(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従って、用語「反応媒体」は、その中で化学スルフィン化反応が行われる媒体を意味すると理解される。反応媒体は、反応溶媒と、反応の進行に依存して、反応剤および/または反応の生成物とを含む。さらに、それは、添加剤および不純物を含むことができる。
【0010】
本発明の方法に従って、式Ea−COOR(I)の少なくとも1つの化合物が硫黄酸化物と反応させられる。式(I)の前記化合物は特に、フルオロカルボン酸(式(I)中、R=H)、前記酸の塩(式(I)中、R=一価カチオン)または前記酸のエステル(式(I)中、R=1〜10個の炭素原子を有するアルキル基)であり得る。本発明による方法は、オキシスルフィドおよび式(II)Ea−SOOR(式中、Rは、上記の通り定義される)のフッ素化誘導体の製造をもたらす。本発明による方法で用いられる反応は、スルフィン化反応である。
【0011】
好ましくは、式(I)の前記化合物は、R基が、アルカリ金属カチオン、第四級アンモニウムカチオンおよび第四級ホスホニウムからなる群から有利には選択される一価カチオンである、フルオロカルボン酸の塩である。非常に好ましくは、それは、アルカリ金属カチオン、特にナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウム、より特にカリウムである。テトラアルキルアンモニウムもしくはホスホニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムもしくはホスホニウムまたはテトラアリールアンモニウムもしくはホスホニウムカチオンが、第四級アンモニウムもしくはホスホニウムカチオンとして好ましくは使用され、同一であっても異なってもよい、そのアルキル基は、4〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する鎖状もしくは分岐状のアルキル鎖を表し、そのアリール基は有利にはフェニル基である。テトラブチルホスホニウムカチオンが好ましくは選ばれる。
【0012】
本発明に従って、用語「フルオロアルキル」は、少なくとも1個のフッ素原子を含む鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
10炭化水素鎖から形成される基を意味すると理解される。用語「パーフルオロアルキル」は、炭素原子に加えて、フッ素原子のみを含み、そして水素原子のない鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
10鎖から形成される基を意味すると理解される。用語「フルオロアルケニル」は、少なくとも1個のフッ素原子を含み、少なくとも1個の二重結合を含む鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
10炭化水素鎖から形成される基を意味すると理解される。
【0013】
好ましくは、式(I)の化合物中に存在するEa基は、フッ素原子、ならびにフルオロアルキル、パーフルオロアルキルおよびフルオロアルケニルからなる群から選択される1〜5個の炭素原子を有する基から選ばれる。非常に好ましくは、Ea基は、フッ素原子、CH
2F−基、CHF
2−基およびCF
3−基からなる群から選択される。これはしたがってそれぞれ、F−SO
2Rの、CH
2F−SO
2Rの、CHF
2−SO
2RのおよびCF
3−SO
2Rの本発明の方法による製造をもたらし、ここで、Rは上記の通り定義され;好ましくは、Rはアルカリ金属カチオン、非常に好ましくはカリウムである。特に、本発明による方法は、塩化形態でのフルオロメタンスルフィン酸、塩化形態でのジフルオロメタンスルフィン酸、および塩化形態でのトリフルオロメタンスルフィン酸、の製造方法である。
【0014】
本発明の方法では、反応させられる式Ea−COOR(I)の化合物は完全にもしくは部分的に、たとえば、スルフィン化反応の終わりに分離によって得ることができる、または、たとえば、スルホンイミド化合物の塩、スルホン酸−SO
2OH官能基を有するフッ素化化合物、またはスルホン酸無水物官能基を有するフッ素化化合物の製造中に、合成のその後の段階から生じることができるリサイクル化合物であり得る。
【0015】
本発明による方法は、硫黄酸化物、好ましくは二酸化硫黄の存在下で実施される。硫黄酸化物は一般に、ガス状形態で用いられる。それはまた、1重量%〜10重量%、好ましくは3重量%〜6重量%で一般に変わる濃度で、反応のために選ばれる有機溶媒中、溶液形態で導入することができる。
