(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高エネルギービームにより粉体粒子を融解又は焼結することによって、金属、金属間化合物、セラミック、セラミックマトリックス複合材料、又は不連続補強材料、具体的にはセラミック又は金属間化合物補強材料を含む金属マトリックス複合材料から部品を製造する方法において、
用いられる粉体が、0.8〜1.0の範囲にある球形度、及び1〜√2の範囲にある形状係数を有する粒子の単一粉体であり、それぞれの粉体粒子が、実質的に同一の中間組成を有し、前記粉体の粒子の粒度分布が、
(d90%−d50%)/d50%≦0.66
及び
(d50%−d10%)/d50%≦0.33
と
(d90%−d10%)/d50%≦1.00
である平均粒径値d50%前後で狭く、
前記用いられる粉体の組成が、少なくとも1つの付加的な化学元素であって、0.5重量%未満、すなわち5000ppm又は5g/kg未満の0ではない量であり、前記付加的な化学元素が前記粉体の組成に存在しない状況と比較して、材料から得られる部品の材料の微細構造を変更するのに適した、前記付加的な化学元素を有し、
粉体粒子が補強材料を有し、前記付加的な化学元素が、前記高エネルギービームで複合粉体粒子の一部を融解することにより形成される液体によって、補強材料の濡れを促進するのに適していることを特徴とする方法。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、具体的には、レーザビームを用いる直接金属蒸着によって、又はレーザにより粉体層を選択的に融解することによって、又は、実際には、レーザにより粉体層を選択的に焼結することによって、部品を迅速に製造しようとするものである。
【0005】
選択レーザ焼結は、粉体の一部が融解され、その他の部分が固体のまま維持される方法である。これは、特に、セラミック材料及び特定のMMC材料からの部品製造に関する。セラミック材料及びCMC材料では、液相はわずかである(概して、0.5体積%(%vol)〜3体積%の範囲にある。)が、MMC材料では、液相が多く存在し、70体積%未満であることはめったにない。
【0006】
「選択レーザ融解」(SLM)とは、粉体がすべて融解する方法を意味し、その主な特性の中の一部は、
図1を参照して、以下のように概説される。
【0007】
材料の第1の粉体層10は、例えばローラー30(又は他のいずれかの堆積手段)を用いて、構造支持体80上に堆積され、構造支持体は、固体の支持体、他の部分の一部、又は特定部分の形成を容易にするのに用いられる支持格子体であり得る。
【0008】
粉体は、ローラー30の前方への移動時に、材料貯蔵部70から構造支持体80上に移され、その後、粉体はスクラップされ、ローラー30の1つ以上の復帰移動時に、軽く圧縮される可能性がある。粉体は、粒子60から構成される。過剰の粉体は、構造支持体80が垂直に移動する構造体収容部85に隣接した再利用貯蔵部40において回収される。
【0009】
発生器90はレーザビーム95を発生させるのに用いられ、また、制御システム50は、レーザビーム95を構造支持体80のいずれかの領域に誘導して粉体層のいずれかの領域を掃引するのに用いられる。レーザビームが形成し、焦点面におけるその径は、ビームエクスパンダ52及び集束システム54(これらは共に光学系を構成している。)によってそれぞれ変化する。
【0010】
その後、この第1の粉体層10の領域の温度は、レーザビーム95を用いて走査することによって、融解温度T
Fよりも高い温度に上昇する。
【0011】
SLM法は、粒子が堆積する材料の一部(液体プールの不可欠な部分を形成する希釈領域とも称する。)と共に粉体粒子を融解する程度に十分にビームのエネルギーが高い限り、レーザビーム95の代わりに、高エネルギービームを用いてもよい。
【0012】
このビーム走査は、例えば、制御システム50の一部を形成する検流計ヘッドによって行ってもよい。例えば、制御システムは、限定的ではないが、少なくとも1つの可動鏡55を備え、この可動鏡は、粉体層であって、集束システム54に含まれる集束レンズに対して同じ高さにすべて位置する表面部分を有した粉体層に到達する前に、検流計ヘッドによって制御される鏡の角度位置でレーザビーム95を反射し、これによって、レーザビームは少なくとも第1の粉体層の領域を走査し、このため、部品の既定プロファイルに追随する。このため、検流計ヘッドは、コンピュータ支援設計及び部品の製造に用いられるコンピュータ機器のデータベースに含まれる情報を用いて、制御される。
【0013】
このように、第1の層10のこの領域中の粉体粒子60は融解し、構造支持体80に固定された第1の一体型要素15を形成する。また、この段階において、この第1の層の複数の独立した領域を走査して、材料が融解し固化した後に、相互に独立した複数の第1の要素15を形成するのに、レーザビームを用いることもできる。
【0014】
支持体80は、第1の層の厚さに相当する高さ(20マイクロメートル(μm)〜100μmにあり、概して、30μm〜50μmの範囲にある。)まで下がる。
【0015】
その後、第2の粉体層20が、第1の層10及び第1の一体型又は統合要素15上に堆積され、次いで、(
図1に示すように)この第1の一体型又は統合要素15上に一部が又は完全に位置する第2の層20の領域は、この領域中の粉体粒子が融解するように、要素15の少なくとも一部と共にレーザビーム95に暴露されることによって加熱され、第2の一体型又は統合要素25が形成され、これらの2つの要素15及び25は共に、
図1に示されている例の一体型ブロックを形成する。
【0016】
形成される部品のプロファイルに応じて、具体的には、切り取られた面がある場合、第1の層10の上述した領域はみられず、部品にもみられず、第2の層20の上述した領域の下において、かかる状況下では、第1の統合要素15及び第2の統合要素25が一体型ブロックを形成しないことが理解できる。
【0017】
そして、層ごとに部品を形成するこの工程は、既に形成されたアセンブリに付加的な粉体層を加えることによって継続される。
【0018】
レーザビーム95が走査されると、製造される部品の幾何形状に一致する形状が形成されることによって、それぞれの層を形成することができる。部品の上部層が形成されると、部品の下部層は、おおむね急速に冷却される。
【0019】
図2を参照して、以下に、レーザビームを用いる直接金属蒸着(DMD)法を説明する。
【0020】
ノズル190から不活性キャリアガス中で粉体粒子60を吹き付けることによって、構造支持体180上に材料の第1の層110が形成される。粉体粒子60の吹付けと同時に、ノズル190は、発生器194から発生するレーザビーム195を運ぶ。粉体を構造支持体180上に吹き付ける、ノズル190の第1のオリフィス191は、レーザビーム195を放射する第2のオリフィス192と同軸であり、粉体はレーザビーム195に吹き付けられる。「同心ノズル」という用語は、レーザビームと同心である粉体のビームを意味し、レーザ焦点(F
L)及び粉体焦点(F
P)は、ノズル190の対称軸線上に整合されている(粉体焦点(F
P)に対してレーザ焦点(F
L)を適合させることができる。)。粉体は円錐形の外殻を形成し、レーザビームは円錐形状である。レーザビーム195は、その融解温度T
Fよりも高い温度に粉体の温度を上昇させ、粉体は、レーザビーム195の下にある支持面180においてプール102を形成する。また、プール102の形成は、レーザビーム195に暴露され一定の深さまで融解される支持体180の領域によって、支持体180上で開始されてもよく、かかる状況下では、粉体はプール102に供給され、完全に融解した状態に達する。
【0021】
または、一例として、ノズル190の位置は、粉体がレーザビーム195中で時間を浪費しないように、又はノズルから出る粉体粒子の速度が速すぎないように、又はプールから上流に粉体粒子を完全に融解する程度に十分にレーザビームのエネルギーが高くならないように、レーザビームの位置に対して調整することができ、これによって、粒子は、レーザビーム195に暴露される粉体の領域180の融解によって、支持面180に既に形成されたプール102に到達した後にのみ、完全に融解するようになる。
【0022】
プールから上流では、粉体は同様にレーザビーム195によって融解することができないか、又は、粉体は、粉体を構成する粒子の中の一部が、非常に大きな粒径であることによってか、若しくは粒子の質量流量が、粒子がプールに到達する前に完全に融解する程度に非常に大きいことによってのみ、部分的に融解することができる。
【0023】
