(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面処理ポリマーが、重合単位として、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、保護カルボキシルおよびそれらの混合物から選択される表面処理部分を含む1つまたは複数のモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の全体にわたって使用される時に、文脈が特別に明らかに示さない限り、以下の略称は以下の意味を有する。ca.=およそ;℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;mmol=ミリモル;L=リットル;mL=ミリリットル;nm=ナノメートル;Å=オングストローム;Et=エチル;i−Pr=イソ−プロピル;n−Bu=n−ブチル;t−Bu=tert−ブチル;sec.=秒;msec.=ミリセカンド;min.=分;およびrpm=毎分回転数。特に断りのない限り、すべての量は重量によるパーセント(wt%)であり、すべての比はモル比である。すべての数値範囲は、かかる数値範囲が100%まで加えるように制約されることが明らかである場合以外は、任意の順序で包括的であり組み合わせ可能である。
【0011】
本明細書において使用される時、「オキシ金属ハードマスク」は、(−M−O−)
nドメイン(式中、Mは金属であり、nは>1の整数である)を含む任意の金属ハードマスクを指し、多数の(−M−O−)
nドメインを有するオキシ金属ハードマスクならびに金属窒化物ドメインおよび(−M−O−)
nドメインの両方を有する混合ドメインハードマスクの両方を含む。オキシ金属ハードマスクは任意で1つまたは複数の他の元素(炭素等)を含むことができ、好ましくは、(−M−O−)
nドメインと比較して、比較的少量で存在する。「ドメイン」は、本明細書において使用される時、特定のリンケージ((−M−O−)
nリンケージ等)の対応するブロックによって形成されたコンパクトな結晶性、半結晶性または非晶性の領域を意味する。「コポリマー」という用語は、2以上の異なるモノマーのポリマーを指す。「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの両方を指し、「(メタ)アクリルの」はアクリルのおよびメタクリルのの両方を指す。本明細書において使用される時、「ペンダント基」という用語は、ポリマー骨格へ付加されるが、その一部を形成しない基を指す。「オリゴマー」という用語は、さらに硬化され得る、二量体、三量体、四量体および他の比較的低い分子量の材料を指す。用語「ポリマー」は用語「オリゴマー」を含む。「分岐」ポリマーは星型ポリマーおよび樹状ポリマーを含む。冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は単数および複数を指す。
【0012】
オキシ金属ハードマスク層の形成に使用される本発明の組成物は、有機−金属化合物と;20〜40erg/cm
2の表面エネルギーを有し、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、保護カルボキシルおよびそれらの混合物から選択される表面処理部分を含む、表面処理剤と;溶媒とを含む。オキシ金属ハードマスク層の形成のために好適な任意の有機−金属化合物を本組成物中で使用することができる。かかる有機−金属化合物はフィルム形成性であり、典型的にはポリマー性(オリゴマー性等)であるが、非ポリマー性でもあり得る。有機−金属化合物は単一金属を含有することができるか、または2つ以上の異なる金属を含有することができる。すなわち、単一有機−金属化合物(オリゴマー等)は1つの金属種のみを有することができるか、または2つ以上の異なる金属種を含有することができる。あるいは、各単一金属種を有する有機−金属化合物の混合物を、合金フィルムを堆積させるために用いることができる。有機−金属化合物は、異なる金属種ではなく、単一金属種の1つまたは複数の原子を含有することが好ましい。本有機−金属化合物において有用な好適な金属は周期表の3〜14族中の任意の金属である。好ましくは、金属は、4、5、6および13族から、ならびにより好ましくは4、5および6族から選択される。好ましい金属には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、モリブデンおよびアルミニウムが、より好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタルおよびモリブデンが含まれる。
【0013】
本組成物で使用される1つの好適なクラスの有機−金属化合物は、式(1)の金属−酸素オリゴマー
【化1】
(式中、各Xは、光減衰部分、ジケトン、C
2−20ポリオールおよびC
1−20アルコキシドから独立して選択され;Mは3族〜14族の金属である)である。好ましいX置換基はジケトンおよびC
1−20アルコキシドであり、より好ましくはジケトンおよびC
1−10アルコキシドである。一実施形態において、少なくとも1つのXが、
【化2】
(式中、各Rは、水素;C
1−12アルキル、C
6−20アリール、C
1−12アルコキシおよびC
6−10フェノキシから独立して選択される)の構造のジケトンであり、より好ましくは両方のX置換基はジケトンであることが好ましい。より好ましくは、各Rは、C
1−10アルキル、C
6−20アリール、C
1−10アルコキシおよびC
6−10フェノキシから独立して選択される。Rについての例示的な基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、フェネチル、ナフチル;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、エチルフェノキシおよびフェニルオキシ−メチルが含まれる。金属−酸素オリゴマーの好ましい構造は、式(1a)
【化3】
(式中、M、XおよびRは上記の通りである)を有する。米国特許第7,364,832号中でかかる金属−酸素オリゴマーが開示される。本発明中で有用な類似の金属−酸素オリゴマーは、米国特許第6,303,270号;第6,740,469号;第7,457,507号および米国特許出願公報第2012/022341号8中でも見出される。
【0014】
本組成物中で有用なもう一つの好適なクラスの有機−金属化合物は、金属含有ペンダント基を含むオリゴマーである。1つまたは複数の金属含有ペンダント基を含む任意のフィルム形成性有機−金属オリゴマーを、本組成物中で好適に使用することができる。好ましくは、1つまたは複数の金属含有ペンダント基を含む有機−金属オリゴマーは、重合単位として、1つまたは複数の(メタ)アクリレートモノマーおよびより好ましくは1つまたは複数の金属含有(メタ)アクリレートモノマーを含む。さらにより好ましくは、1つまたは複数の金属含有ペンダント基を含む有機−金属オリゴマーは、重合単位として、式(2)の1つまたは複数のモノマー
【化4】
(式中、R
1=HまたはCH
3であり;M=3族〜14族の金属であり;Lはリガンドであり;nはリガンドの数を指し、1〜4の整数である)を含む。好ましくは、Mは、4、5、6および13族から、ならびにより好ましくは4、5および6族から選択された金属である。M=チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、およびアルミニウムであることが好ましく、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタルおよびモリブデンであり、さらにより好ましくは、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンおよびタンタルである。
【0015】
硬化工程の間にかかるリガンドを切断して金属酸化物含有ハードマスクを形成することができれば、式(2)中のリガンド(L)は任意の好適なリガンドであり得る。好ましくは、リガンドは、金属に結合するか、配位するか、またはそうでなければ相互作用する酸素原子または硫黄原子を含む。例示的なクラスのリガンドは1つまたは複数の以下の基を含有するものである。アルコール、チオール、ケトン、チオンおよびイミン、ならびに好ましくはアルコール、チオール、ケトンおよびチオン。好ましくは、Lは、1つまたは複数のC
1−6アルコキシ、β−ジケトネート、β−ヒドロキシケトネート、β−ケトエステル、β−ジケチミネート、アミジネート、グアニジネートおよびβヒドロキシイミンから選択される。Lは、1つまたは複数のC
1−6アルコキシ、β−ジケトネート、β−ヒドロキシケトンおよびβ−ケトエステルから選択されることがより好ましく、さらにより好ましくは、LはC
1−6アルコキシから選択される。リガンドの数は「n」によって式(2)中で参照され、それは1〜4、好ましくは2〜4、およびより好ましくは3〜4の整数である。式(2)の好ましいモノマーは、Zr(C
1−4アルコキシ)
3アクリレート、Zr(C
1−4アルコキシ)
3メタクリレート、Hf(C
1−4アルコキシ)
3アクリレート、Hf(C
1−4アルコキシ)
3メタクリレート、Ti(C
1−4アルコキシ)
3アクリレート、Ti(C
1−4アルコキシ)
3メタクリレート、Ta(C
1−4アルコキシ)
4アクリレート、Ta(C
1−4アルコキシ)
4メタクリレート、Mo(C
1−4アルコキシ)
4アクリレート、Mo(C
1−4アルコキシ)
4メタクリレート、W(C
1−4アルコキシ)
4アクリレート、およびW(C
1−4アルコキシ)
