特許第6463615号(P6463615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463615
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】送風作業機
(51)【国際特許分類】
   E01H 1/08 20060101AFI20190128BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20190128BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   E01H1/08 B
   F04D29/58 L
   F04D29/44 W
   F04D29/44 G
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-205028(P2014-205028)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2016-75048(P2016-75048A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】河本 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西原 章太
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−308273(JP,A)
【文献】 特開2003−056408(JP,A)
【文献】 特開平09−209753(JP,A)
【文献】 特開2001−140800(JP,A)
【文献】 特開2002−021641(JP,A)
【文献】 実開昭59−085361(JP,U)
【文献】 特開2010−150935(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0002501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/08
F04D 29/00−29/70
F02M 1/00−21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンケース内に収容されたファンと、前記ファンを回転させるエンジンと、を備え、回転する前記ファンによって生成された空気流を、前記ファンケースの吹出口から排出する送風作業機であって、
前記ファンケースの外側面に対向して前記エンジンおよび気化器が配置され、
前記エンジンが配置される空間と、前記気化器が配置される空間とを仕切る仕切部が設けられており、
前記外側面において、前記気化器が配置される空間に対向する領域には、前記ファンケースの壁部を貫通した通風穴が形成され、
前記通風穴は、前記気化器に向けて開口しており、
前記通風穴の開口縁部には、前記気化器に向けて延ばされたガイド壁が形成されていることを特徴とする送風作業機。
【請求項2】
前記通風穴は、前記気化器を前記外側面に投影したときの投影領域内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風作業機。
【請求項3】
前記通風穴を開閉する蓋部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送風作業機。
【請求項4】
ファンケース内に収容されたファンと、前記ファンを回転させるエンジンと、を備え、回転する前記ファンによって生成された空気流を、前記ファンケースの吹出口から排出する送風作業機であって、
前記ファンケースの外側面に対向して前記エンジンおよび気化器が配置され、
前記エンジンが配置される空間と、前記気化器が配置される空間とを仕切る仕切部が設けられており、
前記外側面において、前記気化器が配置される空間に対向する領域には、前記ファンケースの壁部を貫通した通風穴が形成され、
前記通風穴は、前記気化器に向けて開口し、
前記通風穴を開閉する蓋部材が設けられており、
前記蓋部材は、前記通風穴に着脱自在であり、
前記通風穴の周囲には、前記蓋部材が着脱自在なホルダ部が形成されていることを特徴とする送風作業機。
【請求項5】
前記ファンケースには、
前記ファンが収容される収容空間と、
前記収容空間の外周に沿って形成され、内周側が前記収容空間に連通している導風路と、が形成されており、
前記通風穴は、前記収容空間に連通していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送風作業機。
【請求項6】
