(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
35℃で85%の湿度下の前記未焼成体の増大が、乾燥後少なくとも24時間において、0.5%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質セラミック体を作製する方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1970年代における基体、及び1980年代におけるフィルタの導入以来、エンジンの冷間始動中のサーマルマスを低下させる、及び触媒のより早期の活性化を促進するために、セラミック体等のより高い多孔率に対する基体の需要が高まっている。フィルタにおけるより高い多孔率も、圧力降下を更に低減し、フィルタ壁中により多くの量の触媒を収容する。しかしながらより高い多孔率は、セラミック体の構造を脆くする場合がある。
【0011】
細孔は、細孔形成剤として公知である可燃性粒子を、セラミックハニカム体等のセラミック体を形成する前にセラミックバッチに導入することにより、多くのセラミック体において量及び形状について制御できる。細孔形成剤は、セラミックになる粒子間の空間を占有し、焼成後に細孔を残す。細孔形成剤としては例えば、澱粉、グラファイト及びポリマー粉末を挙げることができる。細孔の量及び細孔サイズは、細孔形成剤の濃度及び粒子サイズによって、それぞれある程度調整できる。限度内で、セラミックバッチ組成物中の細孔形成剤の比較的高いバッチ濃度、及び細孔形成剤の比較的小さいサイズの粒子は、比較的小さい細孔をもたらし得る。
【0012】
可燃性細孔形成剤は、世界中で更に厳しくなる排出規制を満たすための、フィルタ及び軽量基体における使用のために設計される。特定の製品の多孔率は例えば、用途に応じて、約50%〜約65%の範囲であってよい。このような高い多孔率の生成は、バッチ組成物中における、セラミックになる成分に対して高濃度の細孔形成剤を必要とし得る。多孔率、平均孔直径及び壁厚目標は、適切な細孔形成剤又は細孔形成剤の組合せを選択することにより、満たされ得る。
【0013】
澱粉は、細孔形成剤のための魅力的な材料と考えられる。澱粉は広い範囲の粒子サイズで植物源から入手可能であり、所定の種からの粒子サイズ分布は本来狭い。澱粉は、農業活動の一部として大量生産できる。澱粉はまた、ポリマー類及びグラファイト等の他の公知の細孔形成剤に比べて安価である。しかしながら澱粉は、セラミック体の加工中に寸法不安定性を経験する場合があり、これは、高レベルの多孔率を生成するためのその有用性を制限し得る。従って、好適に高い多孔率を有する組成物を得るために澱粉の量を増やすことにより、澱粉の濃度を許容できないほど高い濃度まで上昇させることが必要になり得、ここで未焼成体の物理的特性及び未焼成体の後続の加工は、悪影響を受け得る。
【0014】
押出成形又は鋳込成形のようなセラミック成形プロセスは、少なくとも1つのセラミック
形成用粉末を水等の溶媒及びバインダと混合して、バッチ組成物として公知であるペースト又はスラリーを生成することを伴う。成形後、水は除去され、焼成までのある程度の期間、未焼成体を保管してよい。乾燥及び焼成プロセスステップは、割れを引き起こし得るひずみを回避するために、注意深く管理してよい。セラミックハニカム体等のセラミック体の押出成形は、タルク、粘土、アルミナ及び砂等の少なくとも1つのセラミック
形成用粉末を、溶媒、少なくとも1つの可塑化剤、少なくとも1つのバインダ及び任意に少なくとも1つの細孔形成剤と混合して、ダイを通して押し出すことによって所望の形状を成形して未焼成体を得ることができるバッチ組成物を形成するステップを含んでよい。
【0015】
バッチ組成物の加工における次のステップは、湿潤未焼成体を乾燥させるステップである。未焼成体は典型的には、水がセラミック前駆体粒子間の格子間の空間から出るため、約1%〜約5%だけ収縮する。乾燥中の収縮差は、反り等の欠陥、未焼成体の形状における他の歪み及び割れの原因であり得る。乾燥差は、複数の方法で制御してよい。例えば、乾燥差は、セラミック前駆体の良好な混合、成形中の水の均一な分布、乾燥速度の制御、乾燥中の湿度の制御、比較的低い含水量の本体の形成、及び/又は未焼成体の強度を高めるためのバインダの含有によって制御してよい。
【0016】
