特許第6463410号(P6463410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463410
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】可動コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20190121BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20190121BHJP
   H01R 12/91 20110101ALI20190121BHJP
【FI】
   H01R13/631
   H01R12/71
   H01R12/91
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-111379(P2017-111379)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-206623(P2018-206623A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小椋 由幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 知充
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 大地
(72)【発明者】
【氏名】國吉 浩二
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−163125(JP,A)
【文献】 実開平03−062466(JP,U)
【文献】 特開2016−181494(JP,A)
【文献】 特開2015−095405(JP,A)
【文献】 実開平01−155672(JP,U)
【文献】 特開2014−165065(JP,A)
【文献】 実開平01−179385(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00−12/91
H01R 13/00−13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジングと、
接続対象物の挿入口を有する接続室を有する第2のハウジングと、
前記第1のハウジングに対して前記第2のハウジングを変位可能に支持する可動部と、前記接続室で前記接続対象物と導通接触する接触部とを有する端子とを備える可動コネクタにおいて、
前記接触部は、
前記接続室の前記挿入口側位置で前記接続対象物に対して第1の方向から押圧接触する第1の接点部を有する第1の接触片部と、
前記接続室における前記第1の接点部よりも奥側位置で前記接続対象物に対して前記第1の方向から押圧接触する第2の接点部を有する第2の接触片部と、
前記接続室の室内で前記第1の接点部及び前記第2の接点部と対向位置しており、前記接続室に挿入される前記接続対象物に沿って接触する接触面部を有する接触受け部と、
前記可動部と繋がり前記第2のハウジングに固定される固定基部と、
前記固定基部と前記接触受け部とを繋ぐ連結部とを有し、
前記固定基部は、前記第2のハウジングに設けられた端子固定溝に圧入固定される圧入固定部を有し、
前記連結部は、前記接続対象物の挿入方向に沿った両側に前記圧入固定部を有する位置から伸長することを特徴とする可動コネクタ。
【請求項2】
前記接触受け部は、前記挿入口側に位置する先端部に前記第2のハウジングに対する固定部を有する請求項1記載の可動コネクタ。
【請求項3】
前記第1の接触片部と前記第2の接触片部は、それぞれ別々に独立して変位可能なばね片として形成されている請求項1又は請求項2記載の可動コネクタ。
【請求項4】
前記接触面部は、前記第1の接点部及び前記第2の接点部に向けて突出する形状である請求項1〜請求項3何れか1項記載の可動コネクタ。
【請求項5】
前記接触面部は、前記第1の接点部及び前記第2の接点部に向けてビード状に突出する突起である請求項4記載の可動コネクタ。
【請求項6】
前記接触面部は、少なくとも前記第1の接点部及び前記第2の接点部と対向位置する前記接触受け部の部分が前記第1の接点部及び前記第2の接点部に向けて突出する突出面部である請求項4記載の可動コネクタ。
【請求項7】
前記第2の接触片部は、前記接触受け部に対して前記第2の接点部を変位可能に支持する第2の弾性腕を有する請求項1〜請求項6何れか1項記載の可動コネクタ。
【請求項8】
前記第2の弾性腕は、前記第2の接点部と前記接触受け部の互いに対向する板縁間を繋ぐ形状である請求項7記載の可動コネクタ。
【請求項9】
前記第2の接点部は、前記挿入口側の先端部に前記接続対象物の挿入をガイドする誘導傾斜面を有する請求項1〜請求項8何れか1項記載の可動コネクタ。
【請求項10】
前記第1の接点部は、前記第2の接点部よりも前記挿入口側に位置する山形屈曲形状である請求項1〜請求項9何れか1項記載の可動コネクタ。
【請求項11】
前記第1の接触片部は、前記接続対象物の押圧接触を受けて前記第1の接触片部に向けて変位する前記第2の接点部との接触を回避する逃げ凹部を有する請求項1〜請求項10何れか1項記載の可動コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の回路と接続対象物とを高い接続信頼性で導通接続するコネクタとして、例えば特許文献1に示すような可動コネクタが知られている。可動コネクタは、固定ハウジングと、可動ハウジングと、固定ハウジングに対して可動ハウジングを変位可能に支持する端子とを備えている。端子は、図20で示すように(図中の符号は特許文献1と合わせている。)、「接続対象物」としての相手端子2を挟むように押圧接触する一対の接触片31a、31bを有しており、一方の接触片31aには波状に連続する2つの第1の接点部31a−1が形成されており、他方の接触片31bには波の間の谷と対向する位置に1つの第2の接点部31b−1が形成されている。このような端子を備える従来の可動コネクタでは、3つの接点部31a−1、31a−1、31b−1が相手端子2を挟持するように押圧接触することで、可動ハウジングが変位した際に、各接点部31a−1、31a−1、31b−1を回動中心とする相手端子2の回動(傾倒)を抑制し、相手端子2と各接触片31a、31bとの微摺動接触を防いでいる。