(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および2ならびに請求項5および6の上位概念に記載のガラスおよびガラスセラミックに関する。
【0002】
一般に、Li
2O−Al
2O
3−SiO
2系のガラスは、高温型石英混晶および/またはキータイト混晶を主結晶相として有するガラスセラミックに変換されることが公知である。そのために公知のセラミック化プロセスは、多数の刊行物に記載されている。それは、出発ガラスが、制御された結晶化によってガラスセラミック物品に変換される温度プロセスである。このいわゆるセラミック化は、公知の通り、2段階の温度プロセスで行われ、ここで、一般的に、最初に680℃から810℃までの温度での等温の核形成によって、通常ZrO
2/TiO
2混晶から核が生成される。SnO
2がこの核成形に関与していてもよい。
【0003】
それに続く温度上昇において、高温型石英混晶が核上で成長する。経済的で迅速なセラミック化に所望される高い結晶成長速度は、物質組成に応じて800℃から950℃の温度で達成される。迅速なセラミック化、つまり、短い結晶化時間に一般的であるのは、高い最大温度である。この最大温度は、通常880℃超であり、この範囲での滞留時間が短いにもかかわらず、著しい結晶成長が行われうることを保証する。
【0004】
この最大温度でガラスセラミックの組織が均一化されて、光学的、物理的および化学的な特性が微調整される。所望の場合、高温型石英混晶は、それに引き続いてさらにキータイト混晶に変換されてもよい。キータイト混晶への変換は、約970℃から1250℃の温度範囲における温度上昇で行われる。この変換によって、ガラスセラミックの熱膨張率は増加して、さらなる結晶成長によって、透明ないし不透明な外観を伴う光散乱が起こる。
【0005】
ガラスセラミックおよびその製造方法、特にセラミック化法には、多数の要件が課されており、ここで、環境配慮はいちだんと重要性が増している。
【0006】
環境配慮は、ガラスセラミックが工業的に、通常の清澄剤である酸化ヒ素および酸化アンチモンを含まないことに基づいている。これらの成分は、不純物として、通常500ppm未満の含有量で、一般に200ppm未満の含有量で存在している。例外的には、溶融において、透明なガラスセラミックの破片に清澄剤として酸化ヒ素が添加される場合、As
2O
3含有量は最大1000ppmであってよい。この再生利用によって、エネルギーおよび原材料の節約により、環境保護に効果的な寄与がなされるため、この場合、1000ppmまでの比較的高いAs
2O
3含有量が許容される。
【0007】
好都合な製造特性には、低い溶融温度および成形温度、耐失透性および迅速なセラミック化適性(Keramisierbarkeit)が含まれる。
【0008】
経済的なセラミック化のためには、短いセラミック化時間および低い最大温度、つまり、総じて低い所要エネルギーが所望されており、ここで、ガラスセラミックの透過性は、着色および散乱によって損なわれてはならない。
【0009】
透明なガラスセラミックを適用する場合、一般に、高い透過性、つまり、可視における光透過率(brightness(明度)Y)84%超、および低い色合い(彩度)C
*、つまり、中間の色相が所望される。
【0010】
さらに、混濁(ヘイズ)として現れる視覚的に妨害となる光散乱が起こらないのが望ましい。
【0011】
したがって、吸収および散乱は、経済的に製造する場合に制御されなければならない光学的現象である。
【0012】
清澄剤として酸化ヒ素を使用することにより、ガラスセラミックの特に高い透過性(高い光透過率および低い色合い)、および特に好都合な変換速度への要件は確かに満たされるが、環境配慮への要件は満たされない。
【0013】
透明なリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックの帯褐色の着色は、種々の原因があり、それらの原因は、主に吸収機構および散乱に起因する。
