特許第6463349号(P6463349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463349
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ポリアクリレートオイルゲル及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20190121BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20190121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/81
   A61K8/891
   A61Q19/00
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-521508(P2016-521508)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-523252(P2016-523252A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】US2014042699
(87)【国際公開番号】WO2014204937
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年5月29日
(31)【優先権主張番号】61/837,880
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンウェン・ゼン
(72)【発明者】
【氏名】イン・オコナー
(72)【発明者】
【氏名】シャオドン・リュー
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−040734(JP,A)
【文献】 特表平07−504441(JP,A)
【文献】 特開平11−079969(JP,A)
【文献】 特開2001−089325(JP,A)
【文献】 特表2006−502962(JP,A)
【文献】 特表2015−503513(JP,A)
【文献】 HERMSDORP H,SATURATED TRIGLYCERIDES AND THEIR DERIVATIVES IN COSMETIC CREAMS AND LOTIONS,COSMETICS & TOILETRIES,米国,1980年 4月 1日,VOL:95,PAGE(S):61 - 63
【文献】 PHILIP ALEXANDER,RECONSTITUTED TRIGLYCERIDES AND THEIR USE IN COSMETIC APPLICATIONS,SPC - SOAP,PERFUMERY & COSMETICS,1987年11月 1日,VOL:60 NR:11,PAGE(S):48 - 50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリレートオイルゲルを含むパーソナルケア組成物であって、
(a)少なくとも1つの化粧品的に許容される疎水性エステル油であって、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである化粧品的に許容される疎水性エステル油と、
(b)1つ以上の2つの段階のポリマーと、を含み、前記ポリマーが、
(i)第1の段階の重合単位であって、
(1)C1−C4(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、または置換スチレンのうちの少なくとも1つから選択される、前記重合単位の重量に基づいて、75重量%〜35重量%の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、及び
(2)C6〜C22のアルキル鎖長を持つ疎水性置換(メタ)アクリレートモノマーを含む、前記重合単位の重量に基づいて、25重量%〜65重量%の1つ以上の疎水性モノマーを含む、第1の段階の重合単位と、
(ii)第2の段階の重合単位であって、
(1)記重合単位の重量に基づいて、10重量%〜99重量%の1つ以上のモノマーであって、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、スチレン、及びイソボリルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマー
(2)前記重合単位の重量に基づいて、1〜10重量%の酸性官能基を含有する1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーを含む、第2の段階の重合単位と、
前記(ii)第2の段階の重合単位のポリマーが、50〜200℃の範囲のガラス転移温度を有し、前記第1の段階の重合単位の前記第2の段階の重合単位に対する重量比が、60:40〜90:10である、前記パーソナルケア組成物。
【請求項2】
前記(i)第1の段階の重合単位、前記(ii)第2の段階の重合単位、または前記(i)第1の段階の重合単位と前記(ii)第2の段階の重合単位の両方がさらに架橋剤を含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項3】
前記第1の段階の重合単位(i)が、−20〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1または2に記載のーソナルケア組成物。
【請求項4】
前記第1の段階の重合単位(i)のモノマー(1)が、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸、またはスチレンのうちの少なくとも2つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のーソナルケア組成物。