前記仕切部は、前記エンジンを覆っているエンジンカバーであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の送風作業機。
【請求項7】
前記気化器が配置される空間は、外部空間に開放されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の送風作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気流を排出する送風作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
地面に堆積した枯葉や小枝等の対象物を吹き飛ばして清掃するための携帯型の送風作業機(ブロワ)は、ファンケース内に収容されたファンと、ファンを回転させるエンジンと、を備えている。前記した送風作業機では、回転するファンによって生成された空気流を、ファンケースの吹出口に連結された吹出パイプから排出するように構成されている。
【0003】
前記した送風作業機では、冬季に外気温度が低い環境で使用したときに、燃料の気化熱によって、気化器内の通気路を通過する空気中の水分が凍結してしまうアイシングが生じる場合がある。
そこで、送風作業機などに搭載される駆動装置としては、エンジンを冷却するための送風を、エンジン側の空間から気化器の周囲に送ることで、気化器を暖めるように構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4532032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の駆動装置では、エンジンの周囲を通過した後の送風は温度が非常に高くなるため、気化器の温度が上昇し過ぎて、混合気が適正に生成されず、駆動状態が安定しない場合がある。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決し、外気温度が低い環境において気化器のアイシングを防ぐとともに、気化器の温度上昇を抑制することができる送風作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第一の発明は、ファンケース内に収容されたファンと、前記ファンを回転させるエンジンと、を備え、回転する前記ファンによって生成された空気流を、前記ファンケースの吹出口から排出する送風作業機である。前記ファンケースの外側面に対向して前記エンジンおよび気化器が配置され、前記エンジンが配置される空間と、前記気化器が配置される空間とを仕切る仕切部が設けられている。前記外側面において、前記気化器が配置される空間に対向する領域には、前記ファンケースの壁部を貫通した通風穴が形成され、前記通風穴は、前記気化器に向けて開口しており、前記通風穴の開口縁部には、前記気化器に向けて延ばされたガイド壁が形成されている。
前記課題を解決するため、第二の発明は、ファンケース内に収容されたファンと、前記ファンを回転させるエンジンと、を備え、回転する前記ファンによって生成された空気流を、前記ファンケースの吹出口から排出する送風作業機である。前記ファンケースの外側面に対向して前記エンジンおよび気化器が配置され、前記エンジンが配置される空間と、前記気化器が配置される空間とを仕切る仕切部が設けられている。前記外側面において、前記気化器が配置される空間に対向する領域には、前記ファンケースの壁部を貫通した通風穴が形成され、前記通風穴は、前記気化器に向けて開口している。前記通風穴を開閉する蓋部材が設けられており、前記蓋部材は、前記通風穴に着脱自在であり、前記通風穴の周囲には、前記蓋部材が着脱自在なホルダ部が形成されている。
【0008】
この構成では、ファンの回転によりファンケース内で加圧された空気が通風穴から気化器に向けて排出されるように、通風穴が気化器に向けて開口している。送風作業機のファンケース内で空気が加圧されると、外気よりも温度が5℃程度高くなるため、この温風を利用して気化器のアイシングを防ぐことができる。
また、ファンケース内で加圧された空気は、エンジン側の空間の空気に比べて、温度が過度に上昇しないとともに、エンジン側の空間の空気が仕切部に遮られて、気化器の周囲に流入しないように構成されている。したがって、気化器の過度な温度上昇を抑制し、気化器において混合気を適正に生成することができる。
また、気化器の可動部分に堆積した塵や埃を通風穴から排出された空気によって除去することができる。
なお、本発明は、通風穴がパイプや周壁を介して気化器に向けて開口している構成を含んでいる。
【0009】
前記した送風作業機において、前記通風穴は前記気化器を前記外側面に投影したときの投影領域内に形成することが望ましい。
