特許第6463766号(P6463766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463766
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】海産物ペプチドエマルション
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20190128BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20190128BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20190128BHJP
   A23J 1/04 20060101ALI20190128BHJP
   A23J 3/34 20060101ALI20190128BHJP
   A23K 10/14 20160101ALI20190128BHJP
   A23K 10/22 20160101ALI20190128BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20190128BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20190128BHJP
   A23K 10/26 20160101ALI20190128BHJP
【FI】
   A23L5/00 L
   A23L5/00 J
   A23L33/18
   A23L17/00 D
   A23J1/04
   A23J3/34
   A23K10/14
   A23K10/22
   A23K20/158
   A23K20/147
   A23K10/26
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-545831(P2016-545831)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-506880(P2017-506880A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】IB2015000011
(87)【国際公開番号】WO2015104632
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/925,208
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エイナー リード
(72)【発明者】
【氏名】オドヴァー ビェルゲ
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−123052(JP,A)
【文献】 特表2011−512330(JP,A)
【文献】 特開昭61−028370(JP,A)
【文献】 Journal of Food Science, 1999, Vol.64, p.1000-1004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
A23K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド及び海産物タンパク質加水分解物を含むエマルションの製造方法であって、
a)生物学的海産物材料と水とを混合して、水と生物学的海産物材料との混合物を形成すること;
b)触媒の存在下で前記混合物を加水分解すること;及び
c)触媒を不活性化するために、工程b)において加水分解された混合物を少なくとも45分間、85℃を超える温度に加熱すること
を含み、ここで、エマルションの総重量の1重量%未満の乳化剤で実施する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書では、海産物ペプチドを含むエマルションが提供される。
【0002】
背景
飼料、食品、医薬品又は発酵産業における用途のための成分又は2次製造成分を製造するための海産物原料の使用が増加している。十分に活用されていない海産物原料は、食品や飼料への応用の可能性の高い機能性を備えた様々な洗練された製品を作るための新たな機会を提供している。このような原料の例は、魚、様々な甲殻類の種及び海産物無脊椎動物(evertebrate)種からの副産物である。このような原料は、特に、種々の形態のペプチド、タンパク質及びリン脂質の製造に有用である。
【0003】
魚原料、並びにオキアミ及びエビなどの甲殻類の加水分解による処理は、数年間にわたり行われてきたが、流体形態でも安定な脂肪が多いこのような製品を作ることは、短時間で水溶性画分から分離する保存の際の脂肪画分が不均質な3つの相、即ち、種々の形の脂質/ペプチド/タンパク質凝集体の厚く拡散した層によって水相から分離された上部のトリグリセリドを生じるので、困難であった。
【0004】
概要
酵素及び加水分解に基づく代替方法に取り組むことで、乳化剤を添加する必要なく、魚、魚の一部及び甲殻類から作られたエマルションの形の安定な流体生成物を提供することが可能であることが発見された。
【0005】
本明細書では、トリグリセリド及び海産物ペプチドを含むエマルションの製造方法であって、
i.生物学的海産物材料と水とを混合して水と生物学的海産物材料との混合物を形成すること;及び
ii.触媒の存在下でペプチドとトリグリセリドとの混合物を加水分解すること;
iii.混合物を、触媒を不活性化するのに十分な温度まで加熱すること
を含み、その際、追加の乳化剤の実質的な不在下で実施する、前記方法が提供される。
【0006】
更なる実施態様において、トリグリセリドは、ペプチドトリグリセリド混合物の全重量の、約50重量%までの量で提供される。
【0007】
一実施形態において、触媒は、酵素、ペプチダーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される。特定の実施態様では、触媒はプロタメックス(Protamex)、コジザイム(Kojizyme)、アルカラーゼ、フレーバザイム(Flavorzyme)、ニュートラーゼ、及びパパインからなる群から選択される。
【0008】
本明細書では、追加の乳化剤の実質的な不在下で、具体的にはエマルションの総重量の、1重量%未満、更に具体的には0.5重量%未満、更に一層具体的には0.1重量%未満の、更に一層具体的には乳化剤なしで、エマルションが提供される。更に、本明細書では、追加の乳化剤の実質的な不在下で、具体的にはエマルションの総重量の、1重量%未満、更に具体的には0.5重量%未満、更に一層具体的には0.1重量%未満の更に一層具体的には乳化剤なしで、海産物ペプチドエマルションが提供される。一実施形態では、重量で、少なくとも50%の脂肪を有するエマルションが提供される。別の態様では、脂肪は、トリグリセリドの形で提供される。
【0009】
詳細な説明
概要、説明及び特許請求の範囲について、特に明記しない限り「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」は、交換可能であり、限定することを意図するものではない。更に理解されるべきことは、様々な実施形態の記述が用語「含む(comprising)」を使用する場合、当業者が、幾つかの特別な場合に、実施形態が「実質的にからなる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」との用語を使用して代替的に記載され得ることを理解することである。
