特許第6463774号(P6463774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463774
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】調節可能な弁輪形成術器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-551270(P2016-551270)
(86)(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公表番号】特表2017-505679(P2017-505679A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2015051782
(87)【国際公開番号】WO2015121075
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】14154581.4
(32)【優先日】2014年2月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516124247
【氏名又は名称】ケファリオス ソシエテ・パル・アクスィオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】Kephalios S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アヨ
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/019052(WO,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第02468215(EP,A1)
【文献】 特表2011−516209(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0211166(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/078121(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節可能な弁輪形成術器具(1)において、概ね環形状を有するまたは環形状になるように設けられたチューブ(2)を備え、該チューブ(2)の外壁(3)の少なくとも1つの部分または前記外壁の全体は、内壁(4)の反対の部分または前記内壁(4)の全体よりも剛性が高く、前記内壁は、前記外壁(3)よりも、前記環形状によって定められた内側領域(5)の近くに配置されており、少なくとも1つの作動エレメント(10)による作動時に、前記外壁(4)が概ね不変を保つ一方、前記内壁(4)は少なくとも周囲における剛性のより低い部分に沿って内方へ変位するように設けられていることを特徴とする、調節可能な弁輪形成術器具(1)。
【請求項2】
前記チューブ(2)は、デリバリシステムの解放時に環形状になるように設けられた直線的な細長い形状である、請求項1記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項3】
前記内壁(4)は、少なくとも1つの中断部分(6)を有し、該中断部分の反対の外壁部分は連続的であり、前記内壁(4)は、前記作動時に前記中断部分(4)に隣接して内方へ回転させられることができる、請求項1または2記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項4】
前記チューブ(2)は、前記中断部分(6)の領域において他の領域よりも大きなセル(28)を有する、請求項3記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項5】
前記内壁(4)は、前記外壁(3)よりも薄い、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項6】
前記チューブ(2)は、概ねセル(28)を備えたメッシュ構造として形成されており、前記内壁(4)は、前記外壁(3)よりも大きなメッシュセル(28)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項7】
前記外壁(3)は、支持リングを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項8】