押出成形されたバッチ組成物内の収縮均一性を制御することは、機械的ひずみ並びに収縮差(湿潤‐乾燥間及び乾燥‐焼成済み間の両方)を最小化するための両方にとって重要であり得る。収縮の制御により、製造ラインにおけるバッチ組成物の使用可能性が最適化される。収縮は、細孔形成剤及び水に加えて、セラミック形成粉末、バインダ及び界面活性剤又は潤滑剤等の有機添加剤といったバッチ構成成分の選択に影響され得る。
【0017】
押出成形プロセスは、約50%超の多孔率を有するフィルタ及び基体を製造するために開発されている。この高レベルの多孔率の生成は、澱粉を含む可燃性細孔形成剤を含めることにより、部分的に達成できる。水系押出成形における細孔形成剤としての澱粉の使用は、澱粉の水との相互作用により、乾燥プロセスを複雑にし得る。澱粉は、周囲環境条件における水分吸収に敏感であり、保管及び輸送に関する潜在的な問題、並びに所定の最適なプロセスウィンドウを満たす及びスループットを最適化するために押出成形プロセス中にどれ程の水を添加するべきか予想することの困難性を誘発する。
【0018】
押出成形プロセス及び乾燥ステップ中に澱粉顆粒が水と相互作用するため、注意深く温度を監視することが重要となる。というのは、加工温度が澱粉糊化温度に近づくか又はこれを超えるようになるためである。この問題は、体積パーセンテージによる澱粉含有量が約10%を超えるセラミック組成物に関してより顕著となり得る。澱粉は、加工及び保管中に直面する温度、水及び環境条件に応じて構造変化を経験し得る。例えば、澱粉の結晶質領域は、熱に曝露すると非晶質となり得る。澱粉は、室温において水中で膨張及び分解を経験し得る。澱粉(例えばアミロース)の溶存成分は、元の澱粉粒子の外側に沈殿し得、澱粉は乾燥及び冷却すると再結晶化(劣化)し得る。体積変化はこれらのプロセスそれぞれと関連し得る。体積変化は乾燥時の収縮に影響し得、また細孔サイズを変化させ得る。これらのプロセスからのひずみ差はまた、乾燥中及び保管中の未焼成体の割れを誘発し得る。
【0019】
未焼成体が澱粉を含む場合、乾燥中又は保管中に割れる未焼成体の多数の例が存在する。未焼成体中で澱粉及び他の細孔形成剤の濃度が高まるに従って、未焼成体は、割れの可能性の上昇及び/又は割れの重症度の上昇を呈し得る。未焼成体の初期乾燥ステップ(例えばマイクロ波処理)中には割れが発生し得ない又は観察され得ないものの、水の大半が未焼成体から既に除去された仕上げステップ中に割れが発生し得る又は観察され得るということも可能である。割れは、一体型SCR触媒のためのコージエライト系及びチタン酸アルミニウム系フィルタを含む、いずれの高多孔率フィルタにおいて明白であり得る。乾燥及び/又は保管中の割れは、澱粉細孔形成剤を含有する高多孔率(例えば多孔率約60%〜約70%)セラミックフィルタの開発において記述される。従って、澱粉を細孔形成剤として使用する場合、その濃度は、未焼成体の割れを実質的に最小化できるよう、十分低く維持される。これは結果として、細孔形成剤として澱粉を使用することにより得ることができるセラミック体の多孔率のレベルを制限する。
【0020】
初期乾燥ステップ後の乾燥レベルを例えば約80%未満に制限することにより、乾燥した未焼成体を乾燥後ビニール袋の中で保管して環境との相互作用を制限することにより、及び/又は未焼成体が保管される環境(例えば湿度)を制御することにより、割れを阻止することが可能であり得る。しかしながらこのような解決策は、不便であり、大量生産に適していない。
【0021】
架橋澱粉
本明細書において、多孔質セラミック体を作製するための細孔形成剤としての架橋澱粉の使用を開示する。特定の実施形態では、少なくとも1つの架橋澱粉は、例えば追加添加として少なくとも約20重量%等の比較的高濃度でバッチ組成物中に存在してよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの架橋澱粉は、追加添加として約20重量%〜約40重量%、例えば約20重量%〜約35重量%、約20重量%〜約30重量%、又は約28重量%〜約32重量%の範囲の量でバッチ組成物中に存在してよい。本明細書において使用される場合、用語「追加添加(super addition)」は、追加の成分又は材料を、バッチ組成物又は処方に、100重量パーセントベース処方を超過して又はこれに加えて添加することを指す。
【0022】
