(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463325
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】車両用レジスタ装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20190121BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
B60H1/34 631
B60H1/34 651B
F24F13/15 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-245119(P2016-245119)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-99908(P2018-99908A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】亀井 孝之
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−116337(JP,A)
【文献】
実開昭63−55046(JP,U)
【文献】
実開平1−148550(JP,U)
【文献】
実開平5−42954(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第102016105003(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012023847(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路を有しこの通風路の下流端が空調装置からの空気を車室へ吹き出すための吹出口として提供されるレジスタ本体と、上記通風路の吹出口側に配置された吹出側フィンアッセンブリと、上記吹出側フィンアッセンブリより奥に配置されたシャッタとを備え、
上記シャッタは第1方向に離間した2枚のルーバを有し、これらルーバが上記第1方向と直交する第2方向に延びる回動軸線を中心に、上記レジスタ本体に回動可能に支持されており、
さらに、上記2枚のルーバを反対方向に回動させて上記通風路内での姿勢を調節することにより、送風停止モードと基準送風モードとスポット送風モードを実行するルーバ調節手段を備え、
上記送風停止モードでは、上記2枚のルーバの一側縁部同士が当接し、他側縁部が上記レジスタ本体における上記第1方向に対峙する一対の壁部にそれぞれ当接し、上記基準送風モードでは、上記2枚のルーバが上記通風路に沿った姿勢となり、
上記スポット送風モードでは、上記2枚のルーバが吹き出し方向に向かって広がるように傾斜し、上記2枚のルーバ間に中央流路が形成されるとともに、上記レジスタ本体の上記一対の壁部と上記2枚のルーバとの間にはそれぞれ側部流路が形成され、上記中央流路の流通断面積は吹き出し方向に向かって漸次増大し、上記側部流路の流通断面積は吹き出し方向に向かって漸次減少することを特徴とする車両用レジスタ装置。
【請求項2】
上記ルーバ調節手段は、上記スポット送風モードにおいて、上記2枚のルーバの上流側の側縁部同士が近づくようなルーバの回動を制限する回動制限手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項3】
上記2枚のルーバの回動軸線は、上記通風路の軸線方向に沿ってずれた位置にあり、上記送風停止モードでは、上記ルーバの一側縁部同士が上記通風路の軸線方向に重なることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項4】
上記ルーバ調節手段は、上記レジスタ本体における上記第2方向に対峙する他の一対の壁部のうちの一方の外側面に配置され、当該外側面の吹出側端部に回動可能に支持された操作ダイヤルと、この操作ダイヤルより奥に配置されたカム部材と、上記操作ダイヤルと上記カム部材を連結し上記操作ダイヤルの回動に伴い上記カム部材を上記通風路の軸線方向に移動させる連結リンクと、上記2枚のルーバにそれぞれ連結された2つの回動リンクとを備え、
