(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る無線モジュール及び無線モジュールの製造方法について説明する。なお、図面において共通の構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0014】
<概要>
まず簡単に本実施形態の概要を再度説明する。
図1(d)は、樹脂層がどの様に形成されるか説明したものである。
【0015】
符号500は、基板、符号210、220は、半導体素子、チップ抵抗、チップコンデンサまたは水晶振動子などの電子部品、100は、基板の表または裏に配置されたアンテナ(プリント基板のCuパターンにより形成されたもの)である。尚、半導体素子は、ベアチップをフェイスアップで実装するもの、WLPの様にフェイスダウンで実装するもの、また樹脂封止されたパッケージ等がある。どちらにしても、表面、裏面および側面から成る六面体である。
【0016】
またこの基板は、無線モジュール単体が必要な構成要素を1ユニットとし、大判基板にマトリックス状にこのユニットが並んだもので、ここでは隣接した二つのユニットが示されている。
【0017】
図1(d)に示す様に、基板500の電子部品配置領域501には、半導体素子210や電子部品220が実装され、電子部品配置領域501と隣接するアンテナ配置領域(502または504)にはアンテナ100が設けられている。尚、アンテナ100は、基板500の表、裏、または内層で形成され、基板500の表裏の層や内層に用いられる導電パターンと同一材料であり、プリント基板では、Cu、セラミック基板では、導電ペーストの焼結から成る。またアンテナ100は、基板500の表、裏および内層のどちらに配置しても良い事から、裏側には点線でアンテナを図示した。
【0018】
この状態の基板500が用意され、続いて樹脂材料を使った被覆の工程に入る。具体的には、ポッティング法や印刷法が採用される。ポッティングは、流動性の樹脂を上から滴下して被覆するものである。印刷法は、メタルマスクやシルクマスクを採用し、マスクの上に設けた流動性のあるインクをスキージでこすり、マスクの裏面に配置された基板500の上に樹脂を塗布するものである。
【0019】
電子部品配置領域501に配置される部品で一番高さの高いものは、半導体素子210、ここでは、LSIチップで、高さは、0.4mmである。またディスクリートでは、チップコンデンサが0.2mmである。そしてアンテナ100のパターンは、厚みが0.02mmである。つまり、最高背の電子部品210との高低の差は、0.38mm、ほぼアンテナ100の厚みを無視した、LSIの厚み分だけの高低差がある。尚、ここではLSIチップ210が一番高背であったが、ものによっては、他の物が最高背となる場合もある。
【0020】
よって、普通に塗布すると、樹脂材料の流動性と粘度で、点線L1で示す様な高低差が発生する。高背な電子部品210には、その高さが高く、アンテナ100の部分は、その高さが低くなり、そこに粘度のある樹脂が設けられるので、その高低をトレースするかのように樹脂層300の表面が形成される。ここでは、波の様な「うねり」とでも表現したい。また印刷法では、スキージがテフロン(登録商標)などの樹脂製であり、その弾性より、アンテナ100の上の樹脂を大きくかき取ってしまう。しかも樹脂は、粘性を有する為、この高低差を維持する傾向が高く、更にこの高低差を拡大させる。よって斜線で示すR1は、シールド材料の溜まり場となる。また半導体素子210の上の角部は、P1に示す様に、その樹脂厚が薄くなって塗布される。
【0021】
つまり流動性のあるシールド材料400は、電子部品210、220の上では、比較的薄く、アンテナの配置領域502では、樹脂層300が凹んでいるため、シールド材料が溜まってしまい、その厚みは、厚くなってしまう。よってこの溜まり部R1の部分は、導電材料を余計に消費している部分でもある。シールド材は、金属や貴金属が用いられる為、コストアップとなってしまう。
【0022】
またここのP1は、樹脂層300もシールド層400も薄くなってしまう部分であり、「うねり」があると耐電圧の低下、耐環境性の低下につながってしまう。
【0023】
そこで本実施形態では、電子部品配置領域501と前記アンテナ配置領域502(504)に対応する前記樹脂層300が実質平坦面と成る様に研削または研磨している。
【0024】
