選択される少なくとも2つの異なる式の繰り返し単位(RPAEK)、または(ii)1つもしくは複数の式(J−A)〜(J−O)の繰り返し単位(RPAEK)および繰り返し単位(RPAEK)とは異なる繰り返し単位(R*PAEK)を含有してもよい。
【0077】
後で詳述されるように、(PAEK)ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトンポリマー[本明細書では以下、(PEEK)ポリマー]であってもよい。あるいは、(PAEK)ポリマーは、ポリエーテルケトンケトンポリマー[本明細書では以下、(PEKK)ポリマー]、ポリエーテルケトンポリマー[本明細書では以下、(PEK)ポリマー]、ポリエーテルエーテルケトンケトンポリマー[本明細書では以下、(PEEKK)ポリマー]、またはポリエーテルケトンエーテルケトンケトンポリマー[本明細書では以下、(PEKEKK)ポリマー]であってもよい。
【0078】
(PAEK)ポリマーはまた、上に詳述されたような、(PEKK)ポリマー、(PEEK)ポリマー、(PEK)ポリマーおよび(PEKEKK)ポリマーからなる群から選択される少なくとも2つの異なる(PAEK)ポリマーから構成されるブレンドであってもよい。
【0079】
本発明の目的のためには、用語「(PEEK)ポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’−Aの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図する。
【0080】
(PEEK)ポリマーの繰り返し単位の好ましくは75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超が、式J’−Aの繰り返し単位である。最も好ましくは(PEEK)ポリマーの繰り返し単位はすべて、式J’−Aの繰り返し単位である。
【0081】
本発明の目的のためには、用語「(PEKK)ポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’−Bの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図する。
【0082】
(PEKK)ポリマーの繰り返し単位の好ましくは75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超が、式J’−Bの繰り返し単位である。最も好ましくは(PEKK)ポリマーの繰り返し単位はすべて、式J’−Bの繰り返し単位である。
【0083】
本発明の目的のためには、用語「(PEK)ポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’−Cの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図する。
【0084】
(PEK)ポリマーの繰り返し単位の好ましくは75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超が、式J’−Cの繰り返し単位である。最も好ましくは(PEK)ポリマーの繰り返し単位はすべて、式J’−Cの繰り返し単位である。
【0085】
本発明の目的のためには、用語「(PEEKK)ポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’−Mの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図する。
【0086】
(PEEKK)ポリマーの繰り返し単位の好ましくは75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超が、式J’−Mの繰り返し単位である。最も好ましくは(PEEKK)ポリマーの繰り返し単位はすべて、式J’−Mの繰り返し単位である。
【0087】
本発明の目的のためには、用語「(PEKEKK)ポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’−Lの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図する。
【0088】
(PEKEKK)ポリマーの繰り返し単位の好ましくは75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超が、式J’−Lの繰り返し単位である。最も好ましくは(PEKEKK)ポリマーの繰り返し単位はすべて、式J’−Lの繰り返し単位である。
【0089】
