特許第6463815号(P6463815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463815
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】サージ防護素子
(51)【国際特許分類】
   H01T 1/14 20060101AFI20190128BHJP
   H01T 1/16 20060101ALI20190128BHJP
   H01T 1/02 20060101ALI20190128BHJP
   H01C 7/12 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   H01T1/14 B
   H01T1/14 C
   H01T1/16 G
   H01T1/02
   H01C7/12
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-196887(P2017-196887)
(22)【出願日】2017年10月10日
(65)【公開番号】特開2018-63945(P2018-63945A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】10 2016 119 202.3
(32)【優先日】2016年10月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594070612
【氏名又は名称】フェニックス コンタクト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Phoenix Contact GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−エーリク シュムッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヘーガーフェルト
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェター
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−134809(JP,A)
【文献】 特開2007−324535(JP,A)
【文献】 特開昭59−148220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/02 〜 7/22
H01T 1/00 〜 4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージ防護素子(1)であって、当該サージ防護素子(1)は、
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内に配置されているサージ制限構成素子(3)、特にバリスタと、導電性接続素子(4)と、少なくとも1つの絶縁性分離素子(5)とを有しており、
前記サージ制限構成素子(3)は、第1の端子(6)と第2の端子(7)とを有しており、
前記絶縁性分離素子(5)は、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)に対して相対的に可動に配置されており、したがって、前記絶縁性分離素子(5)は、第1の位置から第2の位置に移動可能であり、
前記サージ防護素子(1)の通常状態において、前記導電性接続素子(4)の第1の終端部(8)は、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)と導電性接続されており、かつ、前記絶縁性分離素子(5)は、自身の第1の位置において保持されており、
前記サージ制限構成素子(3)が臨界的な状態に達すると、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)と前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)との間の接続が解除され、前記絶縁性分離素子(5)は、力によって、自身の第2の位置に動かされ、当該第2の位置では、前記絶縁性分離素子(5)の一部は、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)と前記サージ制限構成素子(3)の第1の端子(6)との間に配置されている、
サージ防護素子(1)において、
前記接続の解除時に、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)と前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)との間に発生している電弧(10)が、少なくとも1つの、部分的に閉じられているチャンバ(11)内へ移動されるように、前記少なくとも1つの絶縁性分離素子(5)が構成されている、
ことを特徴とするサージ防護素子(1)。
【請求項2】
前記サージ防護素子(1)の通常状態において、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)は、熱によって解除される接続(9)を介して、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)と導電性接続されており、前記熱によって解除される接続(9)は、前記サージ制限構成素子(3)の境界温度を超えると解除される、請求項1記載のサージ防護素子(1)。
【請求項3】
前記絶縁性分離素子(5)は、可動にハウジング(12)内に配置されおり、前記ハウジングの容積は、前記絶縁性分離素子(5)の体積よりも大きく、
前記ハウジング(12)は、開口部(13)を有しており、当該開口部を通って、前記サージ防護素子(1)の通常状態において、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)は、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)と導電性接続されており、
前記チャンバ(11)は、前記ハウジング(12)の、前記サージ防護素子(1)の通常状態において前記絶縁性分離素子(5)が配置されていない領域によって形成される、請求項1または2記載のサージ防護素子(1)。
【請求項4】
前記ハウジング(12)は、前記チャンバ(11)の領域において、排出開口部(15)を有している、請求項3記載のサージ防護素子(1)。
【請求項5】
前記絶縁性分離素子(5)は、開口部(17)を有しており、当該開口部を通って、前記サージ防護素子(1)の通常状態において、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)が、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)と導電性接続されている、請求項3または4記載のサージ防護素子(1)。
【請求項6】
前記絶縁性分離素子(5)内には、少なくとも1つのチャネル(22)が形成されており、前記チャネルは、前記チャンバ(11)の方を向いている面で開放されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のサージ防護素子(1)。
【請求項7】
前記ハウジング(12)内には、少なくとも1つのウェブまたは分離壁(33)が形成されており、前記ウェブまたは前記分離壁は、前記絶縁性分離素子(5)の運動方向に延在しており、したがって、前記ウェブもしくは前記分離壁(33)によって、前記ハウジング(12)内の前記チャンバ(11)は少なくとも2つの部分チャンバ(11’,11’’)に分けられている、請求項3を引用する請求項6記載のサージ防護素子(1)。
【請求項8】