そして、粉体の温度は、粉体がプールに到達すると冷却されるようにするため、支持体180の面に既に形成されたプールに到達する前の温度に上昇させる必要はなく、この融解は、粉体ビーム及びレーザビームが作業面で遮断されないようにレーザビームに対して調整された、ノズル190によって行われる。
【0024】
ノズル190及びレーザビーム195(又は支持体180)によって形成されたアセンブリが下流に移動すると、プール102は維持され、徐々に固化され、支持体180上に固化材料105の第1のビーズが形成される。この工程は、支持体180上に別の固化ビーズを形成し続け、他のビーズは、例えば、第1のビーズと並置され、第1のビーズに対して平行である。
【0025】
このように、ノズル190及びレーザビーム195又は支持体180によって形成されたアセンブリの移動によって、材料の第1の層110は、固化によって支持体180上に堆積され、コンピュータ支援設計及び部品の製造に用いられるコンピュータ機器のデータベースに含まれる情報によって画定された形状に適合した形状である、第1の一体型要素115を形成する。
【0026】
その後、ノズル190は、第2の走査を行い、同様に、既に統合された第1の要素115上に材料の第2の層120を形成する。この第2の層120は、第2の統合要素125を形成し、これらの2つの要素115及び125は共に、一体型のブロックを形成する。第2の要素120の形成時に、第1の要素105上で徐々に形成されるプール102には、プール102に供給される粉体粒子に加えて、概して、レーザビーム195に暴露させることによって再融解された、第1の要素115の少なくとも一部(液体プールの不可欠な部分を形成する希釈領域とも称する。)が含まれている。
【0027】
そして、層ごとに部品を形成する工程は、既に形成されたアセンブリに付加的な層を加えることによって継続される。
【0028】
レーザビーム95が走査されると、隣接する層とは独立した形状をそれぞれの層に形成することができる。部品の下部層はおおむね急速に冷却され、部品の上部層が形成される。
【0029】
代替的に、又は加えて、レーザビームが伴う進路から、粉体が伴う進路を分離することができ、このため、最初に、作業面に対して非常に正確に調整され得るレーザビームの作用により、前述の層において、非常に局所的な融解プールが形成され、次いで、横方向ノズルを用いて融解プールに粉体が注入される。
【0030】
さらに、迅速に部品を製造する上述の方法は限定されず、本明細書に照らして選択レーザ焼結(SLS)を考慮することも可能であり、かかる状況下では、粉体粒子の中の一部又はすべては、粉体の融解温度T
Fよりも低い温度で維持される。
【0031】
例えば、酸素、酸化物、又は上述した層間の製造における他の汚染物質による部品の汚染を低減するために、この製造は、制御され方法/材料の組合せに適切な湿度及び酸素含量である閉鎖空間内で行うことができる。
【0032】
例えば、
図3の顕微鏡写真において理解することができるように、例えば、周囲大気の露点(具体的には、水蒸気の量に対応するH
2とH
2Oの分圧の比率)を超える精密制御を用いずに選択レーザ融解法を用いる場合、次の反応によって、酸化膜は、融解アルミニウム合金内の細孔内部で発生する水素(吸蔵ガス)と共に生じる。
【0033】
2Al
(液体)+3H
2O
(蒸気)→Al
2O
3(固体)+3H
2(ガス)
例えば、−50℃の露点は、38.8パーツ・パー・ミリオン(ppm)の水蒸気圧力と関係している。
【0034】
残留酸素による汚染を回避するために、閉鎖空間には、対象となる材料に対して不活性ガス、例えば、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)又はヘリウム(He)が充填され、必要に応じて、その還元力のために少量の水素(H
2)が加えられる。これらのガスの中の少なくとも2つの混合物も考慮され得る。特に周囲媒体からの酸素による汚染を防止するために、気圧よりも高くなるように閉鎖空間を配置することが通例である。
【0035】
このように、現在の技術水準において、選択レーザ融解又は直接融解堆積(direct melting deposition)を用いて、低いレベルの汚染で十分な寸法精度である部品を形成することができ、三次元形状は複雑であり得るが、機械的強度は特定の用途にはまだ不十分であり、このため、更に最適化された方法が必要であり、具体的には、粉体構造の更なる最適化が必要である。
【0036】
選択レーザ融解又は直接融解堆積も、粒子であって、球状の形態を有し、組成が均一であり、清浄で(すなわち、粉体合成から生じる残留元素によって汚染されない。)、微細である(1μm〜100μmの範囲、好ましくは1μm〜50μmの範囲、又は、実際には1μm〜25μmの範囲にある各粒子の寸法)粒子から構成される粉体を利用することが好ましく、このため、完成部品は、優れた表面準位を得ることができる。
【0037】
また、選択レーザ融解又は直接金属蒸着は、成形、射出成形、圧縮及び焼結、並びに表面加工又は内部加工によって製造される部品と比較して、製造に必要な時間を低減し、費用及び諸経費を削減することもできる。
【0038】
しかし、選択レーザ融解又は直接金属蒸着によって製造される部品は、欠点を有する。
【0039】
現状で可能なことは、単一成分の粒子であって、ほぼ(又は準)球状であり、緻密であり(粒子に内部細孔がなく、すなわち、粒子中に吸蔵ガスがない。)、汚染されておらず、表面が酸化されておらず、組成が均一であり、すなわち、各粒子の全体積が同一の組成であり、粉体粒子を融解する方法によって製造される部品の意図された組成と同一の組成である単一成分の粒子からなるプレアロイ粉(
図6A)の使用である。かかる状況下では、粒子は連続的に形成され、均一な組成であり、そして、本発明によれば、粒子は準球状であり緻密である。粒子は、単一の化学元素(単一元素粉体)、又は複数の化学元素(多元素粉体)によって構成され得る。
【0040】
しかし、複数種の粉体を含む混合物を用いることが必要なこともあり、形態、密度、平均粒径、粒度分布、組成、化学的均一性、表面及びバルクの酸素汚染、各粉体の凝集状態、比表面積及び流動性、換言すると、各粉体の構成又はアーキテクチャ、さらに、これらの費用は、製造される部品の仕様を満たすように、かかる迅速な製造方法の特定の特徴に適応させる必要がある。
【0041】
種々の組成である複数種の粉体、具体的には市場で容易に入手可能な粉体によるバルクブレンド(bulk-blended)(非凝集)混合物の使用により、単一の化学元素によって構成された粒子からなる粉体(単一元素粉体)を用い、又は、粒子自体が複数の化学元素から構成される粉体(多元素粉体)を用い、又はこれらの両カテゴリーによる粉体の使用に頼ることで、所望の中間組成を迅速かつ低価格で得ることができる。
【0042】
しかし、複数種の粉体のバルクブレンド混合物の使用は、幾つかの問題を有する。
【0043】
具体的には、DMD法を用いる場合に、種々の組成である粉体のかかるバルクブレンド混合物が、粉体分注器及びノズル内を流れるのは困難であることが分かる。さらに、SLM法では、堆積され、粉体のかかるバルクブレンド混合物の使用による影響を受け得る粉体層を均一に広げている。
【0044】
さらに、複数種の粉体の混合物(単一元素粉体及び/又は多元素粉体)を用いることによって、粉体の全粒子の均一な融解を達成することは容易ではない。かかる粉体それぞれの粒子は融解温度を有し、その結果、融解温度間に有意差が存在することもある。
【0045】
したがって、例えば、プールの安定性、そして形成安定性を損なうことなく、プールの温度及び/又は容積が増加するように、レーザ出力が増加するか又は走査速度が低下する可能性がなければ、利用可能な時間(レーザ/材料相互作用の時間に相当する。)内に、融解プールであって、組成が均一で、目標組成に応じ、存在する粉体の全粒子が完全に溶解した融解プールを形成できないという明確な危険性が存在する。
【0046】
混合物の種々の粉体の反応性に応じて、脆い金属間化合物が形成する可能性もあり、これによって、製造される部品が破裂することが多い。
【0047】
このような状況は、
図4A〜4Cの顕微鏡写真によって示され、これらの図は、第1のAlSi10Mg合金粉体と共に種々の組成の反応性粒子及び耐火性粒子によって構成された小さな体積分率の第2の粉体(
図4Aでは鉄及びクロムをベースとし、
図4Bではニッケル、クロム及びコバルトをベースとし、
図4Cでは鉄、ニッケル及びクロムをベースとしている。)を用いて得られた、試験片の破裂パターンを示し、顕微鏡写真は、それぞれの顕微鏡写真の2つの視界の中の一方がトポグラフィ(二次電子(SE)像)を示し、他方の視界が化学組成の相違(後方散乱電子(BSE)像)を示すように種々の異なる設定を備えた、走査電子顕微鏡によって得られる。第2の粉体の大きな粒子は溶液に入れることができず、金属間介在物を形成し、その結果、試験片が破裂する。