優れた結果は、(PAEK)ポリマーが(PEEK)ホモポリマー、すなわち、(PEEK)ポリマーの繰り返し単位が実質的にすべて、式J’−Aの繰り返し単位であるポリマーである場合に得られ、ここで、鎖欠陥、または非常に少量の他の単位が存在してもよく、これらの後者は(PEEK)ホモポリマーの特性を実質的に変性しないと理解される。
【0090】
本発明に好適な商業的に入手可能なポリアリールエーテルケトン(PAEK)樹脂の非限定的な例としては、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから商業的に入手可能なKETASPIRE(登録商標)ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0091】
(PAEK)ポリマーは、0.1g/100mlの(PAEK)ポリマー濃度で95〜98%硫酸(d=1.84g/ml)中で測定されるように、少なくとも0.50dl/g、好ましくは少なくとも0.60dl/g、より好ましくは少なくとも0.70dl/gの固有粘度(IV)を有することができる。
【0092】
(PAEK)ポリマーのIVはとりわけ、0.1g/100mlの(PAEK)ポリマー濃度で95〜98%硫酸(d=1.84g/ml)中で測定されるように、1.40dl/g以下、好ましくは1.30dl/g以下、より好ましくは1.20dl/g以下、最も好ましくは1.15dl/g以下であり得る。
【0093】
良好な結果は、0.1g/100mlの(PAEK)ポリマー濃度で95〜98%硫酸(d=1.84g/ml)中で測定されるように、0.70dl/g〜1.15dl/gのIVを有する(PAEK)ポリマーで得られた。
【0094】
測定は一般に、No 50 Cannon−Fleske粘度計を用いて行われ;IVは、溶解後4時間未満の時間内に25℃で測定される。
【0095】
(PAEK)ポリマーは、ASTM D3835に従って毛管レオメーターを用いて測定されるように、400℃および1000s−1のせん断速度で、有利には少なくとも0.05kPa.s、好ましくは少なくとも0.08kPa.s、より好ましくは少なくとも0.1kPa.s、さらにより好ましくは少なくとも0.12kPa.sの溶融粘度を有する。
【0096】
毛管レオメーターとして、KayenessGalaxy V Rheometer(Model 8052 DM)を用いることができる。
【0097】
PAEKポリマーは、ASTM D3835に従って毛管レオメーターを用いて測定されるように、400℃および1000s−1のせん断速度で、有利には最大1.00kPa.s、好ましくは最大0.80kPa.s、より好ましくは最大0.70kPa.s、さらにより好ましくは最大0.60kPa.s、最も好ましくは最大0.50kPa.sの溶融粘度を有する。
【0098】
(PAEK)ポリマーは、ポリ(アリールエーテルケトン)の製造のための当該技術分野で公知の任意の方法によって製造することができる。
【0099】
窒化物(NI)
本発明の文脈内で、「少なくとも1つの窒化物(NI)」という表現は、1つもしくは2つ以上の窒化物(NI)を意味することを意図する。窒化物(NI)の混合物を、本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0100】
本発明の目的のためには、「元素」は、元素周期表からの元素を意味することを意図する。
【0101】
本発明の目的のために考慮に入れられるべきである元素の電気陰性度の値は、1987年2月にベルギーで印刷された、J.Breysem編の元素周期表、c/o VEL s.a.,「Produits,appareillage et fournitures pour le laboratoire」に報告されたものである。
【0102】
1.3〜2.5の電気陰性度(ε)を有する元素の窒化物(NI)の非限定的な例は、「Handbook of Chemistry and Physics」、CRC Press、第64版、B−65〜B−158頁にリストされている。カッコ内の記号は、CRC Handbookによって該当窒化物に属するとされるものであり、一方、εは、窒化物が誘導される元素の電気陰性度を意味する。次に、本発明の目的に好適な1.3〜2.5の電気陰性度(ε)を有する元素の窒化物(NI)は、とりわけ、窒化アルミニウム(AlN、a45、ε=1.5)、窒化アンチモン(SbN、a271、ε=1.9)、窒化ベリリウム(Be、b123、ε=1.5)、窒化ホウ素(BN、b203、ε=2.0)、窒化クロム(CrN、c406、ε=1.6)、窒化銅(CuN、c615、ε=1.9)、窒化ガリウム(GaN、g41、ε=1.6)、二窒化三ゲルマニウム(Ge、g82、ε=1.8)、四窒化三ゲルマニウム(Ge、g83、ε=1.8)、窒化ハフニウム(HfN、h7、ε=1.3)、FeN(i151、ε=1.8)およびFeNまたはFe(i152、ε=1.8)のような窒化鉄、窒化水銀(Hg、m221、ε=1.9)、窒化ニオブ(n109、ε=1.6)、窒化ケイ素(Si、s109、ε=1.8)、窒化タンタル(TaN、t7、ε=1.5)、窒化チタン(Ti、t249、ε=1.5)、二窒化タングステン(WN、t278、ε=1.7)、窒化バナジウム(VN、v15、ε=1.6)、窒化亜鉛(Zn、z50、ε=1.6)および窒化ジルコニウム(ZrN、z105、ε=1.4)である。