【0016】
本発明の方法に従って、初期モル比(硫黄酸化物/式(I)の化合物)は、0.4未満、好ましくは0.2未満である。本発明の方法の別の本質的な特徴は、反応の継続時間の全体にわたって反応媒体中の溶存硫黄酸化物の一定濃度の維持にあり、前記濃度は、0.2重量%〜3重量%である。
【0017】
用語「一定濃度」は、本発明の意味内では、前記濃度が±20%だけ、好ましくは±10%だけ変わり得ることを意味するとして理解されるべきである。本発明の方法に従って、反応媒体中の、溶存硫黄酸化物の、好ましくは溶存二酸化硫黄の濃度のモニターは、分析方法によって提供することができる。反応媒体のインラインまたはインサイチュ分析が、溶存硫黄酸化物の濃度を一定に保つことを可能にする手段である。一定濃度は、反応媒体への硫黄酸化物の制御されたおよび連続的な添加によって維持することができる。インラインまたはインサイチュ分析によって提供される結果に応じて調節される、反応媒体への硫黄酸化物の制御された添加は有利には、硫黄酸化物、好ましくは二酸化硫黄による式(I)の化合物の減成に関連する望ましくない化学を実質的に不利にしながら、式(I)の化合物をオキシスルフィドおよびフッ素化化合物へ転化させることを可能にする。
【0018】
本発明の方法に従って、本説明において下で定義されるような少なくとも1つの有機溶媒と式(I)の化合物とを含む反応媒体中の、溶存硫黄酸化物の、好ましくは溶存二酸化硫黄の濃度をインライン(サンプリングループによる)またはインサイチュ測定することを可能にするいかなる分析方法も好適である。好ましくは、反応媒体中の、溶存硫黄酸化物の、好ましくは溶存二酸化硫黄の濃度は、Raman分光分析によって、近赤外分光分析によってまたはUV分光分析によってインラインまたはインサイチュモニターされる。たとえば、反応媒体中の溶存硫黄酸化物の濃度がRaman分光分析によってモニターされる場合、反応器は、Raman分光計に光ファイバーによって連結されているRamanプローブを備え、前記プローブは、媒体中で、溶存硫黄酸化物の濃度をモニターすることを可能にする。
【0019】
本発明による方法は、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、非常に有利には極性の非プロトン性溶媒の存在下で実施される。好ましくは、前記溶媒は、酸性水素を持っている非常に少ない不純物を含む。用語「非プロトン性溶媒」は、Lewis理論において、放出するためのプロトンを持たない溶媒を意味すると理解される。本発明によれば、反応条件下で十分に安定である溶媒が頼りにされる。溶媒が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、式(I)の化合物を溶解させることが望ましい。したがって、有機溶媒は好ましくは、極性であるように選ばれる。したがって、使用できる極性の非プロトン性溶媒がかなりの双極子モーメントを有することが望ましい。したがって、その相対誘電率εは有利には、おおよそ5に少なくとも等しい。好ましくは、その誘電率は、50以下で、5以上であり、特に30〜40である。有機溶媒が上述の誘電率条件を満たすかどうかを決定するために、とりわけ、刊行物:Techniques of Chemistry,II−Organic Solvents−pp.536 et seq.,3
rd edition(1970)の表が参照されてもよい。
【0020】
さらに、本発明の方法に使用される溶媒がカチオンを本当に溶媒和できることが望ましく、それは、溶媒がLewis意味内である種の塩基性を示すことを意味する。溶媒がこの要件を満たすかどうかを決定するために、その塩基性が、「ドナー数」に言及することによって評価される。10よりも大きい、好ましくは20以上のドナー数を示す極性有機溶媒が選ばれる。上限は、いかなる重大な特質も示さない。好ましくは、10〜30のドナー数を有する有機溶媒が選ばれる。略記形DNで示される、用語「ドナー数」は、溶媒の求核性に関する指標を与え、そしてその孤立電子対を供与するその能力を明らかにすることが思い出されるべきである。「ドナー数」の定義は、Christian Reichardtによる刊行物[Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry−VCH,p.19(1990)]に見いだされ、そこでは、それは、希薄ジクロロエタン溶液における溶媒と五塩化アンチモンとの相互作用のエンタルピー(kcal/モル)の負数(−ΔH)と定義されている。