前記絶縁性分離素子(5)は、少なくとも1つの排出開口部(23)を有しており、当該排出開口部を介して、前記チャネル(22)は、前記ハウジング(12)の内部と接続されており、前記ハウジング(12)は、有利には少なくとも1つの排出開口部(24)を有している、請求項3を引用する請求項6または、請求項7記載のサージ防護素子(1)。
【請求項9】
前記絶縁性分離素子(5)内の前記排出開口部(23)は、前記チャンバ(11)とは反対側に位置する面に形成されており、前記ハウジング(12)内の前記排出開口部(24)は、前記絶縁性分離素子(5)内の前記排出開口部(23)と向かい合っている、請求項8記載のサージ防護素子(1)。
【請求項10】
前記絶縁性分離素子(5)内の前記排出開口部(23)と前記ハウジング(12)内の前記排出開口部(24)との間で、排出チャネルが前記ハウジング(12)内に延在しており、前記排出チャネル内には、有利には、流れ出るプラズマ(14)を冷却および/または緩和するための媒体が配置されている、請求項記載のサージ防護素子(1)。
【請求項11】
前記ハウジング(12)および/または前記絶縁性分離素子(5)は少なくとも部分的に、気体発生性の材料から成る、請求項3からまでのいずれか1項記載のサージ防護素子(1)。
【請求項12】
前記ハウジング(12)および/または前記絶縁性分離素子(5)は、機械的かつ熱的に安定している材料から成る、請求項3からまでのいずれか1項記載のサージ防護素子(1)。
【請求項13】
複数の絶縁性分離素子(5,5’)を有しており、
絶縁性分離素子(5,5’)は、可動にハウジング(12,12’)内に配置されており、各ハウジング(12,12’)は、開口部(13,13’)を有しており、前記開口部(13,13’)は、次のように相互に配置されている、すなわち、前記サージ防護素子(1)の通常状態において、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)が、前記開口部(13,13’)を通して、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)と導電性接続されているように、相互に配置されている、請求項3から12までのいずれか1項記載のサージ防護素子(1)。
【請求項14】
前記サージ防護素子(1)の通常状態において、少なくとも2つの絶縁性分離素子(5,5’)は、実質的に、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)の異なる側に配置されており、前記少なくとも2つの絶縁性分離素子(5,5’)の運動方向は、相互に逆である、請求項13記載のサージ防護素子(1)。
【請求項15】
発生している電弧(10)がその中に移動可能なチャンバ(11)として、少なくとも1つの第1のチャネル(25)が前記絶縁性分離素子(5)内に形成されており、前記チャネルは、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)の方を向いている側で開放されており、
前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)は、前記絶縁性分離素子(5)の前記第2の位置において、前記絶縁性分離素子(5)の前記第1のチャネル(25)内に配置されている、請求項1または2記載のサージ防護素子(1)。
【請求項16】
前記サージ防護素子(1)の通常状態において前記絶縁性分離素子(5)が存在していない、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)の側に、閉鎖素子(26)が配置されており、当該閉鎖素子(26)に、前記絶縁性分離素子(5)が自身の第2の位置において、前記第1のチャネル(25)の前記開放されている面で当接している、請求項15記載のサージ防護素子(1)。
【請求項17】
前記サージ制限構成素子(3)から突出している第1の端子(6)を有しており、
前記絶縁性分離素子(5)内には第2のチャネル(25’)が形成されており、前記第2のチャネル(25’)は、前記第1のチャネル(25)に対して平行に延在しており、
前記絶縁性分離素子(5)の前記第2の位置では、前記導電性接続素子(4)の前記第1の終端部(8)は、前記第1のチャネル(25)内に配置されおり、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)は、前記第2のチャネル(25’)内に配置されている、請求項15または16記載のサージ防護素子(1)。
【請求項18】
前記第1のチャネル(25)および/または前記第2のチャネル(25’)は、前記絶縁性分離素子(5)の前記第2の位置において、前記閉鎖素子(26,28)に当接している、請求項16を引用する請求項17記載のサージ防護素子(1)。
【請求項19】
排出開口部(30)が、前記絶縁性分離素子(5)の少なくとも1つの壁部内に形成されており、有利には、前記絶縁性分離素子(5)の前記第1の位置において、前記サージ制限構成素子(3)の前記第1の端子(6)から間隔が空けられている、前記第2のチャネル(25’)の後方壁(29)内に形成されている、請求項17または18記載のサージ防護素子(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージ防護素子に関する。このサージ防護素子は、ハウジングと、ハウジング内に配置されているサージ制限構成素子と、導電性接続素子と、少なくとも1つの絶縁性分離素子とを有しており、このサージ制限構成素子は、第1の端子と第2の端子とを有しており、絶縁性分離素子は、サージ制限構成素子の第1の端子に対して相対的に可動に配置されており、したがって、この分離素子は、第1の位置から第2の位置へと移動可能である。
【背景技術】
【0002】
サージ防護とは、過度に高い電圧からの、電気機器および電子機器の防護であると理解されたい。設備および機器を防護するための必要な措置は、予期されるサージに従って、種々の段階に分けられている。個々の段階に対する防護機器は、ここで、特に、導出能力の高さと防護レベルによって異なっている。第2の防護段階のサージアレスタ、いわゆるタイプ2のサージアレスタは、概ね、サージ制限防護素子としてバリスタを有しており、これは、残余電圧が低い場合に、高い導出能力を実現する。しかし、この他に、ガスが充填されたサージアレスタまたはダイオードも、サージ制限防護素子として使用可能である。通常状態では、バリスタの漏れ電流は相対的に小さい。しかし、これは、時間の経過において、経年変化または短時間の過負荷によって高くなってしまうことがある。このような場合において、これと結び付いている加熱が、バリスタの熱による破壊を生じさせてしまうことがある。これは同様に、隣接する構成部品または機器での損傷を生じさせてしまうことがある。したがって、熱によるバリスタの破壊が阻止されなければならない。このために、従来技術では、熱的な分離装置が使用される。これは、境界温度を超えた場合に、バリスタを防護されるべき電力網から切り離す。
【0003】
独国特許発明第4241311号明細書(DE 42 41 311 C2)から、サージ防護素子が公知である。このサージ防護素子は、バリスタの状態を監視するために、熱的な分離装置を有している。このサージ防護素子は、防護されるべき電流経路に接続するための2つの接続コンタクトを有している。第1の接続コンタクトは、柔軟な導体を介して、導電性接続素子と接続されている。この導電性接続素子の、柔軟な導体とは反対側に位置する終端部は、はんだ箇所を介して、バリスタに設けられている接続フラッグと接続されている。別の接続コンタクトは、柔軟な導体を介して、バリスタの第2の接続フラッグと固定的に接続されている。導電性接続素子には、ばね系によって力が加えられ、この力によって、この接続素子は、はんだ接続の解除時に、接続フラッグから直線的に離されて、バリスタは、熱による過負荷の際に、電気的に切り離される。分離箇所の開放の際に発生する電弧を消去するために、接続素子は、はんだ接続の解除後に、接続フラッグに対してできるだけ大きい間隔を有していなければならない。これには、サージ防護素子の比較的大きい構造体積が必要になる。