【0014】
環境配慮への要件は、例えば、As
2O
3の代わりに環境に配慮した清澄剤としてSnO
2を使用することによって満たされるが、しかし、生じたSn/Ti錯体は、さらなる吸収を引き起こしてFe/Ti着色錯体になる。
【0015】
溶融物の原料混合物中には、着色性元素Feが不純物として含まれている。この元素は、Fe
3+として、ならびにFe/Ti着色錯体によってイオン性着色するものである。鉄の少ない原料は高価であるため、Fe
2O
3含有量を100ppm以下の値に下げることは不経済的である。
【0016】
透明なガラスセラミックの最も強い吸収機構は、着色錯体での電子遷移であり、この着色錯体は可視光の短波領域で吸収し、それには核形成に有効な成分TiO
2が関与している。着色錯体は、隣接するFeイオンおよびTiイオンの形成によって生じるものであり、それらのイオンの間で電荷移動遷移が行われる。
【0017】
Fe/Ti着色錯体は赤褐色に着色し、Sn/Ti着色錯体は、黄褐色に着色する。Sn/Ti着色錯体は、比較的強く着色し、このことが、透明なガラスセラミックの場合、清澄剤である酸化ヒ素のSnO
2による代用を従来妨げてきた。着色錯体の形成は、標準的にセラミック化で行われる。
【0018】
透明なガラスセラミックにおける散乱は、主に、高温型石英混晶および残留ガラス相の結晶子サイズおよび異なる屈折率によって決まり、ならびにしたがってセラミック化によっても決まる。光散乱を最小限に抑えるためには、可視光域における屈折率を調整することが必要である。結晶子サイズは、可視光の波長よりも明らかに小さいのが望ましく、結晶の複屈折は低いのが望ましい(Sakamotoら「Structural relaxation and optical properties in nanocrystalline β−quartz glass−ceramic」、Journal of Non−Crystalline Solids 352(2006)、514ページから518ページまで)。
【0019】
小さい結晶子サイズは、セラミック化全体の高い核密度および低い最大温度によって達成され、このセラミック化は、成長する高温型石英混晶のサイズを可視光の波長よりも下回らせる。一般的に、高温型石英混晶の平均結晶子サイズは、20nmから60nmまでの範囲である。高い核密度は、核形成剤の充分な含有量ならびに充分な核成形時間、ならびにセラミック化の間の出発ガラスの動力学的特性を前提とする。
【0020】
可視光域における屈折率を調整するために、好都合な組成範囲およびセラミック化条件を見出す必要がある。それというのは、高温型石英混晶および残留ガラス相の組成が、組成およびセラミック化条件の結果であるからである。ここで、このいわゆる残留ガラス相には、バルク組織内の結晶子それぞれの間の中間領域だけではなく表面層も含まれる。それゆえ表面層およびバルク組織の屈折率差も、透明で色の少ないガラスセラミックの散乱を決定する。
【0021】
有効な核形成剤TiO
2は、溶融および成形における欠点によってのみ代替的な核形成剤ZrO
2およびSnO
2で代用されうる。このことは、所望される低い溶融温度および短いセラミック化時間が、そのために必要なTiO
2含分による視覚的に妨害となる散乱を伴わずに、着色錯体のゆえに比較的強い着色がもたらされることを意味する。
【0022】
清澄剤である酸化ヒ素および酸化アンチモンを使用しない環境に配慮した透明なガラスセラミックを製造するために、多数の開発努力がなされてきた。それらは、工業的および経済的な理由から実施することはこれまでできなかった。透過性、つまり、視覚的妨害となる散乱を伴わない高い光透過率およびわずかな着色と、好都合な製造条件を一致させることができなかった。
【0023】
1つの初期物質は、製造において欠点をもたらす核形成剤TiO
2を含まない組成物である。
【0024】