例えば、凹部の最下部の高さ(基板表面からの高さ)H2が、一番厚い電子部品(最高背部品)210の高さH1よりも高くなるように、例えばラインL2の様に、樹脂材料を塗布すれば、電子部品配置領域501と前記アンテナ配置領域502(504)に対応する前記樹脂層300を、ラインL3の部分で、実質平坦面と成る様に研削または研磨が可能となる。
【0025】
この研磨・研削の一例として、具体的には、ダイシング装置を採用し、ダイシングブレードで研磨している。幅のあるダイシングブレードでY方向つまりラインL3に沿って、実質平坦面と成る様に第1の領域を研磨し、その後、第1の領域と一部が重なる様にX方向にずらし、Y方向に第2の領域を研磨する。この工程を繰り返す事で、電子部品配置領域501と前記アンテナ配置領域502に対応する前記樹脂層300が、L3のレベルで実質平坦面と成る。
【0026】
尚、最高背部がLSIのチップ裏面の場合、この研磨・研削でこの裏面を露出させても良いが、一般には、100μmの厚みを残して研磨・研削される。
【0027】
この後に粘性または流動性のあるシールド材料を被覆するが、樹脂層300がL3の所で、実質平坦化されているため、一定の厚みで、余計な消費部分も無くシールド層400を形成できる。
【0028】
尚、L3の位置は、ダイシング装置の加工精度や要求される封止樹脂の厚みによって変動する。更に、シールド材は、Ag、Pd、PtまたはCuなどの金属粉が混入された粘性のある導電樹脂ペーストを、印刷法で印刷して形成できる。
【0029】
またスピン法でも可能である。これは、前記導電ペーストよりも更に粘度が低く、液体に近いコート剤をスピンコートする。材料としては、樹脂、金属粉、溶剤でなる。
【0030】
どちらにしても、被覆されたシールド材料は、熱が加わり、硬化処理を経る事でシールド層400が形成される。
【0031】
図1(a)〜
図1(c)は、前述した工程を経て実現された無線モジュール1000である。
【0032】
図1(a)は、基板500の上に、電子部品210(または220)を実装し、アンテナ100は、基板500の裏または表に形成されたものである。
図1(a)の様に電子部品配置領域501と前記アンテナ配置領域502(504)に対応する前記樹脂層300が実質平坦面と成る様に、L3の所で研磨されているので、シールド層400は、一定の膜厚で形成でき、余分に厚い部分R1を無くなる。
【0033】
尚、
図1(a)〜(c)に於いて、表面に近い所に設けられた点線は、
図1(d)のL3の部分で、研磨・研削装置で平坦化処理された事を示すものである。
【0034】
また符号Wは、シールド層400と一体で、電子部品配置領域501とアンテナ領域502を区画するシールド層400の側壁である。
【0035】
続いて
図1(b)、
図1(c)は、
図1(d)で、L3のラインで研磨し、シールド層400を形成した後に、アンテナ領域502に対応する所の樹脂層300、シールド層400を、少なくとも表面から下層に向かい研削または研磨したものである。ここもダイシング装置で、取り除いている。
【0036】
その結果、封止層の表面は、角部領域P1も含めて、図の右から左まで、研磨により実質平坦となっている。その結果、シールド層300は、角部に於いて、部分的に薄くなる部分を無くす事ができ、耐電圧の低下、耐環境性の低下を抑止でき、シールド性能を高める事が出来る。
【0037】
尚、
図1(c)は、ラインL2で示す凹凸を緩和する為に、半導体素子(最高背の素子)210とアンテナ領域502の間、または半導体素子(最高背の素子)210と隣のアンテナ領域502との間に、アンテナ100よりも厚く、半導体素子(最高背の素子)210よりも薄い電子部品220を配置し、ラインL1の凹凸を緩和している。その結果、L2で示す削除部分の量を減らせ、工程の短縮、材料の廃棄量の削減を達成できる。尚、ここの半導体素子210よりも薄い電子部品220は、チップコンデンサ、チップ抵抗、水晶振動子等が考えられる。
【0038】
<第1実施形態>
==無線モジュール==
図2〜
図4に、本実施形態に係る無線モジュール1000を示す。
図2及び
図3は、無線モジュール1000の外観斜視図であり、
図4は、無線モジュール1000の断面図である。
【0039】
本実施形態では、無線モジュール1000を平面視したときに、後述する基板500の表面(一方の面)において、電子部品配置領域501と第1アンテナ領域502とが並ぶ方向をy軸方向(以下y方向)とし、鉛直方向をz軸方向(以下z方向)とし、y軸及びz軸に直交する方向をx軸方向(以下x方向)とする。