【0004】
はんだ接続の溶解に基づく、既知のサージ防護素子において使用される熱的な分離装置は、解決しなければならない多くの課題を有している。サージ防護素子の通常状態、すなわち、分離されていない状態では、確実かつ良好な電気的接続が、割り当てられている接続コンタクトと、サージ制限構成素子との間で保証されていなければならない。特定の境界温度を超えた場合、分離箇所は、サージ制限構成素子の確実な分離と、継続的な絶縁耐性と、クリープ電流耐性とを保証しなければならない。サージ防護機器が例えば、搬送レール機器に対して設定されている大きさを超えないようにするために、サージ防護素子の寸法ができるだけ小さくあるべき場合、サージ防護素子は、直流電圧網での使用時には、比較的小さい消去能力しか有していない。
【0005】
米国特許第6430019号明細書(US 6,430,019 B1)は、熱的な分離装置を備えるサージアレスタを開示している。ここでは、ばね性を有しているコンタクトリードの終端部が、はんだ箇所を介して、バリスタの端子と接続されている。バリスタの許容されない加熱が生じると、これによってはんだ接続の溶解が生じ、これにしたがって変位されたコンタクトリードの終端部が、バリスタの端子から離れるようにはずむ。同時に、発生している可能性のある電弧を消去するために、絶縁性分離素子が、コンタクトリードとバリスタとの間を移動する。この絶縁性分離素子の寸法は、バリスタの寸法より小さいので、この分離素子によって、バリスタの部分領域しか覆われず、したがって、電弧もしくはコンタクトの領域内に形成されたプラズマがこの分離素子を中心に再び閉じて、バリスタを介して電流が流れ続ける、ということを排除することはできない。
【0006】
冒頭に記載したサージ防護素子は、独国実用新案第202014103262号明細書(DE 20 2014 103 262 U1)からも既知である。このようなサージ防護素子では、サージ制限構成素子として、ガスが充填されたサージアレスタが使用され、したがって、このサージ防護素子を介して、大きいインパルス電流も導出可能である。サージ防護素子はさらに、絶縁性分離素子を有しており、この絶縁性分離素子は、ばね素子の力によって、第1の位置から第2の位置へと移動され得る。このサージ防護素子では、第1の接続コンタクトは継続的に、サージアレスタの第1の電極と導電性接続されている。サージ防護素子の通常状態では、すなわち、サージアレスタが許容できない程度に加熱されていないときには、導電性接続素子の第1の終端部は、熱によって解除される接続を介して、サージアレスタの第2の電極と電気的に接続されている。また、接続素子の第2の終端部は、第2の接続コンタクトと導電性接続されている。サージ防護素子の通常状態ではさらに、絶縁性分離素子が、導電性接続素子の第1の終端部とサージアレスタの第2の電極との間に実現されている接続によって、自身の位置に保持される。
【0007】
サージアレスタが、サージ防護素子の継続的な過負荷が原因で著しく加熱されて、境界温度を超えると、はんだ接続の溶解、ひいては、導電性接続素子とサージアレスタの属する電極との間の熱による接続が解除される。絶縁性分離素子は、次に、ばね素子の力によって自身の第2の位置へ動かされる。分離素子のこの位置においては、分離素子の一部は、導電性接続素子の第1の終端部と、サージアレスタの属する電極との間に配置されている。したがって、導電性接続素子と、サージアレスタとの間の直接的な接続は解除されている。しかし、ここでも、次のような虞が生じる。すなわち、接続素子の終端部と、サージアレスタの割り当てられている端子との間に依然として存在しているプラズマが原因で、電弧が残り、電流がサージアレスタを介して流れ続け、これによって、サージ防護素子が熱によって破壊され得る、という虞である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許発明第4241311号明細書
【特許文献2】米国特許第6430019号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202014103262号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、電力網からのサージ防護素子の確実な切り離しが保証され、これによって、サージ制限構成素子の熱による破壊が阻止される、上述した形式のサージ防護素子を提供するということである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題は、請求項1に記載された特徴を有するサージ防護素子において、絶縁性分離素子が、次のように構成されていることによって解決される。すなわち、導電性接続素子の第1の終端部と、サージ制限構成素子の第1の端子との間の電気的な接続の解除時に発生する電弧が、少なくとも部分的に閉じられているチャンバ内へ移動されるように構成されていることによって解決される。絶縁性分離素子による電弧のこの変位によってはじめに、電弧の長さが増長され、これによって、電弧燃焼電圧、すなわち、電弧の保持に必要な電圧が高まる。さらに、電弧によって、導電性接続素子の第1の終端部と、サージ制限構成素子の第1の端子との間の領域に存在しているプラズマも、コンタクト間の領域から移動される。したがって、絶縁性分離素子の運動によって生じる、ガイドされた、コンタクト間の領域からのプラズマの排出が生じ、これは同様に、電弧燃焼電圧の上昇へとつながる。これによって、導電性接続素子とサージ制限構成素子の端子と間の接続の開放時に、に発生する電弧が消去され、電弧の新たな点弧が確実に阻止される。
【0011】
絶縁性分離素子を、自身の第1の位置から自身の第2の位置へと移動させる力は、例えば、ばね素子によって生成され得る。このためにばね素子が、分離素子と接続されている、もしくは分離素子に結合されている。これに対して、選択的に、この力が、膨張性の材料によって調達されてもよく、この材料は、特定の温度に達すると広がり、これによって、絶縁性分離素子が自身の第1の位置から自身の第2の位置へと移動する。
【0012】
冒頭に記載されているように、サージ防御素子の通常状態では、導電性接続素子の第1の終端部は、サージ制限構成素子の第1の端子と導電性接続されている。接続素子のこの終端部と、サージ制限構成素子のこの端子との間の接触接続部は、ここでは、例えば、貫通接続部として形成されていてよい。このために、接続素子が、相応にプリロードされていてよい、または、力、例えばばねの力によって、サージ制限構成素子の端子に押しつけられていてよい。サージ制限構成素子の臨界的な状態では、次に、接続が解除される。これは、少なくとも、導電性接続素子の第1の終端部が、サージ制限構成素子の端子から離れるように動かされることによって行われる。サージ制限構成素子の臨界的な状態を、例えば、電流測定または温度測定によって確認することができる。
【0013】
しかし、有利には、この接続は、熱によって解除される接続として構成されており、これはサージ制限構成素子の温度が境界温度を超えると解除され、したがって、これは、熱的な分離装置である。従来技術においては通常であるように、本発明に係るサージ防護素子でも、熱によって解除される接続は、有利には、はんだ接続によって実現される。サージ制限構成素子すなわちサージアレスタが、継続的な過負荷に基づいて、著しく強く加熱され、所定の境界温度を超える場合には、サージアレスタの端子と導電性接続素子との間のはんだ接続の溶解が起こる。さらに、絶縁性分離素子が、力によって、有利には、少なくとも1つのばね素子の力によって、サージアレスタの端子と、導電性接続素子の割り当てられている終端部との間で動かされる。
【0014】