前記チューブ(2)は、形状記憶材料を、請求項1から7までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの作動エレメント(10)が、前記外壁(3)または前記内壁(4)に一体化可能であるまたは一体化されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項10】
3つの作動エレメント(10)が、前記外壁(3)または前記内壁(4)に一体化されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項11】
2つの作動エレメント(10a,10b)が、概ね環状のチューブ(2)の反対の側方の部分(30a,30b)に配置されており、1つの作動エレメント(10c)が、概ね環状のチューブ(2)の後側部分(31)に配置されている、請求項10記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項12】
前記器具(1)は、膨張可能な袋によって作動可能であ、請求項1から11までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの作動エレメント(10)は、ステント(12)を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの作動エレメント(10)は、機械的なアクチュエータエレメントである、請求項1から13までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具(1)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の弁輪形成術器具を送出するように設けられたデリバリシステム。
【請求項16】
弁輪形成術器具の送出用のカテーテルを含む、請求項15記載のデリバリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁輪形成術器具に関する。幾つかの非制限的な例では、本発明は、例えば、患者の体内において調節することができる調節可能な弁輪形成術器具に関する。幾つかの非制限的な例は、僧帽弁または三尖弁などの房室性心臓弁を治療することに焦点を合わせているが、概念、機能および利点は、これらの弁に限定されない。
【0002】
弁輪形成術(例えば、僧帽弁または三尖弁弁輪形成術)とは、無能力弁機能を修正するために弁輪を変形させるおよび/または補強するための、弁輪形成術器具(例えば、僧帽弁リングまたは三尖弁リング)の埋め込みである。古典的な弁輪形成術手技の間、外科医は、弁輪を測定し、それに応じて、決まったサイズの弁輪形成術器具を選択する。この手技は、心肺バイパス下で停止心臓において行われる。しかしながら、決まったサイズの弁輪形成術器具の有効性は、手技の間に評価することができない。なぜならば、心臓は停止させられているからである。心臓を再始動させてはじめて、器具が、弁機能を修正するための所望の効果を有していたかどうかを評価することができる。修復がうまくいかなかったとすると、患者は、二度目の手術を受けなければならない。二度目の手術を行わないと、あるレベルの残存逆流の長期的な結果が残る可能性がある。古典的な手技の別の制限は、弁輪形成術器具の埋め込み後、心臓および治療された弁輪のサイズおよびジオメトリが次第に変化することがあるということである。また、例えば、拡張した心臓は、通常のサイズに戻ることによって、修復された弁機能に応答することがある。決まったサイズの弁輪形成術器具は、次第に弁輪のサイズに対して無効または不適切になることがあり、再発性の僧帽弁逆流および不良臨床結果を生ずる。一般的な方式は、残存逆流のリスクを克服するために、小さすぎるリングを埋め込むことである。小さすぎるリングは、僧帽弁狭窄症と呼ばれる、僧帽弁を通る血流が少なくなりすぎるなどの、他の問題をも生ずる。
【0003】
体内への埋め込み後に調節されてもよい、調節可能な弁輪形成術リングが提案されてきた。例えば、国際公開第2012/084714号は、リングの有効形状の制限された制御を達成することができる、部分的に調節可能な弁輪形成術リングシステムを提案している。弁輪形成術リングは、外側支持リングと、内側調節可能リングと、外側リングと内側リングとの間に取り付けられた永久押付けエレメントと、内側リングと外側リングとの間において円周に沿って押付けエレメントを摺動させるように設計された作動手段とを含むアセンブリである。アセンブリは、押付けエレメントを円周の周囲の所望の位置へ移動させ、その位置において内側リングの特定の部分が内方へ変形させられるように、アクチュエータ手段を制御することによって調節可能である。外側リングおよび内側リングを使用するアセンブリの利点は、内側リングの周囲長さを減じることなく調節を行うことができ、これにより、弁狭窄症のリスクを低減することであると言われている。