【0040】
無線モジュール1000は、基板500、電子部品200、アンテナ100、樹脂層300、及びシールド層400を備えて構成されている。
【0041】
基板500は、
図4に示すように、電子部品200にグランド電位を供給するグランド層510が内層に形成された多層基板である。また基板500は、x方向及びy方向沿う4つの辺を有する略矩形状の板であり、板厚(z方向の幅)は1mm(ミリメートル)以下、例えば0.3mm程度である。
【0042】
グランド層510は、基板500の面に沿って平面状に形成される、表面または内層に形成される導電パターンである。
【0043】
また基板500の一方の面(
図2においては、表面である)には、電子部品配置領域501と第1アンテナ領域502とが重複することなくy方向に隣接して並ぶように設けられており、他方の面(
図2において裏面である)には、電極領域503と第2アンテナ領域504とが、重複することなくy方向に、隣接して並ぶように設けられている。こ
電極領域503は、電子部品配置領域501とは反対側の領域であり、第2アンテナ領域504は、基板500の裏面のうちの第1アンテナ領域502とは反対側の領域である。
【0044】
電子部品200は、IC(Integrated Circuit)のような、半導体素子を含む。この半導体素子は、ベアチップがフェイスアップまたはフェイスダウンで実装されたものである。また、樹脂あるいはセラミック製のパッケージによって半導体チップを封止してなる集積回路素子210である。また電子部品200は、チップ抵抗、チップコンデンサ、コイルのような受動素子、または水晶振動子などのディスクリートの電子部品220と、を含む。電子部品200は、基板500の表面の電子部品配置領域501に装着されている。
【0045】
基板500は、表、内層および裏面には導電パターンが形成されており、スルーホールやViaを介して多層配線構造となっており、これらの電子部品200を実装する事で、所定の機能を実現している。
【0046】
ここでは、電子部品200は、これらの集積回路素子210や電子部品220によって構成される発振回路を有し、以下に述べるアンテナ100を用いて電波を送信又は受信する。
【0047】
なお
図1に示すように、電子部品200は、基板500の表面の電子部品配置領域501に装着され、実質、第1アンテナ領域502には装着されない。
【0048】
アンテナ100は、基板500の裏面の第2アンテナ領域504に形成される導電パターンによって構成される。
図3には、アンテナ100が、基板の裏側の第2アンテナ領域504に形成されている様子が示される。
【0049】
また
図4に示すように、電子部品200とアンテナ100は、アンテナ接続部100Aによって電気的に接続されている。アンテナ接続部100Aは、基板500に形成される導電パターンや、viaまたはスルーホールから成る。また導電パターンは、配線、この配線の端部と接続される電極、パッド等から成る。
【0050】
本実施形態に係る無線モジュール1000は、アンテナ100が基板500の裏面(第2アンテナ領域504)に形成されているが、基板500の表面(第1アンテナ領域502)に形成されていても良い。
【0051】
アンテナ100が基板500の裏面に形成されている場合は、電子部品200内のノイズ源となる集積回路素子210から放射されたノイズが基板500の裏側のアンテナ100に到達するためには、基板500を構成する樹脂や様々な導電パターンを通過する必要がある。つまりこの間に、導電パターンが位置する事により、アンテナ100が集積回路素子210から放射されるノイズの影響を受けにくくなるようにしている。
【0052】
図2に戻って、樹脂層300は、電子部品200を封止するべく、電子部品配置領域501に形成されている。樹脂層300は、電子部品配置領域501の全体に形成されていても良いし、電子部品配置領域501のうち電子部品200が装着されている部分のみに形成されていても良い。樹脂層300は、絶縁材料からなり、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により構成される。尚、樹脂層300の形成方法については後述する。
【0053】
シールド層400は、金、銀、白金、ニッケルまたはCu等の金属粉を、樹脂に分散させた導電ペーストであり、樹脂層300の表面に塗付した後に硬化させることで形成される。本実施形態では一例として銀ペーストを用いている。
【0054】