本明細書において開示する特定の実施形態では、結果として得られる未焼成体の完全な乾燥後に、約85%の相対湿度において約35℃に少なくとも約24時間、例えば少なくとも1週間曝露した後に、合計の
増大が0.5%未満、例えば約0.3%未満等である場合に、架橋澱粉を細孔形成剤として使用してよい。
【0023】
細孔形成のための未架橋の澱粉に対して、架橋澱粉の多数の利点がある。利点は、加工中に、又は保管中の環境条件に応じて生じる、水との相互作用が低減されることに由来し得る。架橋澱粉の水との低減された相互作用は、以下のうちの少なくとも1つを可能とし得る:未焼成体の乾燥時の比較的低い全体の収縮;割れを生じることなく、比較的高濃度の澱粉を含む未焼成体の乾燥;割れを生じることのない未焼成体の比較的長い保管寿命;焼成前の未焼成体における比較的低い残留応力(これは焼成時のより高い収率につながり得る);未架橋の澱粉では達成不可能であり得る高レベルの多孔率を有するセラミック体の生成;同一の粒子サイズ分布の未架橋の澱粉を用いた場合よりも高い平均細孔直径;及び/又は合成ポリマー類等の代替的な可燃性細孔形成剤を用いて達成できるものより低コストのプロセス。
【0024】
特定の実施形態では、本明細書において開示する多孔質セラミック体は、約45%超、例えば約50%超、約60%超、約65%超、又は約50%〜約65%の範囲等の多孔率を有する。本明細書において使用される場合、用語「多孔率(porosity)」は、セラミック体等の物体における空所の合計を指す。多孔率は、本体の総体積に対する総細孔容積の比として表現してよく、パーセントとして表現してよい。
【0025】
多孔率に加えて、細孔サイズ分布も測定してよい。従って、マイクロメートルで測定してよいd
50は、水銀ポロシメトリーによってセラミック体上で測定したとき、セラミック体の細孔の50%が水銀によって侵入される細孔直径であってよい。同様にd
10及びd
90は、セラミック体の細孔の90体積%及び10体積%にそれぞれ等しい。従って、d
10、d
50及びd
90の値は、細孔の約10%、50%及び90%がそれぞれ細孔容積ベースでより小さい直径を有する、細孔直径である。特定の実施形態では、細孔サイズ分布は(d
90−d
10)/d
50として測定してよく、この値が低いほど大きい細孔が少ないことを意味し、その逆も成り立つ。
【0026】
本明細書において開示する架橋澱粉は、低い架橋〜高い架橋〜極めて高い架橋の範囲のいずれの程度の架橋を有してよい。架橋の程度は、例えば澱粉に添加される架橋剤の量によって制御してよい。当業者は、少なくとも1つの澱粉に対して、ますます多くの量の少なくとも1つの架橋剤を添加することにより、ますます架橋した澱粉をもたらし得ることを認識するだろう。架橋澱粉を形成するために及び/又は澱粉が架橋する程度を高めるために、当該技術分野において公知のいずれの架橋剤を使用してよい。
【0027】
当該技術分野において公知のいずれの架橋澱粉を、本明細書において開示する実施形態に従って使用してよい。様々な実施形態に従って使用してよい架橋澱粉の非限定的な例としては、架橋ジャガイモ澱粉、Amioca(登録商標)澱粉、エンドウ澱粉、トウモロコシ澱粉、サゴ澱粉及びこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
バッチ組成物
本明細書において開示する架橋澱粉は、コージエライト
形成用粉末、ムライト
形成用粉末、及びチタン酸アルミニウム
形成用粉末を含む、当該技術分野において公知のいずれのセラミック
形成用粉末を用いて、バッチ組成物を形成できることが想定される。本明細書において使用される場合、用語「粉末(powder)」、例えばセラミック
形成用粉末は、いずれの好都合な粒子サイズを指す。特定の実施形態では、粒子サイズは、約50nm〜約5000マイクロメートル、例えば約200nm〜約5000マイクロメートルの範囲であってよい。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「バッチ組成物(batch composition)」は、少なくとも1つの無機セラミック成形用成分を含む略均質な混合物を示す。本開示の様々な例示的実施形態では、少なくとも1つの無機セラミック