【0010】
一実施形態では、安定なエマルションが提供される。一般的に、ペプチドを作るためのポリペプチドの加水分解の間に、脂肪画分は、ペプチドが保存された後、短時間の内に油の形で水相から分離する。一実施形態では、エマルションの脂肪画分が約5℃で約3分後に水相から分離しない安定なエマルションが本明細書で提供される。
【0011】
酵素及び加水分解に基づく代替方法に取り組むことで、生成物がトリグリセリドの形の脂肪を50%含有する場合でも、任意の種類の乳化剤を生成物に添加せずに、エマルションの形で、生成物、更に具体的には最終生成物を安定化することが可能であることが発見された。通常は、ペプチドを作るために加水分解を適用する時に、脂肪画分が、保存後の短い期間内に油の形で水相から分離するので、このことは予想外であった。この予想外の発見は、加水分解を使用して、乳化剤を使用せずに、魚及び甲殻類由来の原料から安定なトリグリセリド及びタンパク質エマルションを作る方法を含み、これは長期間安定であり且つ細菌の増殖なく保つことができる。一実施形態では、エマルションは、20℃で約60日間にわたり細菌の増殖がなかった。本方法による生成物は、食品及び飼料用途に非常に適切であり、また、湿式型の更なる処理に並びに乾燥製品の製造に非常に適している。本明細書で提供されるエマルションは、栄養物質として含む、幾つかの有益な生物学的効果を提供し得る。
【0012】
プロテアーゼ又はペプチダーゼを使用する魚及び甲殻類由来の海産物原料の加水分解によって、脂肪画分がタンパク質と一緒に安定化された生成物が得られ、その際、生物学的物質の混合物の脂肪画分が保存時に水画分から別個の脂肪画分に分離されないことが見出された。バイオマス処理からの安定なエマルションは、タンパク質と、リン脂質を含む脂質と、特定のリン脂質及び脂肪酸を作るための更なる処理に使用することができる。この方法及び安定な流体生成物は、食品及び飼料用の新たな特殊な生成物並びに食品及び飼料サプリメント用の生成物の製造を簡素化する。
【0013】
一実施形態では、本明細書において、魚、魚の一部、甲殻類、甲殻類の一部、無脊椎動物又は無脊椎動物の一部を処理するためのプロテアーゼ、ペプチダーゼ、又は酵素の使用が提供される。本明細書で提供される方法は、生物学的物質の混合物中でタンパク質と一緒に脂肪画分の安定化し、それによって0℃を上回る温度で長い時間、均質のままである50%までの脂肪含有率を有する組成物のようなエマルションを達成することを可能にする。別の実施態様では、デカントにより脂肪相と水相に分離することができないエマルションが提供される。この方法によって、流体の形で、安定で均質な脂肪とタンパク質の豊富な材料を作ることが可能である。この組成物は、食品及び飼料の製造における使用に適しているか、又は様々な種類のタンパク質、ペプチド若しくは脂質、又はそれらの画分を作るための更なる処理に使用されてよい。
【0014】
一実施形態では、本方法は、水と混合された新鮮な又は凍結の全体の又は細かく裁断された生物学的材料、例えば、これに限定されないがインキュベート物を含んでよく、その後に、インキュベート物の温度は、この目的のために使用される酵素又は酵素カクテルにとって最適な所定の温度にされる。その後、酵素又は酵素カクテルが混合物に添加され、毎分2回転〜200回転、更に具体的には毎分10回転〜200回転の速度で撹拌しながら、約30〜90分、更に具体的には45分にわたりインキュベートされる。
【0015】
一実施形態では、加水分解工程は、約40℃から約60℃の範囲、更に具体的には約55℃の温度で実施される。
【0016】
一実施形態において、混合物は、触媒を不活性化するために加熱される。一実施形態では、混合物は、少なくとも15分間、更に具体的には少なくとも45分間、85℃を超えて加熱される。
【0017】
原料が甲殻類である場合、遊離した外骨格は、インキュベート物のフィルタリングによって分離され、原料が魚又は骨を含む魚の一部である場合も同様である。
【0018】
脱シェル(deshelled)又は骨なしのインキュベート物の温度は、最低80℃にされてよく、本方法で使用される酵素を不活性化するために少なくとも5分、更に具体的には10分の間、その温度で維持されてよい。不活性化されたインキュベート物は、そのようなものとして使用されるか、又はそれぞれ、N(nitrgent)×6.25として測定された及びBligh&Dyerに従ったタンパク質及び脂肪の同じ相対的な組成を有する流体の形の濃縮物を作るために、脱水工程にかけられてよい。
【0019】
一実施形態では、本明細書において、海産物原料の酵素的加水分解を含む方法が提供され、このタンパク質及びペプチド消化酵素の使用は、流体生成物の形のタンパク質及び脂質の安定な組成物を形成し、ここで、この原料は魚、魚の一部及び甲殻類からなる群から選択される。
【0020】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、タンパク質の製造に使用される。
【0021】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、ペプチドの製造に使用される。
【0022】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、脂質の製造に使用される。
【0023】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、ペプチド、タンパク質、脂質及び炭水化物の組成物の製造に使用される。
【0024】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、タンパク質の組成物の製造に使用される。
【0025】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、ペプチドの組成物の製造に使用される。
【0026】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、タンパク質及び脂質の組成物の製造に使用される。
【0027】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、ペプチド、タンパク質及び脂質の組成物の製造に使用される。
【0028】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、リン脂質の製造に使用される。
【0029】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、脂肪酸の製造に使用される。
【0030】
一実施形態では、上記の方法によれば、本方法は、栄養補助食品、健康食品、食品成分、医薬製品、飼料成分及び飼料サプリメントからなる群から選択される組成物の製造のための方法の一部である。
【0031】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、哺乳類、更に具体的にはヒトによる消費に適した製品における本明細書で提供されるエマルションの使用である。