(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463513
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】静電容量センシング式識別システム用の装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20190128BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20190128BHJP
H03F 3/70 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/044 Z
H03F3/70
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-561713(P2017-561713)
(86)(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公表番号】特表2018-529136(P2018-529136A)
(43)【公表日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】CN2016112377
(87)【国際公開番号】WO2018032683
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】201610677526.2
(32)【優先日】2016年8月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517380215
【氏名又は名称】北京集創北方科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Chipone Technology (Beijing) Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 卓
【審査官】
岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−125687(JP,A)
【文献】
特開2014−120973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03−3/047
H03F 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量センシング式識別システム用の装置であって、
第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する増幅器モジュールと、
静電容量センシング式識別システムのセンシングコンデンサを介して増幅器モジュールの第1入力端子に励起信号を供給するための励起信号源と、
前記増幅器モジュールの第1入力端子と出力端子の間に接続されているフロントエンドフィードバックコンデンサと、
前記増幅器モジュールの第2入力端子と出力端子の間に接続されており、増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給し、増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受け、増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、静電容量センシング式識別システム中のバックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するための補正モジュールとを備える、ことを特徴とする静電容量センシング式識別システム用の装置。
【請求項2】
前記補正モジュールは、
前記増幅器モジュールの出力端子に接続されているアナログデジタル変換器と、
前記増幅器モジュールの第2入力端子に接続されているデジタルアナログ変換器と、
アナログデジタル変換器とデジタルアナログ変換器の間に接続され、デジタルアナログ変換器を介して増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給し、アナログデジタル変換器を介して増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受け、受けた出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するためのデジタル制御ユニットとを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記補正モジュールは、さらに、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節することは、バックグラウンド容量の定量化段階で行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フロントエンドフィードバックコンデンサと並列接続され、リセット時に前記増幅器モジュールに前記入力差電圧を出力させるためのリセットスイッチをさらに備える、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記静電容量センシング式識別システムは、指紋識別装置に使用され、前記バックグラウンド容量の定量化段階で、指紋谷線と指紋識別装置のタッチ表面との間の容量をバックグラウンド容量として定量化する、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記静電容量センシング式識別システムは、タッチスクリーンに使用され、前記バックグラウンド容量の定量化段階で、タッチスクリーンのタッチ表面のタッチがないときの結合容量をバックグラウンド容量として定量化する、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記入力差電圧は、入力基準電圧とシステムオフセット電圧の差である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1入力端子は負入力端子であり、前記第2入力端子は正入力端子である、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1入力端子は正入力端子であり、前記第2入力端子は負入力端子である、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