形成用成分は、所望のセラミック組成物を形成するのに好適ないずれの成分、例えばアルミニウム源、シリカ源、チタニア源及びマグネシア源から選択してよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの無機セラミック
形成用成分は、反応性粉末の形態であってよい。
【0030】
アルミナの例示的な源としては、これらに限定するものではないが、単独で又は他の材料の存在下で十分に高い温度まで加熱されると、酸化アルミニウムを生じる材料が挙げられる。好適なアルミナ源の非現実的な例としては:αアルミナ;γ、θ、χ及びρアルミナ等の遷移アルミナ;アルミナ水和物;ギブサイト;コランダム;ベーマイト;擬ベーマイト;水酸化アルミニウム:アルミニウムオキシ水酸化物;ダイアスポア;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
シリカの例示的な源としては、これらに限定するものではないが:溶融シリカ及びゾルゲルシリカ等の等の非結晶性シリカ;ゼオライト、石英及びクリストバライト等の結晶性シリカ;シリコーン樹脂;珪藻土シリカ;カオリン;タルク;並びにムライトが挙げられる。他の実施形態では、シリカ源は、例えばケイ酸及びシリコーン有機金属化合物等の、加熱されると遊離シリカを形成する少なくとも1つの化合物を含む、シリカ形成源から選択してよい。
【0032】
チタニア源の例としては、これらに限定するものではないが、ルチル、アナターゼ及び非晶質チタニアが挙げられる。マグネシウムの源としては、これらに限定するものではないが、タルク、マグネサイト(MgCO
3)及び単独で又は他の材料の存在下で十分に高い温度まで加熱されると酸化マグネシウムを生じるいずれの材料が挙げられる。様々な実施形態では、バッチ組成物は、チタン酸アルミニウム形成組成物であってよい。このような実施形態では、バッチ材料は、少なくとも1つのアルミナの源及び少なくとも1つのチタニアの源を含む。
【0033】
少なくとも1つの架橋澱粉及び少なくとも1つのセラミック
形成用粉体に加えて、本明細書において開示するバッチ組成物は、少なくとも1つのバインダを更に含む。例に過ぎないが、少なくとも1つのバインダは、セルロース含有成分、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース誘導体及びこれらの組合せ等の、有機バインダから選択してよい。特定の非限定な実施形態では、バインダは、約1重量%〜約10重量%、例えば約2重量%〜約6重量%、又は約3重量%〜約5重量%の範囲の量でバッチ組成物中に存在してよい。
【0034】
必要に応じてバッチ組成物のための適切な溶媒を選択することは、当業者の能力の範囲内である。溶媒は例えば、セラミック
形成用粉末を湿潤させて、及び/又はバインダを溶解させるための媒体を提供して、バッチ組成物に可塑性をもたらすために使用してよい。様々な例示的実施形態では、少なくとも1つの溶媒は水性、例えば水及び水混和性溶媒、又は有機、又はこれらの何らかの組合せであってよい。少なくとも1つの例示的実施形態では、溶媒は水、例えば脱イオン水を含む。様々な非限定的実施形態によると、溶媒は、約20重量%〜約50重量%、例えば約25重量%〜約40重量%、又は約30重量%〜約35重量%の範囲の量でバッチ組成物中に存在してよい。
【0035】
バッチ組成物は任意に、少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでよい。本開示による様々な実施形態に従って使用できる界面活性剤としては、C
8−C
22脂肪酸及びその誘導体;C
8−C
22脂肪族エステル及びその誘導体;C
8−C
22脂肪族アルコール及びその誘導体;並びにこれらの組合せが挙げられる。特定の例示的実施形態では、少なくとも1つの界面活性剤は、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトオレイン酸、ラウリル硫酸アンモニウム、これらの誘導体、及びこれらの組合せから選択してよい。特定の非限定的実施形態によると、少なくとも1つの界面活性剤は、約0.5重量%〜約2重量%、例えば約1重量%の範囲の量でバッチ組成物中に存在してよい。
【0036】
