(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6463537
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】油圧ショベルの油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20190128BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
F15B11/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-92537(P2018-92537)
(22)【出願日】2018年5月11日
【審査請求日】2018年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】粂内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏一
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑太
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 俊平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴広
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
再公表特許第2012/039083(JP,A1)
【文献】
再公表特許第2016/039490(JP,A1)
【文献】
特開2017−206867(JP,A)
【文献】
特開2017−115992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、
前記走行体上に水平旋回自在に設けられ、旋回油圧アクチュエータにより水平旋回される旋回体と、
前記旋回体に設けられ、複数の作動油圧アクチュエータにより駆動されるショベル装置とを備える油圧ショベルにおいて、
前記複数の作動油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する第1油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプを駆動する第1電動モータと、
前記旋回油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する旋回用油圧ポンプと、
前記旋回用油圧ポンプを駆動する第2電動モータと、
前記第1電動モータおよび前記第2電動モータの回転を制御するモータ制御手段とを備え、
前記モータ制御手段は、前記旋回油圧アクチュエータにより前記旋回体を旋回作動させないときに、前記第2電動モータを停止状態とする制御を行うことを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項2】
前記モータ制御手段は、前記第2電動モータの回転を制御することにより、前記旋回油圧アクチュエータによって前記旋回体を旋回作動させるときの旋回速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項3】
前記複数の作動油圧アクチュエータの負荷圧のうちの最高負荷圧を検出する圧力センサを備え、
前記モータ制御手段は、前記第1油圧ポンプの吐出圧が前記最高負荷圧よりも高い吐出圧となるように、前記第1電動モータの回転を制御することにより前記第1油圧ポンプの吐出流量を制御することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項4】
前記モータ制御手段は、前記複数の作動油圧アクチュエータの少なくとも一つと前記旋回油圧アクチュエータとを一緒に作動させるときに、前記第1油圧ポンプの吐出流量を前記旋回用油圧ポンプの吐出流量の分だけ減少させるように、前記第1電動モータの回転を制御することにより前記第1油圧ポンプの吐出流量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項5】
前記複数の作動油圧アクチュエータおよび前記旋回油圧アクチュエータをそれぞれ作動させるために操作されるアクチュエータ操作手段と、
前記第1油圧ポンプから前記複数の作動油圧アクチュエータに供給される作動油の流量をそれぞれ制御する複数の第1制御バルブと、
前記旋回用油圧ポンプから前記旋回油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する旋回制御バルブと、
前記アクチュエータ操作手段の操作に応じて前記複数の第1制御バルブおよび前記旋回制御バルブをそれぞれ駆動するためのパイロット圧を供給するパイロット圧供給手段とを備え、
前記パイロット圧供給手段は、前記第1油圧ポンプから吐出される作動油を用いて前記パイロット圧を生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項6】