このように、電子部品200を樹脂層300で封止した上で、樹脂層300の表面を導電性を有するシールド層400で覆うので、金属ケースを用いることなく電子部品200から生じるノイズの漏えいを低減させることが可能となる。これにより、導電モジュール1000を小型化することが可能となる。
【0055】
また
図4に示すように、本実施形態に係る無線モジュール1000は、LN1で示す無線モジュール1000の端面において、シールド層400が基板500の内部のグランド層510と電気的に接続するように形成されている。このような態様によって、シールド層400をワイヤ等の他の手段を用いて接地する必要がなくなるため、無線モジュール1000の構造が簡単化でき、部品点数の減少によって無線モジュール1000の故障率を低減させ、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0056】
なおLN1は、無線モジュール1000の一方の端面を示し、LN3は無線モジュール1000の他方の端面を示す。そしてLN2は、電子部品配置領域501と第1アンテナ領域502との境界を示す。また、LN2は、電極領域503と第2アンテナ領域504との境界でもある。
【0057】
図2(b)は、
図1(a)を模式的に示したもので、電子部品配置領域501から第1アンテナ領域502まで、樹脂封止され、この樹脂表面にシールド層400が5面に渡り被覆されたものであり、それ以外は、
図2(a)と同じである。尚、シールド層400の側壁Wやアンテナ100は、図面の都合で省略した。
【0058】
==無線モジュールの製造方法==
つぎに、
図5A〜
図5Fを参照しながら、本実施形態に係る無線モジュール1000の製造方法を説明する。
【0059】
なお、本実施形態に係る無線モジュール1000の製造方法は、
図1(c)の無線モジュールを中心に説明している。しかし根幹となる部分は、
図1(a)も
図1(b)も殆ど同じであるため、このフローの中で説明して終わりとする。
【0060】
また
図1(d)でも述べたが、複数の無線モジュール1000をマトリックス状に並べた大判基板800で形成し、最終的には、個片化することにより製造される。その為、必要により、
図5A(b)の様に、大判基板800も図示して説明している。尚、破線Cは、カットラインであり、
図5A(b)の1点鎖線Cに相当する。
【0061】
まず、
図5Aに示すように基板500の形成プロセスの中でアンテナ100を形成する(アンテナ形成工程)。
【0062】
基板500は、通常のプロセスで形成され、例えば多層基板から成る。この多層基板には、表、裏、そしてその間をつなぐ内層の導電パターンが絶縁層の間に作り込まれ、viaやスルーホールなどを介して電気的に接続される。この製造工程の中でアンテナも形成される。
【0063】
図5A(a)では、基板500の裏面、第2アンテナ領域504に形成されるため、基板500の裏の導電パターン、具体的には、外部接続パッドと形成工程で一緒に形成される。そして電子部品と電気的に接続され、アンテナ100の機能を持つようになる。またここでパッドは、Cuから成り、アンテナ100のパターンもCuから成る。尚、基板500の表側に形成しても良いし、内層で形成しても良い。
【0064】
またアンテナ形成工程と同時に、アンテナ100以外にも、基板500内部のグランド層510やアンテナ接続部100Aも形成される。この際に、グランド層510は、基板500を切断位置Cで切断した際に、切断面にグランド層510が露出するように形成される。
【0065】
つぎに、
図5Aに示すように、基板500の表面の電子部品配置領域501に電子部品200を装着する(電子回路装着工程)。この時、本実施形態では、集積回路素子210と第1アンテナ領域502との間に電子部品220が配置されている。これは、
図1(a)〜
図1(c)も説明したい為であり、
図1(a)や
図1(b)の無線モジュールでは省略される。
【0066】
この様に、電子部品220が設けられる事で、下に述べる樹脂層形成工程で、基板500上に形成される樹脂層300の上面に生じる凹凸をなだらかにすることができる。詳細は後述する。
【0067】
電子部品200としては、半導体素子210などの能動素子、チップ抵抗、チップコンデンサ等の受動部品、更には水晶振動子などの電子部品が該当する。尚、半導体素子210は、ベアチップをフェイスダウンしたもの、フェイスアップしたもの、樹脂やセラミックで封止したパッケージされた半導体素子210も含まれる。これら電子部品200と導電パターンが接続され、所定の機能が実現される。