【0048】
上述の現象は、第2の粉体の広範囲な粒径、及び第2の粉体の大きな平均粒径によって悪化する場合があり、第2の粉体は、反応性混合物から構成される種々の粉体のうち最も高い融解温度を有する。
【0049】
同様に、同様の粒径で、より大きな平均粒径で、かつ、この例において非反応性であるが可溶性であると考慮される混合物中の種々の粉体のうち大きく異なる融解温度の粒子を用いることによって、かかる融解方法により、液体中に完全に融解せず及び/又は完全に溶解しない粒子に遭遇することができ、最も大きな粒子はプール表面に浮遊する。これらは、具体的には、セラミック又は中間相などの耐火材料の粒子であり得る。
【0050】
このような状況を示す例として、
図5の顕微鏡写真は、炭化チタン粒子を補強した鋼から製造される部品に関し、混合物中のほとんどの耐火性粉体のこれらの粒子の中の一部は、液体プールの溶液に完全に入らず、その結果、プールの表面で濃縮され、ガスのポケットを囲み、更にこのポケットを捕捉することもある。
【0051】
このような状況は、粒子、具体的には耐火性粒子が、混合物の他の粉体と比較して低い密度であり、無視できない体積分率で含まれる場合には、特に顕著である。液体プールが融解した後、これらの非融解物は、次層の接着、又は適所における次層の載置に干渉し、これらの非融解粒子の粒径及び体積が大きい場合、更に製造の欠陥(巨視的な細孔)を生じ得る。具体的には、これらの非融解粒子は、それ自体延性のあるマトリックスにおいて硬質の介在物を構成し、このため、製造部品の早期破裂の原因である。
【0052】
さらに、これらの種々の種類の粉体の溶解は、不完全であるか、又は、実際に遅れることもあり、この溶解によって、冷却時に、(非反応性粉体の混合物において)非常に局所的に化学的分離現象が生じ、この化学的分離現象によって、(反応性粉体の混合物において)低融点の共晶相及び/又は粒子間に望ましくない化学反応が生じ、この化学反応によって、望ましくない硬質相(例えば、
図4A、4B及び4Cのものなどの中間相)が存在し、これによって、実際に所望される微細構造に対応しない微細構造の材料が発生し、対象となる用途に所望される特性ほど十分ではない機械的強度特性を示し、さらに、その後の熱処理の終了時に燃焼する危険性も示し得る。
【0053】
同様に、非反応性混合物の種々の粉体に相互に十分な湿潤性がない場合、粉体間の溶解性を完全に欠くことによって、部品についての「正常な材料の健全性」は達成されない可能性がある。
【0054】
本発明の目的は、高エネルギービームにより粉体粒子を融解することによって、部品を製造する方法であって、部品の材料が所望の組成及び微細構造であり、金属、金属間化合物、セラミック、セラミックマトリックス複合材料(CMC)、又は不連続補強材料を含む金属マトリックス複合材料(MMC)であってもよく、先行技術の欠点を克服することができる方法を提供することである。
【0055】
具体的には、本発明によって、所望の組成と一致する均一な組成の部品が得られ、製造の欠陥がなく、製造される部品(すなわち、融解製造工程終了時の部品)が適切なマクロ構造及び微細構造(粒の粒径及び形態、そして、相の形態、微粉度及び組成)であり、十分な寸法品質(プールの十分な安定性が保証される。)であり、最小の残留応力であり、可能な限り大きな総質量効率(融解+再利用)の方法であり、十分な製造速度又は時間であり、そして、関与する材料にかかわらず、このようなことが該当することが望ましい。
【0056】
この目的は、用いられる粉体が粒子の単一粉体であり、粒子が、0.8(立方体に相当)〜1.0(球体に相当)の範囲にある球形度、及び1(球体に相当)〜√2(立方体に相当)の範囲にある形状係数を有し、それぞれの粉体粒子が、実質的に同一の中間組成を有し、前述した粉体の粒子の粒度分布が、
(d
90%−d
50%)/d
50%≦0.66
及び
(d
50%−d
10%)/d
50%≦0.33
と
(d
90%−d
10%)/d
50%≦1.00
である平均粒径値d
50%前後で狭い、という事実によって達成される。
好ましくは、「スパン」値によって定義される粒子の粒度分布
(d
90%−d
10%)/d
50%
は、0.50以下であり、
(d
90%−d
50%)/d
50%≦0.33
及び
(d
50%−d
10%)/d
50%≦0.17
である。
「球形度」という用語は、次のワーデルによって定義される球形度係数(無次元数)を意味するように用いられ、球形度係数は、対象となる粒子の表面積に対する、粒子と同じ体積である球体の表面積の比率(Ψ
V)であり、また、体積相当径(volume equivalent diameter)と面積相当径(area equivalent diameter)との比率の二乗にも等しい。
【0057】
この球形度係数は、0.82を超えることが好ましく、0.85を超えることが好都合であり、0.90を超えることが更に好都合であり、球形度係数が0.95を超える場合には更に好都合な状況にある。
【0058】
本発明によって用いられる単一粉体の全粒子は、1(球体に相当)〜√2(立方体に相当)の範囲にある形状係数を有することが好都合である。粒子の細長比の十分な指標を示す、この形状係数は、最大フェレー径(Feret diameter)(粒子の両側に対して平行な2本の接線間の最大距離)と最小フェレー径(粒子の両側に対して平行な2本の接線間の最小距離)との比率と定義される。
【0059】
この形状係数は、1.3未満であることが好ましく、1.25未満であることが好都合であり、1.15未満であることが更に好都合であり、形状係数が1.05未満である場合には更に好都合な状況にある。
【0060】
本明細書において、「粒子」という用語は、対象となる粉体の他の物理的な実体から分離された物理的な実体に相当し、
図6A〜6Jに示されているものを含む種々の状況に対応し得る。
【0061】
したがって、本発明では、2つ以上の異なる粉体バルクブレンド混合物(非凝集粒子)は用いられない。
【0062】
具体的には、本発明では、「粒子」(相互に分離されるマクロ粒子であり得る。)がすべて概して同一の組成を有する単一の粉体が用いられる。
【0063】
したがって、本発明の方法によって用いられる単一粉体の全「粒子」の同一中間組成は、付加的な製造方法によって製造される部品において得られる材料に近いか又はこの材料と同一である化学組成に相当することに留意する必要がある。
【0064】
このように、複数の粉体のバルクブレンド混合物を用いずに、すなわち、単一の粉体を用いることによって、混合物中に種々の粉体の分離された粒子が存在せず、異なる融解温度であって非常に異なる可能性もある融解温度を有し、及び/又は等しい必要がない平均粒径及び粒度分布を有し、及び/又は混合中の各粉体の微粉度によって均一な混合物を得ることが困難であり、及び/又は粉体の密度が異なるか若しくは非常に異なり、及び/又はこれらの種々の粉体の中のいずれか1つの体積分率が他のものに比べて小さいことが確実となる。
【0065】
粉体混合物からMMC材料で構成される部品を製造するために、本発明者らは、(粗く球状である粉体によって付与されるような)十分な流動性と、個々の粒子、例えばセラミック粒子及び金属粒子間の迅速な溶解(微細な個々の粒子、具体的には耐火材料の粒子を有することによって可能になる。)を示す単一の粉体を同時に有する必要があることを明確に理解している。しかし、混合物の各粉体の微細な個々の粒子の使用は、混合時に粒子凝集の相当な危険性があるので、困難であることが分かる。粒径の減少に伴って個々の粒子間の接着力が増加するので、これらの力は重力よりも大きくなり得る。さらに、微細な個々の粒子は、帯電集積を高め、これによって、粉塵が爆発する場合がある。しかしながら、混合物中の個々の粒子の粒径が微細であるほど、個々の粒子は容易に溶解し、アセンブリは均一の特性を示すようになる。したがって、種々の粉体から生じバインダによって共に結合される微細な個々の粒子の均一混合物によって構成されたマクロ粒子の使用を回避する方法はない。
【0066】
したがって、本発明では、用語の広い意味によりプレアロイ化された(pre-alloyed)粉体を形成する適切な組成の単一粉体(単一成分の粉体(噴霧粉、被覆粉体、混合粉体、混合粉砕粉体、外皮形成粉体(encrusted powder)、…)、又は多成分粉体(凝集粉体、…))が使用され、「粒子」は、高い球形度(0.7を超え、0.8を超えることが好ましく、0.9を超えることが有利である球形度)を有する。
【0067】