本発明に係るサージ防護素子の第1の有利な実施形態では、絶縁性分離素子は、可動に、ハウジング内に配置されており、このハウジングの容積は、分離素子の体積よりも大きい。すなわち、ハウジングの内部は、部分的にしか、絶縁性分離素子によって満たされない。サージ防護素子の通常状態において絶縁性分離素子が配置されていないハウジング内の領域は、ここで、チャンバを形成する。このチャンバ内へ、導電性接続素子の第1の終端部とサージ制限構成素子の第1の端子との間の電気的な接続の分離時に発生する電弧が、分離素子によって移動される。さらに、複数の部分から成り得るこのハウジングは開口部を有しており、この開口部を通じて、サージ防護素子の通常状態において、導電性接続素子の第1の終端部が、サージアレスタの第1の端子と導電性接続されている。
【0015】
本発明に係るサージ防護素子では、絶縁性分離素子が、自身の第1の位置から、自身の第2の位置へと運動することによって、導電性接続素子とサージ制限構成素子との間の接続が解除されるだけではなく、ハウジング内のチャンバ内への電弧の変位も生じる。導電性接続素子の第1の終端部と、サージアレスタの第1の端子との間の接続解除時には、コンタクトの領域内に存在しているプラズマも、ハウジング内のチャンバ内へ押し込まれる。このために、サージ制限構成素子の第1の端子の方を向いている、絶縁性分離素子の端面は、種々に構成されていてよく、例えばくさび形または漏斗の形を有していてよい。
【0016】
本発明のある構成では、絶縁性分離素子は開口部を有しており、この開口部を通じて、サージ防護素子の通常状態において、導電性接続素子の第1の終端部が、サージアレスタの第1の端子と導電性接続されている。絶縁性分離素子内の開口部はここでは、ハウジング内の開口部に対して一致するように形成されている。したがって、サージ防護素子の通常状態では、導電性接続素子の第1の終端部は、ハウジング内の開口部を通って、および絶縁性分離素子内の開口部を通って延在し、有利には、熱によって解除される接続を介して、例えばはんだ接続を介して、サージアレスタの端子と接続されている。
【0017】
本発明に係るサージ防護素子の有利な構成では、ハウジングは、チャンバの領域において排出開口部を有しており、この排出開口部を介して、分離素子によってハウジング内へ押し込まれたプラズマが流れ出ることができる。これによって有利には、プラズマはコントロールされて、ハウジングから抜け出ることができ、これによって、電弧の新たな点弧の虞がさらに低減される。さらに、ハウジング内の排出開口部によって次のことが保証される。すなわち、絶縁性分離素子が、自身の第1の位置から自身の第2の位置へと動かされ、これによってプラズマがハウジング内へ押し込まれる場合に、ハウジング内の圧力が過度に大きくならない、ということが保証される。これによって、ハウジングの損傷が阻止される。排出開口部は、ここで有利には、自身の第1の位置から自身の第2の位置へと分離素子が移動される場合に、分離素子が近づいていく、ハウジングの壁部内に位置する。
【0018】
本発明の別の特に有利な構成では、絶縁性分離素子内に、少なくとも1つのチャネルが形成されており、このチャネルは、チャンバの方を向いている側で開放されている。したがって、絶縁性分離素子は、一種の中空体として形成されている。この絶縁性分離素子は、導電性接続素子の第1の終端部と、サージ制限構成素子の第1の端子との間の接続が解除された後に、自身の第1の位置から自身の第2の位置へと移動され、したがって、ここでは、閉じられている分離素子の場合のように、発生している電弧が、ハウジング内のチャンバ内へ押し込まれる。ここで、プラズマの一部も、ハウジング内のチャンバ内へ押し込まれ、また、プラズマの別の部分は、分離素子内のチャネルにおいて、分離素子の運動方向とは反対に流れる。
【0019】
これによっても、導電性のプラズマは、効果的に、開放されているコンタクト間の領域から排出される。
【0020】
このような構成のある変形では、ハウジング内に、ウェブまたは分離壁が形成されている。これは絶縁する分離素子の運動方向に延在しており、したがって、このウェブもしくは分離壁によって、ハウジング内のチャンバが、2つの部分チャンバに分けられる。絶縁性分離素子が、自身の第1の位置から自身の第2の位置へ移動されると、ウェブもしくは分離壁は、分離素子内のチャネル内に埋没する。ここで、この絶縁性分離素子内には、複数のチャネルが形成され、かつ、ハウジング内に相応して複数のウェブまたは分離壁が形成されていてよい。したがって、ハウジング内には相応して、複数の部分チャンバが形成されている。ハウジングは、この場合にはチャンバ状の構造を有している。
【0021】
絶縁性分離素子が、自身の第1の位置から自身の第2の位置へと分離素子が運動する際にプラズマがその中へ流れ込む少なくとも1つのチャネルを有している場合、分離素子は有利には少なくとも1つの排出開口部を有しており、この排出開口部を通じて、プラズマが、絶縁性分離素子から流れ出ることができる。この排出開口部は、ここで、例えば、チャンバとは反対側に位置する側で、絶縁性分離素子内に形成されていてよい。したがって、分離素子内に形成されているチャネルは、この排出開口部を介して、ハウジングの内部と接続されており、ここで、このハウジングは、有利には同様に、排出開口部を有している。これは、分離素子内の排出開口部に対向して配置されていてよい、または、別の側壁に配置されていてもよい。サージ防護素子のこのような構成の場合、プラズマは、絶縁性分離素子の運動方向とは反対の方向に、分離素子内のチャネルを通って流れ、ハウジング内の排出開口部を介して、コントロールされて、ハウジングから抜け出ることができる。
【0022】
ハウジングの内壁と、絶縁性分離素子の外壁との間に、排出チャネルが形成されていてよく、この排出チャネルを通って、プラズマが分離素子内のチャネルから、分離素子内の排出開口部を通って、ハウジング内の排出開口部へと流れることができる。ここで、高温のプラズマの冷却をさらに高めるために、排出チャネル内に、流れ出るプラズマを冷却するための媒体が配置されていてよい。これは有利には、プラズマの流れを緩和するためにも用いられる。ここでは、これは例えば、ハニカム構造を有する材料のことであり、これは高い多孔性を有している。同様に、これが、粒子状の材料、例えば砂または砂利であってもよい。
【0023】
絶縁性分離素子が可動にハウジング内に配置されている実施形態では、絶縁性分離素子とハウジングとは、次のように相互に調整されている。すなわち、ハウジングの内部空間の横断面が、分離素子の横断面よりも僅かにだけ大きいように、相互に調整されている。これによって、ハウジングの内壁と、絶縁性分離素子の外壁との間に、その中で電弧が広がり得る相対的に狭い間隙のみが生じる。これによって、間隙内の圧力が高くなり、これは、電弧燃焼電圧を高くさせる。さらにハウジングおよび/または絶縁性分離素子が少なくとも部分的に、気体発生性の材料から成る場合、これによってさらに、絶縁性分離素子とハウジングの内壁との間の間隙における電弧が、放出する材料によって吹き流され、これによって冷却される。これも、電弧の故意の消去を促進させる。
【0024】
ハウジングと絶縁性分離素子とが、場合によっては発生する高い温度または高い圧力を確実に保つために、ハウジングと、有利には絶縁性分離素子も、機械的かつ熱的に安定している材料から成り、有利には繊維強化された材料から成る。
【0025】
分離素子の横断面へのハウジングの内部空間の調整によってさらに、絶縁性分離素子は、自身の第1の位置からハウジング内の自身の第2の位置への自身の運動時に、案内される。さらに、絶縁性分離素子とハウジングの内壁との間に、ガイド部分が形成されていてよく、これは例えばガイドリップおよびガイド溝の形態であり、これらは相互に一致するように、絶縁性分離素子に、もしくはハウジング内に形成されている。
【0026】
上述したように、本発明に係るサージ防護素子は、少なくとも1つの絶縁性分離素子を有しており、これは相応に形成されていてよい。本発明のある構成では、サージ防護素子が有している分離素子は1つではなく、複数個であり、これらはそれぞれ、サージ制限構成素子の第1の端子に対して可動に配置されており、有利には、力が加えられており、この力によって、これらの分離素子はそれぞれ、第1の位置から第2の位置へ移動可能である。