【0021】
本発明によれば、極性溶媒は酸性水素を示さないので、溶媒の極性が電子吸引性基の存在によって得られる場合には特に、電子吸引性官能基に対してα位の原子上にいかなる水素も存在しないことが望ましい。
【0022】
より一般的には、溶媒の第一酸性度に相当するpKaはおおよそ20に少なくとも等しい(「おおよそ」は、第一格のみが重要であることを強調する)、有利にはおおよそ25に少なくとも等しい、好ましくは25〜35であることが望ましい。
【0023】
酸性はまた、Christian Reichardt,[“Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry”,2
nd,VCH(RFA),1990,pages23−24]によって定義されているように、溶媒のアクセプター数ANによってまた表現することができる。有利には、このアクセプター数ANは、20未満、特に18未満である。
【0024】
様々な要件を満たす、かつ、良好な結果を与える溶媒は、特にアミド型の溶媒であり得る。アミドの中に、四置換尿素および一置換ラクタムなどの、特有の特質を有するアミドがまた含められる。アミドは、好ましくは置換されている(普通のアミドについては二置換されている)。たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミドもしくはN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド、またはN−メチルピロリドンなどの、ピロリドン誘導体が挙げられてもよい。別の特に有利なカテゴリーの溶媒は、それらが対称であろうと非対称であろうと、それらが開いていようと閉じていようと、エーテルからなる。様々なグリム、たとえばジグリムなどの、様々なグリコールエーテル誘導体が、エーテルのカテゴリーに組み入れられるべきである。上述の溶媒の中で、DMFが好ましくは使用される。
【0025】
用いられるべき有機溶媒の量は、選ばれる有機溶媒の性質の関数として決定される。それは、有機溶媒中の式(I)の化合物の濃度が好ましくは、1重量%〜40重量%、より好ましくは5%〜30%であるように決定される。
【0026】
本発明の方法の実行のための好ましい条件によれば、反応媒体中に存在する不純物の含有量を制御することが望ましい。
【0027】
それらの不純物を含めて、その様々な成分が持っているシステムの不安定な水素原子の、またはより正確には放出可能なプロトンの含有量は、式(I)の化合物の分解によって放出されるフッ素化基の含有量未満であるべきである。用語「不安定な水素原子」または「放出可能なプロトン」は、強塩基によってプロトン形で引きはがすことができる水素原子を意味すると理解される。実際には、それらは、おおよそ20未満のpKaを示す酸性官能基のプロトンである。放出可能なプロトンの含有量が低ければ低いほど、副反応のリスクは低くなり、収率はより良好になる。媒体中に存在する放出可能なプロトンの含有量は、式(I)の前記化合物の初期モル濃度の最大でも20%に等しい。有利には、この含有量は、式(I)の前記化合物の初期含有量に対して、最大でも10%に等しく、好ましくは最大でも1%(モル単位で)に等しい。
【0028】
不安定な水素を持っている主な分子は一般に、1分子当たり2個までのプロトンを放出することができる、水である。一般に、反応剤のそれぞれの水の重量含有量が、前記反応剤の総重量に対して、1000当たり最大でも1に等しいように、脱水した反応剤および溶媒を使用することが望ましい。複合反応条件に依存して、そのような含水率は満足でき得るが、いくつかの場合には、たとえば10,000当たり1のオーダーの、より低いレベルで動作することが有利であり得る。しかし、水のすべてを除去することが必ずしも不可欠であるわけではなく、厳密には10%未満、好ましくは1%未満の水/式(I)の化合物モル比が許容され得る。
【0029】
さらに、金属不純物が少量であることが望ましい。金属元素は、特に反応剤、溶媒によって、あるいは腐食の結果として金属設備によって導入される不純物として存在することができる。したがって、追加の金属汚染物を導入しないために、式(I)の化合物がフルオロカルボン酸塩である場合には特に、塩基が化学量論量の±5%かその近く、好ましくは化学量論量に等しい量で導入されるような条件下で塩基と相当するフロオロカルボン酸との反応によってその塩が調製されることが重要である。より一般的には、本質的に存在してもよい2つのカテゴリーの金属、すなわち、2つの価数状態を有する遷移元素(銅、鉄またはクロムなどの)ならびに列VIIIの元素(白金、オスミウム、イリジウム、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムからなる群である、特に白金列の金属)は、最大でも1000モルppmに等しい、好ましくは最大でも10モルppmに等しい、フルオロカルボン酸に対して表現される、含有量で媒体中に存在しなければならないことが指摘されてもよい。