静電容量センシング式識別システム用の方法であって、
静電容量センシング式識別システムのセンシングコンデンサを介して増幅器モジュールの第1入力端子に励起信号を供給し、増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給するステップであって、前記増幅器モジュールの第1入力端子と出力端子の間にフロントエンドフィードバックコンデンサが接続されているステップと、
増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受けるステップと、
増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、静電容量センシング式識別システム中のバックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するステップとを含む、ことを特徴とする静電容量センシング式識別システム用の方法。
【請求項12】
前記増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給する前にデジタルアナログ変換を行い、且つ、増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受けた後にアナログデジタル変換を行うステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するステップは、
増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧の最小値が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するステップを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するステップは、
増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧の最大値が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節し、且つ、それに対応してフロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するステップを含む、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節することは、バックグラウンド容量の定量化段階で行われる、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記入力差電圧は、入力基準電圧とシステムオフセット電圧の差である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第1入力端子は負入力端子であり、前記第2入力端子は正入力端子である、ことを特徴とする請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1入力端子は正入力端子であり、前記第2入力端子は負入力端子である、ことを特徴とする請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年8月16日に出願された、「静電容量センシング式識別システム用の装置及び方法」を名称とする中国特許出願第201610677526.2号の優先権を主張し、前述の特許出願の内容全体を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、静電容量センシング式識別システム用の装置及び方法に関し、さらに具体的には、静電容量センシング式識別システムのダイナミックレンジを調節するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、静電容量センシング式識別システムは、投影型静電容量式タッチスクリーン、タッチパネル及び指紋識別などのヒューマンコンピュータインタラクションアプリケーションに幅広く使用され、その原理はフロントエンド検出回路により容量値を電気信号量(電圧、電流など)に変換することである。タッチスクリーン用途の場合、指の押圧によって対応する位置のセンシング容量の大きさが変化し、フロントエンド検出回路により出力される電気信号の大きさも、それに対応してタッチがない場合とは異なるため、タッチの有無及びタッチの位置情報が判断される。静電容量式指紋識別センサの場合、指紋の谷線及び隆線とセンサとにより形成される静電容量の大きさは異なり、フロントエンド検出回路により検出される電気信号の出力も異なる。
【0004】
タッチがない場合、静電容量センシング式識別システムは自己容量を有し、本発明において「バックグラウンド容量」と称する。タッチが発生した後、センシングコンデンサの容量値は、それに応じて自己容量に基づいて変化する。上述した原理から分かるように、静電容量センシング式識別システムの有効ダイナミックレンジは検出静電容量の変化量である。タッチスクリーンシステムの有効ダイナミックレンジはタッチの前後の容量の差であり、指紋識別システムの有効ダイナミックレンジは指紋谷線と隆線の容量の差である。フロントエンド検出回路のゲインを増加させることによって、システムの有効ダイナミックレンジを増加させることができる。
【0005】
幾つかの用途では、フロントエンド検出回路は、異なる状態での容量値を順に検出し、即ち、バックグラウンド容量とタッチが発生した後に導入されるセンシング容量をそれぞれ検出し、後続の処理回路又はソフトウェアにより差を処理する。
【0006】
他の幾つかの用途では、フロントエンド検出回路は、異なる条件下の容量値を同時に検出し、即ち、バックグラウンド容量とタッチが発生した後に導入されるセンシングコンデンサを同時に検出する。
【0007】
バックグラウンド容量をC
bとし、検出の必要がある容量の変化量をC
Δとすると、フロントエンド検出回路が容量を電圧に変換する変換関係は、以下のように簡単に表すことができる。
フロントエンド検出回路の出力振幅が制限されているため(VOUT<=V