例えば、WO2008/065167A1は、妨害となる着色を伴わない、環境に配慮した透明なガラスセラミックの製造を記載している。このガラスセラミックは、核形成剤であるTiO
2が添加されておらず、ZrO
2およびSnO
2による核形成混合物をベースにしている。充分に迅速な核形成に必要なZrO
2含有量は、2質量%から5質量%までであり、SnO
2含有量は0.4質量%超から3質量%までである。ZrO
2およびSnO
2の含有量が高い場合、混合物の溶融は遅くなり、溶融温度および成形温度が上昇して、ガラスの耐失透性が悪化する。およそ加工温度V
Aでの粘度10
4dPasで行われる成形において、妨害となるSnおよびZrを含む結晶相が晶出する。このことは、後続のセラミック化プロセスを、温度操作によってもはやほぼ制御できないようにする。さらに、そのような組成物は、きわめて高いセラミック化温度を必要とするため、それゆえ不経済な方法である。
【0025】
また別の初期物質は、酸化ヒ素および酸化アンチモンを清澄剤として含まず、わずかな含有量のTiO
2を有する透明なガラスセラミックであるが、これは、比較的高い含有量のSnO
2およびZrO
2も核形成剤として必要とする。WO2008/065166A1では、TiO
2は、0.3質量%から1.6質量%未満までに制限されている。SnO
2の含有量は、0.25質量%から1.2質量%まで必要とされ、ZrO
2の含有量は、2質量%超から2.8質量%まで必要とされる。これらの高い含有量は、溶融および成形ならびに不充分な耐失透性の場合に欠点を伴う。
【0026】
文献JP11−228180A2およびJP11−228181A2は、透明なガラスセラミックの環境に配慮した組成を記載している。酸化ヒ素を清澄剤として使用せずに充分な気泡品質を達成するため、このガラスセラミックは、SnO
2およびClの清澄剤の組み合わせ0.1質量%から2質量%までを含む。物理的な脱色剤Nd
2O
3は使用されないため、Sn/Ti着色錯体が充分に効果を発揮する。特に、実施例に記載されたSnO
2の高い含有量は、耐失透性にきわめて不都合である。文献は、充分な耐失透性を確保するために、SnO
2含有量をどれほど制限する必要があるのかについて指示していない。さらに、これらの文献は、成分CaOおよびSrOの選択、ならびに二価成分MgO、ZnOならびにCaO、SrOおよびBaOの比によって、結晶組成および残留ガラス相の組成を調節することによる製造特性の最適化を指示していない。
【0027】
長波の赤色スペクトル領域において吸収するNd
2O
3およびCoOの添加による、透明なガラスセラミックの物理的な脱色は、EP1837312A1に開示されている。この文献は、好ましくは酸化ヒ素で清澄された組成物を記載している。酸化ヒ素の使用の他に、環境に配慮した清澄剤として、1700℃超の高温清澄を伴う、SnO
2 0.1質量%から0.4質量%までの使用も開示されている。文献は、特に好都合な製造条件、つまり、低い溶融温度および低い成形温度を達成するための組成物の準備方法を指示していない。したがって、セラミック化速度における欠点を伴わずに溶融温度および成形温度を低下させる必要がある。それというのは、溶融温度および成形温度が、エネルギー効率および経済的な製造に決定的な意味を持つからである。
【0028】
これらの引用文献はすべて、2段階のセラミック化プロセスを記載しているところが共通している。
【0029】
EP1837312B1およびEP1837314B1に記載されており、2時間未満のプロセス時間であることを特徴としているセラミック化プログラムは、必要な加熱段階後に、例えば790℃および900℃で、約5分から30分までの滞留時間を有している。公知のセラミック化法は、実質的に等温のセラミック化法である。
【0030】
ガラスセラミックが、所望の特性、特に色および散乱に関する特性を有するように方法パラメーターを相互に調整するため、いずれのガラス組成物にも費用のかかる実験が必要であることが判明した。これらの実験は、時間および費用がかかる。