また、前記した送風作業機において、前記通風穴の開口縁部に、前記気化器に向けて延びているガイド壁を形成し構成では、ファンケース内の空気を通風穴から気化器に対して確実に吹き付けることができる。
さらに、通風穴を気化器内の通気路と略同じ高さに形成した場合には、ファンケース内の空気が気化器内の通気路の壁部に吹き付けられるため、気化器のアイシングをより効果的に防ぐことができる。
【0010】
前記した送風作業機において、前記通風穴を開閉する蓋部材を設けた場合には、蓋部材によって通風穴を塞ぐことで、外気温度が高い環境において、気化器の温度が上昇し過ぎるのを防ぐことができる。
【0011】
前記した送風作業機において、前記蓋部材が前記通風穴に着脱自在であ、前記通風穴の周囲に、前記蓋部材が着脱自在なホルダ部を形成した構成では、通風穴から蓋部材を取り外したときに、蓋部材をホルダ部に取り付けることで、蓋部材が紛失するのを防ぐことができる。
【0012】
前記した送風作業機において、前記ファンケースには、前記ファンが収容される収容空間と、前記収容空間の外周に沿って形成され、内周側が前記収容空間に連通している導風路と、が形成されている。この場合には、前記通風穴を前記収容空間に連通させることが望ましい。
【0013】
この構成では、導風路を通過する空気流および送風する空気量に影響を与えることなく、ファンケース内の空気を通風穴から排出させることができる。したがって、送風作業機の送風性能を低下させることなく、気化器のアイシングを防ぐことができる。
また、収容空間内の空気流は、導風路内の空気流に比べて圧力が低く、通風穴から排出される空気の流速が上昇し難くなるため、空気が通風穴を通過するときに生じる音を小さくすることができる。
【0014】
前記した送風作業機において、前記仕切部は、前記エンジンを覆っているエンジンカバーである場合には、エンジンが配置される空間と、気化器が配置される空間とを確実に仕切ることができる。
【0015】
前記した送風作業機において、前記気化器が配置される空間を外部空間に開放させることで、温風が気化器の周囲で再循環するのを防ぐことができるため、気化器の温度上昇を抑制することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の送風作業機では、外気温度が低い環境において気化器のアイシングを防ぐとともに、気化器の過度な温度上昇を抑制し、気化器内で混合気の生成(燃料の霧化)が適正に行われ、気化器を適正に作動させることができるため、使用時に外気温度の影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る送風作業機の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る送風作業機を示した図1のA−A断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る送風作業機を示した図1のB−B断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る送風作業機において、通風穴を開いた状態を示した図で、(a)は正面図、(b)はC−C断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る送風作業機において、通風穴を閉じた状態を示した図で、(a)は正面図、(b)はD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明において、前後左右方向とは各図に示した方向である。この各方向は、送風作業機の構造を説明する上で便宜上設定したものであり、本発明の送風作業機の構造を特定するものではない。
【0019】
図1に示す本実施形態の送風作業機1は、背負いフレーム(図示せず)に搭載されることで、作業者が背負った状態で搬送可能となっている。そして、作業者は、ファンケース30に連結された吹出パイプ37に連設された吐出パイプ(図示せず)から高速の空気流を地面に向けて排出させることで、枯葉や小枝等の対象物を吹き飛ばして清掃することができる。
【0020】
送風作業機1は、図2に示すように、ファンケース30内に収容されたファン10と、ファン10を回転させるエンジン20と、を備えている。
この送風作業機1では、ファン10をファンケース30内で回転させることで、ファンケース30内に高速の空気流を生成することができる。
そして、送風作業機1は、図1に示すように、ファンケース30内に生成された空気流を、ファンケース30に連結された吹出パイプ37および吐出パイプ(図示せず)を通じて外部に排出するように構成されている。
【0021】
エンジン20は、図2に示すように、シリンダ21aが形成されたシリンダブロック21を有する内燃機関である。シリンダブロック21の下方には、燃料タンク22が設けられている。