【0103】
窒化物(NI)は、好ましくは少なくとも1.6、より好ましくは少なくとも1.8の電気陰性度を有する元素の窒化物である。さらに、窒化物(NI)は、好ましくは最大2.2の電気陰性度を有する元素の窒化物である。
【0104】
さらに、窒化物(NI)は好ましくは、元素周期表のIIIa、IVa、IVb、Va、Vb、VIa、VIb、VIIbおよびVIII族から選択される元素の窒化物から、より好ましくは元素周期表のIIIa族の元素の窒化物から選択される。
【0105】
最も好ましい窒化物(NI)は窒化ホウ素である。
【0106】
本出願人は意外にも、上に記載されたような、窒化物(NI)の存在が、無充填のPAEKポリマーの延性を維持しながら、組成物(C)の剛性を高めるのに有効であり、それによって、本発明の前記組成物(C)に、それらが締結具に含まれるものとして非常に有用であることを可能にする秀でた特性を与えることを見いだした。
【0107】
本出願人は、窒化物(NI)の平均粒度が、特に組成物(C)の剛性および引張破断点伸びなどの機械的特性の改善におよび美学態様の改善に、とりわけ組成物(C)の色の改善に役割を果たし得ることを見いだした。
【0108】
窒化物(NI)の平均粒度は、有利には30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0109】
窒化物(NI)の平均粒度は、好ましくは0.05μmに等しいかまたは少なくともこの値、0.1μmに等しいかまたは少なくともこの値、より好ましくは0.2μmに等しいかまたは少なくともこの値、1μmに等しいかまたは少なくともこの値である。
【0110】
窒化物(NI)の平均粒度は、好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは2μm〜18μm、より好ましくは2μm〜10μmである。
【0111】
約2.5μmの窒化物(NI)の平均粒度が、特に良好な結果を与えた。
【0112】
窒化物(NI)の平均粒度は、例えば会社Malvern製のそれぞれの装置(Mastersizer Microもしくは3000)を用いる光散乱法(動的もしくはレーザー)によってかまたはDIN 53196に従ってふるい分析を用いて測定される。
【0113】
組成物(C)
本発明の組成物(C)は有利には、組成物(C)の総重量を基準として少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも1.10重量%、より好ましくは少なくとも2.0重量%、最も好ましくは少なくとも5.0重量%の量で窒化物(NI)を含む。
【0114】
したがって、本発明の組成物(C)中に存在する窒化物(NI)の量については上限がない。
【0115】
一実施形態においては、本発明の組成物(C)は有利には、組成物(C)の総重量を基準として、最大50.0重量%、好ましくは最大40.0重量%、より好ましくは最大30.0重量%、さらにより好ましくは最大20.0重量%、より一層好ましくは最大15.0重量%、最も好ましくは最大10.0重量%の量で窒化物(NI)を含む。
【0116】
本発明の組成物(C)は有利には、組成物(C)の総重量を基準として、2〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%、さらにより好ましくは5〜10重量%の範囲の量で窒化物(NI)を含む。
【0117】
組成物(C)の総重量を基準とする、(PAEK)ポリマーの総重量は、有利には50%よりも上、好ましくは60%よりも上;より好ましくは70%よりも上;より好ましくは80%よりも上、より好ましくは85%よりも上である。
【0118】
必要ならば、組成物(C)は、(PAEK)ポリマーと窒化物(NI)とからなる。
【0119】
本発明の好ましい組成物(C)はしたがって、上に詳述されたような、(PAEK)ポリマー、より好ましくは、上に詳述されたような、式(J’−A)の繰り返し単位(RPAEK)を含む(PAEK)ポリマーと、組成物(C)の総重量を基準として、5〜15重量%の量での窒化ホウ素とを含む。
【0120】
