(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463729
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】二重式予圧付軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 25/08 20060101AFI20190128BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
F16C25/08 Z
F16C19/16
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-504720(P2016-504720)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-517935(P2016-517935A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】FR2014050622
(87)【国際公開番号】WO2014154971
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】1352807
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ブフレール
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ブルダン
(72)【発明者】
【氏名】アルバン ルメートル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン テシエ
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102011014079(DE,A1)
【文献】
特開昭62−002024(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0020604(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102004048720(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009036303(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 21/00−27/08
F16C 19/00−19/56,33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪(102)と、外輪と、前記内輪(102)と前記外輪の間の転動要素(110)と、を具備している、回転機械用の軸受において、
前記軸受は、第一に、第1の予め定めた軸方向に及ぼす力を発揮するように構成された第1の予圧システム(120)をさらに具備し、
前記内輪及び前記外輪の内の1つは、スラスト部材(118)と、前記第1の予圧システム(120)との間において軸方向に締め付け可能である、第1の半輪(114A)と第2の半輪(114B)を具備しており、
該軸受は、第二に、前記第1の半輪と前記第2の半輪の間において軸方向に挿入されていて且つ該第1の予め定めた軸方向に及ぼす力に比べてより小さい第2の予め定めた軸方向に及ぼす力を発揮するように構成された、第2の予圧システム(126)であって、前記軸受が予め定めた閾値よりも大きな軸方向に及ぼす力を受けた時に前記第1の半輪と前記第2の半輪の間の間隙(124)が開けられて前記軸受が2つの接触点のみで動作する、第2の予圧システム(126)を具備する、ことを特徴とする軸受。
【請求項2】
該第1の半輪と前記第2の半輪は、該外輪を構成し、更に静止ケーシング(116)内に摺動可能に取り付けられるためのものである、ことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
該静止ケーシングは、前記スラスト部材を形成する一部を具備する、ことを特徴とする請求項2に記載の軸受。
【請求項4】
該第1の半輪と前記第2の半輪は、該内輪を構成し、更に静止シャフト(104)の周りに摺動可能に取り付けられるように設計される、ことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
【請求項5】
該静止シャフトは、前記スラスト部材を形成する一部を具備する、ことを特徴とする請求項4に記載の軸受。
【請求項6】
前記第1の予圧システム(120)と前記第2の予圧システム(126)は、それぞれの弾力性のアセンブリを具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
【請求項7】
各該弾力性のアセンブリは、1つ以上のばね座金を具備する、ことを特徴とする請求項6に記載の軸受。
【請求項8】
該転動要素は、斜め接触軸受ボールである、ことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
【請求項9】
前記軸受は、ラジアル流体軸受に搭載された回転機械の軸方向のスラスト軸受に適用される、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械用の軸方向のスラスト軸受としても作用する、軸受に係わり、軸受は、シャフトの周囲に配置された内輪と、ケーシング内に配置された外輪と、前記輪間の転動要素と、を有する。
【背景技術】
【0002】