【0004】
上記問題に加えて、僧帽弁修復および僧帽弁リングの埋め込みの後に生じ得るさらに別の合併症は、僧帽弁前尖が隔壁に向かってたわむ、収縮期前方運動(SAM)の問題である。SAMは、潜在的に生命を脅かす、左室流出路閉塞(LVOTO)の原因になり得る。僧帽弁解剖学的構造への僧帽弁リングの可能な影響を含む、SAMの可能な原因についての複数の理論が存在する。医学的治療がそれを修復することができない場合、SAMを修復するために、再介入が必要である。
【0005】
本発明は、上記問題点のうちの1つまたは複数を軽減し、特に、単純性、多用性およびカスタムアジャスタビリティが高められた弁輪形成術器具を提供しようと努める。
【0006】
本発明によれば、前記課題は、独立請求項の特徴によって解決される。
【0007】
概ね環形状を有するまたは環形状になるように設けられたチューブを含む、調節可能な弁輪形成術器具を提供することが提案される。チューブの外壁の少なくとも1つ、好適には3つの部分または外壁全体は、内壁の反対の部分または内壁全体よりも剛性である。内壁は、外壁よりもチューブの中心領域の近くに配置された壁部である。1つまたは複数の作動エレメントによる作動時に、外壁が概ね一定すなわち不変を保つ一方、内壁は、少なくとも周囲における剛性のより低い部分に沿って内方へ変位するように設けられている。
【0008】
本明細書において使用される場合、“チューブ”という用語は、閉鎖された構成または部分的に開放した構成をカバーすることが意図されており、これは、チューブが、概して“O”または“D”の形状の閉鎖された形状、または“C”または細長い“C”の形状の部分的に開放した形状の横断面を有してもよいことを意味する。
【0009】
本明細書において使用される場合の、概ね“環形状”とは、少なくとも弁輪の周囲の大部分を包囲するためのあらゆる形状をカバーすることが意図されている。環形状は閉鎖されていてもよい(例えば、ほぼ“O”字形またはほぼ“D”字形)または環形状は開放していてもよい(例えば、ほぼ“C”字形)。環形状は、非円形ジオメトリ(例えば“D”形状、細長い“C”形状)および円形ジオメトリ(例えばほぼ“O”形状またはほぼ“C”形状)をカバーする。環形状は、平坦でない3D形状、例えば、ほぼサドル形状であってもよい。環形状は、三次元に曲げられた“O”、“C”または“D”形状であってもよい。
【0010】
“壁部分”および“壁部”は、本明細書では互換的に用いられる。
【0011】
チューブは、最初から概ね環形状に形成されても、または概ね環形状にされるように採用されてもよい。したがって、チューブは、最初はほぼ直線形状であってもよいが、環形状に湾曲可能かつ固定可能であってもよい。真っ直ぐな直線形状ではないその他の初期形状が可能である。
【0012】
チューブは、送入の前または後に環形状にされてもよい。チューブは、例えば、ほぼ直線形状で送入され、デリバリシステムから解放されたときに弁輪の周囲に曲げられてもよい。
【0013】
チューブは、チューブを形成するように後で丸められる平面的なシートから形成されてもよい。
【0014】
チューブは、全周に沿って均一に配置されても、別個の部分に分割されていてもよい。別個の部分は、例えばワイヤ、ストラットまたはバーによって接続されていてもよい。接続部分は、外壁の部分であってもよく、内壁は、分離された部分にのみ存在する。
【0015】
環形状になったとき、チューブは、内壁および外壁を有する。内壁は、チューブの少なくとも1つ、好適には3つの部分において外壁よりも剛性が低い。剛性の違いの結果、作動エレメントによる作動時に、外壁は概ね不変を保つ一方、内壁は少なくとも剛性のより低い部分において内方へ変位可能である。
【0016】
内壁は、内壁が、反対の外壁よりも剛性の低い全ての部分において変位可能であってもよい。内壁および外壁のその他の部分は、同じ剛性を有してもよい。同じ剛性を有する部分では、チューブの非対称の拡張は不可能であってもよい。
【0017】
内壁全体が外壁よりも剛性の低い実施の形態では、内壁は、概ねその全周に沿って変位可能であってもよい。内壁は、択一的に、1つまたは複数、特に3つの、周囲の剛性のより低い部分においてのみ変位可能であってもよい。
【0018】
チューブは、好適には、外部の一方向の力に耐えるように構成されている。力の強度は可変であってもよい。
【0019】