そして微摺動接触を防ぐことで各接触片31a、31bや相手端子2の表面に形成されためっきの剥離と、めっきの剥離による導通抵抗の増加を防ぐという優れた特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−165066号公報、段落0030、図20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の可動コネクタによれば、各接点部31a−1、31a−1、31b−1を回動中心とする相手端子2の回動(傾倒)を抑制することができる。しかしながら、2つの接点部31a−1は端子を形成する金属板を板厚方向に波状に連続して屈曲させた形状であるため、屈曲加工により2つの接点部31a−1の突出量を同じ高さに形成するのは加工難易度が高く、その突出量がばらつくと、相手端子2が傾いたままの状態で導通接触したり、あるいは一方の接点部31a−1にのみ接触することで、安定した導通接続が得られなくなることがある。
【0005】
また、可動ハウジングのより大きな変位に対応しつつ前述の微摺動接触によるめっき剥離等を防ぐために、より確実に相手端子2の回動を抑制することが課題とされている。その一つの解決方法としては、例えば、図20で示す上側の接点部31a−1と下側の接点部31a−1との接点間距離L1を拡大して、下側の接点部31a−1と第2の接点部31b−1との接点間距離L2と、上側の接点部31a−1と第2の接点部31b−1との接点間距離L3を長くするという方法がある。接点間距離L2をより長くすればするほど、図20で相手端子2の反時計回りR1の回動を抑制することができ、接点間距離L3を長くすればするほど相手端子2の時計回りR2の回動をより確実に抑制することが期待できる。しかしながら、そのように接点間距離L1、L2、L3を長くすると、相手端子2の挿入方向に沿って接触片31aを長くしなければならず、そうするとそれを収容する可動コネクタもまた大型化してしまい、基板上の占有面積が大きくなってしまうという課題がある。
【0006】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は可動コネクタについて接点部を回動中心とする接続対象物の回動をより確実に抑制できるようにすることにある。さらに本発明は、接点部における接続対象物の確実な回動抑制を、端子を大型化せずに実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく本発明は以下の特徴を有するものとして構成される。
【0008】
即ち、本発明は、第1のハウジングと、接続対象物の挿入口を有する接続室を有する第2のハウジングと、前記第1のハウジングに対して前記第2のハウジングを変位可能に支持する可動部と、前記接続室で前記接続対象物と導通接触する接触部とを有する端子とを備える可動コネクタについて、前記接触部は、前記接続室の前記挿入口側位置で前記接続対象物に対して第1の方向から押圧接触する第1の接点部を有する第1の接触片部と、前記接続室における前記第1の接点部よりも奥側位置で前記接続対象物に対して前記第1の方向から押圧接触する第2の接点部を有する第2の接触片部と、前記接続室の室内で前記第1の接点部及び前記第2の接点部と対向位置しており、前記接続室に挿入される前記接続対象物に沿って接触する接触面部を有する接触受け部と、前記可動部と繋がり前記第2のハウジングに固定される固定基部と、前記固定基部と前記接触受け部とを繋ぐ連結部とを有し、前記固定基部は、前記第2のハウジングに設けられた端子固定溝に圧入固定される圧入固定部を有し、前記連結部は、前記接続対象物の挿入方向に沿った両側に前記圧入固定部を有する位置から伸長することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1の接点部と第2の接点部とが接続対象物に対して導通接触するので、何れか一方の導通接触に不具合があっても他方によって導通接触が維持される接触信頼性の高い導通接続を実現することができる。また、第1の接点部と第2の接点部の押圧接触を受ける接続対象物は、第1の接点部及び第2の接点部と対向位置する接触面部に押しつけられて接触する。このとき接触面部は、接続室に挿入される接続対象物に沿って接触し、従来の可動コネクタの端子のように板厚方向で波状に屈曲して連続する複数の接点部31a−1により接触するものではない。このため、従来の可動コネクタのように製造時の加工精度に起因して接続対象物との導通接触が不安定になることもない。
【0010】
こうした接触面部と接触する接続対象物は、第1の接点部を回動中心(傾倒中心)とする接続対象物の回動動作に対して、接続室の挿入口側では第1の接点部と接触し、接続室の奥側では接触面部と接触しており、接点間距離を長くすることができる。より具体的には、接触面部における接続対象物に対する挿入方向奥側の接触位置は、第2の接点部による接続対象物との接触位置を超えて接続室の奥側に位置させることができる。これと同様に接続対象物は、第2の接点部を回動中心(傾倒中心)とする接続対象物の回動動作に対して、接続室の挿入口側では接触面部と接触し、接続室の奥側では第2の接点部と接触しており、接点間距離を長くすることができる。より具体的には、接続対象物が回動動作をしようとする際に、挿入口側における接続対象物に対する接触面部の接触位置は、接続対象物に対する第1の接点部の接触位置を超えて挿入口側に位置させることができる。したがって、第2のハウジングが第1のハウジングに対して三次元方向に変位して、接続対象物が挿入方向に対して斜めに変位しそうになる場合でも、接点間距離を長く確保していることから、接続対象物の回動動作をより確実に抑制できる。したがって、第1の接点部及び第2の接点部の接続対象物に対する微摺動接触を低減してめっき剥がれの発生等を防ぐことができる。そして従来技術のように第1の接点部と第2の接点部の接点間距離L2、L3を長くすること、即ち接触片31aの長尺化に依存しなくても、接続対象物の回動動作に対する第1の接点部と接触面部との接点間距離、第2の接点部と接触面部との接点間距離を長くとることができるので、接触部の大型化も抑制することができる。