その様な機械の主要な利点の一つが従来のボール軸受又はローラー軸受に搭載された機械に比べて長寿命である、ラジアル流体軸受に搭載された、低温回転機械の文脈において、従来のボール軸受又はローラー軸受は、低温条件下において必要な潤滑を提供不能であることが原因の摩耗の問題に直面しており、軸方向のスラスト軸受は、残りの軸力を受け持つ目的のために知られる。流体軸受に搭載された構成は、本願の出願人と同一の出願人である特許文献に記載されるように、特には、安定した条件下において能動的な軸方向釣り合いシステムを有する、機械のための過渡段階(低速において)において、残りの軸力を受け持つ目的のための要素を必要とする(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来技術の軸方向のスラスト軸受は、それにも係わらず、低速から高速へ移行することにおいて、特には、ロータシャフトが軸方向に摺動することを可能にすることを必要とする、隙間を管理することの必要性の結果として、幾つかの欠点を提示する。更に、軸受が3つ又は4つの接触点を使用して動作するので、荷重方向間の移行は、上手く実施されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願第2932530号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、回転機械用の軸受を提案することにより、上記の欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の間の転動要素と、を具備しており、該内輪及び外輪の内の1つは、第一に、スラスト部材と、第二に、第1の予め定めた軸力を発揮する第1の予圧システムとの間において軸方向に締め付け可能である、第1と第2の半輪を具備し、更に該軸受はまた、該第1と第2の半輪の間において軸方向に挿入されていて且つ該第1の予め定めた軸力に比べてより小さい第2の予め定めた軸力を発揮する、第2の予圧システムを具備することを、軸受は特徴とする。
【0007】
第1と第2の予圧システムを追加することは、軸受が作動する状態になると、2つの接触点での動作を容易にする。2つの半輪を離間させることにより、このシステムは、新たな部品の追加にもかかわらず、軸受の設計もまた容易すると共に、軸受を劣化させ得る、3つの接触点を使用する、長い動作期間を回避するように機能する。
【0008】
本発明により実行される双方向の軸方向スラスト軸受及び回転軸受の機能は、好適な動作方向(第1の予圧システムに向かう力)を優先しつつ、軸方向の摺動を可能にする、大きな隙間(数ミリメートルまでの)を管理することができるという大きな利点を更に提供しており、更に従って、従来の一対の軸受に頼ることなく、能動型の軸方向釣り合いシステム(例えば、羽根車又はインペラのノズル)をより容易に動作させ得るという大きな利点を更に提供する。
【0009】
意図される実施の形態に応じて、該第1と第2の半輪は、該外輪を構成してもよく、その場合において、該静止ケーシングの一部を形成するスラスト部材と共に、第1と第2の半輪は、静止ケーシングにおいて摺動可能に取り付けられるように設計されており、あるいはそれとは別に、第1と第2の半輪は、該内輪を構成してもよく、その場合において、それらは、静止シャフトの周りに摺動可能に取り付けられており、スラスト部材はその際、該静止シャフトの一部を形成する。
【0010】
第1と第2の予圧システムは、1つ以上のばね座金により形成されることが有利である、それぞれの弾力性のアセンブリを具備することが好ましい。
【0011】
本発明の軸方向のスラスト軸受は、低温回転機械に適用されることが有利である。
【0012】
本発明の別の特徴および利点は、添付の図面を参照して、例として与えられた、特定の実施の形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の軸受の実施の形態の軸方向の半断面図である(その休止位置において)。
【
図2】
図2は、動作における
図1の軸受の軸方向の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、軸方向のスラスト軸受の機能も形成する、本発明の回転軸受の一例を示す。軸受100は、例えば、低温回転機械のインペラに固定されてもよい、中心シャフト(軸)104、106に放射状に取り付けられる、内輪102を具備する。内輪102は、図面には示されない、流体型の、葉型の、磁気型の、又は別の型式の従来の軸受に搭載されることが有利である、中心シャフトにより回転駆動されており、更に回転機械は、冒頭で述べた出願に記載されたシステム等の、安定した条件下において軸方向に釣り合うための能動的なシステム(受動的システムも適切であるが)を備えることが有利であってもよい。
【0015】
軸方向のスラスト軸受は、斜め接触ボール等の転動要素(rolling element)110を有しており、転動要素110は、ケージ112に保持されており、更に内輪102と、静止ケーシング116の中央に配置された、2つの部分114A及び114Bにより構成された外輪114と、の間に配置されており、静止ケーシング116において、2つの部分114A及び114Bは、動作の特定の段階の間において、自由に軸方向に摺動する。
【0016】
外側半輪114A及び114Bは、第一に、ケーシングの一部又はケーシング116に固定される、静止スラスト部材118と、第二に、例えば、第1の予め定めた軸力を発揮する1つ以上のばね座金等の、弾力性のアセンブリにより形成される第1の予圧システム120と、の間において軸方向に締め付けられており、第1の予め定めた軸力は、例えば、数百ニュートンのオーダーであり、従って、回転シャフトにより加えられる軸方向の荷重がゼロであるか又は回転速度に依存する予め定めた閾値(例えば、同様に、数百ニュートンのオーダーの)未満である限り、隙間122は、外側半輪114Aと、ケーシング116(第1の予圧システム120の側部に設置される)との間において百分の数ミリメートルから数ミリメートルの幅を有するように形成されており、外側半輪114A、114B自体は、間隙124により離間しており(
