(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(C)のIOB値が3.4以下の多価アルコールが、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、液状のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の洗浄剤組成物。
前記成分(B)におけるセルロースの水酸基の水素原子の一部が、アルキル基及び/又はアルキル−オキシアルキレン基と置換されているものである請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
前記成分(B)が、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の洗浄剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、成分(A)アニオン性界面活性剤、成分(B)ノニオン性セルロース誘導体 、成分(C)エタノール及び/又はIOB値が3.4以下の多価アルコールを各々特定量含有し、さらに成分(D)リン脂質を含有する洗浄剤組成物である。以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書においては、〜を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値を含むものとする。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)アニオン性界面活性剤は、親水性部分が水中で解離したときに陰イオン(アニオン)となる界面活性剤であれば特に限定されない。
前記成分(A)として、例えば、高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルメチルタウリン塩、N−アシルタウリン塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルフォン化脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。また対塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルチニン、オキシリジン等が挙げられる。このうち、高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルメチルタウリン塩が好適であり、特に好ましくは高級脂肪酸塩である。これらから1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0013】
前記成分(A)に用いられる高級脂肪酸塩で脂肪酸の炭素数は、好ましくは8〜22であり、より好ましくは12〜22である。また、飽和若しくは不飽和のいずれでも良く、直鎖若しくは分岐鎖であっても良い。
前記高級脂肪酸塩における「脂肪酸」は単一脂肪酸の他、混合脂肪酸が挙げられる。例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、リチノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、リシノール酸、リノエライジン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の単一脂肪酸;ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、水添ナタネ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、マカデミアナッツ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ラノリン脂肪酸等の混合脂肪酸が挙げられる。このうち、好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヤシ油脂肪酸及びパーム核油脂肪酸である。
【0014】
前記高級脂肪酸塩は上述の脂肪酸を塩基であらかじめ中和されたものを用いることができる。また、製造時に高級脂肪酸と塩基を別々に配合し、工程中で中和して用いることも可能である。
このような中和する塩基(以下、「対塩基」ともいう。)としては、特に限定されず、無機塩基性塩又は有機塩基性塩の何れでもよい。
無機塩基性塩として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩基;水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。
有機塩基性塩として、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパンジオール等のアルカノールアミン塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。
