(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサは、前記関数の形状のパラメータを計算することによって、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを前記関数から識別する、前記システム請求項の任意の組み合わせのシステム。
前記質量フィルタ、前記断片化デバイス、および前記質量分析器は、前記質量範囲の1つ以上の追加の走査をさらに実施し、前記質量範囲に対する1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを生成し、前記プロセッサは、
前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを受信することと、
各走査に対して、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、前記複数の生成イオンスペクトルと前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルとを組み合わせ、組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルからの前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを前記関数から識別することと
をさらに行う、前記システム請求項の任意の組み合わせのシステム。
前記プロセッサを使用して、前記一連の重複する伝送窓によって生成される前記複数の生成イオンスペクトルからの生成イオンスペクトルのグループを組み合わせることにより、関数を生成することをさらに含み、前記関数は、前記複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルからの前駆体イオンあたりの前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表し、前記関数は、前駆体質量によって非一定である形状を有する、前記方法請求項の任意の組み合わせの方法。
前記質量フィルタ、前記断片化デバイス、および前記質量分析器を使用して、前記質量範囲の1つ以上の追加の走査を実施し、前記質量範囲に対する1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを受信することと、
前記プロセッサを使用して、各走査に対して、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、前記複数の生成イオンスペクトルと前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルとを組み合わせ、組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルからの前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記関数から前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを識別することと
をさらに含む、前記方法請求項の任意の組み合わせの方法。
前記プロセッサは、前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを合計することによって、前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを組み合わせる、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するためのシステムの前記請求項の任意の組み合わせのシステム。
前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを組み合わせることは、前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを合計することを含む、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するための前記請求項の任意の組み合わせの方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別するためのシステムが、開示される。本システムは、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器と、プロセッサとを含む。
【0009】
質量フィルタは、ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化する。伝送窓の段階化は、質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成する。断片化デバイスは、各段階において生成された前駆体イオンを断片化する。質量分析器は、結果として生じる生成イオンを分析し、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。
【0010】
プロセッサは、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信する。プロセッサは、複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算し、関数は、複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す。プロセッサは、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを関数から識別する。
【0011】
タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法が、開示される。
【0012】
各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓は、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり段階化され、質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成する。各段階において生成された前駆体イオンは、断片化デバイスを使用して、断片化される。結果として生じる生成イオンは、質量分析器を使用して、分析され、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルは、プロセッサを使用して、受信される。プロセッサを使用して、複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数が計算され、関数は、複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す。関数からの少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンは、プロセッサを使用して、識別される。
【0013】
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む、コンピュータプログラム製品が開示され、そのコンテンツは、タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む。種々の実施形態では、本方法は、システムを提供することを含み、本システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールと、分析モジュールとを備えている。
【0014】
測定モジュールは、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信する。複数の生成イオンスペクトルが、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成することによって、生成される。複数の生成イオンスペクトルは、さらに、断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンを断片化することによって生成される。複数の生成イオンスペクトルは、さらに、質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析し、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成することによって、生成される。
【0015】
分析モジュールは、複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算し、関数は、複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す。分析モジュールは、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを関数から識別する。
【0016】
ある質量範囲にわたる複数回の走査から、タンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するためのシステムが、開示される。本システムは、分離デバイスと、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器と、プロセッサとを含む。