この単一粉体を合成する方法を実行する場合には、「粒子」が吸蔵ガスを含まず、特定の化学元素によって汚染されないか、又は、少なくともこれらの元素が、意図される用途には許容できないものよりも低い濃度で含まれることを保証するように注意する必要がある。
【0068】
特定の状況では、大気よりも大きいか、又は大気よりもわずかに低いことが好ましい調節圧力において(酸素と水蒸気の分圧の点から)制御された雰囲気下にある、付加的な製造閉鎖空間の使用に頼ることが適切であり得る。
【0069】
可能な場合、この単一粉体の「粒子」は単一成分の粒子であり、すなわち、単一の成分によって構成され、すなわち、均一組成の連続的な材料(
図6A)、又は「粒子」の規模において不均一な(すなわち、均一ではない)組成(
図6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6H)から形成される。
【0070】
用いられる粉体は、粉体の組成が粒子の規模において均一であるがその微細構造の規模では必ずしも均一でないように、母合金を微粒化するか又は遠心分離して(具体的には、回転電極を用いて)得られることが好ましい。
【0071】
例えば、好ましい方法において、融解温度、化学組成、及び粉体の反応性によって、これが可能である場合、プレアロイ粉は、「粒子」の規模において均一組成の連続的な材料から形成される単一成分の「粒子」から構成され、単一の化学元素(単一元素粉体)から構成されるか、又は、多くの場合、複数の化学元素(多元素粉体)から構成され、球状又は準球状の形態(
図6A)であり、粉体の粒子を形成するために、ガス噴霧によって、又は、回転溶融母合金を回転電極型の遠心分離をして液滴を形成し保護若しくは不活性雰囲気下の閉鎖空間内での飛行時に冷却することによって、本発明の方法に用いられる。かかる母合金は、例えば金属製である。
【0072】
かかる装置の底部から固化された液滴を回収した後、最も微細な液滴を微粒化装置の粉体分離器から発生させ、最初に、空気圧振動の支援により、30μm〜40μmの範囲の特定の粒径にふるい分けした後、約1μmの範囲まで微粒子を溶出する(空気又はガスタービン)ことによって、これらの液滴を選択的に分類する。
【0073】
上述したものと同様な他の状況は、プレアロイ化合金粉体(すなわち、連続的な材料から製造される多元素粒子)の単一成分「粒子」が、「粒子」の規模において不均一な組成を有するという事実により、全く異なってくる。
【0074】
かかるプレアロイ粉は、種々の合成方法によって、又は種々の合成方法の組合せ、具体的には、乾燥時、湿潤時に、若しくは不活性ガス下での機械的若しくは加工熱処理の適用に基づく方法によって(詳細には、ビーズ、ボール、ナイフ、ハンマー、ディスク若しくはホイール、…を用いる従来の粉砕若しくは摩砕によって、又は、おおむね高エネルギーで、好ましくは高エネルギー遊星ボールミルにおいてセラミック粉体と金属粉体との間で粉砕を組み合わせること(機械的合金化による粉砕)によって、又は、実際には、非常に特定の用途において、低温粉砕、反応性固体粒子又は固体粒子と反応性ガスとの間の反応性粉砕、若しくは機械的融解によって)、又は化学若しくは加工熱処理(具体的には、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化(若しくは支援)化学蒸着(PECVD若しくはPACVD)、及び有機金属化学蒸着(OMCVD))、又は反応性合成(具体的には、自己伝搬高温合成(SHS)として知られている自己伝搬燃焼)によって、製造することができる。
【0075】
球状の度合いが高く、高い化学的純度の粒子を生じる、ガス噴霧及び合金の遠心分離とは異なり、金属粉体の機械的若しくは加工熱処理粉砕、又は、実際には、金属粉体の機械的合金化は、元素の粉砕から生じる不純物を導入することが好ましく、粒子の形態及び粒径を正確に制御できないことを思い起こす必要がある。しかし、粒子の形態は、概して等方性であり、球状の度合いが高い。
【0076】
したがって、「粒子」が、
図6B〜6Hに示されているものなどの「粒子」規模において不均一な組成の単一成分粒子である、種々の種類のプレアロイ粉が得られる。
【0077】
有益な可能性によれば、用いられる粉体は、被覆又は外皮形成によって得られる。
【0078】
図6Bは、均一成分の単一元素粒子又は多元素粒子として形成されるプレアロイ粉のかかる粒子の1つを示し、この粒子は、コーティング又は被覆され、連続的で第1の材料から製造されるコアと、連続的で第1の材料の組成とは異なる組成の第2の材料から製造される被覆とを有し、第2の材料が、例えば、化学蒸着(CVD)によって、又は物理気相蒸着法(PVD)によって、又は湿潤時若しくは乾燥時に流動床の熱化学処理によって、又は、実際に、機械的融解型の加工熱処理によって、真空蒸着される。
【0079】
硬質粒子の機械的融解によって得られる金属被覆は、大きな体積分率の非酸化物セラミック補強材料(炭化物、窒化物、ケイ化物及びホウ化物)又は金属間化合物補強材料を有するMMCの延性又は靱性を向上させるように機能するが、これは、かかる体積分率によって、高エネルギービームにより被覆されるかかる金属の融解は、固体のまま維持されるセラミック補強材料中の金属拡散を大幅に促進するからである。上述の合成方法によるプレアロイ化粒子の被覆が、多層型であってもよいことは言うまでもない。
【0080】
別の有益可能性において、用いられる粉体は、粉砕/混合、すなわち、衝撃若しくは摩滅(摩擦摩耗)による機械的粉砕/混合によって、又は剪断若しくは圧縮によって、又は、実際には、これらの応力の2つ以上の組合せによって得られる。粒子の最終平均粒径は、用いられる粉砕方法、粉砕要素(材料の種類、形状、サイズ)の特性、粉砕時間、粉砕媒体(乾式粉砕、又は制御雰囲気、分散剤の有無による水性若しくは非水性媒体)、負荷比(粉体の質量に対する粉砕要素の質量)、並びに、粉砕要素及び/又は(and/of)ジャーの回転速度によって異なる。
【0081】
図6Cは、外皮形成によって得られるプレアロイ粉の粒子の状況を示している。具体的には、第1の粉体の微細硬質粒子は、延性粒子であって、均一の組成で非常に大きな粒径であり、1つ以上の元素から製造され、第2のプレアロイ粉から得られる延性粒子の表面に外皮が形成される。この効果を達成する方法の中の1つは、機械的に合金化することであり、この機械的合金化は、微細であり高エネルギーにおいて硬度が高い第2の粉体を、延性を有し粗い第1の粉体と共に所望の体積割合で混合することである。これは、摩滅によって、及び/又は遊星ミルの使用によるビーズの衝撃下で行うことができる。エネルギーは、場合により保護ガス下で、支持ディスクとは反対方向に回転する粉砕容器(ジャー)によって放出される。例えば、
図6Cにおいて理解することができるプレアロイ粉の粒子は、均一な組成のTi6Al4V合金から製造されるコアと、微細な個々のセラミック粒子(例えば、TiB
2若しくはTiCの粒子)から製造される被覆、又はTi6Al4Vの表面に外皮が形成される非金属粒子(例えば、ホウ素(B))によって構成されている。
【0082】
図6Dは分散型のプレアロイ粉の粒子を示しているが、その材料は連続的であり、種々の化学組成を有し多元素から製造される延性合金を含むことが好ましい元の粉体の2つ以上の粒子を緊密に混合して得られ、例えば、2つの元の粉体の部分は、それぞれ薄く暗く描かれた
図6Dにおいて理解することができ、2つの元の粉体自体は、均一な粒子であるが塑性によって変形した種々の組成を有し、多くの位置で互いに結合して
図6Dのプレアロイ粉粒子を形成するようになる(2つの元の粉体の粒子の粒径は同じ桁であるか、又は異なっていてもよい。)。
【0083】
図6Eは分散型のプレアロイ粉の粒子を示しているが、その材料は連続的であり、非常に異なる粒径であり種々の化学組成を有し延性合金と硬質の個々の粒子とを含むことが好ましい、元の粉体の2つ以上の粒子、具体的には酸化物粒子(これによって、酸化物分散強化(ODS)材料が提供される。)を緊密に混合して得られ、例えば、2つの元の粉体の薄い部分と暗い部分をそれぞれ理解することができ、粒子は均一であるが異なる組成であり、第1の粉体の薄い粒子は塑性によって変形し、多くの位置において、暗く描かれた第2の粉体の硬質粒子と結合し、
図6Eのプレアロイ粉粒子を形成する。
【0084】
これらの2つの粒子では共に、粉砕及び強力な機械的混合によるプレアロイ化法が、中又は高エネルギーで用いられ、遊星ミルの使用が必要な場合が多い。
【0085】
図6Fは、
図6D及び6Eの粉体粒子の特性を組み合わせたプレアロイ粉粒子を示し、このプレアロイ粉粒子は分散型であるが、その材料は連続的であり、2つの延性合金粉体を含む種々の化学組成の3つの元の粉体を一緒に緊密に混合して得られ、例えば