h_limit)、フロントエンド検出回路の変換ゲインAの最大値は、
となる。
【0008】
「バックグラウンド容量」の存在により、フロントエンド検出回路は検出容量の変化量を直接増幅することができず、フロントエンド検出回路のゲインをただ増加させてしまえば、フロントエンド検出回路が飽和されてしまうことが分かる。検出容量の変化量が容量の絶対値と比べて非常に小さい場合、システムの有効ダイナミックレンジは小さくなり、フロントエンド検出回路は、ゲインを増加させることによってシステムの入力信号量を効果的に増加させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、静電容量センシング式識別システムのダイナミックレンジを調節するための新たな装置及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明の実施形態は、静電容量センシング式識別システムのダイナミックレンジを効果的に調節できる静電容量センシング式識別システム用の装置及び方法を提供する。
【0011】
本発明の一態様によれば、静電容量センシング式識別システム用の装置が提供される。この装置は、
第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する増幅器モジュールと、
静電容量センシング式識別システムのセンシングコンデンサを介して増幅器モジュールの第1入力端子に励起信号を供給するための励起信号源と、
前記増幅器モジュールの第1入力端子と出力端子の間に接続されているフロントエンドフィードバックコンデンサと、
前記増幅器モジュールの第2入力端子と出力端子の間に接続されており、増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給し、増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受け、増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、静電容量センシング式識別システム中のバックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するための補正モジュールとを備える。
【0012】
幾つかの実施形態では、前記補正モジュールは、
前記増幅器モジュールの出力端子に接続されているアナログデジタル変換器と、
前記増幅器モジュールの第2入力端子に接続されているデジタルアナログ変換器と、
アナログデジタル変換器とデジタルアナログ変換器の間に接続され、デジタルアナログ変換器を介して増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給し、アナログデジタル変換器を介して増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受け、受けた出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するためのデジタル制御ユニットとを備える。
【0013】
幾つかの実施形態では、前記補正モジュールは、さらに、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するために用いられる。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節することは、バックグラウンド容量の定量化段階で行われる。
【0015】
幾つかの実施形態では、静電容量センシング式識別システム用の装置は、前記フロントエンドフィードバックコンデンサと並列接続され、リセット時に前記増幅器モジュールに前記入力差電圧を出力させるためのリセットスイッチをさらに備える。
【0016】
幾つかの実施形態では、前記静電容量センシング式識別システムは、指紋識別装置に使用され、前記バックグラウンド容量の定量化段階で、指紋谷線と指紋識別装置のタッチ表面との間の容量をバックグラウンド容量として定量化する。
【0017】
幾つかの実施形態では、前記静電容量センシング式識別システムは、タッチスクリーンに使用され、前記バックグラウンド容量の定量化段階で、タッチスクリーンのタッチ表面のタッチがないときの結合容量をバックグラウンド容量として定量化する。
【0018】
幾つかの実施形態では、前記入力差電圧は、入力基準電圧とシステムオフセット電圧の差である。
【0019】
幾つかの実施形態では、前記第1入力端子は負入力端子であり、前記第2入力端子は正入力端子である。
【0020】
幾つかの実施形態では、前記第1入力端子は正入力端子であり、前記第2入力端子は負入力端子である。
【0021】
本発明の別の態様によれば、静電容量センシング式識別システム用の方法がさらに提供される。この方法は、
静電容量センシング式識別システムのセンシングコンデンサを介して増幅器モジュールの第1入力端子に励起信号を供給し、増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給するステップであって、前記増幅器モジュールの第1入力端子と出力端子の間にフロントエンドフィードバックコンデンサが接続されているステップと、
増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受けるステップと、
増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、静電容量センシング式識別システム中のバックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するステップとを含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、この静電容量センシング式識別システム用の方法は、増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給する前にデジタルアナログ変換を行い、且つ、増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受けた後にアナログデジタル変換を行うステップをさらに含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するステップは、