前記第1油圧ポンプは、前記走行体に設けられた走行油圧モータを作動させるための作動油を吐出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油圧ショベルの油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の油圧アクチュエータを備える油圧ショベルに関し、電動モータによって油圧ポンプを駆動する油圧ショベルの油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル(エクスカベータ)は、左右のクローラ機構を有した走行体と、走行体上に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前部に設けられたショベル装置とを備えて構成されている。このような油圧ショベルには、バッテリおよびインバータを有する電源ユニットと、電源ユニットからの電力を受けて駆動する電動モータと、電動モータにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油を受けて作動する複数の油圧モータおよび油圧シリンダとを備え、これらの油圧モータおよび油圧シリンダによってクローラ機構やショベル装置等を作動させ、走行や掘削作業等を行う構成の油圧ショベルが知られている。
【0003】
油圧ショベルに設けられる油圧アクチュエータには、クローラ機構を作動させる走行モータ、旋回体を旋回させる旋回モータ、ショベル装置を作動させるブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダおよびスイングシリンダ、ブレードを上下動させるブレードシリンダ等がある。従来の油圧ショベルでは、1個の電動モータにより複数の油圧ポンプ(パイロットポンプを含む)を駆動し、それらの油圧ポンプから吐出される作動油を用いて、上記複数の油圧アクチュエータを作動させるとともにパイロット圧を生成する構成の油圧駆動装置を備えたものが知られている。このような油圧駆動装置では、全ての油圧アクチュエータのうちの最高負荷圧に対応したポンプ吐出圧となるように、1個の電動モータにより全ての油圧ポンプを駆動する必要があるため、当該電動モータでの余分なエネルギー消費が多かった。
【0004】
そこで、2個の電動モータを備え、第1電動モータにより駆動される油圧ポンプからの作動油を用いて走行モータおよびショベル装置の油圧シリンダ(ブームシリンダ等)を作動させ、第2電動モータにより駆動される油圧ポンプからの作動油を用いて旋回モータおよびブレードシリンダを作動させるとともにパイロット圧を生成するように構成された油圧駆動装置も知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような油圧駆動装置では、走行およびショベル装置の作動だけのときには第2電動モータ(旋回等のための電動モータ)の回転速度(単位時間当たりの回転数)を低く抑え、旋回およびブレードの作動だけのときには第1電動モータ(走行等のための電動モータ)の回転速度を低く抑えることが可能であるため、2個の電動モータでのエネルギー消費を抑えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5096417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような2個の電動モータを備えた油圧駆動装置では、第2電動モータにより駆動される油圧ポンプからの作動油を用いて、旋回モータおよびブレードシリンダの作動だけではなく、パイロット圧を生成するように構成されている。そのため、走行およびショベル装置の作動だけのときには、第2電動モータの回転速度を低く抑えることはできるものの、パイロット圧を生成するために、第2電動モータを完全に停止状態とすることはでき
なかった。従って、電動モータで消費されるエネルギー(電力)をさらに削減し、更なる省エネルギー化を図ることができる油圧駆動装置が望まれる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電動モータで消費されるエネルギーを削減し、更なる省エネルギー化を図ることができる油圧ショベルの油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、走行可能な走行体と、前記走行体上に水平旋回自在に設けられ、旋回油圧アクチュエータにより水平旋回される旋回体と、前記旋回体に設けられ、複数の作動油圧アクチュエータ(例えば、実施形態におけるブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38)により駆動されるショベル装置とを備える油圧ショベルの油圧駆動装置である。その上で、前記複数の作動油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する第1油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプを駆動する第1電動モータと、前記旋回油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する旋回用油圧ポンプと、前記旋回用油圧ポンプを駆動する第2電動モータと、前記第1電動モータおよび前記第2電動モータの回転を制御するモータ制御手段(例えば、実施形態におけるモータ制御装置150)とを備える。そして、前記モータ制御手段は、前記旋回油圧アクチュエータにより前記旋回体を旋回作動させないときに、前記第2電動モータを停止状態とする制御を行うように構成される。
