(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗員に装着されるウェビングが挿通されたタングが係合されるバックルを備えたバックル装置が開示されている。このバックル装置は、モータと、モータが駆動されることで移動されるスピンドルナットと、スピンドルナットとバックルとを繋ぐケーブルと、を備えている。そして、モータが駆動されて、スピンドルナットが移動されることで、ケーブルが引かれて、バックルが移動されるようになっている。
【0003】
ところで、乗員が車両へ乗車する際、或いは、車両から降車する際においては、乗員がバックルに接触することが考えられる。この場合、バックルから乗員に入力される荷重を低減することができることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、バックルから乗員に入力される荷重を低減することができるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングが挿通されたタングが係合されるバックルと、一部が前記バックル側に固定される固定部とされていると共に他の一部が支持部材に支持される被支持部とされ、前記固定部と前記支持部材との間の距離が変更されることで前記バックルを移動させると共に、前記タングが係合される方向への外力が前記バックルに入力された際に、前記固定部と前記被支持部との間の部位が、前記タングが係合される方向と交差する方向へ変位される連結部材と、を備え、前記連結部材は、前記支持部材に設けられた単一の溝の内部において互いに隣り合って配置された一対のワイヤとされており、
前記一対のワイヤの前記固定部は、固定部材を介して前記バックルに固定されており、前記一対のワイヤにおいて前記固定部材から延出している部分の前記固定部材側の端部が互いに反対方向に傾斜しており、前記タングが係合される方向への外力が前記バックルに入力された際に、一方側の前記ワイヤにおける前記固定部と前記被支持部との間の部位と、他方側の前記ワイヤにおける前記固定部と前記被支持部との間の部位と、が
それぞれ撓んで互いに
反対方向へ変位される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のバックル装置によれば、連結部材においてバックルが固定された固定部と支持部材との距離が変更されると、バックルが移動される。ここで、乗員がバックルに接触することにより、タングが係合される方向への外力がバックルに入力されると、連結部材においてバックルが固定された固定部と支持部材に支持されている被支持部との間の部位が、タングが係合される方向と交差する方向へ変位される。これにより、バックルから乗員に入力される荷重(乗員からバックルに入力される荷重の反作用による荷重)を低減することができる。
【0009】
請求項
1記載のバックル装置によれば、一対のワイヤにおいてバックルが固定された固定部と支持部材との距離が変更されると、バックルが移動される。ここで、乗員がバックルに接触することにより、タングが係合される方向への外力がバックルに入力されると、一対のワイヤにおいてバックルが固定された固定部と支持部材に支持されている被支持部との間の部位が、タングが係合される方向と交差する方向でかつ互いに異なる方向へ変位される。これにより、バックルから乗員に入力される荷重(乗員からバックルに入力される荷重の反作用による荷重)を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜
図4を用いて本発明の実施形態に係るバックル装置について説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印FRは前方向、矢印UPは上方向をそれぞれ示すものとする。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態のバックル装置としてのリフトアップバックル装置10は、乗員に装着されるウェビングが挿通された図示しないタングが係合されるバックル12と、バックル12を格納位置から上昇位置へ移動させるリフトアップ装置14と、を備えている。また、リフトアップバックル装置10は、バックル12に取付けられるバックルアッパカバー16及び第2カバーとしてのバックルロアカバー18と、バックルロアカバー18をスライド可能に支持する第1カバーとしてのロアカバー20と、を備えている。
【0013】