【0017】
分離デバイスは、サンプルからイオンを分離する。質量フィルタは、イオンを分離デバイスから受信し、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、質量範囲にわたり各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化することによって、イオンをフィルタリングする。伝送窓の段階化は、質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対して、一連の重複する伝送窓を生成する。
【0018】
断片化デバイスは、各段階において生成された前駆体イオンを断片化する。質量分析器は、結果として生じる生成イオンを分析し、各走査に対して、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。
【0019】
プロセッサは、各走査に対して、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成する。プロセッサは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトルの中に少なくとも2回以上存在する、複数の多走査生成イオンスペクトルから少なくとも1つの生成イオンを選択する。プロセッサは、前駆体イオンの既知の分離プロファイルを複数の多走査生成イオンスペクトル中の少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する。
【0020】
ある質量範囲にわたる複数回の走査から、タンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法が、開示される。イオンは、分離デバイスを使用して、サンプルから経時的に分離される。
【0021】
イオンは、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、質量範囲にわたり各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化することによって、フィルタリングされる。伝送窓の段階化は、質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対して、一連の重複する伝送窓を生成する。
【0022】
各段階において生成された前駆体イオンは、断片化デバイスを使用して、断片化される。結果として生じる生成イオンは、質量分析器を使用して、分析される、各走査に対して、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルは、各走査に対して受信され、プロセッサを使用して、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成する。
【0023】
少なくとも1つの生成イオンが、プロセッサを使用して、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトルの中に少なくとも2回以上存在する複数の多走査生成イオンスペクトルから選択される。前駆体イオンの既知の分離プロファイルは、プロセッサを使用して、複数の多走査生成イオンスペクトル中の少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合され、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する。
【0024】
また、非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む、コンピュータプログラム製品も開示され、そのコンテンツは、ある質量範囲にわたる複数回の走査から、タンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む。種々の実施形態では、本方法は、システムを提供することを含み、本システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールと、分析モジュールとを備えている。
【0025】
測定モジュールは、測定モジュールを使用して、一連の重複する伝送窓によって生成される、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対する複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成する。各走査に対する複数の生成イオンスペクトルが、分離デバイスを使用して、イオンをサンプルから経時的に分離することによって、生成される。各走査に対する複数の生成イオンスペクトルは、さらに、質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、質量フィルタを使用して、イオンをフィルタリングし、質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対して、質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、一連の重複する伝送窓を生成することによって、生成される。各走査に対する複数の生成イオンスペクトルは、さらに、断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンを断片化することによって、生成される。各走査に対する複数の生成イオンスペクトルは、さらに、各走査に対して、質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析し、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成することによって、生成される。
【0026】
分析モジュールは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトルの中に少なくとも2回以上存在する、複数の多走査生成イオンスペクトルから少なくとも1つの生成イオンを選択する。分析モジュールは、前駆体イオンの既知の分離プロファイルを複数の多走査生成イオンスペクトル中の少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別するためのシステムであって、
ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、前記質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成する質量フィルタと、
各段階において生成された前駆体イオンを断片化する断片化デバイスと、
結果として生じる生成イオンを分析し、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび前記質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する質量分析器と、
前記質量フィルタおよび前記質量分析器と通信するプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記一連の重複する伝送窓によって生成される前記複数の生成イオンスペクトルを受信することと、
前記複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記複数の生成イオンスペクトルからの前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを前記関数から識別することと
を行う、システム。
(項目2)
前記プロセッサは、前記一連の重複する伝送窓によって生成される前記複数の生成イオンスペクトルからの生成イオンスペクトルのグループをさらに組み合わせることにより、関数を生成し、前記関数は、前記複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルからの前駆体イオンあたりの前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表し、前記関数は、前駆体質量によって非一定である形状を有する、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目3)
前記形状は、三角形を含む、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目4)
前記プロセッサは、前記関数の形状のパラメータを計算することによって、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを前記関数から識別する、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目5)
前記パラメータは、前記形状の重心を含む、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目6)
前記質量フィルタは、四重極を備えている、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目7)
前記質量分析器は、四重極を備えている、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目8)