前記高級脂肪酸塩における対塩基のうち、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩である。
【0015】
上述した高級脂肪酸塩は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0016】
前記成分(A)成分に用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩に付加重合される酸化エチレンのモル数は、好ましくは1モル以上、より好ましくは1〜30モル、さらに好ましくは、洗浄力、起泡力の点から1〜10モルである。
また、アルキル基は、直鎖又は分岐鎖の何れでもよく、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは8〜22であり、より好ましくは12〜22である。当該アルキル基の例示として、例えば、ラウリル、ミスチル、パルミチル、ステアリル、ヤシ油等が挙げられ、このうちラウリルが好ましい。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を塩基であらかじめ中和されたものを用いることができるが、製造時にポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸と塩基を別々に配合し、工程中で中和して用いることも可能である。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩における「対塩基」としては、前記高級脂肪酸塩と同様の「対塩基」が例示できるが、好ましくは、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩及びアンモニウム塩である。
【0017】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の例示として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸マグネシウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ジエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸モノエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸トリエタノールアミン及びポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。このうち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムが好ましい。
【0018】
上述したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
前記成分(A)成分に用いられるN−アシルアミノ酸塩における「アミノ酸」としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、サルコシン、グリシン等が挙げられ、これらにメチル基等が修飾されていても良い。前記「N−アシルアミノ酸」における「アシル基」は炭素数8〜22の長鎖のものが好適で、飽和でも不飽和でも良く、直鎖でも分岐していても良い。前記「N−アシルアミノ酸」における「N−アシル」の例示として、例えば、N−ラウロイル、N−ミリストイル、N−パルミトイル、N−ステアロイル、N−オレオイル及びN−ヤシ油脂肪酸アシル(N−ココイルともいう)が挙げられる。このうち、N−ラウロイル及びN−ヤシ油脂肪酸アシルが好ましい。
【0020】
前記N−アシルアミノ酸塩における「対塩基」として、前記高級脂肪酸塩と同様の「対塩基」が例示できる。N−アシルアミノ酸塩における対塩基はナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩が好ましい。N−アシルアミノ酸塩はN−アシルアミノ酸を塩基であらかじめ中和したものを用いることができるが、製造時にN−アシルアミノ酸と塩基を別々に配合し、工程中で中和して用いることも可能である。
【0021】
前記N−アシルアミノ酸塩のうち、N−アシルグルタミン酸塩が好ましい。前記N−アシルグルタミン酸塩の例示として、例えば、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
前記N−アシルアミノ酸塩のうち、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸等のN−長鎖アシルグルタミン酸のトリエタノールアミン塩が、十分な洗浄効果を有しつつ、刺激感が少なく好ましい。
【0022】