上記カム部材は、上記通風路の軸線方向に離間するとともに上記第1方向に延びる2つのカム部を有し、上記回動リンクの各々は、上記2枚のルーバの回動軸線から離れたカムフォロアを有し、
上記2つの回動リンクのカムフォロアが上記カム部材の2つのカム部にそれぞれ係合することにより、上記カム部材の移動に伴い上記2枚のルーバが反対方向に回動することを特徴とする請求項3に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項5】
上記吹出側フィンアッセンブリと上記シャッタが離間して配置され、上記吹出側フィンアセンブリの複数のフィンが、上記第1方向に間隔をおいて配置されるとともに、上記レジスタ本体に上記第2方向に延びる回動軸線を中心にして回動可能に支持されており、
さらに吹出側フィン調節手段を備え、この吹出側フィン調節手段は、上記複数のフィンを同時に回動させて上記第1方向における吹出し方向を調節することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用レジスタ装置。
【請求項6】
さらに上記吹出側フィンアッセンブリと上記シャッタとの間に配置された奥側フィンアッセンブリと、奥側フィン調節手段を備え、この奥側フィンアッセンブリの複数のフィンは、上記第2方向に間隔をおいて配置されるとともに、上記レジスタ本体に上記第1方向に延びる回動軸線を中心にして回動可能に支持されており、上記奥側フィン調節手段は、これらフィンを同時に回動させて上記第2方向における吹出し方向を調節することを特徴とする請求項5に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項7】
上記吹出側フィンアッセンブリの複数のフィンは、その間隔が吹き出し方向に向かって広がるように配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項8】
上記第1方向が上下方向であり、上記第2方向が左右方向であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車両用レジスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において空調装置からの空気を車室に吹き出すためのレジスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネル等に設置されるレジスタ装置の構造は、特許文献1の
図3に従来技術として開示されている。このレジスタ装置は、通風路を有するレジスタ本体と、通風路の吹出口に配置された吹出側フィンアッセンブリと、通風路の奥に配置された奥側フィンアッセンブリと、さらにその奥に配置されたシャッタを備えている。吹出側フィンアッセンブリは、上下方向に間隔をおいて配置されるとともに左右方向に延びる複数のフィンを有しており、これらフィンの傾きを調節することにより吹き出し方向を上下に調節することができる。奥側フィンアッセンブリは、左右方向に間隔をおいて配置されるとともに上下方向に延びる複数のフィンを有し、これらフィンの傾きを調節することにより吹き出し方向を左右に調節することができる。シャッタは1枚のルーバからなり、このルーバを回動させることにより、通風路を開閉したり送風量を調節することができる。
上記レジスタ装置では、狭い範囲に空気を吹き出すスポット送風モードを実行することはできない。
【0003】
特許文献1の
図1、
図2に開示されたレジスタ装置では、シャッタが2枚のルーバで構成されている。2枚のルーバは、レジスタ本体の上下の壁部近傍に配置されるとともに左右の壁部に回動可能に支持され、ルーバ調節手段により互いに反対方向に回動されてその姿勢を調節される。このレジスタ装置では、次の4つのモードが選択される。
(a)通常送風モード。この通常送風モードでは、2枚のルーバが通風路と平行をなし、2枚のルーバ間の中央の流路と、2枚のルーバと上下の壁部との間にそれぞれ形成される上下の流路が形成され、通風路が全開になっている。
(b)拡散送風モード。この拡散送風モードでは、2枚のルーバが吹き出し方向に向かって広がるように傾斜し、その下流側の縁部がレジスタ本体の上壁部と下壁部に当たっており、2枚のルーバ間の中央流路だけが開かれている。