シリンダブロック21の下部から前側に向けて回転軸21cが突出している。回転軸21cは、エンジン20のクランクシャフトであり、シリンダ21a内のピストン21bの上下運動が回転軸21cの回転運動に変換される。
また、エンジン20には、樹脂製のエンジンカバー24(特許請求の範囲における「仕切部」)が被せられており、エンジン20はエンジンカバー24に覆われている。すなわち、エンジン20は、エンジンカバー24によって囲まれた空間に配置されている。
【0022】
図1に示すように、シリンダブロック21の上部の左側面には、シリンダ21a(図2参照)内に混合気を供給する気化器50が取り付けられている。
燃料タンク22からポンプ(図示せず)によって吸い上げられた燃料は、気化器50の通気路51(図3参照)で空気と混合し、その混合気がシリンダ21a(図2参照)内に供給される。
【0023】
気化器50の左側面には、エアクリーナ60が取り付けられている。エアクリーナ60を通過した空気が気化器50に供給される。エアクリーナ60には、樹脂製のエアクリーナカバー61が被せられている。
【0024】
本実施形態では、エンジンカバー24とエアクリーナカバー61との間に気化器50が配置されており、気化器50は外部空間に露出している。すなわち、気化器50が配置された空間は、外部空間に開放されている。
気化器50は、エンジンカバー24の左側壁に形成された開口部(図示せず)を通じて、シリンダブロック21に連結されている。なお、エンジンカバー24内には、気化器50とシリンダブロック21との間の隙間を塞ぐガスケット40が設けられている。
【0025】
ファン10は、図2に示すように、エンジン20の前側に配置された回転翼であり、回転軸21cの先端部に取り付けられており、回転軸21cの回転に連動して回転する。
ファン10は、円盤状の取付部11と、取付部11の外周部に形成された複数の羽根12と、を備え、取付部11の中心部に回転軸21cの先端部が取り付けられている。
【0026】
ファンケース30は、前側に配置された円板状の前壁部31と、後側に配置された円板状の後壁部32と、前壁部31および後壁部32の外周縁部に沿って形成された周壁部33と、が設けられた樹脂製の箱体である。前壁部31の中央部には吸気口31aが開口している。
本実施形態のファンケース30は、前側の部位(前壁部31側の部位)と、後側の部位(後壁部32側の部位)とが分割可能に構成されている。
【0027】
ファンケース30の前壁部31と後壁部32との間には、ファン10が収容される収容空間34が形成されている。
後壁部32は、エンジン20の前方に配置されており、シリンダブロック21に対してボルト等の締結部材によって固定されている。図2に示すように、後壁部32の後側面32a(特許請求の範囲における「外側面」)は、エンジン20および気化器50に対向している。
【0028】
また、後壁部32の中央部には円形の挿通穴32bが貫通している。挿通穴32bには回転軸21cが挿通されており、回転軸21cの先端部は収容空間34内に突出している。そして、収容空間34内において回転軸21cの先端部にファン10が取り付けられている。
【0029】
周壁部33の内部には、導風路35が形成されている。導風路35は、収容空間34の外周に沿って形成されており、内周側が収容空間34に連通している。
図1に示すように、周壁部33の前部には、斜め下方に向けて突出した円筒状の吹出口36が形成されている。吹出口36は導風路35(図2参照)に連通している。また、吹出口36は、円筒状の吹出パイプ37の基端部が内嵌される部位である
【0030】
前記した送風作業機1では、図2に示すように、エンジン20によってファンケース30の収容空間34内でファン10が回転すると、ファンケース30内に高速の空気流が生成されるとともに、吸気口31aから収容空間34内に空気が吸気される。
ファンケース30内の空気流は、導風路35を流れて吹出口36から吹出パイプ37(図1参照)内に導入され、吹出パイプ37の先端部から外部に排出される。
【0031】
本実施形態では、図1に示すように、エンジン20が配置される空間と、気化器50が配置される空間とがエンジンカバー24によって仕切られている。
そして、ファンケース30の後側面32aにおいて、気化器50が配置される空間に対向する領域Sには、後壁部32を貫通した通風穴38が形成されている(図3参照)。すなわち、後側面32aにおいて、エンジンカバー24よりも気化器50側(左側)に通風穴38が形成されている。
【0032】
通風穴38は、周壁部33よりも内側で平坦な後壁部32に形成されており、収容空間34に連通している。