前記質量分析器は、飛行時間(TOF)分析器を備えている、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目9)
前記質量フィルタ、前記断片化デバイス、および前記質量分析器は、前記質量範囲の1つ以上の追加の走査をさらに実施し、前記質量範囲に対する1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを生成し、前記プロセッサは、
前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを受信することと、
各走査に対して、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、前記複数の生成イオンスペクトルと前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルとを組み合わせ、組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを前記関数から識別することと
をさらに行う、前記システム項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目10)
タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法であって、
質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、前記質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成することと、
断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンを断片化することと、
質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析し、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび前記質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
プロセッサを使用して、前記一連の重複する伝送窓によって生成される前記複数の生成イオンスペクトルを受信することと、
前記プロセッサを使用して、前記複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記関数から前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを識別することと
を含む、方法。
(項目11)
前記プロセッサを使用して、前記一連の重複する伝送窓によって生成される前記複数の生成イオンスペクトルからの生成イオンスペクトルのグループを組み合わせることにより、関数を生成することをさらに含み、前記関数は、前記複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルからの前駆体イオンあたりの前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によって、どのように変動するかを表し、前記関数は、前駆体質量によって非一定である形状を有する、前記方法項目の任意の組み合わせの方法。
(項目12)
前記質量フィルタ、前記断片化デバイス、および前記質量分析器を使用して、前記質量範囲の1つ以上の追加の走査を実施し、前記質量範囲に対する1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルを受信することと、
前記プロセッサを使用して、各走査に対して、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、前記複数の生成イオンスペクトルと前記1つ以上の追加の複数の生成イオンスペクトルとを組み合わせ、組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記組み合わせられた複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記関数から前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを識別することと
をさらに含む、前記方法項目の任意の組み合わせの方法。
(項目13)
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えているコンピュータプログラム製品であって、そのコンテンツは、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含み、前記命令は、タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法を実施し、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、前記個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールおよび分析モジュールを備えている、ことと、
前記測定モジュールを使用して、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信することであって、前記複数の生成イオンスペクトルは、
質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、前記質量範囲にわたり、前記一連の重複する伝送窓を生成することと、
断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンを断片化することと、
質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析し、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび前記質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成することと
によって生成される、ことと、
前記分析モジュールを使用して、前記複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記分析モジュールを使用して、前記関数から前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを識別することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
(項目14)
ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するためのシステムであって、
サンプルからイオンを分離する分離デバイスと、
前記イオンを前記分離デバイスから受信する質量フィルタであって、前記質量フィルタは、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、前記質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、前記2回以上の走査の各走査に対して、前記質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成することによって、前記イオンをフィルタリングする、質量フィルタと、
各段階において生成された前駆体イオンを断片化する断片化デバイスと、
前記各走査に対して、結果として生じる生成イオンを分析し、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび前記質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する質量分析器と、
前記質量フィルタおよび前記質量分析器と通信するプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記各走査に対して、前記一連の重複する伝送窓によって生成される前記複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成することと、
前記複数の多走査生成イオンスペクトルから少なくとも1つの生成イオンを選択することであって、前記少なくとも1つの生成イオンは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトルの中に少なくとも2回以上存在する、ことと、
前駆体イオンの既知の分離プロファイルを前記複数の多走査生成イオンスペクトルにおける前記少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築することと
を行う、システム。
(項目15)
前記プロセッサは、
前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを組み合わせ、複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルを生成することと、
前記少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記関数から前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを識別することと