【請求項5】
前記第1の段階の重合単位(i)のモノマー(2)が、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、及びセチル−エイコシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、及びセチル−エイコシルアクリレート、ベヘニルアクリレートのうちの少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のーソナルケア組成物。
【請求項6】
前記第1の段階の重合単位(i)のモノマー(2)が、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、及びセチル−エイコシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、及びセチル−エイコシルアクリレート、ベヘニルアクリレートのうちの少なくとも2つである、請求項5に記載のーソナルケア組成物。
【請求項7】
前記第2の段階の重合単位(ii)が、60〜150℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のーソナルケア組成物。
【請求項8】
前記パーソナルケア組成物のpHが、5〜7である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のーソナルケア組成物。
【請求項9】
シリコーン油、シリコーンエラストマー、エモリエント、ポリ(メチルメタクリレート)粒子、またはポリエチレン粒子をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のーソナルケア組成物。
【請求項10】
ーソナルケア組成物のリアクリレートオイルゲルを作製する方法であって、前記ポリアクリレートオイルゲルが、
(a)少なくとも1つの化粧品的に許容される疎水性エステル油と、
(b)1つ以上の2つの段階のポリマーと、を含み、前記ポリマーが、
(i)第1の段階の重合単位であって、
(1)C1−C4(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、または置換スチレンのうちの少なくとも1つから選択される、前記重合単位の重量に基づいて、75重量%〜35重量%の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、及び
(2)C6〜C22のアルキル鎖長を持つ疎水性置換(メタ)アクリレートモノマーを含む、前記重合単位の重量に基づいて、25重量%〜65重量%の1つ以上の疎水性モノマーを含む、第1の段階の重合単位と、
(ii)第2の段階の重合単位であって、
(1)前記重合単位の重量に基づいて、10重量%〜99重量%の1つ以上のモノマーであって、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、スチレン、及びイソボリルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマー
(2)前記重合単位の重量に基づいて、1〜10重量%の酸性官能基を含有する1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーを含む、第2の段階の重合単位と、を含み、
前記(ii)第2の段階の重合単位のポリマーが、50〜200℃の範囲のガラス転移温度を有し、前記第1の段階の重合単位の前記第2の段階の重合単位に対する重量比が、60:40〜90:10であり、
乳化重合を使用して、前記第1の段階の重合単位(i)を重合することと、
前記第1の段階の重合単位(i)の存在下で、乳化重合を使用して、前記第2の段階の重合単位(ii)を重合し、それにより2つの段階のポリマー(b)を形成することと、
前記2つの段階のポリマー(b)を乾燥させることと、次いで、
乾燥した前記2つの段階のポリマー(b)を、前記少なくとも1つの化粧品的に許容される疎水性エステル油へ添加して、ポリアクリレートオイルゲルを形成することと、を含む、前記方法。
【請求項11】
前記乾燥が、凍結乾燥または噴霧乾燥である、請求項10に記載の法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルケア組成物における感覚的感触を改善するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
美粧性は、スキンケア組成物において重要な考慮すべき事項である。良好な感覚的感触を与えるためのリーブオンスキン組成物の必要性は周知であるが、そのような製品に平滑で絹のような感触を達成することは課題である。たとえそれ以外は優秀な機能性であったとしても、不良な感覚性能を持ついずれのフェイシャルケア、ボディケア、ハンドクリーム、日焼け止め、防臭剤、または化粧品に対しても、消費者は愛着を感じないだろう。
【0003】
従来、スキンケア技術分野は、良好な美粧性を与えるために、シリコーン油、硬質粒子(ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)粒子及びポリエチレン(PE)粒子など)、及びシリコーンエラストマーゲルといった感覚剤を開発してきた。しかしながら前述のものはそれぞれ、不十分な感覚性能、使用後に感じる皮膚の乾燥、または比較的高価であるというような特定の欠点に関係する。
【0004】