通風穴38は、図4(a)に示すように、左右方向に延びている長穴であり、左端部が右端部よりも上方に配置されるように傾斜している。
【0033】
通風穴38は、気化器50に対向する位置に形成されている。具体的には、通風穴38は、気化器50を後側面32aに投影したときの投影領域内に形成されており、ファンケース30を前方から見たときに、気化器50と通風穴38とが重なるように配置されている。
なお、気化器50内には、図3に示すように、混合気が通過する通気路51が形成されている。そして、通風穴38は、通気路51を後側面32aに投影したときの投影領域内に形成されている。
【0034】
通風穴38において、後側の開口縁部には、図4(a)および(b)に示すように、気化器50に向けて前方に延ばされた筒状のガイド壁38aが突設されている。
本実施形態では、ガイド壁38aの突出量を小さくすることで、ガイド壁38aが気化器50に接触しないように構成されている。
【0035】
本実施形態の送風作業機1では、通風穴38を開閉する蓋部材70が設けられている。蓋部材70は、ガイド壁38aに着脱自在なゴム製の部材であり、図5(b)に示すように、ガイド壁38aの後側の開口部を閉塞する平板状の閉塞部71と、ガイド壁38a内に差し込まれる差込部72とが形成されている。閉塞部71は、図5(a)に示すように、長円形状に形成されており、ガイド壁38aの後端縁部よりも僅かに大きく形成されている。
【0036】
ガイド壁38aの後側の開口縁部には、図5(b)に示すように、内側に突出した突起部38bが形成されている。この突起部38bに差込部72が係止されることで、ガイド壁38aに対する蓋部材70の抜け止めが形成されている。
【0037】
図5(a)に示すように、蓋部材70の閉塞部71の外周縁部には、摘み部73が突出している。蓋部材70は、摘み部73が上側に配置されるようにして、ガイド壁38aに取り付けられる。
ガイド壁38aから蓋部材70を取り外すときには、使用者が摘み部73を指で摘むことで、ガイド壁38aから蓋部材70を取り外し易くなっている。
【0038】
また、蓋部材70の閉塞部71の外周縁部から紐74が延びている。紐74の先端部は、後側面32aにおいてエンジンカバー24に連結される部位に取り付けられている。紐74は、蓋部材70をガイド壁38aから取り外したときに、蓋部材70の落下および紛失を防止するものである。
【0039】
後側面32aにおいて、ガイド壁38a(通風穴38)の上方には、蓋部材70が着脱自在なホルダ部39が形成されている。
ホルダ部39は、ガイド壁38aと同様に、周壁部33と一体に形成されている。図4(b)に示すように、ホルダ部39に蓋部材70の差込部72を差し込むことで、ホルダ部39に蓋部材70を取り付けることができる。なお、ホルダ部39に蓋部材70の差込部72を差し込んだときに、差込部72がファンケース30内に突出しないように構成することが望ましい。
【0040】
以上のような送風作業機1では、図3に示すように、ファン10の回転によりファンケース30内で加圧された空気が通風穴38から気化器50に向けて排出される。このとき、ファンケース30内の空気は、ガイド壁38aによって通風穴38から気化器50に向けて案内されるため、ファンケース30内の空気を気化器50に対して確実に吹き付けることができる。
そして、ファンケース30内で空気が加圧されると、外気よりも温度が5℃程度高くなるため、送風作業機1を外気温度が低い環境で使用するときに、通風穴38から排出された温風を利用して、気化器50のアイシングを防ぐことができる。
【0041】
本実施形態の送風作業機1では、通風穴38は収容空間34に連通しているため、導風路35を通過する空気流および送風する空気量に影響を与えることなく、ファンケース30内の空気を通風穴38から排出させることができる。したがって、送風作業機1の送風性能を低下させることなく、気化器50のアイシングを防ぐことができる。
特に、本実施形態では、気化器50の通気路51の後面の壁部にファンケース30内の空気が吹き付けられるため、アイシングが発生する部位の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、収容空間34内の空気流は、導風路35内の空気流に比べて圧力が低く、通風穴38の開口幅が狭くても、通風穴38から排出される空気の流速が上昇し難くなるため、空気が通風穴38を通過するときに生じる音を小さくすることができる。
【0043】
なお、ファンケース30内で加圧された空気は、エンジン20の周囲を通過した後の送風に比べて、温度が過度に上昇しないとともに、エンジン20側の空間の空気は、エンジンカバー24に遮られて、気化器50の周囲に流入しないため、気化器50の過度な温度上昇を抑制し、様々な環境下において気化器50が適正に混合気を生成することができる。