4メタクリレートである。式(2)の有機−金属化合物は、好適な溶媒(アセトン等)中のアクリル酸またはメタクリル酸と金属テトラアルコキシドを反応させることによって等の多様な方法によって調製することができる。
【0016】
1つまたは複数の金属含有ペンダント基を含む有機−金属オリゴマーは、単一モノマーの重合単位(ホモポリマー)または2以上のモノマーの混合物の重合単位(コポリマー)からなり得る。好適なコポリマーは、1つまたは複数の他のモノマーと金属含有ペンダント基を含む1つまたは複数のモノマーの重合による従来の方法によって調製することができ、他のかかるモノマーは任意で金属含有ペンダント基を含むことができる。好ましくは、1つまたは複数の金属含有ペンダント基を含む有機−金属オリゴマーは、1つまたは複数の他のエチレン性不飽和モノマーと1つまたは複数の金属含有(メタ)アクリレートモノマーの従来のラジカル重合によって調製される。好適なエチレン性不飽和モノマーには、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、アリール(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、アルケニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸およびビニル芳香族モノマー(スチレンおよび置換されたスチレンモノマー等)が限定されず含まれる。好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは、C
1−12アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよびヒドロキシ(C
1−12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー、ならびにより好ましくは、C
1−12アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよびヒドロキシ(C
2−6)アルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される。好ましいC
1−12アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよびヒドロキシ(C
1−12)アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。かかるコポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。これらの有機−金属オリゴマーは、重合単位として、金属含有ペンダント基(金属含有(メタ)アクリレートモノマー等)を含むモノマーに加えて、1、2、3または4以上のエチレン性不飽和モノマーからなり得る。
【0017】
本組成物中に使用に好適なさらなるクラスの有機−金属化合物は、式(3)の化合物
【化5】
(式中、R
2=C
1−6アルキルであり;M
1は3族〜14族の金属であり;R
3=C
2−6アルキレン−X−またはC
2−6アルキリデン−X−であり;各XはOおよびSから独立して選択され;zは1〜5の整数であり;L
1はリガンドであり;mはリガンドの数を指し、1〜4の整数であり;p=2〜25の整数である)である。R
2はC
2−6アルキルであることが好ましく、より好ましくは、C
2−
4アルキルである。好ましくは、M
1は、4、5、6および13族から、ならびにより好ましくは4、5および6族から選択された金属である。M
1=チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、およびアルミニウムであることが好ましく、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタルおよびモリブデンであり、さらにより好ましくは、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンおよびタンタルである。Xは好ましくはOである。R
3はC
2−4アルキレン−X−およびC
2−4アルキリデン−X−から選択されることが好ましく、より好ましくはC
2−4アルキレン−O−およびC
2−4アルキリデン−O−からである。好ましくは、p=5〜20、およびより好ましくは8〜15である。z=1〜4であることが好ましく、より好ましくはz=1〜3である。
【0018】
硬化工程の間にかかるリガンドを切断して金属酸化物含有ハードマスクを形成することができれば、式(3)中のリガンド(L
1)は任意の好適なリガンドであり得る。好ましくは、リガンドは、金属に結合するか、配位するか、またはそうでなければ相互作用する酸素原子または硫黄原子を含む。例示的なクラスのリガンドは1つまたは複数の以下の基を含有するものである。アルコール、チオール、ケトン、チオンおよびイミン、ならびに好ましくはアルコール、チオール、ケトンおよびチオン。好ましくは、L
1は、1つまたは複数のC
1−6アルコキシ、β−ジケトネート、β−ヒドロキシケトネート、β−ケトエステル、β−ジケチミネート、アミジネート、グアニジネートおよびβヒドロキシイミンから選択される。L
1は、1つまたは複数のC
1−6アルコキシ、β−ジケトネート、β−ヒドロキシケトネートおよびβ−ケトエステルから選択されることがより好ましく、さらにより好ましくは、L
1はβ−ジケトネート、β−ヒドロキシケトネートおよび−ケトエステルから選択される。リガンドの数は「m」によって式(3)中で参照され、それは1〜4、および好ましくは2〜4であり得る。L
1についての好ましいリガンドは、ベンゾイルアセトネート;ペンタン−2,4−ジオネート(アセトアセテート);ヘキサフルオロアセトアセテート;2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート;およびエチル−3−オキソブタノアート(エチルアセトアセテート)を含む。
【0019】
式(3)のオリゴマーは、以下の一般方程式
【化6】
(式中、R
2、R
3、X、M
1、L
1、m、pおよびzは、式(3)のオリゴマーについての上記の意味を有する)によって等の当該技術分野において公知の従来の手段によって調製することができる。式(3)のオリゴマーは単一金属種または各々が類似する耐プラズマエッチング性を有する異なる金属種の組み合わせを含有し得るが、好ましくは単一金属種を含有する。典型的には、かかる反応物は、≦100℃、好ましくは≦90℃およびより好ましくは≦80℃の温度で実行される。
【0020】
かかる化合物が使用される条件下でフィルムを形成できれば、多様な非ポリマー有機−金属化合物を本組成物中で使用することができる。好適な非ポリマー有機−金属化合物には、金属アルコキシド、金属ケトネートおよび同種のものが限定されずに含まれる。例示的な非ポリマー有機−金属化合物には、ハフニウムテトラエトキシド;ハフニウムテトラブトキシド;ハフニウム2,4−ペンタンジオネート;ハフニウムジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート);ハフニウム2−エチルヘキサオキシド;ハフニウムテトラメチルヘプタンジオネート;ハフニウムトリフルオロペンタンジオネート;チタンアリルアセトアセトネートトリス−イソ−プロポキシド;テトラブチルチタナート;チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート);チタンジ−イソ−プロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート);チタンジ−イソ−プロポキシド(ビス−テトラメチルヘプタンジオネート);チタンエトキシド;チタンイソ−ブトキシド;チタンイソ−プロポキシド;チタンn−プロポキシド;チタンメトキシド;チタンn−ノニロキシド;チタントリ−イソ−プロポキシドトリn−ブチルスタンオキシド;タンタル(V)エトキシド;タンタル(V)メトキシド;タンタル(V)テトラエトキシド2,4−ペンタンジオネート;タングステン(V)エトキシド;タングステン(VI)エトキシド;ジルコニウムn−ブトキシド;ジルコニウムジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート);ジルコニウムジ−イソ−プロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート);ジルコニウムエトキシド;ジルコニウムイソ−プロポキシド;ジルコニウムn−プロポキシド;ジルコニウムジメタクリレートジn−−ブトキシド;ジルコニウムテトラメタクリラート;ジルコニウム2−エチルヘキサオキシド;ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート;ジルコニウム2−メチル−2−ブトキシド;ジルコニウムテトラ−2,4−ペンタンジオネート;ジルコニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート;およびジルコニウムトリフルオロペンタンジオネートが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
1を超える有機−金属化合物が本組成物中で使用され得ることは当業者によって認識されるだろう。有機−金属化合物の組み合わせが使用される場合、かかる化合物は、変動する量(重量で99:1〜1:99、好ましくは重量で90:10〜10:90等)で使用することができる。より好ましくは、有機−金属化合物の混合物は重量で80:20〜20:80の量で使用される。