【0009】
上記構成の油圧駆動装置において、前記モータ制御手段は、前記第2電動モータの回転を制御することにより、前記旋回油圧アクチュエータによって前記旋回体を旋回作動させるときの旋回速度を制御するように構成されることが好ましい。
【0010】
上記構成の油圧駆動装置において、前記複数の作動油圧アクチュエータの負荷圧のうちの最高負荷圧を検出する圧力センサ(例えば、実施形態における第2圧力センサS2)を備え、前記モータ制御手段は、前記第1油圧ポンプの吐出圧が前記最高負荷圧より
も高い吐出圧となるように、前記第1電動モータの回転を制御することにより前記第1油圧ポンプの吐出流量を制御するように構成されることが好ましい。
【0011】
上記構成の油圧駆動装置において、前記モータ制御手段は、前記複数の作動油圧アクチュエータの少なくとも一つと前記旋回油圧モータとを一緒に作動させるときに、前記第1油圧ポンプの吐出流量を前記旋回用油圧ポンプの吐出流量の分だけ減少させるように、前記第1電動モータの回転を制御することにより前記第1油圧ポンプの吐出流量を制御するように構成されることが好ましい。
【0012】
上記構成の油圧駆動装置において、前記複数の作動油圧アクチュエータおよび前記旋回油圧アクチュエータをそれぞれ作動させるために操作されるアクチュエータ操作手段と、前記第1油圧ポンプから前記複数の作動油圧アクチュエータに供給される作動油の流量をそれぞれ制御する複数の第1制御バルブ(例えば、実施形態における制御バルブユニット110)と、前記旋回用油圧ポンプから前記旋回油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する旋回制御バルブと、前記アクチュエータ操作手段の操作に応じて前記複数の第1制御バルブおよび前記旋回制御バルブをそれぞれ駆動するためのパイロット圧を供給するパイロット圧供給手段(例えば、実施形態におけるパイロットバルブユニット130)とを備え、前記パイロット圧供給手段は、前記第1油圧ポンプから吐出される作動油を用いて前記パイロット圧を生成するように構成されることが好ましい。
【0013】
上記構成の油圧駆動装置において、前記第1油圧ポンプは、前記走行体に設けられた走行油圧モータを作動させるための作動油を吐出するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油圧駆動装置によれば、ショベル装置の複数の作動油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する第1油圧ポンプと、第1油圧ポンプを駆動する第1電動モータと、旋回油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する旋回用油圧ポンプと、旋回用油圧ポンプを駆動する第2電動モータと、第1電動モータおよび第2電動モータの回転を制御するモータ制御手段とを備え、モータ制御手段は、旋回油圧アクチュエータにより旋回体を旋回作動させないときに、第2電動モータを停止状態とする制御を行うように構成される。そのため、旋回作動させることなくショベル装置だけを作動させるときには、第2電動モータを完全に停止状態とすることができる。従って、従来の油圧駆動装置よりも、第2電動モータで消費されるエネルギー(電力)を削減することができ、更なる省エネルギー化を図ることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る油圧駆動装置を備えた油圧ショベルの斜視図である。
【
図2】本発明に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る油圧駆動装置を備えた油圧ショベルの一例として、クローラ式の油圧ショベル(エクスカベータ)について説明する。まず、油圧ショベル1の全体構成について
図1を参照して説明する。
【0017】
油圧ショベル1は、
図1に示すように、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体20と、旋回体20の前部に設けられたショベル装置30とを有して構成される。
【0018】
走行体10は、駆動輪、複数の従動輪および、これらの車輪に掛け回された履帯13を有する左右一対のクローラ機構15を、走行体フレーム11の左右両側にそれぞれ備えて構成される。左右のクローラ機構15は、駆動輪を回転駆動する左右の走行モータ16L,16Rを有して構成される。走行体10は、左右の走行モータ16L,16Rの回転方向および回転速度を制御することにより任意の方向および速度で走行可能に構成されている。走行体フレーム11の前部には、上下揺動自在にブレード18が設けられている。ブレード18は、走行体フレーム11との間に跨設されたブレードシリンダ19を伸縮作動させることにより上下揺動可能に構成されている。
【0019】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構が設けられている。この旋回機構は、走行体フレーム11に固定された内輪と、旋回体20に固定された外輪と、旋回体20に設けられた旋回モータ26(