したがって、好ましくはスキンケア製剤における良好な安定性及び手触りを持った、費用効果のある高性能の感覚剤が必要とされる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一実施形態において、本発明は、(a)少なくとも1つの化粧品的に許容される疎水性エステル油と、(b)1つ以上のポリマーと、を含む、ポリアクリレートオイルゲルを含むパーソナルケア組成物を提供し、該1つ以上のポリマーは、(i)第1の重合単位であって、(1)C1−C4(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、または置換スチレンのうちの少なくとも1つから選択される、前記重合単位の重量に基づいて75重量%〜35重量%の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、及び(2)C8〜C22のアルキル鎖長を持つ疎水性置換(メタ)アクリレートモノマーを含む、前記重合単位の重量に基づいて25重量%〜65重量%の1つ以上の疎水性モノマーを含む、第1の重合単位と、(ii)第2の重合単位であって、(1)ポリマー形成後に80℃を超えるTgを有する、前記重合単位の重量に基づいて10重量%〜99重量%の1つ以上のモノマー、(2)酸性官能基を含有する1〜10%の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーを含む、第2の重合単位と、(iii)任意に架橋剤と、を含む。
【0006】
一実施形態において、ポリアクリレートオイルゲルは感覚剤または感覚調節剤として使用されて、優れた美粧性感触をパーソナルケア組成物へ与える。感覚調節剤に必要となるパーソナルケア組成物の例としては、フェイシャルケア、ボディケア、ハンドクリーム、日焼け止め、防臭剤、または化粧品組成物が挙げられる。ポリアクリレートオイルゲルに企図される使用レベルは、パーソナルケア組成物の0.5重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜6重量%、より好ましくは4重量%の範囲である。一実施形態において、パーソナルケア組成物のpHは5〜7である。
【0007】
ポリアクリレートオイルゲルは、1重量%〜50重量%の範囲での下で説明されるポリマー、及び油を含む。
【0008】
本明細書で使用されるように、「(メタ)アクリル酸の」とはアクリル酸の、またはメタクリル酸の、を意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とはアクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換」とは、例えばアルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、他の官能基、及びそれらの組み合わせといった、少なくとも1つの付属の化学基を有することを意味する。
【0009】
スチレン及び置換スチレンモノマーは、1分子当たり1つのエチレン性不飽和基を有する。スチレン及び置換スチレンモノマーの例としては、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレンが挙げられる。好ましいスチレン及び置換スチレンモノマーとしては、スチレン(Sty)及び4−メチルスチレン(ビニルトルエン)が挙げられる。
【0010】
酸性官能基を含有する好ましい(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸が挙げられる。酸性官能基を含有するより好ましい(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0011】
化粧品的に許容される疎水性エステル油
一実施形態において、化粧品的に許容される疎水性エステル油は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。一実施形態において、化粧品的に許容される疎水性エステル油は油系に拡散される。好適な油系には、パーソナルケア製品で従来使用されるいずれの油または油の混合物も含まれる。例には、イソプロピルパルミテート、オクチルパルミテート、ブチルステアレート、イソセチルステアレート、オクタドデシルステアロイルステアレート、ジイソプロピルアジペート、ジオクチルセバケート、パラフィン油、パラフィンワックス、ミンク油、ヤシ油、ダイズ油、パーム油、コーン油、ココアバター、ゴマ油、ヒマワリ油、ホホバ油、オリーブ油、ラノリン油といった動物性油及び植物性油、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、イソセチルアルコールといった脂肪アルコールなどの飽和脂肪エステル及びジエステルが含まれる。列挙される油はただの例に過ぎず、如何様にも本発明を限定することを意図されない。概して、ヒトまたは動物の使用において毒物学的に安全であるいずれの疎水性材料またはそれらの混合物も、本発明の油系を構成し得る。
【0012】
2つの段階のポリマー
本発明に従って有用に採用されるポリマーは、従来の乳化、溶液、または懸濁重合によって調製され得る。乳化重合が好ましい。ポリマーを調製するために使用されるモノマーは、逐次プロセスまたは無作為に添加されて、非ランダムまたはランダムポリマーに過酸化化合物またはジアゾ化合物といったフリーラジカル開始剤、及び任意に連鎖移動剤を使用させる。一次ポリマー鎖長は典型的に、いずれの架橋も除去された場合、分子量(Mw)が約50,000〜10,000,000、あるいは100,000〜5,000,000、あるいは200,000〜2,000,000の範囲であるようになる。
【0013】
フリーラジカル開始剤は、溶液及び乳化重合において利用される。好適なフリーラジカル開始剤には、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ナトリウム、カリウム、リチウム及び過硫酸アンモニウム等が含まれる。アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、ヒドロサルファイト、及び次亜流酸塩を含む重亜硫酸塩及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムといった還元剤、またはアスコルビン酸またはイソアスコルビン酸といった還元糖が、開始剤と組み合わせて使用されてレドックス系を形成し得る。懸濁重合に有用に採用される開始剤には、油溶性過酸化物、ヒドロペルオキシド、及びAIBNといったアゾ化合物が含まれる。開始剤の量は、充填された及びレドックス系のモノマーの0.01重量%〜約2重量%であり、還元剤の0.01重量%〜約2重量%の対応する範囲が使用され得る。鉄及び銅塩といった遷移金属触媒が使用され得る。