によって、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンをさらに識別する、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するためのシステムの前記項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目16)
前記プロセッサは、前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを合計することによって、前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを組み合わせる、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するためのシステムの前記項目の任意の組み合わせのシステム。
(項目17)
ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法であって、
分離デバイスを使用して、イオンをサンプルから経時的に分離することと、
質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、前記質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、前記2回以上の走査の各走査に対して、前記質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成することによって、前記イオンをフィルタリングすることと、
断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンを断片化することと、
質量分析器を使用して、前記各走査に対して、結果として生じる生成イオンを分析し、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび前記質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成することと、
プロセッサを使用して、前記各走査に対して前記一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記複数の多走査生成イオンスペクトルから少なくとも1つの生成イオンを選択することであって、前記少なくとも1つの生成イオンは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトルの中に少なくとも2回以上存在する、ことと、
前記プロセッサを使用して、前駆体イオンの既知の分離プロファイルを前記複数の多走査生成イオンスペクトルにおける前記少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築することと
を含む、方法。
(項目18)
前記プロセッサは、
前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを組み合わせ、複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルを生成することと、
前記少なくとも1つの生成イオンに対して、関数を計算することであって、前記関数は、前記伝送窓が前記質量範囲にわたり段階化された場合、前記関数は、前記少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す、ことと、
前記関数から前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを識別することと
によって、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンをさらに識別する、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法のための前記項目の任意の組み合わせの方法。
(項目19)
前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを組み合わせることは、前記2回以上の走査にわたり、各段階において生成イオンスペクトルを合計することを含む、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するための前記項目の任意の組み合わせの方法。
(項目20)
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えているコンピュータプログラム製品であって、そのコンテンツは、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含み、前記命令は、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法を実施し、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、前記個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールと、測定モジュールとを備えている、ことと、
前記測定モジュールを使用して、一連の重複する伝送窓によって生成される、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対する複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成することであって、各走査に対する前記複数の生成イオンスペクトルは、
分離デバイスを使用して、イオンをサンプルから経時的に分離することと、
質量フィルタを使用して、前記質量範囲にわたる前記2回以上の走査の各々において、前記質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化し、前記質量範囲にわたる前記2回以上の走査の各走査に対して、前記一連の重複する伝送窓を生成することによって、前記イオンをフィルタリングすることと、
断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンを断片化することと、
前記各走査に対して、質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析し、前記伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび前記質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成することと
によって生成される、ことと、
前記分析モジュールを使用して、前記複数の多走査生成イオンスペクトルから少なくとも1つの生成イオンを選択することであって、前記少なくとも1つの生成イオンは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトルの中に少なくとも2回以上存在する、ことと、
前記分析モジュールを使用して、前駆体イオンの既知の分離プロファイルを前記複数の多走査生成イオンスペクトルにおける前記少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、前記少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
【0027】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴は、本明細書に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本教示の1つ以上の実施形態を詳細に説明する前に、当業者は、本教示が、その適用において、以下の発明を行うための形態に記載される、または図面に図示される、構造、構成要素の配列、およびステップの配列の詳細に制限されないことを理解するであろう。また、本明細書で使用される表現および専門用語は、説明の目的のためであり、制限として見なされるべきではないことを理解されたい。
【0030】
(コンピュータ実装システム)
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためにバス102と結合されたプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100は、プロセッサ104によって実行される命令を記憶するために、バス102に結合されるランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得るメモリ106も含む。メモリ106は、プロセッサ104によって実行される命令の実行の間、一時的変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピュータシステム100は、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するために、バス102に結合された読み取り専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスをさらに含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110は、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