【0027】
サージ防護素子が、複数の絶縁性分離素子を有している場合には、有利には、各分離素子は、ハウジング内にまたはハウジング部分内に可動に配置されており、ここで、各ハウジングまたは各ハウジング部分は開口部を有しており、これらの開口部同士は次のように、相互に配置されている。すなわち、サージ防護素子の通常状態において、導電性接続素子の第1の終端部がこれらの開口部を通して、サージアレスタの第1の端子と導電性接続されているように相互に配置されている。したがって、個々の絶縁性分離素子は一種の直列回路を形成し、したがって、個々の分離素子は、接続が解除された後にそれぞれ、自身の第2の位置に動かされ、ここでは、分離素子は、導電性接続素子の第1の終端部と、サージ制限構成素子の第1の端子との間に配置されている。サージ防護素子が例えば2つの絶縁性分離素子を有している場合、接続解除状態において、2つの絶縁性分離素子は、導電性接続素子の第1の終端部とサージアレスタの第1の端子との間に配置されている。
【0028】
有利には、ここで、サージ防護素子の通常状態において、少なくとも2つの絶縁性分離素子が、実質的に、サージ制限構成素子の第1の端子の異なる側に、これらの分離素子の運動方向が相互に逆であるように配置されている。実質的に第1の端子の異なる側に配置されている、とは、ここでは、次のことを意味している。すなわち、少なくとも、これらの絶縁性分離素子の大きい方の部分が、異なる側に配置されている、ということを意味している。したがって、絶縁性分離素子の小さい方の部分が、第1の端子の同じ側に配置されていてもよく、例えば、これは、分離素子内にそれぞれ1つの開口部が形成されている場合である。この開口部を通じて、サージ防護素子の通常状態において、接続素子の第1の終端部が第1の端子へと延びる。この種の分離素子は、したがって、通常状態において、第1の端子の両側に延在しており、しかし、ここでは大きい方の部分は、端子の片方の側に配置されている。
【0029】
サージ防護素子が2つの絶縁性分離素子を有している場合、これは例えば次のことを意味している。すなわち、サージ防護素子の通常状態において、第1の分離素子が、サージ制限構成素子の端子の左側に配置されており、第2の分離素子が、サージ制限構成素子の端子の右側に配置されていることを意味している。接続解除時には、次に、第1の分離素子は自身のハウジング内で、左から右へと動かされ、第2の分離素子は自身のハウジング内で、右から左へと動かされる。これによって、熱による接続の解除時に発生する電弧の長さがさらに増長され、プラズマが、絶縁性分離素子によって、対向する方向において、2つのチャンバ内へ押し込まれる。
【0030】
絶縁性分離素子に関連して上述した、分離素子もしくはハウジングの有利な構成は、それぞれ、次の場合にも実現可能である。すなわち、サージ防護素子が複数の絶縁性分離素子と、複数のハウジングもしくは複数のハウジング部分を有している場合である。例えば、ハウジング内もしくはハウジング部分内にそれぞれ1つの排出開口部が形成されていてよく、したがって、プラズマは、これらの排出開口部を通って、異なる方向において、ハウジングから、コントロールされて、抜け出ることができる。個々のハウジングは有利には直接的に相互に隣接して配置されており、したがって、ハウジングの内部空間はそれぞれ、分離壁のみによって相互に分離されている。ここで、この分離壁は、導電性接続素子の第1の終端部に対する開口部によって中断されている。個々のハウジングが、相互に、固定的に、共通のハウジングに接続されていてもよい。したがって、この1つのハウジングは、複数のハウジング部分を有している。この場合には、これらのハウジング部分内に、個々の分離素子に対して、それぞれ1つの相応するチャンバが形成されている。
【0031】
本発明に係るサージ防護素子の別の実施形態では、絶縁性分離素子内に少なくとも1つのチャネルが形成されている。このチャネルは、熱的な接続の解除時に発生する電弧がその中へ移動可能なチャンバとして機能する。チャネルは、ここで、サージ制限構成素子の第1の端子の方を向いている側で開放されており、絶縁性分離素子は次のように、サージ制限構成素子の第1の端子に対して相対的に可動である。すなわち、導電性接続素子の第1の終端部が、分離素子内のチャネルにおける絶縁性分離素子の第2の位置に配置されているように、可動である。
【0032】
本発明に係るサージ防護素子のこの構成では、絶縁性分離素子は、自身の第2の位置において、その全体が、サージ制限構成素子の第1の端子と、導電性接続素子の第1の終端部との間に位置するのではなく、絶縁性分離素子は、自身のチャネルによって、導電性接続素子の第1の終端部を介して移動される。導電性接続素子の第1の終端部は、ここでは、チャネルを画定している下方の壁部によって、サージ制限構成素子の第1の端子から分離されている。絶縁性分離素子が、サージ制限構成素子の第1の端子を通過して動く際に、発生している電弧が、チャンバとして機能するチャネル内へ押し込まれ、これによって、サージ制限構成素子の第1の端子と、導電性接続素子の第1の終端部との間で電弧の長さが増長し、これは通常、電弧の消去につながる。付加的に、コンタクト間の領域内に形成されているプラズマの、コンタクト間のアクティブ領域からの排出も生起される。ここで、絶縁性分離素子は、付加的にさらに、少なくとも1つの排出開口部を有しており、これを通ってプラズマが、分離素子内のチャネルから流れ出ることができる。
【0033】
この実施形態の発展形態では、サージ防護素子の通常状態において、絶縁性分離素子が存在していない、サージ制限構成素子の第1の端子の側に、閉鎖素子が配置されており、この閉鎖素子に、絶縁性分離素子が、自身の第2の位置において、チャネルの開放されている側で当接する。絶縁性分離素子が、自身の第2の位置に存在している場合には、これによって、チャネルの開放されている側が、この閉鎖素子によって閉じられており、したがって、場合によっては依然として発生している電弧が「(縛って)止められる」もしくは「切り離される」。絶縁性分離素子の第2の位置ではこの場合に、導電性接続素子の第1の終端部が完全にカプセル封入され、したがって、接続素子とサージアレスタの第1の端子との間で電弧が新たに点弧されることはない。閉鎖素子は、ここで、貫通する開口部を有しており、導電性接続素子はこの開口部を通って延在するので、閉鎖素子は、接続素子に対する保持部としても用いられる。
【0034】
本発明に係るサージ防護素子においてサージ制限構成素子が、突出している第1の端子を有している場合、最後に記載した実施形態の別の構成では、絶縁性分離素子内に第2のチャネルが形成されており、この第2のチャネルは、第1のチャネルに対して平行に延在している。第2のチャネルは、ここで、次のように形成されている。すなわち、自身の第1の位置から自身の第2の位置への絶縁性分離素子の運動時に、分離素子が、自身の第2のチャネルともに、サージアレスタのこの突出している端子を介して移動されるように形成されている。絶縁性分離素子の第2の位置では、次に、導電性接続素子の第1の終端部は、第1のチャネル内に配置されており、サージアレスタの端子は第2のチャネル内に配置されている。したがって、端子と接続素子とは絶縁性分離素子によって包囲されており、ここで、端子と接続素子とは、分離素子内の異なるチャネル内に位置しており、したがって、これらは相互に分離されており、かつ、電気的に絶縁されている。
【0035】
絶縁性分離素子が、有利には鉛直に、サージアレスタから突出している第1の端子に対して相対的に移動されることを可能にするために、サージアレスタの方を向いている、絶縁性分離素子の下面は、第2のチャネルの領域において開放されている、または第2のチャネルは、自身の下面において、運動方向に延在するスリットを有しており、端子はこのスリット内へ導かれる。
【0036】