内壁の調節は、好適には、連続的な変形である。これにより、内壁は、必要に応じた大きさだけ変形させることができる。内壁は、好適には、例えば形状記憶合金のように2つの別個の所定の位置または形状を有するのみならず、好適には、むしろ連続的な変形を許容する塑性的な挙動を有する。
【0020】
内壁の調節は、例えば内壁の不可逆的な変形によって不可逆的であってもよい。内壁および好適にはチューブ全体は、好適には鋼、または例えば“超塑性チタン合金”などの“超塑性合金”を含み、好適には鋼、または例えば“超塑性チタン合金”などの“超塑性合金”から形成されている。内壁、および好適にはチューブ全体は、択一的に生体適合性プラスチックを含んでもよく、好適には生体適合性プラスチックから形成されている。
【0021】
択一的に、調節、すなわち変形は、可逆的である。内側リング、および好適にはチューブは、この場合、弾性材料から形成されていてもよい。作動エレメントは、内壁を変位した状態に固定してもよい。
【0022】
好適には、チューブは、チューブを弁輪に取り付けることができる取付け構成部品を含む。好適には、取付け構成部品は、縫合可能であり、例えば、リングを弁輪に縫合することができる織物包囲スリーブまたは織物層である。
【0023】
択一的に、リングは、例えば、弁輪に接着されるかまたはクランプを用いて取り付けられてもよい。
【0024】
内壁の変位を介した調節は、術前または術後に行うことができる。その目的は、外科手術結果を微調整し、残存逆流または過修正を排除することである。術後モードにおいて、逆流を修正しかつ/または時間の経過と共により漸進的なサイズ調節を操作するために、弁領域を減じることができる。これにより、弁の長期治療を提供することができる。
【0025】
このような構成により、弁領域の修正は、1つのチューブと、1つまたは複数の作動エレメントとによって可能である。第2のリングなどのいかなるその他の部品も不要である。したがって、この構成は、単純であり、少ない材料を必要とし、その結果、コストが低下し、重量が減少する。
【0026】
作動エレメントは、チューブの周囲の少なくとも複数の部分の間で周方向に可動であってもよい。これにより、内壁の複数の部分は、1つの作動エレメントによって変位させられてもよい。チューブは、作動エレメントを別の場所へ移動させるときに内壁が変位させられたままであるように構成されていてもよい。内壁が望まれたように変位させられ、弁輪が正しく調節された後、作動エレメントはチューブから取り外されてもよい。
【0027】
択一的に、異なる部分が、異なる作動エレメントによって変位させられてもよい。内壁は、この場合、必ずしも、作動エレメントが内壁に対していかなる力も提供しないときに変位させられたままである必要はない。これにより、内壁は、大きく変位させられすぎた場合に、再調節されてもよい。
【0028】
作動エレメントは、好適には、アクチュエータによって作動させられる。アクチュエータは、作動中に患者の身体の外部にとどまる。好適には、アクチュエータは、少なくとも1つの伝達ラインによって作動エレメントに接続されている。作動エレメントに応じて、作動エレメントを作動させるために、異なる入力、例えば、機械的張力、液体、電気、熱などが伝達ラインによって提供されてもよい。
【0029】
好適には、内壁は、少なくとも1つ、好適には3つの中断部分を有しており、中断部分と反対の外壁部分は連続的である。内壁は、作動時に中断部分に隣接したところで内方へ回転させられることができる。
【0030】
内壁の中断部分は、外壁の反対の連続的な部分と比較して、剛性のより低い内壁部分を提供する。中断部分に隣接した内壁は、作動エレメントによる作動時に変位させられてもよく、例えば内方へ曲げられてもよい。
【0031】
チューブは、好適には、中断部分の領域において、他の領域におけるよりも大きなセルを有する。より大きなセルは、より小さなセルよりも、剛性のより低い部分を提供する。これにより、中断部分に隣接した内壁の領域は、より小さな力で内方へ曲げることができる。
【0032】
択一的にまたは付加的に、内壁は、外壁よりも薄い、または外壁よりもフレキシブルな構造を備えて形成されている。少なくとも部分的に壁部の厚さが異なることは、壁部の剛性の違いにつながる。厚さの違いは、壁部の剛性の違いの唯一の原因であってもよいし、または他の原因と共に機能してもよい。
【0033】
内壁の材料は、チューブが提供された後に除去されてもよいし、またはチューブは初めからより薄い内壁を備えて形成されてもよい。
【0034】