図6Fでは、大きなサイズの1つ以上の粒子から得られる白色のマトリックスを理解することができ、大きな暗い部分はそれぞれ、硬質であり具体的には酸化物の粒子である非常に小さな粒径の暗い個々の粒子と共に、中程度の粒径、又は場合により第1の粉体の粒径に近い粒径の単一粒子から生じる。
【0086】
図6Gは、
図6B及び6Dの粉体粒子の特性を組み合わせたプレアロイ粉粒子を示し、第1の製造工程は、
図6Dのもののような、すなわち分散型のプレアロイ粉粒子を得るように機能するが、その材料は連続的であり、種々の化学組成であり多元素から構成される延性合金を含むことが好ましい元の粉体の2つ以上の粒子を緊密に混合して得られ、これは、
図6Gの粒子のコアを構成する。第2の製造工程は、連続的な被覆であって、コアを形成する第1の材料の組成とは異なる組成の第2の材料から製造された被覆を形成するように機能する。
【0087】
図6Hは、
図6D及び6Cの粉体粒子の特性を組み合わせたプレアロイ粉粒子を示し、第1の製造工程は、
図6Dのもののような、すなわち分散型のプレアロイ粉粒子を得るように機能するが、その材料は連続的であり、種々の化学組成であり多元素から構成される延性合金を含むことが好ましい元の粉体の2つ以上の粒子を緊密に混合して得られ、これは、
図6Hの粒子のコアを構成する。第2の製造工程は、不均一な組成の延性粒子の表面に、第1のプレアロイ粉から得られる非常に大きな粒径の、第2の粉体の硬質微粒子(例えば
図6Dの粒子)を外皮形成することによって、不連続な被覆を形成するように機能する。
【0088】
他の状況では、
図6I及び6Jに示されているように、この特有な粉体の「粒子」は多成分粒子であり、すなわち、これらはそれぞれ、種々の化学組成であり「マクロ粒子」を構成するように有機又は無機バインダによって共に結合される、複数の成分(又は個々の粒子)から同様に製造される。また、複合粉体も該当し得る。かかる状況下では、粒子は不連続に形成され、不均一な組成であり、本発明によれば、準球状である。
【0089】
このような凝集粉体の合成におけるバインダの使用によって、凝集体に不連続な材料の特性が付与され、これを多成分粒子の粉体と称することが妥当である。
【0090】
特定の状況下では、バインダは、統合工程を用いることによる凝集工程後に除去され、統合工程は、凝集粉体の温度を上昇させることによってバインダを熱分解するか又は蒸発させるものである。
【0091】
かかる「マクロ粒子」型の「粒子」は、水分の存在下で、個々の成分、又は種々の粒径、形状及び/又は化学組成の粒子を凝集させることを含む造粒、続いて乾燥によって得ることができる。しかし、スリップの凝集‐乾燥又は噴霧乾燥による「マクロ粒子」型の粉体粒子の製造は、次に示す段階における十分な制御が必要である。
・具体的には溶媒、分散剤、可塑剤並びにバインダ(安定性、均一性、レオロジー挙動及び沈降)を適切に選択することによる、スリップの配合段階。
・スリップの噴霧段階並びに液滴の乾燥段階(液滴の粒径、粒度分布、速度及び乾燥方法)。懸濁液の形態である個々の粒子の混合物のこの造粒は、(高温の空気又は不活性ガスの流れにおける)低温での微粒化によって、粒子を、凝集体であって、球状で粒径が等しく、50μmを超える場合が多く、優れた流動性の凝集体に変化させることができる。
・高い密度で凝集性のある凝集体を有することが所望される場合、このようにして形成された顆粒を統合する段階(オーブン、火炎又はプラズマトーチ処理)が想定されることもある。さらに、バインダは、バインダが除去されていない、かかる凝集粉体を用いた付加的な製造時に、問題を発生させる場合があり、このため、バインダを除去することは利点である。オーブン処理は、顆粒の特性を変更することなく、顆粒の構造を統合することができるが、酸素アセチレン炎処理は、顆粒の一部を融解し、顆粒を焼結し、球状にし、これによって、顆粒の形態を変化させる。
【0092】
したがって、この単一粉体は、「凝集体(agglomerate)」、「凝集物(aggregate)」、実際には「顆粒」とも称する「マクロ粒子」から構成され、これらは、「設計された(engineered)」粉体として一般に知られている粉体を構成する。
【0093】
種々の種類の設計された粉体、又は
図6I及び6Jに見られるような多成分粒子のプレアロイ粉を得ることができる。
【0094】
有益な可能性において、用いられる粉体は、スリップとしても知られている懸濁液を造粒して得られる。スリップは、形状、組成及び/又は粒径が異なる、個々の粒子、場合により個々の粒子の混合物から構成される微細粉体の水性又は水性でない懸濁液である。溶媒は、低沸点及び低粘度である必要がある。溶媒は、有機又は無機であり得るバインダを溶解し、可塑剤を溶解し、さらに、解膠剤又は分散剤及び湿潤剤などの種々の添加剤も溶解するように機能する必要がある。その一方で、溶媒は、水溶性あっても、設計された粉体の個々の粒子と反応性であってもならない。可燃性で毒性を有する有機溶媒が、低粘度により、広範囲の使用で残存するが、その表面張力(γ
lv)は個々の粒子の濡れを向上させ、その高い蒸気圧によって顆粒を迅速に乾燥させる。しかし、水性溶媒は、環境及び費用についての明らかな理由により、有機溶媒よりも採用され始めている。水は、ゆっくり蒸発するという主な欠点を示す。溶媒が蒸発した後、バインダは、顆粒の個々の粒子間に機械的凝集性を付与し、これによって、粒子を操作し輸送することができる。一般に、低分子量ポリマーであることが多い可塑剤は、粘度を低下させガラス転移温度(Tg)を下げるように、バインダに加えられる。「可塑剤」という語が示すように、可塑剤の添加は、顆粒の可塑性を増加させるように機能する。
【0095】
造粒によって得られる複合粉体のマクロ粒子から構成される「粒子」は、
図6I及び6Jに示され、これらは、バインダ、例えば、ビニルポリマー、アクリルポリマー、ポリイミン及びポリオキシドなどのポリマー、さらに、エマルジョン中のポリマー及び天然由来のポリマーによって本質的に相互連結した個々の成分又は粒子から構成される顆粒である。
【0096】
図6Iには、2つの種類の個々の粒子又は個々の成分が存在し、これらは、薄く描かれた、種々の粒径である延性金属製の個々の粒子と、暗く描かれた、短繊維(又は「ウィスカ」)から製造される脆い個々の成分が存在する。これらは、一般に、金属マトリックスの機械的強度を高めるように、補強材料として機能するセラミック又は金属間化合物型耐火性繊維であり、これによって、体積分率が十分に大きい補強材料が提供される。これらのセラミック又は金属間化合物型の脆く耐火性の個々の成分は、十分均一に等軸又は球状であり得る。その上、金属製の個々の粒子と種々の形状の耐火性の個々の成分の混合物を考慮することができる。
【0097】
図6Jには、同じ種類の複数の個々の粒子又は個々の成分、特に、金属だけでなく時にセラミック若しくは金属間化合物、又は種々の粒径、種々の形状及び種々の化学組成のものであり、具体的には、薄く描かれた小さな個々の粒子(例えば、アルミニウムの粒子)、薄く描かれた大きな個々の粒子(例えば、チタンの粒子)、及び暗く描かれた卵型の個々の粒子(例えば、ニオブの粒子)という3つの金属製の個々の粒子を示した例のものが存在する。
【0098】
これらの複合粉体を形成するために、出発材料は、一般に、バインダ添加剤(例えば、有機バインダ)及び他の添加剤、緻密化(又は統合)及び球状化の有無と共に、公知の混合及び凝集法を用いることによるマクロ粒子の合成に適した平均粒径、粒度分布及び形態を有する、複数種の粒子による均一混合物である(複数の単一元素粉体及び/又は多元素粉体、「元素」という用語は、化学元素に関する。)。これらの方法は粉末冶金において周知であり、最初に目標とする中間組成、低い孔隙率、及び前述のマクロ粒子によって構成された球状形態の「粒子」を有した混合物から構成される、複数の異なる粉体の比較的狭く均一な分布を得るように機能する。
【0099】
図6A〜6Jに示されている上述の例は、本発明の範囲内に入る粉体粒子の構造又は構成を例示するように機能するものであり、当然のことながら、限定するものではない。
【0100】
費用及び清浄度を変化させるこれらの種々のプレアロイ方法は、第一に、体積分率、比表面積、延性(又は硬度)、融解温度、反応性、レーザによって放射される放射線に関する吸収性、密度、及び粉体の種々の個々の成分間の化学結合の性質に、そして、第二に、前述した粉体の部分的な又は完全な融解によって得られる均一液体の化学組成に適している(粉体が、非常に異なる融解温度を有する粒子から構成されることもあることを思い起こす必要がある。)。さらに、本発明では、平均径又は中位径の値(d
50%)に対して、複合粉体のマクロ粒子の可能な粒径範囲(d
90%−d
10%又は更に好ましくはd
100%−d