(バックル12)
バックル12は、タングと係合する図示しない係合部とその係合を解除する解除操作部とを備えており、このバックル12には、後述する一対のワイヤ34の一方側の端部がジョイントアンカ22及びリベット24を介して固定されている。なお、図示しないタングがバックル12に係合される方向を矢印Kで示している。また、以下の説明においては、当該方向を「係合方向K」というものとする。
【0014】
(リフトアップ装置14)
図1及び
図2に示されるように、リフトアップ装置14は、出力軸26A(
図2参照)が軸線方向周りの一方側及び他方側に回転することが可能とされたモータ26と、このモータ26の出力軸26Aに当該出力軸26Aと一体回転可能に係合されたドライブスクリュ28と、ドライブスクリュ28の回転に伴って当該ドライブスクリュ28の軸方向に沿って移動されるスライダ30と、を備えている。また、リフトアップ装置14は、スライダ30をガイドするレール32と、他方側の端部がスライダ30に係止されていると共にシート幅方向に間隔をあけて配置された連結部材としての一対のワイヤ34と、一対のワイヤ34をガイドするガイド部材及び支持部材としてのワイヤガイド36と、を備えている。
【0015】
モータ26は、DCモータであり、このモータ26は、スクリュ38等を介してハウジング40に固定されている。
【0016】
ドライブスクリュ28は、鋼材等を用いて棒状に形成されており、このドライブスクリュ28の外周部には、その長手方向に沿って雄螺子が形成されている。また、ドライブスクリュ28の一端部は、モータ26の出力軸26Aが係合される係合部28Aとされている。なお、この係合部28Aとモータ26の出力軸26Aとの間には、弾性部材を用いて形成されたスクリュダンパ42が介装されている。また、ドライブスクリュ28における係合部28A側の部分は、ベアリング44を介してハウジング40に回転可能に支持されている。さらに、ドライブスクリュ28の他端部は、後述するワイヤガイド36に形成された軸支孔36Aに樹脂材料等を用いて形成されたブッシング46を介して回転可能に支持されている。
【0017】
スライダ30は、金属材料を用いて形成されており、このスライダ30は、ドライブスクリュ28に形成された雄螺子部と螺合する雌螺子部を有するドライブスクリュ係合部30Aと、ワイヤ34が挿通されるワイヤ固定部30Bと、を有して構成されている。そして、一対のワイヤ34の他方側の端部がワイヤ固定部30Bに挿通された状態で、かしめ等がなされることで、ワイヤ34の他方側の端部がワイヤ固定部30Bから外れない(ワイヤ34の他方側の端部がワイヤ固定部30Bに係止された状態が保たれる)ようになっている。なお、ワイヤ34の他方側の端部には、ピース48が固定されている。また、スライダ30には、樹脂材料等を用いて形成されていると共に、その外形が後述するレール32の内部の形状に対応する形状に形成されたシュー50が取付けられている。そして、スライダ30がシュー50と共にレール32の内部を移動するようになっている。なお、スライダ30及びシュー50がハウジング40側に位置している状態(
図2に示された状態)におけるバックル12の位置を「格納位置」というものとし、スライダ30及びシュー50がワイヤガイド36側に位置している状態におけるバックル12の位置を「上昇位置」というものとする。また、ハウジング40及びワイヤガイド36には、ダンパ52,54(
図1参照)が取付けられている。これにより、スライダ30と共に移動されるシュー50が、ハウジング40及びワイヤガイド36に直接当接することが回避されている。
【0018】
レール32は、鋼板材にプレス加工等が施されることによって形成されている。このレール32は、下方側が開放された略U字状断面に形成されていると共に内部にドライブスクリュ28及びスライダ30等が配置されるスライダガイド部32Aを備えている。また、レール32におけるスライダガイド部32Aの長手方向一方側には、ハウジング40がスクリュ56等を介して固定されている。さらに、レール32におけるスライダガイド部32Aの長手方向他方側には、後述するワイヤガイド36が固定されている。なお、レール32は、図示しないボルトが挿通される挿通孔を有する固定部32Bを備えている。この固定部32Bの挿通孔に挿通された図示しないボルトが、シートクッションフレーム等に形成された螺子孔に螺入されることで、リフトアップバックル装置10が、シートクッションフレーム等に固定されるようになっている。また、レール32には、レールカバー58が取付けられている。これにより、スライダガイド部32Aの開放端がレールカバー58によって被われるようになっている。さらに、レールカバー58には、格納位置検出スイッチ60が取付けられている。そして、スライダ30と共に移動するシュー50が格納位置検出スイッチ60に係合することで、バックル12が「格納位置」に位置していることが検出されるようになっている。