(c)スポット送風モード。このスポット送風モードでは、2枚のルーバが吹き出し方向に向かって狭まるように傾斜し、その上流側の縁部がレジスタ本体の上壁部と下壁部の段差に位置しており、2枚のルーバ間の中央流路だけが開かれている。
(d)送風停止モード。この送風停止モードでは、2枚のルーバが吹き出し方向に向かって狭まるように傾斜し、その傾斜角度がスポット送風モードより大きい。2枚のルーバの上流側の縁部がレジスタ本体の上壁部と下壁部に当たり、下流側の縁部が互いに当接することにより、通風路が閉じられている。
【0004】
本発明と関連する他の先行技術として特許文献2,3を挙げる。
特許文献2の車両用レジスタ装置では、吹出側フィンアッセンブリの複数のフィンが吹き出し方向に向かって広がるように配置され、拡散送風を行なえるようになっている。
特許文献3の車両用レジスタ装置では、2枚のルーバが装置本体の吹出口に配置され、これらルーバの傾斜角度を変えることにより、全開(通常送風)、全閉(送風停止)、拡散送風を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−55046号公報
【特許文献2】特開2005−132312号公報
【特許文献3】実開昭60−159939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の
図1、
図2に示すレジスタ装置では、スポット送風モードにおいて2枚のルーバ間の中央の流路のみが開かれるが、この中央流路の上流側端部の流通断面積が小さいため、吹き出し量自体が大きく低減してしまい、スポット送風の効果を発揮できない。
【0007】
特許文献2のレジスタ装置はシャッタを備えていない。特許文献3のレジスタ装置は、フィンアッセンブリを備えておらず、シャッタが吹出口に配置されているので、2枚のルーバの姿勢変化に伴う空気の吹き出し方が本願発明と異なる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、車両用レジスタ装置において、通風路を有しこの通風路の下流端が空調装置からの空気を車室へ吹き出すための吹出口として提供されるレジスタ本体と、上記通風路の吹出口側に配置された吹出側フィンアッセンブリと、上記吹出側フィンアッセンブリより奥に配置されたシャッタとを備え、上記シャッタは第1方向に離間した2枚のルーバを有し、これらルーバが上記第1方向と直交する第2方向に延びる回動軸線を中心に、上記レジスタ本体に回動可能に支持されており、
さらに、上記2枚のルーバを反対方向に回動させて上記通風路内での姿勢を調節することにより、送風停止モードと基準送風モードとスポット送風モードを実行するルーバ調節手段を備え、上記送風停止モードでは、上記2枚のルーバの一側縁部同士が当接し、他側縁部が上記レジスタ本体における上記第1方向に対峙する一対の壁部にそれぞれ当接し、上記基準送風モードでは、上記2枚のルーバが上記通風路に沿った姿勢となり、上記スポット送風モードでは、上記2枚のルーバが吹き出し方向に向かって広がるように傾斜し、上記2枚のルーバ間に中央流路が形成されるとともに、上記レジスタ本体の上記一対の壁部と上記2枚のルーバとの間にはそれぞれ側部流路が形成され、上記中央流路の流通断面積は吹き出し方向に向かって漸次増大し、上記側部流路の流通断面積は吹き出し方向に向かって漸次減少することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、スポット送風モードにおいて、中央流路を通る空気流を負圧にし、その両側の側部流路を通る空気流を加圧することにより、2枚のルーバの下流域で加圧空気流が中央に引き寄せられて吹出側フィンアッセンブリに向かうため、スポット送風を行なうことができる。また、空気は中央流路とその両側の側部流路を通るため、流量が著しく減じられることがないので、良好なスポット送風を行なうことができる。
【0010】
好ましくは、上記ルーバ調節手段は、上記スポット送風モードにおいて、上記2枚のルーバの上流側の側縁部同士が近づくようなルーバの回動を制限する回動制限手段を有する。
上記構成によれば、最適のスポット送風を実現できる。
【0011】
好ましくは、上記2枚のルーバの回動軸線は、上記通風路の軸線方向に沿ってずれた位置にあり、上記送風停止モードでは、上記ルーバの一側縁部同士が上記通風路の軸線方向に重なる。