上述したN−アシルアミノ酸塩は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記成分(A)成分に用いられるN−アシルメチルタウリン塩におけるアシル基としては、前記N−アシルアミノ酸塩と同様のものが例示できる。N−アシルメチルタウリン塩において、N−ミリストイルが好ましい。前記N−アシルメチルタウリン塩の例示として、例えば、N−ラウロイルメチルタウリン塩、N−ミリストイルメチルタウリン塩、N−パルミトイルメチルタウリン塩、N−ステアロイルメチルタウリン塩、N−オレオイルメチルタウリン塩、N−ヤシ油メチルタウリン塩等が挙げられる。
前記N−アシルメチルタウリン塩における「対塩基」として、前記高級脂肪酸塩と同様の「対塩基」が例示できる。この対塩基のうち、ナトリウム塩、カリウム塩及びトリエタノールアミン塩が、洗浄効果に加えて洗浄後の肌のつっぱり感を低減する点で、より好ましい。さらに、前記N−アシルメチルタウリン塩の例示として、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンカリウム及びN−ミリストイルメチルタウリントリエタノールアミンが、肌のつっぱり感を低減する効果が高いので、より好ましい。
【0024】
N−アシルメチルタウリン塩はN−アシルメチルタウリンを塩基であらかじめ中和されたものを用いることができるが、製造時にN−アシルアミノ酸と塩基を別々に配合し、工程中で中和して用いることも可能である。上述したN−アシルメチルタウリン塩は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明の成分(A)アニオン性界面活性剤の含有量は、粘性洗浄剤組成物中、3〜25質量%(以下、単に%と略す)、好ましくは、5〜25%、さらに好ましくは、7〜20%である。この範囲であれば適切な洗浄力と泡立ちを維持することが出来る。
【0026】
一般にアニオン性界面活性剤の量を低減すると洗浄力が低下すると同時に泡立ちが不足する。本発明の成分(A)〜(C)を組み合わせることで、粘度、泡立ち及び泡持ちが低下することなく洗浄力を確保できるため、アニオン性界面活性剤を25%以下に低減できることが可能となる。
【0027】
本発明に用いられる成分(B)ノニオン性セルロース誘導体はセルロースの水酸基をノニオン性物質で誘導体化したものであれば特に限定されない。ここでセルロースは多数のβ-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合したいわゆるベータグルカンである。セルロースは分子間の水酸基同士が強い水素結合を作り結晶構造をとるため不溶性であるが、水酸基の一部を誘導体化することにより水素結合を減少、消失することで水溶性とすることができる。本願における誘導体はセルロースの水酸基の水素原子の一部を、アルキル基、及び/又はアルキル−オキシアルキレン(アルキル−(OA)n−)基〔Oは酸素、Aはアルキレン基、nは付加モル数〕と置換されているものを指す。このようなアルキル基及び/又はアルキル−オキシアルキレン基で置換されているノニオン性セルロール誘導体を、本発明では「(ヒドロキシ)アルキルセルロース」という。前記アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状の何れでもよいが、好ましくは直鎖及び分岐鎖である。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜6である。
前記アルキレン基は、炭素数1〜6のものが好適であり、このうちエチレン基が好ましい。付加モル数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。
【0028】
前記成分(B)ノニオン性セルロース誘導体における当該置換度は、好ましくは0.2〜3.0、より好ましくは0.5〜2.5、さらに好ましくは1.0〜2.0である。なお、この置換度は、日本薬局方 ヒプロメロース定量法を参考に測定可能である。また、分子量も特に限定されないが、好ましくは2万〜100万、より好ましくは4万〜70万、さらに好ましくは10万〜50万である。当該分子量は、MALLS付 GPC(角度光散乱検出器システム)にて測定可能である。
(ヒドロキシ)アルキルセルロースの粘度(cps、1.0%水溶液、25℃)は、200〜20,000程度が好ましい。
【0029】
前記(ヒドロキシ)アルキルセルロースは、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)等が挙げられる。このうち、MC、HPMC、HECを用いるのが好適であり、特にMCを用いることが好ましい。