【0011】
前記接触受け部については、前記挿入口側に位置する先端部に前記第2のハウジングに対する固定部を有するように構成できる。
【0012】
例えば接触受け部の先端部が固定されていない比較対象の可動コネクタでは、先端部が第2のハウジングの接続室の内壁から離れて浮いてしまい、接続対象物が挿入口から挿入された際に、接続対象物が先端部に突き当たって座屈するおそれがある。他方、本発明によれば、第2のハウジングの接続室の挿入口側に位置する接触受け部の先端部に第2のハウジングに対する固定部を有するため、接触受け部が挿入口側で接続室の室内に突出しないように接続室の内壁に沿わせて確実に固定することができる。したがって前述の比較対象の可動コネクタのように接続対象物が接触受け部の先端部と接触して、接触受け部が座屈するのを防止することができる。
【0013】
前記第1の接触片部と第2の接触片部については、それぞれ別々に独立して変位可能なばね片として構成できる。
【0014】
本発明によれば、第1の接触片部と第2の接触片部がそれぞれ別々に独立して変位することで、各接触片部が互いに接続対象物に対する接触圧や接触位置等の接触状態に影響を与えることなく、それぞれ独立して接続対象物と接触することができる。
【0015】
前記接触面部については、前記第1の接点部及び前記第2の接点部に向けて突出する形状として構成できる。
【0016】
本発明では、接触面部が接続対象物に向けて突出するものであり、接触受け部には突出部分(接触面部)と非突出部分(一般面部)とが形成される。そして接続対象物は、その挿入方向で突出部分である接触面部に沿って接触するため、接続対象物との接触長さ(有効嵌合長)を当該挿入方向に沿う接触面部の長さとして一定にすることができる。このような接触面部は、一例として前記第1の接点部及び前記第2の接点部に向けてビード状に突出する突起として構成できる。また他の例として、前記接触面部は少なくとも前記第1の接点部及び前記第2の接点部と対向位置する前記接触受け部の部分が前記第1の接点部及び前記第2の接点部に向けて突出する突出面部として構成できる。接触面部を前記突起とする場合には、接続対象物との接触面積を小さくして接触圧を高めることが容易であり微摺動接触の発生をより確実に抑制できる。接触面部を前記突出面部とする場合には、前記突起と比べて接続対象物との接触面積が広いため、接続対象物の接触姿勢が変化してもより確実な導通接触が可能である。
【0017】
前記第2の接触片部については、前記接触受け部に対して前記第2の接点部を変位可能に支持する第2の弾性腕を有するように構成できる。
【0018】
本発明によれば、第2の弾性腕が第1の接触片部と対向位置する接触受け部に対して繋がって第2の接点部を変位可能に支持する。これにより第2の接触片部を第1の接触片部と同じ接触部の部分から伸長するように形成する場合と比べて、第2の接触片部を小型化することができ、2つの接触片部を有する端子構造としながらも接触部を小型化することができ、可動コネクタも小型化できる。
【0019】
前記第2の弾性腕は、前記第2の接点部と前記接触受け部の互いに対向する板縁間を繋ぐ形状として構成できる。
【0020】
本発明によれば、第2の接点部は第1の接点部と同じ第1の方向から接続対象物に押圧接触するが、その第2の接点部を支持する第2の弾性腕は第1の接触片部と対向する接触受け部の板縁から伸長するため、第2の接触片部を小型化することができ、2つの接触片部を有する端子構造としながらも接触部を小型化することができ、可動コネクタも小型化できる。
【0021】
前記第1の接点部については、前記第2の接点部よりも前記接続対象物との押圧接触方向に突出するように構成できる。
【0022】
本発明によれば、接続室の挿入口側に位置する第1の接点部が第2の接点部よりも接続対象物との押圧接触方向で突出しているので、接続対象物が第1の接点部との押圧接触により接続対象物の適切な挿入姿勢が得られた状態で第2の接点部と押圧接触させることができる。これによって第2の接点部の座屈変形を防止することができる。
【0023】
前記第2の接点部については、前記挿入口側の先端部に前記接続対象物の挿入をガイドする誘導傾斜面を有するように構成できる。
【0024】
本発明によれば、第2の接点部の先端部に誘導傾斜面が形成されているため、斜めに挿入された接続対象物が第2の接点部の接触面と反対側の裏側に誤って挿入されて第2の接触片部が変形するような不都合を回避できる。
【0025】
前記第1の接点部については、前記第2の接点部よりも前記挿入口側に位置する山形屈曲形状として構成できる。
【0026】
本発明によれば、接続室における山形屈曲形状の第1の接点部の奥側のデッドスペースに第2の接点部を配置できるので、接触部を小型化することができ、可動コネクタも小型化できる。
【0027】
前記第1の接触片部については、前記接続対象物の押圧接触を受けて前記第1の接触片部に向けて変位する前記第2の接点部との接触を回避する逃げ凹部を有するように構成できる。
【0028】
本発明によれば、第1の接触片部に逃げ凹部を有するため、接続対象物との押圧接触により第2の接点部が変位しても、第1の接触片部と接触しない。したがって第1の接触片部に逃げ凹部を設けない場合と比較して、第1の接触片部と第2の接触片部を相互に近づけて配置することができ、接触部を全体として小型化することができ、可動コネクタも小型化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のコネクタによれば、接続対象物を第1の接点部及び第2の接点部と、接続対象物に沿って接触する接触面部とで挟持する導通接触構造であるため、第1の接点部及び第2の接点部における接続対象物の回動を従来の可動コネクタと比べてより確実に抑えることができる。したがって可動コネクタでありながらも、第1の接点部と第2の接点部と接続対象物との微摺動接触を低減し、めっき剥がれ等を抑制して優れた接触信頼性と導通性を実現することができる。
【0030】