【0044】
また、気化器50の可動部分に堆積した塵や埃を通風穴38から排出された空気によって除去することができる。
【0045】
さらに、本実施形態の送風作業機1では、図5(a)および(b)に示すように、通風穴38を開閉する蓋部材70が設けられている。そして、外気温度が高い環境(例えば、外気温度が40℃程度)では、蓋部材70をガイド壁38aに取り付けて通風穴38を塞ぐことで、気化器50の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0046】
また、図4(a)および(b)に示すように、ガイド壁38aから蓋部材70を取り外したときには、蓋部材70を通風穴38の上方に配置されたホルダ部39に装着することで、蓋部材70が紛失するのを防ぐことができる。
【0047】
なお、通風穴38は、図4(a)に示すように、気化器50の通気路51(図3参照)に沿って左右方向に延びつつ、左端部が右端部よりも上方に配置されるように傾斜している。したがって、通風穴38は、気化器50の温度を効果的に上昇させつつ、通風穴38の一端部は、気化器50の上部側に配置されているため、作業者が蓋部材70を着脱し易くなっている。
【0048】
このように、本実施形態の送風作業機1では、図3に示すように、外気温度が低い環境において気化器50のアイシングを防ぐとともに、気化器50の過度な温度上昇を抑制し、気化器50内で混合気の生成(燃料の霧化)が適正に行われ、気化器50を適正に作動させることができる。したがって、送風作業機1の使用時に外気温度の影響を少なくすることができ、様々な環境下で使用することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、図4(a)に示すように、ホルダ部39とガイド壁38aとが同一形状であるが、ホルダ部39は、蓋部材70を取付可能であれば、その形状は限定されるものではない。例えば、上下一対または左右一対の壁部によってホルダ部39を形成し、二つの壁部の間に蓋部材70を挟むように構成してもよい。
【0050】
本実施形態では、通風穴38の開口縁部にガイド壁38aが形成されているが、ガイド壁38aを形成しなくてもよい。また、本実施形態では、ガイド壁38aが周壁に形成されているが、通風穴38から排出された空気を気化器50に向けることができるのであれば、その形状は限定されるものではなく、環状に連続していなくてもよい。
【0051】
本実施形態では、通風穴38の上方にホルダ部39が配置されているが、通風穴38に対するホルダ部39の位置は限定されるものではない。さらに、ホルダ部39をファンケース30以外のエンジンカバー24やエアクリーナ60などの部品に形成してもよい。
【0052】
また、図1に示したエンジンカバー24やエアクリーナ60などのファンケース30に取り付けられた部品を設けなくてもよい。
【0053】
本実施形態では、図5(a)および(b)に示すように、蓋部材70によって通風穴38を塞ぐように構成されているが、蓋部材をスライド開閉式、ヒンジ開閉式およびシャッター開閉式など可動式に構成することで、通風穴38を開閉するように構成してもよい。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、通風穴38は後壁部32に形成されており、通風穴38が収容空間34に連通しているが、通風穴38を周壁部33に形成し、通風穴38を導風路35に連通させてもよい。
【0055】
本実施形態では、図1に示すように、エンジン20が配置される空間と、気化器50が配置される空間とがエンジンカバー24によって仕切られているが、前記した二つの空間を仕切る仕切部の構成は限定されるものではない。例えば、ファンケース30の後側面32aに仕切壁や仕切板を設けることで仕切部を構成してもよい。
【0056】
本実施形態では、図1に示すように、本発明の一例として、背負い式の送風作業機1を説明しているが、作業者が手に持って搬送可能な手持ち式の送風作業機に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 送風作業機
10 ファン
12 羽根
20 エンジン
21 シリンダブロック
21a シリンダ
21b ピストン
21c 回転軸
22 燃料タンク
24 エンジンカバー
24a 左側壁
30 ファンケース
31 前壁部
32 後壁部
32a 後側面
32b 挿通穴
33 周壁部
34 収容空間
35 導風路
38 通風穴
38a ガイド壁
39 ホルダ部
50 気化器
51 通気路
60 エアクリーナ
70 蓋部材
71 閉塞部
72 差込部
73 摘み部
74 紐
図1
図2
図3
図4
図5