図2を参照)と、旋回体20に設けられた油圧ポンプから走行体10に設けられた左右の走行モータ16L,16Rおよびブレードシリンダ19に作動油を供給するためのロータリーセンタージョイントとを有して構成される。旋回体20は、この旋回機構を介して走行体フレーム11に水平旋回自在に取り付けられ、旋回モータ26を正転または逆転作動させることにより、走行体10に対して左右方向に旋回可能に構成されている。旋回体20の前部には、前方に突出する本体側ブラケット22が設けられている。
【0020】
ショベル装置30は、本体側ブラケット22に上下軸を中心に左右方向に揺動自在に取り付けられたブームブラケット39と、ブームブラケット39に第1揺動ピン35aにより上下揺動自在(起伏動自在)に取り付けられたブーム31と、ブーム31の先端部に第2揺動ピン35bにより上下揺動自在(屈伸動自在)に取り付けられたアーム32と、ア
ーム32の先端部に設けられたリンク機構33とを有して構成される。ショベル装置30は、さらに、旋回体20とブームブラケット39の間に跨設されたスイングシリンダ34と、ブームブラケット39とブーム31の間に跨設されたブームシリンダ36と、ブーム31とアーム32の間に跨設されたアームシリンダ37と、アーム32とリンク機構33の間に跨設されたバケットシリンダ38とを有して構成される。
【0021】
ブームブラケット39は、スイングシリンダ34を伸縮作動させることにより旋回体20(本体側ブラケット22)に対して左右方向に揺動可能に構成されている。ブーム31は、ブームシリンダ36を伸縮作動させることにより本体側ブラケット22(旋回体20)に対して上下方向に揺動可能(起伏動可能)に構成されている。アーム32は、アームシリンダ37を伸縮作動させることによりブーム31に対して上下方向に揺動可能(屈伸動可能)に構成されている。
【0022】
アーム32およびリンク機構33の先端部には、バケット、ブレーカ、圧砕機、カッター、オーガ装置等の各種アタッチメントを上下方向に揺動自在に取り付けることが可能になっている。アーム32の先端部に取り付けられたアタッチメントは、バケットシリンダ38を伸縮作動させることによりリンク機構33を介してアーム32に対して上下揺動可能に構成されている。これらのアタッチメントの油圧アクチュエータに作動油を供給するための油圧ホースを接続可能な第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43が、アーム32の左右両側面に配設されている。
【0023】
旋回体20は、前部に本体側ブラケット22が設けられる旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられるオペレータキャビン23とを有して構成される。オペレータキャビン23は、略矩形箱状に形成されて内部にオペレータ(作業者)が搭乗可能な操作室を形成し、左側部に横開き開閉可能なキャビンドア24が設けられている。オペレータキャビン23の内部には、オペレータが前方側を向いて着座するオペレータシートと、走行体10の走行操作を行う左右の走行操作レバーおよび走行操作ペダルと、旋回体20およびショベル装置30の作動操作を行う左右の作業操作レバーと、ブレード18の作動操作を行うブレード操作レバーと、油圧ショベル1における各種の車両情報を表示するディスプレイ装置と、オペレータによって操作される各種の操作スイッチとが設けられている。
【0024】
油圧ショベル1は、オペレータがオペレータキャビン23内に搭乗し、左右の走行操作レバー(もしくは走行操作ペダル)を前後に傾動操作することにより、その操作方向および操作量に応じて左右のクローラ機構15(走行モータ16L,16R)を駆動させて油圧ショベル1を走行させることができるように構成されている。また、左右の作業操作レバーを前後左右に傾動操作することにより、その操作方向および操作量に応じて旋回体20およびショベル装置30を駆動させて掘削等の作業を行うことができるように構成されている。
【0025】
旋回フレーム21の前部には、ホーン装置28が設けられている。オペレータキャビン23内のホーンスイッチを押圧操作することにより、ホーン装置28から油圧ショベル1の周囲に注意を促す警告音を発生させることができるようになっている。旋回フレーム体20の後部には、オペレータキャビン23の後方の位置に、後述する油圧駆動装置100が搭載される搭載室が設けられている。この搭載室の後壁を形成するように曲面形状のカウンターウエイト29が設けられている。
【0026】
油圧駆動装置100は、
図2に示すように、作動油タンクTと、左右の走行モータ16L,16R等を作動させるための作動油を吐出する第1油圧ポンプP1と、旋回モータ26を作動させるためだけの作動油を吐出する旋回用油圧ポンプP2と、第1油圧ポンプP1から吐出されて左右の走行モータ16L,16R等に供給する作動油の供給方向および
流量を制御する制御バルブユニット110と、旋回用油圧ポンプP2から吐出されて旋回モータ26に供給する作動油の供給方向を制御する旋回制御バルブ121と、制御バルブユニット110および旋回制御バルブ121をそれぞれ駆動するためのパイロット圧を生成するパイロットバルブユニット130とを備えている。
【0027】