また、従来の可動コネクタのように一つの接触片に複数の接点部を波状に連続して形成する端子構造ではなく、第1の接触片部と第2の接触片部とに分け、且つそれらの第1の接点部及び第2の接点部と接触面部とで接続対象物と接触する端子構造であるため、端子を大型化しなくても第1の接点部及び第2の接点部と接触面部との接点間距離を長くすることができ、端子と可動コネクタの小型化も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態による可動コネクタの正面、右側面、平面を含む外観斜視図。
図2図1の可動コネクタの正面図。
図3図1の可動コネクタの底面図。
図4図1の可動コネクタに備える可動ハウジングの正面、右側面、平面を含む外観斜視図。
図5図3の可動ハウジングの平面図。
図6図1の可動コネクタに備える端子の正面、右側面、平面を含む外観斜視図。
図7図6の端子の背面、左側面、平面を含む外観斜視図。
図8図6の端子の左側面図。
図9図2のIX−IX線断面図。
図10図6の端子の動作説明図。
図11】第2実施形態の可動コネクタに備える端子の正面、右側面、平面を含む外観斜視図。
図12図11の端子の左側面図。
図13】第3実施形態の可動コネクタに備える端子の左側面図。
図14図13の端子の接触部の拡大図。
図15図13の端子の動作説明図で、分図(a)は図11の第2実施形態の端子の動作説明図で、分図(a)は図13の第3実施形態の端子の動作説明図。
図16図13の端子の変形例による接触部を示す拡大図。
図17】第4実施形態の可動コネクタに備える端子の左側面図。
図18図17の端子の接触部の拡大図。
図19図17の端子の変形例による接触部を示す拡大図。
図20】一従来例による可動コネクタに備える端子の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の可動コネクタの実施形態の例について図面を参照しつつ説明する。本明細書、特許請求の範囲では、説明の便宜上、可動コネクタの幅方向・左右方向をX方向、奥行き方向・前後方向をY方向、高さ方向・上下方向をZ方向として説明するが、それらは可動コネクタの実装方法や使用方法を限定するものではない。
【0033】
第1実施形態〔図1図10
【0034】
可動コネクタ1は、「第1のハウジング」としての固定ハウジング2、「第2のハウジング」としての可動ハウジング3、複数の端子4、固定ハウジング2を基板Pに固定する複数の固定金具5を備えている。この可動コネクタ1は、基板Pの一方面に実装され、基板Pの他方面から「接続対象物」としてのピン端子Tを挿入して導通接続するボトムエントリコネクタとして構成されている(図9図10)。
【0035】
〔固定ハウジング2〕
固定ハウジング2は、樹脂成形体で形成され、外周壁2aと、天面壁2bとを有している。外周壁2aは角筒状に形成されており、外周壁2aと天面壁2bの内側には可動ハウジング3の収容室2cが形成されている(図3図9)。可動ハウジング3は、収容室2cの室内空間を三次元方向に変位可能として複数の端子4に保持されている。固定ハウジング2の外周壁2aの背面における幅方向Xの両側位置には、前述の固定金具5が圧入固定されている(図3)。固定ハウジング2の天面壁2bには、ピン端子Tと端子4との接続状態を視認することができる複数の天面開口2dが形成されている(図1図9)。本実施形態では5つの天面開口2dが幅方向Xに沿って一列に配置されている。天面開口2dはまた、電流が流れてピン端子Tと端子4が帯びる熱を固定ハウジング2から外部に放出するための放熱窓としても機能する。固定ハウジング2の底面には底面開口2eが形成されており、ここから可動ハウジング3が収容室2cに挿入される。
【0036】
〔可動ハウジング3〕
可動ハウジング3は、幅方向X及び奥行き方向Yで固定ハウジング2の収容室2cに収容可能な大きさの樹脂成形体にて形成され、外周壁3aと、外周壁3aの内部を複数の空間に分割する複数の隔壁3bとが形成されている。外周壁3aは角筒状に形成されており、外周壁3aと隔壁3bとで囲まれる内側空間は、端子4とピン端子Tとが導通接触する複数の接続室3cとして構成されている。本実施形態では5つの接続室3cが幅方向Xに沿って一列に配置されている。接続室3cの室内には、後述する端子4の接触部9が固定される。外周壁3aの幅方向Xの両側面には変位規制突起3dが突出して形成されている。変位規制突起3dは、前述した固定ハウジング2の収容室2cの幅方向Xにおける両側に形成されている変位規制凹部2fの内部に突出して配置される(図3)。変位規制突起3dが左右方向X、前後方向Y、高さ方向Z(上方向のみ)で変位規制凹部2fと当接するまでが、可動ハウジング3の変位量となる。高さ方向Zの下方向の変位の規制は、変位規制突起3dが基板Pに対して当接することでなされる。可動ハウジング3の下端側は、基板Pの貫通孔P1に挿通されており、その下端は基板Pの裏面から突出して位置する(図9)。可動ハウジング3の底面には、ピン端子Tの挿入口3eが形成されている。挿入口3eは漏斗状の誘導傾斜面3fを有しており、ピン端子Tはこの誘導傾斜面3fでガイドされて挿入口3eから接続室3cに挿入される。
【0037】
〔端子4〕
端子4は、基板接続部6、固定ハウジング2に圧入固定する固定ハウジング用固定部7、可動ハウジング3を固定ハウジング2に対して変位可能に支持する可動部8、可動ハウジング3の接続室3cに収容されてピン端子Tに対して導通接続する接触部9を有している。こうした端子4の各機能部とその形状は、打ち抜いた導電性金属片を屈曲加工して一体に形成されている。即ち各端子4は単一部品として形成されている。
【0038】
基板接続部6は、固定ハウジング2の正面の前方に突出して基板Pに対してはんだ付けで固定される。固定ハウジング2は、正面では基板接続部6により固定され、背面では固定金具5によりはんだ付けにて固定されることで、基板Pの裏面側から挿入される複数のピン端子Tの挿入力を確実に受け止めることができるようにしている。
【0039】