0%によって定義される。)は、マクロ粒子間の粒径があまりにも大きくずれないように、そして、粗すぎる(50μm付近のd
50%)顆粒を有さないようにするために小さい。
【0101】
概して、本発明において、本出願に記載されているいずれかの種類の粉体では、粒子は、比較的狭い粒度分布を確実に有することが必要である。しかし、複合粉体では、造粒方法は、最も狭い粒度分布を有する「粒子」、及び最も粗い粉体をもたらす。さらに、この凝集複合粉体は、SLM法よりもDMD法に適している。実際に、製造プレート上に堆積された粉体層の十分な緻密性は、微粒化により得ることができる広い分布の粒径を用いることによって得られることを思い起こす必要がある。
【0102】
本発明において、(d
90%−d
50%)/d
50%及び(d
50%−d
10%)/d
50%は2つの範囲であり、1つ目の範囲は、0.66(66%)以下であり、実際には、0.33(33%)以下であり、0.17(17%)以下であることが好ましく、2つ目の範囲は、0.33(33%)以下であり、実際には、0.17(17%)以下であり、0.08(8%)以下であることが好ましい。
【0103】
しかし、所望の組成を有し球状の形態を有する複合粉体(顆粒、凝集物又は凝集体とも称する。)の使用によって、DMD法を行う場合に、複合粉体は、粉体分注器及びノズル内を非常に容易に流れ、さらに、SLM法を行う場合に、複合粉体は、製造プレート上に粉体層として非常に容易に均一に広がる。また、マクロ粒子から構成される単一の粉体を形成するための、種々の粉体の個々の粒子による均一混合物の造粒は、種々の粒径及び/又は種々の密度を有するこれらの種々の粉体の粒子の分離又は沈降を回避することによって、粉体の取扱い、輸送及び保存を容易にする(最も小さく及び/又は最も重い粒子は、顆粒構造体内の間隙に容易に流れる傾向がある。)。粉末冶金学には多くの造粒方法があり、これらは当業者に周知である。
【0104】
マクロ粒子から構成される複合粉体の使用によって、混合する種々の粉体のうち、微細でありかつ適度な量にあることが好ましい耐火性粒子から構成される粉体を用いることを想定することができる。かかる状況下では、この複合粉体を製造する方法は、適切な造粒方法を実行する前に、種々の粉体の混合が均一であることを要する。かかる状況下では、かかる方法によって、層を広げ、SLMにおいて均一な粉体層を得るという第一の問題と、ノズル内を流れるという第二の問題とを回避することができるだけでなく、微粒子がDMDのノズルから出口に分散する(広がる)ことも妨げて(このようなことは、低密度であるので特に該当する。)、これによって、液体プールが反復可能な(又は再現可能な)組成であることが保証される。
【0105】
造粒方法を実行する前に、種々の粉体の粒子を均一に混合することが重要である。このことが保証されない場合、種々の組成の顆粒又はマクロ粒子があることがあり、これによって、最終部品の組成に影響がもたらされ、そして、不均一となる。混合は、粉体の中の1つの体積分率が小さい場合に、他のものと比較して、均一とするのが困難である(例えば、脱酸素元素として希土類元素を混合物に加えるか、又は固体と液体との間の濡れを促進するように混合物に界面活性剤を加える。)。
【0106】
単一成分粉体の他のプレアロイ法、例えば、「スプラット冷却」及び「融解紡糸」が存在するが、これらの方法は、産業界ではそれほど広まっておらず、単一クラスの材料(具体的には、この例におけるアルミニウム合金)に特有である。
【0107】
本発明を用いて、微粒化から直接導かれるこれらの方法によりかかるプレアロイ粉に頼ることで、具体的には、各粒子内の、そして均一な全粒子間の化学組成を確実に得ることができる。
【0108】
したがって、最終部品の設計寸法に非常に近く、強度特性、さらに、部品が意図する用途に期待されるレベルに対応する酸化又は腐食に対する耐性も有する、部品を製造することが可能である。
【0109】
このため、その後の熱処理(すなわち、高温処理)の均一化は、もはや必ずしも必要ではないことになり、これによって、実質的な費用節減が達成され、部品の歪みが回避される。さらに、高エネルギービームによって粒子を融解するこれらの方法の後に、構造が硬化した材料が十分に冷却される限り、低温で硬化相を析出する処理(焼き戻し)は十分であり得る。
【0110】
したがって、本発明の解決策によって、高エネルギービームによる粉体粒子の融解に関与する付加的な製造方法によって得られる部品を形成する材料の組成及び微細構造の非常に大きな不均一性を低減することができる。
【0111】
限定的でない例として示されている実施形態の次の詳細な説明を理解することで、本発明を十分に理解することができ、その利点は更に明確になる。説明は添付図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0113】
粉体粒子を融解することによる、構造材料を用いた付加的な製造方法の特定の欠点、例えば、プールからの高揮発性化学元素の蒸発、その相及び/又は粒の粒径及び/又は形態により部品に適していない微細構造、材料の顕著な異方性、望ましくない脆い酸化物又は析出物の存在、欠陥の存在、…などを克服するために、本発明に記載されている顆粒状材料を合成する方法の中の1つにおいて、単一成分プレアロイ粉又は粉体の混合及び凝集から生じる多成分複合粉体を考慮することが適切であり、これによって、部品を製造する合金に一般に用いられる中間組成とは異なる中間組成がもたらされ、可能な限り、球状の形態を有する粉体又は粉体の混合物と同様に維持される。
【0114】
本発明の第1の実施形態において、用いられる粉体は、前述の方法から得られる部品を形成する前述した材料の組成の中の少なくとも1つの化学元素が濃縮された組成を有する。
【0115】
これは、母合金の組成に、最終部品を形成する前述した材料の組成の一部を形成する1つ以上の元素の十分な量の粉体を加えることであり、これは、高エネルギービームにより粉体粒子を融解することによって付加的な製造方法を実行する間に、これらの元素の一部の自然損失を償うのに行われる。この特定の例において、粉体は、均一組成の単一成分プレアロイ粉である。
【0116】
かかる状況下では、本発明の方法によって得られる部品の材料、具体的には合金の中間化学組成とはわずかに異なる中間化学組成を有する粉体を提供することが考慮されるが、これは、製造時に1つ以上の化学元素の量の損失、具体的には蒸発による損失を補う必要があるからである。この蒸発は、製造閉鎖空間が概して大気よりも高い圧力にあるSLMとは対照的に、真空下での付加的な製造方法、具体的には電子ビーム融解(EBM)に関与する方法を用いる場合に、特に生じる。
【0117】
この自然損失は、粉体粒子が融解温度を十分に超える非常に高い温度まで上昇した後の、及び/又は高真空下(10
-5ミリバール(mbar)〜10
-6mbar)での、これらの元素の相当な蒸発によるものであり得る。
【0118】
第1の実施形態のこの第1の変形例において、前述の化学元素、又はその酸化物の中の1つは、前述の高エネルギービームによって生じる温度において揮発性である。
【0119】
高エネルギービームの影響下で失われる揮発性化学元素の量が依然として少ない場合、この欠点は、均一な組成の単一成分プレアロイ粉(
図6Aの粉体)を用い、通常、前述の揮発性元素を濃縮することによって克服される。大規模な蒸発が生じる場合、及び、現在の技術的制限によって、均一組成の単一成分プレアロイ粉が産業上利用可能でない場合、被覆によって不均一な組成の単一成分プレアロイ粉(
図6B及び6Gの粉体)、又は揮発性の化学元素によって構成された組成の微細粉体粒子を外皮形成した単一成分プレアロイ粉(
図6C及び6Hの粉体)を考慮することが適切である。
【0120】
例えば、前述の材料はTi6Al4V合金であってもよく、前述の揮発性元素はアルミニウムであってもよい。Ti6Al4V又はTA6V合金は、チタンと、6重量%(wt%)のアルミニウムと、4重量%のバナジウムとから構成される。
【0121】
Ti6Al4V合金の組成に対して0.15重量%〜3重量%の範囲に、好ましくは0.15重量%〜1.5重量%の範囲に、アルミニウムを含む粉体を濃縮することを考慮することが好ましい。
【0122】
別の例において、前述の材料は、アルミニウム及びリチウムベースの合金(具体的には、2.7重量%<Cu<4.3重量%、0.8重量%<Li<1.6重量%、0.25重量%<Ag<0.45重量%、0.01重量%<Mn<0.45重量%、0.3重量%<Mg<0.8重量%、Zn<0.63重量%、Si<0.12重量%、Fe<0.15重量%、残部がAlの組成を有する合金)であり、前述の揮発性元素はリチウムであり、蒸発する量は0.1重量%〜0.5重量%程度であり得る。
【0123】