【0030】
本発明の方法に従って、式(I)の化合物、好ましくは塩化形態でのフルオロカルボン酸と、硫黄酸化物と有機溶媒とが接触させられる。実行は、半連続的に(つまり半バッチ式に)または連続的に実施することができる。好ましくは、それは半連続的に実施される。
【0031】
半連続的実行によれば、式(I)の化合物、好ましくはフルオロカルボン酸塩のすべてを有機溶媒中へ導入することができ、次に硫黄酸化物を連続的に添加することができる。硫黄酸化物は、上述の媒体中へ吸収によりガス状形態で導入することができるかあるいは、有機溶媒、好ましくは反応の溶媒中の溶液でまた導入することができる。有利には、硫黄酸化物は、有機溶媒からおよび式(I)の化合物から形成された、溶液を50℃〜150℃の温度に予熱した後で添加される。
【0032】
連続実施形態によれば、反応剤のすべては連続的に導入される。反応が行われる装置に一般に、有機溶媒との混合物として、式(I)の化合物、好ましくはフルオロカルボン酸塩が供給され、かつ、硫黄酸化物が導入され、その反応剤は、式(I)の化合物と有機溶媒とを含む供給溶液に添加することができる、あるいは設備の異なるポイントで導入することができ、硫黄酸化物は反応器のヘッドスペース中へまたは反応マス中へデリバーされることが可能である。
【0033】
半連続的に実施されようと連続的に実施されようと、本発明による方法は好ましくは、反応媒体中の、溶存硫黄酸化物の濃度を0.2重量%〜3重量%の範囲内で一定に保つために、反応の継続時間の全体にわたって前記濃度のインラインまたはインサイチュ制御を含む。
【0034】
本発明による方法は有利には、半連続的なまたは連続的な実行を可能にする設備で実施される。特に、完全攪拌反応器、有利にはジャケットを備えている一連の完全攪拌反応器、またはその中を熱交換流体が循環するジャケットを備えた管型反応器であって、その特徴が所望の反応温度を達成することを可能にする反応器が、本発明による方法の実行に好適である。
【0035】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、シリカが、反応媒体中で、0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%を表すような量で好ましくは、反応媒体中へ導入される。特に、シリカは、本発明による方法が半連続的に実施される場合に有機溶媒からおよび式(I)の化合物から形成される溶液に添加される。シリカの添加は、本発明による方法の実行によって媒体中に生み出されたフッ化物の反応器への腐食影響を実質的に低減することを可能にする。
【0036】
本発明の方法に従って、反応混合物の加熱は有利には、100℃〜200℃、好ましくは120℃〜160℃の温度で行われる。スルフィン化反応は有利には大気圧で実施されるが、より高い圧力もまた用いることができる。したがって、1〜20バール、好ましくは1〜3バールで選ばれる絶対全圧が好適であり得る。
【0037】
別の実施形態によれば、反応は、大気圧よりも下の圧力で実施することができる。絶対全圧は、1ミリバール〜999ミリバール、好ましくは500ミリバール〜950ミリバール、より好ましくは800ミリバール〜900ミリバールであり得る。
【0038】
加熱の継続時間は、選ばれる反応温度の関数として広く変わることができる。それは、おおよそ30分〜最大でも1日で変わることができる。それは有利には、2時間以上〜20時間未満、より好ましくは2時間〜7時間である。
【0039】
連続的実施形態によれば、反応マスの容積対供給流量の比として定義される、平均滞留時間は、30分〜10時間、より好ましくは2時間〜4時間にある。
【0040】
前記硫黄酸化物が二酸化硫黄である場合、スルフィン化段階からの結果として生じた混合物は、2つの相:少なくとも酸Ea−COOHのおよび二酸化硫黄の一部が前記溶媒に溶解している、液相と、二酸化硫黄および反応中に形成された二酸化炭素を本質的に含有する、気相とを含むことができる。
【0041】