制御バルブユニット110は、左右の走行モータ16L,16R、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、スイングシリンダ34、ブレードシリンダ19、および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43にそれぞれ供給する作動油の供給方向および流量を制御する左右の走行制御バルブ111,112と、ブーム制御バルブ113と、アーム制御バルブ114と、バケット制御バルブ115と、スイング制御バルブ116と、ブレード制御バルブ117と、アタッチメント制御バルブ118とを有している。これらの制御バルブ111〜118はそれぞれ、パイロットバルブユニット130から供給されるパイロット圧により内蔵されたスプールが移動され、そのスプールの移動により各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および流量を制御可能に構成されている。
【0028】
旋回制御バルブ121は、制御バルブ111〜118と同様に、パイロットバルブユニット130から供給されるパイロット圧により内蔵されたスプールが移動されるが、そのスプールの移動により旋回モータ26に供給する作動油の供給方向のみを制御するように構成されている。旋回モータ26に供給する作動油の流量制御(すなわち旋回体20の旋回速度制御)は、後述する第2電動モータM2の回転制御によって行われるようになっている。
【0029】
パイロットバルブユニット130は、第1油圧ポンプP1の吐出口から制御バルブユニット110に繋がるポンプ油路L1から分岐した分岐油路L2に設けられている。分岐油路L2には、パイロットバルブユニット130によってパイロット圧を生成するために必要な油圧を保つためのチェックバルブ135およびリリーフバルブ136が設けられている。パイロットバルブユニット130は、第1油圧ポンプP1から吐出される作動油を用いて、オペレータキャビン23内に設けられた走行操作レバー(走行操作ペダル)、作業操作レバーおよびブレード操作レバーのそれぞれの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を生成し、対応する制御バルブに供給するように構成されている。
【0030】
油圧駆動装置100は、さらに、第1油圧ポンプP1を駆動する第1電動モータM1と、旋回用油圧ポンプP2を駆動する第2電動モータM2と、外部電源等によって充電可能なバッテリ105(蓄電池)と、バッテリ105からの直流電力を交流電力に変換して周波数および電圧の大きさを変えるインバータ106と、第1油圧ポンプP1から吐出される作動油圧(ポンプ圧)を検出する第1圧力センサS1と、左右の走行モータ16L,16R等の負荷圧のうち最も高い負荷圧(最高負荷圧)を検出する第2圧力センサS2と、インバータ106を介して第1および第2電動モータM1,M2の回転速度(単位時間当たりの回転数)を制御するモータ制御装置150(コントローラ)を備えている。
【0031】
第1および旋回用油圧ポンプP1,P2はそれぞれ、固定容量型の油圧ポンプであり、第1および第2電動モータM1,M2の出力に応じた流量の作動油を吐出するようになっている。
図2では詳細な図示を省略しているが、第2圧力センサS2は、制御バルブユニット110から左右の走行モータ16L,16R等にそれぞれ繋がる油路に複数のシャトルバルブ等を介して接続されている。これにより、第2圧力センサS2は、左右の走行モータ16L,16R、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、スイングシリンダ34、ブレードシリンダ19、および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43に接続された油圧アクチュエータの負荷圧のうち最も高い負荷圧(最高負荷圧)を検出可能になっている。
【0032】
モータ制御装置150は、第1圧力センサS1により検出される第1油圧ポンプP1の吐出圧と、第2圧力センサS2により検出される左右の走行モータ16L,16R等の負荷圧のうちの最高負荷圧とを比較し、第1油圧ポンプP1の吐出圧が当該最高負荷圧よりも若干高い吐出圧となるように、インバータ106を介して第1電動モータM1の回転速度を制御して第1油圧ポンプP1の吐出流量を制御するように構成されている。すなわち、オペレータキャビン23内の走行操作レバー、作業操作レバーおよびブレード操作レバーの操作に応じて、左右の走行モータ16L,16R、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、スイングシリンダ34、ブレードシリンダ19、および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43に接続された油圧アクチュエータの少なくともいずれかを作動させるときには、当該作動によって変動する最高負荷圧に応じて第1電動モータM1の回転速度を調整し、これにより第1油圧ポンプP1の吐出流量を調整して第1油圧ポンプP1の吐出圧が当該最高負荷圧よりも若干高い吐出圧となるように制御する構成となっている。この若干高い吐出圧については、例えば、油圧アクチュエータの最高負荷圧が0〜20.6MPa(システム圧)の範囲で変動する場合に、当該最高負荷圧よりも1.5MPa程度高い吐出圧となるように制御することが好ましい。