前記(ヒドロキシ)アルキルセルロースは、公知の製造方法にて得ることも可能であり、また市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、MC(メトローズ(登録商標) SM;信越化学工業社製)、EC(エトセル(登録商標)シリーズ;日進化成社製)、HPMC(メトローズ SHシリーズ;信越化学工業社製)、HEC(NATROSOL250HHR;ハークレス社製)、MHEC(STRUCTURE CEL 8000M;AkzoNobel社製)、EHEC(STRUCTURE CEL 4400E;AkzoNobel社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の成分(B)ノニオン性セルロース誘導体の含有量は、洗浄剤組成物中0.5〜2.5%であり、好ましくは1〜2%である。これらのノニオン性セルロース誘導体は1種又は2種以上を用いることが出来る。
【0031】
本願においてはセルロース誘導体がノニオン性であることが必須である。後述の実施例からもわかるように、セルロース誘導体の中でもカチオン性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)等のアニオン性セルロースでは使用時の適度な粘度を得ることは出来なかった。また、キサンタンガム等の他のノニオン性高分子でも十分な効果はなかった。ノニオン性セルロース誘導体であれば、成分(A)及び成分(C)と組み合わせることで、ノニオン性セルロース誘導体が少量であっても、飛躍的に粘度を上昇させることが可能である。
【0032】
本発明に用いられる成分(C)は、エタノール及び/又はIOB値(無機性値/有機性値)が3.4以下の多価アルコールである。
本発明におけるIOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、化合物の有機値に対する化合物の無機値の比に対応する値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標である。
本発明に用いられるIOB値が3.4以下の多価アルコールとして、例えば、プロピレングリコール(3.3)、ジプロピレングリコール(1.8)、イソプロピレングリコール(2.0)、ジエチレングリコール(2.75)、ポリプロピ1,3−ブチレングリコール(2.5)、1,2−ペンタンジオール(2.0)、PEG−8(MW400)(2.3)が挙げられるがこれに限定されるものではない。(参考文献1:藤田穆の有機概念図:「化学の領域」Vol.11,No.10(1957)719−725参照)。
【0033】
本発明の成分(C)エタノール及び/又はIOB値が3.4以下の多価アルコールの含有量は、洗浄剤組成物中3〜20%であり、より好ましくは5〜18%、さらに好ましくは7〜15%である。
【0034】
エタノール及び多価アルコールのようなアルコール類は、一般的に洗浄剤組成物の粘性を低下させたり、消泡する働きがあることが知られている。特にエタノールは強い粘性低下作用及び消泡作用があるため、洗浄剤組成物に含有させることは一般的ではない。
しかしながら、本成分(A)及び成分(B)とのエタノール及び/又はIOB値が3.4以下の多価アルコールの3成分を組み合わせた場合には、逆に粘度が飛躍的に向上し、使用に適した粘性洗浄剤組成物を調整することが可能である。これにより、界面活性剤を少量にした場合でも、系の粘度保持、泡立ち、泡持ちの面で良好であり、成分(D)による保湿効果や肌の柔軟効果をさらに高めることが可能となる。ここで、IOB値が3.4を超える多価アルコールでは粘度が向上しないため適切ではない。
この成分(C)は1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが出来る。さらにはエタノールとIOB値(無機性値/有機性値)が3.4以下の多価アルコールを併用すると粘度上昇と泡立ち、泡もち、使用後の素肌感と使用後のしっとり感が両立するため特に好ましい。
【0035】
さらに本発明では成分(A)、(B)、(C)の含有量の質量比、B/(A+C)=0.5〜2.5であると粘度、泡立ち、泡もち、に優れた洗浄料を得ることが出来る。1.0〜2.0であれば特に好ましい。
【0036】
本発明に用いられる成分(D)のリン脂質とは、リン酸残基を含む複合脂質であって、天然リン脂質、合成リン脂質、天然由来のリン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質、などが挙げられる。具体的なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチンなどの天然リン脂質;ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイル・オレオイルホスファチジルコリンなどの合成リン脂質;水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリンなどの水素添加リン脂質などが挙げられる。
【0037】