固定ハウジング用固定部7は、固定ハウジング2の収容室2cに設けた端子固定溝2gに対して圧入固定される(図3図9)。可動部8は、図6図8で示すように、固定ハウジング用固定部7から上方に伸長する第1の伸長部8aと、第1の伸長部8aの上端で折り返される第1の屈曲部8bと、第1の屈曲部8bから第1の伸長部8aと平行に伸長する第2の伸長部8cと、第2の伸長部8cの下端で折り返される第2の屈曲部8dと、第2の屈曲部8dから第2の伸長部8cと平行に伸長する第3の伸長部8eと、第3の伸長部8eの上端で折り返される第3の屈曲部8fと、後述する固定基部9aに繋がる第4の伸長部8gとを有している。第1の伸長部8a、第2の伸長部8c、第3の伸長部8eは、第1の屈曲部8b、第2の屈曲部8d、第3の屈曲部8fと繋がる側からX方向に沿う板幅が漸次細くなるように形成され、ばねとしての柔らかさを発揮できるようにしている。また、可動部8は、上下方向(Z方向)に伸長する縦ばね片(第1の伸長部8a、第2の伸長部8c、第3の伸長部8e)が3本並列に配置されることでばね長が長くされている。単に前後方向Yで変位可能とするだけならば、第3の伸長部8eは省略してもよいが、そのように3本並列に配置した縦ばね片を有することで、特に前後方向Yに変位する可動ハウジング3が柔軟に変位できるように弾性的に支持し、またばねとしての耐久性が高められている。
【0040】
接触部9は、図6図8で示すように、可動部8の第4の伸長部8gと繋がり、可動ハウジング3に固定される固定基部9aと、固定基部9aから片持ち梁状に伸長する第1の接触片部9bと、第1の接触片部9bと対向位置する接触受け部9cと、接触受け部9cから片持ち梁状に伸長する第2の接触片部9dと、固定基部9aと接触受け部9cとを繋ぐ連結部9fとを有している。
【0041】
固定基部9aは、図9で示すように、可動ハウジング3に設けられた第1の端子固定溝3gに圧入固定される。
【0042】
第1の接触片部9bは、固定基部9aから伸長する第1の弾性腕9b1と、第1の弾性腕9b1により変位可能に支持されており、接続対象物のピン端子Tに対して「第1の方向」、即ち前後方向Yにおける前方から後方に向けて押圧接触する第1の接点部9b2とを有している。第1の接点部9b2は、接触受け部9cに向かって山形屈曲形状に突出して形成されている。
【0043】
接触受け部9cは、全体が平板状金属片として形成されており、第1の接触片部9bとの対向面はピン端子Tの挿入方向(Z方向)に沿って伸長する平坦な接触面部9c1として形成されている。接触面部9c1は、ピン端子Tとの接触部分であるため、少なくとも第1の接点部9b2と第2の接点部9d2(接点突起9d3)の接点間距離よりも長く形成されている。接触受け部9cにおける第1の接点部9b2と対向する先端部には固定部9c2が形成されており、図9で示すように、可動ハウジング3の第2の端子固定溝3hに対して圧入固定される。したがって接触受け部9cは、それ自体が他の接触部9の部分とは独立して可動ハウジング3に対して圧入固定されている。接触面部9c1は、第2の端子固定溝3hに圧入固定される固定部9c2を除き、可動ハウジング3の接続室3cに露出するように配置される。接続室3cに挿入されるピン端子Tの摺動接触を受け、嵌合状態ではピン端子Tと導通接触するためである。接触受け部9cの接触面部9c1と反対側の面は可動ハウジング3の樹脂壁と接触しており、ピン端子Tから受ける押圧力は接触受け部9cを介して樹脂壁によって受け止められる。
【0044】
第2の接触片部9dは、図8図10で示すように、第2の弾性腕9d1と、第2の接点部9d2とを有する。第2の弾性腕9d1は、基端が接触受け部9cの一方(右側)の板縁9c3に繋がり(図6図7)、そこから屈曲して第1の接触片部9bに向けて伸長している。より具体的には、第2の弾性腕9d1の先端は、図8で示すように、山形屈曲形状の第1の接点部9b2の上側位置であり且つ第1の弾性腕9b1との隣接位置まで伸長しており、その先端は屈曲部を介して第1の弾性腕9b1の板面と平行な板片でなる第2の接点部9d2と繋がっている。これにより第2の接点部9d2は、ピン端子Tの挿入方向Zで見た場合に、山形屈曲形状の第1の接点部9b2の背後に隠れるように配置されている。第2の接点部9d2は板状に形成されており、その接触受け部9cとの対向面にはピン端子Tに押圧接触する接点突起9d3が形成されている。
【0045】
連結部9fは、一端が固定基部9aの一方(右側)の板縁9a1に繋がり(図6図7)、他端が接触受け部9cの右側の板縁9c3に繋がるばね片として形成されている。したがって連結部9fは、第2の弾性腕9d1とZ方向で並べて配置されている。また、連結部9fの他端が接触受け部9cに繋がることで、接触受け部9cは、先端側(下端側)では固定部9c2により可動ハウジング3に固定され、その反対側(上端側)では連結部9fと固定基部9aとを介して可動ハウジング3に固定される構造となっている。このため接触受け部9cは、確実に可動ハウジング3に固定され、ピン端子Tの長さ方向に沿って接触することで、ピン端子Tによる接触を受け止めることができる。
【0046】
〔可動コネクタ1の作用効果〕
次に、以上のような構成の可動コネクタ1の作用効果を説明する。
【0047】
可動コネクタ1は、端子4の可動部8によって可動ハウジング3が固定ハウジング2に対して三次元方向(X方向、Y方向、Z方向及びこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持されるため、ピン端子Tとの嵌合接続時におけるピン端子Tの挿入位置のずれを可動ハウジング3の変位により吸収して正しく嵌合接続することができる。また、ピン端子Tが正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、ピン端子Tや基板Pが振動や衝撃により変位した場合には、可動ハウジング3の変位によって振動等を吸収することができる。さらに、嵌合接続状態では第1の接点部9b2と第2の接点部9d2の双方がピン端子Tに対して押圧状態で導通接触するので、その何れか一方の導通接触に不具合があっても、他方によって導通接触が維持されるため、接続信頼性の高い導通接続を実現することができる。
【0048】
こうした基本的な作用効果に加えて、可動コネクタ1には以下のような特徴がある。ピン端子Tは、第1の接点部9b2と第2の接点部9d2の押圧接触を受け、その押圧接触方向(Y方向)で接触受け部9cの平坦な接触面部9c1と接触する。接触面部9c1は、図20で示す従来の可動コネクタのような複数の接点部31a−1が板厚方向で波状に屈曲して連続する形状ではなく、ピン端子Tの挿入長さに応じてピン端子Tの長さ方向に沿って接触する平坦面形状であるため、従来の可動コネクタのように製造時の加工精度に起因してピン端子Tとの導通接触が不安定になることもない。したがって可動コネクタ1は、第1の接点部9b2と第2の接点部9d2(接点突起9d3)を回動中心とするピン端子Tの回動(傾倒)をより確実に抑制することができる。