バッチ組成物は任意に、少なくとも1つの潤滑剤を更に含んでよい。例えば、バッチ組成物は、軽油、トウモロコシ油、高分子量ポリブテン、ポリオールエステル、軽油及びワックスエマルジョンの混合物、トウモロコシ油中のパラフィンワックスの混合物、並びにこれらの組合せから選択してよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの潤滑剤は、約1重量%〜約10重量%、例えば約3重量%〜約6重量%、又は約4重量%〜約5重量%の範囲の量でバッチ組成物中に存在してよい。
【0037】
当該技術分野において公知のいずれの方法を用いて、バッチ材料を混合して、略均質なバッチ組成物を得てよい。例えば、少なくとも1つの無機セラミック成形用材料は、溶媒、バインダ及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの成分によって湿潤となった粉末であってよい。溶媒及び/又はバインダは、バッチを湿潤させる及び/又は可塑化するのに好適ないずれの量で添加してよい。バッチの混合及び/又は可塑化は、バッチが可塑化するいずれの好適なミキサにおいて実施してよい。例えば、リボンミキサ、二軸押出機/ミキサ、オーガミキサ(auger mixer)、マラーミキサ又はダブルアームミキサを使用してよい。
【0038】
多孔質セラミック体を作製する方法
バッチ組成物を生成した後、バッチ組成物を押出成形して未焼成体を形成し、続いて乾燥させる。乾燥後、未焼成体を、多孔質セラミック体を得るために焼成するまでの期間保管してよい。
【0039】
多孔質セラミック体を成形するための適切な方法並びに条件(例えば設備、温度及び期間を含む焼成条件等)を決定することは、当業者の能力の範囲内である。このような方法及び条件は例えば、未焼成体のサイズ及び組成、並びに多孔質セラミック体の所望の特性に左右され得る。
【0040】
未焼成体を、未焼成体の組成、サイズ及びジオメトリに応じた時間にわたり、好適な雰囲気下で選択された温度で焼成してよい。例えば、いくつかの実施形態では、未焼成体は、ハニカムジオメトリを有してよい。特定の実施形態では、焼成が起こる温度は約1300℃〜約1450℃の範囲であってよく、焼成時間は約1時間〜約200時間、例えば約3時間〜約100時間、又は約20時間〜約50時間の範囲であってよい。
【0041】
焼成前、又は焼成中の温度上昇プロセス中に、細孔形成剤、バインダ及び/又は界面活性剤を燃やし尽くすために、未焼成体をか焼してもよい。例えば、バインダは約200℃の燃焼温度を有し得、孔形成剤は約300℃〜約1000℃の範囲の燃焼温度を有し得る。従って、か焼が起こる温度は、約200℃〜約1000℃の範囲であってよく、か焼時間は約10〜約100時間の範囲であってよい。
【0042】
スクリーニング方法
また、本明細書において、許容可能な孔形成剤処方のために未焼成体をスクリーニングする方法を開示する。この方法は、特に大規模な材料の混合、液体との混合、並びにダイを通した押出成形、それに続く乾燥及び焼成を伴う従来のプロセスに比べて、コスト効率が良く迅速な評価を可能とし得る。本明細書において開示するように、ダイから押し出された後の乾燥時の未焼成体の収縮を、乾燥状態から焼成状態までの未焼成体の収縮と合わせて追跡してよい。乾燥時の収縮が特定の閾値未満、例えば約5%未満、又は特定の実施形態では、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である場合に、この未焼成体を、多孔性セラミック体を作製するために選択してよい。特定の実施形態では、未焼成体の乾燥時の収縮が約5%未満である場合に、未焼成体は実質的に割れのない多孔質セラミック体をもたらすことができる。本明細書において使用される場合、用語「収縮(shrinkage)」は、本体の初期押出成形寸法と比較して、パーセンテージで表した、相対的部分径方向又は軸方向寸法減少である。
【0043】
スクリーニング方法は、様々な細孔形成剤パッケージを評価するために開発されてきた。本明細書において開示する例示的なスクリーニング方法では、一次応答としては、収縮(湿潤‐乾燥間及び湿潤‐焼成後間)、並びに膨張、劣化及び水分取り込みによる寸法変化(重量変化)を挙げることができる。特定の実施形態では、収縮及び寸法変化は、所定の温度及び湿度において測定してよい。例えば、特定の非限定的実施形態では、収縮及び寸法変化を、約35℃の温度、及び85%の湿度において、例えば1/4インチ(0.635センチメートル)ロッド試料を用いて測定してよい。