【0031】
本発明の課題は、ガラスセラミックを製造するためのガラス組成物であって、所定のC
*値およびS値の場合に、核形成プロセスにおいて、特に、核形成に重要な温度領域における滞留時間に関して、可能な限り広いプロセスウィンドウを有するガラス組成物を提示することである。
【0032】
課題は、請求項1に記載のガラスによって解決される。このガラスは、以下の成分(質量%)
【表1】
を含み、ここで、条件B1:
【数1】
が成り立つことを特徴としている。
【0033】
B1の好ましい範囲は、21から25まで、特に22から25までである。
【0034】
本発明によるガラスセラミックは、請求項2の対象である。
【0035】
セラミック化後に調節される透過性は、可能な限り高いのが望ましい。透過性は、CIE表色系で測定され、一般的にY(brightness)で表される光透過率の分析によって特徴付けられる。透明なガラスセラミックとは、Y値が80より大きいガラスセラミックであると理解される。
【0036】
さらに、ガラスセラミックの場合、着色の基準として、座標L
*、a
*およびb
*を用いるCIELAB表色系のC
*値(彩度、色)が用いられる。
【0037】
C
*とは、動径ベクトル
【数2】
と定義される、CIELAB系の色座標であると理解される。
【0038】
a
*は、緑色軸/赤色軸上の色座標の位置を示しており、ここで、負の値は緑色調に相当し、正の値は赤色調に相当する。b
*は、青色軸/黄色軸上の色座標の位置を示しており、ここで、負の値は青色調に相当し、正の値は黄色調に相当する。
【0039】
ガラスセラミックの散乱への要件は、ASTM D1003から導き出される(CIE Illuminant A;Method:Procedure B,Diffuse Illumination/Unidirectional Viewing)。散乱は、多くの場合ヘイズとも表される。散乱は、試料それぞれの代表的な中央の部分において3%未満であるのが望ましい。
【0040】
しかし、この規格を基にする測定法の分析は、3%未満の値を一義的かつ再現可能に区別するには充分に正確ではない。
【0041】
したがって、ここに記載される方法により製造されたガラスセラミックの散乱は、長いガラスセラミック試料の研磨されたエッジの検査において視覚的に評価される。
【0042】
この視覚的に測定可能な散乱値Sとは、以下の通り理解される。
【0043】
散乱は、長さ2cmおよび厚さ4mmの研磨されたガラスセラミック試料の研磨された端部を検査して視覚的に評価される。そのために、試料は、日光を用いて光があてられ、長さ2cmの間隔で見られるように黒色背景に置かれる。黒色の背景は、視覚による印象の比較適性を確保するために用いられる。
【0044】
散乱を検査において視覚的に評価するための標準限度見本として、ガラスセラミックROBAX(登録商標)(SCHOTT AGの商標)のセラミック化され、ヒ素清澄された10つのガラスセラミック試料が用いられ、この試料は、それぞれ異なる散乱が生成されるように適切にセラミック化されたものである。散乱における相違は、散乱が、視覚的に観察者によってどうにか区別されうるように調節された。この限度見本標準試料と評価する試料が比較される。評価する試料の散乱に最も近い限度見本標準試料が、散乱の定量化の基準である。
【0045】
限度見本で測定された散乱は、等級0(散乱なし)から、1(SCHOTT AG社のガラスセラミックROBAX(登録商標)の標準限度見本の場合と同じくきわめてわずかな散乱)を経て、2(SCHOTT AG社のガラスセラミックROBAX(登録商標)の第二の限度見本の場合と同じくわずかな散乱)から3(半透明の乳白色の外観)までに達する。3以上の値は、市場の要求に対して不都合と見なされる。それというのは、この散乱は、特定の光比率(Lichtverhaeltnissen)においてすでに視覚的に妨害となりうるからである。
【0046】
3以上の値は、上述の測定法により測定された散乱3%に相当する。