上記構成によれば、送風停止モードにおいて通風路を確実に閉じることができる。
【0012】
好ましくは、上記ルーバ調節手段は、上記レジスタ本体における上記第2方向に対峙する他の一対の壁部のうちの一方の外側面に配置され、当該外側面の吹出側端部に回動可能に支持された操作ダイヤルと、この操作ダイヤルより奥に配置されたカム部材と、上記操作ダイヤルと上記カム部材を連結し上記操作ダイヤルの回動に伴い上記カム部材を上記通風路の軸線方向に移動させる連結リンクと、上記2枚のルーバにそれぞれ連結された2つの回動リンクとを備え、上記カム部材は、上記通風路の軸線方向に離間するとともに上記第1方向に延びる2つのカム部を有し、上記回動リンクの各々は、上記2枚のルーバの回動軸線から離れたカムフォロアを有し、上記2つの回動リンクのカムフォロアが上記カム部材の2つのカム部にそれぞれ係合することにより、上記カム部材の移動に伴い上記2枚のルーバが反対方向に回動する。
上記構成によれば、吹出口から離れたルーバの姿勢を比較的簡単な構成のルーバ調節手段で調節することができる。また、回動軸線が通風路の軸線方向にずれた2枚のルーバを確実に回動させることができる。
【0013】
好ましくは、上記吹出側フィンアッセンブリと上記シャッタが離間して配置され、上記吹出側フィンアセンブリの複数のフィンが、上記第1方向に間隔をおいて配置されるとともに、上記レジスタ本体に上記第2方向に延びる回動軸線を中心にして回動可能に支持されており、さらに吹出側フィン調節手段を備え、この吹出側フィン調節手段は、上記複数のフィンを同時に回動させて上記第1方向における吹出し方向を調節する。
上記構成によれば、吹出側フィンアッセンブリとシャッタが離間しているので、スポット送風モードにおいて、第1方向に間隔をおいて配置された吹出側フィンアッセンブリの複数のフィンが、シャッタ下流域での空気流の集中を妨げることはない。
【0014】
好ましくは、さらに上記吹出側フィンアッセンブリと上記シャッタとの間に配置された奥側フィンアッセンブリと、奥側フィン調節手段を備え、この奥側フィンアッセンブリの複数のフィンは、上記第2方向に間隔をおいて配置されるとともに、上記レジスタ本体に上記第1方向に延びる回動軸線を中心にして回動可能に支持されており、上記奥側フィン調節手段は、これらフィンを同時に回動させて上記第2方向における吹出し方向を調節する。
上記構成によれば、車室への空気吹き出し方向を上下左右に調節することができる。奥側フィンアッセンブリはシャッタの下流域に配置されているが、奥側フィンアッセンブリの複数のフィンはルーバの回動軸線と直交する方向に延びているため、スポット送風モードでの空気流の集中を妨げることはない。
【0015】
好ましくは、上記吹出側フィンアッセンブリの複数のフィンは、その間隔が吹き出し方向に向かって広がるように配置されている。
上記構成によれば、基準送風モードでは、空気を第1方向に拡散するように吹き出すことができ、拡散送風モードとすることができる。
【0016】
好ましくは、上記第1方向が上下方向であり、上記第2方向が左右方向である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シャッタの2枚のルーバを調節することにより、簡単な構造で十分な吹き出し量のスポット送風を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用レジスタ装置の縦断面図である。
【
図2】上記レジスタ装置の平断面図であり、一部構成を省略して示す。
【
図3】上記レジスタ装置のシャッタの2枚のルーバを操作するためのルーバ調節手段を示す側面図である。
【
図4】上記レジスタ装置におけるレジスタ本体と2枚のルーバとルーバ調節手段を分解して示す斜視図である。
【
図5】上記レジスタ装置の縦断面図であり、(A)は送風停止モードを実行している状態、(B)は拡散送風モードを実行している状態、(C)はスポット送風モードを実行している状態を、それぞれ示す。
【