【0022】
本組成物は、比較的低い表面エネルギーを有し、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、保護カルボキシルおよびそれらの混合物から選択される表面処理部分を含む、表面処理剤も含む。好ましい実施形態において、表面処理剤は、保護ヒドロキシル、保護カルボキシルおよびそれらの混合物から選択される表面処理部分を含む。理論に束縛されることは意図しないが、表面処理部分は、表面処理剤をオキシ金属ハードマスク表面へアンカーするように機能すると考えられている。表面処理剤分子あたり最低1つの表面処理部分が要求される。表面処理剤の表面エネルギーが比較的低い表面エネルギーを有する限り、表面処理薬剤分子あたりの表面処理部分の数への特異的な制限はない。「比較的低い表面エネルギー」によって、20〜40erg/cm
2の範囲中の(静的)表面エネルギーが意味される。好ましくは、表面処理剤は、25〜40erg/cm
2、およびより好ましくは25〜35erg/cm
2の範囲中の表面エネルギーを有する。典型的には、表面処理剤分子中の表面処理部分の量を増加させることが、分子の表面エネルギーを増加させることは当業者によって認識されるだろう。組成物中の表面処理剤は非保護カルボン酸基を実質的に含まない(すなわち、表面処理剤は≦0.5mol%の非保護カルボン酸基または「遊離」カルボン酸基を含む)。
【0023】
保護カルボキシル基とは、カルボキシル基をもたらす特定の条件下で切断可能な任意の基である。かかる保護カルボキシル基は、熱、酸、塩基またはその組み合わせによって、好ましくは熱、酸またはその組み合わせによって、およびより好ましくは熱によって、切断することができる。例示的な保護カルボキシル基には、エステル(ベンジルエステル、およびエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステル等)が含まれる。保護カルボキシル基は、エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステルであることが好ましく、より好ましくは、エステルは式Y−C(O)−O−CR’R’’R’’’(式中、Yは有機残基であり、R’、R’’およびR’’’の各々はC
1−10アルキルから独立して選択される)を有する。好ましい保護カルボキシル基には、tert−ブチルエステル;1−アルキルシクロペンチルエステル(1−メチルシクロペンチルエステルおよび1−エチルシクロペンチルエステル等);2,3−ジメチル−2−ブチルエステル;3−メチル−3−ペンチルエステル;2,3,3−トリメチル−3−ブチルエステル;1,2−ジメチルシクロペンチルエステル;2,3,4−トリメチル−3−ペンチルエステル;2,2,3,4,4−ペンタメチル−3−ペンチルエステル;およびアダマンチルエステル(ヒドロキシアダマンチルエステルおよびC
1−12アルキルアダマンチルエステル等)が含まれる。前述の保護カルボキシル基の各々は1つまたは複数の熱、酸または塩基によって切断することができる。好ましくは、保護カルボキシル基は、熱、酸、または熱および酸の組み合わせを使用して、およびより好ましくは熱によって、切断される。例えば、これらの保護カルボキシル基は、≦4および好ましくは≦1のpHで切断することができる。1〜4の範囲中のpHへ曝露された場合、かかる保護カルボキシル基は室温で切断され得る。pHが<1である場合、典型的にはかかる保護カルボキシル基は、およそ90〜110℃、および好ましくはおよそ100℃まで加熱される。あるいは、保護カルボキシル基がエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有するエステルである場合、それは適切な温度(≧125℃、好ましくは125〜250℃、およびより好ましくは150〜250℃等)まで加熱することによって切断することができる。かかる保護カルボキシル基およびそれらの使用条件は当該技術分野(米国特許第6,136,501号等)において周知であり、それはエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する様々なエステル基を開示するものである。
【0024】
保護ヒドロキシル基とは、ヒドロキシル基をもたらす特定の条件下で切断可能な任意の基である。かかる保護ヒドロキシル基は、熱、酸、塩基またはその組み合わせによって切断することができる。例示的な保護ヒドロキシル基には、エーテル(メトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、tert−ブチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、tert−ブチルジメチルシリルエーテル、tert−ブチルジフェニルシリルエーテル、アセトニドおよびベンジリデンアセタール等);エステル(ピバリン酸エステルおよび安息香酸エステル等);およびカルボネート(tert−ブチルカルボネート等)が含まれる。前述の保護ヒドロキシル基の各々は酸性またはアルカリ性条件、および好ましくは酸性条件下で切断することができる。より好ましくは、保護ヒドロキシル基は、酸、または酸および熱の組み合わせを使用して切断される。例えば、これらの保護ヒドロキシル基は、≦4および好ましくは≦1のpHで切断することができる。1〜4の範囲中のpHへ曝露された場合、かかる保護ヒドロキシル基は室温で切断され得る。pHが<1である場合、典型的にはかかる保護ヒドロキシル基は、およそ90〜110℃、および好ましくはおよそ100℃まで加熱される。かかる保護ヒドロキシル基およびそれらの使用の条件は当該技術分野において周知である。
【0025】
表面処理部分に加えて、表面処理剤には、C
3−20アルキル基およびC
6−20アリール基等の1つまたは複数の比較的より低い表面エネルギー部分(すなわち比較的より疎水性の部分)も含まれる。かかるC
3−20アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であり得る。かかるC
6−20アリール基には、C
6−20アラルキル基およびC
6−20アルカリール基(ベンジル、フェネチル、トリル、キシリル、エチルフェニル、スチリルおよび同種のもの等)が含まれる。分岐状または環状のアルキル基は対応する直鎖状アルキル基よりも比較的より疎水性であり、かかる基の分岐状または環状の性質を増加させることは、表面処理剤の表面エネルギーを低下させることを支援すると考えられている。同様に、炭素鎖長を増加したアルキルおよびアリール基も表面処理剤の表面エネルギーを低下させる。好ましくは、表面処理剤には、C
4−20アルキル基およびC
6−20アリール基から、ならびにより好ましくはC
4−16アルキル基およびC
6−16アリール基から選択される1つまたは複数の比較的より低い表面エネルギー部分が含まれる。典型的には、表面処理剤は、≦20mol%、好ましくは≦10mol%、より好ましくは≦7mol%、およびなおより好ましくは≦5mol%の表面処理部分を含む単位を含み、残りは1つまたは複数の比較的より低い表面エネルギー部分を含む単位から構成される。
【0026】
表面処理剤は、ポリマー性または非ポリマー性であり得、好ましくはポリマー性である。ポリマー性表面処理剤は直鎖状または分岐状であり得、1つまたは複数の表面処理部分を含むペンダント基、1つまたは複数の表面処理部分を含む末端基、および1つまたは複数の表面処理部分を含むポリマー骨格のうちの1つまたは複数のものを含む。ポリマー性表面処理剤は、1つまたは複数の表面処理部分を含むペンダント基、1つまたは複数の表面処理部分を含む末端基またはその組み合わせを含むことが好ましく、より好ましくは、ポリマー性表面処理剤は、1つまたは複数の表面処理部分を含むペンダント基を含む。1つの好ましい実施形態において、ポリマー性表面処理剤は重合単位としてエチレン性不飽和モノマーを含む。ポリマー性表面処理剤は、重合単位として、(メタ)アクリレートエステル、スチレンモノマーおよびヒドロキシスチレンモノマーから選択される1つまたは複数のモノマーを含むことがさらに好ましい。典型的には、ポリマー性表面処理剤は、≧1000ダルトン、好ましくは≧5000ダルトン、より好ましくは≧8000ダルトン、およびさらにより好ましくは≧10,000ダルトンの分子量を有する。典型的には、ポリマー性表面処理剤は、1000〜50,000ダルトン、好ましくは5000〜30,000、より好ましくは5000〜25,000、さらにより好ましくは5000〜20,000ダルトン、およびなおより好ましくは8000〜20,000ダルトンの分子量を有する。
【0027】
表面処理部分を含むモノマーが、ポリマーの形成に使用したモノマーの全モルに基づいて、≦20mol%、好ましくは≦10mol%、より好ましくは≦7mol%、およびなおより好ましくは≦5mol%の量で存在し、好ましくはポリマーの残りが比較的低い表面エネルギーを有するモノマーを含むならば、1つまたは複数の表面処理部分を含む任意のポリマーを表面処理剤として好適に使用することができる。1つまたは複数の表面処理部分を含む例示的なモノマーには、ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリレートエステルおよびシルセスキオキサンが含まれるが、これらに限定されない。好適なヒドロキシスチレンモノマーには、ヒドロキシスチレン、C