第2のチャネルは、ここでは、第1のチャネルと同様に、サージ制限構成素子の第1の端子の方を向いている側で開放されていてよい。この場合にこの絶縁性分離素子は、自身の第1の位置において、分離素子の運動方向において、サージ制限構成素子の第1の端子の隣に配置されている。このような形態では、有利には、2つの閉鎖素子が次のように設けられている。すなわち、絶縁性分離素子が自身の第2の位置にあるときには、2つのチャネルの開放されている側がそれぞれ、閉鎖素子によって閉じられているように設けられている。
【0037】
これに対して、選択的に、絶縁性分離素子が次のように構成されていてもよい。すなわち、サージ制限構成素子の第1の端子が、第2のチャネル内の分離素子の第1の位置に配置されているように構成されていてもよく、ここでは、導電性接続素子の第1の終端部は、サージ制限構成素子の第1の端子に接触接続している。このために、第1のチャンバは、第2のチャンバよりも短く、したがって、絶縁性分離素子の第1の位置では、第1のチャンバが、分離素子の運動方向において、導電性接続素子の第1の終端部の隣に配置されており、また、サージ制限構成素子の第1の端子は第2のチャネル内に配置されている。
【0038】
絶縁性分離素子内に2つのチャネルが形成されているサージ防護素子の構成でも、有利には、サージ防護素子の通常状態において絶縁性分離素子が存在していない、サージ制限構成素子の第1の端子の側に、少なくとも1つの閉鎖素子が配置されており、この閉鎖素子に、絶縁性分離素子が、自身の第2の位置において、チャネルの開放されている側で当接している。
【0039】
別の有利な構成では、絶縁性分離素子は、少なくとも1つの排出開口部を有しており、有利には、絶縁性分離素子の第1の位置において、サージ制限構成素子の第1の端子から間隔が空けられている、第2のチャネルの後方壁において有しており、したがって、プラズマが、排出開口部を通って、コントロールされて、相応するチャネルの内部から流れ出ることができる。これによって、次のことが阻止される。すなわち、絶縁性分離素子が、チャネルの開放されている側が閉鎖素子によって閉鎖されている自身の第2の位置にある場合、絶縁性分離素子内のチャネル内で過度に大きい圧力が形成されてしまうことが阻止される。
【0040】
本発明に係るサージ防護素子の上述した実施例では、1つもしくは複数の絶縁性分離素子は、押出し機として形成されている。したがって、1つもしくは複数の分離素子は、直線的に、第1の位置から第2の位置へと移動される。
【0041】
詳細には、本発明に係るサージ防護素子を構成し、展開させる多数の方法がある。これに関しては、請求項1に続く請求項も、図面に関連した有利な実施例の後続する説明も参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係るサージ防護素子の第1の実施例の、異なる3つの状態における、側面から見た概略図。
図2】絶縁性分離素子と、この分離素子を収容するハウジングの、側面から見た2つの変形。
図3】絶縁性分離素子と、この分離素子を収容するハウジングの、上から見た3つの変形。
図4】絶縁性分離素子と、この分離素子を収容するハウジングの、図1に示された視線方向Aからの2つの変形。
図5】3つの異なる状態における、2つの絶縁性分離素子を有する本発明に係るサージ防護素子の、図1に示された実施例のある変形の概略図。
図6】3つの異なる状態における、本発明に係るサージ防護素子の第2の実施例の概略図。
図7】3つの異なる状態における、本発明に係るサージ防護素子の別の実施例の概略図。
図8】3つの異なる状態における、本発明に係るサージ防護素子の第4の実施例の概略図。
図9】3つの異なる状態における、図8に示されたサージ防護素子の平面図の形態の概略図。
図10】3つの異なる状態における、本発明に係るサージ防護素子の第5の実施例の概略図。
図11】3つの異なる状態における、図10に示されたサージ防護素子の平面図の形態の概略図。
図12】3つの異なる状態における、本発明に係るサージ防護素子の別の実施例の概略図。
図13】3つの異なる状態における、本発明に係るサージ防護素子の別の実施例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図は、図において部分的にしか示されていないハウジング2を備えるサージ防護素子1の種々の実施例の概略図を示している。このハウジング内にバリスタ3がサージ制限構成素子として配置されている。さらに、サージ防護素子1は、導電性接続素子4と少なくとも1つの絶縁性分離素子5とを有しており、これについて、図2乃至図4に種々の実施形態が示されている。
【0044】
バリスタ3は、第1の端子6と第2の端子7とを有しており、これらは、サージ防護素子1が通常状態にある場合、すなわち、分離されていない場合に、ここでは図示されていない、サージ防護素子1の接続コンタクトと導電性接続されている。図1aに示された、サージ防護素子1の通常状態では、バリスタ3の第1の端子6は、導電性接続素子4の第1の終端部8と、熱によって解除される接続を介して接続されている。図示された実施例では、熱によって解除される接続ははんだ接続9として形成されている。これは、バリスタ3の温度が境界値に達すると解除される。サージ防護素子1の通常状態において存在しているはんだ接続9によって、絶縁性分離素子5は、例えばばね素子によって生成可能な、分離素子5に加わる力に反して、自身の第1の位置に保持される。
【0045】
バリスタ3の許容されない加熱が生じると、バリスタは、はんだ接続9を軟化させる。これによってまずは、接続素子4の第1の終端部8が、バリスタ3の第1の端子6から離れるように動く。これは例えば次のことによって実現される。すなわち、接続素子4自体が弾性を有しており、これが、はんだ接続9を介して端子4と接続されている場合に、自身の弛緩状態から変位されることによって実現される。しかし、これに対して、選択的に、はんだ接続9から離れる方向の力が接続素子4に力が加えられてもよい。さらに、図1cに示されているように、絶縁性分離素子5が、自身の第1の位置から自身の第2の位置の方向へ動かされる。これによっても、バリスタ3の第1の端子6から離れる方向の、接続素子4の第1の終端部8の運動がサポートされ得る。本発明に係るサージ防護素子1では、絶縁性分離素子5は、ここでは次のように形成されている。すなわち、絶縁性分離素子5が、接続9の解除時に、接続素子4の第1の終端部8と、バリスタ3の端子6との間に発生している電弧10を、少なくとも1つの、部分的に閉じられているチャンバ11内へ押し込むように形成されている。
【0046】
図2乃至図6は、本発明に係るサージ防護素子1の種々の実施例を示している。ここでは絶縁性分離素子5が可動に、ハウジング12内に配置されており、このハウジング12の容積は、分離素子5の体積よりも大きく、ハウジング12は部分的にのみ、分離素子5によって満たされている。ハウジング12は、開口部13を有しており、この開口部13を通じて、サージ防護素子1の通常状態において、導電性接続素子4の第1の終端部8が、バリスタ3の第1の端子6と、はんだ接続9を介して導電性接続されている。これは例えば図1aから見て取れる。
【0047】
図1に示された実施例では、絶縁性分離素子5は、サージ防護素子1の通常状態において、バリスタ3の第1の端子6に関して、ハウジング12内の左側に位置しており、ハウジング12の右側はチャンバ11を包囲しており、このチャンバ11内には、はんだ接続9の解除時に、端子6と接続素子4との間に発生している電弧10が、絶縁性分離素子5によって押し込められる。これによって、図1cから見て取れるように、電弧10が格段に長くなり、これによって、電弧10が消去される。さらに、プラズマ14も、コンタクト間、すなわち、バリスタ3の第1の端子6と接続素子4の第1の終端部8との間のアクティブ領域から押し出されているので、コンタクト間の、そうでない場合に生じ得る、電弧の新たな点弧も阻止される。
【0048】