択一的にかつ最も好ましくは、内壁および外壁が同じ厚さを有し、剛性の違いは、別の効果によって、例えば材料の違いまたは構造の違いによって達成される。
【0035】
チューブは、好適には、ステムによって定められたセルを備えるメッシュ構造として形成されている。内壁は、好適には、外壁よりも大きなメッシュセルおよび/または薄いステムを有する。
【0036】
より大きなセルおよび/またはより薄いステムを備えるメッシュは、より小さなセルおよび/またはより厚いステムを有するメッシュよりも小さい力で曲げることができる。壁部のメッシュセルの寸法の違いは、少なくとも部分的に壁部の剛性の違いに関係する。異なる寸法は、例えば厚さの違いなどの付加的な原因と共に作用する違いの唯一の原因であってもよい。
【0037】
内壁が外壁よりも大きなメッシュセルおよび/または薄いステムを有する非対称のチューブは、中実のチューブから非対称のメッシュを切断、好適には、レーザ切断することによって製造されてもよい。
【0038】
択一的にまたは付加的に、外壁は支持リングを有してもよい。支持リングは、概ね環状のチューブの外側または内側に配置されてもよい。支持リングは、チューブの残りとは異なる、より剛性の材料から形成されてもよい。付加的にまたは択一的に、支持リングは、外壁を補強するために外壁に厚さを提供してもよい。これにより、支持リングは、少なくとも部分的に、内壁および外壁の剛性の違いに関係する。支持リングは、上述のように例えば厚さの違いまたはセル寸法の違いなどの付加的な原因と共に作用する支持リングの剛性の違いの唯一の原因であってもよい。
【0039】
チューブは、好適には、形状記憶材料、特にニチノールを含む。好適な実施の形態では、チューブは、形状記憶材料、特にニチノールから形成されている。
【0040】
ニチノールは、優れた生体適合性を有することが知られた形状記憶合金である。その他の生体適合性形状記憶金属または合金が、本明細書に記載された実施の形態とともに使用可能である。付加的にまたは択一的に、生体適合性プラスチックが使用されてもよい。
【0041】
好適には、少なくとも1つの作動エレメントは、外壁に一体化可能であるまたは外壁に一体化されている。
【0042】
少なくとも1つの作動エレメントの一部は、チューブの外壁の1つのセクションとして機能してもよい。したがって、少なくとも1つの作動エレメントは、外壁に埋め込まれてもよく、チューブと一体に形成されてもよい。
【0043】
択一的に、少なくとも1つの作動エレメントは、例えば埋め込みの直前に、外壁内または外壁上へ一体化される。外壁は、少なくとも1つの取付け部位を有してもよく、この取付け部位において少なくとも1つの作動エレメントが一体化されてもよい。
【0044】
外壁内に一体化された少なくとも1つの作動エレメントの部分は、作動エレメントの他の部分よりも剛性が高くてもよい。これにより、作動時に、少なくとも1つの作動エレメントは、外壁が変形させられることなくチューブの内壁の周囲の少なくとも一部を変形させるように、例えば拡張または内方へ変形する。
【0045】
択一的に、少なくとも1つの作動エレメントは、内壁に一体化可能であるまたは内壁に一体化されている。少なくとも1つの作動エレメントの一部は、チューブの内壁の1つのセクションとして機能してもよく、反対の部分は外壁に隣接して配置されている。したがって、少なくとも1つの作動エレメントは、内壁に埋め込まれてもよく、チューブと一体に形成されてもよい。
【0046】
択一的に、少なくとも1つの作動エレメントは、例えば埋め込みの直前に、内壁内へのみ一体化されてもよい。内壁は、少なくとも1つの取付け部位を有してもよく、この取付け部位において少なくとも1つの作動エレメントが一体化されてもよいまたは取り付けられてもよい。最も好適には、アクチュエータエレメントは、外壁と内壁とによって画定された空間においてチューブ内に配置されている。
【0047】
内壁内へ一体化された作動エレメントは、均一な剛性を有してもよい。作動エレメントの剛性は、外壁の剛性よりも小さい。作動時、作動エレメントは、作動エレメントと外壁との剛性の違いにより、例えば拡張または内方へ変形する。
【0048】
好適には、内壁または外壁に一体化されてもよい3つの作動エレメントが設けられている。3つのエレメントは、内壁、ひいては弁輪の、可変かつ十分な安定した変形を提供するように示されている。
【0049】
好適には、3つの作動エレメントは、2つの作動エレメントが、概ね環状のチューブの反対の側方の部分に設けられ、1つの作動エレメントが、概ね環状のチューブの後側部分に配置されるように、配置されている。
【0050】