図6】上記ルーバ調節手段の側面図であり、(A)は送風停止モードを実行している状態、(B)は拡散送風モードを実行している状態、(C)はスポット送風モードを実行している状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図示のレジスタ装置は、車両のインストルメントパネル(図示しない)の助手席または運転席に臨んで設置されている。
図1、
図2に示すように、レジスタ装置はレジスタ本体10を備えており、このレジスタ本体10の上流端はダクトを介して空調装置(いずれも図示しない)に接続されている。
【0020】
レジスタ本体10は筒形状をなして車両の前後方向に延びており、その内部空間が通風路15として提供される。通風路15の下流端が吹出口15aとなっている。
レジスタ本体10は、断面矩形をなしており、左右の側壁部11と、上壁部13と下壁部14とを有している。
【0021】
上記レジスタ本体10の通風路15には、吹出側フィンアッセンブリ20と、奥側フィンアッセンブリ30と、シャッタ40が配置されている。吹出側フィンアッセンブリ20は、吹出口15aに配置され、奥側フィンアッセンブリ30は、吹出口15aから離れ吹出側フィンアッセンブリ20より上流側すなわち奥側に配置されている。シャッタ40は、奥側フィンアッセンブリ30よりさらに奥側に配置されている。
【0022】
吹出側フィンアッセンブリ20は、複数例えば5枚のフィン21と、これらフィン21を回動可能に連結する連動リンク22とを有している。
複数のフィン21は、左右方向(第2方向)に延びる細長い板形状をなし、上下方向(第1方向)に間隔をおいて配置されている。複数のフィン21の左右両端の回動軸部21aは、レジスタ本体10の一方の側壁部11に形成された軸受穴11aと、他方の側壁部11に固定された軸受部材25の軸受穴25aに、それぞれ回動可能に支持されている。
【0023】
連動リンク22は上下方向に延びており、この連動リンク22に、複数のフィン21の一端部に形成された連結軸部21bが回動可能に連結されている。連結軸部21bは、回動軸部21aと平行をなし回動軸部21aより上流側(奥側)に配置されている。この連動リンク22により、複数のフィン21が連動するようになっている。
【0024】
上記連結軸部21bの形成位置は、フィン21毎に肉厚方向にずれており、これにより、上記複数のフィン21は、吹き出し方向に向かって互いの間隔が広がるように配置されている。複数のフィン21における回動軸部21aと連結軸部21bの形成位置は、複数のフィン21と連動リンク22が平行リンク機構を構築するように定められている。
【0025】
中央のフィン21には、操作つまみ50が取り付けられている。この操作つまみ50を掴んで、中央のフィン21を、上記回動軸部21aを通る回動軸線(左右方向に延びる回動軸線)を中心に回動すると、他のフィン21も連動リンク22を介して同時に回動される。これにより、吹出側フィンアッセンブリ20は、吹き出し方向を上下に調節することができる。
上記説明から明らかなように、上記操作つまみ50と上記連動リンク22は、フィン21の角度を調節するための吹出側フィン調節手段を構成している。
【0026】
奥側フィンアッセンブリ30は、複数例えば4枚のフィン31と、これらフィン31を連結する連動リンク32とを有している。
複数のフィン31は、上下方向に延びる細長い板形状をなし、左右方向に間隔をおいて配置されている。複数のフィン31の上下端の回動軸部31aは、上壁部13に形成された軸受穴(図示しない)と、下壁部14に固定された軸受部材35の軸受穴(図示しない)に、それぞれ回動可能に支持されている。
【0027】
上記連動リンク32は左右方向に延びており、この連動リンク32に複数のフィン31の一端部に形成された連結軸部31bが回動可能に連結されている。連結軸部31bは、回動軸部31aと平行をなし回動軸部31aより上流側(奥側)に配置されている。この連動リンク32により、複数のフィン31が連動するようになっている。
【0028】
吹出側フィンアッセンブリ20と同様に、上記連結軸部31bの形成位置は、フィン31毎に肉厚方向にずれており、これにより、上記複数のフィン31は、吹き出し方向に向かって互いの間隔が広がるように配置されている。
【0029】