1−10アルキル置換ヒドロキシスチレンおよび同種のものが含まれる。1つまたは複数の表面処理部分を含む好適な(メタ)アクリレートエステルには、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルラジカル中の1つまたは複数のヒドロキシル基により置換されたアルキル(メタ)アクリレート、特にヒドロキシル基がアルキルラジカル中のβ位(2位)で見出されるもの、およびエステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する(メタ)アクリレートエステルが限定されずに含まれる。好適なアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、一般式HO−(Alk−O)p−C(O)−CHR
a=CH
2(式中、Alkはアルキレン基であり、p=1〜100であり、およびR
a=HまたはCH
3であり、好ましくはp=1〜25、およびより好ましくはp=1〜10である)を有する。かかるアルキレングリコール(メタ)アクリレートにおいて、アルキレングリコール部分は、典型的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールに由来する。好ましいアルキレングリコール(メタ)アクリレートには、モノアルキレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール(メタ)アクリレートおよびプロピレングリコール(メタ)アクリレート等)に加えて、ポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレート(ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびトリプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレート等)が含まれる。好適なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシ置換アルキル基が分岐状または非分岐状のC
2−20アルキルおよび好ましくはC
2−15アルキルであるものである。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーには、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、HEMA、HEA、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびそれらの混合物である。後者の2つのモノマーの混合物は一般に「ヒドロキシプロピルメタクリレート」または「HPMA」と称される。エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する好適な(メタ)アクリレートエステル(すなわち保護カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸)には、米国特許第6,136,501号中で開示される保護基のいずれかの(メタ)アクリレートエステル、アダマンチル(メタ)アクリレートエステル、tert−ブチル(メタ)アクリレートおよび同種のものが含まれる。エステル基のアルコキシ酸素へ直接結合される第4級炭素を有する好ましい(メタ)アクリレートエステルには、tert−ブチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2,3−ジメチル−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,3,3−トリメチル−3−ブチル(メタ)アクリレート、1,2−ジメチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4−ペンタメチル−3−ペンチル(メタ)アクリレート、およびC
1−10アルキルアダマンチルを含むアダマンチル(メタ)アクリレート(メタ)アクリレートが含まれる。好適なシルセスキオキサンモノマーは、シリコンへ結合される1つまたは複数のヒドロキシル基を含有するものである。典型的には、かかるシルセスキオキサンはオリゴマー材料として入手可能であり、ラダー構造またはケージ構造および好ましくはケージ構造を有することができ、Sigma−AldrichまたはHybrid Plasticsから入手可能なもの等の多面体オリゴシルセスキオキサン(POSS)モノマー等である。特に好適なシルセスキオキサンモノマーには、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]−オクタシロキサン−1−オール;1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオール;1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオール;1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオール;1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオール;1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオール;1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロヘキシルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオール;およびトリシクロ[7.3.3.3
3,7]オクタシロキサン−5,11,14,17−テトラオール−1,3,5,7,9,11,14,17−オクタフェニルが限定されずに含まれる。上記のモノマーのいずれかの混合物を本組成物中で使用することができる。
【0028】
比較的低い表面エネルギーを有する好適なモノマーには、典型的には、1つまたは複数のC
3−20アルキル基およびC
6−20アリール基が限定されずに含まれる。かかるモノマーの例には、スチレンおよび(メタ)アクリレートモノマーが含まれるが、これらに限定されない。好ましいスチレンモノマーには、スチレンおよびC
1−12のアルキルスチレン(α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、α−エチルスチレンおよび4−エチルスチレン等)が含まれる。比較的低い表面エネルギーを有する好ましい(メタ)アクリレートモノマーには、C
3−20アルキル(メタ)アクリレートモノマー(n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソ−ペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等)が含まれる。かかるモノマーの混合物も使用することができる。
【0029】
上記のモノマーに加えて、1つまたは複数の他のモノマーが任意で使用されてもよいこと(使用される溶媒中でポリマー性表面処理剤の可溶性を支援するため等)は当業者によって認識されるだろう。他のかかるモノマーには、C
1−2アルキル(メタ)アクリレート(メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートならびにそれらの混合物等)を含む。これらのモノマーを使用して表面処理剤を形成する場合、それらは比較的少量(0〜10mol%、および好ましくは0〜5mol%等)で使用される。好ましい実施形態において、ポリマー性表面処理剤はC
1−2アルキル(メタ)アクリレートを含まない。
【0030】
ポリマー性表面処理剤は、典型的には1つまたは複数の表面処理部分を含むモノマーを≦20mol%、および比較的低い表面エネルギーモノマーを≧70mol%、および他のモノマーを0〜10mol%含む。好ましくは、ポリマー性表面処理剤は、1つまたは複数の表面処理部分を含むモノマーを≦10mol%、より好ましくは≦7mol%、およびなおより好ましくは≦5mol%含む。本発明のポリマー性表面処理剤は、多様な供給源(Dow Chemical Company、Midland、Michigan等)から商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において周知の様々な方法(溶液重合またはエマルジョン重合によって等)に従って作製することができる。かかるポリマーはさらなる精製の有無にかかわらず使用することができる。
【0031】
本組成物は1つまたは複数の有機溶媒も含む。表面処理剤および有機−金属化合物が選択された溶媒または溶媒の混合物中で可溶性であるならば、様々な有機溶媒を好適に使用することができる。かかる溶媒には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、ラクトン、エステル、グリコールおよびグリコールエーテルが含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒の混合物を使用することができる。例示的な有機溶媒には、トルエン、キシレン、メシチレン、アルキルナフタレン、2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテー卜およびプロピレングリコールメチルエーテルが限定されずに含まれる。好ましい実施形態において、多量の第1の溶媒および少量の第2の溶媒を含む溶媒システムが使用される。より好ましくは、第1の溶媒は比較的低い表面エネルギーを有し、第2の溶媒は第1の溶媒よりも比較的高い沸点を有し、ここで、第2の溶媒は表面処理剤の表面エネルギーよりも高い表面エネルギー(張力)を有する。例示的な第2の溶媒には、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジプロピレンエチレングリコールメチルエーテルおよび同種のものが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、溶媒混合物が使用される場合、第2の溶媒の量は、溶媒システムの全重量に基づいて0.1〜10wt%の量で存在し、残りは第1の溶媒の重量である。好ましくは、有機溶媒は、<10,000ppmの水、より好ましくは<5000ppmの水、およびさらにより好ましくは≦500ppmの水を含有する。有機溶媒は遊離のカルボン酸基またはスルホン酸基を有していないことが好ましい。