【0031】
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介して、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するために、バス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信し、ディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御116である。この入力デバイスは、典型的には、デバイスが平面において位置を指定することを可能にする2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において、2自由度を有する。
【0032】
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装によると、結果は、メモリ106内に含まれる1つ以上の命令の1つ以上の連続をプロセッサ104が実行することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ読み取り可能な媒体から、メモリ106内に読み込まれ得る。メモリ106内に含まれる命令の連続の実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを実施させる。代替として、有線回路が、本教示を実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用され得る。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに制限されない。
【0033】
用語「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、本明細書で使用される場合、実行のために、命令をプロセッサ104に提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むが、それらに制限されない多くの形態をとり得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備えている配線を含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
【0034】
コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的形態として、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD−ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュ−EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、あるいはコンピュータが読み取ることができる、任意の他の有形媒体が挙げられる。
【0035】
コンピュータ読み取り可能な媒体の種々の形態は、実行のために、1つ以上の命令の1つ以上の連続をプロセッサ104に搬送することに関わり得る。例えば、命令は、最初は、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送され得る。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリ内にロードし、モデムを使用して、電話回線を介して、命令を送信することができる。コンピュータシステム100に対してローカルのモデムは、データを電話回線上で受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合された赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信し、データをバス102上に配置することができる。バス102は、データをメモリ106に搬送し、そこから、プロセッサ104は、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信された命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前後のいずれかにおいて、記憶デバイス110上に記憶され得る。
【0036】
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令は、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであることができる。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ソフトウェアを記憶するために、当技術分野において周知のように、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)を含む。コンピュータ読み取り可能な媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0037】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、包括的でもなく、本教示を開示される精密な形態に制限するものでもない。修正および変形例が、前述の教示に照らして可能である、または本教示の実践から取得され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独において、実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向両方のプログラミングシステムによって実装され得る。
【0038】
(前駆体イオンを識別するためのシステムおよび方法)
前述のように、逐次窓取得(SWATH)は、ある質量範囲が、隣接または重複する前駆体質量窓の複数回の前駆体イオン走査を使用して、ある時間間隔内に走査されることを可能にする、タンデム質量分析技法である。第1の質量分析器は、断片化のための各前駆体質量窓を選択する。高分解能の第2の質量分析器が、次いで、各前駆体質量窓の断片化から生成される生成イオンを検出するために使用される。SWATHは、前駆体イオン走査の感度が、従来の特定性における損失を伴わずに、増加させられることを可能にする。
【0039】
しかしながら、残念ながら、SWATH法における逐次前駆体質量窓の使用を通して得られる増加した感度は、コストを伴わないわけではない。これらの前駆体質量窓の各々は、多くの他の前駆体イオンを含み得、これは、一組の生成イオンに対して、正しい前駆体イオンの識別を困難にする。本質的に、任意の所与の生成イオンに対する正確な前駆体イオンが、前駆体質量窓に限定されることができるに過ぎない。その結果、追加のシステムおよび方法が、SWATHデータからの前駆体と生成イオンとを相関させるために必要とされる。
【0040】
図2は、種々の実施形態による、単一伝送窓の例示的プロット200であり、単一伝送窓は、典型的には、SWATH前駆体質量窓を伝送するために使用される。伝送窓210は、M
1〜M
2の質量を有する前駆体イオンを伝送し、設定された質量、すなわち、質量中心215を有し、鋭い垂直縁220および230を有する。SWATH前駆体窓サイズは、M
2−M
1である。伝送窓210が前駆体イオンを伝送する率は、前駆体質量に対して一定である。
【0041】
種々の実施形態では、重複する前駆体伝送窓が、SWATHデータからの前駆体と生成イオンとを相関させるために使用される。例えば、
図2の伝送窓210等の単一伝送窓は、連続した伝送窓間に大きな重複が存在するように、前駆体質量範囲にわたり、少しずつシフトされる。伝送窓間の重複の量が、増加させられるにつれて、生成イオンを前駆体イオンに相関させることにおける正確度もまた、増加させられる。
【0042】
本質的に、重複する伝送窓によってフィルタリングされる前駆体イオンから生成される生成イオンの強度が、前駆体質量範囲にわたり移動する伝送窓の関数としてプロットされる場合、各生成イオンは、その前駆体イオンが伝送された同一前駆体質量範囲に対する強度を有する。言い換えると、前駆体質量に対して一定の率で前駆体イオンを伝送する矩形伝送窓(
図2の伝送窓210等)に対して、縁(
図2の縁220および230等)は、伝送が前駆体質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン伝送および生成イオン強度の両方の固有の境界を定義する。
【0043】
図3は、種々の実施形態による、重複する前駆体伝送窓を生成するために、前駆体質量範囲にわたりシフトされる伝送窓310の例示的プロット300である。伝送窓310は、例えば、前縁330が質量320を有する前駆体イオンに到達すると、質量320を有する前駆体イオンの伝送を開始する。伝送窓310が、質量範囲にわたりシフトされる場合、質量320を有する前駆体イオンは、後縁340が質量320に到達するまで、伝送される。
【0044】
重複する窓によって生成される生成イオンスペクトルからの生成イオンの強度が、例えば、前縁330の質量の関数として、プロットされると、質量320を有する前駆体イオンによって生成される任意の生成イオンは、前縁330の質量320〜質量350にある強度を有するであろう。当業者は、重複する窓によって生成される生成イオンの強度が、限定ではないが、後縁340、設定された質量、または前縁330を含む伝送窓310の任意のパラメータに基づいて、前駆体質量の関数としてプロットされることができることを理解し得る。