別の例において、前述の材料はチタンベースの合金であり、6242合金(すなわち、Ti‐6Al‐2Sn‐4Zr‐2Mo‐0.1Si(重量%))であることが好ましく、濃縮される必要がある前述の揮発性元素はSnであり、この濃縮は、合金の組成に対して0.15重量%〜1.5重量%の範囲にある。
【0124】
別の例において、前述の材料はアルミニウムベースの合金であり、主な合金化元素がMg及びSiである6061合金であることが好ましく、濃縮される必要がある前述の揮発性元素はMg及び/又はCuであり、この濃縮は、Cuでは合金の組成に対して0.05重量%〜0.40重量%の範囲、Mgでは0.05重量%〜1重量%の範囲にある。
【0125】
別の例において、前述の材料はTiAl型の金属間化合物材料であり、48‐2‐2 TiAl材料(すなわち、Ti‐48Al‐2Cr‐2Nb(原子百分率(at%)))であることが好ましく、濃縮される必要がある前述の揮発性元素はAlであり、この濃縮は、金属間化合物材料の組成に対して0.15重量%〜3重量%の範囲にある。
【0126】
別の例において、前述の材料は、析出硬化型のニッケルベースの合金γ´‐Ni
3(Al,Ti)であり、濃縮される必要がある前述の揮発性元素はAlであり、この濃縮は、合金の組成に対して0.05重量%〜3重量%の範囲にある。
【0127】
別の例において、前述の材料は鉄ベースの合金であり、より正確には、Cuによって構造が硬化したマルテンサイト系ステンレス鋼であり、C最大0.07重量%、Mn最大1.00重量%、P最大0.040重量%、S最大0.03重量%、Si最大1.00重量%、Cr 15.00重量%〜17.00重量%の範囲、Ni 3.00重量%〜5.00重量%の範囲、Cu 2.8重量%〜5.00重量%の範囲、Nb+Ta 0.15重量%〜0.45重量%の範囲、残部がFeの組成を有する17‐4PH(Z6CNUl7‐04又はX5CrNiCuNb17‐4又は1.4542)であることが好ましく、濃縮される必要がある前述の揮発性元素はCuであり、この濃縮は、合金の組成に対して0.15重量%〜3重量%の範囲にある。
【0128】
別の例において、C最大0.07重量%、Mn最大1.00重量%、P最大0.040重量%、S最大0.03重量%、Si最大1.00重量%、Cr 14.00重量%〜15.50重量%の範囲、Ni 3.50重量%〜5.50重量%の範囲、Cu 2.50重量%〜4.50重量%の範囲、Nb+Ta 0.15重量%〜0.45重量%の範囲、残部がFeの組成を有した析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼(Z7CNU15‐05又はX5CrNiCuNb15‐5又は1.4540)である、15‐5 PH合金が挙げることができる。高エネルギービーム下で揮発化されるこの元素のCuの濃縮(総量は、1500ppmから2.5重量%の範囲にある。)が、硬化相の所望の体積分率を維持するために考慮され、体積分率は、Cuの含量と非常に関係している。ただし、液体法によって15‐5 PH合金が得られることを考慮すると、15‐5 PH合金は、特定の粒界によりノッチ効果に対して敏感であり、Cuを濃縮し、材料の表面に「谷(trough)」を形成し、そして、欠陥に対して高い耐性を有し、レーザによって製造される部品の析出硬化が対象となる用途に十分である場合、Cu損失の補償を回避するのが通常適切である。
【0129】
別の例は、フランスAFNOR規格においてGZ4TR、及びASTM規格においてZE41(又はMg‐Zn‐RE‐Zr)として知られている、RZ5マグネシウム合金に関する。その組成は、Cu<0.10重量%、Mn<0.15重量%、Ni<0.01重量%、Zn 3.50重量%〜5.00重量%の範囲、Zr 0.40重量%〜1.00重量%の範囲、Ce(希土類)0.75重量%〜1.75重量%の範囲、残部がMgである。
【0130】
このRZ5マグネシウム合金に亜鉛を加えることができ、亜鉛は揮発性元素であり、蒸発する量は0.5重量%〜2.5重量%程度であり得る。
【0131】
本発明の第2の実施形態において、用いられる粉体の組成は、少なくとも1つの付加的な化学元素であって、合理的な量(0ではなく、具体的には、0.001重量%を超え、すなわち10ppm、又は、実際には、1キログラム当たり10ミリグラム(10mg/kg)であるが、0.5重量%、すなわち5000ppm、1キログラム当たり5グラム(5g/kg)未満である。)であり、付加的な化学元素が粉体の組成に存在しない状況と比較して、前述した方法から得られる部品の前述した材料の微細構造を変更するのに適した、少なくとも1つの付加的な化学元素を有する。
【0132】
可能な場合、これは、均一組成の単一成分プレアロイ粉(
図6Aの粉体)の使用によって行われ、前述の元素を濃縮する。被覆によって得られる不均一組成の単一成分プレアロイ粉(
図6B及び6Gの粉体)、又は前述の付加的な元素によって構成された組成の微細粉体粒子を外皮形成することによって得られる単一成分プレアロイ粉(
図6C及び6Hの粉体)を考慮することが適切なこともある。単一成分プレアロイ粉と比較して、付加物に延性がない限り、前述の付加的な元素によって構成された組成の、微細硬化粒子を含む単一成分粉体(
図6E及び6Fの粉体)を混合‐粉砕することが好ましい。
【0133】
さらに、非常に大きな含量の変性元素(modifying element)によってプールの流動性が低減し、プール中の溶存水素含量が増加し、これによって、固化時に吸蔵ガスの細孔が生じるという事実を考慮する必要がある。
【0134】
かかる状況下では、元素は、所望の母合金の組成の一部を形成する元素としては必要ではないが、専ら、材料、具体的には、仕様を満たすように最終部品の合金の微細構造を変更する目的で存在し、方法の特定の具体的特徴、特に、微細構造の異方性及び大きな粒径の粒を克服する。
【0135】
第2の実施形態の第1の変形例において、前述の材料は合金であり、前述の付加的な化学元素は、前述した合金の金属相(metallurgical phase)の形態を変更するのに適している。
【0136】
例えば、亜共晶系Al‐Siアルミニウム合金では、付加的な化学元素は、ナトリウム(Na)、及び/又はストロンチウム(Sr)、及び/又はカルシウム(Ca)、及び/又はアンチモン(Sb)であり、これらは、ラメラ又はロッド共晶(rod eutectic)の形態を改善する効果を有する。合金の延性を増加させる、共晶微細構造を改善する効果が、変性元素(具体的にはナトリウム)と反応してリン化物を生成する、元素リン(P)を加えることによって低減することは言うまでもない。したがって、リンの含量は、低レベル(<15ppm〜<30ppm)に維持される必要がある。共晶微細構造を改善する別の方法は、高い速度の固化を得ることができる方法パラメータを用いることであり、高エネルギービームにより粉体粒子を融解することがこれらの迅速製造方法の特徴であることを思い起こす必要がある。
【0137】
第2の実施形態の第2の変形例において、前述の材料は合金であり、前述の付加的な化学元素は、粒の形態を常に改善することなく、前述した合金の粒の粒径を微細化するのに適しており、この概念は、接種剤(inocculant)を加えることによって粒径を微細化することである。
【0138】
例えば、アルミニウム合金によって、微細な粒の等軸構造は、強度と延性の最適な組合せを提供することが周知である。プールが固化した後に形成される粒の形態及び粒径は、合金の組成、固化の速度、及び、「微細化剤」と称する少量の付加的な化学元素、具体的には、Ti、B若しくはTi‐Bの塩、又は、実際には、Al‐Ti、Al‐B若しくはAl‐Ti‐B合金の形態のチタン及びホウ素の添加によって決定される。これらの微細化剤化学元素は、液体アルミニウムと接触すると、不均一粒核形成部分を構成する高融点金属間化合物を形成し、これによって、粒の数が増加する。また、Nb、Zr及びCu‐Pなどの他の接種剤(元素リンが特にSiの核形成に作用する。)も、アルミニウム合金の微細化に用いることができる。アルミニウム合金に少量(10ppm〜5000ppm)のTi及び/又はZrを加えると、TiA1
3及びZrAi
3金属間化合物が形成し、これらの粒の微細化によってこれらのアルミニウム合金の固化時に高温亀裂が低減する。
【0139】
例えば、前述の母合金は、NF EN 1706規格の43000合金、又は、実際には、米国アルミニウム協会のA360合金に類似したアルミニウムベースのAlSi10Mg型である。この合金は、アルミニウムと、9.5重量%のシリコンと、0.5重量%のマグネシウムと、1.3重量%の鉄とから構成され、前述の元素は、チタン及び/又はホウ素及び/又はジルコニウム(好ましくは、100ppm〜300ppmのTi、及び/又は20ppm〜50ppmのB、及び/又は100ppm〜500ppmのZr)である。