反応の進行は、消失してしまった式(I)の化合物の量対反応媒体中の式(I)の化合物の初期量のモル比である、式(I)の化合物の転化率(DC)によってモニターすることができ、この転化率は、媒体中に残っている式(I)の前記化合物を分析した後に容易に計算される。
【0042】
所望の転化率に達するとすぐに、反応混合物を、得られた生成物を分離するためにそれ自体公知の方法で処理することができ、出発原料が追加量のターゲットとされるオキシスルフィドおよびフッ素化誘導体を製造するためにリサイクルされることが可能である。1つもしくは複数の液/固分離操作を、たとえば可能な固体不純物を反応媒体から分離するために、実施することができる。用いられる技法は、異なるタイプの支持体での濾過、遠心分離、沈降および蒸発での分離であり得るし、このリストは網羅的ではない。あるいはまたはさらに、1つもしくは複数の液/液分離操作を、得られた生成物を分離するおよび/または精製するために実施することができる。用いられる技法は、蒸留、液/液抽出、逆浸透による分離もしくはイオン交換樹脂による分離であり得るし、このリストは網羅的ではない。これらの液/固および液/液分離操作は、連続的またはバッチ式条件下で実施することができ、当業者が最も適切な条件を選ぶことが可能である。
【0043】
一実施形態によれば、本方法はさらに、式(I)の未反応化合物を分離することおよびこの化合物を本プロセスにリサイクルすることにある段階をスルフィン化反応後に含む。
【0044】
本発明の方法により製造されたオキシスルフィドおよびフッ素化誘導体は有利には、Eaが本説明において上で明記された定義を有する、スルホンイミド化合物(Ea−SO
2)
2NHおよびその塩(Ea−SO
2)
2NMe(Meは、アルカリ金属を表す)、スルホン酸官能基−SO
2OHを有し、かつ式Ea−SO
2OHを示すフッ素化化合物、または式(Ea−SO
2)
2Oの酸無水物化合物の合成のために使用される。
【0045】
本発明の別の主題は、Eaが本説明において上に明記された定義を有する、スルホンイミド化合物(Ea−SO
2)
2NH、その塩(Ea−SO
2)
2NMe(Meは、アルカリ金属を表す)、スルホン酸官能基−SO
2OHを有し、かつ式Ea−SO
2OHを示すフッ素化化合物、および式(Ea−SO
2)
2Oの酸無水物化合物からなる群から選択される化合物の製造方法であって、前記方法が、
− 上に記載された方法によるオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の製造の段階、
− 式(II)の前記フッ素化化合物が、Eaが本説明で上に明記された定義を有する、スルホンイミド化合物(Ea−SO
2)
2NHのおよびその塩(Ea−SO
2)
2NMe(Meは、アルカリ金属を表す)、スルホン酸官能基−SO
2OHを有し、かつ式Ea−SO
2OHを示すフッ素化化合物、または式(Ea−SO
2)
2Oの酸無水物化合物の合成のための、反応性化合物として使用される段階
を含む方法である。
【0046】
本発明の別の主題はしたがって、
a)上に記載された方法によるオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の製造と;
b)化合物(Ea−SO
2)X(式中、Xは塩素またはフッ素である)を得るための、たとえば塩素処理による、酸化の段階と;
c)(Ea−SO
2)
2N.HNR’’
3を得るためのEa−SO
2Xのアンモノリシスの段階と;
d)(Ea−SO
2)
2NHを得るための(Ea−SO
2)
2N.HNR’’
3の酸性化の段階と;
e)(Ea−SO
2)
2NMeを得るための(Ea−SO
2)
2NHの、アルカリ金属塩基による、中和の段階と;
f)任意選択的に、(Ea−SO
2)
2NMeを乾燥させる段階と
を含むオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体からの式(Ea−SO
2)
2NMeのスルホンイミド化合物の塩の製造方法であり;
式中、Eaは上記の通り定義され、R’’は、1〜20個の炭素原子を有する鎖状または分岐状のアルキル基を表し、Meはアルカリ金属を表す。好ましくは、Meはリチウムである。
段階c)、d)、e)およびf)は、当業者に公知である。特に、アンモノリシス段階は、特許米国特許第5723664号明細書に記載されている。酸化、酸性化、中和および乾燥段階は、当業者に公知の条件下で実施することができる型通りの段階である。
【0047】