図2に示される)、間隙124は、外側半輪の間に配置されていて且つ同様に弾力性のアセンブリにより形成された、第2の予圧システム126により動作において数ミリまで開かれてもよく、弾力性のアセンブリは、例えば、第2の予め定めた軸力を作用させる、1つ以上のばね座金で形成されており、第2の予め定めた軸力は、例えば、数十ニュートンのオーダー、即ち、第1の予め定めた軸力未満である。これらのばね座金は、外側半輪の各々において、それぞれの関連する溝内の位置を占める、環状クリップ(図示せず)により予め定めた位置に保持されることが有利であってもよい。
【0017】
本発明による軸受の動作は、
図1及び
図2を比較することにより、以下で説明される。
【0018】
第1の段階は、シャフトが、予圧システム120により加えられる、力に反対の方向において軸受に軸力をほとんど又は全く加えない間において、軸受が回転シャフトにより回転駆動される、段階であると考えられる。この段階の間において、第1の予圧システム120の第1の予め定めた軸力が、第2の予圧システム126により加えられる力に比べてより大きいとすると、この軸力が、閾値未満である限り、隙間122が開き、軸受は、潜在的に使用可能な過渡的条件の下で動作する(3つの接触点130A、130B、132Aを潜在的に有し、ボールが摺動し、...)。動作のこの第1の段階は、それにも係わらず、軸受内において第2の予圧システム126を導入することにより最小限に抑えられており、従って、間隙124が開けられ、軸力が増加するに従って、その(間隙124の)幅が増大することを可能にする。
【0019】
ボール軸受は、軸方向のスラスト(推力)を受け持ち、その速度は変化し、更に一旦シャフトにより加えられる軸力が、この閾値に比べてより大きい場合には、外側半輪114Aは、ケーシング116内において摺動し、隙間122は、動作の第2の段階において閉じる。第2の予圧システム126により加えられる、第2の予め定めた軸力はその後、外側半輪114Bから離れて外側半輪114Aを移動させることにより(第3の接触点132Aからその後離れる、ボールと一緒に)、間隙124を広げており、その半輪は、ケーシングに固定される、その静止スラスト部材118に押圧された状態で保持される。値は、隙間122がゼロの場合に、最大である。軸受はその後、2つの接触点130A及び130Bを介して動作する。この様に動作することの利点は、従来のボール軸受として動作しながら、消散される動力及び摩耗を最小化する。軸受は、高いレベル(程度)の軸力に耐えることが可能である。更に、この型式の軸受は、シャフトが、ケーシングにおいて大量(数ミリメートル)に摺動することを可能にしており、そのことは、従来の軸受では不可能である。別の外側半輪114Bは、静止スラスト部材118に押圧されて保持されるので、ボールとこの外側半輪との間の隙間は、外側半輪114Bが2つの接触点を有する軸受の動作を妨げないことを確保するような状態で選択される。この隙間は、組立時に調整可能である、隙間122に直接的に関連する。
【0020】
第3の段階は、「オフロード(荷重除去)」として呼ぶことができる段階により構成されており、この段階では、軸受上のシャフトにより発揮されていて且つ依然としてスラスト部材を向く、軸力が低下して、軸方向の釣り合いのための能動的なシステムが動作する結果として、軸力はゼロになる。その値が閾値よりも小さくなると直ぐに、隙間122は、もう一度開き、外側半輪114Aは、外側半輪114Bに向かってボールと一緒に摺動し、それにより、3つの接触点を有する従来の軸受において発生するであろうように、ボールと外側半輪114Bとの間の接触132Aを潜在的に再現する。上述したように、軸受はその後、最小限に抑える必要がある、潜在的に不安定な過渡状態(ボールが滑り,...)の下で動作する。軸受は、シャフトにより回転駆動され続け、軸受には、シャフトにより加えられる力と、接触点132Aに潜在的に導く第2の予圧システム126により加えられる力を含む、内部力と、の両方が作用する。
【0021】
最後に、一旦シャフトにより加えられる力が、ゼロになり、その後負になるように反転すると、軸受は、接触132Aを介して駆動され続ける。その後反対方向において当接することで、軸受は、それにもかかわらず、3つの接触点(3点を有する従来の軸受のように)において、潜在的に作動し続ける。
【0022】
本発明により、軸受において二次予圧を内部的に導入することにより(2つの外側半輪114A及び114Bとの間に設置されるばね座金126)、外輪内において間隙及び隙間において熱機械的制御を提供する必要は存在しない。従って、軸受にシャフトの軸力が作用して、軸受が2つの接触点130A、130Bを介して動作すると、この二次の内部予圧は、この段階において軸受の動作に含まれない、外側半輪114Bを軸方向に偏倚させるように作用する。この二次予圧はまた、外側半輪114Bとボール110との間の隙間において、より良好な制御を高め且つ提供することを可能にしており、前記隙間は、軸受の動作に関して潜在的に面倒なものである。
【0023】
本発明は、内側の軸受が回転シャフトにおいて固定される状態で、外輪が静止ケーシング内において摺動する、軸受により説明されるが、冒頭で述べた出願と同じ状態で、本発明はまた、外輪が回転ケーシング内にある状態で、内輪が、ここでは静止する、シャフト上を摺動する、軸受に適用可能であることが明らかであることが、認識されるべきである。