【0047】
この事前選択の結果を保護するために、視覚的評価は、比較的正確に区別するために、試料を使用して繰り返されてよく、ここで、長さ7cmおよび厚さ4mmの研磨されたガラスセラミック試料の研磨された端部を検査して散乱が視覚的に評価される。ここでも、散乱は0から3までの等級を用いて評価される。
【0048】
核形成に重要な温度範囲における滞留時間t
KBAのプロセスウィンドウは、C
*値およびS値の選択によって異なり、あらかじめ定められる当該値が小さければ小さいほど狭くなる。C
*値が4から5までの範囲の場合、プロセスウィンドウ、特に10分より長いプロセスウィンドウ、好ましくは20分より長いプロセスウィンドウが、広いプロセスウィンドウであると理解される。
【0049】
S値が1から2までの範囲の場合、プロセスウィンドウ、特に20分より長いプロセスウィンドウ、好ましくは30分より長いプロセスウィンドウが、広いプロセスウィンドウであると理解される。
【0050】
広いプロセスウィンドウは、セラミック化プロセス、特に核形成プロセスを実施する場合、プロセス変動、例えば、迅速でエネルギー効率のよい工業的な製造方法に一般的なプロセス変動が、得られる生成物特性、例えばこの場合C
*およびSに悪影響を及ぼすことなく補正されうることが利点である。さらに、加熱段階に対して、通常、リスクとして存在している炉障害、例えば温度オーバーシュートは、C
*およびSに著しく影響が及ぼされずに補正される。そのうえ、ここで、等温領域の代わりに一定昇温速度を使用することによって、例えばセラミック化されるガラスの異なる出発状態も補正するために、非常に大きい利点が提供されることが判明した。
【0051】
核形成に重要な温度範囲は、好ましくはT1=680℃からT2=810℃までである。
【0052】
本発明によるガラス組成物の場合、滞留時間の広いプロセスウィンドウが使用でき、このプロセスウィンドウは、例えばC
*が5である場合200分超であり、Sが2である場合200分超であることが判明した。
【0053】
プロセスウィンドウの大きさは、実質的に結晶形成剤、例えばLi
2O、Al
2O
3およびSiO
3の割合、ならびに核形成剤、例えばSnO
2、TiO
2、ZrO
2およびFe
2O
3の割合によって決定され、ここで、結晶形成剤および核形成剤は、特定の比(条件B1)を満たしていなければならないことが判明した。
【0054】
特許請求の範囲に記載された成分の量範囲から逸脱する場合、プロセスウィンドウの大きさは、明らかに小さくなることが確認される。
【0055】
下限値20を下回る場合、および上限値25を上回る場合、プロセスウィンドウの大きさは同様に小さくなる。
【0056】
Li
2Oの最小含有量3.2質量%は、高いセラミック化速度、ならびに10
2温度および加工温度V
Aの低下に有利である。4.2質量%よりも高い含有量は、Li原料の費用が高いため経済的に不都合である。4質量%未満の含有量が特に有利である。
【0057】
出発ガラスの比較的高い粘度、およびムライトの、成形における不所望の失透性を防ぐため、Al
2O
3含有量は最大23質量%に制限される。高温型石英混晶相の充分な量を形成するための最小含有量は、19質量%であり、好ましくは20質量%である。
【0058】
SiO
2含有量は、最大で68質量%であるのが望ましい。それというのは、この成分が、ガラスの粘度およびそれによってV
Aおよび10
2温度を著しく高めるからである。ガラスの好適な溶融、および低い溶融温度および成形温度に対して、SiO
2の比較的高い含有量は不経済的である。
【0059】
SiO
2の含有量は少なくとも64質量%であるのが望ましい。それというのは、このことが、必要とされる特性、例えば耐化学薬品性、セラミック化速度および透過性に有利であるからである。散乱は、高いSiO
2含有量によって減少し、このことは、結晶相および残留ガラスの屈折率がより望ましく合わされることを指し示している。65質量%から68質量%までのSiO