また、本発明において成分(D)にリゾリン脂質を用いることもできる。リゾリン脂質とは、2つのアシル基を有するリン脂質に対し、脂肪酸が1本であるものを指し、主にリン脂質をホスフォリパーゼにより2位のエステル結合が加水分解することにより得られる。リゾリン脂質はリン脂質同様、その構造中に不飽和脂肪酸が含まれる場合が多く、そのために不飽和脂肪酸部分が光や酸素によって酸化され、着色、異臭発生等を引き起こし化粧品の品質を低下させる場合がある。そこでこれらの品質低下を防止するために、不飽和結合の一部又は全てを水素添加して飽和結合とした水素添加リゾリン脂質があるが、これも本発明の成分(D)として用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0038】
本発明における成分(D)は、それ自身が乳化能を有しているとともに、主に成分(A)による泡の気/液界面を強化することで、泡持ちが向上する。また、泡質の面でも、泡の弾力が顕著に高まり、もっちりと濃密な感触を有する泡とすることができる。これにより、成分(A)をさらに低減しても十分な洗浄力と、泡立ち、泡持ち、泡質をもつ洗浄料が可能となった。さらに成分(D)は保湿効果を有し、洗浄後の肌に高い保湿力を与えることが出来るため洗顔後の肌の柔軟性が向上する。
【0039】
本発明の成分(D)リン脂質の含有量は、特に限定されないが、洗浄剤組成物中、好ましくは0.01〜3.0%、より好ましくは、0.05〜2.0%、特に好ましくは0.1〜1.0%である。この範囲であれば、洗い上がりのしっとり感および、もっちりとして濃密な弾力のある泡を持つ洗浄剤組成物を得ることができる。
また成分(A)と成分(D)の質量比がA/D=5〜150であれば高い洗浄力と優れた泡質を有する洗浄剤組成物を得ることが出来る。10〜100であればさらに好ましい。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物には、前記成分(A)〜(D)の他に、通常、化粧料や医薬部外品、外用医薬品等の製剤に使用される成分を、本技術の効果を損なわない範囲で、適宜含有することができる。
当該成分として、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、油性成分、水溶性高分子、粉体、パール光沢付与剤、皮膜形成剤、樹脂、塩類、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、清涼剤、抗菌剤、香料、消臭剤、保湿剤、植物抽出物、ビタミン類、アミノ酸類等が挙げられる。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物の製造方法は、特に制限はなく、常法により調製される。例えば、前記成分(A)〜(D)及び必要に応じ前記任意成分を加え、これらを加熱混合することにより調製することができる。混合には、パドルミキサーやアジディスパー等の混合攪拌機器を用いることで製造できる。
【0042】
斯くして得られる本発明の洗浄剤組成物は、使用する際に適度な粘度があり、また泡立ち及び泡持ちが良好であり、かつ洗浄後のしっとり感及び肌の柔らかさにも優れているので、皮膚や頭髪の洗浄に好適であり、洗顔料、ハンドソープ、ボディソープ、シャンプー等としてボトル容器、ポンプ容器、チューブ容器等の容器に入れて使用することができる。
本発明の洗浄剤組成物の形態は、特に限定されないが、本発明の洗浄剤組成物は使用時の温度帯において概ね安定的な粘度の範囲にあることから、穴口ボトル容器、ディスペンサー付きポンプ容器、チューブ容器を用いての使用が好ましい。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0044】
実施例1〜35及び比較例1〜12:洗顔料
表1〜4に示す組成の洗顔料を下記の製造方法により調製し、「粘度(30℃)」「経時安定性(50℃、1ヶ月)」「泡立ち・泡質」「洗浄後のしっとり感」「洗浄後の肌の柔らかさ」「洗浄後のベタつきの無さ」の項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1〜4に示した。
なお、表中のメチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)の分子量はMALLS付 GPCにて、10万〜50万の範囲であった。これらの置換度の範囲は、1.0〜2.0であった。
また、IOB値(無機性値/有機性値)は、エタノール(2.5)、プロピレングリコール(3.3)、ジプロピレングリコール(1.8)、1,3−ブチレングリコール(2.5)、1,2−ペンタンジオール(2.0)、PEG−8(MW400)(2.3)、グリセリン(5.0)、ジグリセリン(3.5)である(参考文献1参照)。
【0045】
<MALLS付 GPC>
・装置
送液ポンプ:Shodex DS-4 昭和電工(株)
光散乱検出器(MALLS):DAWN DSP Wyatt Technology Corporation
濃度検出器:Shodex RI-71 昭和電工(株)
・測定条件
カラム:Shodex SB-806MHQ 40℃
溶離液:0.1M NaNO
3 1.0ml/min
溶媒:0.1M NaNO
3(溶離液と同じ)
注入量:200μl
【0046】
〔評価方法〕:「粘度」