【0032】
本組成物は、1つまたは複数の添加剤(熱酸発生剤、光酸発生剤、抗酸化剤、色素、造影剤および同種のもの等)を任意で含むことができる。表面処理剤が1つまたは複数の保護ヒドロキシル基を含む場合、熱酸発生剤または光酸発生剤を使用することが好ましい。一般に、表面処理組成物中の熱酸発生剤の量は、0〜10wt%、好ましくは1〜8wt%、およびより好ましくは2〜6wt%である。表面処理組成物中の光酸発生剤の量は、典型的には0〜10wt%、好ましくは1〜8wt%、およびより好ましくは4〜6wt%である。
【0033】
熱酸発生剤(TAG)は当該技術分野において周知である。一般に、TAGは加熱(≧90℃および好ましくは120〜150℃等)によって活性化されて酸を生成することができ、それは場合に応じて保護基を切断して、非保護のカルボキシル基またはヒドロキシル基を形成することができる。例示的なTAGには、ニトロベンジルトシレート(2−ニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレートおよび4−ニトロベンジルトシレート等);ベンゼンスルホネート(2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−クロロベンゼンスルホネートおよび2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−ニトロベンゼンスルホネート等);フェノール性スルホン酸エステル(フェニルおよび4−メトキシベンゼンスルホネート等);および有機酸のアミン塩またはアルキルアンモニウム塩(10−カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、アミンブロックドデシルベンゼンスルホン酸および第4級アンモニウムブロックトリフル酸等)が含まれる。多様な芳香族の(アントラセン、ナフタレンまたはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩をTAGとして用いることができ、米国特許第3,474,054号;第4,200,729号;第4,251,665号;および第5,187,019号中で開示されるものが含まれる。典型的には、TAGは170〜220℃の間の温度で非常に低い揮発性を有するだろう。TAGの例には、NACURE(商標)、CDX(商標)およびK−PURE(商標)の名称下でKing Industries、Norwalk、Connecticut、USAによって販売されるものが含まれる。
【0034】
光酸発生剤(PAG)は当該技術分野において周知であり、光の特定の波長(g線、h線もしくはi線、248nm、193nmまたは他の好適な波長等)への露光に際してまたは電子ビーム(eビーム)への露光に際して活性化されて酸を生成し、それは場合に応じて保護基を切断して、非保護のカルボキシルまたはヒドロキシル基を形成することができる。好適なPAGは化学増幅型フォトレジストの当該技術分野において公知であり、例えば、オニウム塩(例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホンイウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート);ニトロベンジル誘導体(例えば2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート、および2,4−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート);スルホン酸エステル(例えば1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン)、および1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン);ジアゾメタン誘導体(例えばビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン);グリオキシム誘導体(例えばビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、およびビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム);N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体(例えばN−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル);およびハロゲン含有トリアジン化合物(例えば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン誘導体、および2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン誘導体)が含まれる。1つまたは複数のかかるPAGを使用することができる。好適なPAGは、多様な供給源から(IRGACURE(商標)ブランド下のBASF(Ludwigshafen、ドイツ)から等)入手可能である。
【0035】
本組成物は、任意の順序で、表面処理剤、有機溶媒および任意のオプションの添加剤(TAGまたはPAG)を組み合わせることによって調製することができる。本組成物中の成分の濃度が幅広い範囲にわたって変動され得ることは当業者によって認識されるだろう。好ましくは、表面処理剤は、組成物の全重量に基づいて、0.1〜10wt%、好ましくは0.1〜5wt%、より好ましくは0.1〜3wt%、およびなおより好ましくは0.5〜3wt%の量で組成物中に存在する。好ましくは、有機−金属化合物は、0.5〜35wt%、より好ましくはは1〜30wt%、なおより好ましくは1.5〜35wt%、およびさらにより好ましくは1.5〜25wt%の量で組成物中に存在する。より高い量またはより低い量のかかる成分を本組成物中で使用できることは当業者によって認識されるだろう。
【0036】
使用において、本組成物は電子装置基板上に配置される。様々な電子装置基板を本発明において使用することができ、マルチチップモジュール等のパッケージング基板;平面パネルディスプレー基板;集積回路基板、発光ダイオード(LED)用の基板、半導体ウェーハ、多結晶シリコン基板および同種のもの等である。かかる基板は、典型的には、1つまたは複数のシリコン、ポリシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコンゲルマニウム、砒化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン−タングステン、ニッケル、銅および金からなる。好適な基板は、ウエハ(集積回路、光学センサー、平面パネルディスプレー、光集積回路およびLEDの製造において使用されるもの等)の形態であり得る。本明細書において使用される時、「半導体ウエハ」という用語は、「電子デバイス基板」、「半導体基板」、「半導体装置」、および様々なレベルの相互連結のための様々なパッケージ(シングルチップウエハ、マルチプルチップウエハ、様々なレベルのためのパッケージ、またははんだ連結を要求する他のアセンブリを含む)を包含することが意図される。ハードマスク層に特に好適な基板は、パターン形成されたウエハ(パターン形成されたシリコンウエハ、パターン形成されたサファイアウエハおよびパターン形成された砒化ガリウムウエハ等)である。かかるウエハは任意の好適なサイズであり得る。より小さな直径およびより大きな直径を有するウエハを本発明に従って好適に用いることができるが、好ましいウエハ直径は200mm〜300mmである。本明細書において使用される時、「半導体基板」という用語には、半導体装置のアクティブポーションまたは作動可能なポーションを含む、1つまたは複数の半導体の層または構造を有する任意の基板が含まれる。「半導体基板」という用語は、バルク半導体材料(単独でまたは他の材料をその上に含むアセンブリでのいずれかの半導体ウエハ、および単独でまたは他の材料を含むアセンブリでのいずれかの半導体材料層)を含むがこれらに限定されない半導体材料を含む、任意の構築物を意味すると定義される。半導体装置とは、少なくとも1つのマイクロ電子装置がバッチ製造されていたかまたはバッチ製造されている半導体基板を指す。
【0037】
本組成物は、任意の好適な手段(スピンコーティング、ドクターブレーディング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、噴霧コーティング、浸漬コーティングおよび同種のもの等)によって電子装置基板上に配置することができる。スピンコーティングが好ましい。典型的なスピンコーティング法において、本組成物を500〜4000rpmの速さで回転している基板へ15〜90秒の期間適用して、基板の有機−金属化合物の所望された層を得る。有機−金属化合物層の高さを、組成物中のパーセンテージ固体に加えて回転スピードの変化によって調整できることは、当業者によって認識されるだろう。