上記操作つまみ50は、吹出側フィンアッセンブリ20のフィン21に左右方向のスライドを可能にして支持されている。操作つまみ50には、奥に向かって突出する係合部材51が上下方向の揺動可能に支持されており、この係合部材51にはスリット51aが形成されている。一方、奥側フィンアッセンブリ30における中間のフィン31はピン31cを有しており、このピン31cが上記係合部材51のスリット51aに挿入されている。このピン31cは回動軸部31aより下流側に配置され、上下方向に延びている。この中間のフィン31は、ピン31cに隣接する切欠31dを有しており、後述する角度調節の際に上記係合部材51とフィン31との干渉を回避するようになっている。
【0030】
操作つまみ50をフィン21に沿って左右方向にスライドさせると、中間のフィン31が回動軸部31aを通る回動軸線(上下方向に延びる回動軸線)を中心に回動し、連動リンク32を介して他のフィン31が同時に回動する。これにより、奥側フィンアッセンブリ30は、吹き出し方向を左右に調節することができる。
上記説明から明らかなように、上記操作つまみ50と係合部材51と連動リンク32は、フィン31の角度を調節するための奥側フィン調節手段を構成している。
【0031】
上記シャッタ40は、上下2枚のルーバ41,42を有している。これらルーバ41,42は、左右方向に延びる細長い板形状をなすルーバ本体41a,42aと、これらルーバ本体41a,42aの一方の側縁部の面に取り付けられたゴム製のパッキン41b,42bと、他方の側縁部に嵌め込まれたゴム製のパッキン41c,42cとで構成されている。
【0032】
ルーバ41,42は、左右方向に延びる回動軸線L1、L2を中心に回動可能にしてレジスタ本体10に支持されている。これらルーバ41,42の回動軸線L1,L2の位置は通風路15の軸線方向にずれている。本実施形態では、上側ルーバ41の回動軸線L1に対して、下側ルーバ42の回動軸線L2が、吹出口15a寄りに偏倚している。
【0033】
上記ルーバ41,42を回動可能に支持する構造について詳述する。
図2〜
図4に示すように、ルーバ41,42は、その右端(車室から見て右端)に回動軸部41x,42xを有しており、これら回動軸部41x,42xがレジスタ本体10の右側の側壁部11に形成された軸受穴11x,11xに回動可能に支持されている。
【0034】
上記ルーバ41,42の左端(車室から見て左端)は、後述するルーバ調節手段60の回動リンク61,62を介してレジスタ本体10の左側の側壁部11に回動可能に支持されている。具体的には、ルーバ41,42の左端面には非円形の挿入穴41y,42yが形成されている。レジスタ本体10の左側の側壁部11には、軸受穴11y,11yが形成されている。回動リンク61,62は、軸受穴11y,11yに嵌る回動軸部61a,62aを有するとともに、この回動軸部61a,62aから水平方向に突出して上記ルーバ41,42の挿入穴41y,42yに嵌る断面非円形の挿入部61b,62bを有している。これにより、ルーバ41,42の左端部が左側の側壁部11に回動可能に支持されている。
【0035】
上記2枚のルーバ41,42は、レジスタ本体10の左側の側壁部11の外側面に沿って配置されたルーバ調節手段60により、互いに反対方向に回動され、その姿勢を調節されるようになっている。
ルーバ調節手段60は、上述した2つの回動リンク61,62の他に、操作ダイヤル65(操作部材)と、この操作ダイヤル65より奥側に位置するカム部材66と、操作ダイヤル65とカム部材66を連結する連結リンク66とを備えている。
【0036】
操作ダイヤル65は、左側の側壁部11の外側面の吹出側端部に形成された支持軸部16に、回動可能に支持されており、その半円状をなすダイヤル部65aの一部がインストルメントパネルから車室側に突出している。
【0037】
左側の側壁部11の外側面には支持軸部11bの奥側に位置する円弧形状の係止壁17が形成されている。この係止壁部17の上端17aと下端17bは、後述するようにダイヤル部65aの上下端を係止するストッパ(回動制限手段)として提供され、これにより操作ダイヤル65の回動範囲が規制されている。
【0038】
操作ダイヤル65の下部には連結穴65xが形成され、カム部材66の下部にも連結穴66xが形成されており、これら連結穴65x、66xに、連結リンク67の両端部の連結凸部67aが回動可能に嵌っている。操作ダイヤル65の回動操作により、連結リンク67を介してカム部材66が車両前後方向(通風路15の軸線方向)に移動する。