【0049】
可動コネクタ1は、図10で示すように、ピン端子Tの反時計回りR1の回動に対して、接続室3cの挿入口3e側では第1の接点部9b2と接触する。他方、接続室3cの奥側ではピン端子Tの挿入側の先端部が接触面部9c1と接触する。このようにピン端子Tの反時計回りR1の回動に対して接点間距離L4を長くすることができ、僅かな回動でも確実に押さえ込むことができる。そしてピン端子Tは、変位しない接触面部9c1との接触箇所を支点として回動しようとするが、第1の接触片部9bのみならず、それらの間に位置する第2の接触片部9dによっても回動が押さえ込まれる。こうしてピン端子Tの反時計回りR1の回動を、第1の接触片部9bと第2の接触片部9dの2つによって、より確実に抑制することができ、微摺動接触によるめっき剥がれの発生等を防ぐことができる。
【0050】
これと同様に、ピン端子Tの時計回りR2の回動に対しては、接続室3cの奥側では第2の接点部9d2(接点突起9d3)と接触する。他方、接続室3cの挿入口3e側では平坦な接触面部9c1の下端側がピン端子Tと接触する。このようにピン端子Tの時計回りR2の回動に対して接点間距離L5を長くすることができ、僅かな回動でも確実に押さえ込むことができる。そしてピン端子Tは、変位しない接触面部9c1の下端側との接触箇所を支点として回動しようとするが、第2の接触片部9dのみならず、それらの間に位置する第1の接触片部9bによっても回動が押さえ込まれる。こうしてピン端子Tの時計回りR2の回動を、第1の接触片部9bと第2の接触片部9dの2つによって、より確実に抑制することができ、微摺動接触によるめっき剥がれの発生等を防ぐことができる。
【0051】
可動コネクタ1は、図10で示すように、長い接点間距離L4、L5により、第1の接点部9b2と第2の接点部9d2(接点突起9d3)を回動中心とするピン端子Tの回動を確実に抑制しながらも、第1の接点部9b2と第2の接点部9d2(接点突起9d3)との接点間距離L6は短く形成されており、接触部9の大型化を抑制している。即ち、接触面部9c1は、ピン端子Tの挿入方向(Z方向)で、挿入口3e側から第1の接点部9b2と第2の接点部9d2(接点突起9d3)を超える長さの平坦面として形成されている。このため反時計回りR1の回動時での接触面部9c1におけるピン端子Tに対する挿入方向奥側の接触位置は、第2の接点部9d2(接点突起9d3)を超えて接続室3cのさらに奥側に位置させることができる。これと同様に、時計回りR2の回動時での接触面部9c1におけるピン端子Tに対する挿入口3e側の接触位置は、第1の接点部9b2を超えて挿入口3e側に位置させることができる。これによって接点間距離L6が短く接触部9を大型化しなくても、ピン端子Tの回動をより確実に抑制することができる。
【0052】
接触受け部9cは、接続室3cの室内で挿入口3e側に位置する先端部に可動ハウジング3に対する固定部9c2を有している。このため接触受け部9cが接続室3cの室内に突出しないように確実に固定することができ、ピン端子Tが接触受け部9cの先端部と接触して、接触受け部9cが座屈するのを防止することができる。
【0053】
第1の接触片部9bと第2の接触片部9dは、それぞれ別々に独立して変位可能なばね片として構成されている。そのため第1の接触片部9bと第2の接触片部9dは互いにピン端子Tに対する接触圧や接触位置等の接触状態に影響を与えることなく、それぞれ独立してピン端子Tと接触することができる。
【0054】
第2の接触片部9dは、接触受け部9cに繋がるものとして構成されている。より具体的には第2の弾性腕9d1の基端は接触受け部9cに繋がるように形成されており、これにより接触部9の大型化が抑制されている。即ち、例えば第2の接触片部9dを第1の接触片部9bと同様に固定基部9aから同じ方向に並列に伸長して形成する場合には、干渉を避けるため第1の接点部9b2と第2の接点部9d2とをピン端子Tの挿入方向(Z方向)で位置をずらして配置しなければならず、そうすると接触部9が挿入方向(Z方向)で大型化してしまうという問題がある。しかしながら、第2の接触片部9dを接触受け部9cに繋がるものとして構成することで、第1の弾性腕9b1と第2の弾性腕9d1の伸長方向が交差方向となり同じ方向に並列に伸長するものではないため、第2の接触片部9dを小型化することができ、2つの接触片部9b、9dを有する端子構造でありながら、接触部9を小型化することができる。
【0055】
そして第2の弾性腕9d1は、固定基部9aと接触受け部9cとを繋ぐ連結部9fと同じ側の板縁9a1、9c3を繋ぐように形成されており、これにより第2の弾性腕9d1と連結部9fは接触部9の一方側の側縁に並べて配置されている。したがって接触部9を幅方向(X方向)で大型化するのを抑制することができ、可動コネクタ1を小型に構成することができる。
【0056】
第1の接点部9b2は、第2の接点部9d2の接点突起9d3よりも接触受け部9cに向かって突出している。したがってピン端子Tの挿入時に、第1の接点部9b2の押圧接触によりピン端子Tを接触面部9c1に押しつけて、接触面部9c1の平坦面に沿う適切な挿入姿勢が得られた状態で、接点突起9d3をピン端子Tと押圧接触させることができ、第2の接点部9d2が座屈変形するような接触を防止することができる。
【0057】
第1の接点部9b2は、山形屈曲形状として形成されている。そのため第1の接点部9b2の挿入方向奥側の傾斜片の上側はデッドスペースとなる。しかしながら可動コネクタ1では、そこに第2の接点部9d2を配置しているため、第2の接点部9d2が第1の接点部9b2と連結部9fとの間から接触部9の外部に突出することがなく、接触部9を小型化することができ、可動コネクタ1も小型に形成することができる。
【0058】
第2実施形態〔図11図12
【0059】
第2実施形態の可動コネクタは、端子11の第1の接触片部12、第2の接触片部13が第1実施形態の可動コネクタ1と異なり、その他の構成及びそれに基づく作用効果は同一である。よって当該相違点のみ説明し、第1実施形態との共通点の重複説明は省略する。
【0060】