【0045】
しかしながら、残念ながら、殆どの質量フィルタは、
図3に示される伝送窓310等の鋭く定義された縁を伴う伝送窓を生成することが不可能である。その結果、前駆体質量に対して一定の率で前駆体イオンを伝送する矩形伝送窓は、生成イオンをその対応する前駆体イオンに相関させるために十分な正確度を直接提供しない場合がある。
【0046】
種々の実施形態では、相関の正確度は、重複する矩形前駆体イオン伝送窓の連続したグループからの生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、改善される。連続したグループからの生成イオンスペクトルは、生成イオンスペクトル中の生成イオンの強度を連続して合計することによって、組み合わせられる。この合計は、前駆体質量によって非一定である形状を有し得る、関数を生成する。形状は、例えば、三角形であることができる。形状は、前駆体質量の関数として生成イオン強度を表す。
【0047】
前駆体質量によって非一定である形状は、前駆体質量をより正確に決定するために作成される。例えば、三角形が使用される場合、頂点または重心が、前駆体質量を指すために使用されることができる。言い換えると、生成イオンの強度が、連続的に選択され合計され、前駆体質量に対する強度の三角形関数を生成する場合、例えば、各生成イオンに対する関数の頂点または重心が、前駆体イオン質量を指す。関数の頂点または重心は、実際の伝送窓の縁における測定の正確度にあまり依存しない。当然ながら、1つ以上の前駆体イオンの結果である、生成イオンは、依然として、判別が困難であり得る。
【0048】
図4は、種々の実施形態による、重複する矩形前駆体イオン伝送窓の連続したグループからの生成イオンスペクトルが、前駆体質量の関数として生成イオン強度を表す三角形関数を生成するようにどのように合計されるかを示す、略
図400である。プロット410は、前駆体イオン420が質量430にあることを示す。重複する矩形前駆体イオン伝送窓440は、ある質量範囲にわたり段階化され、複数の生成イオンスペクトルを生成する。本質的に、生成イオンスペクトル(図示せず)は、各窓440に対して生成される。
【0049】
窓440の連続したグループ450が、選択される。窓440の連続したグループ450からのスペクトル(図示せず)からの生成イオン強度は、合計される。この合計は、プロット460を生成する。プロット460は、前駆体イオン420の生成イオンが前駆体質量に対する生成イオン強度の三角形形状関数470を取得することを示す。プロット460はまた、関数470の頂点または重心が、前駆体イオン420の質量430を指すことを示す。
【0050】
前述の方法およびシステムは、重複する前駆体イオン伝送窓を使用したある質量範囲にわたる単回走査を伴う。種々の実施形態では、追加の情報が、重複する前駆体イオン伝送窓を使用して、ある質量範囲にわたり2回以上の走査を行うことによって得られる。
【0051】
種々の実施形態では、溶出プロファイルが、重複する前駆体イオン伝送窓を使用して、ある質量範囲にわたり2回以上の走査を行うことによって、構築されることができる。通常、定量化のために、少なくとも8回の測定が、例えば、液体クロマトグラフィ(LC)ピークにわたり必要とされる。単回走査は、約1秒かかるため、高速LC溶出に関する定量情報を得ることは困難である。高速LC溶出は、例えば、小分子の場合に生じる。対照的に、プロテオミクス例におけるLC溶出は、約数十秒かかる。高速LC溶出では、ピークは、急上昇および下降するが、重複する伝送窓の1回の走査でこの挙動を検出することが依然として可能である。例えば、窓幅が、200DAであり、900Da質量範囲が、重複する窓を用いて段階あたり1.5msで走査される場合、走査は、1.35秒かかるが、その範囲内の各イオンは、200回の走査の中にあり、挙動は、各1350msの中の300msの間、観察される。その結果、溶出プロファイルは、溶出プロファイルを重複する窓から観察される断片イオンに適合させることによって、再構築されることができる。
【0052】
図5は、種々の実施形態による、重複する前駆体イオン伝送窓を使用して、どのように溶出プロファイルを再構築可能であるかを示す、略
図500である。溶出プロファイル510は、重複する伝送窓520を使用して、再構築される。略
図500は、ある質量範囲にわたる重複する伝送窓520の3つの別個の走査531、532、および533を示す。3つの走査531、532、および533の各々において、断片イオン540は、その前駆体イオンの溶出プロファイルに対応する強度を有することが見出される。当業者は、断片イオン540が、前駆体イオンの生成イオンと前駆体自体の非断片化イオンとを含み得ることを理解し得る。前駆体イオンの溶出プロファイル510を決定するために、断片イオン540は、既知の溶出プロファイルに適合される。
【0053】
種々の実施形態では、重複する前駆体伝送窓はまた、前駆体イオンを識別するためのより強い信号を提供するために使用されることができる。前述のように、プロテオミクス例におけるLC溶出は、約数十秒かかる。例えば、分子がカラムから溶出するときに30秒間存在し、重複伝送を使用した質量範囲の各走査が1秒かかる場合、分子は、30回の走査においてさまざまな強度で存在し、各走査において、前駆体質量関数に対する関係は、観察されるカウント数が高いほどより正確な前駆体決定をもたらす範囲に限り、強度に依存する。LCピークの頂点における走査は、所与の分子に対する最良データを与えるが、データは、前駆体質量関数を決定する前に、LCピークにわたる全走査に対して生成イオンスペクトルを合計することによって、さらに強化されることができる。例えば、最初の走査からの100Da〜150Da範囲の前駆体イオンからの生成イオンは、次の30回の走査サイクルからのSWATH100Da〜150DAからのものと合計される。これは、101Da〜151Da等に対して繰り返される。
【0054】
前述のように、かつ
図4に示されるように、生成イオンとその前駆体イオンとの間の相関の正確度は、重複する矩形前駆体イオン伝送窓の連続したグループからの生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、改善される。種々の実施形態では、この相関はさらに、重複する前駆体イオン伝送窓の連続したグループからの生成イオンスペクトルを組み合わせる前に、質量範囲にわたり2回以上の走査を合計することによって、高められる。
【0055】
図5に戻ると、略
図500は、ある質量範囲にわたる重複する伝送窓520の3つの別個の走査531、532、および533を示す。異なる走査における重複する窓の同一ステップからの生成イオンスペクトルは、任意のグループ化が行われる前に合計される。例えば、質量範囲内における同一ステップからの伝送窓551、552、および553からの生成イオンスペクトルが、合計される。合計されたスペクトルは、次いで、近傍の合計スペクトルと同じグループにされ、前駆体イオンを識別するのを支援する。
【0056】
ある質量範囲にわたる複数回の走査からの溶出プロファイルの再構築が、最初に説明され、ある質量範囲にわたる複数回の走査から選択される生成イオンからの前駆体イオンの識別が、次に説明されているが、これらの動作は、逆の順序で実施されることができることを当業者は理解し得る。例えば、前駆体イオンは、最初に、ある質量範囲にわたる複数回の走査から識別されることができ、次いで、その前駆体イオンの溶出プロファイルが、ある質量範囲にわたる同一の複数回の走査から再構築されることができる。
【0057】
(実験結果)
2つの実験が、行われ、矩形前駆体伝送窓が、三角形伝送窓の効果を生成するように合計された。第1の実験では、10eVの低衝突エネルギーが、使用された。本実験では、829.5393Daの較正ペプチドおよびその同位体が、比較された。
【0058】
図6は、種々の実施形態による、低エネルギー衝突実験によって生成される829.5393Daの較正ペプチドおよびその2つの同位体の前駆体質量の関数としての生成イオン強度の例示的プロット600であり、矩形前駆体伝送窓は、三角形伝送窓の効果を生成するように合計されている。トレース610、620、および630は、それぞれ、829ペプチドおよびその2つの同位体に対するものである。829ペプチドおよびその2つの同位体は、それぞれ、飛行時間(TOF)質量829.545、830.546、および831.548を有する。トレース610、620、および630は、重心化および較正されると、それぞれ、前駆体質量値829.58、830.55、および831.17を示す。
【0059】
第2の実験では、40eVのより高い衝突エネルギーが、使用された。本実験では、829.5303Daの較正ペプチド、その生成イオン、および同位体が、比較された。
【0060】