【0033】
モータ制御装置150は、さらに、インバータ106を介して第2電動モータM2の回転速度を制御して、旋回用油圧ポンプP2の吐出流量、すなわち旋回モータ26に供給される作動油の流量を制御することにより、旋回体20を旋回させるときの旋回速度を制御するように構成されている。すなわち、オペレータキャビン23内の作業操作レバーの操作に応じて旋回モータ26により旋回体20を旋回させるときには、作業操作レバーの操作量に応じて第2電動モータM2の回転速度を調整し、これにより旋回用油圧ポンプP2から吐出されて旋回モータ26に供給される作動油の流量を調整して、旋回体20の旋回速度が作業操作レバーの操作量に応じた旋回速度となるように制御する構成となっている。また、モータ制御装置150は、旋回モータ26により旋回体20を旋回作動させないときには、第2電動モータM2を完全に停止させた状態とする制御を行うようになっている。
【0034】
モータ制御装置150は、さらに、左右の走行モータ16L,16R、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、スイングシリンダ34、ブレードシリンダ19、および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43に接続された油圧アクチュエータの少なくともいずれかと、旋回モータ26とを一緒に作動させるときには、第1油圧ポンプP1の吐出流量を旋回用油圧ポンプP2の吐出量流の分だけ減少させるように、インバータ106を介して第1電動モータM1の回転速度を制御して第1油圧ポンプP1の吐出流量を制御するように構成されている。すなわち、旋回体20の旋回作動と、クローラ機構15やショベル装置30とを同時に作動させるときには、旋回用油圧ポンプP2の吐出流量(第2電動モータM2の回転速度)に応じて、第1電動モータM1の回転速度を調整し、これにより第1油圧ポンプP1の吐出流量を旋回用油圧ポンプP2の吐出流量の分だけ減少させる(第1油圧ポンプP1の馬力を旋回用油圧ポンプP2の馬力分だけ抑える)ように制御する構成となっている。なお、エンジンの場合は、エンジンの出力=トルク×回転速度であるため、所定出力(定格出力)よりも大きい出力を出すことは難しい一方、電動モータの場合は、電動モータの出力=電流×電圧であるため、所定出力よりも大きい出力を出すことは可能である。そのため、電動モータの場合には、上記のような制御が可能である。
【0035】
このように構成された油圧駆動装置では、オペレータキャビン23内の走行操作レバー、作業操作レバーおよびブレード操作レバーの少なくともいずれかにより、クローラ機構15、ショベル装置30、ブレード19および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43に接続されたアタッチメントの少なくともいずれかを作動させる操作が行われると
、パイロットバルブユニット130により、第1油圧ポンプP1から吐出された作動油を用いて、当該操作レバーの操作方向および操作量に応じたパイロット圧が生成される。そのパイロット圧により、対応する油圧アクチュエータの制御バルブが駆動され、第1油圧ポンプP1から吐出された作動油の供給方向および流量が当該制御バルブにより制御されて当該油圧アクチュエータに供給される。そのようにして、当該操作レバーの操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度でクローラ機構15、ショベル装置30、ブレード19および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43に接続されたアタッチメントが作動される。
【0036】
このとき、左右の走行モータ16L,16R、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、スイングシリンダ34、ブレードシリンダ19、および第1〜第3アタッチメント接続ポート41〜43に接続された油圧アクチュエータの少なくともいずれかが作動されるため、第2圧力センサS2によって検出される最高負荷圧が変動する。そこで、モータ制御装置150は、第1圧力センサS1によって検出される第1油圧ポンプP1の吐出圧が、第2圧力センサS2によって検出される最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように、第1電動モータM1の回転速度を制御して第1油圧ポンプP1の吐出圧を調整する。またこのとき、オペレータキャビン23内の作業操作レバーにより、旋回体20を旋回作動させる操作も一緒に行われる場合には、第1油圧ポンプP1の吐出流量を旋回用油圧ポンプP2から吐出される吐出流量の分だけ減少させる(第1油圧ポンプP1の馬力を旋回用油圧ポンプP2の馬力分だけ抑える)。
【0037】