本発明の組成物(C)はさらに、少なくとも1つの他の熱可塑性ポリマー(ポリマーT)を含んでもよい。
【0121】
本発明の組成物(C)での使用に好適なポリマー(T)の非限定的な例としては、例えばポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレン、ポリイミド、とりわけポリエーテルイミド、およびポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
【0122】
前記他のポリマーの重量は、組成物(C)の総重量を基準として有利には40重量%よりも下、好ましくは30重量%よりも下、より好ましくは25重量%よりも下である。
【0123】
組成物(C)はさらに、(PAEK)ポリマー以外の1つもしくは複数の成分[本明細書では以下、成分(I)]を含むことができる。
【0124】
本発明の組成物(C)での使用に好適な成分(I)の非限定的な例は、ポリマー組成物、UV吸収剤などの添加剤;光安定剤および熱安定剤などの安定剤;酸化防止剤;滑剤;加工助剤;可塑剤;流動性改良剤;難燃剤;とりわけ二酸化チタン(TiO)などの顔料;染料;着色剤;帯電防止剤;増量剤;金属不活性化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤ならびに上述の添加剤の1つもしくは複数を含む組み合わせである。
【0125】
前記成分(I)の重量は、組成物(C)の総重量を基準として、有利には10重量%よりも下、好ましくは5重量%よりも下である。
【0126】
必要ならば、組成物(C)は、(PAEK)ポリマーが組成物(C)中の唯一のポリマー成分であるいう条件で、80重量%超の(PAEK)ポリマーを含み、とりわけUV吸収剤;光安定剤および熱安定剤などの安定剤;酸化防止剤;滑剤;加工助剤;可塑剤;流動性改良剤;難燃剤;とりわけ二酸化チタン(TiO)などの顔料;染料;着色剤;帯電防止剤;増量剤;金属不活性化剤、カーボンブラックおよびカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤などの1つもしくは複数の任意選択の成分が、これらの成分が組成物(C)の関連する機械的特性および靭性特性に劇的に影響を及ぼすことなく、その中に存在していてもよい。
【0127】
「ポリマー成分」という表現は、その通常の意味に従って、すなわち、2000以上の分子量を典型的には有する、繰り返し連結単位で特徴付けられる化合物を包含すると理解されるべきである。
【0128】
ポリマー組成物(C)は、少なくとも1種の補強充填材をさらに含んでもよい。補強充填材は当業者によく知られている。それらは好ましくは、上に定義されたような顔料とは異なる繊維充填材および微粒子充填材から選択される。より好ましくは、補強充填材は、鉱物充填材(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイトなどから選択される。さらにより好ましくは、それは、マイカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維およびウォラストナイトなどから選択される。
【0129】
好ましくは、充填材は、繊維充填材から選択される。繊維充填材の特定の種類は、ウィスカー、すなわち、Al、SiC、BC、FeおよびNiなどの、様々な原材料から製造される単結晶繊維からなる。
【0130】
本発明の一実施形態においては、補強充填材は、ウォラストナイトおよびガラス繊維から選択される。繊維充填材の中で、ガラス繊維が好ましく;それらには、Additives for Plastics Handbook、第2版、John Murphyの5.2.3章、43〜48頁に記載されているような、チョップドストランドA−、E−、C−、D−、S−、T−およびR−ガラス繊維が含まれる。
【0131】
ポリマー組成物(C)中に任意選択的に含まれるガラス繊維は、円形の横断面または円形でない横断面(楕円形または長方形の横断面などの)を有してもよい。
【0132】
使用されるガラス繊維が円形の横断面を有する場合、それらは好ましくは、3〜30μmの、特に好ましくは5〜12μmの平均直径を有する。円形の横断面を持った異なる種類のガラス繊維は、それらが製造されるガラスのタイプに応じて市場に出ている。E−またはS−ガラスから製造されるガラス繊維がとりわけ挙げられもよい。
【0133】
良好な結果は、円形でない横断面を持った標準E−ガラス材料で得られた。優れた結果は、丸い横断面を持ったS−ガラス繊維入りのポリマー組成物の場合にそして、特に、6μm直径を持った丸い横断面(E−ガラスまたはS−ガラス)を使用する場合に得られた。
【0134】