【0014】
重合温度は、水性乳化、懸濁、及び溶液重合において約10℃〜120℃の範囲であり得る。過硫酸系の場合は、好ましくは、温度は60℃〜90℃の範囲である。レドックス系において、好ましくは、温度は20℃〜70℃の範囲であり得る。
【0015】
エマルジョンポリマーにおいて、モノマーエマルジョンまたはポリマーエマルジョンを調製するために、任意に採用されるいずれの乳化剤または分散剤もアニオン、カチオン、またはノニオン型であり得る。いずれの2つ以上の型の混合物もまた使用され得る。好適なノニオン性乳化剤には、限定されないが、エトキシル化オクチルフェノール、エトキシル化ノニルフェノール、エトキシル化脂肪アルコール等が含まれる。好適なアニオン性乳化剤には、限定されないが、硫酸ラウリルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルフェノール、オクチルフェノール、及び脂肪アルコールの硫酸化及びエトキシル化誘導体、エステル化スルホサクシネート等が含まれる。好適なカチオン性乳化剤には、限定されないが、ラウリルピリジニウムクロリド、セチルジメチルアミンアセテート、(C−C18)アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が含まれる。乳化剤のレベルは、充填された総モノマーに基づいて、約0.1重量%〜約10重量%であり得る。
【0016】
一実施形態において、第1の重合単位(i)は、−20〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する。一実施形態において、モノマー(1)は、第1の重合単位(i)の75重量%〜35重量%の範囲内に存在する。好ましいモノマー(1)は、C4以下のアルキル鎖長を持つ(メタ)アクリレートモノマーである。より好ましいモノマー(1)は、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びメタクリル酸である。
【0017】
一実施形態において、モノマー(2)は、第1の重合単位(i)の25重量%〜65重量%の範囲で存在する。一実施形態において、モノマー(2)は、C6〜C22のアルキル鎖長を持つ疎水性置換(メタ)アクリレートモノマーである。好ましいモノマー(2)は、エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、及びセチル−エイコシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、セチル−エイコシルアクリレート、及びベヘニルアクリレートから選択される1または2つのモノマーである。最も好ましいモノマー(2)は、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、及びステアリルメタクリレートから選択される1または2つのモノマーである。
【0018】
一実施形態において、第2の重合単位(ii)は、60〜150℃の範囲のガラス転移温度を有する。一実施形態において、第2の重合単位(ii)は、(1)ポリマー形成後、80℃を超えるTgを有する、該重合単位に基づいて、10〜99重量%の1つ以上のモノマー、(2)酸性官能基を含有する1〜10%の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーを含む。一実施形態において、第2の重合単位(ii)は、例えば、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、スチレン、及びイソボリルメタクリレートといった80℃より高いガラス転移温度を有する。
【0019】
高いガラス転移温度(「Tg」)を持つポリマーは、典型的にポリマーフィルム特性の粘着性を低下させるために使用される。しかしながら、高いTgのポリマーは、極端に硬く脆いフィルムを形成するという欠点を有する。好ましくは、第2の段階のポリマーのTgは、約50〜200℃、あるいは、75〜150℃、あるいは80〜120℃の範囲である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、段階1及び段階2の比率は、50:50を超える、好ましくは60:40を超える。本発明のいくつかの実施形態において、段階1及び段階2の比率は、99:1未満である、好ましくは90:10未満である。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の重合単位(i)、第2の重合単位(ii)、または両方は、架橋剤をさらに含む。架橋剤は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーであり、例えば、ジビニル芳香族化合物、ジ−、トリ−及びテトラ−(メタ)アクリレートエステル、ジ−、トリ−及びテトラ−アリルエーテルまたはエステル化合物、及びアリル(メタ)アクリレートなどを含み得る。そのようなモノマーの好ましい例としては、ジビニルベンゼン(DVB)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ビスフェノールAジアリルエーテル、アリルスクロース、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート(ALMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ヘキサン−1,6−ジオールジアクリレート(HDDA)、及びブチレングリコールジメタクリレート(BGDMA)が挙げられる。とりわけ好ましい架橋剤には、DVB、ALMA、EGDMA、HDDA、及びBGDMAが含まれる。最も好ましい架橋剤はALMAである。本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー中の重合された架橋剤残基の量は、少なくとも0.01%、あるいは少なくとも0.02%、あるいは少なくとも0.05%である。本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー中の架橋剤残基の量は、0.3%以下、あるいは0.2%以下、あるいは0.15%以下である。