【0038】
理論に束縛されることは意図しないが、表面処理剤は、本組成物の堆積の間におよび/または任意の後続する溶媒除去工程の間に、形成されているフィルムの表面に向かって移動すると考えられている。表面処理剤の比較的低い表面エネルギーは空気境界への表面処理剤の駆動を支援すると考えられている。オキシ金属ハードマスクフィルムの完全な硬化の前に表面処理剤のかかる移動が実質的に起こるべきことは当業者によって認識されるだろう。硬化したオキシ金属ハードマスクフィルムの形成は実質的に表面処理剤の移動を妨げる。
【0039】
基板上に本組成物が堆積して有機−金属化合物層を形成する間にまたはその後に、任意で層を比較的低い温度でベークして、有機−金属化合物層から任意の残りの溶媒および他の比較的揮発性の成分を除去する。典型的には、基板は、≦125℃、好ましくは60〜125℃、およびより好ましくは90〜115℃の温度でベークされる。ベーク時間は、典型的には10秒〜10分、好ましくは30秒〜5分、およびより好ましくは6〜180秒である。基板がウエハである場合、かかるベーク工程はホットプレート上でのウエハの加熱によって実行することができる。
【0040】
溶媒を除去する任意のベーク工程に続いて、有機−金属化合物層は酸素含有雰囲気(空気)中等で、硬化される。オーブン硬化を使用して等価な結果を得ることができるが、硬化工程は好ましくはホットプレートスタイルの機器上で行われる。典型的には、かかる硬化は、≧150℃、および好ましくは150〜310℃の硬化温度で有機−金属化合物層を加熱することによって実行される。硬化温度は≧200〜310℃であることがより好ましく、さらにより好ましくは≧250〜310℃、およびなおより好ましくは250〜300℃である。最終的な硬化温度の選択は所望される硬化速度に主に依存し、より高い硬化温度はより短い硬化時間を要求する。表面処理剤が有機−金属化合物層の表面に存在するので、有機−金属化合物層を硬化させるのに使用される温度は、表面処理剤が実質的に分解しないように選択されるべきである。より高い硬化温度が要求されるならば、熱的により安定な表面処理剤(ヒドロキシスチレンポリマーおよび多面体オリゴシルセスキオキサンポリマー等のビニルアリールポリマー等)を使用することができる。典型的には、硬化時間は、10秒〜10分、好ましくは30秒〜5分、より好ましくは45秒〜5分、およびさらにより好ましくは60〜180秒である。この硬化工程は、(−M−O−)
nリンケージ(式中、n>1、好ましくはn>2、より好ましくはn>5、なおより好ましくはn>10、およびさらにより好ましくはn>25)を有するオキシ金属ドメインを含有するハードマスク層が得られるように、有機−金属化合物の少なくとも一部を熱分解するために実行される。典型的には、硬化オキシ金属ドメイン含有フィルム中の金属の量は、95mol%まで(またはさらに高い)、および好ましくは50〜95mol%であり得る。本組成物から形成されたハードマスク層はオキシ金属ドメインを含有し、他のドメイン(金属窒化物ドメイン等)を含有し、加えて任意で炭素(5molまでの%炭素量)を含有することができる。
【0041】
理論に束縛されることは意図しないが、この硬化工程の結果として、任意の保護ヒドロキシル基および/または保護カルボキシル基が切断されて、表面活性部分としてそれぞれのヒドロキシル基およびカルボキシル基を形成することができると考えられている。本組成物がオプションのTAGを含む場合、TAGを活性化し、酸を生成するのに十分な温度まで、有機−金属化合物層を加熱すべきである。この加熱工程は、酸を生成すること、および生成された酸の存在下において任意の表面活性部分(カルボキシルおよび/またはヒドロキシル)を脱保護することの両方に加えて、オキシ金属ハードマスク表面への表面処理剤の任意の結合を促進することに十分であるべきである。典型的には、有機−金属化合物層を硬化さてオキシ金属ハードマスク層を形成するのに使用される温度は、TAGを活性化し、結果として生じる酸を生成するのに十分である。
【0042】
あるいは、PAGが本組成物中で使用される場合、保護ヒドロキシル基および保護カルボキシル基からのヒドロキシル基およびカルボキシル基の遊離を促進するために、有機−金属化合物層を適切な波長の光または電子線へそれぞれ露光して、対応する酸を生成することができる。一旦十分な酸が生成されれば、酸は任意の表面活性部分(カルボキシルおよび/またはヒドロキシル)の脱保護を開始するだろう。かかる露光工程は、有機−金属化合物層を硬化させてオキシ金属ハードマスクフィルムを形成する工程の前、その間、またはその前および間の両方で起こり得る。
【0043】
さらに、オキシ金属ハードマスク層を形成する硬化工程は、表面活性部分をオキシ金属ハードマスクの表面へも結合させ、それによって表面エネルギーおよびしたがって水接触角を修飾すると考えられる。表面処理剤をオキシ金属ハードマスク表面と相互作用(例えば結合)させた後、任意の未反応(または非結合)表面処理剤を、任意で好適な有機溶媒によるリンスによって除去し、好ましくはリンスによって除去する。本組成物の形成のために有用な任意の上記の有機溶媒を、このリンス工程において使用できる。理論に束縛されることは意図しないが、かかるリンス後に、表面処理剤の単層が金属ハードマスク層の表面上にとどまると考えられている。本発明はオキシ金属ハードマスクの形成に関して記載されるが、かかる組成物または類似の組成物は、他のハードマスク材料(シルセスキオキサン含有ハードマスク、金属窒化物ハードマスクおよび窒化ケイ素ハードマスク、または本明細書において記載されるような特性を有する、酸化ケイ素、金属窒化物もしくは窒化ケイ素から主としてなるフィルムを形成する有機金属のポリマー材料のコーティングの熱処理によって形成されたハードマスク等)を形成するのに有用であると考えられている。
【0044】
本組成物の使用は、十分に低い表面エネルギー(静水接触角によって測定されるような)を備えた表面を有するオキシ金属ハードマスク層をもたらし、表面エネルギーを低下させる分離した表面処理工程は必要としない。本組成物は、続いて適用される有機層の表面エネルギーに実質的にマッチする表面エネルギーを有する(すなわち、ハードマスク層の表面エネルギーは、続いて適用される有機層の表面エネルギーの20%、および好ましくは10%内であるべきである)オキシ金属ハードマスク層を提供する。表面エネルギーを直接測定することは多くの場合難しいので、典型的には代理測定(水接触角等)を使用する。水接触角の決定は周知であり、好ましい方法は、脱イオン化(DI)水および2.5μL液滴サイズを使用するKruss液滴形状分析器モデル100の使用を使用する。(−M−O−)
nリンケージ(式中、Mは金属であり、n>1である)を備えた多数の無機ドメインを有する従来のオキシ金属ハードマスク層は、典型的には、<50°(35〜45°等)の水接触角を有する。典型的には、本発明のオキシ金属ハードマスク層は≧55および好ましくは≧60の水接触角を有する。本組成物のフィルムを全面的に硬化して、比較的低い表面エネルギーを有する(≧55°の静水接触角を有する等)オキシ金属ハードマスク層を形成する。好ましくは、オキシ金属ハードマスクは、55〜70°、およびより好ましくは60〜70°の静水接触角を有する。
【0045】
あるいは、本組成物のフィルムをパターン形成硬化して、比較的より低い表面エネルギーの領域(≧55°の静的水接触角を有する領域等)および比較的より高い表面エネルギーの領域(≦50°の静水接触角を有する領域等)のパターンを有するオキシ金属ハードマスク層を形成する。異なる表面エネルギーの領域を有するパターン形成された表面が形成される場合、比較的より低い表面エネルギーの第1の領域は55〜70°の水接触角を有し、比較的より高い表面エネルギーの第2の領域は25〜50°の水接触角を有することが好ましい。より好ましくは、第1の領域は60〜70°の水接触角を有する。なおより好ましくは、第2の領域は30〜50°、およびさらにより好ましくは30〜45°の水接触角を有する。オキシ金属ハードマスク表面は複数の第1の領域および第2の領域を有することができる。
【0046】
したがって、本発明は、基板を提供することと;有機−金属化合物と;20〜40erg/cm
2の表面エネルギーを有し、保護ヒドロキシル、保護カルボキシルおよびそれらの混合物から選択される表面処理部分を含む、表面処理剤と;溶媒とを含む組成物のフィルムを基板の表面上にコーティングすることと;フィルムの表面へ表面処理剤を移動させることと;フィルムを硬化させて、異なる表面エネルギーの領域を含むパターン形成された表面を有するオキシ金属ハードマスク層を形成することとを含む、パターン形成されたオキシ金属ハードマスクを形成する方法を提供する。静水接触角によって測定されるように、かかるパターン形成されたオキシ金属ハードマスク層は、比較的より低い表面エネルギーの第1の領域および比較的より高い表面エネルギーの第2の領域を有する。異なる表面エネルギーのかかる領域は、表面処理剤の表面活性部分とオキシ金属ハードマスク表面のエリアを選択的に相互作用(または結合)させ、一方、ハードマスク表面の他のエリアと表面処理剤は相互作用(または結合)しないことによって得ることができる。例えば、電子線を使用してハードマスク表面の特定の領域中の表面活性部分を脱保護することができ、その後、かかる領域は、電子線へ露光されないハードマスクフィルムの領域と比較して、比較的より低い表面エネルギーを有するだろう。同様に、レーザーを使用してハードマスク表面の特定の領域を選択的に加熱してそれらの領域中の表面活性部分を脱保護することができ、その後、かかる領域は、レーザーへ露光されないハードマスクフィルムの領域と比較して、比較的より低い表面エネルギーを有するだろう。同様に、PAGが本組成物中で使用される場合、適切なパターン形成された化学線照射へのハードマスク表面の露光は、光へ露光されたエリアにおける酸形成をもたらすだろう。脱保護された表面活性部分をオキシ金属ハードマスク表面へ相互作用(または結合)させる加熱工程、および任意でリンス工程に続いて、比較的より低い表面エネルギーの領域(光へ露光された領域中)、および比較的より高い表面エネルギーを有する領域(光へ露光されない領域中)を有するオキシ金属ハードマスクが得られる。