図7は、種々の実施形態による、829.5303Daの較正ペプチドに対して実施された高エネルギー衝突実験によって生成された3つの最も強度の高い生成イオンと、それらの生成イオンの3つの第1の同位体との前駆体質量の関数としての生成イオン強度の、例示的プロット700であり、矩形前駆体伝送窓は、三角形伝送窓の効果を生成するように合計されている。トレース710、720、および730は、それぞれ、TOF質量494.334、607.417、および724.497を有する、生成イオンに対するものである。トレース715、725、および735は、それぞれ、TOF質量495.338、608.423、および725.501を有する、生成イオンの第1の同位体に対するものである。トレース710、720、および730は、重心化および較正されると、それぞれ、前駆体質量値829.48、829.39、および829.27を示す。トレース715、725、および735は、重心化および較正されると、それぞれ、前駆体同位体質量値830.53、830.30、および830.15を示す。
【0061】
図6および7は、三角形形状の有効伝送窓を使用して、SWATH前駆体質量窓内で前駆体イオンを伝送することによって、同位体および生成イオンが、許容差レベル内において、その前駆体イオンに相関されることができることを検証する。
【0062】
(前駆体イオンを生成イオンから識別するためのシステム)
図8は、種々の実施形態による、タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別するためのシステム800を示す、概略図である。システム800は、質量フィルタ810と、断片化デバイス820と、質量分析器830と、プロセッサ840とを含む。システム800では、質量フィルタ、断片化デバイス、および質量分析器は、例えば、四重極の異なる段階として示される。当業者は、質量フィルタ、断片化デバイス、および質量分析器は、限定ではないが、イオントラップ、オービトラップ、イオン移動度デバイス、または飛行時間(TOF)デバイスのうちの1つ以上のものを含むことができることを理解し得る。
【0063】
プロセッサ840は、限定ではないが、コンピュータ、マイクロプロセッサ、またはタンデム質量分析計から制御信号およびデータを送受信し、データを処理することが可能な任意のデバイスであることができる。プロセッサ840は、質量フィルタ810および質量分析器830と通信する。
【0064】
質量フィルタ810は、ある質量範囲にわたり、伝送窓を段階化する。伝送窓は、各前駆体イオンに対して、前駆体イオン伝送の一定の率を有する。伝送窓の段階化は、質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成する。
【0065】
断片化デバイス820は、各段階において生成された前駆体イオンを断片化する。質量分析器は、結果として生じる生成イオンを分析し、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。
【0066】
プロセッサ840は、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信する。複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、プロセッサ840は、複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す関数を計算する。プロセッサ840は、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを関数から識別する。
【0067】
種々の実施形態では、プロセッサ840は、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルからの生成イオンスペクトルのグループを組み合わせ、複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルからの前駆体イオンあたりの少なくとも1つの生成イオンの強度が、前駆体イオン質量によって、どのように変動するかを表し、前駆体質量によって非一定である形状を有する関数を生成する。形状は、例えば、三角形を含む。
【0068】
種々の実施形態では、プロセッサ840は、関数の形状のパラメータを計算することによって、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを関数から識別する。パラメータは、例えば、形状の重心を含む。
【0069】
種々の実施形態では、質量フィルタ810は、四重極を備えている。
【0070】
種々の実施形態では、質量分析器830は、四重極を備えている。
【0071】
種々の実施形態では、質量分析器830は、飛行時間(TOF)分析器を備えている。
【0072】
(前駆体イオンを生成イオンから識別する方法)
図9は、種々の実施形態による、タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法900を示す例示的流れ図である。
【0073】
方法900のステップ910では、伝送窓は、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり段階化される。伝送窓は、各前駆体イオンに対して、前駆体イオン伝送の一定の率を有する。伝送窓の段階化は質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成する。
【0074】
ステップ920では、各段階において生成された前駆体イオンは、断片化デバイスを使用して、断片化される。
【0075】
ステップ930では、結果として生じる生成イオンは、質量分析器を使用して、分析される。結果として生じる生成イオンを分析することは、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。
【0076】
ステップ940では、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルは、プロセッサを使用して、受信される。
【0077】
ステップ950では、複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、関数が、プロセッサを使用して、計算される。関数は、複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す。
【0078】
ステップ960では、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンが、プロセッサを使用して、関数から識別される。
【0079】
(前駆体イオンを生成イオンから識別するためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含み、そのコンテンツは、タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む。本方法は、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含むシステムによって実施される。
【0080】
図10は、種々の実施形態による、タンデム質量分析実験において生成イオンの前駆体イオンを識別する方法を実施する、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含む、システム1000の概略図である。システム1000は、測定モジュール1010と、分析モジュール1020とを含む。
【0081】
測定モジュール1010は、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信する。複数の生成イオンスペクトルは、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化することによって、生成される。伝送窓を段階化することは、質量範囲にわたり、一連の重複する伝送窓を生成する。複数の生成イオンスペクトルは、断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンをさらに断片化することによって、さらに生成される。複数の生成イオンスペクトルはさらに、質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析することによって、生成される。結果として生じる生成イオンを分析することは、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトルおよび質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。
【0082】
複数の生成イオンスペクトルの少なくとも1つの生成イオンに対して、分析モジュール1020は、複数の生成イオンスペクトルからの少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す関数を計算する。分析モジュール1020は、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを関数から識別する。
【0083】
(分離プロファイルを再構築するためのシステム)
図8を参照すると、システム800はまた、種々の実施形態によると、ある質量範囲にわたる複数回の走査から、タンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するために使用されることができる。システム800はさらに、分離デバイス(図示せず)を含むことができる。分離デバイスは、限定ではないが、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動、またはイオン移動度を含む、分離技法を実施することができる。分離デバイスは、サンプルからイオンを経時的に分離する。