【0019】
ワイヤガイド36は、側面視で略扇状とされたブロック状に形成されており、このワイヤガイド36には、前述の軸支孔36A及び一対のワイヤ34をガイドするガイド部としてのガイド溝36Bが形成されている。ガイド溝36Bは、シート幅方向一方側が開放されていると共に側面視で(シート幅方向から見て)略U字状に形成されている。このガイド溝36Bの深さ(開放端から閉止端までのシート幅方向への寸法)は、ワイヤ34の直径の2倍の寸法よりもやや大きな寸法に設定されている。そして、一対のワイヤ34が、ガイド溝36Bの深さ方向に並列した状態で当該ガイド溝36B内に配置されることで、一対のワイヤ34においてガイド溝36B内に配置された部分が略U字状に湾曲されるようになっている。なお、本実施形態では、ワイヤガイド36に形成されたガイド溝36Bの開放端側がカバープレート62によって閉止されることで、一対のワイヤ34がガイド溝36Bから抜け出さないようになっている。
【0020】
(ロアカバー20)
ロアカバー20は、一例としてゴム等の弾力性のある材料を用いて筒状に形成されおり、このロアカバー20の一方側の端部は、ワイヤガイド36に係合されている。また、ロアカバー20は、一対のワイヤ34が挿通されるワイヤ挿通部20Aと、バックル12にタングが係合されているか否かを検出するためのバックルスイッチが接続されるカールコード64が挿通されるカールコード挿通部20Bと、を備えている。また、ワイヤ挿通部20Aにおけるワイヤガイド36側の部位には、括れ部20Cが形成されている。そして、ロアカバー20が括れ部20Cを変形起点として屈曲することで、ロアカバー20をシート前後方向に傾動させることが可能となっている。
【0021】
(バックルロアカバー18)
バックルロアカバー18は、一例としてロアカバー20よりも硬質の樹脂材料等を用いて形成されており、このバックルロアカバー18は、バックルアッパカバー16と共にバックル12を覆っている。バックルロアカバー18は、シート幅方向一方側に配置されたアウタカバー18Aとシート幅方向他方側に配置されたインナカバー18Bとが接合されることによって筒状に形成されている。バックルロアカバー18には、上記ロアカバー20が挿入されており、これにより、バックルロアカバー18がロアカバー20に沿ってスライドすることが可能となっている。また、バックルロアカバー18のシート幅方向の両側部分におけるワイヤガイド36側の端は、シート側面視で当該バックルロアカバー18のロアカバー20に対するスライド方向に対して傾斜されている。なお、バックルロアカバー18には、カールコード64に取付けられたカールコードブラケット66が係止されている。これにより、バックルロアカバー18がロアカバー20に対してワイヤガイド36とは離間する側へスライドされた際に、螺旋状に巻回されたカールコード64が引延ばされるようになっている。
【0022】
次に、本実施形態の要部である一対のワイヤ34の構成について説明する。
【0023】
ワイヤ34は、ステンレス鋼等を用いて所定の線径に形成された複数の素線が製綱されることによって形成されている。本実施形態では、同じ長さに設定された一対のワイヤ34が、シート幅方向に隣合って配置されている。また、一対のワイヤ34の一方側の端部は、ジョイントアンカ22にかしめられることで固定される固定部としての第1固定部34Aとされている。また、一対のワイヤ34の第1固定部34Aがジョイントアンカ22にかしめられることにより、一対のワイヤ34においてジョイントアンカ22から延出している部分のジョイントアンカ22側の端部が、係合方向Kに対して互いに異なる方向(反対方向)に傾斜している。なお、この傾斜角度は数度ほどの小さな角度である。また、ジョイントアンカ22において一対のワイヤ34の第1固定部34Aがかしめされている部分を係合方向Kから見た図心と、各々のワイヤ34の第1固定部34Aを係合方向Kから見た図心と、が異なる位置に位置している。
【0024】