【0047】
1つの適用において、オキシ金属ハードマスク層は、典型的には、エッチング選択性を提供し、特に電子装置の製造において、下層反射防止コーティング(BARC)スタックの一部として使用される。金属ハードマスク層は、典型的には(−M−O−)
nリンケージ(式中、Mは3族〜14族の金属であり、nは>1の整数である)を有する多数の無機ドメインを含む。異なる金属の混合物を使用してハードマスク層を調製することができる。好ましくは、Mは、1つまたは複数の4、5、6および13族から、ならびにより好ましくは4、5および6族から選択された金属である。Mは、1つまたは複数のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、およびアルミニウムから選択されることが好ましく、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、タンタルおよびモリブデンであり、さらにより好ましくは、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンおよびタンタルである。好ましくは、n>2、より好ましくはn>5、およびなおより好ましくはn>10である。ハードマスク層はフィルムを硬化させて金属−酸素ドメインのネットワークを提供することによって典型的には調製されるので、nの値に対する実際的な上限はない。ハードマスク層は、−M−OH、−M−O−C−または−M−O−X−リンケージ(式中、Mは上で定義された通りであり、XはH、CまたはM以外の元素であり得る)を有する少数のドメインも含むことができる。
【0048】
1つの適用において、オキシ金属ハードマスク層が全面的に硬化される(すなわちパターン形成されていない)等の場合、有機コーティング層はオキシ金属ハードマスク表面上に残される。好適な有機層は、反射防止コーティング、フォトレジスト、誘電体コーティング、永久接着剤、一時的接着剤および同種のものを限定されずに含む。好ましくは、後続する有機コーティング層は、1つまたは複数の反射防止コーティング、フォトレジストおよび誘電体コーティングから、ならびにより好ましくは反射防止コーティングおよびフォトレジストから選択される。典型的には、フォトレジスト層は60〜70°の水接触角を有する。好適な有機コーティングの任意の種類を、任意の好適な方法(本組成物の堆積のための上記のもの等)によって、オキシ金属ハードマスク層へ適用することができる。スピンコーティングは好ましい方法である。例示的な反射防止コーティングには、ARC(商標)ブランド下のBrewer Scienceから入手可能なもの、およびAR(商標)ブランド下のDow Electronic Materials(Marlborough、Massachusetts)から入手可能なもの(AR137反射防止剤等)が含まれる。幅広い種類のフォトレジストが好適であり、例えば193nmリソグラフィーにおいて使用されるもの(Dow Electronic Materialsから入手可能なEPICブランド下で販売されるもの等)である。好適なフォトレジストはポジティブトーン現像レジストまたはネガティブトーン現像レジストのいずれかであり得る。1つの好ましい実施形態において、フォトレジスト層は処理されたハードマスク層上に配置される。第2の好ましい実施形態において、反射防止コーティング層は処理されたハードマスク層上に配置され、フォトレジスト層は反射防止コーティング層上に配置される。処理されたハードマスク層上のコーティングに続いて、有機コーティング層に後続する加工を行なうことができる。例えば、フォトレジスト層は次いでパターン形成された化学線照射を使用してイメージング(露光)され、次いで露光されたフォトレジスト層を適切な現像液を使用して現像してパターン形成されたフォトレジスト層を提供する。パターンは、次に、当該技術分野において公知の適切なエッチング技法によって(プラズマエッチング等によって)、フォトレジスト層から下にあるハードマスク層および基板へ移される。エッチングに続いて、フォトレジスト層、任意の存在する反射防止コーティング材料層、およびハードマスク層は、従来の技法を使用して除去される。次いで電子装置基板は従来の手段に従って加工される。
【0049】
もう一つの適用において、パターン形成されたオキシ金属ハードマスク層を使用してその後に適用される有機材料をパターン化することができる。例えば、従来の193nmフォトレジストまたは有機反射防止コーティングが、比較的より低い表面エネルギー(60〜65°の水接触角を有する等)の第1の領域、および比較的より高い表面エネルギー(≦40°等)の第2の領域を含有するオキシ金属ハードマスク上に配置される場合、フォトレジストまたは有機反射防止コーティングは、第1の領域に優先的に揃うだろう。あるいは、かかるパターン形成されたオキシ金属ハードマスクを使用して、その後に適用される有機材料(誘導自己組織化プロセスにおいて使用されるブロックコポリマー等)を配列することができる。かかるブロックコポリマーは、類似していないモノマーの少なくとも2つの領域(またはブロック)を含有する。1つのブロックが、オキシ金属ハードマスク表面の領域の1つの表面エネルギーに実質的にマッチする表面エネルギーを有するように、これらのブロックコポリマーを選択することができる。結果として、ブロックコポリマーはハードマスク表面上のパターンに自然に揃うだろう。パターン形成されたオキシ金属ハードマスク層上のかかるパターンの有機材料を使用して、多様な電子装置を生産することができる。
【0050】
実施例1:保護カルボン酸表面処理ポリマー(90/10のnBMA/tBA)を以下のように調製した。モノマー/開始剤供給溶液は、53.99gのn−ブチルメタクリレート(nBMA)、6.01gのtert−ブチルアクリレート(tBA)および30.02gの2−メチル−1−ブタノールをガラスバイアルへ添加することによって調製された。バイアルを穏やかに振盪してその含有物を混合し、次いで氷浴中に設置して氷浴により温度平衡を達成する。次に、1.80gのジメチル2,2’−アゾビス(2−プロピオン酸メチル)開始剤(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.から商品名V−106下で入手可能)を、バイアルへ添加し、続いて振盪して開始剤を完全に溶解した。次いでバイアルを必要とされるまで氷浴中に戻した。
【0051】
磁性撹拌子を含有し、サーモカップル、冷却水循環のないコンデンサー、およびモノマー/開始剤供給ラインを装備した250mLの三つ首丸底フラスコを、加熱マントル中にセットアップした。加熱マントルはサーモカップルを介する熱制御によって制御された。2−メチル−1−ブタノール(60g)をフラスコへ添加し、適切な撹拌により温度を99℃まで導いた。モノマー/開始剤溶液をHamiltonのデュアルシリンジポンプを使用して250μL/13sec.の率でフラスコへ供給し、その間撹拌しながらリアクター温度を99℃で維持した。モノマー/開始剤溶液の添加の完了に際して、フラスコを99℃で追加の2時間維持した。次いで熱を除去し、反応混合物(ポリマー溶液)を室温まで冷却させた。次いでポリマー溶液はさらなる精製なしにそのままで使用された。nBMA/tBAの重量比は90/10であった。
【0052】
ポリマー溶液中のポリマー含有量は、ca.110℃で熱オーブン中でca.15min.間、重量損失法を使用して決定された。この試験において、0.093gのポリマー溶液は、風袋重量が前もって決定されたアルミニウムパンの中で秤量された。ポリマー含有量は38.0%であることが見出された。
【0053】
実施例2:モノマー/開始剤供給溶液が、53.99gのb−ブチルメタクリレート(nBMA)、6.01gの2,3,3−トリメチル−3−ブチルアクリレート(233tMBA)および30.01gの2−メチル−1−ブタノールを使用して調製されたこと以外は、実施例1の手順に従って、保護カルボン酸表面処理ポリマー(90/10のnBMA/233tMBA)を調製した。結果として生じるポリマー溶液中のポリマー含有量は37.2%であることが見出された。
【0054】
実施例3:モノマー/開始剤供給溶液が、58.2gのn−ブチルメタクリレート(nBMA)、1.878gのヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)および30.00gの2−メチル−1−ブタノールを使用して調製されたこと以外は、実施例1の手順に従って、ヒドロキシル基含有表面処理ポリマー(97/3のnBMA/HEMA)を調製した。結果として生じるポリマー溶液中のポリマー含有量は37.5%であることが見出された。
【0055】
実施例4:表面処理ポリマーは、表1中に示されるモノマーおよび量を使用して、実質的に実施例1の手順に従って調製される。表1中の略称は以下の意味を有する。nBA=n−ブチルアクリレート;tBA=第3級ブチルアクリレート;tBMA=tert−ブチルメタクリレート;EHA=エチルヘキシルアクリレート;HMA=ヘキシルメタクリレート;HEMA=ヒドロキシエチルメタクリレート;HPMA=ヒドロキシプロピルメタクリレート;233tMBA==2,3,3−トリメチル−3−ブチルアクリレート;およびDMBMA=2,3−ジメチル−2−ブチルメタクリレート。