本発明の別の実施形態においては、補強充填材は炭素繊維である。
【0135】
本明細書で用いるところでは、用語「炭素繊維」は、グラファイト化、部分グラファイト化および非グラファイト化炭素強化繊維またはそれらの混合物を含むことを意図する。本発明のために有用な炭素繊維は有利には、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミドまたはフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体の熱処理および熱分解によって得ることができ;本発明のために有用な炭素繊維はまた、ピッチ材料から得られてもよい。用語「グラファイト繊維」は、炭素繊維の高温熱分解(2000℃超)によって得られる炭素繊維を意味することを意図し、ここで、炭素原子は、グラファイト構造と類似した様式で位置している。本発明のために有用な炭素繊維は好ましくは、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイト繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0136】
前記補強充填材の重量は有利には、組成物(C)の総重量を基準として、好ましくは60重量%よりも下、より好ましくは50重量%よりも下、さらにより好ましくは45重量%よりも下、最も好ましくは35重量%よりも下である。
【0137】
好ましくは、補強充填材は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%、最も好ましくは25〜35重量%の範囲の量で存在する。
【0138】
組成物(C)は、ポリマー材料と、配合物において所望される、上に詳述されたような、任意の任意選択の成分との均質混合を含む様々な方法によって、例えば、溶融混合または乾式ブレンディングと溶融混合との組み合わせによって調製することができる。典型的には、上に詳述されたような、(PAEK)ポリマーおよび窒化物(NI)と、任意選択的にポリマー(T)と、任意選択的に補強充填材と任意選択的に成分(I)との乾式ブレンディングは、とりわけHenschel型ミキサーおよびリボンミキサーなどの、高強度ミキサーを用いることによって実施される。
【0139】
そのようにして得られた粉末混合物は、(PAEK)ポリマーおよび窒化物(NI)と、任意選択的にポリマー(T)と、任意選択的に補強充填材と任意選択的に成分(I)とを、上記の締結具の効果的な形成を得るために好適な、上に詳述されたような重量比で含むことができるか、またはマスターバッチとして使用され、そしてさらなる量の(PAEK)ポリマーおよび窒化物(NI)と、任意選択的にポリマー(T)と、任意選択的に補強充填材と任意選択的に成分(I)との中に後続の加工工程で希釈される濃厚混合物であり得る。
【0140】
上に記載されたような粉末混合物をさらに溶融配合することによって本発明の組成物を製造することもまた可能である。上述のように、溶融配合は、上に詳述されたような粉末混合物について、または好ましくは直接に、(PAEK)ポリマーおよび窒化物(NI)と、任意選択的にポリマー(T)と、任意選択的に補強充填材と任意選択的に成分(I)とについて達成することができる。共回転および反転押出機、単軸スクリュー押出機、コニーダー、ディスク−パックプロセッサならびに様々な他のタイプの押出装置などの、従来型の溶融配合装置を用いることができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸スクリュー押出機を用いることができる。
【0141】
必要ならば、配合スクリューの設計、例えば、フライトピッチおよび幅、クリアランス、長さならびに運転条件は、上に詳述されたような粉末混合物または成分を有利にも完全に溶融させるのにおよび異なる成分の均質な分配を有利にも得るのに十分な熱および力学的エネルギーが提供されるように有利には選択されるだろう。ただし、最適混合はバルクポリマーと充填材内容物との間で達成される。本発明の組成物(C)の延性がないストランド押出物を得ることが有利にも可能である。そのようなストランド押出物は、散水を使ったコンベヤ上でのある冷却時間後に、例えば回転刃物を用いて切り刻むことができる。このようにして、例えば、ペレットまたはビーズの形態で存在してもよい組成物(C)を次に、上記の締結具の製造のためにさらに使用することができる。
【0142】
本発明の別の目的は、締結具の製造方法を提供することである。そのような方法は特に限定されない。ポリマー組成物(C)は一般に、射出成形、押出または他の造形技術によって加工されてもよい。
【0143】