2含有量が好ましい。
【0060】
鉄の少ない原料混合物の費用が高いため、ガラスのFe
2O
3含有量を0.01質量%(100ppm)未満の値に調節するのは不経済的である。鉄は、破片(Scherben)を再利用する場合も細分化によって加えられるため、Fe
2O
3含有量は0.01質量%超、特に0.013質量%超であるのが経済的に特に有利である。
【0061】
他方、ガラスセラミックのFe
2O
3含有量によってFe/Ti着色錯体の濃度も上昇する。着色(彩度C
*)が増して、吸収により光透過率Y(brightness)が低下する。そのため、ガラスセラミックは、最大で0.02質量%含むのが望ましい。
【0062】
清澄剤として、SnO
2が0質量%から0.5質量%まで、特にSnO
2が0.05質量%から0.5質量%まで含まれている。
【0063】
SnO
2は、核形成剤としても作用するため、SnO
2は、温度範囲におけるプロセスウィンドウを拡大して、必要とされるセラミック化時間を短縮する。成分SnO
2は、耐失透性のゆえに、最大で0.5質量%の値に制限されるのが好ましい。比較的高い含有量は、成形において接触材料(例えばPt/Rh)でのSnを含む結晶相の結晶化をもたらすため回避されなければならない。Sn/Ti着色錯体が形成されるため、SnO
2含有量は可能な限り低く選択されるべきであり、最小必要量は、充分に清澄作用した後の必要によって決定される。
【0064】
最少量0.08質量%は、充分な清澄作用に好適である。SnO
2の含有量は、耐失透性を向上させるため、およびSn/Ti着色錯体による着色のゆえに、好ましくは0.16質量%に制限されるのが望ましい。
【0065】
このことは、ガラスセラミックにおける着色C
*が5未満であることと関連している。4.5未満、さらに4未満の値が達成されるのが好ましい。少なくとも1800℃の高温清澄は、比較的高い流量を可能にする。それというのは、清澄酸素の放出が促進されているからである。しかし、比較的高い清澄温度は、Sn
2+ならびにFe
2+の形成、およびそれとともに着色錯体の濃度を高めることがあるため、ここで、さらなる最適化が必要である。
【0066】
Li
2O−Al
2O
3−SiO
2の含有量もLi
2O−Al
2O
3−SiO
2−ZnO−P
2O
5の含有量も、残留ガラス相の構造および組成と同様、ガラスセラミックにおけるセラミック化によって作り出される結晶(高温型石英混晶)の構造および組成も決定する。制御された結晶化/セラミック化の前提条件は、いわゆる核形成剤酸化物(Keimbildneroxide)、つまり、SnO
2−TiO
2−ZrO
2−Fe
2O
3であり、これは、ナノ結晶として、核形成プロセスまたは核形成剤析出プロセスによって作り出されて、結晶化中心として結晶(高温型石英混晶)に用いられるものである。ガラスセラミックにおける散乱は、実質的に、組織、つまり、結晶相および残留ガラス相の相含有量によって、ならびにこの組織中に存在している相の屈折率差によって決定される。したがって、核形成剤および結晶相/残留ガラス相形成剤の含有量にも、核形成プロセスにも、散乱の調節において決定的な意義がある。したがって、散乱は、組成によって、特に上述の比によっても、核形成剤または核形成剤析出プロセスによっても制御される。
【0067】
条件B2:
【数3】
が成り立つのが好ましい。
【0068】
21から26までの範囲を維持する場合、所定のC
*値およびS値のプロセスウィンドウが拡大することが再び判明した。
【0069】
下限値21を下回る場合、および上限値26を上回る場合、プロセスウィンドウの大きさは小さくなる。
【0070】
B2の好ましい範囲は、22から26まで、特に23から26までである。
【0071】
最小の着色(ここで、C
*によって定量化される)も同時に保証するため、ガラスセラミックの着色性成分は、その含有量に関してもその着色をもたらす相互作用に関しても最小に保たれなければならない。着色性成分として、SnO