【0140】
これらの3つの元素は、3重量%〜10重量%のTi若しくはZrを含有するAl‐Ti若しくはAl‐Ar二元合金、又は、実際には、0.2重量%〜1重量%のBを加えた同じAl‐Ti若しくはAl‐Zr二元合金によって構成されるAl‐Ti‐B若しくはAl‐Zr‐B三元合金の形態で母合金に導入することができる。アルミニウムを多く含む母合金へのTiB
2又はZrB
2の粒子の直接導入は、溶解を困難にする高い融点により、回避する必要があり、特に粒子が大きいので、このようなことが該当する。さらに、アルミニウム合金へこれらの合金を導入することによって、アルミナイド(本質的にTiAl
3又はZrAl
3)、並びにホウ化物(本質的にTiB
2又はZrB
2、及び時にAlB
2)は、アルミニウムの粒の不均一核形成部分を構成するのに適した粒径、形態及び分布を形成する。
【0141】
したがって、チタン及び/又はホウ素は、好ましくはアルミニウムベースの合金の融点に近い低融点の二元合金(Al‐Ti)若しくは(Al‐B)又は三元合金(Al‐Ti‐B)の形態で、単独で又は一緒に導入される2つの化学元素であることが好ましい。
【0142】
アルミニウム合金以外の合金の種類については、例えば、前述の母合金は、チタンベースのTi6Al4V又はTA6V合金であってもよく、前述の付加的な化学元素又は微細化剤元素は、ホウ素(10ppm〜5000ppmのB)、又はTiB
2型のホウ化物(10ppm〜5000ppmのTiB
2)であってもよい。
【0143】
これらの化学元素(B又はTiB
2)は、外皮形成(
図6Cのような不連続な被覆)及び/又は混合(
図6Eに示されている。)によって、微細な個々の粒子の形態で導入されることが好ましい。
【0144】
上述のRZ5マグネシウム合金に、少量の(全10ppm〜5000ppmの範囲にある。)Ca及び/又はZrを加えることができ、これによって、粒の微細化に対して有益な効果が生じる。
【0145】
他の例において、Ti、Fe、Al又はNiベースの合金では、「微細化剤」の付加的な化学元素による濃縮は、C、B、N、TiC、TiN、TiB
2、Fe
3C及びFeSiから選択される化学元素の中の1つ以上を含み、その総添加量は50ppm〜5000ppmの範囲にある。
【0146】
第2の実施形態の第3の変形例において、前述の元素は、前述した合金のプールから酸素を除去するのに適している。
【0147】
例えば、前述の合金は、16NCD13、32CDV13又は15CDV6が好ましい鉄ベースの合金であり、前述の付加的な化学元素又は脱酸素元素は、TiC及び/又はTiB
2の粒子の形態で導入されるチタンである(1体積%未満、好ましくは50ppm〜5000ppmのTiC及び/又はTiB
2、好ましくは50ppm〜500ppmのTiC及び/又はTiB
2)。
【0148】
他の例において、金属マトリックス複合材料(MMC)又は酸素欠乏材料(oxygen-hungry material)を合成する場合における希土類の添加は、付加的な製造時に、液体プール中に溶解する酸素を制限する効果がある。最も多く用いられる希土類は、スカンジウム(Sc)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)及びランタン(La)である。これらには、溶存酸素を酸化物の形態で固定する特定の特徴があり、この酸化物は、MMC及び酸素欠乏材料のマトリックスに対して化学的に安定している。費用を削減し、液体プールから更に効果的に酸素を除去するために、通常、粉体合成では、RB
6(NdB
6、YB
6、LaB
6、ScB
6)型の小さなサイズの六ホウ化物の形態で希土類を導入することが適切であり、この六ホウ化物は、(微細化剤)ホウ化物を形成すると共に、酸化物の形成によって液体プール中に溶解する酸素を捕捉することに適している。
【0149】
したがって、前述の付加的な化学元素は、TiC、TiB
2の微粒子、及び/又はTi、Fe及びAlベース合金の希土類の六ホウ化物を加えることにより加えられることが好ましい。
【0150】
別の例において、上述のRZ5マグネシウム合金は、プールから酸素を除去するだけでなく電池作用腐食に対する抵抗性を増加させるように機能する50ppm〜5000ppmの希土類によって、濃縮することができ、液体プールが固化する場合には、微小孔及び亀裂を低減することができる。
【0151】
第2の実施形態の第4の変形例において、不連続で、細長い形態(繊維)又は等軸の形態(粒子)(
図6Iの粉体)にあることが好ましい、補強材料を有する複合粉体の粒子に関して、前述の付加的な化学元素(界面活性剤若しくは湿潤剤)は、高エネルギービームで複合粉体粒子の一部を融解することにより形成される液体によって、(不連続)補強材料の濡れを向上させるのに適しており、具体的には、この高エネルギービームは、複合粉体の他の金属の個々の粒子を融解する高エネルギービームを含む。
【0152】
例えば、SiC粒子を補強したアルミニウムベースのマトリックスを有する複合材料では、元素Mgの溶解は、液体アルミニウムによってSiCの濡れを増加させるが、元素Cuの溶解は濡れを低減する。
【0153】
少量(50ppm〜5000ppm)のSiの添加によって、アルミニウムを多く含む液体プールのFe含量を制御し、その融解温度をわずかに低下させることができ、これによって、液体とSiC補強材料との間の濡れ性を向上させることができる。
【0154】
元素Cu及びSi(総量は、50ppm〜5000ppmの範囲にある。)により、マグネシウム合金中のSiC補強材料の濡れ性に関して同じ効果が生じることが分かる。
【0155】
第2の実施形態の第5の変形例において、前述の元素は、高エネルギービームによって供給される放射線の吸収性を向上させ、第一に、粉体層が十分に緻密である場合(SLS法を行う場合)、焼結により容易に緻密化させ、第二に、(SLM法又はDMD法を行う場合)対象となる材料の粉体を容易に融解させるのに適している。
【0156】
例えば、前述の材料は、高エネルギービームの放射に対して実質的に透明である、セラミックであり、酸化物(Al
2O
3、SiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、MgO、TiO
2、…)、又は複数の酸化物の混合物(Al
2O
3‐SiO
2、Al
2O
3‐ZrO
2、Al
2O
3‐Y
2O
3、Al
2O
3‐SiO
2‐Y
2O
3、…)であることが好ましく、これらの中の一部は融剤(付加的な製造時に材料の緻密化及び統合を促進する少量の低融点液体の形成によって、混合物の固相線温度を低下させる。)として作用することができ、また、前述の元素は、炭素、又は、用いられるレーザの波長を吸収し、微粒化若しくは遠心分離された粉体(
図6Bの粉体)の、又は、実際には、凝集された後、緻密化された粉体(
図6Jに示されているような粉体であるだけでなく、バインダを完全に除去するために火炎若しくはオーブンによる緻密化後に被覆された粉体)の連続的な被覆(50ppm〜5000ppmの炭素若しくは炭素誘導体、好ましくは100ppm〜1000ppmの炭素)の形態で導入されることが好ましい他のいずれかの元素、である。
【0157】
第2の実施形態の第6の変形例において、前述の付加的な化合物又は元素は、高温用途での機械的な観点から、合金を補強するのに適しており、具体的には、前述の付加的な化合物は、3体積%〜30体積%の範囲にある十分に大きな体積分率で用いられ、そして、十分に微細な粒径であり、十分に均一な分布であり、
図6Jに示されている複合粉体の金属の個々の粒子の粒径及び分布に共に近い。
【0158】
16NCD13、32CDV13、15CDV6、…鋼では、化合物FeAl、TiC及び他の多くのものは、補強材料として作用し得る。金属マトリックス複合材料(MMC)の比強度及び高温挙動は、非補強材料と比較して、必ず改善される。しかし、これらの延性は低下し、このような延性の低下を制限するように最適化された補強材料の体積分率が必要である。
【0159】
別の例において、例えばTA6Vなどのチタン合金は、TiB及び/又はTiCを添加して補強されてもよく、補強材料は、15体積%を超えないことが好ましい体積分率である。これらの添加は、チタン合金をB
4C補強材料と反応させることによって達成することができる。
【0160】
5000シリーズのアルミニウム合金にSiC補強材料を、そして、6000シリーズのアルミニウム合金にAl
2O
3補強材料を組み込むことが想定されている。また、マグネシウム合金にSiC補強材料を導入するのを想定することも可能である。