【表1】
【0056】
実施例5−Hf(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマーの調製。500mLの三つ首フラスコは、還流コンデンサー、機械的スターラーおよび添加漏斗を装備していた。このリアクターへ、100g(0.21mol)のHf(OBu)
4(Gelest Inc.から入手可能)を添加した。この強く撹拌された材料へ、ペンタン−2,4−ジオン(42.5g、0.42mol)を非常にゆっくりと6時間にわたって添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応の間に生産されたN−ブタノールを真空下で除去し、次いで800mLの酢酸エチルを添加し、反応フラスコを室温で30min.間強く撹拌した。この溶液は任意の不溶性産物を除去する細かいフリットを介して濾過した。残りの溶媒を真空下で除去し、淡白色固体を得た(100.4g、90%の収率)。この産物(Hf(OBu)
2(acac)
2)をさらなる精製なしに使用した。
【0057】
還流コンデンサー、撹拌子および熱メーターを装備した1Lの三つ首フラスコへ、上記の産物(100.4g、0.19mol)およびエチレンジグリコール(19.4g、0.18mol)の酢酸エチル(500mL)溶液を添加した。反応混合物を80℃で24時間還流した。反応混合物を細かいフリットを介して濾過し、次いで真空下で乾燥した。茶色〜白色の固体をヘプタン(3×1L)により洗浄し、次いで2時間強真空下で乾燥し、所望されるHf(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマー(Hf BuO−アセチルDEG)を白色紛体(67g)として得た。得られた産物は以下の構造を有していた。
【化7】
【0058】
実施例6−Ti(OR)アセチル−ジエチレングリコール(Ti OR−アセチルDEG)コポリマーの調製。Dean−Starkトラップを装備したフラスコへ、50gのTi(OR)
2(acac)
2(R=エチルまたはイソプロピル、Tyzor AA−105、DuPontから入手可能)および等モル量のジエチレングリコールを室温で添加した。混合物を125℃まで加熱し、1〜2日間撹拌し、蒸留液を回収した。次いで混合物を冷却し、ヘプタン(500mL)中でクエンチした。生じた沈殿物を回収し、真空中で乾燥して、以下の式で示される構造を有する35gの所望の産物を得た。
【化8】
【0059】
実施例7−Zr(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマーの調製。トルエン/ブタノール中の25wt%のジルコニウムビス(アセチルアセトン)−ビス(n−ブトキシド(またはZr(acac)
2(OBu)
2)をGelest Inc.から得て、さらなる精製なしに使用した。200gのZr(acac)
2(OBu)
2から溶媒を除去し、残留物を250mLの酢酸エチルにより希釈した。この混合物へ、等モル量のジエチレングリコールを室温で添加し、次いで混合物を80℃で18時間還流した。次に、反応混合物を冷却し、濾過して白色沈殿物を除去した。回転蒸発装置を使用して濾液を小体積へ濃縮し、残留物をヘプタン中でクエンチした。次いで沈殿物を回収し、真空中で乾燥して、20.8gのZr(OBu)アセチル−ジエチレングリコールコポリマー(Zr BuO−アセチルDEG)を所望の産物として得、その構造は以下の式によって示される。
【化9】
【0060】
実施例8:実施例5からのHf BuO−アセチルDEGおよび実施例1からの様々な量のnBMA/tBA表面処理ポリマーを、表2中で示される量で混合溶媒系中で組み合わせることによって、ハードマスク組成物を調製した。対照サンプルは表面処理ポリマーを含有していなかった。サンプル1〜3中の表面処理ポリマーの量は、サンプル中のHf BuO−アセチルDEGの量に基づいて、それぞれ0.5%、1.0%および1.5%であった。各サンプルを0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターにより3〜4回濾過し、その後ベアシリコンウエハ上に1500rpmでコーティングし、続いて280℃で60sec.間ベークした。次いで、硬化したオキシ金属ハードマスクフィルムの静水静的接触角は、DI水および2.5μL液滴サイズを使用するKruss液滴形状分析器モデル100を使用して、有意な遅延なしに測定された。水接触角は表2中で報告される。
【表2】
【0061】
サンプル中の表面処理ポリマー量の増加により、静水接触角の明らかな増加傾向が観察される。サンプル3から得られたハードマスクフィルム(Hf BuO−アセチルDEG化合物と比較して、1.5%の表面処理ポリマーのローディングを含有していた)は、65°をわずかに超える静水接触角を有し、それはフォトレジストのものに類似していた。
【0062】
実施例9:0.570gの実施例5からのHf BuO−アセチルDEG(未希釈)、0.762gのγ−ブチロラクトンの混合溶媒系中の0.033gの実施例3からの97/3のnBMA/HEMA表面処理ポリマー、および13.662gの2−メチル−1−ブタノールを組み合わせることによって、ハードマスク組成物を調製した。表面処理ポリマーは、使用したHf BuO−アセチルDEGの量と比較して2%であった。サンプルを0.2μmのPTFEシリンジフィルターにより濾過し、その後ベアシリコンウエハ上に1500rpmでコーティングし、続いて250℃で90sec.間ベークした。次いで、ウエハをコンベンショナルなFAB(クリーンルーム)雰囲気下で12時間保存した。次に、ウエハの2分の1をプロピレングリコールメチルエーテルアセテー卜(PGMEA)中に60sec.間沈め、続いてジェットエア乾燥をした。各々のウエハの2分の1の静水接触角を実施例8中の手順に従って測定し、PGMEAと接触しなかったハードマスクフィルムについては61.4°およびPGMEAと接触したハードマスクフィルムについては63.1°であることが見出された。これらの結果は、ハードマスクフィルムの硬化後に、表面処理ポリマーが表面から洗浄されてなくならないことを示す。
【0063】
実施例10:実施例5からのHf BuO−アセチルDEGおよび実施例1〜3からの表面処理ポリマーを、表3中で示される量で混合溶媒系中で組み合わせることによって、ハードマスク組成物を調製した。対照サンプルは表面処理ポリマーを含有していなかった。サンプル4〜6の各々の中の表面処理ポリマーの量は、サンプル中のHf BuO−アセチルDEGの量に基づいて、1.5%であった。各サンプルについての全固体含有量は3%であった。各サンプルを0.2μmのPTFEシリンジフィルターにより3〜4回濾過し、その後ベアシリコンウエハ上に1500rpmでコーティングし、続いて280℃で60sec.間ベークした。次いで、硬化したオキシ金属ハードマスクフィルムの静水静的接触角は、DI水および2.5μL液滴サイズを使用するKruss液滴形状分析器モデル100を使用して、有意な遅延なしに測定され、次いでコンベンショナルなFAB雰囲気中で24時間の保管後に再び測定された。水接触角は表3中で報告される。データーによって示されるように、本組成物から生じたハードマスクフィルムは、対照サンプルと比較して、静水接触角においてはるかにより少ない経時変化を示した。
【表3】
【0064】
実施例11:様々なハードマスク組成物を、様々な有機金属化合物および実施例1〜4の表面処理ポリマーを使用して、表4中で示される量で調製した。表4中の略称は以下の意味を有する。GBL=γ−ブチロラクトン;GVL=γ−バレロラクトン;DPGME=ジプロピレングリコールメチルエーテル;PGME=プロピレングリコールメチルエーテル;(−TSA−TEA=p−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩(熱酸発生剤);およびPnP=プロピレングリコールn−プロピルエーテル。
【表4】
【0065】
実施例12:実施例5からのHf BuO−アセチルDEGおよび表面処理ポリマーとして様々な多面体オリゴシルセスキオキサン(POSS)材料を、表5中で示される量で混合溶媒系中で組み合わせることによって、ハードマスク組成物を調製した。トリシラノールフェニルPOSSは1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオールであり、トリシラノールイソオクチルPOSSは1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン−エンド−3,7,14−トリオールであり、両方ともHybrid Plasticsから入手可能である。
【表5】
【0066】
両方のサンプルを0.2μmのPTFEシリンジフィルターにより複数回濾過し、その後ベアシリコンウエハ上に1500rpmでコーティングし、続いて250または280℃、310℃および350℃の様々な温度で各温度について60sec.間ベークした。2つのウエハを使用された各硬化温度でコーティングし、硬化後に、これらのウエハのうちの1つをPGMEAと接触し、続いて280℃で60sec.間のベーク工程を行なった。すべてのウエハ上の硬化したオキシ金属ハードマスクフィルムの静水静的接触角を、実施例8の手順に従って測定した。水接触角は表6中で報告される。
【表6】