オペレータキャビン23内の作業操作レバーにより、旋回体20を旋回作動させる操作が行われていないときには、モータ制御装置150は、第2電動モータM2への電力供給を行わず、第2電動モータM2および旋回用油圧ポンプP2を完全に停止状態とする。そして、旋回体20を旋回作動させる操作が行われると、パイロットバルブユニット130により、第1油圧ポンプP1から吐出された作動油を用いて、作業操作レバーの操作方向に応じたパイロット圧が生成される。そのパイロット圧により、旋回制御バルブ121が駆動され、旋回用油圧ポンプP2から吐出された作動油の供給方向が旋回制御バルブ121により制御されて旋回モータ26に供給される。モータ制御装置150では、作業操作レバーの操作量に応じて第2電動モータM2の回転速度を制御し、旋回用油圧ポンプP2の吐出流量を制御して旋回モータ26に供給される作動油の流量を制御する。そのようにして、作業操作レバーの操作方向および操作量に応じた旋回方向および旋回速度で旋回体20が旋回作動される。
【0038】
このように油圧駆動装置100では、旋回油圧モータ26により旋回体20を旋回作動させないときには、第2電動モータM2および旋回用油圧ポンプP2を停止状態とする制御が行われる。そのため、クローラ機構15による走行およびショベル装置30の作動だけのときには、第2電動モータM2を完全に停止状態とすることができる。従って、従来の油圧駆動装置よりも、第2電動モータM2で消費される電力を削減することができ、更なる省エネルギー化を図ることがきる。また、油圧駆動装置100では、クローラ機構15やショベル装置30等と一緒に旋回体20を旋回作動させる場合には、第1油圧ポンプP1の吐出流量を旋回用油圧ポンプP2から吐出される吐出流量の分だけ減少させる(第1油圧ポンプP1の馬力を旋回用油圧ポンプP2の馬力分だけ抑える)制御が行われる。そのため、第1および第2電動モータM1,M2でのトータルの電力消費を一定値以下に抑えることができる。さらに、エンジンにより全ての油圧ポンプを駆動する従来の油圧駆動装置では、同じように旋回用以外の油圧ポンプの馬力を抑える制御を行っていたため、この従来の油圧駆動装置の操作フィーリングに近い操作フィーリングとすることができる。
【0039】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態に限定
されるものではない。例えば、上述の実施形態では、パイロットバルブユニット130は、第1油圧ポンプP1からの作動油を用いてパイロット圧を生成する構成であるが、第1電動モータM1により第1油圧ポンプP1とともに駆動されるパイロット用油圧ポンプを設け、このパイロット用油圧ポンプからの作動油を用いてパイロット圧を生成するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、左右の走行モータ16L,16Rは、第1油圧ポンプP1からの作動油を受けて作動する油圧モータによって構成されているが、これらの走行モータ16L,16Rに代えて、バッテリ105等から供給される電力によって作動する電動モータにより走行する構成としてもよい。また、上述の実施形態では、バッテリ105は外部電源等によって充電されると説明したが、エンジンおよびそのエンジンにより駆動される発電機を搭載し、その発電機によりバッテリ105を充電する構成としてもよい。
【0040】
上述の実施形態では、旋回体20の旋回作動と、クローラ機構15やショベル装置30とを同時に作動させるときには、第1油圧ポンプP1の吐出流量を旋回用油圧ポンプP2の吐出流量の分だけ減少させる(第1油圧ポンプP1の馬力を旋回用油圧ポンプP2の馬力分だけ抑える)ように制御する構成となっているが、第1油圧ポンプP1の吐出流量(馬力)を抑える制御を行わない構成としてもよい。また、上述の実施形態では、旋回体20を旋回作動させないときには、第2電動モータM2を完全に停止させた状態とする制御を行う構成となっているが、レバー操作に対する旋回作動の時間遅れの影響が大きい場合には、第2電動モータM2および旋回用油圧ポンプP2を低速で回転させる制御を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 油圧ショベル
10 走行体
16L,16R 走行モータ(走行油圧モータ)
20 旋回体
26 旋回モータ(旋回油圧アクチュエータ)
30 ショベル装置
36 ブームシリンダ(作動油圧アクチュエータ)
37 アームシリンダ(作動油圧アクチュエータ)
38 バケットシリンダ(作動油圧アクチュエータ)
100 油圧駆動装置
110 制御バルブユニット(第1制御バルブ)
121 旋回制御バルブ
130 パイロットバルブユニット(パイロット圧供給手段)
150 モータ制御装置(モータ制御手段)
M1 第1電動モータ
M2 第2電動モータ
P1 第1油圧ポンプ
P2 旋回用油圧ポンプ
S1 第1圧力センサ
S2 第2圧力センサ
【要約】
【課題】電動モータで消費されるエネルギーを削減し、更なる省エネルギー化を図ることができる油圧ショベルの油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】ブームシリンダ36等を作動させるための作動油を吐出する第1油圧ポンプP1と、第1油圧ポンプP1を駆動する第1電動モータM1と、旋回モータ26を作動させるための作動油を吐出する旋回用油圧ポンプP2と、旋回用油圧ポンプP2を駆動する第2電動モータM2と、第1電動モータM1および第2電動モータM2の回転を制御するモータ制御装置150とを備え、モータ制御装置150は、旋回モータ26により旋回体を旋回作動させないときに、第2電動モータM2を停止状態とする制御を行うように構成される。
【選択図】
図2