増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧の最小値が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節するステップを含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、この静電容量センシング式識別システム用の方法は、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するステップをさらに含む。
【0025】
幾つかの実施形態では、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するステップは、
増幅器モジュールの出力端子により供給された出力電圧の最大値が予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節し、且つ、それに対応してフロントエンドフィードバックコンデンサの容量を調節するステップを含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、前記増幅器モジュールの第2入力端子に供給される入力差電圧を調節することは、バックグラウンド容量の定量化段階で行われる。
【0027】
幾つかの実施形態では、前記入力差電圧は、入力基準電圧とシステムオフセット電圧の差である。
【0028】
幾つかの実施形態では、前記第1入力端子は負入力端子であり、前記第2入力端子は正入力端子である。
【0029】
幾つかの実施形態では、前記第1入力端子は正入力端子であり、前記第2入力端子は負入力端子である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の実施形態による技術案をより明確に説明するために、以下、実施形態の図面を簡単に説明する。以下の説明に係る図面は、単に本発明の幾つかの実施形態に関するものであり、本発明を制限するものではない。
【0031】
【
図1】静電容量センシング式識別システム用の装置の構造模式図を示す。
【
図2】静電容量センシング式識別システム用の装置の信号タイミング図を示す。
【
図3】本発明の実施形態による静電容量センシング式識別システム用の装置の構造図を示す。
【
図4】本発明の実施形態による静電容量センシング式識別システム用の方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態の目的、技術手段及びメリットをさらに明確にするために、本発明の実施形態に係る添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。当然ながら、ここで説明する実施形態は本発明の実施形態の全てではなく一部にすぎない。当業者が創造的な作業なしに本発明の実施形態に基づいて得る他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲に入る。
【0033】
図1は、静電容量センシング式識別システム用の装置100の構造模式図を示す。
【0034】
図1に示されるように、装置100は第一信号源101と、第二信号源102と、フロントエンドフィードバックコンデンサ103と、増幅器モジュール104とを備える。幾つかの実施形態では、フロントエンドフィードバックコンデンサ103には、リセットスイッチ105が並列接続されている。
【0035】
第一信号源101は励起信号VTXを供給するために用いられる。励起信号VTXは、静電容量センシング式識別システムのセンシングコンデンサCsを介して増幅器モジュール104の第1入力端子に達する。第二信号源102は、増幅器モジュール104の第2入力端子に直列接続されている入力基準電圧源1021とシステムオフセット電圧源1022を含む。入力基準電圧源1021とシステムオフセット電圧源1022は互いに逆に接続されることによって、増幅器モジュール104に入力基準電圧VREFとシステムオフセット電圧VOSの差を供給する。フロントエンドフィードバックコンデンサ103は、増幅器モジュール104の第1入力端子と出力端子の間に接続され、フロントエンドフィードバック容量C
fを有する。本実施形態では、増幅器モジュールの第1入力端子は負入力端子であってもよく、第2入力端子は正入力端子であってもよい。幾つかの実施形態では、増幅器モジュールの第1入力端子は正入力端子であってもよく、第2入力端子は負入力端子であってもよい。
【0036】
図2は、静電容量センシング式識別システム用の装置の信号タイミング図を示す。
【0037】
図2に示されるように、VREFは入力基準電圧であり、VOSはシステムオフセット電圧であり、VTXは励起信号である。本実施形態において、それは矩形波であり、ローレベルはVREFであり、ハイレベルはVTXである。RSTはリセットスイッチの制御信号であり、Csはセンシング容量であり、C
fはフロントエンドフィードバック容量である。RST信号がハイレベルである場合、フロントエンド検出回路はリセットされ、増幅器モジュールの出力電圧VOUTは入力差電圧VREF−VOSとなる。RSTがローレベルである場合、VTX信号が変化すると回路は電荷を移動させて、出力電圧VOUTを変化させる。
【0038】
以下、
図1と
図2を参照しながら、本発明の実施形態の動作原理を説明する。
【0039】
具体的には、まず、システムオフセット電圧VOSが0であると仮定すると、リセット信号RSTがハイレベルである場合、2つのコンデンサにおける電荷は
となる。
【0040】
励起信号VTXがハイレベルからローレベルに変化すると、電荷は2つのコンデンサに再分配される。2つのコンデンサにおける電荷は
となる。
【0041】
電荷保存則によれば、出力電圧VOUTを求めることができる。
【0042】
システムオフセット電圧VOSがゼロでないと考えると、次の式を得ることができる。
【0043】
静電容量センシング式識別システムでは、バックグラウンド容量がCbであり、検出される容量変化量がC
Δであると仮定すると、式(6)は次のように書き直すことができる。
【0044】
式(7)から分かるように、バックグラウンド容量C
bが存在するため、フロントエンド検出回路の飽和を回避するために、容量変化量C