特に、本発明はまた、主題として、上に記載された段階(a)と(b)との結び付けを有することができる。したがって、本発明は、
a)上に記載された方法によるオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の製造;
b)化合物
Ea−SO
2X(式中、Xは塩素またはフッ素である)を得るために、たとえば塩素処理による、酸化の段階
を含む、化合物Ea−SO
2X(式中、Xは塩素またはフッ素である)の製造方法に関する。
【0048】
好ましくは、オキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体は、トリフルオロメチルスルフィン酸アルカリ金属塩であり、その結果、それは、式(CF
3SO
2)
2NHのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのおよび式(CF
3SO
2)
2NLi(LiTFSI)のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成に使用することができる。
【0049】
より好ましくは、オキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体は、式F−SO
2−R[式中、Rは、上記の通り定義される(R=H、一価カチオンまたはアルキル基である)]を示し、その結果、それは、式(F−SO
2)
2NHのビス(フルオロスルホニル)イミドのおよび式(F−SO
2)
2NLi(LiFSI)のリチウムビス(フルオロスルホニルイミドの合成に使用することができる。
【0050】
上に記載された方法により製造されるスルホンイミド化合物およびそれらの塩は有利には、電解質塩として、帯電防止剤前駆体としてまたは界面活性剤前駆体として使用することができる。特に、前記化合物は有利には、エレクトロクロミズム、エレクトロニクスおよび電気化学の分野で、電池の製造における電解質として使用することができる。それらは有利には、感圧接着剤(PSA)の製造における帯電防止剤として用いられる。帯電防止剤として、それらはまた、潤滑剤の成分として用いることができる。それらは、エレクトロルミネッセンス素子などの、光学材料で使用され、太陽光発電パネルの構成中に組み込まれる。これらの使用もまた、本発明の主題である。特に、本発明の主題は、電気化学デバイス、好ましくは電池の製造方法であって、前記方法が、上に記載された方法によるスルホンイミド化合物のまたはその塩の製造の段階と、スルホンイミド化合物またはその塩が電解質として用いられる電気化学デバイスの製造の段階とを含む方法である。
【0051】
本発明の方法により製造されるオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体はまた有利には、式Ea−SO
2−OH(式中、Eaは上記の通り定義される)のフッ素化化合物の、酸化による、製造に使用される。この目的のために、本発明の方法から結果として生じた前記オキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体は、たとえば、水性のアルカリ性溶液と一緒にされ、次に酸性化段階が、硫酸または塩酸などの、たとえば強い無機酸の溶液を使用することによって、化合物Ea−SO
2−OHを放出するために実施される。本発明の別の主題はしたがって、
a)上に記載された方法によるオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の製造;
b’)式Ea−SO
2−OH(式中、Eaは上記の通り定義される)のフッ素化化合物を得るためのオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の酸化を含むオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体からの式Ea−SO
2−OHのフッ素化化合物の製造方法である。
【0052】
好ましくは、オキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体は、トリフルオロメチルスルフィン酸アルカリ金属塩(CF
3SO
2R、式中、Rはアルカリ金属である)であり、その結果、それは、式CF
3SO
2OHのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸として知られる)の合成に使用することができる。
【0053】
このようにして得られた化合物Ea−SO