2−TiO
2−ZrO
2−Fe
2O
3の酸化物が公知である。しかし、最小含有量は、効果的な核形成プロセスまたは核形成剤析出プロセスを保証するために必要とされる。そのために、SnO
2−TiO
2−ZrO
2−Fe
2O
3対Li
2O−Al
2O
3−SiO
2もしくは同じくLi
2O−Al
2O
3−SiO
2−ZnO−P
2O
5の比が同じく重要である。
【0072】
ガラスまたはガラスセラミックの好ましい組成物は、以下の成分を含む(質量%):
【表2】
【0073】
ガラスまたはガラスセラミックは、以下の不純物を最大0.005質量%までの含分で有してよい:
CoO、Cr
2O
3、Cs
2O
3、CuO、MoO
3、NiO、PbO、Rb
2O
3、V
2O
5。
【0074】
セラミック化における幅広いプロセスウィンドウは、市販の原料混合物で達成される。これらの市販の原料混合物は、特定の不純物水準を有している。しかし、それらの不純物の割合は、0.005質量%を超過するのは望ましくない。それというのは、それらの不純物が、彩度および散乱に悪影響を及ぼしうるからである。
【0075】
課題は、以下の成分(質量%)を含むことを特徴とするLASガラスを使用しても解決される。
【表3】
ここで、条件B3:
【数4】
が成り立つ。
【0076】
21から26までの範囲を維持する場合、所定のC
*値およびS値のプロセスウィンドウの拡大が再び判明した。
【0077】
下限値21を下回る場合、および上限値26を上回る場合、プロセスウィンドウの大きさは小さくなる。
【0078】
B3の好ましい範囲は、22から26まで、特に23から26までである。
【0079】
本発明によるガラスセラミックは、請求項6の対象である。
【0080】
本発明によるガラス組成物の場合も、滞留時間に関して、例えばC
*が5の場合200分超であり、Sが2の場合200分超である広いプロセスウィンドウが使用できることが判明した。
【0081】
成分MgOは、高温型石英混晶に組み入れられる。MgO最小含有量0.5質量%が有利である。それというのは、この成分が、ガラス溶融物の粘度を、高温、つまり溶融温度で低下させるからである。この特性は、経済的な製造に重要である。
【0082】
MgO含有量は最大0.8質量%に制限されている。比較的高いMgO含有量は好ましくない。それというのは、この比較的高いMgO含有量が、ガラスセラミックの熱膨張率を許容できないほどに高めるからである。比較的高い含有量は、目的とする短いセラミック化時間の場合、増大された着色C
*ももたらす。
【0083】
ガラスもしくはガラスセラミックが、P
2O
5を0.01質量%から1.6質量%まで、好ましくはP
2O
5を0.02質量%から1.6質量%まで、特にP
2O
5を0.03質量%から1.6質量%まで含むのが好ましい。
【0084】
P
2O
5含有量の上限値は、1.6質量%未満であるのが好ましい。
【0085】
P
2O
5は、結晶子に組み入れられて、屈折率およびそれによって散乱に影響を及ぼす。好ましくは0.03質量%から1.6質量%までの定義された含有量は、結晶の屈折率を残留ガラスの屈折率により一層合わせ、それによって散乱を減少させることができる。それによって、所定の散乱値(Streuwert)Sは、比較的広いプロセスウィンドウにおいて実現される。
【0086】
ガラスもしくはガラスセラミックが、SnO
2を0.05質量%から0.5質量%まで含んでいるのが好ましい。
【0087】
ガラスまたはガラスセラミックが、Nd
2O
3を0.01質量%から0.1質量%まで含んでいるのが好ましい。
【0088】
Nd
2O
3の添加は、脱色をもたらし、彩度C
*を減少させる。それによって、所定の彩度C
*は、比較的幅広いプロセスウィンドウにおいて達成される。
【0089】