【0084】
質量フィルタ810は、イオンを分離デバイスから受信し、イオンをフィルタリングする。質量フィルタ810は、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、質量範囲にわたり各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化することによって、イオンをフィルタリングする。一連の重複する伝送窓が、質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対して、生成される。断片化デバイス820は、各段階において生成された前駆体イオンを断片化する。質量分析器830は、結果として生じる生成イオンを分析する。生成イオンスペクトルが、伝送窓の各段階に対して生成され、質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルが、各走査に対して生成される。
【0085】
プロセッサ840は、各走査に対して、一連の重複する伝送窓によって生成される複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成する。プロセッサ840は、複数の多走査生成イオンスペクトルから少なくとも1つの生成イオンを選択し、該少なくとも1つの生成イオンは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトル中に少なくとも2回以上存在する。プロセッサ840は、前駆体イオンの既知の分離プロファイルを複数の多走査生成イオンスペクトル中の少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する。既知の分離プロファイルは、例えば、ガウスピーク等、複数の既知の分離プロファイルまたは既知の関数を記憶するデータベース(図示せず)から読み出される。分離プロファイルは、限定ではないが、LC溶出プロファイルを含むことができる。
【0086】
種々の実施形態では、ある質量範囲にわたる2回以上の走査からの重複する前駆体伝送窓もまた、前駆体イオンを識別するためのより強い信号を提供するために使用される。プロセッサ840は、2回以上の走査にわたり、各段階において、生成イオンスペクトルを組み合わせ、複数の組み合わせられた生成イオンスペクトルを生成する。少なくとも1つの生成イオンに対して、プロセッサ840は、少なくとも1つの生成イオンの強度が、伝送窓が質量範囲にわたり段階化される場合、前駆体イオン質量によってどのように変動するかを表す関数を計算する。プロセッサ840は、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンを関数から識別する。
【0087】
種々の実施形態では、プロセッサ840は、2回以上の走査にわたり、各ステップにおいて、生成イオンスペクトルを合計することによって、2回以上の走査にわたり、各ステップにおいて、生成イオンスペクトルを組み合わせる。
【0088】
(分離プロファイルを再構築する方法)
図11は、種々の実施形態による、ある質量範囲にわたる複数回の走査から、タンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法1100を示す例示的フロー図である。
【0089】
方法1100のステップ1110では、イオンは、分離デバイスを使用して、サンプルから経時的に分離される。
【0090】
ステップ1120では、イオンは、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、質量範囲にわたり各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化することによって、フィルタリングされる。一連の重複する伝送窓は、2回以上の走査の各走査に対して、質量範囲にわたり生成される。
【0091】
ステップ1130では、各段階において生成された前駆体イオンは、断片化デバイスを使用して、断片化される。
【0092】
ステップ1140では、結果として生じる生成イオンは、質量分析器を使用して、分析される。生成イオンスペクトルは、伝送窓の各段階に対して生成され、複数の生成イオンスペクトルが、各走査に対して、質量範囲に対して生成される。
【0093】
ステップ1150では、複数の生成イオンスペクトルが、各走査に対して、一連の重複する伝送窓によって生成され、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成する。
【0094】
ステップ1160では、プロセッサを使用して、少なくとも1つの生成イオンが、複数の多走査生成イオンスペクトルから選択され、該少なくとも1つの生成イオンは、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトル中に少なくとも2回以上存在する。
【0095】
ステップ1170では、前駆体イオンの既知の分離プロファイルが、プロセッサを使用して、複数の多走査生成イオンスペクトル中の少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合され、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する。
【0096】
(分離プロファイルを再構築するためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含み、そのコンテンツは、ある質量範囲にわたる複数回の走査からタンデム質量分析実験における前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む。本方法は、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含む、システムによって実施される。
【0097】
図10を参照すると、システム1000はまた、種々の実施形態によると、ある質量範囲にわたる複数回の走査から、タンデム質量分析実験において前駆体イオンの分離プロファイルを再構築するためにも使用されることができる。
【0098】
測定モジュール1010は、一連の重複する伝送窓によって生成される、ある質量範囲にわたる2回以上の走査の各走査に対する複数の生成イオンスペクトルを受信し、複数の多走査生成イオンスペクトルを生成する。各走査に対する複数の生成イオンスペクトルは、分離デバイスを使用して、イオンをサンプルから経時的に分離し、質量フィルタを使用して、イオンをフィルタリングすることによって、生成される。イオンは、質量範囲にわたる2回以上の走査の各々において、質量フィルタを使用して、ある質量範囲にわたり、各前駆体イオンに対して一定の率の前駆体イオン伝送を有する伝送窓を段階化することによって、フィルタリングされる。伝送窓の段階化は、各走査に対して、質量範囲にわたり一連の重複する伝送窓を生成する。複数の生成イオンスペクトルは、断片化デバイスを使用して、各段階において生成された前駆体イオンをさらに断片化することによって、さらに生成される。複数の生成イオンスペクトルはさらに、質量分析器を使用して、結果として生じる生成イオンを分析することによって、生成される。結果として生じる生成イオンを分析することは、伝送窓の各段階に対する生成イオンスペクトル、および各走査に対して質量範囲に対する複数の生成イオンスペクトルを生成する。
【0099】
分析モジュール1020は、2回以上の走査の各々からの生成イオンスペクトル中に少なくとも2回以上存在する少なくとも1つの生成イオンを、複数の多走査生成イオンスペクトルから選択する。分析モジュール1020は、前駆体イオンの既知の分離プロファイルを複数の多走査生成イオンスペクトル中の少なくとも1つの生成イオンからの強度に適合させ、少なくとも1つの生成イオンの前駆体イオンの分離プロファイルを再構築する。
【0100】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示が、そのような実施形態に制限されることを意図するものではない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0101】
さらに、種々の実施形態の説明において、本明細書は、ステップの特定の連続として、方法および/またはプロセスを提示し得る。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない程度において、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定の連続に制限されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他の連続も可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する制限として解釈されるべきでない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、そのステップの実施を書かれた順序に制限されるべきではなく、当業者は、連続が、変動され得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内にあることを容易に理解することができる。