2−OHは有利には、式(Ea−SO
2)
2Oの酸無水物へ転化される。酸無水物化反応は、当業者に公知であり、特に米国特許第8222450号明細書に記載されている。好ましくは、オキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体は、トリフルオロメチルスルフィン酸アルカリ金属塩であり、その結果、トリフリン酸の酸無水物化は、式(CF
3SO
2)
2Oのトリフルオロメタンスルホン酸無水物の生成をもたらす。本発明の別の主題は、
a)上に記載された方法によるオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の製造;
b’)式Ea−SO
2−OHのフッ素化化合物を得るためのオキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体の酸化;
c’)式(Ea−SO
2)
2Oの酸無水物化合物を得るための式Ea−SO
2−OHのフッ素化化合物の酸無水物化
を含む、オキシスルフィドおよび式(II)のフッ素化誘導体からの、式(Ea−SO
2)
2O(式中、Eaは上記の通り定義される)の酸無水物化合物の製造方法である。
【0054】
式Ea−SO
2−OHのフッ素化化合物および式(Ea−SO
2)
2Oの酸無水物化合物は、特に酸触媒として、有機合成における保護基として、医薬品、農芸化学もしくはエレクトロニクスの分野におけるシントンとして、またはエレクトロニクス産業用の塩として、様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明を限定するものではない。
【0056】
転化率(DC)は、転化された基質のモル数対用いられた基質のモル数の比に相当する。
【0057】
反応収率(RY)は、形成された生成物のモル数対用いられた基質のモル数の比に相当する。
【0058】
実施例1(比較):バッチ式の実施によるSO
2の存在下でトリフルオロ酢酸カリウムのスルフィン化によるトリフルオロメチルスルフィン酸カリウムCF
3SO
2Kの製造
ジャケットを、中央機械撹拌機および大気への出口ならびに二酸化硫黄の還流を可能にするアセトン/ドライアイス凝縮器を備えた500cm
3反応器に、周囲温度(おおよそ20℃)で、125.5gのジメチルホルムアミドを装入する。25.5gのトリフルオロ酢酸カリウムをDMF中へ導入する。6.9gの二酸化硫黄をその後、加圧二酸化硫黄シリンダーに連結された毛管によって装入する。加熱を大気圧で140℃まで実施する。SO
2/KTFAモル比は0.64に等しい。
【0059】
4時間25分後に、イオンクロマトグラフ分析は、次の結果を与える。
− トリフルオロ酢酸カリウムの転化率:57.1%
− トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの収率:52.8%
【0060】
実施例2(発明):半連続式の実施によるSO
2の存在下でトリフルオロ酢酸カリウムのスルフィン化によるトリフルオロメチルスルフィン酸カリウムCF
3SO
2Kの製造
下記を、−15℃での水性グリコール溶液を有する凝縮器を、攪拌機およびバッフルを備えた500mlジャケット付き反応器へ周囲温度で導入する。
200gの無水ジメチルホルムアミド(DMF)
50gのトリフルオロ酢酸カリウム(KTFA)、すなわち、DMF−KTFA混合物中で20重量%に等しいKTFA濃度
【0061】
反応器に、溶存SO
2の濃度を、媒体中で、モニターすることを可能にするRamanプローブを備え付ける;このプローブをRaman分光器に光ファイバーによって連結する。
【0062】
媒体を攪拌し、100℃の温度にする。
【0063】
SO
2シリンダーに連結された封管によって、1.25gの量のガス状SO
2を、0.5重量%に等しい溶存SO
2の濃度および0.059の初期SO
2/KTFAモル比を有するように、高精度調整弁を通して反応器へ連続的に導入する。
【0064】
SO
2濃度を0.5重量%で一定に保ちながら温度を145℃にする。SO
2濃度を0.5重量%に調整しながら反応を5時間起こるに任せる。
【0065】
5時間後に、反応混合物を冷却し、NMRによって分析し、結果は次の通りである。
トリフルオロ酢酸カリウムの転化率:90%
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウムの収率:64.8%
【0066】
反応収率および転化率の著しい向上が観察される。