本発明の一実施形態においては、上記の締結具の製造方法は、ポリマー組成物(C)の射出成形および固化の工程を包含する。
【0144】
本発明の別の実施形態においては、上記の締結具の製造方法は、任意のタイプのサイズおよび形状を有する部品内の標準的な造形構造部品の機械加工の工程を包含する。前記標準的な造形構造部品の非限定的な例としては、とりわけプレート、ロッド、スラブ等が挙げられる。前記標準的な造形構造部品は、ポリマー組成物(C)の押出または射出成形によって得ることができる。
【0145】
本出願人は予想外にも、本発明の組成物(C)が、PAEK組成技術において以前には知られていない剛性と破断点伸びと耐衝撃性との組み合わせを有する締結具を提供するのに有効であることを見いだした。それは、本発明の組成物を意外なものにする特性と航空宇宙締結具用途向けの大きい実用性とのこの珍しい組み合わせである。
【0146】
本出願人はまた、本発明の組成物(C)を含む前記締結具が改善された美学、特に改善されたより明るい色を有し、そして前記締結具が、色が関心事である多くの用途向けにより高く受け入れられることを見いだした。
【0147】
本発明の締結具は有利には、以下の色特性を有する:
− 色L*>70、好ましくはL*>71であり、
− 色b*は少なくとも8である、
ここで、色は、以下の通り、CIE Lab標準を用いて厚さが2.5mmである射出成形された色プラークで測定された。色は一般に、1976年にCIE(国際照明委員会)(「Kirk−Othmer Encylopedia of Chemical Technology」、2004年、第7章、303〜341頁に、K.Nassau)によって定義された三刺激座標である、L*、a*、b*値で特徴付けられる。これらの3つの基本座標は、色の明度(L*、L*=0は黒をもたらし、L*=100は白を示す)、赤/マゼンタと緑との間のその位置(a*、負の値は緑を示し、一方正の値はマゼンタを示す)および黄と青との間のその位置(b*、負の値は青を示し、正の値は黄を示す)を表す。
【0148】
締結具(F)は、ボールロックピン、掛け金(latch)、クリップ、クリップナット、プラグおよびスリーブ、浮遊ナット締結具、アイソレーターマウント、ナットプレート、スプリットジョイントフィッティング、フロアフィッティング、クォーターターン締結具、インサート、サポートブラケット、取り付けブラケット、掛け金、リリースピン、ヒンジ、ボルトブッシング、ケーブルタイ、チュービングハンガー、ワイヤリングクランプ、スタンドオフ、スペーサー、導管ブラケットなどの、多くのデバイスのそのようなものとしてかまたは構成要素として実用性を見いだすことができる。
【0149】
締結具(F)は、要求が厳しい用途向けに特に有用である。例えば、それは、軽量、トルク、強度、靱性および耐熱分解性が重要な特性である航空機および他の自走車両用途向けに特に好適である。
【0150】
締結具(F)はとりわけ、航空機隔壁、航空機側壁、航空機フローリング、航空機天井パネル、航空機乗客サービスユニット、航空機インフィルパネル、航空機照明側壁および天井、航空機ビデオモニター、航空機収容箱、航空機酸素ボックス、航空機HVACダクティング、航空機食品トレー、航空機肘掛け、航空機シート構造体、化粧室の、調理室およびケータリング台車の航空機側壁、航空機操縦室設備、航空機ワイヤおよびケーブル装備および締め付け、ならびに航空機発電および配電システムに含めることができる。
【0151】
より一般的には、締結具(F)は、半導体工業などの、耐化学薬品性、機械抵抗、軽量、耐腐食性および/または電気絶縁性が重要である任意の工業用途で有用であろう。
【0152】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語を不明確にし得る範囲まで本出願の記載と矛盾する場合には、本記載が優先するものとする。
【0153】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0154】
原材料
KetaSpire(登録商標)PEEK KT−820Pは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから商業的に入手可能なポリエーテルエーテルケトンポリマーである。
窒化ホウ素、ESK Ceramics,GmbHから商業的に入手可能なBoronid(登録商標)S1−SF、2.5μmの平均粒度。
窒化ホウ素、ESK Ceramics,GmbHから商業的に入手可能なBoronid(登録商標)S15、15μmの平均粒度。
炭素繊維、SGL Corporation製のSigrafil C30 APS 006
タルク、Luzenac Americaから商業的に入手可能な、Mistron Vapor R