【0068】
ここまでで、電子部品200およびアンテナ100が実装された基板500が用意される事になる。
【0069】
次に、
図5Bに示すように、基板500の表面を樹脂材料で覆い、マトリックス状に並んだ全てのユニットを覆う様に樹脂層300が形成される(樹脂層形成工程)。
【0070】
この樹脂層300は、
図5Bの如く、印刷法により形成されたり、ポッティング法で形成されたりする。
【0071】
印刷法に於いては、基板500の上にメタルマスク(不図示)またはスクリーンマスク(不図示)が置かれ、このマスクの上に粘性があり、流動性を示す樹脂材料が塗布される。そして
図5Bに示したスキージ600により、マスクをこすりながら、マスク下の基板500に樹脂材料が塗り広げられる。
【0072】
前述したように、電子部品配置領域501に配置される電子部品200で一番高さの高いものは、ここでは、LSIチップ210であり、高さは、例えば0.4mmである。また受動素子220として、チップコンデンサが実装され0.2mmである。そして
図5Bでは、アンテナ100のパターンが裏側に形成されているが、表に形成されたとしても、その厚みは0.02mmである。
【0073】
つまり、アンテナ100が裏であれば、基板500からの高低の差は0.4mm、アンテナ100が表でも、高低の差は、0.38mmであり、ほぼアンテナ100の厚みを無視したLSIの厚み分だけの高低差がある。よって、印刷法でもポッティング法でも、樹脂材料の流動性と粘度で、
図1(d)で示す様な高低差が発生する。また印刷法では、スキージ600が弾力のある樹脂から成り、アンテナ100の上の樹脂は、半導体素子、チップ裏面やパッケージの裏面等の硬い部材が無い事から、樹脂材料を大きくかき取ってしまう。
【0074】
よって
図1(d)でも説明した様に、凹み部の底部が、最高背な電子部品210、例えば半導体素子210の頭部H1を超える様な高さH3で覆う様に、樹脂材料を塗る事が大事な事と成る。つまりラインL2で示す様に、多少厚く塗り、第1アンテナ領域502の樹脂材料がかき取られても、後述する硬化工程の後で、高背な電子部品210より、樹脂層300の凹み部の底部が高くなるように被覆される。
【0075】
尚、ポッティング法でも同様である。印刷法とは異なり、ノズルから樹脂材料を流すだけであるが、やはり高低の差がある事から、凹み部の底部が、高背な電子部品210、例えば半導体素子210の頭部H1を超える様な高さH3で覆う事が必要となる。
【0076】
尚、第1アンテナ領域502は、有っても薄い導電パターンであり、低くなっている事から、樹脂がゆっくりと流れる場合があり、電子部品配置領域501の樹脂厚よりも樹脂厚が厚く被覆される。この場合、厚い分だけその硬化収縮も大きいが、この分も含めて塗布厚が調整される。
【0077】
続いて、硬化の工程となる。例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は、化学反応による硬化過程で、架橋が始まり、硬化収縮が発生する。また熱可塑性樹脂では、そのまま冷やす事で固まる。
【0078】
その結果、
図5Bに示す通り、凹んだ部分が、高背部品210、例えば半導体素子210の頂部よりもやや高い位置で、硬化した状態となる。この場合「うねり」はあるが、研磨・研削をかけても、電子部品配置領域501から第1アンテナ領域502まで平坦に仕上げられる。
【0079】
続いて
図5Cに示す様に、切削装置または研磨装置により、表面を平らにする工程に入る。
【0080】
この装置として、一般的なのは、ダイシング装置700である。
【0081】
ここでは、電子部品配置領域501と前記アンテナ配置領域502または504に対応する前記樹脂層300が実質平坦面と成る様に研削または研磨する。半導体素子210の頂部が、耐湿劣化せず、耐電圧特性も維持可能な厚みとする。またWLPなどのフリップチップでは、チップ裏面が上と成る。この場合、必要によっては、チップ裏面と樹脂層300が同一平面となる様に研削しても良い。
【0082】
この結果、電子部品配置領域501と前記アンテナ配置領域502に対応する前記樹脂層300が実質平坦面と成る。その結果、シールド層400の形成に於いて、課題に述べた溜まり部が形成されず、均一な膜厚のシールド層400が形成可能となる。
【0083】