【0039】
カム部材66には、上下方向に延びる2つのスリット66a,66b(カム部)が車両前後方向に離れて形成されている。
一方、回動リンク61,62は、左側の側壁部11の外側面に沿って延びるアーム部61c,62cと、このアーム部61c,62cの先端部に形成されたピン部61d、62d(カムフォロア)を有している。ピン部61d,62dは側壁部11と直交する方向に突出している。
【0040】
奥側のスリット66aには、回動リンク61のピン部61dが挿入され、吹出側のスリット66bには、回動リンク62のピン部62dが挿入されている。これにより、カム部材66が車両前後方向に移動すると、これらピン部61d,62dとスリット66a,66bのカム作用により、回動リンク61,62が回動し、ひいてはルーバ41,42が回動するようになっている。
【0041】
回動リンク61のピン部61dは回動軸線L1より下方に位置し、回動リンク62のピン部62dは回動軸線L2より上方に位置している。そのため、上記カム部材66の車両前後方向移動に伴い、回動リンク61,62が反対方向に回動し、ひいてはルーバ41,42が反対方向に回動するようになっている。
【0042】
上記回動リンク61,62とカム部材66は、レジスタ本体10の左側の側壁部11に形成された枠部19の内側に配置され、カバー69で覆われている。
【0043】
上記構成をなすレジスタ装置は、操作ダイヤル65の回動操作に伴い、送風停止モードと基準送風モードとスポット送風モードを順に実行することができる。以下、
図5、
図6を参照しながら説明する。
【0044】
図5(A)、
図6(A)は送風停止モードを実行している状態を示す。この送風停止モードでは、カム部材66が最も奥に位置し、回動リンク61,62のピン部61d,62dも最も奥に位置している。ルーバ41,42は略垂直をなしており、通風路15を塞いでいる。具体的には、ルーバ41,42の一方の側縁部のパッキン41b,42b同士が弾性変形を伴って当たり、他方の側縁部のパッキン41c、42cが弾性変形を伴ってレジスタ本体10の上壁部13と下壁部14に当たっている。
【0045】
上記送風停止モードでは、操作ダイヤル65のダイヤル部65aの下端が係止壁17の下端17bに当たって操作ダイヤル65の時計回り方向の回動が規制され、これによりパッキン41b、42b同士の過度の押圧、パッキン41c、42cと上壁部13、下壁部14との間の過度の押圧を回避することができる。
【0046】
本実施形態では、ルーバ41,42の回動軸線L1,L2が車両前後方向にずれているため、ルーバ41,42は送風停止モードで略垂直状態となり、そのパッキン41b、42b(ルーバ41,42の側縁部)が通風路15の軸線方向から見て互いに重なるように配置される。そのため、送風を確実に停止することができる。
【0047】
図5(A)、
図6(A)の送風停止モードの状態から、操作ダイヤル65を反時計回りに回わすと、連結リンク67を介してカム部材66が吹き出し側へ移動する。すると、ピン部61d,62dとスリット66a,66bのカム作用により、上側の回動リンク61とルーバ41が反時計回り方向に回動し、下側の回動リンク62とルーバ42が時計回り方向に回動する。その結果、通風路15が開き、空調装置からの温度調節された空気が、ダクトを通りレジスタ本体10の通風路15を通って車室に向かって吹き出す。
【0048】
上記操作ダイヤル65の回動操作を続けると、
図5(B)、
図6(B)に示すように基準送風モードを実行する状態になる。この基準送風モードでは、ルーバ41,42が水平となり通風路15の軸線に対して平行となる。この状態で通風路15は、ルーバ41,42間の中央の流路15xと、ルーバ41と上壁部13との間の上側流路15y(側部流路)と、ルーバ42と下壁部14との間の下側流路15z(側部流路)に区分けされ、各流路15x,15y,15zは、その上流端から下流端まで流通断面積が殆ど変化しないので、流通抵抗が最も小さい。
【0049】