第1の接触片部12には、第1の弾性腕12aと、第1実施形態の第1の接点部9b2と同様の第1の接点部12bとが形成されている。このうち第1の弾性腕12aにはその途中に、第2の接触片部13の反対側に突出するように屈曲する逃げ凹部12cが形成されている。
【0061】
また、本実施形態の第2の接触片部13は、第2の弾性腕13aと、第2の接点部13bとが形成されている。このうち第2の接点部13bの先端部にはピン端子Tの挿入をガイドする誘導傾斜面13cが形成されている。また第2の接点部13bには、誘導傾斜面13cから連続してビード状に突出する接点突起13dが形成されており、ここがピン端子Tと押圧接触する。
【0062】
以上のような第2実施形態の端子11を備える可動コネクタでは、第1実施形態の可動コネクタ1が奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
【0063】
先ず、第1の弾性腕12aには逃げ凹部12cが形成されている。このため、第2の接点部13bがピン端子Tと押圧接触して第1の弾性腕12aに向けて変位した場合でも、第2の接点部13bは逃げ凹部12cに入り込むだけで第1の弾性腕12aと接触しない。したがって第2の接点部13bを所定の接触圧でピン端子Tと導通接触させることができる。また、逃げ凹部12cを形成しない場合には、変位した第2の接点部13bが第1の弾性腕12aと接触しないように、第2の接点部13bを第1の接触片部12から離さなければならない。具体的には図12で示す連結部9fを図中左側に長く伸ばさなければならず、そうすると前後方向Yで端子11と、それを備える可動コネクタが大型化してしまうという問題がある。しかしながら逃げ凹部12cによって接触を回避できるため、第1の弾性腕12aに第2の接点部13bを近づけて配置することが可能となり、よって端子11と可動コネクタを小型に形成することができる。
【0064】
第2の接点部13bの先端部には、ピン端子Tの挿入をガイドする誘導傾斜面13cが形成されている。このためピン端子Tが斜めに挿入されて、第2の接点部13bの先端と第1の接点部12bとの間に潜り込みそうになっても、誘導傾斜面13cに当接して進入を阻止することができる。
【0065】
第3実施形態〔図13図15
【0066】
第3実施形態の可動コネクタは、端子15の接触受け部16が第2実施形態と異なり、その他の構成及びそれに基づく作用効果については第2実施形態の可動コネクタと同一である。よってその相違点のみ説明する。
【0067】
端子15の接触受け部16の中央には、第1の接点部12b、第2の接点部13bに向けて突出する接触面部16aが形成されている。接触面部16aは、幅方向(X方向)でピン端子Tの太さを超えるが接触受け部16の板幅より短い幅で形成されており、長さ方向(Z方向)で接触受け部16の先端側から第2の弾性腕13aと連結部9fとの間の位置まで伸長する長さで形成されている。接触面部16aを接触受け部16の「突出部分」とすると、接触面部16aの周囲は接触受け部16の「非突出部分」となる平坦な一般面部16bとなっている。接触面部16aはビード状の「突起」により形成されており、ピン端子Tと接触する接触面部16aの反対側は凹みとなっている。接触面部16aと第2の接点部13bの接点突起13dとの間のピン端子Tの挿入間隔L7は、第2実施形態の接触面部9c1と第2の接点部13bとの間のピン端子Tの挿入間隔L7と同じに形成されており、したがって第3実施形態の方が接触面部16aの突出長さだけ前後方向(Y方向)で大きくなっている。
【0068】
図14は、接触面部16aにピン端子Tが接触している状態である。ピン端子Tの挿入方向における接触面部16aの一端側と他端側の端部には段差16c、16dが形成されている。このためピン端子Tは、接触部9との嵌合接続状態では、接触面部16aより一段低い一般面部16bと接触せずに浮いた状態となり、接触面部16aに対してのみ接触している。
【0069】
こうした接触面部16aについては、第2実施形態と比較して次のような利点がある。第2実施形態では図15(a)で示すように、接触面部9c1が平坦面であり、ピン端子Tの挿入方向への挿入長さが異なると、ピン端子Tが傾斜したときの第1の接点部12bと第2の接点部13bとの変位量に差D1が生じる。即ち、挿入長さの短いピン端子T1の方が、挿入長さの長いピン端子T2よりも第1の接点部12b、第2の接点部13bの変位量が少なく、挿入長さが長いほど変位量の差D1も大きくなる。こうした変位量の差D1はピン端子Tに対する接触圧の違いとして表れ、変位量の差D1が大きくなればなるほど接触圧は高くなる。したがって第2実施形態では、第1の接点部12b、第2の接点部13bにおける接触圧がピン端子Tの挿入長さに依存してしまい、端子15自体によってコントロールできず、ピン端子Tに対する特定の接触圧による押圧接触が必要とされる場合にはピン端子Tの正確な挿入長さによる嵌合接続が求められる。
【0070】
これに対して一般面部16bに対して突出する接触面部16aを有する場合であれば、そうした正確なピン端子Tの嵌合接続の管理は不要である。即ち、図15(b)で示すピン端子T1は、第1の接点部12b及び第2の接点部13bと導通接触できる最も挿入長さ(有効嵌合長)が短い挿入位置である。ピン端子T2は、第1の接点部12b及び第2の接点部13bと導通接触し、かつピン端子T2の先端側が接触面部16aの上端部を超える挿入長さとした挿入位置であり、この挿入位置が正規の接触位置となる。同図で示すように、ピン端子T1とピン端子T2とで挿入長さが変わっても、図15(a)と比べて第1の接点部12b、第2の接点部13bの変位量の差D2を小さくすることができる。特にピン端子T3は、その先端側が接触面部16aの上端部の段差16cの手前位置と接触する挿入位置を示しているが、ピン端子T3と段差16cを超えて挿入したピン端子T2とでは、第1の接点部12b及び第2の接点部13bの変位量は同じである。このため接触圧も同じであり、ピン端子Tの挿入長さに拘わらず、端子15自体によって第1の接点部12b及び第2の接点部13bの接触圧をコントロールすることができる。
【0071】
第3実施形態の変形例〔図16
【0072】