【0022】
一実施形態において、ポリアクリレートオイルゲルは、シリコーン油、硬質粒子(ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)粒子及びポリエチレン(PE)粒子など)、及びシリコーンエラストマーゲルといった、従来の感覚剤と組み合わせられる。
【0023】
シリコーンには、シリコーン油、例えば、室温で液状またはペースト状である線状または環状シリコーン鎖を含む揮発性または不揮発性ポリメチルシロキサン(PDMS)、特にシクロペンタシロキサン及びシクロヘキサジメチルシロキサンといったシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコーン)、シリコーン鎖に吊架する、またはその終端にあるアルキル、アルコキシまたはフェニル基を含むポリジメチルシロキサンが含まれ、これらの基は、2〜24個の炭素原子、フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン2−フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、及びポリメチルフェニルシロキサン、部分的に炭化水素系及び/または部分的にシリコーン系のフルオロ油といったフルオロ油、好ましくはジメチコーン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、パーソナルケア組成物の重量当たり、シリコーンは約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.75重量%〜約3重量%、より好ましくは約1重量%〜約2重量%の範囲で存在する。
【0024】
一実施形態において、本発明は、乳化重合を使用して第1の重合単位(i)を重合することと、第1の重合単位(i)の存在下で乳化重合を使用して第2の重合単位(ii)を重合し、それによりポリマー(b)を形成することと、ポリマーbを粉末形態として単離することと、1つの好ましい実施形態においてポリマー(b)を乾燥させることと、次いで、ポリマー(b)へ少なくとも1つの化粧品的に許容される疎水性エステル油を添加してポリアクリレートオイルゲルを形成することと、を含む、ポリアクリレートオイルゲルを作製する方法を提供する。ポリマー粒子の粉末形態は、凍結乾燥、噴霧乾燥、または凝結といった多様な手法で水性分散から単離され得る。米国特許第4,897,462号で開示される技術はまた、単離中にポリマーへ適用されて、乾燥時に目立った粉体流、低い散粉、及び従来の単離された粉末よりも高いかさ密度を提示する球状製品を産生し得る。
【0025】
一実施形態において、発明のポリアクリレートオイルゲルは、パーソナルケア製品、好ましくはスキンケア、サンケア、及びヘアケア製品での使用を見出す。より具体的には、発明のポリアクリレートオイルゲルは、日焼け止め、スキンローション、化粧品、美白剤、洗顔剤、ボディウォッシュ、シャンプー、ヘアコンディショナー、及び毛染製品(すなわち、2部染毛剤)における使用を見出す。一実施形態において、発明のポリアクリレートオイルゲルそのようなパーソナルケア製品における感覚剤としての使用を見出す。
【0026】
次の実施例は、本発明の具体的な態様及び特定の実施形態を例示するが、それらによって限定されるものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0027】
次の略語は、本明細書で説明される実施例において使用される。
BA=ブチルアクリレート
MAA=メタクリル酸
MMA=メチルメタクリレート
EHA=エチルヘキシルアクリレート
ALMA=アリルメタクリレート
CCT=カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド
【0028】
実施例1
本発明において有用な2つの段階のポリマーが、表1に列挙される。
【0029】
【表1】
【0030】
標準の乳化重合方法が使用される。例えば、ポリマー7に対して、252gの脱イオン水、8gの23%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び2gの炭酸ナトリウムが、オーバーヘッド攪拌器、熱電対、凝縮器、ならびにモノマー及び開始剤の添加用注入口を備えた2リットルの丸底フラスコへ充填される。フラスコは攪拌されて、92℃まで加熱される。モノマーエマルジョン(段階1)は、146gの脱イオン水及び5.6gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%)を、適切な容器へ充填して攪拌を開始することによって調製される。界面活性剤が水へ組み込まれた後に、90gのBA、180gのgのEHA、174gのMMA、6.8gのMAA、及び0.34gのALMAが、攪拌混合物へゆっくりと添加される。コフィード触媒溶液はまた、0.86gの過硫酸ナトリウム及び50gの脱イオン水を充填することによって調製される。
【0031】