Δによるフロントエンド出力電圧の変化量が小さくなるように、フィードバック容量C
fを十分に大きくする必要がある。
【0045】
これに対し、式(7)について、
にすると、
バックグラウンド容量C
bの影響は完全に相殺される。
【0046】
さらに、
にすると、
システムにはバックグラウンド容量のみが存在する場合、出力電圧はVOUT=0である一方、タッチにより容量変化量C
Δが導入された後、出力電圧VOUTは
に変化する。
【0047】
式(10)によれば、より小さいフィードバック容量C
f値を採用することで、フロントエンドゲインを増加することができ、さらにシステムのダイナミックレンジを広げることができる。
【0048】
上記の原理に基づいて、本発明は、フィードバック機構によりバックグラウンド容量に基づいて静電容量センシング式識別システムのダイナミックレンジを効果的に調節することができる静電容量センシング式識別システム用の装置及び方法を提案する。
【0049】
図3は、本発明の一つの実施形態による静電容量センシング式識別システム用の装置300の図を示す。
図3に示されるように、この装置300は、励起信号源301、増幅器モジュール302、フロントエンドフィードバックコンデンサ303、及び補正モジュール304を備える。幾つかの実施形態では、装置300はリセットスイッチ305をさらに備えてもよい。
【0050】
増幅器モジュール302は、第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する。例えば、増幅器モジュール302は普通の差動増幅器であってもよく、その第1入力端子は負入力端子であってもよく、第2入力端子は正入力端子であってもよく、その逆も可能である。
【0051】
励起信号源301は、静電容量センシング式識別システムのセンシングコンデンサCsを介して増幅器モジュール302の負入力端子に励起信号VTXを供給するために用いられる。センシングコンデンサCsは、タッチパネル上のセンシングコンデンサであってもよく、タッチによりセンシングコンデンサCsは変化することができる。
【0052】
フロントエンドフィードバックコンデンサ303は、増幅器モジュール302の負入力端子と出力端子の間に接続されている。フロントエンドフィードバックコンデンサ303は、フィードバック容量C
fを供給することができる。
【0053】
補正モジュール304は、増幅器モジュール302の正入力端子と出力端子の間に接続されており、増幅器モジュール302の正入力端子に入力差電圧VDAC(即ち、入力基準電圧VREFとシステムオフセット電圧VOSの差であるVREF−VOS)を供給し、増幅器モジュール302の出力端子から出力電圧VOUTを受け、増幅器モジュール302の出力端子により供給された出力電圧VOUTが予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの正入力端子に供給される入力差電圧VDACを調節するために用いられる。
【0054】
幾つかの実施形態では、補正モジュール304はアナログデジタル変換器ADC3041、デジタルアナログ変換器DAC3042及びデジタル制御ユニット3043を備えてもよい。アナログデジタル変換器ADC3041は前記増幅器モジュール302の出力端子に接続され、デジタルアナログ変換器DAC3042は前記増幅器モジュール302の正入力端子に接続され、デジタル制御ユニット3043はアナログデジタル変換器ADC3041とデジタルアナログ変換器DAC3042の間に接続される。
【0055】
デジタル制御ユニット3043は、デジタルアナログ変換器DAC3042を介して増幅器モジュールの正入力端子に入力差電圧VDACを供給し、アナログデジタル変換器ADC3041を介して増幅器モジュールの出力端子から出力電圧VOUTを受け、受けた出力電圧VOUTが予め設定された範囲内にない場合、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの正入力端子に供給される入力差電圧VDACを調節するために用いられる。例えば、上記式(9)を満たすように入力差電圧VDACを設定してもよい。この場合、理論的には出力電圧VOUTは上記式(10)を満たす必要があるが、実際には出力電圧VOUTは依然として所望の範囲内にない可能性があるため、その後入力電圧差VDACを微調節して、例えば、一定の値を累増又は累減して、最終的に出力電圧VOUTを所望の範囲内に調節することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、デジタル制御ユニット3043は、さらに、増幅器モジュール302の正入力端子に供給される入力差電圧VDACを調節すると同時に、フロントエンドフィードバックコンデンサの容量C
fを調節するために用いられてもよい。例えば、入力電圧差VDACを調節することによって出力電圧VOUTの最小値を予め設定された範囲内にした後、入力差電圧VDACを調節すると同時にフロントエンドフィードバック容量C
fを調節することによって、さらに出力電圧VOUTの最大値も予め設定された範囲内にすることができる。例えば、式(10)により、フロントエンドフィードバック容量を減少することによって出力電圧VOUTを高めることができる。一例として、入力差電圧VDACの調節とフロントエンドフィードバックコンデンサの容量C
fの調節は同じ比率で行われてもよい。別の例として、入力差電圧VDACの調節とフロントエンドフィードバックコンデンサの容量C
fの調節は異なる比率で行われてもよい。フロントエンドフィードバック容量C
fの調節は様々な方式、例えば、コンデンサアレイと選択スイッチにより実現することができるが、ここでは詳述しない。
【0057】
幾つかの実施形態では、入力差電圧VDACの調節は、バックグラウンド容量の定量化段階で行うことができる。例えば、「バックグラウンド容量」に対する補正は、指で押している間及びセンシング容量を定量化するプロセス中に行うことができる。バックグラウンド容量の定量化は様々な方式で実現することができる。例えば、指紋識別の場合、タッチがないときのセンシング容量はゼロであり、指がセンサの表面に接触した後に指紋の谷線及び隆線はセンサと形成する容量が異なるため、指紋谷線と指紋識別装置のタッチ表面との間の容量をバックグラウンド容量として定量化することができる。別の例として、タッチスクリーンの場合、タッチスクリーンのタッチ表面がタッチされていないときの結合容量をバックグラウンド容量として定量化することができる。当業者であれば、他の用途のために、バックグラウンド容量の定量化は様々な他の方式で実現することができる。