図1bは、ここで概略的に、はんだ接続9が解除されており、接続素子4の終端部8が、バリスタ3の端子6から離されている状態を示している。ここでは、接続素子4の終端部8とバリスタ3の端子6との間に延在している電弧10もしくは接続素子4の終端部8とバリスタ3の端子6との間に形成されているプラズマ14も示されている。はんだ接続9が解除され、第2の位置への分離素子5の運動が、すなわち、図1において右側への運動が既に始まっている場合でも、絶縁性分離素子5は、ここで、依然として第1の位置に示されている。
【0049】
自身の第1の位置から自身の第2の位置への絶縁性分離素子5の運動時に、ハウジング12内のチャンバ11内の圧力が過度に高くならないようにするために、ハウジング12は、少なくとも1つの排出開口部15を有しており、図1cにおいて矢印によって示されているように、この排出開口部を通ってプラズマ14がコントロールされて流れ出ることができる。これによって、チャンバ11内へ移動されたプラズマ14によって生じる、過度に高い圧力または過度に高い温度によるハウジング12の損傷が阻止される。排出開口部15は、ここで有利には、分離素子5が自身の第2の位置へ動かされるときに、分離素子5が近づいていく、ハウジング12の壁部内に位置する。選択的または付加的に、チャンバ11を包囲しているハウジング12の別の壁部内にも排出開口部が形成されていてよい。
【0050】
図2乃至図4は、絶縁性分離素子5ならびに、その中に分離素子5が案内されているハウジング12の種々の実施形態を示している。図2には、ハウジング12と分離素子5とが、図1にも示されているように、側面から示されており、ここではハウジング12の側壁は取り除かれており、ハウジング12内に配置されている分離素子5が見える。図3には、ハウジング12と分離素子5とが平面図で示されている。ここでは、ハウジング12の上面は取り除かれており、これによって、ここでも分離素子5が見て取れる。
【0051】
図2aおよび図2bでは、サージ防護素子1の通常状態において、バリスタ3の第1の端子6もしくは接続素子4の第1の終端部8の方を向いている、絶縁性分離素子5の端面16は、例えば弓状またはくさび形に形成されていてよい。図3cの平面図から明らかであるように、分離素子5の端面16が漏斗状に形成されていてもよい。同様に、図3aおよび図3bに示されているように、絶縁性分離素子5の端面16が直線状に形成されていてもよい。図3bに示されている実施例では、絶縁性分離素子5は開口部17を有しており、この開口部を通って、サージ防護素子1の通常状態において、導電性接続素子4の第1の終端部8がはんだ接続9を介して、バリスタ3の第1の端子6と接続されている。説明のために、ここでは、ハウジング12内の相応する開口部13の下方に配置されている、バリスタ3の第1の端子6も示されている。
【0052】
それぞれ、絶縁性分離素子5およびハウジング12の変形を、チャンバ11の方向から示している、図4に示されている2つの図から次のことが見て取れる。すなわち、絶縁性分離素子5とハウジング12とが、ハウジング12の内部空間の横断面が僅かにだけ、分離素子5の横断面よりも大きくなるように相互に調整されていることが見て取れる。これによって、ハウジング12の内壁と、絶縁性分離素子5の上面ならびに下面との間にそれぞれ、図1cに示されているように、その中で電弧10が広がることができる、極めて狭い間隙のみが生じる。さらにこれによって、分離素子5が、ハウジング12において、自身の運動時に、第1の位置から第2の位置へと案内される。この案内を改善するために、絶縁性分離素子5はさらに、図4aに示されているように、ガイドリップ18を有していてよく、これに対して、ハウジング12の内壁内には、一致するガイド溝19が形成されている。これに対して、選択的に、図4bでは、ハウジング12の内壁に、ガイドリップ20が形成されていてよく、絶縁性分離素子5内には、一致するガイド溝21が形成されていてよい。
【0053】
図5は、同様に、3つの異なる状態における、図1に示されているサージ防護素子1の変形の概略図を示している。図1のサージ防護素子1では、絶縁性分離素子5が1つだけ設けられており、図5のサージ防護素子1は、2つの絶縁性分離素子5、5’を有しており、これらはそれぞれ、ハウジング12、12’内で移動可能に案内されている。2つのハウジング12、12’はそれぞれ1つの開口部13、13’を有しており、ここで、これら2つの開口部13、13’は相互に重なって、すなわち、相互に同一平面を成すように配置されている。したがって、サージ防護素子1の通常状態において、導電性接続素子4の第1の終端部8は、2つの開口部13、13’を通じて、はんだ接続9を介して、バリスタ3の第1の端子6と導電性接続されている。
【0054】
図5aから見て取れるように、2つの絶縁性分離素子5、5’は、サージ防護素子1の通常状態において、バリスタ3の第1の端子6の異なる側に配置されている。これに対応して、2つのハウジング12、12’内に形成されているチャンバ11、11’も、バリスタ3の第1の端子6の異なる側に形成されており、これによって、2つの分離素子5、5’の運動方向も相互に逆になる。図5cから見て取れるように、第1の、下方の分離素子5は、はんだ接続9の解除時に、ハウジング12内で左から右へと動かされ、第2の、上方の分離素子5’は、自身のハウジング12’内で右から左へと動かされる。2つの絶縁性分離素子5、5’は、したがって、2つの、逆方向の押出し機のように作用し、したがって、はんだ接続9の解除時に生じる電弧10の長さはさらに増長され、プラズマ14は2つの絶縁性分離素子5、5’によって、反対方向において、2つのハウジング12、12’の2つのチャンバ11、11’内へ押し込まれる。ハウジング12、12’の端面に形成された排出開口部15、15’を介して、プラズマ14は同様に、コントロールされて抜け出ることができ、ここでは、排出開口部15、15’も異なる側に形成されている。
【0055】
図6には、本発明に係るサージ防護素子1の別の実施例の概略図が示されている。ここでこの実施例では、絶縁性分離素子5内にチャネル22が形成されている。このチャネルは、チャンバ11もしくはバリスタ3の第1の端子6の方を向いている側で開放されている。絶縁性分離素子5が、はんだ接続9の解除後に、自身の第1の位置(図6a)から自身の第2の位置(図6c)の方向へ動かされると、ここで、発生している電弧10が、ハウジング12内のチャンバ11内へ押し込まれる。付加的に、プラズマ14もはじめに、チャンバ11内へ押し込まれる。しかし、ここでは、プラズマ14の一部が、分離素子5の運動方向に対して反対に、分離素子5内のチャネル22内へも流れる。ここで、絶縁性分離素子5内に、チャンバ11とは反対側に位置する側に形成されている排出開口部23を通って、プラズマ14が、チャネル22からハウジング12内へ流れることができる。次に、ハウジング12の、第1の排出開口部15に対向する側に形成されている、ハウジング12内に形成されている第2の排出開口部24を通って、プラズマ14が、分離素子5の運動方向に対して反対の方向においても、ハウジング12から抜け出ることができる。
【0056】
図7に示されているさらなる実施例では、絶縁性分離素子5内に、チャネル25が形成されている。ここで、このチャネルは、その中へ、はんだ接続9の解除時に発生する電弧10が移動され得るチャンバとして機能する。分離素子5の、バリスタ3の第1の端子6の方を向いている側で、チャネル25は開放されているので、分離素子5が自身の第1の位置(図7a)から自身の第2の位置(図7c)へ動くときに、分離素子5は自身の、片方の側が開放されているチャネル25とともに、導電性接続素子4の第1の終端部8を介して移動される。接続素子4は、この場合には、チャネル25を制限している、下方の壁部によって、バリスタ3の第1の端子6から分離されている。したがって、この実施形態では、分離素子5が自身の第2の位置にある場合、導電性接続素子4の1つの部分、特に、その第1の終端部8は、絶縁性分離素子5によって包囲されている。ここでも、はんだ接続9の解除時に発生する電弧10は、分離素子5によって、チャネル25によって形成されるチャンバ11内へ移動される。これははじめに、電弧10の長さの増大を生じさせる。