0.05質量%から0.7質量%まで、好ましくは0.3質量%から0.7質量%までのSrOの添加は、ガラスの成形における溶融性および耐失透性を改善する。しかし、この含有量は、0.7質量%に制限されなければならない。それというのは、この成分が結晶相に組み込まれるのではなく、ガラスセラミックの残留ガラス相中に残留するからである。過度に高い含有量は、結晶化可能な出発ガラスのガラスセラミックへの変換において結晶化挙動を損なわせる。さらに、比較的高い含有量は、ガラスセラミックの色合いに不利に影響を及ぼす。
【0090】
ガラスセラミックを製造するためのガラスのプロセスウィンドウを求めるための方法は、ガラス試料を、第一の温度プロセスにおいて、T1とT2の間の温度範囲において異なる滞留時間t
KBAに供すること、結晶化プロセスの終了後、ガラス試料のC
*値およびS値を測定して、測定曲線を作成するために滞留時間を割り当てること、ならびに、C
*値およびS値が所定のC
*値およびS値と同一であるか、または所定のC
*値およびS値を下回っている滞留時間B
C*およびB
Sの範囲を選択して、B
C*およびB
Sの範囲の交差範囲(Ueberschneidungsbereich)B
Uを決定することを企図しており、B
C*およびB
Sの範囲では、所定のC
*値も所定のS値も最大であり、ここで、B
Uは、ガラスセラミックの製造のためのプロセスウィンドウを形成する。
【0091】
B
C*およびB
Sは、所定のC
*値およびS値に関するプロセスウィンドウである。
【0092】
定義された異なる滞留時間t
KBAを作るために、核形成範囲において異なる一定昇温速度を有するセラミック化が用いられる。このことは、最適な核形成温度範囲と無関係に、滞留時間t
KBAが、昇温速度に相応して増加することが利点である。例えば、昇温速度が半分の場合、核形成段階における滞留時間は、係数2だけ長くなる。
【0093】
方法は、プロセスウィンドウを、所定のガラス組成物の場合の所定のC
*値およびS値に対して容易に決定できることが利点である。この方法によって、プロセスウィンドウが所望のC
*値もしくはS値に対してそもそも使用できるかどうか、もしくはプロセスウィンドウが、大規模工業的な製造において、ある程度確実に所望のC
*値およびS値を維持できるために充分広いかどうかも分かる。
【0094】
プロセスウィンドウを求めるための方法を利用して、ガラスセラミックを製造するための方法は、ガラス試料を、第一の温度プロセスにおいて、T1とT2の間の温度範囲において異なる滞留時間t
KBAに供すること、セラミック化プロセスの終了後に、ガラス試料のC
*値およびS値を決定して、測定曲線を作成するために滞留時間t
KBAを割り当てること、ならびにC
*値およびS値が所定のC
*値およびS値と同一であるか、または所定のC
*値およびS値を下回っている滞留時間B
C*およびB
Sの範囲を選択して、所定のC
*値も所定のS値も最大であるB
C*およびB
Sの交差範囲B
Uを決定すること、ならびに選択された交差範囲B
Uの滞留時間t
KBAでガラスセラミックの製造を実施することを企図している。
【0095】
確定法の範囲において、作成された測定曲線は、以下の関数によって表せられることが判明した:
【数5】
【数6】
【0096】
パラメーターa、b、cおよびdは、好適なフィッティング法によって測定曲線から求められる。
【0097】
ここで、特にC
*測定曲線、およびそれによってその関数C
*(t
KBA)も明らかな最小値を通過することが分かった。
【0098】
S測定曲線およびその関数S(t
KBA)の場合、最小値は明らかに示されていない。
【0099】
B
C*およびB
Sの範囲は、関数C
*(t
KBA)およびS(t
KBA)を用いて求めることができる。
【0100】
関数を求めた後、異なるC
*値およびS値に対して、プロセスウィンドウB
c、B
SおよびB
Uは、さらなる実験を実施する必要なく容易に算出できる。
【0101】
以下において、1つの例および1つの比較例を
図1から9までのグラフを用いて説明する。