【0044】
未焼成体の膨張又は
増大も測定してよい。未焼成体を乾燥した後、未焼成体が大気中の水等の水を取り込むに従って、未焼成体は重量が増加し
増大し得る。膨張は、澱粉粒子による大気からの水の吸収による重量増加と相関する。実際、正味の重量増加は、未焼成体中の澱粉の量と相関し得る。理論によって拘束されることを望むものではないが、
増大段階後、アミロースは澱粉顆粒から浸出し始め、これは顆粒を取り囲むゲル相形成につながり、高い収縮をもたらすと考えられる。
【0045】
重量増加及び膨張
増大を、様々な点において測定して、未焼成体の重量増加及び
増大を決定してよい。本明細書において開示する特定の例示的実施形態では、約24時間後の重量増加は、約5%未満、例えば約3%〜約5%の範囲、又は約4%未満であり得る。特定の例示的実施形態では、未焼成体が完全に時効処理された後の重量増加は、約5%未満、約3%〜約5%の範囲、又は約4%未満であり得る。
【0046】
特定の実施形態では、約24時間後の未焼成体の膨張
による増大は、約1.0%未満、例えば約0.5%〜約0.8%の範囲である。特定の実施形態では、24時間後の未焼成体の
増大は、約0.8%未満、例えば約0.5%未満又は約0.4%未満であり得る。特定の非限定的実施形態では、未焼成体が完全に時効処理された後の未焼成体の
増大は、約1%未満、例えば約0.4%〜約0.8%未満の範囲であり得る。特定の実施形態では、未焼成体が完全に時効処理された後の未焼成体の
増大は約0.8%未満、例えば約0.5%未満又は約0.4%未満であり得る。本明細書において使用される場合、「完全に時効処理された(fully aged)」は、未焼成体が実質的にそれ以上の大気中の水又は重量増加を取り込まない時点を意味する。特定の実施形態では、未焼成体は、少なくとも約10日後に完全に時効処理される。
【0047】
糊化点を超えるアミロースの膨張/浸出中、澱粉顆粒は形状変化(内部崩壊)を呈し、これは典型的なドーナツ型及び顆粒外被のみが残る所謂「顆粒ゴースト(granule ghost)」の形成をもたらす。
図4A〜C及び5A〜Cに示したSEM写真は、未焼成体乾燥プロセス中のこの挙動のエビデンスである。湿気の存在下での加熱中(例えばマイクロ波乾燥プロセス中)、水素結合は崩壊し、これにより水が顆粒に入ることができ、顆粒が膨張し、最終的には破裂してアミロースを放出する。
【0048】
多孔質セラミック体の割れを生じることなく耐えることができる膨張の量に関する限界は例えば、前駆体未焼成体の機械的特性から推定できる。特定の実施形態では、割れは、膨張又は劣化プロセスによるもの等のひずみ差がひずみ許容値より低く維持される場合、回避できる。特定の実施形態では、未焼成体中の澱粉のタイプ及び澱粉の濃度は、時効処理プロセスによる未焼成体における正味の寸法変化が例えば約0.5%未満となるように、選択される。
【0049】
未架橋の澱粉から、より寸法安定性の架橋澱粉への変化により、工業規模のマイクロ波乾燥機を用いた高多孔率セラミック体の乾燥が可能となる。上で議論したように、未架橋の澱粉を含む未焼成体の相当な割れが存在し得る。このような割れは、乾燥中又は保管後に生じ得る。しかしながら本明細書において開示する特定の実施形態では、追加添加として少なくとも約20重量%の量で存在する少なくとも1つの架橋澱粉を含む未焼成体は、有意な割れを生じることなく乾燥及び保管できる。
【0050】
そうでないことが示されていない限り、明細書中及び請求項において使用される全ての数字は、全ての例において、明記されていてもいなくても、用語「約(about)」によって修飾されているものとして理解されるべきである。明細書及び請求項において使用される正確な数値は、本開示の更なる実施形態を形成することも理解されるものとする。実施例において開示される数値の正確性を保証するために努力した。しかしながらいずれの測定された数値は、各測定技術において見られる標準偏差から生じる一定の誤差を本質的に含み得る。
【0051】
本明細書において使用される場合、名詞は「少なくとも1つの(at least one)」の対象を指し、それとは異なることが明確に示されていない限り、「1つだけ(only one)」に限定されないものとする。
【0052】
以上の一般的な説明及び詳細な説明は、例示的及び説明的なものにすぎず、限定を意図していないことが理解されるべきである。