上記基準送風モードにおいて、上記流路15x,15y,15zを通過した空気は、前述したように、奥側フィンアッセンブリ30で左右に方向付けられ、吹出側フィンアセンブリ20で上下に方向付けられる。本実施形態では、奥側フィンアッセンブリ30の複数のフィン31は、吹き出し方向に向かって互いの間隔が広がっているため、奥側フィンアッセンブリ30を通過した空気は左右に拡散する。さらに吹出側フィンアッセンブリ20でも複数のフィン21が吹き出し方向に向かって互いの間隔が広がっているため、吹出側フィンアッセンブリ20を通過した空気は上下に拡散する。その結果、広い範囲にわたり、空気を吹き出すことができる。
上記の説明から明らかなように、本実施形態では基準送風モードは拡散送風モードとなる。
【0050】
図5(B)、
図6(B)の基準送風モード(拡散送風モード)の状態から、さらに操作ダイヤル65を反時計回り方向に回すと、カム部材66がさらに吹き出し方向に移動し、これに伴い、回動リンク61とルーバ41が反時計回り方向に回動し、回動リンク62とルーバ42が時計回り方向に回動して、
図5(C)、
図6(C)に示すスポット送風モードを実行する状態になる。
【0051】
スポット送風モードでは、ルーバ41,42が吹き出し方向に向かって互いの間隔が広がるように傾斜している。そのため、中央流路15xの流通断面積は、上流端で狭く、下流端に向かって徐々に広くなる。これとは逆に、上側流路15yと下側流路15zの流通断面積は、上流端で広く、下流端に向かって徐々に狭くなる。その結果、ルーバ41,42の下流側の流域、具体的には奥側フィンアッセンブリ30が配置されている流域では、中央の流路15xからの空気が負圧状態で流れ込み、上下の流路15y、15zからの空気が加圧状態で流れ込む。この圧力差により上下の加圧空気が中央部に引き寄せられ、中央部に集中した空気が吹出側フィンアッセンブリ20の中央部(上下方向の中央部)に向かい、吹出側フィンアッセンブリ20から車室へ吹き出される。このように、上下方向に吹出し範囲が狭められるため、スポット送風となる。
【0052】
スポット送風モードの状態では、中央流路15xの上流端の流通断面積が、上側流路15yと下側流路15zの各々の上流端の流通断面積より小さいので、上下の加圧空気の中央への集中がより円滑に行われる。
【0053】
ルーバ41,42の下流側流域に配置された奥側フィンアッセンブリ30では複数のフィン31が上下に延びるように配置されているので、上下の加圧された空気流が中央に引き寄せられる際の支障にならない。このスポット送風モードでも、左右方向、上下方向に送風方向を調節することができる。
【0054】
上記スポット送風モードにおいて、操作ダイヤル65のダイヤル部65aの上端が係止壁17の上端17aに当たって操作ダイヤル65のさらなる反時計回り方向の回動が規制される。これにより、良好なスポット送風モードを確実に実行することができる。
【0055】
本発明は上記実施形態に制約されず、さらに種々の態様が可能である。
上記実施形態において、吹出側フィンアッセンブリ20の複数のフィン21は互いに平行をなしていてもよい。この場合、基準送風モードでは、送風は上下に拡散されない。奥側フィンアッセンブリ30の複数のフィン31も互いに平行をなしていてもよい。
奥側フィンアッセンブリ30は省いてもよい。その場合、シャッタ40と吹出側フィンアッセンブリ20とを離間させ十分なスペースを確保する。
吹出側フィンアッセンブリのフィンの回動軸線とルーバの回動軸線が上下方向に延び、奥側フィンアッセンブリのフィンの回動軸線が左右方向に延びていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、車両の空調のためのレジスタ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 レジスタ本体
15 通風路
15a 吹出口
15x 中央流路
15y 上側流路(側部流路)
15z 下側流路(側部流路)
17 係止壁部の上端(ストッパ;回動規制手段)
20 吹出側フィンアッセンブリ
21 フィン
30 奥側フィンアッセンブリ
31 フィン
40 シャッタ
41,42 ルーバ
60 ルーバ調節手段
61,62 回動リンク
61c,62c アーム部
61d,62d ピン部(カムフォロア)
65 操作ダイヤル(操作部材)
66 カム部材
66a,66b スリット(カム部)
67 連結リンク
L1,L2 ルーバの回動軸線