側方の部分および後側部分という用語は、埋め込み後の概ね環状のチューブの部分の場所に関する。概ね環状のチューブの側方の部分は、埋め込み後の弁輪の側方の部分にまたはその近くに配置され、チューブの後側部分は、弁輪の後側部分にまたはその近くに配置される。したがって、概ね環状のチューブになるように設けられた概ね直線的なチューブもまた、2つの側方の部分と、1つの後側部分とを有する。
【0051】
これらの位置は、小さな変形による内壁および弁輪の良好な変形のための最適な配列であることが示されている。作動時、側方の作動エレメントが好適にはまず移動させられ、後側作動エレメントは、側方の部分が調節された後に初めて移動させられる。
【0052】
器具は、好適には、膨張可能な袋、好適にはバルーンの形式の作動エレメントによって作動可能である。好適な実施の形態では、器具は、膨張可能な袋を含む。
【0053】
膨張可能な袋は、内壁と外壁との間においてチューブに配置可能であるまたは配置されている。袋を流体によって膨張させることによって、袋は拡張する。内壁と外壁との剛性の違いにより、内壁は、拡張する袋によって変位させられ、外壁は概ね不変のままである。膨張可能な袋は、好適にはバルーンである。このような膨張可能なバルーンは、例えば、拡張可能なステントから当該技術分野において公知である。
【0054】
膨張可能な袋は、好適には、1つの膨張可能な袋によって内壁の複数の部分を変位させるためにチューブの周囲に沿って可動である。したがって、膨張可能な袋は、内壁の一部を変位させるように膨張させられ、次いで、チューブの別の位置へ移動させるために収縮させられる。袋の収縮後、内壁は変位させられたままである。次の場所に達すると、袋は、別の部分を変位させるために再び膨張させられ、その後、再び収縮させられる。これらのステップは、弁輪が正確に調節されるまで繰り返される。内壁、ひいては弁輪を調節した後、膨張可能な袋はチューブから取り外されてもよい。好適には、弁輪の少なくとも、特に2つの側方の部分および後側部分のみが調節される。
【0055】
可動な作動エレメントにより、内側リングは、あらゆる所望の位置において変位させられてもよい。予め定められた変形領域は不要である。これにより、内側リングの変形を所望の形状により良く調節することができる。
【0056】
択一的に、膨張可能な袋は可動ではなく、内壁の1つの領域のみを変位させる。この場合、好適には3つの袋が所定の位置に設けられている。
【0057】
膨張可能な袋は、好適には非対称であり、これにより、袋の膨張は非対称の拡張を生じる。これにより、内壁が調節されてもよい。膨張可能な袋の正確な向きを保証するために、チューブ自体は、非対称の膨張可能な袋に合致する非対称の横断面を有してもよい。これにより、膨張可能な袋は、少なくとも膨張の開始時に正確な位置に向けられる。
【0058】
膨張可能な袋は、複数の膨張可能な管腔を有してもよい。このような膨張可能な袋は、膨張可能な管腔がチューブの周囲に少なくとも部分的に周方向に配置されるように、チューブの周囲に少なくとも部分的に周方向に配置されているまたは配置可能である。好適には、1つの管腔は、個々に膨張可能である。このような個々の膨張は、膨張可能な管腔が流体によってリンクされていない場合に、それぞれの膨張可能な管腔のために1つの別個の膨張ポートを提供することによって達成されてもよい。
【0059】
流体は、例えば、(例えば空圧式制御のための)ガス、または(例えば液圧式制御のための)液体またはゲルであってもよい。好適には、流体は食塩水である。
【0060】
1つの形態において、硬化可能な流体、例えばセメントが、導入可能であってもよい。流体配備可能な装置の配備の程度は、膨張流体が流体にとどまる限り、調節可能にとどまってもよい。配備状態は、流体が硬化したときに、固定されてもよい。流体を硬化させることにより、流体の不意のまたは自然の漏れのあらゆるリスクが回避されてもよい。
【0061】
1つの形態では、可逆的に硬化可能な流体が導入される。流体は、室温において液体状態で導入されてもよく、体温に温められるとゲルに重合する(ゼリー化)してもよい。流体は、例えば低温の食塩水などの低温の液体を境界面に導入することによって再び液化させられてもよい。流体の硬化は、物理的手段、すなわち光または化学的手段、すなわち触媒の結果として生じてもよい。
【0062】
付加的にまたは択一的に、少なくとも1つの作動エレメントは、ステントを含む。ステントは、1つまたは複数の膨張可能なバルーンによって拡張可能であってもよい。幾つかの実施の形態では、3つのステントが、1つのシリンダバルーンまたは複数のバルーンまたは成形されたバルーンに配置されていてもよい。