前述の第3実施形態の接触受け部16については、図16で示す変形例の接触受け部17とすることができる。接触受け部17は、第1の接点部12b、第2の接点部13bに向けて突出する接触面部17aを有している。この接触面部17aは、突出面部17bと、第1の屈曲部17cと、第2の屈曲部17dにて形成されている。このように接触受け部17を形成する導電性板材の屈曲加工により第3実施形態の接触面部16aと同様の作用効果を奏する接触面部17aを設けることもできる。即ち、ピン端子Tが第1の屈曲部17cを超えて挿入されれば、ピン端子Tの挿入長さに拘わらず、端子15自体によって第1の接点部12b及び第2の接点部13bの接触圧を一定にコントロールすることができる。
【0073】
接触面部17aは、第2の弾性腕13aと連結部9fの間に第1の屈曲部17cを形成し、第1の接点部12bよりも接触受け部17の先端側に第2の屈曲部17dを形成する必要がある。そして第2の屈曲部17dよりも接触受け部17の先端側に固定部9c2を設ける必要があるため、この変形例の接触受け部17は第3実施形態の接触受け部16よりも長くなってしまう。逆に言えばビード状の接触面部16aを有する接触受け部16は、屈曲により接触面部17aが突出する変形例よりも長さを短く形成することができ、端子15及びそれを備える可動コネクタを小型化できる利点がある。
【0074】
第4実施形態〔図17図18
【0075】
第4実施形態の可動コネクタは、端子18の接触部19が第1実施形態の可動コネクタ1と異なり、その他の構成及びそれに基づく作用効果は同一である。よってその相違点のみ説明する。
【0076】
接触部19は、固定基部20と、第1の接触片部21と、第2の接触片部22と、接触受け部23と、固定基部20と接触受け部23とを繋ぐ連結部24とを有して構成されている。第2の接触片部22は、第1の接触片部21と同じように固定基部20から伸長して形成されている。第1の接触片部21は、固定基部20から平行に伸長する2本の第1の弾性腕21aと、それらの先端に形成されている山形屈曲形状の第1の接点部21bを有している。第2の接触片部22は、2本の第1の弾性腕21aの間に位置する第2の弾性腕22aと、第2の弾性腕22aに変位可能に支持される山形屈曲形状の第2の接点部22bとを有している。
【0077】
第1の接触片部21及び第2の接触片部22と対向位置する接触受け部23は、第1実施形態の接触受け部9cと同様に平板状に形成されており、平坦な接触面部23aを有する。接触受け部23は、第1の接触片部21と第2の接触片部22の双方を固定基部20から伸長する形状としているため、それに対応して第1実施形態の接触受け部9cよりも長く形成されている。逆に言えば、第1実施形態の接触受け部9c及びそれを有する端子4及び可動コネクタ1は、ピン端子Tの挿入方向(Z方向)で第4実施形態よりも小型に形成することができる点で優れている。接触受け部23の先端部には可動ハウジング3に固定する固定部23bが形成されている。
【0078】
本実施形態では、第1の接触片部21と第2の接触片部22が、共通の固定基部20からばね片として並列に伸長する構造であり、第1実施形態よりも第1の弾性腕21aのみならず第2の弾性腕22aを長く形成することができる。そのためピン端子Tの回動に対して各弾性腕21a,22aが柔軟に追従変位することによって、第1の接点部21b及び第2の接点部22bとピン端子Tとの良好な接触状態を維持することができる。また第2の接点部22bがロール面で形成されているので、ピン端子Tの挿入抵抗が少なく繰り返しの挿抜に対する耐久性を高めることができる。
【0079】
第4実施形態の変形例〔図19
【0080】
第4実施形態の接触受け部23については、図19の接触受け部25とすることができる。接触受け部25には、図16で示す第3実施形態の変形例と同様の接触面部25aが形成されている。このように接触受け部25を形成する導電性材料の屈曲加工により、第3実施形態と同様の作用効果を奏する接触面部17aを設けることもできる。なお、第3実施形態の変形例による接触面部17aではなく、第3実施形態のビード状に突出する接触面部16aに変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 可動コネクタ
2 固定ハウジング
2a 外周壁
2b 天面壁
2c 収容室
2d 天面開口
2e 底面開口
2f 変位規制凹部
2g 端子固定溝
3 可動ハウジング
3a 外周壁
3b 隔壁
3c 接続室
3d 変位規制突起
3e 挿入口
3f 誘導傾斜面
3g 第1の端子固定溝
3h 第2の端子固定溝
4 端子(第1実施形態)
5 固定金具
6 基板接続部
7 固定ハウジング用固定部
8 可動部
8a 第1の伸長部
8b 第1の屈曲部
8c 第2の伸長部
8d 第2の屈曲部
8e 第3の伸長部
8f 第3の屈曲部
8g 第4の伸長部
9 接触部
9a 固定基部
9a1 板縁
9b 第1の接触片部
9b1 第1の弾性腕
9b2 第1の接点部
9c 接触受け部
9c1 接触面部
9c2 固定部
9c3 板縁
9d 第2の接触片部
9d1 第2の弾性腕
9d2 第2の接点部
9d3 接点突起
9f 連結部
11 端子(第2実施形態)
12 第1の接触片部(第2実施形態)
12a 第1の弾性腕
12b 第1の接点部
12c 逃げ凹部
13 第2の接触片部(第2実施形態)
13a 第2の弾性腕
13b 第2の接点部
13c 誘導傾斜面
13d 接点突起
15 端子(第3実施形態)
16 接触受け部
16a 接触面部
16b 一般面部
16c 段差
16d 段差
17 接触受け部(第3実施形態の変形例)
17a 接触面部
17b 突出面部
17c 第1の屈曲部
17d 第2の屈曲部
18 端子(第4実施形態)
19 接触部
20 固定基部
21 第1の接触片部
21a 第1の弾性腕
21b 第1の接点部
22 第2の接触片部
22a 第2の弾性腕
22b 第2の接点部
23 接触受け部
23a 接触面部
23b 固定部
24 連結部
25 接触受け部(第4実施形態の変形例)
25a 接触面部
L1〜L6 接点間距離
L7 ピン端子の挿入間隔
D1、D2 変位量の差
X 幅方向、左右方向
Y 奥行き方向、前後方向(第1の方向)
Z 高さ方向、上下方向

図1
図2
図3
図4
図5
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図20