「粘度」は、30℃に調整した恒温槽に24時間放置したものを単一円筒回転式粘度計(芝浦システム社製)を用いて、ローターやその回転数、及び測定時間を適宜調節しながら適性な粘度域にて測定し、以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
[評 点]:[測定結果]
◎:5,000mPa・s以上50,000mPa・s未満
○:2,000mPa・s以上5,000mPa・s未満、又は50,000mPa・s以上80,000mPa・s未満
△:1,000mPa・s以上2,000mPa・s未満、又は80,000mPa・s以上200,000mPa・s未満
×:1,000mPa・s未満、又は200,000mPa・s以上
〔評価方法〕:「経時安定性(50℃、1ヶ月)」
製造したサンプルを樹脂製透明ボトルに詰めて密閉し、50℃に設定した恒温槽に入れ、1ヶ月間静置した後、外観を目視で確認し以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
[評 点]:[評価結果]
〇:50℃,1ヶ月時点で、分離、結晶物の析出、結晶物の沈降が見られない
×:50℃,1ヶ月時点で、分離、結晶物の析出、結晶物の沈降が発生した
〔評価方法〕:「泡立ち・泡質」「洗浄後のしっとり感」「洗浄後の肌の柔らかさ」「洗浄後のベタつきの無さ」
化粧品評価専門パネル20名に、前記発明品及び比較品の洗顔料を使用してもらい、「泡立ち・泡質」、「洗浄後のしっとり感」、「洗浄後の肌の柔らかさ」、「洗浄後のベタつきの無さ」の項目について、各自が以下の評価基準に従って5段階評価し洗顔料毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
【0047】
評価基準:
[評価結果]:[評 点]
非常に良好:5点
良好:4点
普通:3点
やや不良:2点
不良:1点
判定基準:
[評点の平均点] :[判 定]
4.5以上 :◎
3.5以上〜4.5未満:○
1.5以上〜3.5未満:△
1.5未満 :×
【0048】
【表1】
【0049】
〔製造方法〕
(A)No.1〜7を70℃に加熱し、均一溶解する。
(B) No.11〜13を70℃に加熱し、(A)に加えて中和する
(C)No.8を加え5分撹拌後冷却を開始する
(D)40℃でNo.9〜11を加え粘性が出るまで撹拌し、No.14を加え容器に充填し、洗顔料を得た。
【0050】
【表2】
【0051】
〔製造方法〕
(A)No.1〜4を70℃に加熱し、均一溶解する。
(B) No.15〜17を70℃に加熱し、(A)に加えて中和する
(C)No.5〜13を加え5分撹拌後冷却を開始する
(D)40℃でNo.14を加え粘性が出るまで撹拌し、18を加え容器に充填し、洗顔料を得た。
【0052】
【表3】
【0053】
〔製造方法〕
(A)No.1〜4を70℃に加熱し、均一溶解する。
(B) No.14〜19を70℃に加熱し、(A)に加えて中和する
(C)5を加え5分撹拌後冷却を開始する
(D)40℃で6〜13を加え粘性が出るまで撹拌し、20を加える。
取り出して容器に充填し、洗顔料を得た。
【0054】
【表4】
【0055】
〔製造方法〕
(A)No.1〜6を70℃に加熱し、均一溶解する。
(B) No.11〜13を70℃に加熱し、(A)に加えて中和する
(C)No.7、8を加え5分撹拌後冷却を開始する
(D)40℃で9、10を加え粘性が出るまで撹拌し、14を加え容器に充填し、洗顔料を得た。
【0056】
表1〜4からわかるように、実施例1〜35は洗浄剤組成物として適度な粘度を有し、50℃1ヶ月の経時安定性に優れ、良好な「泡立ち・泡質」、「洗浄後のしっとり感」、「洗浄後の肌の柔らかさ」、「洗浄後のベタつきの無さ」が感じられるものであった。
これに対し、成分(A)が3%未満では、粘度が低すぎて経時安定性が不良となった。また、成分(A)が25%より多くなると、今度は粘度が高すぎて、泡立ちも不良となってしまう。
成分(B)が1%未満では粘度が低すぎて洗浄剤組成物として適度な粘性が得られず、2.5%より多くなると、粘性が高すぎて使用性を損なう。
また、成分(B)の代わりに、ノニオン性セルロース以外の水溶性高分子化合物を用いた場合、アニオン性セルロースである、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カチオン性であるカチオン化セルロース、その他の多糖類であるキサンタンガム、いずれにおいても粘性を付与する効果に乏しく、「経時安定性(50℃、1ヶ月)」を確保することができなかった。
成分(C)では、3%未満では粘性が得られず、さらに「経時安定性(50℃、1ヶ月)」を維持することが出来ない。20%より多くなると、「泡立ち・泡質」の好ましい品質が得られない。さらに、比較例10及び比較例11に示すように、IOB値3.5のジグリセリン、IOB値5.0のグリセリンでは増粘効果が得られず、洗浄剤組成物として適度な粘性とはならなかった。