【0053】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態の限定ではなく例示を意図したものである。
【0054】
本開示の明細及び実践の考察から、他の実施形態が当業者には明らかとなるだろう。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本開示を限定することを意図していない。
【0056】
実施例1
コージエライトムライト‐チタン酸アルミニウム無機体パッケージをベースとして、複数の組成物を調製した。これらを以下の
図1に示す。表1に示したように、細孔形成剤として添加される澱粉の量は、約30%を超え、乾燥体積ベースで約35%超に到達する。表1はまた、湿潤‐乾燥間収縮、膨張、24時間後の重量増加、及び完全な時効処理(例えば10日後)における重量増加を含む試験された実験条件に関する、選択された関心対象の特性を列挙する。
【0057】
【表1-1】
【0058】
【表1-2】
【0059】
【表1-3】
【0060】
実施例2
24時間の時効処理後の乾燥材料の
増大及び重量増加を、様々な澱粉細孔形成剤を含む、複数のバッチ組成物に関して測定した。
図1は、使用される澱粉細孔形成剤のタイプに応じた、24時間の時効処理後の重量増加に対する乾燥材料
増大を示す。ジャガイモ、エンドウ、トウモロコシ及びサゴを含む異なる源からの架橋澱粉及び高架橋澱粉を評価した。加工澱粉、及び高アミロペクチン澱粉又は高アミロースレベルを有する澱粉も評価した。
【0061】
高アミロース澱粉及び架橋澱粉を用いると、比較的程度の低い膨張が達成され、これは未焼成体の乾燥、冷却及び時効処理中の応力生成の低減につながり得ることに留意されたい。
【0062】
図2は、ジャガイモ、エンドウ、トウモロコシ及びサゴ澱粉を含む、使用される澱粉細孔形成剤のタイプに応じた、完全な時効処理後(例えば10日後)の重量増加に対する乾燥材料
増大を示す。
図2では、XLは架橋していることを示し、VHXLは極めて高度に架橋していることを示す。
【0063】
実施例3
材料の3つの異なるステージ:完全に乾燥した、24時間の時効処理後、及び完全な時効処理(例えば10日)後の、様々な澱粉細孔形成剤を含む未焼成体に関して、MORを測定した。未架橋のジャガイモ澱粉、架橋ジャガイモ澱粉及び架橋エンドウ澱粉を評価した。
図3は、各未焼成体に関する、3つの異なるステージにおけるMORを示す。最大膨張は、試験された各澱粉細孔形成剤に関して、一貫して約24時間後に得られることに留意されたい。
【0064】
実施例4
マイクロ波乾燥プロセスの代表的な3つの温度における乾燥後に、未架橋のジャガイモ澱粉を含む破砕された未焼成体の走査電子顕微鏡(SEM)画像を撮影した。これを
図4A〜Cに示す。
図4A、
図4B及び
図4Cにそれぞれ示したように、未焼成体を80℃、105℃及び120℃で、100%まで乾燥させた。120℃のオーブン乾燥温度において、澱粉顆粒は中空形状を呈し、放出されたアミロースによって周囲の無機マトリクスに結合し、劣化により、より低い温度においてよりも脆弱となることが観察される。
図4Cを参照のこと。
【0065】
80℃において未焼成体のひずみ許容値は1664ppmであった。105℃において未焼成体のひずみ許容値は1390ppmであり、120℃においてひずみ許容値は1417ppmであった。120℃で乾燥された試料は、80℃で乾燥された試料よりも、より中空の結合した顆粒を示す。データは、澱粉顆粒がもたらす結合強度は温度依存性であることを示している。
【0066】
図4A〜Cとは対照的に、
図5A〜Cは、極めて高度に架橋したジャガイモ澱粉を含む未焼成体のSEM画像を示す。
図5A、
図5B及び
図5Cにそれぞれ示したように、未焼成体を、85℃、105℃及び120℃の3つの異なる乾燥温度で乾燥させた。120℃において澱粉顆粒はマトリクスに結合せず、これは程度の低い収縮をもたらすことに留意されたい。
図5を参照のこと。
図4Cに示した未架橋のジャガイモ澱粉と比較して、120℃でのオーブン時効処理に関して、澱粉顆粒は依然として元の状態のままであることに留意されたい。極めて高度に架橋した澱粉粒子は、周囲のセラミック前駆体粒子に結合せず、これは程度の低い収縮をもたらし、従って割れを排除する。