【0057】
図7からさらに見て取れるように、サージ防護素子1の通常状態において絶縁性分離素子5が存在していない、バリスタ3の第1の端子6の側に、閉鎖素子26が設けられている。絶縁性分離素子5は自身の第2の位置において、この閉鎖素子26に、チャネル25の開放された側で当接する。次に、分離素子5の第2の位置では、片方の側が開放されているチャネル25が、閉鎖素子26によって密閉され、これによって、場合によっては、依然として発生している電弧10が「縛られる」もしくは「切り離される」。したがって、電弧10は、遅くともこのときに消去される。閉鎖素子26は、貫通している開口部27を有しており、接続素子4はこれを通って案内される。したがって、閉鎖素子26は、接続素子4に対する保持部としても用いられる。
【0058】
図8および図9は、本発明に係るサージ防護素子1の別の実施例を示している。ここで、この絶縁性分離素子5は、2つのチャネル25、25’を有している。これら2つのチャネルは、相互に平行に延在している。2つのチャネル25、25’は、バリスタ3の第1の端子6の方を向いている側で開放されており、したがって、絶縁性分離素子5の第2の位置において、接続素子4の第1の終端部8は第1のチャネル25内に配置されており、バリスタ3の第1の端子6は分離素子5内の第2のチャネル25’内に配置されている。バリスタ3の第1の端子6が平面状に、バリスタ3の面に形成されている、図7に示されている実施例とは異なり、図8および図9に示されているサージ防護素子1では、第1の端子6は実質的にバリスタから鉛直に突出している。絶縁性分離素子5が、突出している第1の端子6に対して相対的に動かされることを可能にするために、第2のチャネル25’は、バリスタ3の方を向いている自身の下面において、分離素子5の運動方向に延在するスリットを有している。端子6は、第1の位置から自身の第2の位置への分離素子5の移動時にこのスリット内で導かれてよい。
【0059】
第1のチャネル25に対する閉鎖素子26の他に、第2の閉鎖素子28が第2のチャネル25’に対する遮断部として、分離素子5の第2の位置において設けられている。したがって、分離素子5の第2の位置において、2つのチャネル25、25’は、2つの閉鎖素子26、28によって閉じられている、もしくは密閉されている。さらに、第2のチャネル25’の開放されている面に対向している、絶縁性分離素子5の後方壁29には、排出開口部30が形成されており、この排出開口部を通って、プラズマ14がコントロールされて、チャンバ25’から流れ出ることができる。
【0060】
図10および図11は、上述され、図8および図9に示された、本発明に係るサージ防護素子1の実施例の変形を示している。ここでは、第1の端子6は、実質的に、バリスタ3から鉛直に突出しており、絶縁性分離素子5は同様に、相互に平行に延在している2つのチャネル25、25’を有している。この実施例では、図11aから見て取れるように、バリスタ3の第1の端子6は、絶縁性分離素子5の第1の位置において、部分的に第2のチャネル25’によって包囲されている。このために、第2のチャネル25’は、バリスタ3の端子6の方を向いている側で開放されている第1のチャネル25よりも長い。したがって、絶縁性分離素子5の第1の位置では、第1のチャネル25は、接続素子4の第1の終端部8の左隣に位置している。
【0061】
図11cに示されている絶縁性分離素子5の第2の位置では、接続素子4の第1の終端部8は第1のチャネル25内に配置されており、バリスタ3の第1の端子6は第2のチャネル25’内に配置されている。これら2つのチャネル25、25’は、ここで、第1のチャネル25の長手方向壁部および付加的な壁部31から相互に分離されており、ここで、この付加的な壁部31は、バリスタの第1の端子6と同様に、実質的にバリスタ3からもしくはハウジング2から鉛直に、バリスタ3を包囲するように、突出している。
【0062】
この実施例では、第2のチャネル25’は第2の後方壁32を有しているので、閉鎖素子26だけが、第1のチャネル25に対する遮断部として、分離素子5の第2の位置内に設けられている。分離素子5の第2の位置においてこれによって同様に、2つのチャネル25、25’が閉じられているもしくは密閉されている。さらに、絶縁性分離素子5の第1の位置において、サージ制限構成素子3の第1の端子6から間隔を空けて配置されている第2のチャネル25’の後方壁29内に、排出開口部30が形成されており、この排出開口部を通って、プラズマ14がコントロールされて、チャネル25’から流れ出ることができる。
【0063】
図12には、本発明に係るサージ防護素子1の別の実施例が示されている。ここで、これは、図6に示された実施例の変形である。この実施例でも、絶縁性分離素子5内に、チャネル22が形成されており、このチャネルは、バリスタ3の第1の端子6の方を向いている側で開放されている。ハウジング12の別の側には、分離壁33がハウジング12内に形成されており、したがって、チャンバ11は、2つの部分チャンバ11’、11’’に分けられている。分離壁33は、絶縁性分離素子5内のチャネル22よりも僅かに薄く、したがって、絶縁性分離素子5が自身の第1の位置から自身の第2の位置へと動くと、分離壁33はチャネル22内へ導かれる。
【0064】
絶縁性分離素子5が、はんだ接続9の解除後に、自身の第1の位置(図12a)から自身の第2の位置(図12c)の方向に動かされると、ここで、発生している電弧10およびプラズマ14が、ハウジング12内の2つの部分チャンバ11’、11’’内へ押し込まれる。付加的に、電弧10およびプラズマ14の一部は、分離素子5の運動方向とは反対に、分離素子5内のチャネル22内へ押し込まれる。これは、電弧10の大きい延長を生じさせる。絶縁性分離素子5に対向している、ハウジング12の側に形成されている、ハウジング12内に形成されている排出開口部15を通って、プラズマ14は、分離素子5の運動方向において、ハウジング12から抜け出ることができる。
【0065】
最後に図13は、本発明に係るサージ防護素子1の、図6に示されている実施例の別の変形を示している。この実施例では、ハウジング12内に、2つの絶縁性分離素子5、5’が配置されている。これらの分離素子は、バリスタ3の通常状態において、バリスタ3の第1の端子6の異なる側に位置している。すなわち、分離素子5は端子6の左側に配置されており、分離素子5’は端子6の右側に配置されている。第1の、左側の分離素子5内には、2つのチャネル22、22’が形成されている。これら2つのチャネルは、分離壁34によって相互に分けられている。第2の、右側の分離素子5’内に、3つのチャネル22、22’、22’’が形成されており、これらのチャネルは2つの分離壁34、34’によって相互に分離されている。ここで、これらのチャネルおよび分離壁は2つの分離素子5、5’において、次のように相互に配置されている。すなわち、2つの分離素子5、5’がそれぞれ自身の第1の位置から自身の第2の位置へと移動するときに、これら2つの絶縁性分離素子5、5’が、櫛の歯状に噛み合うように相互に配置されている。これによって、はんだ接続9の解除後に発生する電弧10がメアンダ状に、個々のチャネル22、22’、22’’内へ押し込まれ、これは、電弧10の長さの著しい増長を生じさせる。同時にプラズマ14も、2つの絶縁性分離素子5、5’内の個々のチャネル22、22’、22’’内へ押し込まれる。
【0066】
分離素子5、5’内に形成されている排出開口部23を介して、プラズマ14は、分離素子5、5’内のチャネル22、22’、22’’から、2つの方向において、ハウジング12内へ流れることができる。付加的に、ハウジング12の2つの端面に形成されている排出開口部15、24によってさらに、プラズマ14がハウジング12から、コントロールされて抜け出ることが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13