【0155】
PEEK樹脂の配合方法の概要
PEEK樹脂と所望の量のBoronid(登録商標)S1−SFまたはBoronid(登録商標)S15との乾燥ブレンドを、先ず約20分間タンブルブレンドし、引き続き40:1のL/D比を有する25mmのBerstorff共回転部分噛合い二軸スクリュー押出機を用いて溶融配合することによって調製した。押出機は、8つのバレル区域を有し、バレル区域2〜8が加熱区域である。真空ベンディングを配合の間ずっと18〜20インチの真空でバレル区域7にて適用してコンパウンドから水分およびいかなる可能な残留揮発物も取り除いた。配合温度分布は、バレル区域2〜5が330℃に設定され、一方バレル区域5〜8およびダイアダプターが340℃に設定されるようなものであった。スクリュー速度は全体をわたって180を使用し、押出量は15〜17 lb/hrであったが、押出機ダイの出口での、各配合溶融押出物について手動で測定される、溶融温度は、398〜402℃の範囲であった。各配合についての押出物を水槽中で冷却し、次に、ペレタイザーを用いてペレット化した。4つのブレンドのこのようにして得られたペレットを次に、150℃での乾燥エアオーブン中で4時間乾燥させ、機械的試験にかけた。前記ペレットを、標準条件および供給業者Solvay Specialty Polymersによって提供されるKetaSpire KT−820 PEEK樹脂についてのガイドラインに従ってToshiba 150トンの射出成形機を用いて射出成形してASTM試験片を製造した。
【0156】
機械的特性は、1)タイプI引張試験片、2)5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ試験片、および3)計装化衝撃(Dynatup)試験のための4インチ×4インチ×0.125インチのプラークからなる、射出成形された0.125インチ厚さのASTM試験片を使用して配合物すべてについて試験した。
【0157】
以下のASTM試験方法を、すべての9つの組成物を評価する際に用いた:
− D638:2インチ/分の試験速度を用いる引張特性
− D790:曲げ特性
− D256:アイゾット(Izod)耐衝撃性(ノッチ付き)
− D4812:アイゾット耐衝撃性(ノッチなし)
− D3763:名称Dynatup衝撃でも知られる計装化耐衝撃性
− D648:熱たわみ温度(HDT)
− D5279:200℃でのDMA貯蔵弾性率(Pa)
【0158】
HDTは、264psiの印加応力で、そして一様な結晶化度とそうでなければ測定の精度を損ない得る部品中の残留成形応力の除去とを確実にするために2時間200℃でアニールされた0.125インチ厚さの曲げ試験片を使用して測定した。
【0159】
4インチ×4インチ×0.125の射出成形プラーク射出成形色プラークの色を、10°の角度でイルミナントD65(日光をシミュレートする白色光)を用いてASTM E308−06に従って測定した(1964 CIE)。
【0160】
L*、a*およびb*色座標は、イルミナントD65および10度の観察者を用いるCIE Lab標準に従ってトライビーム拡散/8’’6’’球光学的形状、10nmのバンドパス、360nm〜750nmのスペクトル域を持った、Gretag Macbeth Color Eye Ci5 Spectrophotometer(分光光度計)を用いて測定した。このように、この試験によって測定されるL、aおよびb色座標は、明度スケール(L)、緑−赤の色相スケール(a)および青−黄の色相スケール(b)に相当する。
【0161】
9つの組成物の組成、機械的特性、色特性および物理的特性を表1にまとめる。
【0162】
【0163】
炭素繊維強化PEEK樹脂の配合方法の概要
表2に記載された炭素繊維強化PEEK配合物は、8つのバレル区域を備え、40の全体L/D比を有する二軸スクリュー共回転噛合い押出機を用いて溶融配合することによって調製した。PEEK粉末は、窒化ホウ素とタンブルブレンドするか、押出機の供給ホッパー中に(対照の場合には)そのままで供給するかのどちらかであった。炭素繊維は、必要とされる割合で重量測定法で供給し、押出機のバレル区域5上の供給口にて計量供給した。バレル区域7での真空ベント口を用いて溶融体を高真空に引いて炭素繊維のサイジングから発生する場合がある一切の残留水分または有機揮発物を除去した。配合された配合物を、1つ穴3mm直径を用いて、ストランドに形成し、散水を使ったコンベヤーベルト上で冷却し、その後ペレタイザーに供給して押出物をペレットに切り刻んだ。配合条件の詳細を表3に示す。
【0164】
【0165】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8