ダイシング装置700は、右から左へと1ストローク削ったら、X方向にずらし、研削面が一部重なる様にして右から左へと削る。この様な動作を繰り返して、樹脂層300全面を平坦に研削・研磨する。
【0084】
その後、
図5D(b)に示すように、実線で示す樹脂層300に、1点鎖線で示す溝310、320、330を形成する。
【0085】
無線モジュール1000の側面までシールド層400が形成されるためには、溝310、320の形成が必要となる。
【0086】
溝330は、長辺側の二つの側面を形成する溝で、基板500の手前、または基板500の内層までハーフダイシングする。更に溝320は、LN1側のグランドラインを露出させる溝で、基板500の内層までハーフダイシングされる。更に溝310は、基板500の表面または内層まで到達させた溝310が形成される。
【0087】
そして
図5Eに示すように、樹脂層300の表面に、溝310、320、330の内側も含めて、
流動性・粘性のあるシールド材料が設けられる。例えば、前述した印刷法で形成する場合、Agペーストが印刷により形成される。平坦な樹脂層300の上をスキージ600でこすることから、実質同じ膜厚のシールド層400が形成される。またスピン工法では、溶剤に溶かされた樹脂と金属粉の入った溶液が回転の遠心力により、薄く伸びで塗布される。(シールド層形成工程)。
【0088】
どちらにしても、樹脂層300は、「うねり」が解消された平坦な面が形成され、その上にシールド層400が形成される。そのため、溝310、320、330に入り、膜厚の一定なシールド膜が形成できる。
【0089】
このとき、溝320の内側に形成されたシールド層400は、基板500の内部のグランド層510と導通する。
【0090】
その後、シールド層400の四つの側面が残る様にフルカットすれば
図1(a)の無線モジュール1000が実現できる。
【0091】
尚、
図1(b)、
図1(c)では、第1アンテナ領域502の樹脂層300とシールド層400を削除する為、次の工程へと進む。
【0092】
図5Fは、この削除工程を説明するものである。
図5Fに示すように、基板500の表面全体に形成した樹脂層300及びシールド層400のうち、第1アンテナ領域502に形成した樹脂層300及びシールド層400を、研磨・研削装置を用いた切削加工を行うことによって除去する(除去工程)。
【0093】
ここでもダイシング装置700を用いて切削し、
図5F(b)のD1、D2で示す部分を上下にダイシングブレードを通過させ、削っている。
【0094】
つまり
図5F(a)に於いて、シールド層400の左右の側壁が残る様に削っている。第1アンテナ領域502側のシールド層400や樹脂層300は、全て削り取っても良いし、一部残しても良い。このような態様によって、電子部品配置領域501に、5面の樹脂層300及びシールド層400を形成することができる。
【0095】
なおこのとき、基板500を露出させるように、第1アンテナ領域502から樹脂層300及びシールド層400を除去すると以下のような効果が発生する。無線モジュール1000の第1アンテナ領域502の部分における厚さがより薄くなり、第2アンテナ領域504に形成されたアンテナ100によって送信又は受信される電波の強度が低下するのを防止し、アンテナ100の送信感度及び受信感度の低下を抑制することが可能となる。
【0096】
その後、電子部品配置領域501のシールド層400の四つの側面が残る様にフルカットすれば
図1(b)、
図1(c)の無線モジュール100が実現できる。
【0097】
以上、本実施形態に係る無線モジュール1000の製造方法によれば、基板500にアンテナ100と電子部品200を実装して樹脂により封止してなる無線モジュール1000において、シールド層400を形成するために必要な導電ペーストの使用量を減らすことができ、製造コストを削減することが可能となる。
【0098】
なお本発明は、除去工程において、第1アンテナ領域502に形成した樹脂層300及びシールド層400を切削加工によって除去する際に、基板500の表面から樹脂層300を完全に取り除くのではなく、所定の厚さで薄く残存させても良い。
【0099】
また
図1でも説明したが、電子部品配置領域501から第1アンテナ領域502まで一面に渡り平坦な表面であるから、シールド層300と最高背の素子210との距離を確保できる。ここでは、半導体チップ210の角部とシールド層300との距離は、近接することなく一定の厚みを確保できるので、耐電圧特性の向上、耐環境性能の向上が可能となる。