【0063】
ステントは、外壁または内壁に一体化されていてもよい。前述のように、ステントの複数の部分は、したがって、外壁または内壁として機能してもよい。
【0064】
外壁に一体化されているならば、外壁として機能するステントの複数の部分は、ステントの残りよりも剛性が高い。これらの部分の異なる材料により、より高い剛性が達成されてもよい。例えばバルーンによる作動時、ステントは、剛性がより低い部分の方向、ひいては内壁の方向へ内方へ拡張する。これにより、弁輪が調節されてもよい。
【0065】
択一的に、ステントは、内壁と外壁との間に形成された空間に配置されている。したがって、ステントは、外壁または内壁自体としては機能せず、したがって、ステントは、ステント全体にわたって均一な剛性を備えて構成されていてもよい。外壁のより高い剛性により、ステントは、作動時に内壁を変位させるのに対し、外壁は概ね不変を保つ。
【0066】
チューブの埋め込み後にステントおよび/またはバルーンを導入することもできる。
【0067】
付加的にまたは択一的に、少なくとも1つの作動エレメントは、平行四辺形構造、すなわち“クリック”を含む。
【0068】
クリックは、外壁に取り付けられたまたは取付け可能なまたは外壁内に一体化された基礎を有する。2つのラチェットは、基礎に対して概ね垂直に延びている。ラチェットは、力を加えることによって、例えば2つのカウンターラチェットと係合することができる。好適には、力は、アクチュエータによって加えられる。基礎と向かい合って、内壁の近くのラチェットの上部に、別のプレートが配置されている。この別のプレートは、ラチェットをカウンターラチェットと係合させることによって内方へ移動させられる。
【0069】
択一的に、別のプレートが内壁と一体に形成されている。別のプレートは、したがって、作動時に弁輪を内方へ直接に変位させる。
【0070】
付加的にまたは択一的に、少なくとも1つの作動エレメントは、パンタグラフを含む。
【0071】
パンタグラフは、2つの側部と、側部の間に延びた、平行四辺形に基づく形式で接続された機械的なリンクであるバーとを含む。プレートは、内壁の近くでバーの上部に配置されているかまたは内壁内に一体化されている。プレートは、少なくとも1つの側部が他方の側部に向かって移動させられたときに内方へ延びている。平行四辺形は、プロセスの間、その形状を変化させるが、平行四辺形のままである。好適には、側部は、互いに向かって移動させられる。この移動プロセスの間、バーの交差箇所は、概ね、それらの位置にとどまる。好適には平行四辺形の側部に取り付けられた他の角は、移動プロセスの間、内方へ移動する。
【0072】
択一的に、パンタグラフは、側部を有さないが、平行四辺形に基づく形式でバーに接続された機械的なリンクと、その上部におけるプレートのみを有する。バーの外側の角を互いに向かって移動させることによって、プレートは内方へ移動させられる。
【0073】
本発明は、さらに、本発明の弁輪形成術器具を送入するように設けられたデリバリシステムに関する。
【0074】
デリバリシステムは、好適には、弁輪形成術器具を送入するためのカテーテルを有する。
【0075】
発明の非制限的な実施の形態は、添付の図面に関連して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】弁輪形成術器具の概略図である。
図2図1の弁輪形成術器具の断面の概略図である。
図3】択一的な弁輪形成術器具の概略図である。
図4】弁輪形成術器具の展開されたチューブの概略図である。
図5】直線的な形状の択一的なチューブの一部の概略図である。
図6】環状の、図5のチューブの概略図である。
【0077】
図1は、弁輪形成術器具1の概略図を示している。弁輪形成術器具は、“D”形状または円形の横断面を有するチューブ2によって形成された、だ円形の環状リングとして配置されている。チューブ2の理解を容易にするために、図面の手前に向けられたチューブ2の上側半分は透明である。チューブ2はニチノールから形成されている。チューブ2の外壁3はチューブ2の内壁4よりも厚い。内壁4と比較して外壁3の厚さがこのように大きいことにより、外壁3は内壁4よりも剛性が高い。
【0078】