さらに、成分(D)を含有しない比較例は、「洗浄後のしっとり感」「洗浄後の肌の柔らかさ」に劣るものであった。
【0057】
試験例1及び2:洗顔料
表5に示す組成の洗顔料を下記の製造方法により調製し、肌の水分量及び柔軟性を下記の評価方法により評価した。
【0058】
【表5】
【0059】
〔製造方法〕
(1)No.1〜6を加熱溶解し、混合する。
(2)(1)にNo.7、8を添加し混合した後、冷却を開始する。
(3)40℃以下で(2)にNo.9〜11を添加し混合する。
【0060】
〔評価方法:皮膚水分量〕
はじめに、室温22℃、湿度50%に設定した室内で15分順化してから、頬部の皮膚水分量を、SKICON−200EX(アイ・ビイ・エス社製)にて測定した(初期値)。その後、半顔は試験例1、残り半顔は試験例2を用いて洗顔し、上記室内で10分経過後、再び頬部の皮膚水分量を測定した(洗顔後)。健常人パネル5人の平均値を算出したものを、
図1に示す。
【0061】
〔評価方法:柔軟性〕
[ヴィーナストロンの測定について]
肌の柔軟性は、AXIOM社製の「ヴィーナストロン」(Venustron)により測定した。この測定機器は、プローブからある一定の周波数(Hz)を出し、物体に接触した時の周波数の差Δfで柔らかさを評価する。具体的には、柔らかいものに触れると周波数が低くなるのでΔfがマイナスに、硬いものに触れると周波数が高くなるのでΔfがプラスになる。即ち、試料使用後の測定値から使用前の測定値を減じた値が負の値であって、その絶対値が大きいほど、肌の柔軟性が向上したと判定できるものである。
はじめに、室温22℃、湿度50%に設定した室内で15分順化してから、頬部の肌の柔軟性を、ヴィーナストロンにて測定した(初期値)。その後、半顔は試験例1、残り半顔は試験例2を用いて洗顔し、上記室内で5分後、10分後に、再び頬部の柔軟性を測定した(洗顔後)。評価は5人の健常人パネルにより行い、各パネル毎に各試料の洗顔後の柔軟性から初期値を引いた値を求め、平均値を算出したものを、
図2に示す。
【0062】
皮膚水分量に関しては、
図1に示すように、試験例1の洗顔料は初期値に比べ、皮膚水分量があまり低下せず、洗顔により皮脂や肌の保湿成分が除去されても肌のうるおいが維持された。これに対し、試験例2では初期値より洗顔後の皮膚水分量が低下し、洗顔による肌の乾燥を防ぐことができなかった。
また、柔軟性に関しては
図2に示すように、試験例1、2の洗顔料はいずれも初期値に比べ、柔軟性が低下したが、試験例2よりも試験例1の方が5分後の値が低く、柔軟であった。
【0063】
実施例36:ボディソープ
(成分) (質量%)
1 ラウリン酸 5
2 ミリスチン酸 4
3 パルミチン酸 3
4 卵黄レシチン(注14) 0.5
5 ヒドロキシプロピルメチルセルロース (注15) 1
6 水酸化カリウム 3.15
7 1,3−ブチレングリコール 3
8 ポリクオタニウム−7 2
9 エタノール 5
10 香料 0.25
11 精製水 残量
(注14)卵黄レシチンPL-30S キユーピー株式会社製
(注15)メトローズ65SH−15000 信越化学工業社製
【0064】
〔製造方法〕
(1)No.1〜3とNo.5、11の一部を70℃で加熱後、No.4を分散し10分間攪拌する。
(2)(1)を冷却しながら攪拌し、40℃まで攪拌する。
(3)No.6〜8をNo.11の残部に溶解し、(2)に添加して5分間攪拌する。
(4)(3)にNo.9、10を添加し、粘性が出るまで攪拌する。
(5)(4)を取り出して容器に充填し、洗顔料を得た。
〔評価〕
実施例36の洗顔料は、使用に適した粘性を持ち、安定性に優れたものであった。使用に際しては、泡立ち・泡持ちに優れ、洗浄後の使用感がさっぱりとした洗い上がりでありながらも、使用後のしっとり感や後肌の柔らかさにおいて優れたジェル状の洗顔料であった。
【0065】
実施例37 ハンドソープ
(成分) (質量%)
1 ラウリン酸 5
2 ミリスチン酸 5
3 水添レシチン 0.1
4 ヒドロキシエチルセルロース 1
5 水酸化カリウム 2.73
6 エデト酸−2ナトリウム 0.05
7 ジプロピレングリコール 5
8 ポリクオタニウム−7 2
9 エタノール 5
10 香料 0.8
11 精製水 残量
12 アスタキサンチン(注16) 0.05
(注16)アスタキサンチン−5C オリザ油化株式会社製
【0066】
〔製造方法〕
(1)No.1〜3を70℃で加熱後に、No.4をNo.11の一部で溶解し、70℃で加熱溶解したものを添加する。
(2)(1)を冷却しながら攪拌し、40℃まで攪拌する。
(3)No.5〜10、12をNo.11の残部に溶解し、(2)に添加して、粘性が出るまで攪拌する。
(4)(3)を取り出して容器に充填し、ハンドソープを得た。
〔評価〕
実施例37のハンドソープは、橙色パール状の外観を有したもので、使用に適した粘性を持ち、安定性に優れたものであった。使用に際しては、泡立ち・泡持ちに優れ、さっぱりとした洗い上がりでありながらも、手指のうるおい感があり、後肌の柔らかな優れたハンドソープであった。