【0058】
リセットスイッチ305はフロントエンドフィードバックコンデンサ303と並列接続され、リセット時に前記増幅器モジュール302に前記入力差電圧VREF−VOSを出力させるために用いられる。一例として、RST信号がハイレベルである場合、装置300はリセットされ、増幅器モジュールの出力電圧VOUTは入力差電圧VREF−VOSとなる。RSTがローレベルである場合、VTX信号が変化すると装置300は電荷を移動させて、出力電圧VOUTを変化させる。
【0059】
図4は、本発明の他の実施形態による静電容量センシング式識別システム用の方法400のフローチャートを示す。この方法400は、上述した装置300において実行することができる。
【0060】
ステップS401では、初期化を実行する。例えば、増幅器モジュールに供給される入力差電圧VDACを入力基準電圧VREFに等しくするように初期化することができる。
【0061】
ステップS402では、増幅器モジュールの第1入力端子に励起信号を供給し、増幅器モジュールの第2入力端子に入力差電圧を供給し、増幅器モジュールの出力端子から出力電圧を受ける。
【0062】
ステップS403では、タッチの有無を検出しており、タッチがある場合ステップS403を実行し、タッチがない場合ステップS401に戻る。例えば、増幅器モジュールからの出力電圧に基づいて、センシング容量Csの変化を確定して、タッチの有無を判断することができる。このステップは、上記装置300のデジタル制御ユニットによって実行されてもよく、外部の制御ユニットによって実行されてもよい。
【0063】
ステップS404では、タッチが発生した場合、出力電圧の最大値及び最小値を統計する。例えば、取得した画像出力の最大値Dmax、最小値Dmin及びそれらの分布を統計することができる。
【0064】
ステップS405では、出力電圧の最小値が所望の範囲内にあるか否かを判定し、最小値が所望の範囲内にない場合、ステップS406を実行し、最小値が所望の範囲内にある場合、ステップS407まで進む。例えば、最小値Dminが範囲{Dminl、Dminh}内にあるか否かを判定してもよい。Dminlは最小値の下限であり、Dminhは最小値の上限である。
【0065】
ステップS406では、バックグラウンド容量の大きさに基づいて、増幅器モジュールの正入力端子に供給される入力差電圧VDACを調節し、そして、ステップS404に戻る。例えば、上記式(9)を満たすように入力差電圧VDACを設定し、その後、入力電圧差VDACを微調節して、例えば、一定の値を累増又は累減して、最終的に出力電圧VOUTを所望の範囲内に調節することができる。
【0066】
ステップS407では、フロントエンドフィードバック容量C
fの大きさを調節し、それに対応して入力差電圧VDACを調節することによって、出力電圧VOUTの最大値は所望の範囲内となる。例えば、式(10)により、フロントエンドフィードバック容量を減少することによって出力電圧VOUTを高めることができ、それにより、最大値Dmaxは範囲{Dmaxl、Dmaxh}内にある。ここで、Dmaxlは最大値の下限であり、Dmaxhは最大値の上限である。一例として、入力差電圧VDACの調節とフロントエンドフィードバックコンデンサの容量C
fの調節は同じ比率で行われてもよい。別の例として、入力差電圧VDACの調節とフロントエンドフィードバックコンデンサの容量C
fの調節は異なる比率で行われてもよい。
【0067】
ステップS408では、上記の最小値と最大値がいずれも所望の範囲内にあるか否かを確定する。所望の範囲内にない場合にはステップS405に戻る。所望の範囲内にある場合には終了する。
【0068】
上述した入力差電圧VDACの調節は、バックグラウンド容量の定量化段階で行うことができる。例えば、「バックグラウンド容量」に対する補正は、指で押している間及びセンシング容量を定量化するプロセス中に行うことができる。バックグラウンド容量の定量化は様々な方式で実現することができる。例えば、指紋識別の場合、タッチがないときのセンシング容量はゼロであり、指がセンサの表面に接触した後に指紋の谷線及び隆線はセンサと形成する容量が異なるため、指紋谷線と指紋識別装置のタッチ表面との間の容量をバックグラウンド容量として定量化することができる。別の例として、タッチスクリーンの場合、タッチスクリーンのタッチ表面がタッチされていないときの結合容量をバックグラウンド容量として定量化することができる。当業者であれば、他の用途のために、バックグラウンド容量の定量化は様々な他の方式で実現することができる。
【0069】
本発明に例示されている方法は、他のダイナミックレンジ調節機制と組み合わせることができる。例えば、バックグラウンド容量の補正を本発明に例示されている方法に従って優先的に完了した後、後続のADCゲインなどの動的な調節機制を行うことができる。
【0070】
本発明の実施形態では、フィードバック機構によって静電容量センシング式識別システムにおけるバックグラウンド容量に基づいて、増幅器モジュールに対する入力を調節することによって、バックグラウンド容量の出力への影響を補正することができ、それにより、静電容量センシング式識別システムのダイナミックレンジを効果的に調節して、センシング容量の変化量を効果的に検出することができる。
【0071】
本発明の実施形態では、入力差電圧VDACのみを調節することによってバックグラウンド容量を補正してもよく、入力差電圧VDACを調節すると同時にフロントエンドフィードバック容量C
fを調節することによってバックグラウンド容量を補正してもよい。両者は同じ比率で調節されてもよく、異なる比率で調節されてもよい。調節方式はフレキシブルであり、精度が高い。
【0072】
本発明の実施形態は、様々な静電容量センシング式識別システムに適用することができ、例えば、指紋識別や、タッチ制御などに対して出力信号のダイナミックレンジを効果的に制御することができる。
【0073】
以上は、本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で確定される。