作動エレメント10は外壁3と内壁4との間に配置されている。作動エレメント10は膨張可能なバルーン11を含む。バルーン11はチューブ2の周囲に沿って可動である(矢印によって示されている)。バルーン11はガスによって拡張可能である。ガスは伝達ライン21によってアクチュエータ20によって提供される。ガスによって膨張させられると、バルーン11は拡張し、内壁4をチューブ2の内側領域5に向かって内方へ変位させる。内壁4の変位により、この器具1が提供された弁輪(図示せず)が調節される。その後、バルーン11は収縮させられ、別の位置へ移動させられ、そこでバルーン11は再び膨張させられてもよい。チューブの塑性変形により、内方へ変位させられた壁部は、拡張した位置にとどまる。これにより、内壁4は複数の部分において変位させられてもよい。バルーン11は、内壁4を変位させかつ弁輪を調節するために、側方の部分30a,30bおよび後側部分31において膨張させられる。次いで、バルーン11はチューブ2から取り出される。
【0079】
図2は、図1に示された断面A−Aにおけるチューブ2の概略的な断面図を示している。チューブ2の外壁3はチューブ2の内壁4よりも厚い。これは、剛性の違いを提供し、作動エレメント10(図1参照)による作動時に内壁4のみが変位させられることを保証する。
【0080】
図3は、択一的な弁輪形成術器具1の概略図を示している。3つの作動エレメント10a,10b,10cが、内壁4と外壁3との間においてチューブ2に配置されている。2つの作動エレメント10a,10bはチューブ2の側方の部分30a,30bに配置されており、1つの作動エレメント10cはチューブ2の後側部分30cに配置されている。3つの作動エレメント10はそれぞれステント12を含む。ステント12は、外壁3と一体に形成されたセクションを有する。ステント12は、バルーン(図示せず)によって拡張可能である。3つのステントは、同じバルーンによってまたはそれぞれ別々のバルーンによって拡張させられてもよい。バルーンは、アクチュエータ20および伝達ライン21を介して膨張させられる。外壁3と一体に形成された部分がステント12の残りよりも剛性が高いことにより、ステント12は内方へ拡張する。したがって、ステントは内壁4を内方へ変位させ、弁輪(図示せず)を調節する。
【0081】
図4は、器具1を形成するためのチューブ2の択一的な好適な実施の形態の概略図を示している。チューブ2は、レーザ切断によってニチノールのチューブとして形成されている。図4は、チューブ2の展開図を示している。択一的に、チューブ2は、材料の概ね平坦なシートから丸められてもよい。バルーンの代わりに、機械的な拡張エレメントが考えられる。チューブ2は、複数の水平のストラット26と、複数の垂直のストラット27とを含む。ストラット26,27は、プレート25の中間セクション35が、隣接するセクション36a,36bよりも小さなセル28を有するように配置されている。外側セクション36a,36bは、プレートをチューブ2に曲げた後に内壁4を形成する。中間セクション25は外壁3を形成する。セクション35,36のセル28の寸法の違いにより、外壁3と内壁4との剛性の違いが、チューブ2に曲げた後に生じる。これにより、チューブ2は、環状に曲げられた、弁輪の中心に向けられた内壁4よりも剛性の外壁3を有するステントに実質的に相当する。
【0082】
図5は、直線形状における、本発明による択一的なチューブ2の一部を示している。チューブ2は、超塑性チタン合金から形成されており、内壁4および外壁3を有する。内壁4は、3つの部分6(1つのみが図5に示されている)において中断されているのに対し、外壁3は、前記中断部分と反対のところで連続的である。チューブ2は、中断部分6に隣接して、より大きなセル8を備えて形成されている。より大きなセル8は、4つのジグザグ状構造を形成しており、2つのジグザグ状構造が中断部分6のそれぞれの側に設けられている。ジグザグ形状は、中断部分6の方向を向いている。より大きなセルを接続したチューブ2の残りは、管状に配置された2つの交差するワイヤを備えて形成されている。内壁4は、作動エレメント、好適には膨張可能なバルーン(図示せず)によって中断部分6の領域において変位可能である。
【0083】
図6は、環形状にされた図5のチューブ2を示している。3つの中断部分6a,6b,6cは、2つの中断部分6a,6bが側方側30a,30bに、1つの中断部分6cが後側31に位置するように配置されている。チューブ2は、さらに、取付け構成部品として機能する織物組織7を有する。織物組織7は、チューブ2の周囲に周方向に配置されている。織物組織は、僧帽弁輪に縫合することができ、これにより、チューブ2を弁輪に取り付ける。図6において、中断部分6に隣接した、より大きなセル8は、内方へ曲げられており、すなわち、ジグザグ状構造は、ジグザグ状構造のベース部分を中心にして内方へ回転させられている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6