88℃の反応温度で、1.9gの過硫酸ナトリウム及び15gの水の開始剤溶液の後の5gの脱イオン水すすぎとともに、19gの上で調製されたモノマーエマルジョンは反応釜へ充填される。最初の重合の後、及び85℃で、段階1のモノマーエマルジョンは15分間毎分4.72gで、及び83分間毎分10.1gの速さで開始される。同時に、段階1の触媒コフィードは88分間毎分0.61gの速さで開始される。モノマーエマルジョン及び触媒コフィードの完了時に、反応混合物は10分間保持される。
【0032】
段階1の供給の間、段階2のモノマーエマルジョン及び触媒が調製される。段階2のモノマーエマルジョンは、52gの脱イオン水及び2gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%)を適切な容器へ充填して攪拌を開始することによって、調製される。界面活性剤が水へ組み込まれた後に、112gのMMA、1.1gのgのMAA、及び0.09gのALMAが、攪拌混合物へゆっくりと添加される。段階2のコフィード触媒溶液はまた、0.12gの過硫酸ナトリウム及び14gの脱イオン水を充填することによって調製される。段階1の完了が保持されるとき、段階2のモノマーエマルジョンコフィードは、29分間毎分6.55gの速さで開始される。
【0033】
段階2のモノマーエマルジョン及び触媒コフィードの完了時に、反応混合物は残渣モノマーの量を低減させるために追跡される。結果として得られたラテックスは、次の特徴を有する。
【0034】
[表]
【0035】
ポリマー3〜8は、実質的に上で説明されるように作製されて、適切な変化が生まれる。
【0036】
実施例2
実施例1からのポリマー4、5、及び6は、−70℃で凍結され、次いで、ベンチトップ凍結乾燥器(Labconco Freezer Dry System Lyph Lock(登録商標)4.5)を用いた凍結乾燥に供された。乾燥された試料の外観及び触感が、訓練された官能試験員によって観察されて、ゆるい構造を有し、切り離しを容易にした。
【0037】
比較として、単一の段階のポリマーA(20 BA/40 EHA/38.5 MMA/1.5 MAA//0.075 ALMA)が、従来のように調製され、次いで、凍結されて、さらに上述のようにベンチトップ凍結乾燥機を用いた凍結乾燥に供されて、切り離しが難しい粘性の密集体を産出した。
【0038】
実施例3
実施例2からのポリマー4、5、及び6は、以下のようにオイルゲルとして調製された。12グラムの乾燥されたポリマー及び88グラムのCCTが、ガラス容器内に配置される。その容器は、好ましくは頭頂部空間上に充満された窒素を用いた閉鎖系として据えられた、ホットプレートまたはヒートジャック上に設置される。およそ100〜200rpmの速度でオーバーヘッド攪拌器を用いて混合しながら、バッチは約70℃まで加熱されて、1時間の混合によって、または全ての固体が溶解されるまでその温度で保持される。最大90℃までの追加の加熱及び/または700rpmまでの混合が企図される。溶液は、室温まで冷却させられ、次いで上昇される。ポリマー4、5、及び6は、平滑で厚みのある均質の溶液を産出した。ポリマー5及び6はまた、流動性でもあった。
【0039】
比較として、実施例2からの単一の段階のポリマーAが上のように調製されたが、パーソナルケア感覚調節剤にとって許容されない、溶液に浮遊する大きな塊及び小さなゲル様粒子を持つ薄い濁った溶液を産出した。
【0040】
実施例4
本発明の感覚調節剤としての利点を確認するため、スキンケアローションが、(%で)表2に列挙されるように調製される。
【0041】
【表2】
【0042】
瓶の中で、キサンタンガムを水へ添加して溶解されるまで混合し、グリセリンを添加して最大75℃まで加熱しながら混合して水相を形成する。別の瓶の中で、セテアリルアルコール(及び)セテアレス20、ステアリン酸グリセリル、ワセリン、及びCCT中のポリマー5(12%)(または/及びDC245シリコーン油またはDC9045シリコーンエラストマーゲル)を組み合わせて、全ての成分が融解して油相を形成するまで混合しながら最大75℃まで加熱する。75℃で、掻き混ぜながら油相を水相へ添加して、均質になったエマルジョンが生成されるまで混合する。加熱を止めて、バッチを、40℃を下回るまで混合及び空冷し続けて、Neolone PEをバッチへ添加して、室温まで冷却しながらよく混合する。水の減損を、追加の水を100%w/wになるまで適量添加することによって補充する。必要に応じて、クエン酸(50%溶液)を用いて、pHをpH5〜7へ調節する。
【0043】
実施例5
インビボ感覚性能を上昇させるために、12人の訓練された官能試験員がそれぞれ表3に列挙される組成物を適用し、次いで、1〜5の階級でその美粧性がどれだけ望ましくないか(1)または望ましいか(5)を格付けする。50μlのそれぞれ製剤された試料(表2に列挙されるように)が、ピペットまたは注射器によって、官能試験員の前腕上に配置される5cm×5cmの事前に印を付けられた区域へ送達され、官能試験員は次いで、人差し指または/及び中指を使用して、試料を事前に印を付けられた区域内で一方向(例えば、時計回り)に優しく揉み込み、階級1(最も望ましくない)〜5(最も望ましい)でそれらを格付けすることによって各属性を評価した。官能試験員は、皮膚上で試料を揉み込む間での散布、油性感、蝋質感、粘着性、及び吸着性を評価して、試料が皮膚上で乾燥する間の、通常揉み込みの15分後の平滑性を評価した。結果は、表3に列挙される。
【0044】
【表3】
【0045】
結果は、発明のバッチ1が、散布、吸着性、及び平滑性について近似性能を持つ基準の比較バッチAと粘着性について好意的に比較していることを示す。バッチ2は、油性感についてなおもより良好な性能を持つ基準の比較バッチAと、散布、粘着性、及び吸着性について好意的に比較しており、このことは、ポリアクリレートオイルゲルをシリコーン油と組み合わせることによって、感覚相乗効果が達成され得ることを示す。