一対のワイヤ34の他方側の端部は、スライダ30のワイヤ固定部30Bに挿通された状態でかしめられると共にピース48が固定される第2固定部34Bとされている。
【0025】
一対のワイヤ34においてワイヤガイド36のガイド溝36B内に配置される部分は、当該ガイド溝36Bに支持される被支持部34Cとされている。また、ガイド溝36Bの深さが、ワイヤ34の直径の2倍の寸法(一対のワイヤ34のシート幅方向への寸法)よりもやや大きな寸法に設定されていることで、一対のワイヤ34の被支持部34Cがシート幅方向に移動可能となっている。なお、この移動量は数ミリメートルほどの短い距離である。
【0026】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0027】
図1及び
図2に記載されたリフトアップバックル装置10を備えた車両のシートに、乗員が着座したことが検出されると、リフトアップ装置14のモータ26がドライブスクリュ28を一方側へ回転させる。そして、ドライブスクリュ28が回転することによってスライダ30がドライブスクリュ28に沿って移動されると、一対のワイヤ34の第1固定部34Aとワイヤガイド36に支持されている被支持部34Cとの距離が変更される(長くなる)。これにより、一対のワイヤ34の一方側の端部に固定されたバックル12(ジョイントアンカ22)がシート上方側へ向けて移動される。すなわち、バックル12が、「格納位置」から「上昇位置」に移動される。その結果、乗員がタングをバックル12に容易に係合させることが可能となる。すなわち、乗員がウェビングを容易に装着することが可能となる。また、タングがバックル12に係合されたことがバックルスイッチによって検出されると、リフトアップ装置14のモータ26がドライブスクリュ28を他方側へ回転させる。これにより、バックル12が、「上昇位置」から「格納位置」に移動される。
【0028】
ここで、本実施形態では、リフトアップ装置14が作動すると、ロアカバー20が挿入されたバックルロアカバー18がバックル12と共に移動する。また、バックル12が「上昇位置」に位置している状態では、バックルロアカバー18のシート下方側の端がロアカバー20のシート上方側の端よりもシート下方側に位置している。これにより、ロアカバー20とバックルロアカバー18との間からワイヤ34及びカールコード64が視認されることが抑制されている。
【0029】
また、本実施形態では、乗員の臀部がバックル12を押圧すること等により、係合方向Kへの外力Fがバックル12に入力されると、
図3及び
図4に示されるように、一対のワイヤ34においてバックルが固定された第1固定部34Aとワイヤガイド36に支持されている被支持部34Cとの間の部位34Dが、係合方向Kと交差する方向でかつ互いに異なる方向A1、A2(反対方向)へ変位される。これにより、バックル12が、一対のワイヤ34における上記の部位34Dの変位量に応じた距離だけ係合方向Kへ移動することが可能となる。その結果、バックル12から乗員に入力される荷重(乗員からバックル12に入力される荷重の反作用による荷重)を低減することができる。
【0030】
さらに、一対のワイヤ34をそれぞれ変形させる構成とすることにより、バックル12から一対のワイヤ34に入力される荷重を当該一対のワイヤ34に分散させることができる。これにより、各々のワイヤ34の耐久性を向上させることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、一対のワイヤ34を変位させることで、バックル12を「格納位置」から「上昇位置」の間で変位させるように構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、単一のワイヤ34を変位させることで、バックル12を「格納位置」から「上昇位置」の間で変位させるように構成してもよい。この場合、単一のワイヤ34においてジョイントアンカ22から延出している部分のジョイントアンカ22側の端部を係合方向Kに対して傾斜させること等により、係合方向Kへの外力がバックル12に入力された際に、単一のワイヤ34においてバックルが固定された第1固定部34Aとワイヤガイド36に支持されている被支持部34Cとの間の部位34Dが、係合方向Kと交差する方向へ変位されるように構成することで、バックル12から乗員に入力される荷重を低減することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。